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ファクタリングのオフバランスとは?仕組みと財務指標への影響・メリットを詳しく解説

ファクタリングは単なる資金繰り改善だけでなく、売掛金をオフバランス化して貸借対照表のスリム化を図る手段としても利用されています。ただし、日本基準やIFRSで求められる「リスクの移転」などの条件を満たさないと、売掛金を帳簿から外せない場合があります。本記事では、ファクタリングによるオフバランスの仕組みと会計処理の考え方、ROA・自己資本比率への影響、メリットと注意点を中小企業向けに整理します。

 

ファクタリングとオフバランス基礎

ファクタリングは、売掛金(取引先に対する掛け代金の回収権)をファクタリング会社へ譲渡し、期日前に現金化する取引です。

売掛金という金融資産を譲渡して現金と入れ替える点では「資産の組み替え」ですが、会計上はその売掛金を貸借対照表(BS)から外せる場合と、外さずに残す場合があります。ここで重要になる考え方が「オフバランス(オフバランスシート)」です。

 

オフバランスとは、実質的にリスク・経済的価値が移転した資産や負債について、一定の要件を満たす場合に、その項目を貸借対照表から外すことを指します。

日本の会計基準では、金融資産について、契約上の権利が消滅した場合や、支配が他者に移転した場合などに「消滅」を認識することが定められており、条件を満たした取引は帳簿から外すことができます。

 

ファクタリングに当てはめると、売掛金に伴う回収リスクや経済的利益のほとんどがファクタリング会社側に移転していると判断される場合、売掛金を消滅させてオフバランス処理を行うことが検討されます。

一方、売掛金の回収リスクの多くを利用者が負っている場合は、売掛金を残したまま「借入金」として処理するなど、オンバランスとされるケースも想定されます。

 

オフバランス型のファクタリングは、総資産の圧縮や自己資本比率・ROAなどの財務指標の見え方に影響しうるため、資金繰りだけでなく財務戦略の一環として検討されることがあります。

ただし、実態とかけ離れた処理は認められず、会計基準で定められた要件を満たしているかどうかが前提となります。

 

区分 貸借対照表上のイメージ
オンバランス 売掛金を残したまま、必要に応じて借入金等を計上。総資産・総負債に反映される。
オフバランス 売掛金が消滅し、現金と売却損等のみ計上。売掛金残高が減少し、総資産が圧縮される。
ファクタリング リスク・経済的利益の移転状況に応じて、売掛金の消滅(オフバランス)か、借入金処理(オンバランス)かを判断する。

 

オフバランスの意味とBSの関係

貸借対照表は、ある時点の「資産」「負債」「純資産」を一覧にしたもので、企業の財政状態を示します。

オフバランスとは、このうち特定の資産・負債を貸借対照表に計上しない、または計上から外す状態を指します。

 

たとえば、債権の流動化やリース取引などで、リスクと経済的利益の大部分が外部の主体に移転している場合、一定の要件を満たせば、当該資産・負債を貸借対照表から外す処理が認められます。

オフバランスになると、その資産・負債は貸借対照表からは見えなくなりますが、企業がまったく関係を失うとは限りません。

 

会計基準では、認識を中止した金融資産に関しても、企業が一定の関与(継続的関与)を持つ場合には、注記などでリスクの内容を開示することが求められるケースがあります。

つまり、「貸借対照表に載っていない=リスクがゼロ」という意味ではなく、どこまでリスクを移転したか、どこまで関与が残っているかを総合的に見る必要があります。

 

また、貸借対照表の数字は、資金調達の判断や金融機関の与信判断の重要な材料となるため、企業は実態に即した計上を行うことが求められます。

意図的にオフバランス取引を利用して財務内容を良く見せるような処理は、信頼性を損ねるおそれがあり、結果として資金調達や取引条件に悪影響を及ぼす可能性もあります。

 

オフバランスを理解するうえでの基本ポイント
  • 貸借対照表に計上しない資産・負債であっても、リスクや関与が残る場合がある
  • オフバランスの可否は、会計基準で定められた要件(リスク・経済的利益の移転など)で判断される
  • 実態に合わないオフバランス処理は、財務情報の信頼性を損ね、与信判断に悪影響を与えるおそれがある

 

