現金取引が中心だと「ファクタリングは使えないのでは?」と感じる中小企業は少なくありません。本記事では、ファクタリングの基本的なしくみと現金取引との関係、利用できる具体的な場面と利用が難しい理由、現金商売でも使いやすくする工夫、さらに他の資金調達方法までを整理します。現金取引メインの事業者でも、自社に合う資金調達の選択肢を客観的に確認できる内容です。
ファクタリングと現金取引とは
ファクタリングは、企業が保有する売掛金などの金銭債権をファクタリング会社に譲渡し、手数料を差し引いた金額を早期に受け取る資金調達の方法です。
ここでいう売掛金とは、掛取引によって将来受け取る予定の代金を指します。取引の当事者は、資金を必要とする利用者(債権を売る企業)、代金を支払う取引先(債務者)、売掛金を買い取るファクタリング会社の三者です。
一方、現金取引とは、商品やサービスの提供と同時に現金や即時の振込で決済が完了する取引を指し、将来の代金回収に関する売掛金は発生しません。
掛取引は、代金の支払いを一定期間後に行う取引であり、その間は売掛金として帳簿に計上されます。
ファクタリングが利用できるのは、この掛取引から生じる売掛金がある場合です。現金取引だけの事業形態では、そもそもファクタリングの対象となる売掛金がないため、仕組み上利用が難しくなります。
| 項目 | 現金取引 | 掛取引・ファクタリング |
|---|---|---|
| 代金支払のタイミング | 取引の場で即時に支払 | 一定期間後に支払(売掛金が発生) |
| 売掛金の有無 | 発生しない | 売掛金が発生し、ファクタリングの対象になり得る |
| 資金繰りへの影響 | 代金をすぐ受け取れるため回収リスクは小さい | 入金まで期間があるため、資金繰り調整にファクタリングを利用可能 |
ファクタリングの基本しくみ
ファクタリングの基本的な流れは、取引先に対して発生した売掛金を、ファクタリング会社に譲渡して現金化する仕組みです。
利用者は、取引先に商品やサービスを提供して売掛金を計上し、その請求書などをもとにファクタリング会社へ申し込みます。
審査を経て契約が成立すると、請求書額面から手数料を差し引いた金額が、短期間で利用者の口座に入金されます。
手数料率は、売掛先の信用力や支払期日までの日数、取引実績などによって決まり、買取率(請求書額面に対して実際に受け取れる割合)として示されることが一般的です。
例えば、請求書額が100万円、手数料率が5%の場合、買取率は95%となり、利用者が受け取る金額は95万円となります(前提:その他費用なし、支払期日までの期間が標準的なケース)。
ファクタリングには、取引先に通知せずに利用者とファクタリング会社の間で完結する「2社間ファクタリング」と、取引先にも債権譲渡を通知し、取引先がファクタリング会社へ直接支払う「3社間ファクタリング」があります。
一般に、3社間のほうが取引先からの支払確実性が高いため手数料率は低めになりやすく、2社間は手続きが簡便な一方で手数料が高めになる傾向があります。
- 売掛金などの金銭債権を譲渡して資金を早期化する仕組み
- 請求書額面から手数料(%)を差し引いた金額が入金される
- 2社間と3社間で、通知先や手数料水準が異なる
- 借入金ではなく、売掛金の譲渡として扱われる資金調達方法
現金取引と掛取引のちがい
現金取引は、商品やサービスの提供と同時に現金や即時振込で代金決済が完了する取引であり、代金を受け取る権利を将来に持ち越さない点が特徴です。
経理上は、売上と同時に現金預金の増加として記録され、売掛金勘定は使いません。飲食店の店頭販売や小売店での現金販売など、多くの現金商売がこれに該当します。
これに対して掛取引は、商品やサービスの提供から一定期間後に代金を支払う取引で、企業間信用取引とも呼ばれます。
売り手側は、代金を受け取るまでの間、売掛金として帳簿に計上し、支払期日に現金預金の増加と売掛金の減少として処理します。
卸売業者と小売店の取引や、継続的なBtoB取引では、掛取引が利用されることが一般的です。ファクタリングが利用できるのは、この掛取引から生じる売掛金が存在する場面に限られます。
現金取引だけを行っている場合、将来受け取る代金としての売掛金が発生しないため、ファクタリング会社に譲渡できる債権がありません。
