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給料ファクタリングは危険?仕組みと違法性・安全なお金の借り方をやさしく解説

給料日前にお金が足りず「給料ファクタリングなら審査なしで今すぐ現金」といった広告が気になっている人も多いと思います。しかし、給料ファクタリングは仕組みや法律上の位置付けを正しく理解していないと、違法なヤミ金融と同じような高い負担を背負ってしまうおそれがあります。

この記事では、給料ファクタリングの流れと通常のファクタリングとの違い、金融庁や裁判所の考え方、安全な公的制度や前払い制度との比較までをやさしく解説し、危険なサービスを見分けるための判断材料を提供します。

 

給料ファクタリングの基本

給料ファクタリングとは、給料日前にお金が必要な人に対して、業者が「あなたの給料(賃金債権)を買い取ります」と説明し、給料日に受け取る予定の一部を先に現金で渡す仕組みです。

表向きは「給料の売買(債権譲渡)」と説明されますが、金融庁は、個人が会社に対して持つ賃金債権を買い取り、その個人を通じて資金を回収する業務は、実質的にはお金を貸す行為(貸金業)に当たると整理しています。

賃金(給料)は、労働基準法で「通貨で」「労働者本人に」「全額」「毎月1回以上」「一定期日」に支払うことが原則とされています。

 

このように強く守られている性質のため、通常の売掛金ファクタリングとは法的な位置付けやリスクが大きく異なります。

金融庁は、給与ファクタリングでは手数料を年利に換算すると数百〜千数百%に達する例があり、本来受け取る給料より少ない金額しか手元に残らず、生活がかえって悪化するおそれがあると注意喚起しています。

 

項目 概要
対象 労働者が会社に対して持つ「賃金債権(給料の受取る権利)」
名目 「給料の買取」「給与ファクタリング」などと説明されることが多い
実態 金融庁は、お金を貸して給料日に元本+高額な手数料を回収する貸金業と評価
主な問題点 法外な手数料、生活悪化、違法な取立てなどのリスクが指摘されている

 

給料ファクタリングの流れ

典型的な給料ファクタリングの流れは、次のように整理できます。まず利用者(労働者)が、給料日前に「給料を買い取ります」「即日入金」などと広告している業者に申し込みます。

申し込み時には、勤務先名や給与明細、本人確認書類などの提出を求められることが多いとされています。

 

審査を通過すると、業者は「○月○日に支払われる給料の一部を買い取った」として、給料の予定額から手数料を差し引いた金額を利用者の口座に振り込みます。

給料日になった後は、利用者が自分の給料から、元本相当額と手数料をまとめて業者に支払う仕組みです。

 

このスキームでは、会社(雇い主)は業者ではなく従業員に給料を支払い、その後従業員が業者へ返済する構造になっています。

表向きは「給料債権の売買」とされていますが、実態としては「給料を担保にしてお金を前借りし、給料日以降に高い手数料を付けて返す」形と評価できるため、金融庁は貸金業に該当すると明確に示しています。

 

  • 申込時に勤務先や給与情報を業者に渡す必要がある
  • 給料日以降、利用者が業者へ元本+手数料を支払う流れになる
  • 会社は通常どおり給料を従業員に支払うため、会社が直接業者に払うわけではない

 

給料ファクタリングの流れで押さえたい点
  • 名目は「給料の買取」でも、実際には「給料を担保にした前借り」に近い構造
  • 給料日後に元本+高額な手数料を一括で支払う必要がある
  • 勤務先情報が業者に渡るため、支払が遅れると職場に連絡されるリスクも指摘されている

 

給与と通常ファクタリングの違い

通常のファクタリングは、企業同士の取引で発生した売掛金などの「事業に関する債権」を対象とし、ファクタリング会社がその債権を買い取ることで、企業の資金繰りを支援する仕組みです。

一方、給料ファクタリングが対象とするのは、個人が雇い主に対して持つ「賃金債権」です。賃金債権は、労働基準法で支払方法や保護が特に厚く定められており、通常の売掛金とは法的な性質が異なります。

 

