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ファクタリング契約の基本と流れ|必要書類・注意点10のポイントをやさしく解説

ファクタリングを検討しているものの、「契約書のどこを見ればよいか分からない」「流れや必要書類が不安」という声は少なくありません。この記事では、ファクタリング契約の基本構造から、契約までの流れ、契約書で確認すべき重要ポイント、安全な会社の選び方までをやさしく整理します。

銀行融資が難しい場合の選択肢として、仕組みと注意点を押さえたうえで、納得して契約するための基礎資料として活用できます。

 

ファクタリング契約の基本知識ポイント

ファクタリング契約を理解するには、まず「何の権利を、誰から誰へ移す契約なのか」を押さえることが大切です。

ファクタリングは、利用者(売掛金を持っている企業)が、取引先に対する売掛債権(将来の代金を受け取る権利)をファクタリング会社へ譲渡し、その対価として期日前に現金を受け取る仕組みです。法的には、売掛債権の譲渡(債権譲渡)の一種として位置付けられます。

 

 

契約書の中では、どの売掛債権を対象にするか(対象債権の範囲)、いくらで買い取るか(買取金額・手数料)、いつ資金が入金されるか(支払期日・入金日)、万一回収できなかった場合の扱い(償還請求権の有無)などが、条文という形で具体的に決められます。

一般的には、土台となる「基本契約書」を最初に締結し、その後の取引ごとに「個別契約書」で請求書単位の条件を確認する二段構えの契約構造が採られます。

 

また、ファクタリング契約には、利用者とファクタリング会社の2者で行う「2社間ファクタリング」と、取引先も含めた「3社間ファクタリング」があり、それぞれ通知方法や必要な手続きが異なります。

2社間では取引先に知らせずに資金化できる一方、債権譲渡登記で権利を公示することが多く、3社間では取引先への債権譲渡通知・承諾を前提に、登記を省略できるケースが一般的です。

 

買取のほかに、売掛金の貸倒れリスクをカバーする「保証型ファクタリング」もあり、資金調達手段というよりは保険に近い位置付けになります。

こうしたスキームの違いにより、契約書の条文や費用項目も変わるため、「どの方式のファクタリング契約なのか」を最初に確認することが重要です。

 

項目 内容
当事者 利用者(売掛債権の元の持ち主)、ファクタリング会社、取引先(売掛先)
契約の性質 売掛債権を譲渡し、ファクタリング会社が代金を支払う債権譲渡契約
基本契約書 取引全体の枠組みやルールを定める契約(手数料計算方法、通知方法など)
個別契約書 取引ごとの請求書、買取金額、入金日などを定める契約
主な論点 2社間/3社間、買取型/保証型、償還請求権の有無、債権譲渡登記の有無など

 

ファクタリング契約とは何か

ファクタリング契約とは、利用者が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、その代わりに債権額面から手数料を差し引いた金額を受け取ることを定めた契約です。

ここでいう売掛債権とは、掛取引で発生する「将来、取引先から代金を受け取る権利」を指します。ファクタリングの目的は、支払期日を待たずに売掛金を現金化し、資金繰りを安定させることです。

 

契約書の内容を法律的に見ると、多くのケースで「売掛債権の譲渡契約」として構成されます。利用者は売掛債権の譲渡人、ファクタリング会社は譲受人にあたり、期日前に代金を支払う代わりに、将来の取引先からの入金を受け取る立場に移ります。

債権譲渡である以上、同じ売掛債権を複数の相手に譲渡してしまう「二重譲渡」を防ぐ仕組みや、誰が真正の債権者なのかを第三者に示すための手続き(債権譲渡登記や債務者への通知)が重要になります。

 

また、ファクタリング契約は、一般的な融資契約(貸付契約)とは目的とリスクの分担が異なります。融資では、利用者が借りた資金を返済する義務があり、返済できない場合には債務不履行となります。

一方、ファクタリングでは、売掛債権を売却することで、基本的にはその債権に関する回収リスクをファクタリング会社に移転させる構造が一般的です(ノンリコース型)。

ただし、契約の内容によっては、一定の場合に利用者が負担を負う「償還請求権あり(ウィズリコース)」の形態もあり、条文の確認が欠かせません。

 

ファクタリング契約の基本イメージ
  • 売掛債権をファクタリング会社へ譲渡し、期日前に現金を受け取る契約
  • 融資ではなく「債権の売買」であり、契約上の権利が移転する取引
  • 償還請求権の有無など、リスクの分担方法を契約書で確認することが重要

 

2社間契約と3社間契約の違い

ファクタリング契約は、「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」に大別されます。2社間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社の2者だけで契約を結び、取引先にはファクタリング利用の事実を通知しない方式です。

売掛金は支払期日にいったん利用者の口座に入金され、その後利用者からファクタリング会社へ送金する流れが一般的です。

取引先に資金繰りの事情を知られにくい一方、ファクタリング会社は回収リスクを負うため、債権譲渡登記を求めることや、手数料を高めに設定することがあります。

 

3社間ファクタリングは、利用者・ファクタリング会社・取引先の3者が関与する契約です。利用者が債権を譲渡したことを取引先に通知し、取引先は支払期日にファクタリング会社へ直接支払います。

この場合、ファクタリング会社は取引先から直接回収できるため、債権譲渡登記を行わず、通知と承諾で権利関係を明確にするケースが一般的です。

 