そのため、現金取引中心の事業者がファクタリングを検討する場合には、一部の取引を請求書払いに切り替えるなど、掛取引を組み合わせる必要があります。
- 現金取引は即時決済で売掛金が発生しない
- 掛取引は支払期日まで売掛金として記録される
- ファクタリングは掛取引から生じた売掛金が前提となる
- 取引形態の違いが、利用できる資金調達手段に影響する
現金取引でも使える場面
現金取引が中心であっても、一部に「掛け」での販売や後払いの取引があれば、その部分についてはファクタリングの対象となる可能性があります。
例えば、通常は店頭で現金決済をしている事業者でも、法人顧客に対してのみ月末締め・翌月払いで請求書を発行しているケースや、継続的な保守サービス・定期納品についてまとめて請求しているケースなどです。
ポイントは、取引の相手が企業や個人事業主であり、請求書や契約書で債権の内容と支払期日が明確になっているかどうかです。
また、日頃は現金集金している取引でも、取引先と合意のうえで振込払いに切り替え、毎月同じタイミングで入金される形に整えれば、売掛金として扱われるためファクタリング会社の審査対象になりやすくなります。
現金商売だから一律に利用できないのではなく、「売掛金として説明できる取引」をどれだけ作れるかが重要です。
| 取引イメージ | ファクタリング対象となり得るポイント |
|---|---|
| 法人向け後払い販売 | 請求書発行・支払期日明記・毎月の継続取引があれば売掛金として扱いやすい |
| 定期サービス提供 | 月額料金をまとめて請求し、支払サイトが一定であれば審査対象になりやすい |
| 現金集金から振込へ変更 | 集金方法を振込・口座振替に変えることで、入金記録を示しやすくなる |
売掛金が発生する取引の例
売掛金が発生するのは、「商品やサービスを先に提供し、代金はあとから受け取る」取引です。現金取引が多い業種でも、法人顧客との取引では後払いが認められているケースが少なくありません。
例えば、飲食店が企業の懇親会や会議用の仕出しを請け負い、月末にまとめて請求する場合や、小売店が特定の法人顧客に対してのみ月次で請求書を発行している場合などです。
清掃業・設備保守業・広告制作業などのサービス業でも、毎月決まった金額を請求する保守契約・運用契約があれば、その契約に基づいて売掛金が発生します。
また、スポットの大口案件について、納品後に請求書を発行し、支払期日を30日後・60日後と定めている場合も同様です。
こうした取引は、請求書・契約書・納品書などで内容が確認できれば、ファクタリング会社に対して「売掛金としての実態」を説明しやすくなります。
- 法人顧客向けの月末締め・翌月払いの掛取引
- 保守・清掃などの定期サービス契約による月額請求
- 大口注文を納品後に請求書で後払いとする取引
- 特定の得意先に対する継続的な後払い販売
請求書や契約書など必要書類
ファクタリングを利用するには、「売掛金の内容が客観的に確認できる書類」が求められます。代表的なのは、取引先名・請求金額・支払期日・支払条件が記載された請求書です。
これに加えて、継続取引であれば、取引条件を定めた取引基本契約書や個別契約書、単発の取引であれば見積書・注文書・納品書などが揃っていると、売掛金の発生経緯を説明しやすくなります。
さらに、実際の入金状況を確認するために、取引先からの入金が記録された預金通帳のコピーや、インターネットバンキングの明細画面を提出するよう求められることもあります。
現金取引が多い事業者の場合、請求書のフォーマットを統一し、支払期日や振込先口座を必ず記載するなど、書類の整備を行うことで、ファクタリング会社に対する説明力が高まります。
- 取引先ごとの請求書(支払期日・金額・条件の記載)
- 取引基本契約書・個別契約書などの契約書類
- 見積書・注文書・納品書など取引の流れを示す書類
- 入金実績がわかる預金通帳や入出金明細
取引実績と入金記録の確認
ファクタリング会社は、売掛金そのものだけでなく、その取引が継続性・安定性のあるものかどうかを重視します。
そのため、過去数か月から1年程度の請求・入金の履歴を確認し、取引先が毎回期日どおりに支払っているか、入金額や取引頻度に大きな変動がないかをチェックします。
