建設業で完成工事未収入金が増え、入金遅れで資金繰りが限界に近づいていないでしょうか。元請からの検収・支払サイト、銀行融資や公庫融資の審査、ノンバンク利用の安全性、税金・社会保険料への影響など、不安要素は多くあります。
本記事では、完成工事未収入金の基礎と入金遅れの典型パターン、資金繰り表での管理方法、公的融資やつなぎ資金の考え方、税理士・金融機関・支援機関への相談の進め方までを整理します。
目次
建設業の完成工事未収入金の基礎知識
建設業の決算書には、一般の業種ではあまり見られない「完成工事未収入金」という科目が登場します。
これは、すでに工事が完成し「完成工事高」として売上を計上したにもかかわらず、まだ入金されていない請負代金を表す資産科目です。
一般的な商業簿記でいう「売掛金」とほぼ同じ性格を持ちますが、「工事ごと」「契約ごと」に管理される点が特徴です。
建設業では、着工から引き渡しまでの期間が長く、金額も大口になりやすいため、工事の進捗に応じて「未成工事支出金」「完成工事高」「完成工事未収入金」といった科目を使い分けます。
例えば、期中に材料費・外注費が発生した段階では未成工事支出金として資産計上し、工事が完成したタイミングで工事原価・完成工事高に振り替えます。
そのうえで、代金が後日入金となる場合、その未回収分が完成工事未収入金となります。
- 「完成したがまだ回収していない工事代金」を示す資産科目
- 一般会計の売掛金に相当し、工事ごとに管理するのが基本
- 未成工事支出金・完成工事高など他科目とのつながりを理解すると資金繰りが見えやすくなる
完成工事未収入金の意味と特徴ポイント
完成工事未収入金は、「工事が完成し、引き渡しも終わっているが、請負代金をまだ受け取っていない状態の債権」を表します。
工事完成時点で完成工事高として売上を計上しつつ、入金が翌月以降になる場合、その未回収分を完成工事未収入金として記録します。
工事完成基準を採用している場合、完成時に受注金額を一括で完成工事高に計上するため、大口の完成工事未収入金が発生しやすくなります。
例えば、1,000万円の工事が3月に完成・引き渡しとなり、請求書を発行したものの、入金は5月末とする契約だったとします。
この場合、3月決算では「完成工事高1,000万円」「完成工事未収入金1,000万円」を計上し、実際に5月に入金があった時点で「当座預金1,000万円/完成工事未収入金1,000万円」と振り替えるイメージです。
決算書の上では利益が出ていても、この完成工事未収入金の回収が遅れると、運転資金に使える現金が不足し、資金繰りに影響します。
- 残高が増え続けているときは「入金遅れ」や「請求条件」に問題がないか確認する
- 取引先別・工事別に管理し、回収予定日と実績を追えるようにしておく
売掛金・未成工事支出金との違い比較
完成工事未収入金は、一般会計の売掛金と性質が似ていますが、「工事が完成したタイミングで発生する債権」という点が特徴です。
一方、未成工事支出金は、まだ完成していない工事にかかった材料費・外注費・労務費などを、一時的に資産計上するための科目で、一般会計でいう「仕掛品」に相当します。
違いを整理すると、次のようなイメージになります。
| 科目 | 内容 | 主な発生タイミング |
|---|---|---|
| 売掛金 | 商品販売や役務提供後、代金を後日回収する一般的な債権 | 商品引き渡し・サービス提供時に売上計上したとき |
| 完成工事未収入金 | 完成工事高として計上した工事代金のうち、未回収分の債権 | 工事完成・引き渡し後、請負代金の入金が翌期以降となるとき |
| 未成工事支出金 | 完成前の工事にかかった材料費・外注費・労務費などの原価 | 工事中に費用が発生し、まだ売上を計上していない期間 |
このように、「どの段階の工事に対応するお金か」「売上を計上しているかどうか」によって使う科目が変わります。
完成工事未収入金が多いということは、すでに売上は計上されているものの、現金化していない工事が多い状態ともいえます。
建設業会計と資金繰りのつながりポイント
