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中小企業のためのファクタリングと商品在庫活用|在庫ファイナンス・ABLを徹底解説

商品在庫は売上の源泉である一方、資金が在庫に固定される要因にもなります。「売掛金が少なくファクタリングを使いにくい」「在庫が膨らみ資金繰りが厳しい」という中小企業も少なくありません。本記事では、商品在庫を担保とした在庫ファイナンスやABL(動産・債権担保融資)の基本から、売掛金ファクタリングとの違い、メリット・注意点、在庫と売掛金を組み合わせた資金繰り戦略までを客観的に整理します。

 

商品在庫とファクタリングの基礎

商品在庫は、製造業・卸売業・小売業などの企業が保有する「販売を目的とした商品・製品」のことで、棚卸資産として貸借対照表に計上されます。

在庫は将来の売上・利益の源泉である一方、売れるまで現金化されないため、資金が在庫に固定されてしまう要因にもなります。

 

売掛金ファクタリングは、すでに発生した売掛債権(請求済みだが未入金の代金)をファクタリング会社に譲渡し、支払期日前に現金化する取引です。

これに対して商品在庫ファクタリング(在庫ファクタリング)は、売掛債権ではなく商品在庫そのものをファクタリング会社や専門事業者が買い取り、在庫を現金化するスキームを指します。

 

身近な例として、中古品買取や在庫買取サービスのように、「在庫商品を売却してキャッシュに変える」イメージに近いと説明されることが多く、売掛金が少ない業種でも在庫を活かした資金調達が検討できます。

一方、商品在庫を担保にした在庫担保融資やABL(Asset Based Lending=動産・債権担保融資)のように、在庫を担保に融資を受ける手法もあります。

 

これらは法的には「融資」に当たるため、売掛金ファクタリング(債権売買)とは性質が異なります。

在庫と売掛金のどちらを基に資金化するのか、売買なのか融資なのかを切り分けて理解することが、商品在庫を活用した資金調達を検討するうえでの前提となります。

 

手法 資産・法的性質の概要
売掛金ファクタリング 売掛債権を譲渡して現金化する取引。法的には債権の売買(債権譲渡)。
商品在庫ファクタリング 商品在庫を売却して資金化する取引。実態は在庫買取・在庫ファイナンスに近い。
在庫担保融資・ABL 商品在庫や売掛金などを担保とする融資。法的には金銭の貸付けに該当。

 

商品在庫ファクタリングとは

商品在庫ファクタリングは、保有している商品在庫をファクタリング会社や在庫買取専門事業者に売却し、その買取代金を受け取ることで資金を確保する手法です。

一般的な解説では、「不要な本やゲームをリサイクルショップに売って現金化する仕組み」とほぼ同じであり、売れ残り在庫や不良在庫も対象になり得ると説明されています。

 

取引の流れとしては、在庫ファクタリング事業者へ申込→在庫商品の査定→買取金額の提示→合意ができれば在庫を引き渡して代金を受け取る、というシンプルなステップが基本です。

査定では、在庫の種類(食品・アパレル・家電など)、市場価格、需要動向、在庫の状態(傷み・賞味期限・型落ち状況など)が重視されます。

 

評価額に対する買取率(評価額に対して実際に支払われる割合)は、在庫の換金性によって大きく変動しますが、在庫ファクタリングの解説では一部の事例として評価額の数十%程度(10〜50%など)が目安として挙げられることがあります。

例えば、特定の商品在庫の評価額が500万円と査定され、買取率40%であれば、買取代金は200万円(500万円×40%)となります。

 

この代金を受け取ることで、在庫に固定されていた資金の一部を現金として確保でき、仕入代金や運転資金に充てることができます。

法的には売買契約に該当し、売却後は在庫の所有権や販売リスクは買取側に移転するのが基本です。

 

商品在庫ファクタリングの基本イメージ
  • 対象は売掛金ではなく、棚卸資産として保有している商品在庫
  • 在庫を事業者に売却し、その買取代金を受け取って資金化する
  • 評価額に対する買取率は在庫の種類・売れ行き・市場価格で変動する
  • 在庫処分と資金調達を同時に進めたい場面で活用が検討される