現金取引中心の事業者でも、特定の法人顧客から毎月ほぼ同額の入金がある場合は、安定した売掛先として評価されやすくなります。
一方で、入金遅延が多い取引先や、毎回の請求額・入金額が大きく変動している場合、回収リスクが高いと判断され、手数料率が上がったり、買取自体が断られたりすることもあります。
日頃から請求書の発行日と入金日をきちんと記録し、遅延が発生した場合はその理由をメモしておくと、審査時の説明がしやすくなります。
- 過去の入金が支払期日どおりに行われているか
- 請求金額・入金金額に大きなブレがないか
- 入金遅延や未入金の履歴がないか
- 継続取引として今後も同様の売掛金が発生する見込みがあるか
現金取引で使えない主な理由
現金取引が中心の事業では、「売上=その場で現金回収」で完結するため、将来入金されるべき代金としての売掛金が発生しません。
ファクタリングは、本来は請求書などに基づいて発生している売掛債権を譲渡する取引であり、売掛金の存在が前提になります。
また、ファクタリング会社は請求書や契約書、入金実績が分かる通帳明細などを用いて、取引の実在性や継続性、取引先の支払実績を確認しますが、現金売上だけの場合、こうした証拠が十分に残っていないことが多く、審査が難しくなります。
さらに、1件あたりの金額が少額で、取引単位もばらばらな現金商売の場合、審査や事務処理にかかるコストに対して手数料収入が見合わず、ファクタリング会社側の採算が取りにくいという問題もあります。
多くの事業者が最低買取金額を30万〜50万円程度に設定しているのは、このコスト構造を反映したものです。
| 理由 | 現金取引で使いにくい背景 |
|---|---|
| 売掛金の不在 | その場で決済が完了し、将来入金される債権が発生しない |
| 取引証拠の不足 | 請求書・契約書・通帳明細など、審査に必要な資料が残りにくい |
| 少額・散発的取引 | 1件あたりの金額が小さく、審査コストに対して手数料が見合いにくい |
売掛金がないと審査できない
ファクタリングの対象となるのは、請求書などに基づいて発生している売掛債権です。売掛債権とは、商品やサービスを提供した後、契約や請求書に定められた期日までに取引先が支払うべき金銭債権を指します。
現金取引では、提供と同時に現金や即時振込で代金回収が完了するため、「将来の支払いを待つ権利」としての売掛金は発生しません。
この時点で、ファクタリング会社に譲渡できる債権そのものが存在しない状態になります。
ファクタリング会社は、売掛金の内容と支払期日、債務者(取引先)の信用力などを審査しますが、売掛金がなければ、債権の存在や支払予定を確認することができません。
請求書の有無だけでなく、「納品後、○月○日に○円を支払う」といった契約上の支払義務が明確になっているかどうかが重要であり、現金取引が中心の業態では、この前提条件を満たせないケースが多くなります。
その結果、「現金商売だから」というより、「売掛金として説明できる債権がないため審査できない」という形で、利用が難しくなるのが実態です。
- 現金決済のみではファクタリングの対象となる債権が発生しない
- 「売掛金」として支払期日や金額が明記された取引が必要
- 売掛金の有無が審査の出発点であり、なければ審査自体が進まない
- 一部取引を掛取引に切り替えない限り、利用余地は限定的になる
現金売上だけだと証拠が不足
ファクタリング会社は、売掛金の実在性と過去の入金実績を確認するために、請求書や契約書、発注書、納品書、通帳の入出金明細など、複数の書類を求めるのが一般的です。
特に、「同じ取引先に対する過去の請求書」と「その入金が反映された通帳明細」は、継続的な取引関係と支払実績を裏付ける重要な資料として扱われます。
しかし、現金売上が中心の業態では、領収書の控えや売上伝票、レジシステムのデータは残っていても、取引先ごとの請求書や入金明細が整っていないことが少なくありません。
この場合、ファクタリング会社から見ると「本当にその取引先との間で売掛金が発生しているのか」「同じ債権を他社にも譲渡していないか」といった点を客観的に確認しにくくなり、不正や回収不能リスクを判断しづらくなります。
結果として、現金売上のみを根拠にしたファクタリングの申し込みは、審査落ちや取扱い不可となるケースが多くなります。