企業間ファクタリングでは、売掛先(取引先企業)がファクタリング会社に直接支払う三者間スキームなども一般的であり、売掛金の支払いを巡る透明性が比較的高いといえます。

これに対して、給料ファクタリングでは、雇い主が従業員ではなく業者に直接支払う形は労働基準法上の「直接払いの原則」との関係で問題が生じます。

そのため、実務上は雇い主が従業員に給料を支払い、従業員が業者に返済する構造となっており、債権譲渡というより「給料を原資にした返済付きの資金融通」と評価されやすくなります。

 

  • 通常ファクタリング:事業者の売掛金が対象、企業の資金繰り支援が目的
  • 給料ファクタリング:個人の賃金債権が対象、個人の生活資金ニーズに紐づく
  • 賃金債権は労働基準法で特に保護されており、通常の債権と同じ扱いはできない

 

給与ファクタリングと通常ファクタリングの大きな違い
  • 対象が「企業の売掛金」か「個人の給料」かで法的な位置付けが異なる
  • 賃金には「直接払い・全額払い」の原則があり、第三者が間に入る余地が限られている
  • 金融庁は給与ファクタリングを貸金業とみなし、通常のファクタリングとは別物として扱っている

 

労働基準法と給料のルール

労働基準法24条は、賃金(給料)の支払いについて「通貨払い」「直接払い」「全額払い」「毎月1回以上」「一定期日」という原則を定めています。

通貨払いの原則は、原則として現金で支払うこと、直接払いの原則は、労働者本人に直接払うこと、全額払いの原則は、法律で認められた控除などを除き、賃金を全額支払うことを意味します。

 

厚生労働省の解説では、賃金を本人以外に支払うことは中間搾取を招くおそれがあるため原則禁止とされており、例外的に「使者」への支払いや、法律に基づく差押えがある場合などに限って認められると説明されています。

このようなルールは、賃金が生活の基盤であることを踏まえ、第三者による過度な天引きや搾取から労働者を守る目的で設けられています。

 

給料ファクタリングでは、労働者が「自分の賃金債権を業者に売却した」と説明されるものの、実際には会社は従業員本人に給料を支払い、その後従業員が業者に返済する構造になっています。

その結果、労働者は手数料を差し引いた金額しか手元に残らず、労働基準法が守ろうとしている「賃金の全額が労働者に渡る」という趣旨と相容れにくい状況が生じます。

この点について、金融庁も「本来受け取る賃金よりも少ない金額しか受け取れなくなり、生活が悪化するおそれがある」と警告しています。

 

  • 賃金は、通貨で・本人に・全額を・毎月1回以上・一定期日に支払うことが原則
  • 第三者への支払いや、自由に相殺することは原則として認められていない
  • 給与ファクタリングは、結果として「労働者が受け取る金額を減らす」仕組みになりやすい

 

労働基準法から見た給料ファクタリングのポイント
  • 賃金は強く保護される債権であり、第三者が介入しにくい仕組みになっている
  • 手数料によって労働者の手取りが減る点は、賃金保護の趣旨とぶつかりやすい
  • 法令上の原則を理解したうえで、給料を原資とする資金調達には特に注意が必要

 

利用を考えがちなケース

給料ファクタリングの広告では、「即日入金」「借金ではありません」「ブラックでも利用可」といった文言が使われることが多く、金融庁の注意喚起資料でも典型的な広告例として示されています。

こうした宣伝は、クレジットカードや消費者金融での借入れが難しい人や、直近の支払いに困っている人をターゲットにしていると考えられます。

利用を検討しがちなケースとしては、例えば次のような状況が挙げられます。

 

  • 給料日直前に家賃や公共料金の支払いが重なり、手元資金が足りない
  • 他の借入れが多く、新たなローンやカードが利用できない
  • 急な病気や冠婚葬祭などで、数万円〜十数万円の現金がすぐに必要になった
  • 家族や職場に知られずにお金を工面したいと考えている

 