どちらの方式を選ぶかは、「取引先に知られたくない」「手数料を抑えたい」「取引先との関係をどこまでオープンにできるか」といった実務上の事情によって変わります。

2社間では匿名性を保ちやすい代わりに、登記費用や手数料負担が相対的に大きくなりがちです。3社間では、取引先への通知により関係性への影響が懸念されるものの、契約構造がシンプルで、手数料やリスク負担を抑えやすい傾向があります。

 

項目 2社間ファクタリング 3社間ファクタリング
当事者 利用者+ファクタリング会社 利用者+ファクタリング会社+取引先
取引先への通知 原則として行わない 債権譲渡通知・承諾が前提
回収方法 取引先→利用者→ファクタリング会社 取引先→ファクタリング会社へ直接支払い
債権譲渡登記 求められるケースが多い 通知・承諾により不要なケースが多い

 

2社間・3社間を選ぶときの注意点
  • 取引先への通知の有無と、関係性への影響を事前に検討する
  • 債権譲渡登記の有無と、その費用・手間を確認する
  • 手数料やリスク負担が方式によってどう変わるかを比較する

 

買取型と保証型のしくみ

ファクタリングには大きく分けて「買取型ファクタリング」と「保証型ファクタリング」があります。買取型は、利用者が持つ売掛債権をファクタリング会社が買い取り、手数料を差し引いた金額を期日前に支払う方式です。

支払期日が来る前に資金化できることから、一般的に「ファクタリング」といえば買取型を指す場合が多く、資金調達手段として位置付けられています。

 

これに対して保証型ファクタリングは、売掛債権の貸倒れリスクを軽減することを主目的としたサービスです。利用者は自社の売掛債権について保証を依頼し、ファクタリング会社は売掛先の信用調査を行ったうえで、保証限度額や保証料を設定します。

その後、取引先が倒産するなどして売掛金が回収不能になった場合に、保証限度額の範囲内で保証金が支払われる仕組みです。

利用者の手元に資金が先に入るわけではないため、日常的な資金調達というよりは、万一に備えるリスクヘッジに近い性格を持ちます。

 

会計・税務上も、買取型と保証型では位置付けが異なります。買取型では売掛債権を売却し、手数料は金融費用などとして処理されるのが一般的です。

一方、保証型では、保証料を保険料や支払手数料として費用計上し、実際に貸倒れが発生した場合に保証金を受け取る、という形で処理されます。いずれの場合も、具体的な勘定科目の選択は会計基準や税務実務に従って判断します。

 

区分 買取型ファクタリング 保証型ファクタリング
目的 売掛金の早期現金化による資金調達 売掛金の貸倒れリスクの軽減
資金入金タイミング 契約時に売掛金が現金化される 貸倒れ発生時に保証金が支払われる
費用 買取手数料など 保証料など

 

買取型と保証型を使い分ける視点
  • 日常的な資金調達が目的なら「買取型」を検討する
  • 大口取引の貸倒れに備えたい場合は「保証型」を検討する
  • 自社の資金繰りとリスク許容度に合わせて、両者を組み合わせることも選択肢になる

 

基本契約と個別契約の関係

ファクタリング取引は、継続的に複数の請求書を売却することが多く、その都度すべての条文を一から取り決めるのは非効率です。

このため、まず取引全体の枠組みを定める「基本契約書」を締結し、その上で、請求書ごとの条件をまとめた「個別契約書」を都度締結するのが一般的な構成です。

基本契約書では、契約の目的、対象とする債権の範囲、手数料の計算方法、通知・登記の方法、反社排除条項、解除・終了条件など、共通ルールが整理されます。

 

一方、個別契約書は、実際に買取対象とする請求書を特定し、その額面金額、買取金額、手数料、入金予定日などを明記する文書です。

基本契約書のルールに従いつつ、個々の取引内容を具体化する役割を持ちます。たとえば、同じ取引先への請求書であっても、支払期日や額面金額が異なれば、手数料率や買取金額も変わることがあるため、それぞれを個別契約書で確認します。

 

実務上は、基本契約書で定められた条件が優先され、個別契約書で特に別段の定めを置く部分だけが上書きされる構造になっていることが多く見られます。

そのため、初回の契約時には基本契約書の内容を丁寧に確認し、後続の個別契約書で変更・追加される条項の有無にも注意することが大切です。

特に、償還請求権の有無や取引先への通知方法、債権譲渡登記の要否などは、基本契約と個別契約のどちらにどのように記載されているかを確認する必要があります。

 

契約の種類 主な内容
基本契約書 取引全体のルール(対象債権の範囲、手数料計算方法、通知・登記の方針、反社排除、解除条件など)
個別契約書 各請求書ごとの額面金額、買取金額、手数料、入金日など具体的な条件

 

基本契約と個別契約を確認するポイント
  • 基本契約書で共通ルールがどう定められているかを把握する
  • 個別契約書で、どの請求書がどの条件で対象になっているかを確認する
  • 償還請求権や通知・登記など重要条項がどちらの契約に書かれているかをチェックする

 

ファクタリング契約の流れ

ファクタリング契約は、思いつきで申し込んでその場で決まるものではなく、準備→申込・審査→契約締結→入金→契約後フォローという流れで進みます。

2社間ファクタリング・3社間ファクタリングいずれの場合も、大まかなステップは共通しており、「どの段階で何を求められるのか」を事前に把握しておくことで、不要な差し戻しや時間ロスを減らすことができます。

具体的には、契約前に決算書や登記事項証明書、請求書などの必要書類をそろえ、自社の資金ニーズと売掛債権の内容を整理したうえで、ファクタリング会社に相談・申込を行います。