ファクタリングで資産を切り離す仕組み

ファクタリングで売掛金をオフバランス化するには、「売掛金を本当に手放した」といえる条件を満たしていることが前提になります。

日本の金融商品会計基準では、金融資産を消滅として扱うための要件として、①譲渡された資産に対する権利が法的に譲受人に保全されていること、②譲受人がその資産から生じるキャッシュフローを通常の方法で享受できること、③譲渡人が買い戻す権利や義務を実質的に持たないことなどが示されています。

 

ファクタリングに当てはめると、一般に、償還請求権のないノンリコース型で、売掛金の回収リスクや経済的利益がファクタリング会社に移転していると認められる場合は、売掛金の消滅(オフバランス処理)が検討されます。

一方、支払遅延や貸し倒れが発生した際に利用者が実質的な負担を負うウィズリコース型や、売掛金を担保にした借入と評価されるスキームでは、売掛金を残したまま借入金を計上するオンバランス処理となるケースが多くなります。

 

ケース 会計上のイメージ 貸借対照表への影響
ノンリコース型 売掛金を譲渡し、手数料控除後の現金を受け取る。回収リスクは主にファクタリング会社が負う。 要件を満たせば売掛金を消滅させてオフバランス。現金と売上債権売却損などのみ計上。
ウィズリコース型 売掛金の貸し倒れ時に利用者が負担する契約。実質的には売掛金を担保にした借入に近い。 売掛金を残し、借入金等を計上するオンバランス処理となる可能性が高い。

 

オフバランス型ファクタリングかどうかを見る視点
  • 売掛金の回収リスクと経済的利益の大部分がファクタリング会社に移っているか
  • 売掛金に対する権利が法的にも実務的にもファクタリング会社に保全されているか
  • 利用者側に実質的な買戻し義務や追加負担が残っていないか

 

オフバランス化の会計処理ポイント

ファクタリングをオフバランス目的で検討する場合、単に「売掛金を売却したかどうか」ではなく、会計基準上の金融資産の消滅要件を満たしているかどうかを確認することが重要です。

日本基準(企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」)では、金融資産の契約上の権利を行使したとき、権利を喪失したとき、または権利に対する支配が他者へ移転したときに、その金融資産の消滅を認識すると定められています。

 

ファクタリングに当てはめると、売掛金に関する回収リスク・経済的利益が実質的にファクタリング会社へ移転しているか、売掛金に対する支配が移っているか、利用者に買戻し義務など継続的な関与が残っていないか、といった点を総合的に判断することになります。

これらの条件を満たすときには売掛金を消滅させてオフバランス処理を検討し、満たさないときには売掛金を残したまま借入金として処理するなど、オンバランスとするケースも想定されます。

 

オフバランス化を検討する際は、「会計基準上の要件」「契約書の条項」「実務上のリスク負担」を一体で確認することがポイントです。

会計処理だけを独立して判断するのではなく、ファクタリング会社との契約内容や債権譲渡登記の有無、売掛先への通知状況など、法的な枠組みとの整合性も踏まえて検討する必要があります。

 

確認観点 主なチェック内容
会計基準 金融資産の消滅要件(権利の行使・喪失・支配移転)を満たしているか。
契約内容 買戻し義務・償還請求権・保証条項などが実質的なリスク負担につながっていないか。
法的枠組み 債権譲渡登記や売掛先への通知が行われ、権利が適切に移転しているか。

 

日本基準における売掛金消滅要件

日本基準では、金融資産の消滅(オフバランス)を認識する条件として、金融商品会計基準において「金融資産の契約上の権利を行使したとき」「権利を喪失したとき」「権利に対する支配が他に移転したとき」が挙げられています。

これを売掛金に当てはめると、単に請求書をファクタリング会社に譲渡しただけでは足りず、①売掛金のキャッシュフローに対する支配がファクタリング会社に移っているか、②主要なリスク・経済的利益がファクタリング会社に移転しているか、③利用者に実質的な買戻し義務など継続的関与が残っていないか、といった点が焦点になります。

 

例えば、売掛金1,000万円をファクタリング会社へ譲渡し、売掛先からの入金は直接ファクタリング会社が受け取り、支払不能時も原則として利用者に追加負担が生じないノンリコース型の取引であれば、売掛金のリスク・リターンが主としてファクタリング会社に移転している形となります。

この場合、債権譲渡登記や売掛先への通知が適切に行われていれば、売掛金の消滅要件を満たす可能性があるため、オフバランス処理が検討されます。

 