しかし、金融庁は、給与ファクタリングの利用により「本来受け取る賃金より少ない金額しか残らず、生活が破綻するおそれがある」と警告しています。

短期的には資金不足をしのげても、翌月以降も同じような利用を繰り返せば、手数料負担が積み上がり、家計の立て直しが難しくなるリスクがあります。

 

利用を考えがちな場面と注意点
  • 「今月だけ何とかしたい」という切迫した状況ほど、高コストの手段を選びやすい
  • 「借金ではない」という表現でも、実質的には高金利の返済義務を負う場合がある
  • 一時的な資金不足の背景にある収支バランスの問題を把握し、相談窓口や公的制度も検討する必要がある

 

給料ファクタリングと法律

給料ファクタリングについては、行政も裁判所も「単なる債権売買ではなく、実質はお金の貸し付け」と判断しています。

金融庁は、自庁の注意喚起の中で、「給与ファクタリングなどと称して、個人(労働者)の賃金債権を買い取り金銭を交付し、当該個人を通じて資金回収を行う業務は貸金業に該当する」と明示し、利用しないよう強く呼びかけています。

 

さらに、最高裁判所は令和5年2月20日の決定で、給与ファクタリング業者による取引について、貸金業法2条1項および出資法5条3項にいう「貸付け」に当たると判断しました。

これにより、給与ファクタリングを業として行う者は、貸金業登録がない限り「無登録の貸金業者」、いわゆるヤミ金融として刑事責任を問われ得ることが明確になりました。

 

観点 法律上の位置付け
金融庁の見解 給与ファクタリングは貸金業に該当。無登録で行えば貸金業法違反(無登録営業)。
最高裁の判断 賃金債権を買い取る名目でも、実態として「貸付け」に当たると判断。
主なリスク 無登録営業による刑事罰、高金利による出資法違反、利用者の生活悪化・多重債務化など。

 

金融庁が示す考え方

金融庁は、「ファクタリングの利用に関する注意喚起」および「給与の買取りをうたった違法なヤミ金融にご注意ください!」などの資料で、給与ファクタリングについて明確な見解を示しています。

そこでは、「給与ファクタリングなどと称して、業として、個人(労働者)の賃金債権を買い取り金銭を交付し、当該個人を通じて資金の回収を行うことは貸金業に該当する」と説明されており、貸金業登録が必要な行為だと整理されています。

 

金融庁の注意喚起では、こうした業者の多くが年率換算で数百〜千数百%にもなる法外な手数料を徴収し、勤務先への連絡や威圧的な取立てなど、私生活の平穏を害する行為に及ぶ危険があることも指摘されています。

また、「本来受け取る賃金よりも少ない金額しか手元に残らず、経済的生活がかえって悪化し、生活が破綻するおそれがある」として、給与ファクタリングを利用しないよう強く求めています。

 

  • 給与ファクタリングは名目にかかわらず「貸金業」に該当するとの立場。
  • 無登録で行えば貸金業法違反として、刑事・行政の対象になり得る。
  • 利用者保護の観点から「利用しないでください」と明確に注意喚起。

 

金融庁のメッセージの要点
  • 給与ファクタリングは貸金業であり、登録なしで行えば違法。
  • 年率で数百%を超える手数料や、勤務先への連絡など悪質な取立ての危険がある。
  • 本来の賃金が目減りし、生活が破綻するおそれがあるため、利用しないことが推奨されている。

 

裁判所の判断ポイント

令和5年2月20日の最高裁決定は、給与ファクタリングをめぐる重要な判断を示しました。

この事件では、事業者が「給料ファクタリング」の名目で多数の労働者の賃金債権を買い取り、給料日前に金銭を交付し、給料日以降に元本と高額な手数料を徴収していました。

裁判所は、形式上は「債権譲渡契約」であっても、実際には労働者が自ら給料債権を買い戻さざるを得ず、事業者は労働者から資金を回収する以外の方法がないことなどから、経済的実態は「貸付け」と同じだと判断しました。

 