 

売掛金ファクタリングとの違い

売掛金ファクタリングと商品在庫ファクタリングは、どちらも「保有資産を現金化する」という点では共通しますが、対象資産・法的性質・リスク分担・評価方法が大きく異なります。

売掛金ファクタリングは、取引先に対する売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、手数料を差し引いた金額を期日前に受け取る仕組みで、法的には債権の売買(債権譲渡)です。

 

売掛金の支払期日に取引先からファクタリング会社へ入金が行われるため、査定の中心は「売掛先の信用力」「支払実績」「支払サイト」など、取引先側の与信です。

一方、商品在庫ファクタリングでは、対象が売掛債権ではなく在庫商品そのものであり、売却後は在庫の販売リスクや価格変動リスクを買取側が負う構造が一般的です。

 

そのため、査定の中心は「在庫自体の換金性」「市場ニーズ」「在庫の品質・数量管理」などであり、取引先の信用情報よりも、在庫商品としての価値が重視されます。

また、在庫担保融資やABLの場合は、在庫や売掛金を担保に金融機関等から借入を行うスキームであり、返済義務を伴う「融資」として取り扱われます。

したがって、同じ「商品在庫を活用する」方法でも、①在庫を売却する(在庫ファクタリング・在庫買取)、②在庫を担保に融資を受ける(ABL等)、③売掛金を譲渡して資金化する(売掛金ファクタリング)という違いを整理しておくことが、自社に適した手法を選ぶうえで重要です。

 

売掛金ファクタリングとの主な違いを整理するポイント
  • 対象資産:売掛債権か、商品在庫か、あるいは在庫担保融資かを切り分けて確認する
  • 法的性質:債権・在庫の売買なのか、在庫を担保とした融資なのかを把握する
  • 査定軸:取引先の信用力が中心か、在庫商品の換金性が中心かを確認する
  • リスク分担:売却後の不払いリスクや在庫リスクを誰が負うかを契約書で明確にする

 

商品在庫を活かす資金調達方法

商品在庫を活用した資金調達には、大きく分けて「在庫ファイナンス(在庫を利用した資金調達全般)」「ABL(Asset Based Lending=動産・債権担保融資)」「在庫買取・在庫処分」の3つの方向性があります。

在庫ファイナンスは、サプライチェーン上の在庫や物流センターの中間在庫などを対象に、在庫情報と金融を結びつけて資金を供給する仕組みと説明されています。

 

ABLは、企業が保有する在庫・売掛金・機械設備などの事業資産を担保として金融機関から融資を受ける手法であり、不動産担保に依存しない資金調達として、中小企業向け制度融資にも組み込まれています。

一方、在庫買取・在庫処分は、在庫そのものを売却して現金化する点で在庫ファクタリングに近いものの、金融スキームというより「在庫売却・値下げ販売」の延長線上にある手段です。

中小企業が在庫を活用して資金調達を検討する際は、「在庫を売るのか」「在庫を担保に借りるのか」「在庫をどの範囲まで外部化するのか」という軸で整理すると、自社に適した方法を選びやすくなります。

 

手法 資金化のイメージ
在庫ファイナンス サプライチェーン上の在庫情報を基に、在庫を利用した資金調達を行う仕組み。
ABL(動産・債権担保融資) 在庫・売掛金・設備等を担保として、金融機関から融資を受ける手法。
在庫買取・在庫処分 在庫を買取業者や市場に売却し、売却代金として現金化する手法。

 

在庫ファイナンスとABLの仕組み

在庫ファイナンスは、広義には「在庫を利用した資金調達」の総称で、サプライチェーンファイナンスの一種と位置付けられています。

メーカーから出荷され、小売店に並ぶまでの間に生じる中間在庫や、物流倉庫に保管されている商品在庫を対象に、在庫の所有権・情報・リスクを組み替えながら金融機関等が資金を供給する仕組みが紹介されています。