建設業会計では、工事が完成するまでの間、材料費や外注費、現場作業員の給与などを未成工事支出金として蓄積し、完成時に完成工事原価として振り替えます。
工事完成と同時に完成工事高(売上)を計上し、代金が後日入金となる場合には完成工事未収入金が計上されます。
この一連の流れは、損益計算書の利益と、実際の現金の動きがズレやすい構造を生みます。
例えば、長期工事が同時に複数走っている場合、工事中は未成工事支出金として費用が資産に繰り越されるため、損益計算書の費用は一見少なく見えます。
しかし実際には、材料費や外注費の支払いは先行しており、現金はすでに減っています。
さらに、完成時に大きな完成工事高と完成工事未収入金が計上されても、入金が数か月先であれば、その間の給与や家賃、返済、税金などの支払いを手元資金で賄う必要があります。
- 未成工事支出金=「工事中に先行して出ていったお金」
- 完成工事未収入金=「工事が終わったのに、まだ戻ってきていないお金」
- 両方の残高が大きいときは、資金繰り表で運転資金の不足リスクを確認する
建設業では、これらの勘定科目の動きと資金繰り表を連動させることで、「損益では黒字だが現金が足りない」という状況を早期に把握しやすくなります。
建設業の入金サイトと資金繰りリスク
建設業では、受注から入金までの期間(入金サイト)が長くなりがちです。
一般的には、着工前や着工時に一部の着手金を受け取り、その後は出来高に応じた中間金、工事完成後の残金という形で支払われるケースが多い一方、下請側は材料仕入・外注費・現場の人件費を先に立て替えています。
入金サイトが長いほど、完成工事未収入金や売掛金が積み上がり、決算上は売上・利益が増えても、手元の現金は不足しやすくなります。
特に、元請・大手企業との取引で「検収後◯日払い」などの条件が重なると、売上の増加と同時に資金繰りリスクも高まるため、条件と金額の両面から把握しておくことが重要です。
| 立場 | 典型的な入金サイト | 資金繰り上の注意点 |
|---|---|---|
| 元請 | 発注者から出来高払い・完成後◯日払い | 長期工期では工事中の運転資金をどう確保するかが課題 |
| 下請 | 元請の締日・支払日ベース(検収後◯日など) | 材料費・外注費・人件費の立て替え負担が大きくなりやすい |
出来高検収から請求・入金までの流れ
多くの建設工事では、一定期間ごとや工程の区切りごとに出来高検収を行い、その結果にもとづいて請求・入金が行われます。
現場で出来高を確認し、検収書にサイン・押印をもらってから請求書を発行し、その後、締日・支払サイトに従って入金されるのが一般的な流れです。
この一連のプロセスのどこかで遅れが生じると、完成工事未収入金の残高が膨らみ、資金繰りに影響します。
特に、検収書の回収が遅れたり、追加・変更工事分の協議が長引くと、請求書を発行できないまま工事だけが進んでいく状況になりかねません。
現場と本社・経理の連携が弱い場合、「工事は終わっているのに請求が出せていない」というロスも起こりやすくなります。
- 現場で出来高を確認し、検収書を受領する
- 検収内容にもとづいて請求書を作成・送付する
- 取引先の締日・支払サイトに従って入金される
完成工事未収入金が増える典型パターン事例
完成工事未収入金が増えていく典型的なパターンとしては、まず「大型工事・長期工事が増えているが、中間金や出来高払いの条件が弱い」というケースが挙げられます。
工期中の支出(材料費・外注費・人件費)が増える一方、入金は完成後に一括という条件だと、完成工事未収入金と未成工事支出金の両方が膨らみやすくなります。
また、元請や発注者からの検収・支払が慢性的に遅れがちで、請求どおりの期日に入金されないことが常態化している場合も、完成工事未収入金が積み上がる要因になります。
さらに、追加・変更工事の合意が書面で残されておらず、工事は完了しているのに請求額の確定が遅れているパターンもあります。
この場合、工事原価はすでに出ているにもかかわらず、請負代金が確定しないため請求・入金が後ろ倒しになり、資金繰り上の負担が増していきます。
- 大型工事で中間金・出来高払いの条件が弱いまま受注している