- 請求書や契約書がなく、取引内容を客観的に示せない
- 通帳明細から取引先別の支払実績を追いにくい
- 売掛金の実在性や継続性を審査側が判断しづらい
- 不正防止・回収リスク管理の観点から、取扱いが見送られやすい
少額・バラバラ取引でコスト増
多くのファクタリング会社は、1回あたりの買取金額に下限を設けており、30万円や50万円といった最低金額以上でないと申込できないケースが少なくありません。
これは、1件ごとに審査や書類確認、契約事務、入金管理などの固定的なコストが発生するためです。買取金額が極端に小さいと、手数料収入だけではこれらのコストを回収しにくく、事業として採算が合わなくなるためです。
例えば、売掛金10万円を手数料率10%でファクタリングすると、手数料は1万円となり、利用者に入金されるのは9万円です。一方で、ファクタリング会社側は10万円の債権に対しても、100万円の債権とほぼ同様の審査・事務コストを負担する必要があります。
そのため、現金取引が中心で1件あたりの売上が数万円と小さく、取引相手も多数に分散している場合、それぞれをファクタリングで資金化していくのは非現実的です。
最近はオンライン型サービスなどで、1万円からの少額ファクタリングに対応する事業者もありますが、その場合でも手数料率は比較的高めに設定されることが多く、実質的なコスト負担は大きくなりがちです。
現金取引主体の事業者が無理に少額債権をファクタリングに回そうとすると、資金繰りの改善よりもコスト増につながる可能性があるため、利用可否だけでなく費用対効果も慎重に確認する必要があります。
- 1件ごとの審査・事務コストが手数料収入に見合わない
- 買取金額の下限に届かず、申込できないケースが多い
- 少額対応サービスでも手数料率が高く、実質コストが重くなりやすい
- 多数の小口債権をまとめて管理する事務負担が増える
現金取引でも使いやすくする工夫
現金取引が中心の事業者であっても、取引の一部を「売掛金」として説明しやすい形に整えたり、請求や入金の管理方法を見直したりすることで、ファクタリングを利用しやすくできます。
具体的には、現金集金を振込・口座振替に切り替えて入金記録を残す、複数の小口売掛金をまとめて請求できるように請求サイクルを整える、少額・短期の債権でも対応可能なファクタリング会社を選ぶ、といった工夫が有効です。
近年は、オンライン完結型のクラウドファクタリングが普及し、中小企業や個人事業主向けに短期・少額の運転資金に対応するサービスも増えています。
こうした工夫を組み合わせることで、「現金商売だから利用できない」という状況を避け、自社の取引実態に合った範囲でファクタリングを選択肢のひとつとして検討しやすくなります。
| 工夫の方向性 | 内容 |
|---|---|
| 決済方法の見直し | 現金集金から振込・口座振替へ切り替え、売掛金と入金記録を残しやすくする |
| 請求サイクルの整理 | 小口取引を月次などでまとめて請求し、ファクタリングに乗せやすい単位に整える |
| サービス選定 | 少額・短期・オンライン完結型など、自社の規模や取引形態に合う会社を選ぶ |
集金から振込・口座振替への変更
現金集金が中心の取引では、売上は発生していても「取引先ごとの売掛金」として整理されておらず、ファクタリング会社が審査に使える請求書や入金記録が不足しがちです。
そこで、取引先との合意を前提に、集金方法を銀行振込や口座振替に切り替えることが有効です。
商品やサービスの提供から支払期日までの間を設けて請求書を発行し、その期日に振込や口座振替で入金してもらう形にすれば、売掛金と入金実績の両方を客観的な資料として示せるようになります。
口座振替を利用すれば、毎月同じ日に指定口座から自動引き落としされるため、入金日が安定し、ファクタリング会社にとっても将来の入金見込みを評価しやすくなります。
また、現金の受け渡しや集金にかかる時間・交通費・紛失リスクも抑制できます。
振込手数料・口座振替の手数料は発生しますが、入金記録が通帳や明細に残ることで、ファクタリングだけでなく金融機関との取引でも信用力の裏付けになりやすい点もメリットです。
- 通帳や明細で取引先ごとの入金実績を示しやすくなる
- 支払期日を定めることで売掛金として整理しやすい