 

例えば、物流センターにある在庫を金融機関側が買い取ったうえで、小売は必要に応じて引き取る形にすることで、在庫リスクや資金負担を平準化するようなモデルが検討されています。

ABL(Asset Based Lending)は、「動産・債権担保融資」とほぼ同義と説明されており、企業が保有する売掛金・在庫・機械設備などの事業資産の清算価値を基準に、一定の掛目(評価額に対する融資割合)で貸出を行う手法です。

 

東京都などの制度融資でも、商品在庫や仕掛品等を担保として活用できるABLメニューが用意されており、不動産担保に乏しい中小企業の資金調達手段の一つとして位置付けられています。

実務上の違いとして、在庫ファイナンスが「在庫の所有権・情報の流れを組み替えながら資金を供給する仕組み」であるのに対し、ABLは「在庫を担保にした融資」であり、あくまで借入として元本返済義務を負う点が挙げられます。

どちらも在庫を起点とした資金調達ですが、「売却型か担保型か」「在庫リスクを誰が負うか」が異なるため、自社のニーズとリスク許容度に応じた選択が必要です。

 

在庫ファイナンスとABLを整理するポイント
  • 在庫ファイナンス:在庫・サプライチェーン情報を活用する資金調達スキーム
  • ABL:在庫や売掛金などを担保とする融資(借入)で元本返済義務がある
  • どちらも不動産担保に依存せず、事業資産を活用して資金調達する手法
  • 所有権・リスクの移転構造と返済義務の有無を契約書で確認することが重要

 

在庫処分・在庫買取との違い整理

在庫処分・在庫買取は、在庫を現金化するという意味では在庫ファクタリングや在庫ファイナンスと似ていますが、位置付けや目的がやや異なります。

一般的な在庫処分は、セール・値下げ販売・アウトレット販売などを通じて顧客に直接販売し、売れ残り在庫を減らす取り組みを指します。

 

一方、在庫買取サービスは、余剰在庫や型落ち品、不良在庫を専門の買取事業者に売却し、まとめて現金化する手法です。

これらはいずれも「商品販売」の延長としての取引であり、金融スキームというよりは商流の一部と整理されます。

 

これに対して在庫ファイナンスや在庫ファクタリングは、資金調達の観点から、在庫の所有権の移転や担保設定を通じて資金供給を受ける仕組みとして設計されます。

例えば、在庫買取では在庫の販売単価が大きく低下しても、単純に「在庫処分コスト」として認識されますが、在庫ファイナンスでは「在庫評価額」「掛目」「金利・手数料」などの金融的な条件が明示され、資金調達コストとして比較検討されます。

 

また、在庫処分は一度きりの売却であることが多いのに対し、ABLなどでは一定の在庫水準に応じて継続的に融資枠を設定するような運用も可能です。

中小企業が在庫を活かした資金調達を検討する場合、「単に在庫を処分して売上を回収する」のか、「在庫を起点に金融機関等から資金を引き出す」のかによって、コスト構造やリスク分担が変わります。

在庫処分・在庫買取は在庫の圧縮や倉庫スペースの削減に適している一方、在庫ファイナンスやABLは、在庫を保持しつつ資金化することを重視する手法といえます。

 

在庫処分・在庫買取と金融スキームの違い
  • 在庫処分・在庫買取:商品販売の一形態で、在庫を売却して現金化する手法
  • 在庫ファイナンス・ABL:在庫を起点に資金供給を受ける金融スキーム
  • 処分は一度きりの売却が中心、ABL等は在庫残高に応じた継続的な枠設定もあり得る
  • 自社が重視するのは「在庫圧縮」か「在庫維持と資金化」かを整理して選択することが重要

 

商品在庫ファクタリングのメリット

商品在庫ファクタリング(在庫ファクタリング)は、売掛金ではなく保有する商品在庫そのものを評価・買取してもらうことで資金化する仕組みです。

売掛金ファクタリングは「すでに販売した取引」にしか使えませんが、在庫ファクタリングは「まだ販売していない商品」を対象にできるため、売掛金が少ない業種や、シーズンオフ商品・型落ち品などを多く抱える企業でも活用しやすい点が特徴です。