一方、売掛金が未回収となった場合に利用者が事実上の補填義務を負う条項があるなど、リスクの多くを利用者が負担していると判断されるときには、売掛金を貸借対照表に残しつつ、ファクタリングで受け取った資金を借入金等として計上するオンバランス処理となるケースが多くなります。

このように、日本基準における売掛金の消滅要件は、契約書上の形式だけではなく、実質的なリスク移転と支配の移転を中心に判断されます。

 

日本基準で売掛金消滅を検討するときの視点
  • 売掛金のキャッシュフローに対する支配が誰にあるか(利用者かファクタリング会社か)
  • 売掛先の不払い時に、誰が最終的な損失を負担するか(リスクの所在)
  • 買戻し義務や保証条項など、継続的関与につながる契約条件の有無

 

IFRSと日本基準のオフバランス違い

IFRSでは、IFRS 9「金融商品」において、金融資産の消滅(derecognition)を「契約上のキャッシュフローに対する権利が期限切れとなった場合」または「金融資産を移転し、その移転が消滅の要件を満たす場合」に認識すると定めています。

そのうえで、移転後も企業が金融資産のリスクおよび経済的利益の大部分を保持しているかどうか、あるいは保持していないかどうかを評価し、保持していなければ消滅を認識する、保持していれば継続計上する、というステップで判断する仕組みになっています。

 

日本基準も、金融資産の消滅要件として「権利の行使・喪失・支配の移転」を掲げており、金融資産の構成要素ごとにリスクと経済的利益の移転を判断する財務構成要素アプローチを採用している点で、基本的な考え方はIFRSと近いものになっています。

ただし、IFRSでは「リスク・経済的利益」「支配」「継続的関与」の3段階を明確なフローで評価する一方、日本基準では適用対象や用語の整理がIFRSと完全に同一ではないなど、細部の運用には違いがあります。

 

ファクタリング取引については、IFRS適用グループと日本基準適用の個別財務諸表とで判断枠組みが異なる可能性があり、同じスキームでもIFRS上はオフバランス、日本基準の個別決算ではオンバランスという扱いが理論的には生じ得ます。

そのため、どの財務諸表に対する会計処理を検討しているのか(連結IFRSか、日本基準の個別決算か)を明確にしたうえで、各基準の消滅要件を確認することが重要です。

 

IFRSと日本基準の違いに配慮したいポイント
  • IFRS 9では「リスク・経済的利益」「支配」「継続的関与」の3段階で消滅を判断する
  • 日本基準もリスク移転と支配移転の考え方は近いが、適用範囲や用語が完全には一致しない
  • 連結(IFRS)と個別(日本基準)で処理が異なる可能性があるため、どの財務諸表のルールかを明確にする

 

ノンリコースとウィズリコースの違い

ノンリコース(non-recourse)は「償還請求権なし」、ウィズリコース(with recourse)は「償還請求権あり」を意味し、ファクタリングにおいては売掛先が支払不能となった場合に、ファクタリング会社が利用者へ支払いを請求できるかどうかの違いを指します。

ノンリコース契約では、売掛先の倒産などにより売掛金が回収できなくなっても、原則として利用者に返済義務は生じず、売掛金の信用リスクはファクタリング会社が負担します。

 

一方、ウィズリコース契約では、売掛先が支払不能となった場合に利用者に買戻し義務や補填義務が生じるため、売掛金のリスクが利用者側に残り続けます。

会計処理の観点では、ノンリコース型で売掛金のリスク・経済的利益が実質的にファクタリング会社へ移転していると判断される場合、売掛金を消滅させてオフバランス処理(売掛債権売却損などの計上)が検討されます。

 

これに対し、ウィズリコース型では、売掛金を担保にした金銭消費貸借に近い実態と評価されることが多く、売掛金は貸借対照表に残したまま、「短期借入金」などの負債を計上するオンバランス処理となるケースが一般的です。

また、形式上は「ノンリコース」と記載されていても、契約上の表明保証条項や支払停止・倒産の兆候について売主が広範な保証を負う場合、実質的には債務保証に近いと評価され、裁判例や金融庁の注意喚起でも金銭消費貸借として取り扱われた事例が示されています。

そのため、オフバランスを前提とした検討を行う際には、契約書上の名称だけでなく、実際に誰がどこまでリスクを負担しているのかを具体的に確認することが重要です。

 