判決は、①賃金債権については労働基準法24条により、譲受人が勤務先に対して支払いを求めることができないこと、②労働者が事実上、元本と手数料を支払って「給料債権を買い戻す」構造になっていたこと、③手数料が出資法上の高金利規制に抵触する水準であったこと、などを総合して、「貸金業法2条1項・出資法5条3項にいう『貸付け』に当たる」と結論づけています。

この結果、無登録で給与ファクタリングを行っていた事業者は、貸金業法違反および出資法違反で有罪とされました。

 

  • 契約書の名目よりも、賃金債権の性質と資金回収の実態が重視された。
  • 労働者が「買戻し」を強いられる構造は、実質的な貸付と評価された。
  • 高金利部分については出資法違反として刑事責任が問われた。

 

最高裁が重視したポイント
  • 賃金債権は譲受人が会社に直接請求できないため、結局は労働者から回収するしかない。
  • 元本+高額な手数料を返済させる構造は、売買ではなく「貸付け」と同視される。
  • 法定上限を大きく超える手数料は、出資法上の高金利として刑事罰の対象となる。

 

貸金業法・出資法との関係

貸金業法は、金銭の貸付けを「業として」行う者に登録制度と各種規制を課す法律です。ここでいう「貸金業」とは、手形割引や売渡担保など、名目や方法にかかわらず、金銭の交付を行う行為を広く含むと定義されています。

給与ファクタリングについて金融庁と最高裁が「貸付けに当たる」と判断した以上、この取引を業として行うには貸金業登録が必要であり、無登録で行うことは貸金業法の無登録営業として刑事罰の対象となります。

 

出資法は、金利の上限を定め、高金利の貸付けを刑事罰の対象とする法律です。

改正により、業として行う金銭の貸付けについて、年20%を超える利息の契約は一定の条件で処罰対象となり、特に年109.5%を超える超高金利については、10年以下の懲役または3,000万円以下の罰金(または併科)という重い刑が規定されています。

金融庁は、給与ファクタリングの多くが年率換算で数百〜千数百%に相当する手数料を徴収していると指摘しており、出資法の高金利規制に抵触し得る水準です。

 

  • 給与ファクタリングは貸金業法上の「貸付け」に当たると整理されている。
  • 無登録で行えば、貸金業法の無登録営業として刑事罰の対象となる。
  • 年20%・109.5%といった出資法上の上限を超える手数料は、高金利として刑事処罰の対象になり得る。

 

貸金業法・出資法から見た給与ファクタリング
  • 名目が「債権買取」でも、実態が貸付なら貸金業法の規制がかかる。
  • 高金利の手数料は、出資法の上限金利を超えると刑事罰の対象となる。
  • 登録のない業者による給与ファクタリングは、ヤミ金融と同視される危険が高い。

 

行政処分を受けた事例

行政当局は、給与ファクタリングを含む「偽装ファクタリング」に対して、刑事手続だけでなく行政処分や指導も行っています。

弁護士による解説では、表面上はファクタリング契約を装いながら、実際には高金利の貸付けを行っていたケースについて、関東財務局が貸金業法に基づき業務停止命令を出した事例が紹介されています。

 

このケースでは、法定上限を大きく超える手数料を徴収していたことが、処分理由として問題視されています。

また、金融庁や都道府県は、無登録で貸付けを行った事例や、給与ファクタリングを装った違法な貸付けに対し、業務停止命令や業務改善命令などの行政処分を行っていると公表しています。

利用者側から見ると、行政処分を受けた履歴のある業者は、過去に法令違反や不適切な取引を行っていた可能性が高く、信用できない取引先と考えるべきとされています。

 

  • 偽装ファクタリング業者に対して、貸金業法違反を理由に業務停止命令が出された事例がある。
  • 給与ファクタリングを装った高金利の貸付けは、行政処分や刑事事件の対象となり得る。
  • 行政処分歴は、公表資料や自治体サイトから確認できる。

 

行政処分事例から学べること
  • 「ファクタリング」と名乗っていても、過去に処分歴があれば要注意。
  • 処分理由の多くは、高金利や無登録営業など、構造的な問題に起因している。
  • 利用前に業者名で行政処分歴を調べることが、自衛策として有効。