- 検収・支払が慣習的に遅れる取引先の比率が高い
- 追加・変更工事の書面合意が遅れ、請求額の確定が後ろ倒しになっている
入金遅れが資金ショートに直結する注意点
入金遅れは、単に「回収が遅くなる」だけでなく、資金ショートに直結するリスクを持ちます。建設業では、材料仕入・外注費・職人の賃金・現場管理費・リース料など、多くの支出が毎月発生します。
完成工事未収入金が増え、入金が予定より1〜2か月遅れると、その間の支払いを他の現金や借入で賄わざるを得なくなり、銀行残高が急減したり、短期借入への依存が高まるおそれがあります。
また、税金や社会保険料、借入金の返済日は法律や契約であらかじめ決まっており、入金遅れが重なるとこれらの支払いに影響する可能性もあります。
資金ショートを避けるには、完成工事未収入金や主要な売掛金について、「誰から・いつ・いくら入金される予定か」を資金繰り表に落とし込み、遅延が発生したときの代替策(つなぎ資金、公的融資の検討、支払サイト交渉など)を早めに検討しておくことが大切です。
- 完成工事未収入金の工事別・取引先別の明細を確認する
- 遅延が発生した場合の資金繰りへの影響額と時期を試算する
- 資金不足が予想される場合は、早めに金融機関や専門家へ相談する
下請・元請の契約と回収条件見直し
建設業の資金繰りでは、「仕事を取れるかどうか」だけでなく、「どの条件で受注するか」が大きな分かれ目になります。
特に下請の立場では、元請から提示される注文書や請負契約書の支払条件が、そのまま資金繰りに直結します。
着手金があるか、出来高払いがあるか、検収から支払日まで何日空くか、といった条件次第で、同じ売上でも必要な運転資金の水準は大きく変わります。
一度締結した契約であっても、継続取引の中で条件が実情と合わなくなっていることもあります。完成工事未収入金が増え続けている場合は、工事ごとの採算だけでなく、「契約と回収条件そのもの」を見直すタイミングに来ている可能性があります。
- 完成工事未収入金の増加を抑え、入金タイミングを前倒しする
- 材料費・外注費の立て替え負担を軽くし、運転資金の山を減らす
- 追加・変更工事も含めて、請求漏れ・請求遅れを防ぐ
注文書・請負契約書で確認したいポイント
資金繰りの観点から契約内容を見直す際は、まず注文書・請負契約書に記載されている基本条件を一つずつ確認することが重要です。
工期や請負金額だけでなく、「いつ検収され、いつ請求でき、いつ入金されるのか」という時間軸に注目します。
また、追加・変更工事の扱いや、出来高払いが可能かどうかの条項も、完成工事未収入金の増減に大きく影響します。
- 工期・引き渡し時期:工期が長期化するほど運転資金負担が増えるため、中間金条項の有無を確認する
- 支払条件:締日・支払日、検収日から支払日までの日数、振込手数料負担など
- 前払金・着手金:発注者からの前払金があるか、その割合と返還条件
- 出来高払い・部分払い:どの工程でどの程度の割合を請求できるかのルール
- 追加・変更工事:見積・合意・請求の手順が書面で定められているか
- 遅延時の扱い:工期遅延・検収遅延・支払遅延のときの取り扱い
これらの条件を工事台帳や資金繰り表と照らし合わせることで、「どの取引先・どの契約が資金繰りを圧迫しているか」を具体的に把握しやすくなります。
出来高払い・部分払い交渉の進め方ポイント
完成後一括払いの契約が多いと、工事期間中の材料費や外注費、人件費の立て替え負担が重くなります。
そのため、可能であれば出来高払い・部分払いの導入を元請や発注者に相談することも選択肢になります。
交渉にあたっては、「資金繰りが苦しいから」という訴えだけでなく、工事の進捗管理や品質確保にもつながる仕組みとして提案することがポイントです。
具体的には、工程ごとに区切った出来高の目安や、検収のタイミング、請求・支払スケジュール案を事前に整理し、「この工程まで完了したら何%を請求する」といった形で示すと、相手も判断しやすくなります。
元請側にとっても、適切な出来高管理は工事全体の見える化につながるため、双方にメリットのある提案として説明することが大切です。