ノンリコース/ウィズリコースの実務上の見分け方
  • 売掛先が不払いの場合に、利用者に買戻し義務や追加負担があるかどうか
  • 契約条項(表明保証・補償条項など)が実質的な保証になっていないか
  • 実態として売掛金の信用リスクを誰が負っているかに着目し、会計処理を検討する

 

オフバランス化の財務メリット

ファクタリングで売掛金をオフバランス化すると、単なる資金繰り改善だけでなく、貸借対照表の構成や財務指標の見え方にも影響が出ます。

売掛金を譲渡して貸借対照表から外すことで、総資産が圧縮され、同じ利益水準でも資産効率を示す指標が改善する可能性があります。

 

また、売掛金の回収リスクがファクタリング会社側に移るスキームであれば、実質的な信用リスクを外部に切り出す効果も期待できます。

一方で、オフバランス化は「見かけの数字を良くするための手段」ではなく、会計基準が定める要件を満たした取引に対して、結果として認められる処理です。

 

売掛金のリスク・経済的利益がどこまで移転しているかを踏まえて、財務指標への影響を冷静に整理することが重要です。

特に、中小企業が金融機関との関係を意識してファクタリングを活用する場合には、「資金繰り」「財務指標」「情報開示」のバランスを考えながら、専門家の助言を受けることが望ましいです。

 

メリットの観点 具体的な内容
資産規模 売掛金が貸借対照表から外れることで総資産が圧縮される。
収益性指標 同じ利益水準でもROA(総資産利益率)が改善する可能性がある。
安全性指標 自己資本比率などの指標が、資産圧縮の影響で改善するケースがある。

 

ROA・自己資本比率の改善効果

ROA(総資産利益率)は「当期純利益 ÷ 総資産」で計算され、企業が保有する資産をどれだけ効率的に利益につなげているかを示す指標です。

自己資本比率は「自己資本 ÷ 総資産」で計算され、財務の安定性や負債への依存度を見る指標です。

 

いずれも分母に「総資産」を用いるため、売掛金をオフバランス化して総資産が減少すると、利益や自己資本が同じ水準であれば、結果として指標が改善する可能性があります。

簡易的な例として、総資産1億円・自己資本3,000万円・当期純利益500万円の会社を考えます。このとき、自己資本比率は30%(3,000万円÷1億円)、ROAは5%(500万円÷1億円)です。

 

ここで、リスク移転の要件を満たすノンリコース型ファクタリングにより、売掛金2,000万円をオフバランス化した結果、総資産が8,000万円になったとします(自己資本額、利益水準は簡略化のため同じと仮定)。

このとき、自己資本比率は約37.5%(3,000万円÷8,000万円)、ROAは約6.25%(500万円÷8,000万円)となり、指標が改善することが分かります。

 

もっとも、売掛金を譲渡する際にはファクタリング手数料が発生し、その分だけ利益が減少するため、実務では「総資産の圧縮」と「手数料による利益減」の両方を踏まえたうえで指標への影響を評価する必要があります。

また、短期的にROAや自己資本比率が改善しても、継続的に高額な手数料を支払い続ける構造であれば、中長期的な収益力にはマイナスとなり得る点にも注意が必要です。

 

ROA・自己資本比率への影響を評価するときのポイント
  • 売掛金オフバランスによる「総資産の減少」と、手数料による「利益の減少」を両方試算する
  • 一時的な指標改善か、事業の収益力向上につながるかを切り分けて検討する
  • 金融機関や投資家には、オフバランス取引の内容やリスク移転の状況を適切に説明する姿勢が重要

 

銀行融資枠と与信評価への具体影響

銀行などの金融機関は、融資判断の際に決算書の内容だけでなく、資金繰り表や取引内容、オフバランス取引の有無も含めて総合的に与信評価を行います。

売掛金のオフバランス化により貸借対照表の総資産が圧縮され、自己資本比率などの指標が改善したとしても、その背景に高い手数料や短期的な資金繰りの逼迫がある場合、必ずしも融資枠拡大には直結しません。

 

金融機関は、売掛金の性質やファクタリング契約の内容(ノンリコースか、実質的な保証があるかなど)を確認し、取引全体のリスクを評価します。

一方で、売掛金の回収リスクを外部に移し、倒産リスクの大きい得意先の債権を適切に処理している場合には、「貸倒れリスクを管理している」と評価されるケースもあります。

 

特に、財務内容が悪化した企業において、焦げ付き懸念のある売掛金をいつまでも貸借対照表に残しておくよりも、一定の損失を織り込んだうえでファクタリングや債権譲渡を活用し、資産内容を平準化する方が、将来的な再建計画として評価されることも考えられます。