 

給料に困ったときの安全策

給料日前にお金が足りないとき、「今すぐ現金」「審査なし」「給料を買い取ります」といった広告が目につきやすくなります。

しかし金融庁は、給与ファクタリングを違法なヤミ金融と同じ危険な取引として位置づけており、利用しないよう強く呼びかけています。

 

給料に困った場面では、まずは職場が用意している前払い・立替制度、公的な貸付や生活支援制度、正規のカードローンなど、法律に基づいた枠組みを確認することが大切です。

厚生労働省や自治体は、低所得世帯向けの生活福祉資金貸付制度(緊急小口資金・総合支援資金など)や生活困窮者自立支援制度、家計改善支援事業などを用意し、生活費や家計全体の立て直しを支援しています。

 

これらは無利子・低利子や返済猶予がある一方で、審査や手続きに一定の時間がかかるのが特徴です。

そのため、短期・少額の不足への対応と、中長期の家計改善を組み合わせて考えることが重要になります。

 

手段 概要(給料に困ったときの選択肢)
会社の制度 社内の「前払い」「給与立替」「福利厚生ローン」などがあれば、まず確認。
公的貸付 生活福祉資金貸付制度(緊急小口資金・総合支援資金など)で、生活費の一時的な貸付や生活再建の支援が受けられる。
相談窓口 生活困窮者自立支援制度の自立相談支援事業や家計改善支援事業で、家計の立て直しをサポート。

 

会社の前払い・立替制度

まず最初に確認したいのが、勤め先に「給与前払い制度」や「立替金制度」「社内貸付(社内融資)」などがあるかどうかです。

近年は、外部サービスと連携した「給与前払い」「日払い・週払い」といった仕組みを導入する企業も増えており、実際に働いた分の給料(既に発生した賃金)を一定の手数料で早めに受け取れるシステムが普及しつつあります。

 

これらは会社が契約主体となり、賃金支払いの枠内で運用される点が、給与ファクタリングと大きく異なります。

労働基準法は賃金の「通貨払い」「直接払い」「全額払い」を原則としていますが、厚生労働省は、一定の条件下で給与前払い制度や「前払い給与サービス」の運用が可能であると整理しています(賃金支払いの5原則に反しない形での設計が必要)。

例えば、毎月15日締め・翌月25日払いの会社で、「締め日までに発生した賃金の一部を、従業員の申請に応じて前払いする」といった運用は、会社が賃金支払い時期を前倒しするイメージに近く、給与ファクタリングのような第三者への賃金債権譲渡とは位置づけが異なります。

 

  • 就業規則や社内規程に「前払い」「立替」「社内貸付」などの制度があるか確認する。
  • 外部サービス利用型の場合も、契約主体が会社になっているか、手数料負担の有無を確認する。
  • 原則として、勤務先と従業員の間で完結する仕組みが、賃金保護の趣旨に沿いやすい。

 

会社の制度を優先的に確認したい理由
  • 賃金の支払い方法として、法令に沿った枠組みで設計されている可能性が高い。
  • 給与ファクタリングのような高額手数料や違法性のリスクを避けやすい。
  • 勤務先との信頼関係や勤続実績が、そのまま安心材料になる。

 

公的な貸付・生活支援制度

民間サービスを利用する前に、検討したいのが公的な貸付・生活支援制度です。代表的なものが、社会福祉協議会を通じて実施されている「生活福祉資金貸付制度」です。

この制度は、低所得世帯や障害者・高齢者のいる世帯などに対して、無利子または低利子で資金の貸付と相談支援を行い、生活の安定と自立を支援する仕組みです。

 

生活福祉資金には、急な出費に対応する「緊急小口資金」、失業や減収で生活費が不足した場合の「総合支援資金(生活支援費・一時生活再建費など)」など複数の種類があり、各自治体が案内を行っています。

また、生活困窮者自立支援制度のもとで「自立相談支援事業」「家計改善支援事業」「住居確保給付金」なども用意されており、単にお金を貸すだけでなく、就労支援や家計の立て直し支援をセットで受けられるのが特徴です。