- 工程表と連動した出来高の区切り方を事前に整理しておく
- 品質・安全管理の報告とセットで出来高検収を提案する
- 一度に大きく変えるのが難しい場合は、まず中間金の設定から相談する
支払サイトと前受金条件の比較チェック
支払サイト(検収から入金までの日数)と前受金・着手金の有無は、完成工事未収入金と運転資金の水準を左右する重要な要素です。
例えば、「前受金なし・完成後90日払い」の条件と、「請負金額の20%前受金・中間金あり・残金60日払い」の条件では、必要となる運転資金の額が大きく異なります。
複数の取引先・案件を比較し、自社にとって負担の大きい条件がどこに集中しているかを把握することが、交渉や取引見直しの出発点になります。
| 条件例 | 資金繰りへの影響 | 見直し検討のポイント |
|---|---|---|
| 前受金なし・完成後90日払い | 工事中の立て替え負担が最大。完成後も長期間資金が戻らない | 出来高払い・中間金の導入、支払サイト短縮を相談できないか検討 |
| 前受金20%・完成後60日払い | 着工時の負担は軽減されるが、工事中〜完成後の資金需要は依然大きい | 前受金割合の維持・拡大、中間金の追加などを検討 |
| 前受金+出来高払い+残金支払い | 工事進捗に応じて資金が戻るため、運転資金の山が平準化しやすい | 他の取引でも同様の条件を提案できないか、交渉余地を探る |
支払サイトや前受金条件は、すぐにすべてを改善できるとは限りませんが、「どの案件・どの取引先が資金繰り上のボトルネックか」を可視化し、優先順位をつけて交渉・見直しを進めることで、完成工事未収入金の増加を抑えやすくなります。
完成工事未収入金と資金繰り管理方針
完成工事未収入金を単に「売掛金の一種」として残高だけ見るのではなく、「どの工事で・いつ・いくら回収する予定なのか」を工事台帳とひも付けて管理することが大切です。
工事台帳には、受注金額・原価・粗利だけでなく、請求日・入金予定日・入金実績も記録し、資金繰り表と同じ時間軸で確認できるようにしておくと、完成工事未収入金の増減が資金繰りに与える影響を把握しやすくなります。
さらに、完成工事未収入金が多い工事は、採算が良くても短期的には資金を多く必要とするため、「利益が出る工事」と「資金繰りが楽な工事」をバランスよく受注する視点も重要です。
工事別の採算管理と資金繰り管理を切り離さず、「利益」と「キャッシュフロー」をセットで確認する方針づくりが、建設業の黒字倒産を防ぐ基礎になります。
- 工事台帳と完成工事未収入金の残高を工事単位でひも付ける
- 請求日・入金予定日・入金実績を台帳に記録する
- 利益と資金繰りを同じスパン(月次・四半期など)で確認する
工事台帳と完成工事未収入金の管理ポイント
工事台帳は、各工事の売上・原価・利益を把握するための基本資料ですが、完成工事未収入金の管理という視点を加えることで、資金繰りの改善にも役立つツールになります。
具体的には、工事台帳に「請求済額」「未収残高」「入金予定日」「入金実績日」といった項目を設け、完成工事未収入金の内訳と回収状況がひと目で分かるようにすることがポイントです。
例えば、同じ取引先でも、工事ごとに入金の早い案件・遅い案件が分かれていることがあります。
工事台帳と完成工事未収入金の一覧を並べて確認することで、「どの案件が恒常的に入金遅れを起こしているのか」「請求漏れ・請求遅れがないか」を早めに発見できます。
- 請求済額・未収残高(工事別・締め日別)
- 請求書発行日・入金予定日・入金実績日
- 入金遅れ日数(予定日からのズレ)
これらを定期的にチェックすることで、完成工事未収入金の「金額」だけでなく、「滞留期間」や「傾向」も把握でき、資金繰り対策や取引条件の見直しにつなげやすくなります。
工事別採算と資金繰り表の連動チェック
工事別採算が黒字でも、資金繰りが厳しくなるケースは少なくありません。原因の一つは、「工事別の損益」と「入出金のタイミング」が分断されて管理されていることです。