 

メリットとして第一に挙げられるのは、在庫に固定されている資金を早期に現金化し、運転資金に振り替えられることです。

例えば、評価額500万円の在庫を買取率40%で売却した場合、200万円(500万円×40%)の資金を即時に手元に戻すことができます。

 

もちろん帳簿上は在庫の評価減を受けますが、「売れ残りリスク」や「廃棄コスト」を考えると、一定のディスカウントを許容して早めにキャッシュに変える判断もあり得ます。

第二に、在庫の圧縮と倉庫スペースの有効活用につながる点です。過剰在庫を抱えたままにすると、保管料・光熱費・棚卸の事務負担などが継続的に発生します。

 

在庫ファクタリングや在庫買取を組み合わせることで、低回転の在庫だけを選んで売却し、主力商品や回転の速い商品に仕入資金を振り向けることが可能になります。

また、ABLなど在庫を担保とした融資と組み合わせれば、「売れる在庫は担保にして借りる」「売れ残りそうな在庫は売却して現金化する」といった使い分けも検討できます。

 

メリット 具体的な内容
資金化の対象拡大 売掛金が少ない場合でも、商品在庫を現金化できる。
在庫圧縮 低回転・不良在庫を処分し、倉庫スペースや管理コストを削減できる。
資金繰り改善 在庫に固定されていた資金を仕入・運転資金に振り向けられる。
他手段との併用 ABL(動産・債権担保融資)などと組み合わせ、在庫と売掛金を総合的に活用できる。

 

売掛金が少ない業種での活用

売掛金ファクタリングは、請求書や売掛金が一定量存在する企業でなければ利用しづらい手法です。

一方で、小売店・EC事業者・飲食店など、現金売上やカード決済比率が高く「売掛金自体が少ない業種」では、売掛金ファクタリングだけでは十分な資金調達余地を確保できない場合があります。

 

このような企業でも、商品在庫は多く抱えていることが多く、在庫ファクタリングや在庫買取を活用することで、在庫を直接資金に変えることが可能になります。

例えば、アパレル小売業では、シーズンごとに大量の衣料品を仕入れますが、その一部は売れ残り在庫になりがちです。

 

売掛金が少ない店舗でも、シーズンオフ商品やサイズ欠け商品などを在庫ファクタリング事業者に売却することで、在庫に眠っていた資金の一部を現金として回収できます。

また、家電量販店や雑貨店などでも、型落ち品・展示品・パッケージ破損品など、通常価格では販売しづらい在庫を対象にするケースが想定されます。

 

数値例として、シーズン落ちの在庫評価額が300万円、買取率50%の条件であれば、買取代金は150万円となります。

この150万円を仕入資金や家賃・人件費の支払に充当すれば、売掛金が少なくても一定の資金繰り改善効果を得ることができます。

もちろん、在庫評価額と買取率のバランスを見ながら、「どの在庫をどの程度まで売却するか」を検討する必要がありますが、売掛金に依存しない資金調達の一手として位置づけることができます。

 

売掛金が少ない業種で検討しやすいケース
  • 小売・ECなど現金売上中心で、売掛金が少ない業種
  • シーズンオフ商品やトレンド品の売れ残り在庫が多い業態
  • 店舗移転・縮小に伴い在庫を一括で現金化したい場面
  • 売掛金ファクタリングだけでは資金調達余地が限られる企業

 

在庫圧縮とキャッシュフロー改善

商品在庫ファクタリングのもう一つの大きなメリットは、「在庫圧縮」と「キャッシュフロー改善」を同時に進めやすい点です。

在庫を多く抱えたままにすると、倉庫スペース・保管料・保険料などのコストが増加し、さらにトレンド変化や品質劣化により価値が下がるリスクも高まります。

 

