資金繰り対策としてファクタリングの利用を検討していても、経営者が長時間席を離れられない、インターネット環境が十分でないといった理由から、来店やオンライン完結型の契約が負担になる中小企業もあります。こうした企業向けに、ファクタリング会社の担当者が事業所まで出向き、面談・書類確認・契約手続きまでを一括して行う「出張契約(訪問型契約)」を案内している事業者もあります。本記事では、出張契約を伴うファクタリングの基本的な仕組みや、申込から入金までの一般的な流れ、出張費用や手数料の目安、注意しておきたいリスクと活用シーンを整理し、来店が難しい中小企業が自社に適した契約方法かどうかを検討するための客観的な材料を解説します。
目次
出張契約ファクタリングの基礎知識
ファクタリングは、企業が保有する売掛金(請求書などの債権)をファクタリング会社に譲渡し、その対価を前倒しで受け取ることで資金繰りを改善するサービスです。
契約方法としては、ファクタリング会社の店舗やオフィスに来店して手続きを行う方式や、書類提出から契約締結までをウェブ・電話・電子契約で完結させるオンライン方式が一般的です。
これに対し、出張契約はファクタリング会社の担当者が利用者の事業所・店舗・オフィスなどを訪問し、その場で面談・審査・契約締結を行う点に特徴があります。
多くの場合、まず電話やウェブフォームで売掛金の概要を伝え、概算の買取条件を確認したうえで、条件に問題がなければ訪問日時を調整します。
訪問当日は、事業内容のヒアリングや帳簿・通帳・請求書などの確認を行い、条件が固まれば契約書への署名・押印に進む流れです。
来店が難しい企業にとっては、自社オフィスにいながら対面で説明を受けられる点が利便性ですが、一部の事業者では出張に伴う費用が別途必要となる場合もあり、他の契約方法との違いを整理しておくことが重要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出張契約 | ファクタリング会社の担当者が利用者の事業所を訪問し、面談・審査・契約締結までを現地で行う方式。 |
| 来店契約 | 利用者がファクタリング会社の店舗・オフィスに出向き、対面で書類提出や契約手続きを行う方式。 |
| オンライン契約 | 書類をデータで提出し、電話・メール・オンライン会議・電子契約などを組み合わせて非対面で完結させる方式。 |
出張契約ファクタリングとは
出張契約ファクタリングは、売掛金をファクタリング会社に譲渡して資金化する基本スキームは通常のファクタリングと同じであり、「どこで契約行為を行うか」が異なる契約方式です。
店舗ではなく利用者の事業所が面談・契約の場所となるため、日常業務の拠点であるオフィスや店舗で説明を受けながら手続きを進められます。
訪問の際には、事業内容や資金ニーズ、売掛先の業種・規模・取引期間、支払サイト、過去の入金実績などについてヒアリングが行われるほか、必要書類の確認も併せて実施されます。
法人の場合、代表者の本人確認書類や法人登記事項証明書、会社の印鑑証明書、直近の決算書・試算表・売上台帳、取引先との基本契約書、対象となる請求書・発注書・納品書・検収書、取引口座の通帳コピーなどが代表的な必要書類です。
個人事業主では、開業届の写しや確定申告書・青色申告決算書、事業用口座の通帳など、事業実態を示す資料が求められることが一般的です。
こうした情報を対面で確認しながら、その場で条件調整や質疑応答を行える点が出張契約の特徴ですが、訪問可能なエリアや時間帯はファクタリング会社ごとに異なり、すべての案件で利用できるとは限りません。
- ファクタリング会社の担当者が事業所を訪問し、面談から契約締結までを現地で完結できる
- 帳簿や通帳・請求書を手元に置いたまま説明・確認ができ、書類チェックがしやすい
- 訪問エリア・時間帯・出張費用などの条件はファクタリング会社ごとに異なる
- 二社間・三社間などのスキームと組み合わせて利用されることがある
来店・オンライン契約との違い
出張契約と来店契約・オンライン契約の主な違いは、「契約の場所」と「やり取りの方法」にあります。来店契約では、利用者がファクタリング会社の店舗やオフィスを訪れ、対面で書類を提出しながら説明を受けて契約します。
オンライン契約は、必要書類をメールや専用画面で提出し、電話・ビデオ通話・電子契約サービスなどを用いて非対面で契約を完結させる方式です。