 

その後、ファクタリング会社が売掛先の信用状況や取引実績を中心に審査を行い、手数料・買取金額・入金予定日などの条件を提示します。

条件に納得できれば、基本契約書・個別契約書などの締結に進み、必要に応じて債権譲渡登記や取引先への通知を行ったうえで、買取代金が入金される流れです。

 

2社間ファクタリングでは、売掛金は一度利用者の口座に入金され、その後ファクタリング会社へ支払う形が一般的です。

3社間ファクタリングでは、売掛先からファクタリング会社に直接支払われるため、取引先への債権譲渡通知・承諾が重要なステップになります。

契約後も、入金状況の報告や追加の買取依頼など、継続的なコミュニケーションが必要です。

 

【ファクタリング契約の基本的な流れ】

  1. 契約前の準備(必要書類・対象債権・資金ニーズの整理)
  2. ファクタリング会社への相談・申込と書類提出
  3. ファクタリング会社による審査(売掛先・取引実績の確認など)
  4. 審査結果と条件提示の確認
  5. 基本契約書・個別契約書の締結、必要に応じ債権譲渡登記・通知
  6. 買取代金の入金と、その後の回収・送金や報告などのフォロー

 

契約前に準備すること

契約前の準備段階では、「何をいくら、いつまでに資金化したいか」と「その裏付けとなる資料」を具体化しておくことが重要です。

ファクタリング会社は、売掛債権の実在性と回収可能性を確認するため、請求書や取引基本契約書のほか、登記事項証明書や決算書、試算表、通帳の入出金明細などの提出を求めるのが一般的です。

あらかじめこれらを整理しておくことで、申込後の差し戻しや再提出を減らせます。また、「どの売掛先のどの請求書を対象にするか」を社内で明確にしておくことも欠かせません。

 

売掛先が特定の金融機関との間で譲渡制限条項を設けている場合や、自社が既存の融資契約で債権譲渡を制限されている場合など、契約上ファクタリング利用に制約があるケースもあります。

既存の借入契約書や取引基本契約書の中に「譲渡禁止」「担保提供禁止」などの文言がないかを事前に確認し、必要に応じて顧問税理士・弁護士等に相談しておくと安心です。

 

さらに、ファクタリング会社の選定も契約前準備の一部です。金融庁は、ファクタリングを装った高金利貸付への注意喚起を行っており、債権額に比べて買取代金が著しく低額な事案などには注意が必要としています。

登録状況や実績、手数料の考え方、説明の丁寧さなどを複数社で比較し、自社の条件に合う会社を選ぶことが、後のトラブル防止につながります。

 

準備書類 主な内容・目的
商業登記簿謄本(登記事項証明書) 会社の基本情報や代表者を確認するための公的書類
決算書・試算表 売上規模や財務状況、継続性を確認するための資料
請求書・取引基本契約書 売掛債権の内容や取引条件(支払サイトなど)の確認
通帳の入出金明細 実際の入金実績や資金繰りの状況の確認

 

契約前に押さえておきたい準備ポイント
  • 対象とする売掛債権と資金化したい時期・金額を具体化する
  • 必要書類(登記事項証明書・決算書・請求書など)を事前に整理する
  • 既存の融資契約や取引条件に譲渡制限がないかを確認する

 

申込から審査までの流れ

申込は、電話やWebフォームからファクタリング会社に相談し、見積もり依頼を行うところから始まります。

その際、売掛先の名称・請求予定額・支払期日・希望する資金化日などの基本情報を伝え、概算の手数料水準や、必要となる書類の案内を受けるのが一般的です。

 

そのうえで、指定された書類一式(登記事項証明書、決算書、請求書、入出金明細など)を提出し、正式な申込となります。

提出された書類をもとに、ファクタリング会社が審査を行います。審査の中心は、利用者自身の財務状況だけでなく、売掛先の信用状況やこれまでの入金実績です。

 

売掛先の企業情報(業種・規模など)や支払遅延の有無、取引の継続期間などが確認され、2社間ファクタリングでは特に、債権譲渡登記の要否や反社チェックなどもあわせて行われます。必要に応じて、追加資料の提出や質問への回答を求められることもあります。

3社間ファクタリングの場合は、審査の一環として、取引先に対して債権譲渡の承諾を得るステップが組み込まれることが多く、2社間に比べて資金調達までの時間が長くなる傾向があります。

 

一方、取引先から直接回収できるため、審査の通過率や手数料水準が有利になりやすいとされています。

いずれの場合も、審査結果は電話やメールで通知され、手数料率や買取可能額、入金予定日などの条件が提示されます。

 

申込〜審査で意識したいポイント
  • 初回相談時に、希望額・希望時期・対象債権を具体的に伝える
  • 売掛先の信用力や入金実績が審査の中心になることを理解しておく
  • 2社間と3社間で、審査にかかる時間や確認事項が変わる点を把握する

 

契約締結から入金までの流れ

審査に通過し、提示された条件に納得したら、契約締結に進みます。一般的には、まず取引全体のルールを定めた基本契約書を締結し、その後、買取対象とする請求書ごとに個別契約書を取り交わします。

契約書には、対象となる売掛債権の内容(売掛先・請求額・支払期日)、買取金額、手数料、入金予定日、償還請求権の有無、債権譲渡登記や通知の方法などが明記されます。

必要に応じて、契約書への署名・押印や、印紙税の貼付などの手続きも行われます。

 