 

  • 生活福祉資金貸付制度:緊急小口資金・総合支援資金など、生活費を対象とする公的貸付。
  • 生活困窮者自立支援制度:自立相談支援、家計改善支援、住居確保給付金などの総合支援。
  • 相談・申込窓口:お住まいの市区町村の社会福祉協議会や自治体の福祉担当窓口。

 

公的制度を利用する際のポイント
  • 無利子・低利子である代わりに、審査と手続きに時間がかかることを前提に動く。
  • 「どの制度が使えそうか分からない」場合は、自立相談支援窓口で相談する。
  • 短期の不足だけでなく、中長期の生活再建まで含めた支援を受けられる点を理解する。

 

カードローン・消費者金融との違い

給料ファクタリングと比べると、銀行や消費者金融のカードローンは、少なくとも法律上の枠組みと上限金利の規制の中で運営されています。

貸金業者(消費者金融など)は貸金業法に基づき登録が必要であり、金利も利息制限法・出資法の上限を超えることはできません。

 

一方で、給与ファクタリングは名目上「ファクタリング」「債権買取」とされながら、実質的には高金利の貸付けを行うヤミ金融と判断されており、金融庁は「利用しないでください」と明確に警告しています。

ただし、カードローンや消費者金融も、使い方を誤ると返済負担が重くなり、多重債務に陥るリスクがあります。

 

カードローンはリボルビング払い(残高スライド方式)であることが多く、毎月の返済額が少ない代わりに、返済期間が長期化しやすいという特徴があります。

給料に困った場面では、「給料日までのつなぎ」として利用しても、その後も利用を繰り返すことで残高が減らない状態になるケースがあるため、借入限度額・金利・返済計画を冷静に確認することが重要です。

 

  • カードローン・消費者金融は、法律に基づき登録・金利規制を受けている。
  • 給与ファクタリングはヤミ金融と同様の高リスク取引と位置付けられている。
  • どちらにしても、「返せる見込み」と「返済計画」を持たずに借りることは危険。

 

カードローン等との違いを整理するときの視点
  • 「登録の有無」「金利の上限」「返済方法」が法令に沿っているかを確認する。
  • 短期の一回限りの利用か、長期的な借入れになるのかを事前にイメージする。
  • 給与ファクタリングは、カードローンよりもはるかに高コスト・高リスクである点を認識する。

 

家計の見直しと相談窓口

給料に困る状況が一時的なものではなく、毎月のように繰り返されている場合は、「一時的にお金を用意する」だけでは根本的な解決になりません。

こうした場合に重要なのが、家計全体を見直すことと、専門の相談窓口を活用することです。

 

厚生労働省の「家計改善支援事業」は、生活困窮者自立支援制度の一部として、家計に課題を抱える人と一緒に家計収支を整理し、具体的な改善策を考える取り組みです。

家計改善支援では、収入・支出・債務の状況を書き出し、支出削減の余地や、公的制度の活用、債務整理の必要性などを整理していきます。

 

あわせて、自治体や社会福祉協議会の自立相談支援窓口、消費生活センター、日本司法支援センター(法テラス)なども、生活費や借金の悩み相談に対応しています。

「どこに相談したらよいか分からない」場合は、まず市区町村役場の福祉・生活困窮者支援の窓口に行けば、適切な機関を案内してもらえることが多いです。

 

  • 毎月の給料で暮らしていけない原因(収入減・固定費の増加・債務など)を整理する。
  • 家計改善支援事業や自立相談支援事業など、公的な相談窓口を活用する。
  • 必要に応じて、消費生活センターや法テラスで借金・契約トラブルの相談も検討する。

 

家計見直しと相談窓口を使うメリット
  • 「今月のお金が足りない」原因を、中長期の視点で整理できる。
  • 公的貸付や給付金、債務整理など、自分では気付きにくい選択肢を教えてもらえる。
  • 一人で抱え込まず、継続的な伴走支援を受けることで、生活再建の見通しが立てやすくなる。

 