出張契約は、対面である点は来店方式と共通しつつ、契約場所を利用者側の事業所へ移した形といえます。
一部の事業者では、「来店」「出張」「オンライン」といった申込方法ごとに、入金までの目安や審査回答までの時間を公表しており、出張申込で最短当日入金をうたう例もありますが、こうしたスピード感や費用構成は会社ごとに異なり、共通の基準ではありません。
コスト面では、オンライン契約では出張交通費が不要である一方、出張契約や来店契約では、債権譲渡登記費用や事務手数料に加え、担当者の移動に伴う費用が別途請求されるケースがあります。
出張契約を検討する際には、移動負担を軽減できるメリットと、出張費用など追加コストの両面を踏まえ、他の契約方法との比較を行うことが重要です。
- 契約の場所(自社オフィスか、ファクタリング会社の事務所か、オンライン完結か)
- 入金までの目安日数と、電話・面談・書類提出など必要なやり取りの回数
- 出張費用や事務手数料など、基本手数料以外に発生するコストの有無
- 対面で相談したい内容があるか、オンラインでの説明で十分かという自社のニーズ
出張契約の申込から入金までの流れ
出張契約によるファクタリングの手続きは、基本的な流れ自体は通常のファクタリングと大きく変わりません。
まず、電話やウェブフォームなどでファクタリング会社に問い合わせを行い、売掛金の額や売掛先、希望する資金化時期などの概要を伝えます。
その情報をもとに、ファクタリング会社からおおよその手数料率や買取率(請求書額面に対して前倒しで支払われる割合)の目安が示され、条件に問題がなければ出張訪問の候補日程を調整します。
訪問当日は、担当者が事業所を訪れ、事業内容のヒアリングや必要書類の確認を行いながら、買取金額や手数料率、入金予定日などの最終条件をすり合わせます。そのうえで契約書の内容を説明・確認し、合意できれば署名・押印を行います。
契約締結後は、ファクタリング会社側で内部承認や振込処理が行われ、原則として当日から数営業日程度を目安に買取代金が指定口座へ入金される流れです。
出張契約では、訪問日程の調整や移動時間が必要となる一方で、帳簿や通帳を手元に置いた状態で説明を受けられるため、事前に全体の流れを把握しておくことで準備がしやすくなります。
| 工程 | 主な内容 |
|---|---|
| 事前相談 | 電話・ウェブなどで問い合わせを行い、売掛金の概要や希望条件を伝えて概算見積りを受ける。 |
| 訪問日程調整 | 出張可能エリアや担当者のスケジュールを踏まえ、訪問日時・場所を決定する。 |
| 訪問面談 | 事業内容のヒアリングと必要書類の確認を行い、買取条件を最終的に調整する。 |
| 契約締結・入金 | 契約書に署名・押印後、社内手続きを経て買取代金が指定口座へ振り込まれる。 |
訪問前に準備する必要書類一覧
出張契約を円滑に進めるには、訪問当日までに必要書類を整理しておくことが重要です。
必要書類はファクタリング会社ごとに細部が異なりますが、おおまかには「申込者の情報」「売掛金の実在性を示す資料」「資金の流れを確認する資料」の三つの観点で求められます。
法人の場合、登記事項証明書(履歴事項全部証明書)や代表者の本人確認書類、会社の印鑑証明書、直近の決算書・試算表・売上台帳、取引先との基本契約書、対象となる売掛金に関する請求書・発注書・納品書・検収書、取引口座の通帳コピーなどが代表的です。
個人事業主の場合も、開業届の控えや確定申告書・青色申告決算書、事業用口座の通帳など、事業実態を確認できる資料が重視されます。
訪問当日に必要書類を一から探し始めると、それだけで時間を要し、場合によっては契約や入金日程が後ろ倒しになる可能性があります。
事前にチェックリストを作成し、ファイルやフォルダ単位で整理しておくことで、訪問当日の確認作業を短時間で済ませやすくなります。
複数の売掛先の債権をまとめて利用する場合には、取引先ごとに請求書や入金実績が分かるようにまとめておくと、担当者への説明がスムーズです。
- 法人登記事項証明書・代表者の本人確認書類・印鑑証明書など申込者を確認する書類
- 直近の決算書・試算表・売上台帳など、事業規模や収益状況が分かる資料
- 取引基本契約書・請求書・発注書・納品書・検収書など、売掛金の根拠となる書類
- 取引口座の通帳コピーなど、入金実績や資金の流れを確認できる資料