在庫ファクタリングや在庫買取を利用すれば、回転の遅い在庫を優先的に売却し、在庫残高を適正水準に引き下げつつ、その対価を現金として確保できます。

例えば、ある企業の棚卸資産が1,000万円、そのうち300万円分が1年以上動いていない低回転在庫だとします。

 

低回転在庫300万円を買取率50%で在庫ファクタリングした場合、150万円のキャッシュが手元に入り、在庫残高は700万円に圧縮されます。

150万円分は評価損として利益を押し下げますが、在庫を持ち続けた結果、さらに値下がりしたり廃棄処分が必要になったりするリスクを考えると、「早期に現金化して運転資金に振り向ける」選択肢も検討の余地があります。

 

さらに、在庫回転期間(在庫が何日分の売上に相当するか)を短縮できれば、キャッシュコンバージョンサイクル全体の改善にもつながります。

在庫圧縮により倉庫スペースに余裕が生まれれば、主力商品の追加仕入れや新商材の投入もしやすくなり、販売機会の拡大にもつながります。

 

また、決算書の観点では、棚卸資産の圧縮により貸借対照表のスリム化が進み、金融機関との対話の中でも「過剰在庫を計画的に圧縮している」という説明がしやすくなります。

ただし、在庫ファクタリングはあくまで在庫売却であるため、「将来も売れる在庫」まで過度に手放してしまうと、売上機会の喪失につながる点には注意が必要です。

 

在庫圧縮とキャッシュフロー改善のポイント
  • 低回転・不良在庫を優先的に資金化し、在庫残高を適正水準にする
  • 在庫買取額と評価損のバランスを確認し、廃棄リスクと比較して判断する
  • 在庫回転期間やキャッシュコンバージョンサイクルの数値変化を把握する
  • 圧縮した在庫分のスペースと資金を、主力商品や成長分野に再配分する

 

商品在庫ファクタリングの注意点

商品在庫ファクタリングは、在庫を資金化できる一方で、「評価額」と「買取率」の考え方や、在庫の管理方法を誤ると期待した効果が得られないおそれがあります。

売掛金ファクタリングと違い、在庫は市場価格や需要動向により価値が変動しやすく、評価基準も事業者ごとに異なります。

 

また、在庫を売却するのか、在庫を担保に融資を受けるのか、在庫を預け入れるのかといったスキームの違いによって、在庫の所有権や保管義務、在庫リスクを誰が負うかも変わります。

そのため、商品在庫ファクタリングを検討する際は、①どの価格を基準に評価額が決まるのか(原価か、市場価格か、処分価格か)、②評価額に対してどの程度の買取率が適用されるのか、③在庫の保管場所・保管者・損害発生時の負担者は誰か、といった点を客観的に整理しておくことが重要です。

加えて、在庫をどの程度まで資金化するかによって、今後の販売計画や仕入計画にも影響が出るため、「資金繰り」と「在庫戦略」を一体で検討する必要があります。

 

確認項目 注意したいポイント
評価額 どの価格(原価・市場価格・処分価格)を基準にしているかを確認する。
買取率 評価額に対する買取割合と、その根拠(換金性・需要など)を把握する。
保管・リスク 在庫の保管場所・損害発生時の負担者・保険の有無などを契約書で確認する。

 

評価額と買取率の目安水準

商品在庫ファクタリングで提示される「買取額」は、一般に「在庫評価額×買取率」で決まります。

在庫評価額は、在庫の種類や状態、需要、処分方法などに応じて、仕入原価ではなく、実際に市場で売却できると見込まれる価格(リセールバリュー)を基準に設定されることが多いです。

 

買取率(評価額に対する支払割合)は、在庫の換金性・保管コスト・値崩れリスクなどを踏まえて決まるため、汎用品・定番品のように市場流通量が多く需要が安定している在庫は買取率が高くなりやすく、流行品・賞味期限の短い商品・特殊仕様品などは買取率が低くなりやすい傾向があります。

数値イメージとして、評価額500万円の在庫に対して買取率40%であれば買取額は200万円、買取率60%であれば300万円です。

 