2社間ファクタリングでは、契約締結後、ファクタリング会社が買取金額を利用者の口座に振り込みます。

支払期日が来ると、取引先から売掛金が利用者の口座に入金され、その中からファクタリング会社への支払いを行う形になります。

 

3社間ファクタリングでは、債権譲渡通知または3者間での合意に基づき、取引先がファクタリング会社に直接入金する流れとなり、その前提として取引先の承諾取得が重要なステップになります。

また、2社間ファクタリングでは、同じ売掛債権が二重に譲渡されるリスクを避けるため、債権譲渡登記が行われるケースが多く見られます。債権譲渡登記の申請は法務局で行われ、登記完了後は債権譲渡登記事項証明書を取得できます。

登記は、第三者に対して「誰が債権の正当な権利者か」を主張するための重要な制度であり、特に2社間スキームでは契約の安全性を高める役割を担っています。

 

契約〜入金で確認したい事項
  • 基本契約書・個別契約書に記載された対象債権・手数料・入金日の内容
  • 2社間か3社間かによる、入金経路(自社経由か直接ファクタリング会社か)の違い
  • 債権譲渡登記や通知が必要か、その費用負担者と手続き方法

 

契約後に必要なフォロー

契約後も、売掛金の回収状況や追加の買取希望などについて、ファクタリング会社とのコミュニケーションを継続する必要があります。

2社間ファクタリングでは、取引先から売掛金が入金された後、契約に沿って速やかにファクタリング会社へ送金することが求められます。

 

入金が遅れた場合や、取引先の支払条件が変更になった場合には、状況を共有し、契約条件との整合を確認することが重要です。

3社間ファクタリングでは、取引先からファクタリング会社に直接支払いが行われるため、売掛金の回収フロー自体はシンプルになりますが、取引先との関係維持や今後の取引条件への影響も含めてフォローが必要です。

 

また、新たな売掛債権について追加で買取を依頼する場合には、既存の基本契約に基づいて新たな個別契約を締結することになり、そのたびに請求書や契約書の写しなどを提出します。

さらに、ファクタリングの利用状況は、資金繰り管理や金融機関との関係にも影響します。利用頻度や手数料総額、資金繰り改善効果などを自社でモニタリングし、「短期的な資金繰り対策」として適切な範囲に収まっているかを定期的に点検することが望ましいといえます。

金融庁も、ファクタリングを装った高コストの取引に注意を促しているため、契約条件の見直しや必要に応じた乗り換えも含めて、継続的な管理が重要です。

 

契約後フォローで意識したいポイント
  • 入金状況とファクタリング会社への支払い状況を自社で管理する
  • 取引先の条件変更や支払遅延があった場合、速やかに情報共有する
  • 利用頻度・手数料総額・資金繰りへの効果を定期的に振り返る

 

契約書で確認したい重要ポイント

ファクタリング契約書には、資金繰りに直結する条件と、リスクの分担を左右する条項がまとまっています。

なかでも、手数料と入金タイミング、償還請求権(リコース)の有無と範囲、債権譲渡通知の扱い、債権譲渡登記の要否と費用負担は、実務上の影響が大きいポイントです。

 

金融庁も、債権額に比べて著しく低い買取代金や、過度な償還請求権・買戻請求権が付された契約について「ファクタリングを装ったヤミ金融」の可能性に注意を促しており、契約書の読み込みが重要であることを示しています。

また、法人の金銭債権を譲渡する場合、債権譲渡登記制度を利用して、債務者以外の第三者に対する対抗要件(誰が真正の権利者かを主張できる要件)を備えることができます。

2社間ファクタリングでは登記を行うケースが多く、その費用負担者を契約書でどう定めているかが実質コストに直結します。

 

一方、3社間では債権譲渡通知と取引先の承諾によって対抗要件を備えるのが一般的であり、通知方法や文面の扱いが契約書で整理されています。

こうした条件は、いずれも「いくら調達できるか」だけでなく、「最終的にいくら残るのか」「どこまで責任を負うのか」「取引先との関係にどんな影響があるのか」といった点に関わります。

契約前に、重要条項ごとに自社の受け止め方を整理し、不明点があれば必ず事前に質問しておくことが、トラブル回避につながります。

 

確認項目 主なチェック内容
手数料・入金日 買取率、手数料の内訳、入金予定日の明記
償還請求権 有無だけでなく、どのケースで負担が生じるか
通知・登記 取引先への通知方法、債権譲渡登記の要否・費用者

 

手数料と入金タイミング

契約書でまず押さえたいのが「いくらの売掛金を、いくらの手数料で、いつ入金してもらえるか」です。

ファクタリングの手数料は、一般的に請求書額面に対する割合(手数料率%)として定められ、請求書額面×手数料率がコストとなります。

 

一方、買取率は「請求書額面に対して実際に入金される割合(%)」を意味し、買取率=100%-手数料率のイメージで整理できます。

契約書では、買取率・手数料率のほか、振込手数料や登記費用など、別途負担する費用がないかも合わせて確認する必要があります。

 

金融庁は、債権額に比べて買取代金が著しく低額である取引について、ファクタリングを装った違法な貸付けの可能性があるとして注意喚起を行っています。

手数料率だけでなく、「売掛金の何%が実際に入金されるのか」「そのうちどこまでがファクタリング会社の利益・費用なのか」を整理することが重要です。

さらに、入金タイミング(条件合意から何営業日後、支払サイトから何日前など)も、資金繰り上の影響が大きいため、具体的な日付や営業日ベースで確認しておく必要があります。

 