実務的には、銀行との面談や資料提出の場で、ファクタリングの利用目的、スキーム(ノンリコース/ウィズリコース)、対象となる売掛金の性質、手数料水準と資金繰りへの影響を丁寧に説明することが重要です。

単に「オフバランスで指標が良くなった」という表面的な説明だけではなく、「どのリスクを外部へ移転し、どのように資金繰りと財務内容を改善しようとしているか」を具体的に示すことで、より建設的な与信評価につながりやすくなります。

 

銀行とのコミュニケーションで意識したいポイント
  • ファクタリングの目的(資金繰り改善・リスク移転など)とスキーム内容を明確に説明する
  • オフバランス化による指標の変化だけでなく、手数料負担や今後の資金計画も併せて共有する
  • 焦げ付き懸念のある債権の処理方針など、財務の健全化に向けた具体的な取り組みを示す

 

オフバランス化の主なデメリット

ファクタリングによるオフバランス化は、総資産の圧縮や指標改善といったメリットがある一方で、いくつかの注意すべきデメリットもあります。

まず、売掛金という将来の資金源を前倒しで処分するため、今後の資金調達余力が目減りする可能性があります。

 

本来であれば入金時点で使えるはずだった資金の一部を手数料として外部に支払うことになり、長期的には自己資本の蓄積スピードに影響することも考えられます。

また、オフバランス取引が増えるほど、決算書の数字だけでは資金調達の実態を読み取りにくくなり、金融機関との対話や注記・補足説明の重要性が高まります。

 

会計基準の要件を満たさないにもかかわらず、売掛金を消滅させてしまうと、粉飾決算と評価されるおそれがあり、後から修正を求められれば信用低下やコスト増大につながります。

オフバランス化は、短期的な外観だけを良くする手段ではなく、資金繰り・財務戦略・情報開示を総合的に勘案して利用すべき手法といえます。

 

デメリットの観点 具体的な内容
将来の資金余力 将来入金される売掛金を前倒し処分するため、今後利用できる資金源が減少する可能性がある。
コスト負担 手数料の支払いにより、長期的には自己資本の蓄積や内部留保に影響することがある。
情報の分かりづらさ オフバランス取引が多いと、決算書だけでは資金調達構造が把握しにくくなり、説明負担が増える。
会計・内部統制 要件を満たさないオフバランス処理は、粉飾と評価されるリスクがあり、内部統制や監査対応が重要。

 

将来の資金調達余力が減るリスク

ファクタリングで売掛金をオフバランス化すると、目先の資金は増えますが、その分、将来入金される予定だったキャッシュフローを前倒しで使うことになります。

売掛金は、通常であれば金融機関の与信評価や担保評価の対象になり得る資産です。それを継続的に売却し続けると、将来的に「担保にできる売掛金」「資金調達のクッション」が小さくなり、結果として資金調達余力が減る可能性があります。

 

また、売掛金を安定的に保有している企業と比べ、常態的にオフバランス型ファクタリングを利用している企業は、「運転資金を内部で回せていない」と評価されることもあり得ます。

金融機関が決算書とヒアリングを通じて資金繰り構造を確認した際に、ファクタリングによる資金調達が高い比率を占めていると、融資枠の設定や金利水準に影響する場合があります。

 

さらに、売掛金を継続的に前倒しで現金化していると、将来の売上減少や取引先の倒産など、予期せぬ事態が起きたときのバッファが小さくなります。

売掛金を保有していれば、場合によってはファクタリング以外の手段(担保付融資など)も選択できますが、すでに売却済みの場合は選択肢が限定されます。

このように、オフバランス化には「現在の資金繰り」と「将来の資金調達余力」のバランスを慎重に検討する必要があります。

 

資金調達余力を損なわないための注意点
  • ファクタリングで前倒しする売掛金の割合を把握し、常態化していないか定期的に確認する
  • 将来の売上計画や投資計画を踏まえ、担保にできる資産・利用できる調達手段を一覧化しておく
  • 一時的な資金需要と構造的な資金不足を区別し、後者の場合は収益性やコスト構造の見直しも検討する

 