工事台帳で利益だけを見ていると、工事完了時点での粗利率にばかり目が行き、工事期間中にどれだけ資金を先行投入したか、入金がどれだけ先送りになっているかが見えにくくなります。
そこで有効なのが、工事別採算表と資金繰り表を連動させて確認する方法です。
具体的には、工事台帳に記載された請求・入金予定を資金繰り表へ反映し、「この工事の受注で、どの時期にどれだけ資金が必要になるか」「複数工事が重なったときに資金の山がどこに来るか」を試算します。
| 視点 | 工事別採算表 | 資金繰り表 |
|---|---|---|
| 目的 | 工事ごとの利益・原価構成を把握する | 月次・週次の現金残高と不足時期を把握する |
| 主な項目 | 受注金額、原価、粗利、粗利率 | 期首残高、入金(売掛・前受)、出金(仕入・人件費・返済など) |
| 連動のポイント | 請求・入金予定を明記し、資金繰り表に転記する | 工事ごとの入金・原価支払いの時期を意識してシミュレーションする |
こうして連動チェックを行うことで、「利益は出るが資金繰り負担が大きい工事」と「利益は小さいが資金繰りが安定する工事」を見極めやすくなり、受注方針や見積時の条件検討にも活かせます。
入金遅れを織り込んだ資金繰りシミュレーション
資金繰り表を作成する際には、「予定どおり入金される」前提だけでなく、「もし入金が1か月遅れたら」「予定額を下回ったら」といったシナリオも織り込んでシミュレーションしておくことが重要です。
特に完成工事未収入金の割合が高い場合、大口案件の入金が1か月ずれるだけで、給与・外注費・支払い税金などの資金手当てに影響する可能性があります。
実務では、通常ケースに加えて「入金遅延ケース」「売上一時減少ケース」などを作り、各ケースごとの月末現金残高を比較します。
資金残高がマイナスになったり、最低限確保したい安全資金を大きく下回る月が出てくる場合は、その前の段階で追加の資金調達や支払条件の見直しを検討する目安になります。
- 完成工事未収入金の大きい工事の入金が1〜2か月遅れた場合の影響額
- 売上が一時的に減少したときに、固定費を何か月支払えるか
- 資金不足が予想される月に向けて、いつまでにどの程度の資金確保が必要か
こうしたシミュレーションを定期的に行うことで、「資金ショートが起きてから対応する」のではなく、「起きる前に手を打つ」体制づくりにつながります。
完成工事未収入金が多い建設業だからこそ、入金遅れを前提にした資金繰り管理が重要になります。
入金遅れ発生時の資金調達と相談先
完成工事未収入金の入金遅れが発生すると、現場の材料仕入・外注費・人件費、さらに本社の家賃や借入返済、税金・社会保険料などの支払いをどのように回すかが問題になります。
まずは資金繰り表で「いつ・いくら不足しそうか」を把握し、そのうえで公的融資や短期のつなぎ資金、売掛債権の早期資金化など、どの手段を組み合わせるかを検討する流れが基本です。
同時に、入金側だけでなく支払側も見直し、仕入先や外注先への支払サイトの調整、在庫・経費の圧縮など「自社でできる対策」と「外部からの資金調達」をセットで考えることが重要です。
金融機関や税理士・公的支援機関には、資金繰り表や工事台帳を持参し、単発の資金手当てではなく、中長期の返済可能性も含めて相談していく姿勢が求められます。
- まず資金繰り表で不足額と時期を数値で把握する
- 自社内の対策と外部からの資金調達を並行して検討する
- 公的融資・つなぎ資金・早期資金化のメリットと負担を比較する
公的融資やつなぎ資金を検討する基準
公的融資(日本政策金融公庫や信用保証協会付き融資など)や、金融機関の短期借入・当座貸越といったつなぎ資金は、完成工事未収入金の入金遅れが一時的なものか、構造的なものかによって検討の仕方が変わります。
工事別採算や今後の受注見込みから見て「収益性はあるが入金タイミングが遅いだけ」という場合は、運転資金としての公的融資や短期つなぎ資金を検討する余地があります。
一方で、慢性的に赤字が続いている場合や、返済原資となる利益のメドが立たない場合は、借入を増やす前に事業やコスト構造の見直しが必要になります。