例えば、請求書額面100万円、手数料率5%、その他費用0円であれば、入金額は95万円です。これが支払期日60日前の取引であれば、「60日早く100万円を受け取るためのコストが5万円」という形になります。

同じ5%でも、支払期日までの日数が30日なのか90日なのかで、年率換算のコスト感は変わります。

このため、契約書の手数料条項を見る際には、率だけでなく対象期間や入金予定日も合わせてチェックし、必要に応じて実質的な負担感を試算しておくことが有効です。

 

手数料・入金タイミング確認のポイント
  • 手数料率だけでなく、振込手数料や登記費用などの追加費用の有無を確認する
  • 買取率(実際の入金割合)と入金予定日が明示されているかを見る
  • 支払期日までの日数と照らして、実質的なコスト感を把握する

 

償還請求権の有無と範囲

償還請求権(リコース)とは、「売掛先から入金がなかった場合などに、ファクタリング会社が利用者へ支払いを求める権利」を指します。

償還請求権がない契約は「ノンリコース」、ある契約は「ウィズリコース」と呼ばれ、リスクの分担が大きく異なります。

 

ファクタリングの本来の形は、売掛債権の回収リスクをファクタリング会社に移転するノンリコース型ですが、日本の実務では、一定の条件で償還請求権を認める契約も少なくありません。

金融庁は、償還請求権や買戻請求権が広く設定されているにもかかわらず、「債権譲渡契約」として行われている取引について、実質的に貸付けと同様の機能を持つ場合には貸金業に該当するおそれがあると指摘しています。

 

たとえば、売掛金の回収を利用者に委託し、回収できなかった場合に全額を利用者が負担する仕組みなどは、名目はファクタリングでも、実態は借入に近くなる可能性があります。

契約書では、「どのような場合に、どこまで利用者が負担するのか(元本・利息・遅延損害金など)」を具体的に確認することが不可欠です。

 

償還請求権の範囲の例としては、①売掛先の倒産・支払不能の場合のみ負担する、②売掛先の支払遅延が一定期間続いた場合に負担する、③売掛先に問題がなくても、一定の期間経過後は利用者が全額負担するといった条項などがあり得ます。

条文の文言だけでは分かりづらいことも多いため、「売掛先が支払わなかった場合、最終的に誰が負担するのか」「どの時点で償還請求が発生し得るのか」を、事例ベースで確認しておくと安心です。

 

償還請求権条項を見るときの注意点
  • 「ノンリコース/ウィズリコース」の表現だけでなく、具体的な発生条件と範囲を読む
  • 売掛金回収を利用者が行う仕組みや、過大な買戻請求権が設定されていないか確認する
  • 実質的に高コストの貸付になっていないか、金融庁の注意喚起内容と照らして検討する

 

債権譲渡通知と取引先への影響

債権譲渡通知とは、「この売掛債権はファクタリング会社へ譲渡しました」と取引先(債務者)に伝える行為です。

3社間ファクタリングでは、取引先が支払期日にファクタリング会社へ直接支払う前提となるため、通常は通知と承諾がセットで行われます。

 

一方、2社間ファクタリングでは、通知を行わず、売掛金は一度利用者に入金されてからファクタリング会社へ支払う形が一般的で、取引先にはファクタリング利用の事実が知られないケースもあります。

民法上、一般的な債権譲渡では、債務者への通知または承諾が対抗要件(誰に支払えばよいかを明確にする要件)とされていますが、法人の金銭債権については、債権譲渡登記制度を利用することで、債務者以外の第三者に対して対抗要件を備えることもできます。

 

このため、2社間ファクタリングでは「通知を行わずに登記で第三者対抗要件を備える」という構成が取られることが多く、一方で3社間では「通知・承諾によって債務者対抗要件も満たす」という構成になるのが一般的です。

取引先への影響という観点では、「売掛金の支払先が変わることへの理解が得られるか」「ファクタリング利用をどの程度オープンにできるか」が実務上の論点になります。

 

特に長期的な取引関係にある場合、通知の方法やタイミング、文面などは慎重に検討されます。

契約書には、「誰が、どのような文面で、どの時点で通知するか」「取引先が承諾しなかった場合の取り扱い」などが定められていることが多いため、自社の取引慣行と照らし合わせて確認することが重要です。

 

通知条項で確認したいポイント
  • 2社間か3社間かにより、通知の要否と方法がどう定められているか
  • 通知の文面・タイミング・発信者(自社かファクタリング会社か)が明確か
  • 取引先が承諾しない場合や支払先を誤った場合の取り扱いが定められているか

 

債権譲渡登記と費用負担のルール

債権譲渡登記制度は、法人が行う金銭債権の譲渡について、債務者以外の第三者に対抗要件を備えるための制度です。

法務局で債権譲渡の登記を行うことで、「どの債権が、誰から誰に譲渡されたか」を公示でき、同じ債権が二重に譲渡されるリスクや、第三者との優先関係に関する紛争を予防することができます。

 

2社間ファクタリングでは、取引先に通知を行わない代わりに、債権譲渡登記で第三者対抗要件を備えるケースが多く、契約書でも「債権譲渡登記を行う」「登記に要する費用はどちらが負担するか」などが条項として定められます。

登記には登録免許税や専門家への手数料などのコストが発生するため、どちらが負担するのか、初回のみか毎回か、といった点が実質的なコストに影響します。

 

一方、3社間では、取引先への通知・承諾により対抗要件を備えるため、登記を行わない構成が多く見られます。

契約書で確認したいのは、①登記を行うかどうか、②どの債権を対象に登記するのか(包括か個別か)、③登記費用や証明書発行費用などを誰が負担するか、の3点です。

 