当日の訪問面談と契約手順
訪問当日は、まず担当者との面談から始まり、企業の事業内容や現在の資金繰りの状況、今回ファクタリングを利用したい理由などについて説明します。
その後、事前に準備した書類をもとに、売掛先ごとの取引規模や取引期間、支払サイト(請求日から入金日までの日数)、過去の入金遅延や不払の有無などが確認されます。
これらの情報は、売掛先の信用力や債権回収の可能性を判断する材料となるため、できるだけ具体的に説明できるよう整理しておくと審査がスムーズです。
条件の調整が終わると、提示された買取金額・手数料率・入金予定日、債権譲渡の方法(二社間か三社間か、債権譲渡登記の必要性など)を、見積書や契約書案を通じて確認します。
内容に問題がなければ、基本契約書・個別契約書に署名・押印し、契約が成立します。契約締結後は、ファクタリング会社側で内部承認や振込処理が行われ、原則として当日〜数営業日程度で指定口座に買取代金が入金されるケースが一般的です。
出張契約では、追加の来店や郵送手続きが不要な一方、その場で条件を確認していく場面が多いため、疑問点は遠慮なく質問し、契約書の記載内容と合わせて確認しながら手続きを進めることが重要です。
- 自社の事業内容と今回の資金ニーズを、簡潔に説明できるよう事前に整理しておく
- 売掛先ごとの取引状況(取引期間・支払サイト・入金遅延の有無など)を事前に把握する
- 提示された買取金額・手数料率・入金予定日・債権譲渡方法を面談中に確認する
- 契約書に署名・押印する前に、入金タイミングや振込口座などの重要事項を再度チェックする
出張契約ファクタリングの費用相場
出張契約でファクタリングを利用する際の費用は、「売掛金に対して設定される基本手数料」と、「事務手数料や出張費用などその他の付随費用」に大別すると整理しやすくなります。
基本手数料率は、二社間ファクタリングか三社間ファクタリングかといったスキームの違いや、売掛先の信用力、利用金額、取引の継続性によって変動しますが、一般的な解説では、二社間ファクタリングはおおむね5〜20%程度、三社間ファクタリングはおおむね1〜10%程度の水準が目安として紹介されています。
これに加えて、審査にかかる事務手数料や契約書作成費用、振込手数料、債権譲渡登記を行う場合の登録免許税や司法書士報酬、契約書への貼付が必要となる印紙税、担当者の交通費等を含む査定出張費用などが別途発生するケースがあります。
こうした付随費用については、「基本手数料に含めて提示する」「項目ごとに明細で区分する」など、ファクタリング会社ごとに扱い方が異なります。
そのため、出張契約を検討する際には、手数料率だけでなく、見積書や契約書に記載された総額と内訳を確認し、どの費用が別途請求されるのかを把握しておくことが重要です。
| 費用項目 | 一般的な目安・ポイント |
|---|---|
| 基本手数料(2社間) | 二社間ファクタリングで設定される手数料率。おおむね5〜20%程度のレンジが目安として紹介される。 |
| 基本手数料(3社間) | 三社間ファクタリングで設定される手数料率。一般に1〜10%程度とされ、二社間より低水準になりやすい。 |
| 事務・審査手数料 | 審査や契約書作成など事務対応に対する手数料。数千円〜数万円程度の設定例が多い。 |
| 査定出張費用 | 担当者の交通費や宿泊費など出張に要する費用。数千円〜数万円程度を目安としているケースが多い。 |
| 債権譲渡登記費用 | 債権譲渡登記を行う際の登録免許税と司法書士報酬。数万円〜十数万円規模となることがある。 |
| 印紙代 | 書面契約を締結する場合の印紙税。契約金額に応じた印紙税法上の区分に基づき決定される。 |
出張費用や事務手数料の目安
出張契約特有の費用として、担当者が事業所まで訪問する際に発生する「査定出張費用」や、審査・契約事務にかかる「事務手数料」「審査手数料」などがあります。
一般的な解説では、査定出張費用は担当者の交通費や宿泊費等を踏まえ、数千円〜数万円程度に設定されるケースが多く、実費相当で請求する会社もあれば、エリア別に一定額を定めている会社もあります。
事務手数料や審査手数料についても、数千円〜数万円程度の範囲で設定されている例が多く、金額や徴収の有無はファクタリング会社ごとの基準によって異なります。