- 現金の持ち運びや集金の手間・リスクを減らせる
- 入金日が安定し、資金繰りや審査評価の見通しが立てやすい
売掛金をまとめてファクタリング
1件あたりの取引金額が小さい事業者の場合、小口の売掛金をバラバラにファクタリングに出そうとすると、事務コストや手数料がかさみやすくなります。
そこで、同一の取引先に対する売掛金を月次などのサイクルでまとめて請求し、一定の金額以上になったタイミングでファクタリングを利用する方法が現実的です。
請求書を「○月分ご請求」として一本化し、支払期日も揃えることで、ファクタリングの申込単位として扱いやすくなります。
近年は、オンライン完結型のクラウドファクタリングで、1〜50万円程度の少額から利用できると案内しているサービスもあり、小口の売掛金をまとめて資金化しやすい環境も整いつつあります。
ただし、複数の取引先の債権をまとめる場合は、それぞれの請求書・支払期日・入金実績が分かるように整理しておくことが重要です。
売掛金をまとめて申込むことで、審査・契約・入金の回数を減らし、全体としての手間やコストを抑えやすくなります。
- 同一取引先ごとに月次などで請求を一本化する
- 請求書に対象期間・金額・支払期日を明確に記載する
- 入金実績を通帳明細などで取引先別に追えるよう整理する
- 少額対応のクラウドファクタリングなども含めて費用対効果を確認する
現金取引に強い会社の探し方
現金取引が多い事業者がファクタリングを利用する場合、「現金商売でも一部掛取引がある中小企業・個人事業主」を想定したサービスを選ぶことが重要です。
具体的には、少額から利用できるか、オンライン完結で申し込みや書類提出がしやすいか、個人事業主や小規模事業者の利用実績があるか、といった点を比較します。
クラウドファクタリングの分野では、中小企業や個人事業主向けに短期・少額の運転資金として活用できるサービスを各社が打ち出しており、地方銀行や信用金庫と提携して提供する事例も増えています。
あわせて、手数料率の上限・下限、最低買取金額、入金までの目安日数、2社間・3社間のどちらに対応しているか、反社会的勢力排除条項や個人情報保護方針の記載なども確認しておくと安心です。
現金取引が多い場合は、「請求書・入金明細がそろっていれば取扱い可能か」「少額債権をまとめて申込んだ実績があるか」といった点を直接問い合わせることで、自社の取引実態に合った会社かどうかを判断しやすくなります。
- 少額・短期の売掛金にも対応しているか
- 中小企業・個人事業主向けの支援実績があるか
- 手数料率・最低買取金額・入金スピードが明確か
- 契約条件やコンプライアンス(反社排除等)の情報開示が十分か
現金取引の会社の資金調達
現金取引が中心の事業は、売掛金が少ない分、回収不能リスクは小さい一方で、手元資金の増減が日々の売上に大きく左右されるという特徴があります。
仕入や家賃、人件費などの固定費は月次でまとまって支払いが発生するため、売上の季節変動や一時的な落ち込みがあると、資金繰りが急に苦しくなることがあります。
中小企業の資金繰り課題として、仕入から販売・回収までの時間差や、短期運転資金の不足が指摘されており、現金商売でも例外ではありません。
一方で、日本政策金融公庫や信用保証協会付き融資など、中小企業向けの資金繰り支援策が用意されており、ファクタリング以外にも複数の選択肢があります。
これらは売掛金の有無にかかわらず、事業計画や決算書などに基づいて資金需要を評価する仕組みで、現金取引の事業者も利用対象となり得ます。
自社の取引形態や資金需要のパターンを整理したうえで、どの手段が適しているかを検討することが重要です。
| 視点 | 現金取引の会社で確認したい点 |
|---|---|
| 収入面 | 売上の季節変動、ピークと閑散期、客単価・来店数の変化 |
| 支出面 | 仕入、家賃、人件費、リース料など固定費・変動費の支払タイミング |
| 手元資金 | 月次でどのタイミングに資金不足が生じやすいか、最低必要現金水準 |
現金商売ならではの資金繰り課題
現金商売は「売上と同時に現金を受け取れる」点で有利に見えますが、実際には仕入や人件費などの支払いが先行し、売上が少ない日や月が続くと一気に手元資金が減るリスクがあります。