例えば、「登記に要する費用はすべて利用者負担」となっている場合、手数料に加えて登記関連費用が実質コストとして上乗せされます。

逆に、一定規模以上の取引ではファクタリング会社が登記費用を負担するなど、条件が分かれていることもあります。

 

債権譲渡登記条項のチェックポイント
  • 2社間スキームで登記を行う前提か、3社間で通知のみとする前提かを確認する
  • 登記の対象範囲(包括的な譲渡か、特定の債権ごとか)が明確かどうかを見る
  • 登録免許税や専門家報酬など、登記関連費用の負担者がどちらかを確認する

 

資金に困った時の賢い使い方ポイント

ファクタリングは、売掛金を早めに現金化することで資金繰りをなめらかにする手段ですが、「いつでも・いくらでも使えばよい」ものではありません。

銀行融資と比べると、一般的にコスト(手数料)は高くなりやすく、一方で審査のポイントや資金化までのスピードに強みがあります。

 

そのため、資金繰りが厳しい局面であっても、どのような状況ならファクタリングとの相性が良いのか、どこから先は使い過ぎに注意すべきなのかを整理しておくことが重要です。

具体的には、「銀行融資が通りにくいが、売掛金は安定して発生している」「一時的な支払いの山を越えれば、入金見込みが見えている」「長期資金ではなく、数か月以内に解消される短期のギャップを埋めたい」といった場面で、ファクタリングを組み合わせるケースが多くみられます。

 

逆に、慢性的な赤字体質の補填や、明確な返済計画が描けない状態での繰り返し利用は、手数料の累積負担により経営を圧迫するおそれがあります。

資金に困ったときほど「すぐに現金化できる手段」に目が行きがちですが、ファクタリングはあくまで売掛金の前倒し回収であり、将来入るはずだったお金を先に受け取る代わりにコストを支払う取引です。

銀行融資、支払条件の見直し、在庫・経費のコントロールなど、他の選択肢と並べて位置づけを整理し、「どの程度までなら自社として許容できるか」を決めた上で活用することが、賢い使い方につながります。

 

  • ファクタリングは「短期の資金ギャップ調整」に向きやすい
  • 慢性的な赤字体質の補填だけに使うと、手数料負担が蓄積しやすい
  • 銀行融資やコスト削減策とあわせて、全体の資金計画の中で位置付けることが重要

 

銀行融資が難しいケース

銀行融資が難しいケースとして典型的なのは、①創業からの期間が短く決算実績が少ない、②直近の決算で赤字や債務超過となっている、③既存借入が多く返済負担が重い、④担保や保証人を用意しにくい、といった状況です。

銀行融資は「返済能力」を重視するため、将来の返済原資が決算書・事業計画に明確に表れていない場合、希望条件での借入が通りにくくなります。

 

一方、ファクタリングは、利用者の財務内容そのものよりも、売掛債権と売掛先の支払実績を重視します。

たとえば、直近決算は赤字でも、主要取引先から毎月安定した売上と入金が続いているケースでは、「売掛金そのものは回収可能性が高い」と評価され、資金調整の余地が生まれることがあります。

既に銀行融資の審査を申し込んだものの、時間がかかっている、あるいは条件が合わなかったといった局面で、「売掛金の前倒し回収」という別の切り口で検討しやすいのがファクタリングの特徴です。

 

ただし、「銀行融資が難しい=必ずファクタリングが使える」というわけではありません。

売掛先が少数に集中している場合や、入金遅延が多い場合、取引の継続性が見えにくい場合など、売掛債権自体のリスクが高いと判断されれば、ファクタリングでも厳しい判断となります。

また、税金・社会保険料の滞納など、全体的な信用状況が悪化している場合も、利用できたとしても条件が重くなりやすい点に注意が必要です。

 

銀行融資が難しいときのチェックポイント
  • 融資が難しい理由が「決算」なのか「返済計画」なのかを整理する
  • 売掛金と売掛先の状況(件数・集中度・入金実績)を客観的に把握する
  • ファクタリングであっても、売掛債権のリスクが高ければ利用が難しいことを前提にする

 

短期資金として使う場面

ファクタリングが本来の強みを発揮しやすいのは、「短期的な資金ギャップを埋める場面」です。

例えば、賞与や人件費の支払いが集中する月、季節要因で仕入れや外注費が膨らむ時期、大口案件の受注に伴う材料費の前払いが必要な場面など、数週間〜数か月のあいだだけ資金需要が高まるケースが考えられます。

 

このような場合、数か月先に入金予定の売掛金を前倒しで資金化することで、銀行融資だけではカバーしきれない一時的な山をならすことができます。

また、支払サイトの長い取引が多い業種(建設業、下請け企業、IT・クリエイティブの受託など)では、「入金まで60〜90日あるが、外注費や仕入れは先に支払う必要がある」といった構図が生じやすくなります。

 

こうした構造的なタイムラグを一部ファクタリングで吸収することで、支払遅延や信用不安を回避しつつ、成長局面の受注機会を逃さないようにする、という使い方もあります。

一方で、短期資金に向くからこそ、「毎月のようにファクタリングを利用しているうちに、手数料が固定費のように積み上がる」という状態には注意が必要です。

 

本来は一時的な山を越えるための手段であるにもかかわらず、常態化すると、売上の一部が恒常的に手数料として流出する構造が定着してしまいます。

そのため、「どのタイミングのどの請求書までを対象にするか」「いつまで継続するか」という線引きを社内で決めたうえで利用することが重要です。

 