具体的な負担イメージを把握するために、たとえば請求書額300万円、基本手数料率5%、査定出張費用1万円、事務手数料1万円という条件を仮定すると、基本手数料は300万円×5%で15万円、出張費用と事務手数料の合計2万円を加えると総コストは17万円です。
この場合、請求書額に対する実質負担率は約5.67%(17万円÷300万円×100)となり、手数料率5%に付随費用分が上乗せされる形になります。
見積りの段階でこうした簡易計算を行うことで、手数料率だけでなく総額としてどの程度のコストになるのかを把握しやすくなります。
出張費が不要な会社や、事務手数料を手数料率に含めて提示する会社もあるため、見積書や事前説明で費用の内訳を確認しておくことが重要です。
- 出張費用が実費精算か、あらかじめ決められた一律料金かを確認する
- 審査手数料・事務手数料の有無と金額を、見積り段階で把握しておく
- 基本手数料率と付随費用を合算し、請求書額に対する実質負担率を試算する
- 手数料率に含まれる費用と、別途請求される費用の境界を明確にしておく
オンライン契約とのコスト比較
オンライン契約と比較した場合、出張契約は担当者が事業所まで訪問する分、対面で説明を受けられる一方で、出張関連費用が発生しやすいという特徴があります。
オンライン契約では、面談や契約手続きをウェブ会議や電子契約サービスで行うため、担当者の交通費・宿泊費は原則不要であり、査定出張費用がかからないのが一般的です。
さらに、電子契約を利用する場合には、契約書が電子データで作成されるため、印紙税法上、書面契約に必要となる印紙代が不要となり、その分だけ総コストを抑えられるケースもあります。
一方で、オンライン契約だからといって手数料率が必ず低くなるわけではなく、基本手数料率はスキームの種類や売掛先の信用力、取引金額などを踏まえて決定されます。
そのため、「出張契約=高コスト」「オンライン契約=低コスト」と一概に判断することはできません。
両者を比較する際は、基本手数料率に加え、出張費用や事務手数料、印紙代の有無などを含めた総額での比較が重要です。
来店が難しい企業にとっては、出張契約は対面で相談しながら契約できる方法であり、オンライン契約は移動負担を抑えながら手続きを進められる方法と言えます。
自社にとって重視するポイントが「コスト」「スピード」「説明の受けやすさ」のどこにあるのかを整理し、そのうえで最適な契約方式を検討することが望ましいでしょう。
- 出張費用や印紙代など、対面方式特有の費用が発生するかどうか
- 基本手数料率と付随費用を合算した場合の総コストの水準
- 入金までに必要な手続きの回数と、想定されるスピード
- 対面で詳細な説明を受けたいのか、オンラインでのやり取りで十分かという自社の希望
出張契約利用時に意識したい注意点
出張契約は、来店が難しい企業にとって利便性の高い契約方法ですが、「自社の事業所で担当者と対面し、その場で契約と資金の授受まで進む場合がある」という性質上、いくつか意識しておきたいリスクがあります。
たとえば、手数料や諸費用の説明が十分でないまま契約を急がされるケースや、口頭で聞いた内容と契約書に記載された条件が異なるケース、高額の現金受け渡しの場面で金額や控除項目をめぐって認識のズレが生じるケースなどです。
公的機関も、ファクタリングをうたう取引の中には高額な手数料や実質的に貸付に近いスキームが含まれているおそれがあるとして、契約条件や事業者選定を慎重に行うよう注意喚起を行っています。
ただし、これらは出張契約に特有の問題というよりも、高額な資金取引全般に共通するリスクと整理できます。
事前に見積書や契約書案を受け取り、手数料率や付随費用、債権譲渡の方式(二社間か三社間か、登記の有無など)を比較検討しておけば、多くのトラブルは未然に防ぎやすくなります。
| リスクの種類 | 出張契約で意識したいポイント |
|---|---|
| 条件・コスト | 手数料率だけでなく、事務手数料・出張費用などを含めた総額がいくらになるかを事前に把握する。 |
| 勧誘・説明 | 契約を急かす勧誘がないか、重要事項について書面での説明が行われているかを確認する。 |
| 現金授受 | 高額の現金受け渡しを行う場合の数え間違い・紛失・証拠不足といったリスクを認識する。 |
| 法令遵守 | 契約形態や手数料水準が適切か、公的機関の注意喚起等も参考にしながら確認する。 |