また、どの程度の期間・金額の資金が必要なのか、自己資金や社内対策でどこまで吸収できるかも重要な基準です。
資金繰り表をもとに「不足額」「不足期間」を数値で示し、それに見合った融資期間・返済条件を検討します。
公的融資は比較的低金利とされる一方、審査や手続きに一定の時間を要することが多いため、早めの準備が前提になります。
- 資金不足が一時的か、構造的か(返済原資の見込みがあるか)
- 不足する金額と期間(いくらを何か月程度カバーしたいのか)
- 自社のコスト削減や支払条件見直しなどの対策を並行しているか
- 審査期間を踏まえ、資金ショート前に相談・申込が間に合うか
完成工事未収の早期資金化活用の注意点
完成工事未収入金や売掛金をもとにした「早期資金化」の手段としては、売掛債権を譲渡して資金を受け取るファクタリングや、売掛金・工事代金債権を担保とする融資(売掛債権担保融資、ABLなど)が利用されることがあります。
入金遅れが続き、短期的に資金を確保したい場面では選択肢の一つになり得ますが、いずれも手数料や金利、契約条件の確認が欠かせません。
例えば、ファクタリングは「売掛先の信用力」を重視する仕組みで、手数料が数%〜十数%程度かかるケースもあります。
債権譲渡を売掛先に通知する方式の場合、取引先との関係性への影響も考える必要があります。売掛債権担保融資等では、借入である以上、元本返済と利息支払いが発生します。
| 手段 | 主な特徴 | 確認したいポイント |
|---|---|---|
| ファクタリング | 売掛債権を売却して資金化。入金期日前に現金を得られる | 手数料率、売掛先への通知有無、契約期間・最低利用額など |
| 売掛債権担保融資等 | 売掛金を担保に金融機関等から融資を受ける | 金利・保証料、借入期間、返済方法、担保設定の範囲 |
早期資金化は「短期的な資金繰りの谷」を乗り切るための手段として位置づけ、常態化させないことが重要です。
利用前には、総コストや返済負担を資金繰り表でシミュレーションし、公的融資や支払条件見直しと比較検討したうえで判断することが望ましいといえます。
税理士・金融機関・支援機関への相談ポイント
入金遅れが発生し、完成工事未収入金が増えている状況では、経営者だけで抱え込まず、顧問税理士や金融機関、商工会・商工会議所、中小企業支援機関などに早めに相談することが重要です。
相談を有効なものにするためには、「何となく不安」というレベルではなく、工事別・取引先別の完成工事未収入金の明細や、3か月〜半年先までの資金繰り表、借入残高一覧などを準備しておくと、具体的な助言を受けやすくなります。
税理士には、工事別採算や利益計画と資金繰りのつながりを見てもらい、金融機関向けの資料作成や公的融資の検討について相談します。
金融機関には、現状の資金繰りと今後の事業計画を説明し、短期のつなぎ資金や既存融資の条件見直し、公的制度の活用の可能性などを確認します。
公的な支援機関では、資金調達だけでなく、取引条件見直しや経営改善のアドバイスを受けられることもあります。
- 直近の決算書・月次試算表・工事台帳(主要工事分)
- 完成工事未収入金・売掛金の工事別・取引先別一覧
- 3〜6か月先までの資金繰り表と、資金不足が予想される月
- 借入残高一覧(金融機関別・金利・返済条件など)
これらの資料をもとに、短期の資金繰り対策とあわせて、中長期の返済計画や受注方針の見直しも議論していくことで、完成工事未収入金の入金遅れに左右されにくい体制づくりにつながります。
まとめ
本記事では、完成工事未収入金の意味と建設業特有の入金サイト構造、入金遅れが資金ショートにつながるリスク、契約書での支払条件見直しのポイント、工事台帳と資金繰り表を連動させる管理の考え方、公的融資やつなぎ資金・専門家相談の方向性を整理しました。
まずは工事別の売上・完成工事未収・入金予定を一覧化し、3か月先までの資金繰りを確認しましょう。
そのうえで必要資金と時期を把握し、候補となる資金調達手段を比較しながら、税理士や金融機関・支援機関に相談し、中長期の返済計画と事業計画を一体で検討していくことが重要です。






