短期資金での主な利用シーン
  • 賞与・人件費・納税など、支払いが集中する月の一時的な資金不足
  • 大口案件の受注や新規取引開始時の仕入れ・外注費の前払い
  • 支払サイトの長い取引が多く、入金と支払いのタイミング差が大きい場合の調整

 

銀行融資との併用の考え方

銀行融資とファクタリングは、目的や得意とする場面が異なるため、「どちらか一方だけを選ぶ」というよりも、「役割を分けて併用する」考え方が現実的です。

銀行融資は、中長期の運転資金や設備投資資金を比較的低い金利で調達するのに向いており、返済期間を通じて計画的に利用することが前提となります。

 

一方、ファクタリングは、売掛金の早期回収という性格上、短期の資金ギャップを埋める用途に向き、スピードや柔軟性に強みがあります。

併用を検討する際には、まず既存の融資契約に「債権譲渡制限」「譲渡禁止」の条項が含まれていないかを確認することが必要です。

 

売掛金が銀行の担保になっている場合や、一定の制約が付されている場合には、同じ売掛債権をファクタリングに出すことが契約違反にあたるおそれがあります。

その場合、対象とする売掛債権を限定する、銀行側と事前に協議するなど、契約全体のバランスを見た対応が求められます。

 

実務上は、「長期的に必要な運転資金・設備資金は銀行融資で確保し、季節要因やスポット案件に伴う一時的な資金需要はファクタリングで調整する」といった役割分担が一つの整理軸になります。

また、銀行との関係維持の観点からは、ファクタリングの利用状況(件数・金額・目的)を自社で把握し、必要に応じて情報共有できるようにしておくことも重要です。

 

銀行融資と併用する際の整理ポイント
  • 銀行融資=中長期の基礎資金、ファクタリング=短期のギャップ調整と位置付ける
  • 融資契約に債権譲渡制限がないかを事前に確認する
  • ファクタリングの利用目的・頻度・金額を把握し、全体の資金計画の中で管理する

 

使い過ぎによるリスクと限度

ファクタリングは、適切な範囲で使えば資金繰りの安定に役立ちますが、使い過ぎると手数料負担が積み重なり、利益率の低下や自己資本の減少につながるリスクがあります。

たとえば、毎月の売掛金の大部分をファクタリングに回し続けると、売上に占める手数料の比率が高まり、営業利益を圧迫します。

また、将来入るはずだったキャッシュを前倒ししているだけなので、長期的なキャッシュフロー全体で見ると「先に受け取って後から少なくなる」構図が固定化されてしまいます。

 

さらに、資金繰りが厳しくなるたびにファクタリングに頼る状態が続くと、「売上規模に見合わない固定的な資金需要」が隠れている可能性があります。

たとえば、粗利率に対して固定費が過大である、採算の取れない取引が残っている、在庫や外注のコントロールが不十分である、といった構造的な課題が見落とされやすくなります。

 

ファクタリングは資金繰りの時間的なズレを調整する手段であって、根本的な収支バランスを改善するものではない点を意識する必要があります。

実務上の目安としては、「売掛金全体のうち、どの程度の割合をファクタリングに回しているか」「ファクタリング手数料が売上や粗利に対して何%を占めているか」を定期的に確認し、自社として許容できる上限をあらかじめ決めておくことが有効です。

加えて、一時的な利用にとどめるのか、どの期間まで継続するのかといった出口条件も設定し、「使い始めたらやめられない」状態に陥らないようにすることが大切です。

 

使い過ぎを防ぐためのチェックリスト
  • 売掛金全体のうち、ファクタリング利用分の割合を定期的に確認しているか
  • 手数料総額が売上・粗利の何%か、上限ラインを社内で決めているか
  • 構造的な赤字や固定費過大の問題を、ファクタリングで隠していないか

 

安全な会社の選び方と見極め方ポイント

ファクタリングには、事業者向けの正規サービスと、ファクタリングを名乗りつつ実態は高コストの貸付に近い取引の双方が存在します。

金融庁や日本貸金業協会、消費者庁は、「債権額に比べて著しく低い買取代金」「高額な手数料・大幅な割引率」「回収できない場合に全額の買戻しを求める仕組み」などを、偽装ファクタリング・ヤミ金融の特徴として注意喚起しています。

 

安全性を確認する際は、①会社情報と登録状況(法人実在性・関連ライセンス)、②手数料表示の明確さ(総支払額がどこまで把握できるか)、③反社チェックとコンプライアンス体制、④過去のトラブル事例や注意喚起への該当状況、という複数の観点から総合的に見ていくことが有効です。

特に、契約書上は「債権譲渡」としながら、経済的には高利の貸付と同様になっていないかどうかが実務上の重要ポイントになります。

 

確認項目 主なチェック内容
会社実在性 法人登記・所在地・連絡先・運営年数・グループ会社の有無
料金表示 手数料率・最低手数料・その他費用が事前に明示されているか
コンプライアンス 反社会的勢力排除方針・本人確認手続・内部管理体制
トラブル情報 公的機関の注意喚起との類似点や過去の紛争事例への該当有無

 

会社情報と登録状況のチェック

安全性を判断するうえでの出発点は、「事業者としての実在性・継続性が確認できるかどうか」です。

具体的には、商業登記簿(登記事項証明書)で法人名・本店所在地・代表者・設立年月日などが一致しているか、ウェブサイトの会社概要と齟齬がないか、実在する所在地にオフィスがあるかといった点が基本となります。