強引な勧誘や高額手数料の懸念
出張契約では、担当者が目の前にいることで、その場の雰囲気に流されて十分な比較検討を行わないまま契約してしまうおそれがあります。
なかには、「今日契約しなければこの条件は出せない」「審査を通すには即決が必要」といった強い言い回しで決断を迫る例や、「借入ではなく売掛金の売却なのでリスクは少ない」といった説明で手数料水準の高さに意識が向きにくくなる例も指摘されています。
公的機関が紹介する相談事例の中には、事前説明では低い手数料を案内していたにもかかわらず、実際の契約書には20%を超える手数料や高額な違約金・遅延損害金が規定されていたというトラブルも含まれています。
たとえば、請求書額300万円の取引で、事前には手数料率5%と聞いていたものの、契約書上は「基本手数料15%+事務手数料2万円」となっていた場合、基本手数料は45万円、事務手数料を加えた総コストは47万円となり、実質負担率は約15.67%まで上昇します。
このように、出張契約ではその場で条件を口頭で説明される場面が多いため、「口頭説明だけで判断しない」「必ず見積書や契約書の記載内容を確認する」ことが重要です。
可能な範囲で複数社から見積りを取り、手数料率と付随費用を合算した総コストを比較することで、出張契約であっても納得感のある条件を選びやすくなります。
- 「今だけ」「本日中」など即決を強く求める勧誘を受けた場合はいったん持ち帰る
- 手数料率だけでなく、事務手数料・出張費用・違約金など関連費用の有無を確認する
- 担当者の説明と見積書・契約書の記載内容を照らし合わせて差がないか確認する
- 可能な範囲で複数社から見積りを取り、総コストを比較したうえで選択する
現金受け渡し時のトラブル事例
出張契約の一部では、契約当日にその場で現金を受け取る形態をとるケースもありますが、高額の現金授受には銀行振込とは異なるリスクが伴います。
一般的なファクタリングでは、契約後の買取代金は銀行振込で支払われることが多く、入金額や控除された手数料を通帳や振込明細で確認できる点がメリットとされています。
一方、現金で受け取る場合は、数十万円〜数百万円規模の現金をその場で数える必要があり、金額の数え間違いや控除項目の認識違いが起きても、後から客観的な証拠を示しにくいという問題があります。
さらに、高額の現金を持ち帰る途中に紛失・盗難に遭うリスクや、周囲に大きな現金取引の存在が知られてしまうリスクも考えられます。
たとえば、請求書額200万円、手数料率10%、事務手数料1万円という条件であれば、利用者が受け取るべき金額は180万円から1万円を差し引いた179万円です。
この金額を現金で受領する場合、その場で金額と内訳(請求書額・手数料・その他費用)を双方で確認し、書面に残しておかなければ、「想定していたより手数料が多く差し引かれていた」といった認識の違いが後から生じるおそれがあります。
こうしたリスクを抑えるためには、可能であれば銀行振込での入金を選択し、振込明細と契約書の内容を照合することが望ましいといえます。
現金での受け渡しが必要な場合でも、落ち着いた環境で双方立ち会いのもと金額を確認し、領収書や受領書を必ず受け取ることが重要です。
- 原則として銀行振込での支払いを選び、入金額と契約条件を照合する
- 現金受け取りの場合は、その場で金額と内訳を確認し、受領書などの書面を残す
- 人目の多い場所や領収書が発行されない状況での高額な現金授受は避ける
- 不明点や疑問があれば、その場で担当者に確認し、可能であれば書面に記載してもらう
来店が難しい中小企業の活用シーン
来店が難しい中小企業や個人事業主にとって、出張契約ファクタリングは「移動にかかる時間や人員の負担を抑えながら資金調達を進められる」選択肢の一つとなります。
現場対応が多く経営者が事務所を長時間離れにくい業種や、公共交通機関が限られており最寄りのファクタリング会社までの移動が負担になる地域では、店舗に出向くためだけに半日〜1日を要することも珍しくありません。
このようなケースで出張契約を利用すれば、事業所内で帳簿・請求書・通帳などを確認しながら説明を受けられ、業務への影響を抑えつつ資金調達を検討できます。
一方で、出張契約はあくまで契約方法の一形態であり、手数料や出張費用、入金までのスケジュールは、来店契約やオンライン契約と同様にファクタリング会社ごとに条件が異なります。