会社が気を付けたいポイント

給与ファクタリングは、金融庁・裁判所ともに「実質は違法な高金利貸付(ヤミ金融)」と位置付けており、利用しないよう強く注意喚起しています。

この前提に立つと、従業員に対して給与ファクタリング業者を紹介したり、社内ポータルで案内したりする行為は、従業員を違法な取引に誘導するリスクがあります。

 

また、従業員の借金問題は、欠勤・離職・情報漏えいリスクなどを通じて職場環境や企業のガバナンスにも影響し得ます。

一方で、企業が適切に設計された給与前払い制度や社内貸付制度を導入し、あわせて公的な相談窓口への案内を行うことで、従業員が危険なサービスに頼らずに済む環境づくりも可能です。

厚生労働省が示す労働法の基本や生活困窮者自立支援制度の趣旨を踏まえれば、賃金の保護と従業員の生活安定は、企業の人事労務上の重要なテーマと言えます。

 

論点 会社が意識したい視点
コンプライアンス 違法な給与ファクタリングを紹介・黙認しないこと。
従業員保護 高コストな借入れに頼らざるを得ない状況を放置しないこと。
制度整備 法令に沿った前払い・貸付制度や相談体制を検討すること。

 

給料ファクタリング紹介のリスク

給与ファクタリングは、金融庁が「貸金業に該当する」と明示し、無登録で行う事業者をヤミ金融として注意喚起の対象にしています。

そのため、会社が従業員に対して給与ファクタリング業者を紹介したり、社内掲示板で広告を転載したりすると、結果として違法な高金利取引へ従業員を誘導することになりかねません。

 

法的責任の有無は個別事情によりますが、少なくとも企業のコンプライアンス上は大きなリスクとなります。

また、金融庁のリーフレットでは、給与ファクタリングにより「本来受け取る賃金よりも少ない金額しか手元に残らず、生活が破綻するおそれ」があると警告されています。

こうした取引を会社が積極的に紹介した場合、従業員の生活悪化や健康悪化が生じた際に、「なぜ危険性を認識しながら紹介したのか」という観点から、社会的批判やレピュテーションリスクが高まるおそれがあります。

 

  • 違法な可能性が高いサービスを会社が紹介すると、コンプライアンス上の問題となる。
  • 従業員が多重債務や生活破綻に陥った場合、企業の説明責任が問われるリスクがある。
  • 社内ポータルや福利厚生案内に掲載するサービスは、法令・行政見解を確認したうえで選定する必要がある。

 

給与ファクタリングを紹介しないことが基本線
  • 金融庁が明確に「利用しないでください」と呼びかけているサービスは紹介しない。
  • 資金ニーズがある従業員には、公的制度や社内制度など安全な選択肢を案内する。
  • 福利厚生として外部サービスを選ぶ際は、登録状況や行政の評価を必ず確認する。

 

従業員の借金問題と職場への影響

従業員の借金問題は、個人のプライベートな問題に見えますが、実際には職場にもさまざまな形で影響を及ぼします。

過大な返済負担により生活が不安定になると、欠勤・遅刻の増加、集中力低下によるミスや事故のリスク増大、メンタルヘルス不調などにつながることがあります。

 

また、金融庁の注意喚起資料でも、ヤミ金融による「勤務先への執拗な連絡」や「恫喝」が問題として挙げられており、職場環境の悪化や他の従業員への不安波及も懸念されます。

情報セキュリティの観点でも、借金問題を抱える従業員が不正アクセスや情報持ち出しの勧誘を受けるリスクが指摘されています。

 

直接的な因果関係はケースごとに異なりますが、「経済的に追い込まれた状態」は、内部不正に巻き込まれるリスク要因の一つとして認識されています。

そのため、多重債務やヤミ金融利用の兆候を、懲戒ではなく早期相談につなげられるような人事・労務体制が重要です。

 

  • 欠勤・遅刻増加、業務パフォーマンス低下など、借金問題が業務に影響することがある。
  • ヤミ金融の取立てが職場に及ぶと、職場全体の心理的安全性が損なわれるおそれがある。
  • 経済的困窮は、情報漏えいや不正への巻き込まれリスク要因の一つとしても認識されている。