中小企業白書などでも、仕入から販売代金の回収までの時間差や、在庫負担が資金繰りを圧迫する要因として指摘されており、現金取引の小売・サービス業でも同様の構造があります。
また、現金取引中心の業態では、売掛金台帳や取引先別の入金管理よりも、レジ売上ベースの管理になりやすく、金融機関から見ると「どのような顧客に、どれくらい継続的に売上があるのか」が把握しにくい場合があります。
その結果、融資やその他の資金調達を検討する際に、決算書や試算表だけでは事業の安定性を十分に示しにくいという課題が生じることがあります。
売上の内訳・在庫の回転状況・固定費の水準など、資金繰りに関わる情報を整理し、金融機関や専門家に説明できる状態にしておくことが、現金商売ならではの課題を補ううえで重要です。
- 売上の季節変動や天候・景気の影響を受けやすい
- 仕入や固定費の支払いが先行し、売上減少時に資金不足が生じやすい
- 現金売上中心だと、取引実績を客観的に示す資料が不足しがち
- 金融機関に事業の安定性・収益性を説明する準備が重要になる
ファクタリング以外の資金調達法
現金取引が主体の事業者にとっては、売掛金が前提となるファクタリング以外の資金調達手段を組み合わせることが現実的です。代表的なのが、金融機関からの事業性融資です。
政府系金融機関である日本政策金融公庫は、小規模事業者や個人企業向けに事業資金の融資を行っており、短期の運転資金を取り扱う「国民生活事業」も設けられています。
民間金融機関からの融資では、信用保証協会の保証付き融資を利用することで、融資を受けやすくする仕組み(信用保証制度)も整備されています。
さらに、中小企業庁や政府系金融機関は、景気変動や物価高の影響を受けた事業者向けに、セーフティネット貸付や特別保証などの資金繰り支援制度を用意しており、一定の条件を満たせば利用できる場合があります。
その他、リース・割賦販売を活用して設備投資の支払いを平準化する、仕入先と支払サイト(支払期日)の見直しを協議する、クレジットカード決済を導入して売上の即時回収と記録の両立を図るといった手段もあります。
ただし、ビジネスローンやカードローンなど金利が高い手段を利用する場合は、返済負担や総支払利息を慎重に確認することが重要です。
- 日本政策金融公庫など政府系金融機関からの融資
- 信用保証協会付きの金融機関融資(信用保証制度)
- セーフティネット貸付・特別保証などの公的支援策
- リース・割賦・支払条件の見直しなどによる資金繰り改善
公的支援や専門家への相談先
資金繰りや資金調達の課題を抱える中小企業・小規模事業者に対しては、公的機関や専門家による相談窓口が用意されています。
中小企業庁は、政府系金融機関による融資や信用保証協会による保証など、金融一般支援の施策を体系的に案内しており、資金繰りに悩む事業者向けのパンフレットや相談窓口情報も公表しています。
日本政策金融公庫も、最寄りの支店や事業資金相談ダイヤルを通じて、資金繰りや利用可能な融資制度について相談を受け付けています。
また、商工会議所・商工会、商店街振興組合などの地域団体では、経営相談や資金繰り相談を行っており、日本政策金融公庫もこれらの団体や地域金融機関と連携して小規模事業者を支援しています。
経営改善や資金繰りの見直しが必要な場合は、税理士や中小企業診断士、認定経営革新等支援機関などの専門家に相談し、事業計画や資金繰り表の作成をサポートしてもらう方法もあります。
公的支援制度の利用可否や、どの順番で手続きを進めるべきかについても、こうした専門家の助言を得ることで判断しやすくなります。
- 中小企業庁が案内する資金繰り支援・金融一般支援
- 日本政策金融公庫の支店・事業資金相談ダイヤル
- 商工会議所・商工会など地域の経営相談窓口
- 税理士・中小企業診断士・認定支援機関など専門家
まとめ
現金取引が中心でも、請求書発行や翌月払いなどで売掛金が発生していれば、ファクタリングを利用できるケースがあります。
一方で、現金売上だけで証拠が残らない取引や、少額・バラバラな取引が多い場合は、審査やコスト面で不利になりやすく注意が必要です。
自社の取引形態と証憑の残し方を見直しつつ、振込・口座振替への切り替えや、公的融資・保証協会など他の資金調達方法も比較検討することが重要です。
