移動コストや手続きのしやすさ、総コスト、入金スピードといった要素を一覧化して比較することで、自社にとって出張契約をどの程度活用するか判断しやすくなります。
経理担当が限られている企業では、訪問日までに必要書類を整理しておくことも、当日の手続き時間を短縮するうえで重要なポイントです。
- 人手や時間の制約が大きく、来店のための外出が難しい企業で利用しやすい契約方法
- 事業所内で帳簿や通帳を確認しながら説明を受けられ、数字を確認しつつ検討できる
- 来店契約・オンライン契約と比較し、総コストや手続き負担のバランスを確認して選択する
- 訪問日までに必要書類を整理しておくことで、当日の審査・契約がスムーズに進みやすくなる
地方・遠方企業が出張契約を選ぶ場面
地方や遠方に所在する企業では、ファクタリング会社の店舗や営業拠点が近くになく、来店前提の契約が現実的でない場合があります。
製造業や建設業、運送業など、工業団地や郊外の倉庫・工場を拠点とする企業では、経営者や経理担当者が長時間外出すると、現場対応や日常業務に支障が出ることも少なくありません。
このような環境では、担当者が工場や事務所まで訪問してくれる出張契約を利用することで、現場の状況や売掛金の発生状況を説明しながら相談できるという利便性があります。
また、複数の営業所や支店を持つ企業では、本社ではなく資金需要が大きい拠点で訪問面談を行うことで、その拠点の売掛金の流れや入金サイクルを確認しながら条件を検討できます。
地方圏では、主に地元金融機関との取引で資金繰りを行ってきた企業も多く、ファクタリングを初めて利用する段階では、不明点を対面で一つずつ確認したいというニーズも想定されます。
出張契約を選ぶかどうかは、移動にかかる時間や費用、現場で説明を行うメリットを比較し、自社にとってどの方法が現実的かを見極めることが重要です。
- 最寄りの店舗や営業拠点までの移動に半日以上かかり、来店が大きな負担となる
- 工場・倉庫・建設現場などへの対応が多く、経営者や担当者が長時間外出しにくい
- 本社以外の支店や営業所で売掛金が発生しており、その拠点で状況を説明したい
- ファクタリング利用が初めてで、対面で丁寧な説明を受けながら疑問を解消したい
出張契約とオンラインの賢い使い分け
出張契約とオンライン契約は、どちらか一方だけを選ぶのではなく、取引の性質や自社の状況に応じて使い分ける考え方も有効です。
たとえば、初回取引や高額取引、複数の売掛先を組み合わせるなどスキームが複雑な案件では、出張契約で担当者から対面で詳しい説明を受けることで、債権譲渡の方法や契約内容を十分に理解しやすくなります。
そのうえで、一度条件が固まったあと、同じ売掛先・同じ条件で継続的に利用していく段階では、オンライン契約に切り替えることで、都度の出張費用や移動時間を抑えながら手続きを行う運用も考えられます。
また、資金ニーズの緊急度や利用金額の大きさによっても使い分けが可能です。大口で慎重な検討が必要な案件では出張契約を選び、少額・短期のスポット利用ではオンライン契約を利用するといった組み合わせも一例です。
いずれの方式を選ぶ場合でも、基本手数料率に加えて、出張費用や事務手数料、印紙代の有無などを含めた総コストと、入金までのスピード・手続きの手間を整理しておくことが前提となります。
- 初回取引や高額・複雑な案件では、出張契約で対面説明を受けることを検討する
- 条件が固まった継続利用の場面では、オンライン契約を活用して手続きを効率化する
- 資金需要の緊急度や利用金額に応じて、出張契約とオンライン契約のどちらが適切かを選ぶ
- それぞれの契約方式について、総コスト・入金スピード・手続き負担を一覧化して比較する
まとめ
出張契約によるファクタリングは、来店が難しい中小企業や地方の事業者でも、事業所にいながら資金調達を進めやすくする契約方法です。
一方で、出張費用や事務手数料、印紙代など対面特有のコストが追加される場合や、強い勧誘・高額手数料、現金授受に伴うトラブルといったリスクにも目を向ける必要があります。
出張契約・来店契約・オンライン契約のそれぞれについて、費用構成や入金スケジュール、説明の受けやすさを比較し、必要書類を整えたうえで複数社の条件を確認することで、自社の実情に合った利用方法かどうかを検討しやすくなります。



