また、電話番号やメールアドレスなど、問い合わせ窓口が明示されているかどうかもチェック対象になります。

 

ファクタリングそのものは、現時点で専用の登録制度があるわけではありませんが、金融庁は「ファクタリングを装った違法な貸付け」に関する注意喚起を行っており、貸金業登録を受けていない業者が高コストの貸付を行う事例を問題視しています。

そのため、貸金業に該当するような取引(給与ファクタリングなど)をうたっているにもかかわらず、貸金業登録が確認できない場合には注意が必要とされています。

実務上は、次のような情報が公開されているかどうかが一つの目安になります。

 

会社情報・登録状況で確認したい事項
  • 法人名・所在地・代表者・設立年などの基本情報が明示されているか
  • 商業登記情報とウェブサイトの会社概要に食い違いがないか
  • 貸金業に該当し得るサービスを行っている場合、貸金業登録番号の記載があるか
  • 問い合わせ窓口(電話・メール)やサポート時間帯が具体的に示されているか

 

手数料表示のわかりやすさ

金融庁は、「高額な手数料・大幅な割引率のファクタリングを利用すると、かえって資金繰りが悪化し、多重債務に陥る危険がある」として注意喚起を行っています。

また、日本貸金業協会も、債権の買取代金が債権額に比べて著しく低額であったり、手数料の算定基準が不明確なケースを「偽装ファクタリング」の特徴として挙げています。

 

安全性を確認する観点からは、単に手数料率(%)が示されているだけでは不十分で、「請求書額面に対していくら差し引かれ、振込手数料・登記費用・調査料などを含めて総額いくら支払うのか」が事前に把握できるかどうかが重要になります。

具体的な計算例が提示されているか、見積もり段階と契約段階で条件が変わらないことが明記されているか、といった点もチェックポイントになります。

 

手数料表示で確認したいポイント
  • 買取手数料率だけでなく、最低手数料・振込手数料・登記費用などの有無が明示されているか
  • 請求書額面を前提にした具体的な試算例が示されているか
  • 「最初の提示より大幅に高くなる」「計算方法が途中で変わる」などのリスクがないか
  • 高額な手数料・大幅な割引率が公的な注意喚起に該当しない水準かどうか

 

反社チェックとコンプライアンス体制

ファクタリング会社は、資金の流れに関与する事業者である以上、反社会的勢力との関係遮断やコンプライアンス体制の整備が求められます。

政府や関係省庁は、「企業が反社会的勢力からの被害を防止するための指針」や、「反社会的勢力との関係を遮断するための基本方針」を公表し、組織としての対応、外部専門機関との連携、裏取引や資金提供の禁止などを掲げることを推奨しています。

 

安全性の観点では、ファクタリング会社自身がこうした指針に沿った「反社会的勢力排除に関する基本方針」等を定め、公表しているかどうかが一つの目安になります。

また、利用者側に対しても、本人確認書類の提出や取引目的の確認など、一定のコンプライアンス手続を求めるのが通常です。

こうした手続きが全くなく、契約内容の説明も十分でない場合、内部管理体制に懸念が残ると判断されることがあります。

 

コンプライアンス体制で見るポイント
  • 反社会的勢力排除方針やコンプライアンス方針が明示されているか
  • 本人確認・取引目的の確認など、一定のチェック手続きが設けられているか
  • 不当要求への対応、外部専門機関との連携など、ガバナンスの枠組みが整備されているか
  • 説明資料や契約書の内容が整理されており、不明点に対して適切な回答が得られるか

 

トラブル事例の確認ポイント

ファクタリングに関するトラブルとして、金融庁や消費者庁、日本貸金業協会などが挙げている典型例には、次のようなものがあります。

①債権額に比べて買取代金が著しく低く、高額な手数料が差し引かれていた、②売掛金が回収できなかった場合に全額の買戻しを求められ、実態として高利の貸付に近い状況になっていた、③違法な取立てや過度な督促行為を受けた、④給与ファクタリングなど、貸金業登録が必要なスキームが無登録で行われていた、などです。

 

実際に利用を検討する際には、公的機関が公表している注意喚起文書や事例集と照らし合わせ、「検討中のサービスが、注意喚起で示されているパターンに似ていないか」を確認することが客観的な判断材料になります。

また、弁護士や専門家がまとめたトラブル事例・防止策を参照すると、「どの条項が後で争点になりやすいか」「どのような説明不足が問題になっているか」といった点を把握しやすくなります。

 

トラブル事例から確認したいポイント
  • 公的な注意喚起で指摘されている特徴(高額手数料、過度な買戻し義務など)に該当していないか
  • 過去の紛争事例で問題となった契約条項(償還請求権、違約金など)がどう定められているか
  • 説明資料・契約書の内容が、トラブル事例と比べて透明性・具体性を備えているか
  • 不審点がある場合に、専門家や公的相談窓口に相談できる体制を確保しているか

 

まとめ

ファクタリング契約は、売掛金を早めに資金化するための有効な手段ですが、契約方式や手数料、償還請求権の有無など、契約書ごとに条件が大きく異なります。

この記事では、基本的な契約の枠組み、申込から入金までの流れ、契約書で確認したい条項、安全な会社を選ぶポイントを整理しました。資金に困った場面ほど、条件を十分に理解しないまま契約しがちです。

あらかじめ本記事のチェックポイントを押さえておくことで、自社の資金繰りとリスクのバランスをとりながら、適切な契約判断につなげやすくなります。