 

従業員の借金問題を「職場のリスク」として捉える視点
  • 懲戒よりも先に、相談・支援につなげる体制(産業医・外部相談窓口など)を整える。
  • ハラスメント防止・メンタルヘルス対策とあわせて、経済的困難への配慮も検討する。
  • 借金問題を理由とした不利益取り扱いは、慎重に法令との関係を確認する。

 

給与前払い制度導入時の注意点

給与ファクタリングの問題が顕在化する中で、「従業員が危険なサービスに頼らなくて済むよう、自社で給与前払い制度を整えたい」と考える企業も増えています。

その際に重要なのが、労働基準法が定める賃金支払いの原則(通貨払い・直接払い・全額払い・毎月1回以上・一定期日)を踏まえた設計です。

 

厚生労働省の資料では、すでに発生した賃金の一部を前倒しで支払う仕組み自体は、これらの原則に反しない形で運用し得るとされていますが、第三者が関与するスキームや高額な手数料には注意が必要とされています。

前払い制度を導入する際は、次のような点を整理しておくことが望ましいです。

 

  • 対象となる賃金は「すでに労働が提供された分」に限定されているか。
  • 前払い事務の手数料を従業員に負担させる場合、その額は実費相当かつ過度でないか。
  • 外部サービスを利用する場合、賃金支払主体があくまで会社のままであることが契約上明確になっているか。
  • 就業規則や賃金規程に、前払いの条件・上限額・申請方法などを明文化しているか。

 

給与前払い制度を安全に運用するためのポイント
  • 「賃金の一部を前倒しする制度」であり、「賃金債権を第三者に売却する仕組み」になっていないか確認する。
  • 手数料は、従業員負担がある場合でも、実費相当で過度にならない水準に抑える。
  • 導入前に、労働基準監督署・社会保険労務士等とも相談し、法令との整合性を確認する。

 

労働相談・債務相談窓口との連携

会社だけで従業員の生活・借金問題に対応しきることは難しいため、外部の公的相談窓口と連携できる体制を整えておくことが有効です。

厚生労働省は、労働条件や賃金未払いなどの相談窓口として「総合労働相談コーナー」や「都道府県労働局」を案内しており、賃金トラブルや長時間労働などの相談を受け付けています。

 

一方、借金やヤミ金融、給与ファクタリングの被害については、金融庁・財務局、消費生活センター、法テラス、日本貸金業協会の相談窓口などが案内されています。

企業としては、従業員向けハンドブックや社内ポータルに、次のような情報を整理して掲載しておくと、問題が深刻化する前に自ら相談につなげてもらいやすくなります。

 

  • 労働条件・ハラスメントなどの相談窓口(社内窓口・総合労働相談コーナー等)。
  • 借金・ヤミ金融・給与ファクタリング被害に関する相談窓口(金融庁相談室、消費生活センター、法テラス等)。
  • 家計改善や生活困窮に関する相談窓口(自治体の自立相談支援窓口・社会福祉協議会等)。

 

外部相談窓口と連携するメリット
  • 会社だけでは対応しきれない法的・生活面の問題を、公的機関と分担して支援できる。
  • 従業員が「誰にも相談できない」と思い込まずに、早期に適切な窓口へアクセスしやすくなる。
  • 結果として、ヤミ金融や給与ファクタリングなど高リスクな手段への流入を防ぐ一助となる。

 

まとめ

本記事では、給料ファクタリングの基本的な仕組みと、通常の売掛金ファクタリングとの違い、労働基準法上の給料の位置付け、金融庁や裁判所がどのように評価しているかを整理しました。

そのうえで、違法なスキームのリスクや、多用による生活悪化の懸念を確認し、代わりとなる会社の前払い制度、公的な貸付・生活支援制度、相談窓口などの安全な選択肢も紹介しました。

給料に困ったときこそ、目先の「すぐお金が入る」サービスだけに頼らず、信頼できる制度や専門窓口を活用して、無理のない資金計画を立てることが大切です。