粉飾とみなされないための注意点

オフバランス化は、会計基準で定められた金融資産の消滅要件を満たしている場合に認められる処理であり、基準に沿って適切に行われる限り、粉飾とは評価されません。

しかし、実態としては売掛金のリスクがほとんど移転していないにもかかわらず、形式的に「売却」として処理して売掛金を貸借対照表から外している場合には、金融商品会計基準や関連通達に反するおそれがあり、粉飾決算とみなされるリスクがあります。

 

例えば、表向きはノンリコース型とされていても、契約書の裏で買戻し義務や広範な保証条項が設定されていれば、実質的には売掛金を担保にした借入と評価される場合があります。

このような取引を売掛金の消滅として処理すると、負債を過少計上し、自己資本比率などの指標を実態より良く見せてしまう結果につながります。

 

また、オフバランス取引の内容やリスクが注記や説明資料で十分に開示されていない場合も、後から投資家や金融機関との間で認識のギャップが生じやすくなります。

粉飾と評価されないためには、会計基準・監査基準に沿ってリスクと経済的利益の移転状況を整理し、外部の専門家(公認会計士・税理士など)とも協議しながら処理方針を決めることが重要です。

また、取引の実態を正しく伝えるために、注記や金融機関への説明資料で、ファクタリングのスキーム・対象債権・手数料水準・リスク分担の内容を明確にしておくことが求められます。

 

粉飾リスクを避けるためのポイント
  • 契約書の名称だけでなく、買戻し義務や保証条項の内容を確認し、実質的なリスクの所在を把握する
  • 会計基準が定める金融資産の消滅要件を満たしているか、専門家とともに検証する
  • オフバランス取引の目的・リスク・影響について、注記や金融機関への説明資料で適切に開示する

 

中小企業の活用場面と注意点整理

ファクタリングによるオフバランス化は、特に中小企業において「銀行融資だけでは資金を確保しにくい場面」で選択肢になりやすい手法です。

たとえば、創業から日が浅く担保や保証人を用意しづらい企業、成長投資や大型受注で一時的に運転資金が膨らむ企業、赤字決算が続き追加融資のハードルが上がっている企業などが代表的です。

 

将来の売掛金を現金化しつつ貸借対照表から切り離すことで、資金繰りと財務指標の両面を調整しやすくなるケースがあります。

一方で、オフバランス化は「売掛金を使った資金の前倒し」であることに変わりはなく、手数料負担や将来の資金調達余力への影響も踏まえて検討する必要があります。

 

銀行融資やリース・割賦など他の調達手段と比較しながら、「一時的な資金ギャップの解消」にとどまるのか、「構造的な資金不足への対応」に踏み込むのかを整理することが重要です。

その際には、会計処理や税務の取り扱い、金融機関への説明の仕方も含め、専門家やファクタリング会社と情報を共有しながら進めることが、中小企業にとっての実務的なポイントになります。

 

活用場面 中小企業で想定されるケース
成長・投資局面 新規設備投資・新店舗出店・大型案件対応などで一時的に運転資金が膨らむ場面。
業績悪化局面 赤字決算や自己資本比率の低下で追加融資が難しいが、既存取引は継続している場面。
創業・若年企業 実績や担保が少なく、銀行融資枠が限定される創業初期や急成長フェーズの企業。

 

銀行融資が難しい企業の活用パターン

銀行融資が難しい企業がオフバランス型のファクタリングを検討する場面としては、①担保・保証人が不足している、②直近の決算が赤字で融資審査が厳しい、③新規取引や急な売上増で一時的に運転資金が膨らんでいる、といった状況が挙げられます。

こうした企業でも、売掛先が上場企業や大手企業であれば、その信用力を背景に売掛金を資金化しやすい場合があり、銀行融資とは異なる評価軸で資金調達を検討できる点が特徴です。

 

具体的には、長い支払サイトを持つ売掛先の債権をファクタリングで現金化し、仕入や人件費などの支払いに充てるケース、設備投資や広告宣伝費を一時的にファクタリング資金で補い、その後の売上回収で銀行融資や自己資金に戻していくケースなどが想定されます。

ただし、ファクタリング手数料は融資の利息に比べて高めになることが多く、繰り返し利用すると収益力に与える影響が大きくなります。

オフバランス化によって貸借対照表上の負債は増えないものの、手数料は費用として利益を圧迫するため、「どの期間」「どの売掛先」の債権を利用するかを絞り込むことが重要です。

 