評価額そのものが「原価500万円」ではなく、「今売却した場合に見込まれる回収額500万円」を前提としているため、すでに値下がりや陳腐化を織り込んだ水準で査定される点に留意が必要です。

買取率だけを見るのではなく、「評価額×買取率=実際の入金額」をベースに、在庫を保有し続けた場合に見込まれる利益・保管コスト・廃棄リスクと比較検討します。

実務上は、次のようなステップで自社にとって妥当かをチェックすると整理しやすくなります。

 

評価額・買取率を検討する際のチェックポイント
  • 在庫評価額が「原価」ではなく「現在の販売価格ベース」かどうかを確認する
  • 評価額に対する買取率と、最終的な入金額(評価額×買取率)を把握する
  • 在庫を保有し続けた場合の想定売上・粗利と、買取額との差を比較する
  • 複数社から査定を取り、評価額と買取率の組み合わせを比較する

 

保管義務と在庫リスク管理

商品在庫ファクタリングや在庫ファイナンスでは、「在庫をどこで、誰が保管し、どの範囲のリスクを誰が負うか」が重要な論点になります。

単純な在庫買取であれば、在庫の所有権とリスクは買取側に移転し、在庫は倉庫移転や廃棄も含めて買取側の判断で処分されるのが一般的です。

 

一方で、在庫ファイナンスや一部のスキームでは、「所有権は移っているが在庫は引き続き利用者の倉庫で保管する」「一定期間は利用者が在庫管理を行い、損害が出た場合は負担する」といった条件が付されることがあります。

このような場合、火災・盗難・水濡れ・品質劣化など、在庫に生じるリスクの範囲と、損害が発生したときの負担者(利用者か、金融機関・買取側か)を事前に明確にしておく必要があります。

 

例えば、在庫の所有権が買取側に移転した後でも、保管管理上の過失による損害は利用者が負担する、といった取り決めがされることもあり、その場合は保管体制や保険加入の有無を含めた在庫リスク管理が求められます。

また、在庫ファクタリングを繰り返し利用する場合、どの在庫がすでに売却済みなのか、どの在庫が自社の在庫なのかを棚卸・在庫管理システム上で明確に区別しておかなければ、誤って売却済み在庫を出荷してしまうなどのトラブルにつながるおそれがあります。

在庫数量やロット管理、賞味期限管理が不足していると、資金化後のオペレーションリスクが高まるため、利用前に在庫管理プロセスを点検しておくことが重要です。

 

保管義務と在庫リスク管理で確認したい事項
  • 在庫の所有権がいつ、誰に移転するのか(契約書で明確になっているか)
  • 在庫の保管場所と管理責任者、損害発生時の負担者を確認しているか
  • 火災・盗難・劣化などに備えた保険や管理ルールが整備されているか
  • 売却済み在庫と自社在庫を在庫システム上で区別できる仕組みがあるか

 

中小企業の在庫と資金繰り活用戦略

中小企業の資金繰りを考える際、「売掛金」「商品在庫」「仕入債務(買掛金)」は一体で管理することが重要です。

売掛金ファクタリングはすでに請求済みの債権を早期に現金化する手法であり、商品在庫ファクタリングや在庫ファイナンスは、まだ販売していない在庫を資金調達に活用する手法です。

 

どちらもバランスよく使うことで、キャッシュコンバージョンサイクル(仕入から代金回収までの期間)の短縮と、資金繰りの安定化が図りやすくなります。

一方で、在庫・売掛金の双方を過度に資金化しすぎると、将来の売上や利益を前倒しで取り崩すことになり、次の仕入や投資に必要な原資が不足するリスクも生じます。

 

そのため、「どこまで資産を資金化するか」「どの程度を借入に頼るか」「どの水準まで在庫を持つか」といったルールを、社内の資金繰り方針として整理しておくことが重要です。

特に、季節変動の大きい業種では、繁忙期・閑散期ごとに在庫水準と資金調達手段を組み合わせた年間シナリオを作成しておくと、急な売上変動や仕入負担増にも対応しやすくなります。

 