銀行融資が難しい企業の主な活用パターン
  • 大手企業向けの売掛金をファクタリングし、創業・成長初期の運転資金を補うケース
  • 赤字決算で追加融資が厳しい局面で、一時的な資金ショートを回避するケース
  • 大型案件の仕入や人件費を先行して支払うために、特定期間だけ利用を集中させるケース

 

会計士や税理士と相談すべきポイント

オフバランス型ファクタリングを検討する際には、会計士や税理士などの専門家と事前に相談しておくことが望ましいです。

まず重要なのは、「このスキームが売掛金の消滅要件を満たすのか」「貸借対照表上は売掛金の消滅として処理すべきか、借入金として計上すべきか」という会計処理の判断です。

 

契約書の条文や実際のリスク分担を確認したうえで、金融資産の消滅に関する基準を適用し、オンバランスかオフバランスかを整理してもらう必要があります。

次に、ファクタリング手数料や関連費用の税務上の取り扱いも確認事項です。一般的には、ファクタリング手数料は支払手数料などの勘定科目で損金算入されるケースが多いものの、スキームの内容によっては消費税の課税・非課税の扱いが異なる場合があります。

 

また、オフバランス化により貸借対照表の見え方が変わることで、金融機関や取引先への説明方法にも影響が出るため、決算書の注記や決算説明資料の作り方についても助言を受けておくと安心です。

さらに、中長期的な事業計画との整合性も専門家と確認したいポイントです。短期的な指標改善や資金繰りだけを優先してオフバランス化を進めると、将来的に内部留保の蓄積が追いつかず、自己資本の厚みが不足する可能性があります。

ファクタリングの利用は「一時的な資金ギャップを埋める役割」にとどめるのか、「事業構造の見直しとセットで位置付けるのか」といった位置付けを、第三者の視点を交えて整理することが重要です。

 

専門家と事前に確認したい主な論点
  • 対象スキームが会計基準上オフバランスと認められるか、オンバランスとすべきか
  • ファクタリング手数料・関連費用の会計処理と税務上の取り扱い(損金算入・消費税など)
  • 中長期の事業計画・銀行との関係を踏まえたうえでの、ファクタリングの位置付けと説明方法

 

オフバランス型ファクタリング会社の選び方

オフバランス型のファクタリングを検討する場合、どのファクタリング会社と取引するかによって、会計・税務・与信への影響や実務負担が大きく変わります。

選定の際には、資金化スピードや手数料水準だけでなく、契約内容が会計基準に照らしてわかりやすいか、リスクと経済的利益の分担が明確に整理されているか、といった点が重要です。

 

表面的に「オフバランスを実現できます」とうたっていても、契約書を読むと買戻し義務や広範な保証条項が含まれているケースもあり、その場合は実質的にオンバランス処理となる可能性があります。

また、中小企業が安心して利用するためには、取引実績や運営体制、情報開示の姿勢も確認したいポイントです。

 

具体的には、決算書や会社概要が開示されているか、問い合わせ時の説明が会計・税務を含めて一貫しているか、トラブル事例への対応方針が明確かどうかなどが判断材料になります。

さらに、自社の顧問税理士・会計士と連携しやすいように、契約書案やスキームの説明資料を事前に提供してくれるかどうかも、実務上大きな差になります。

 

最終的には、「短期的な資金ニーズ」と「中長期的な財務戦略・信用力」の両方を踏まえ、自社にとって無理のない条件を提示してくれるファクタリング会社を選ぶことが大切です。

そのためには、複数社から見積もりとスキームの説明を受け、会計・税務面も含めて比較検討するプロセスを踏むことが、オフバランス型ファクタリングを安全に活用するうえでの基本となります。

 

オフバランス型ファクタリング会社選定のチェックポイント
  • 契約書の内容がシンプルで、リスク分担や買戻し義務の有無が明確に示されているか
  • 手数料水準だけでなく、会計・税務面の説明や専門家との連携に前向きか
  • 決算開示や問い合わせ対応など、企業としての透明性と継続性が確認できるか

 

まとめ

ファクタリングで売掛金をオフバランス化すると、貸借対照表の総資産圧縮やROA・自己資本比率の改善が期待できます。

一方で、リスク移転が不十分なスキームや実態に合わない会計処理は、オフバランスと認められないだけでなく、粉飾と評価されるおそれもあります。

自社の資金繰りや財務指標をどう改善したいのかを整理し、ノンリコースの条件や会計基準の要件を専門家と確認しながら、適切なファクタリングの活用方法を検討することが重要です。