観点 在庫・売掛金を活かした資金繰りの考え方
資金化対象 売掛金(請求済み売上)と商品在庫(未販売商品)の両方を候補として整理する。
資金化の範囲 必要資金額と在庫・売掛金残高を比較し、「どこまで前倒しするか」の上限を決める。
期間・頻度 一時的な資金ショート対策か、継続的な運転資金対策かで、手法と頻度を使い分ける。
他手段との併用 銀行融資・リース・ビジネスローンなどとの役割分担を明確にする。

 

商品在庫と売掛金の併用活用

商品在庫と売掛金は、本来ひとつの取引サイクルの前半と後半を構成する資産です。仕入や製造で商品在庫が増え、販売により在庫が減って売掛金が発生し、代金回収により売掛金が現金に変わります。

このサイクルのどこを資金化するかによって、選ぶべき手段が変わります。売掛金が十分にある企業であれば、まずは売掛金ファクタリングを活用し、在庫については回転率の低いものだけを在庫ファクタリングや在庫買取の対象にする、といった組み立てが考えられます。

 

一方で、現金売上やカード決済比率が高く売掛金が少ない企業では、商品在庫の方が資金化の主役になり得ます。この場合、在庫のABC分析(売れ筋・準売れ筋・不良在庫の区分)を行い、不良在庫や低回転在庫を中心に資金化し、売れ筋在庫は極力維持する、といった運用が重要です。

また、売掛金ファクタリングと在庫ファクタリングを併用する場合、同じ売上に二重に依存しないよう、どの資産をどの手段で資金化するかを仕訳や管理表で明確にしておく必要があります。

銀行融資やABLと組み合わせる際には、「短期的な資金ショート対策にはファクタリング」「中長期的な運転資金枠にはABLやプロパー融資」というように期間と目的で役割分担を行うと、返済負担を無理なくコントロールしやすくなります。

 

在庫と売掛金を併用する際の実務ポイント
  • 売掛金ファクタリングは「既に売った部分」、在庫ファクタリングは「まだ売っていない部分」を対象とする
  • 在庫のABC分析で、売れ筋と不良在庫を区分して資金化の優先順位を決める
  • 同じ取引について在庫と売掛金を重複して資金化しないよう管理する
  • 短期・中期の資金需要を分け、ファクタリングと融資の役割分担を整理する

 

在庫ファイナンス検討の判断軸

在庫ファイナンスや商品在庫ファクタリングを検討する際には、「資金繰りが苦しいから使う」という視点だけでなく、「在庫戦略上、どの程度まで資金化するのが妥当か」という判断軸が必要です。

第一の軸は在庫回転率です。一定期間の売上原価を平均在庫で割った在庫回転率が極端に低い場合、その在庫は長期間資金を拘束しており、資金化の優先候補となります。

 

逆に、回転の速い主力在庫まで資金化してしまうと、品切れや販売機会の損失につながるおそれがあります。

第二の軸は粗利率です。粗利率が高い商品は、通常販売で売り切れば高い利益をもたらしますが、在庫ファイナンスで早期に売却してしまうと、その利益機会を手放すことになります。

粗利率が低く、在庫保管コストや値下がりリスクが高い商品は、在庫ファクタリングや在庫買取で早めに処分した方が合理的な場合もあります。

 

第三の軸として、代替手段のコスト(銀行融資・ビジネスローン・リースなど)と比較し、在庫ファイナンスのコストが優位かどうかも重要な判断材料です。

さらに、在庫情報を正確に把握・提供できる体制があるかどうかも、実務上の大きなポイントです。

 

在庫数量・ロット・保管場所・品質状態を適切に管理できていない場合、査定やモニタリングに時間を要し、希望どおりの条件で資金調達できない可能性があります。

経理・在庫管理・営業の各部門で在庫データを共有し、定期的な棚卸や在庫分析を行っておくことが、在庫ファイナンスを活用する前提条件となります。

 

在庫ファイナンスを検討する際の判断軸チェックリスト
  • 在庫回転率が低い商品や、保管コスト・劣化リスクが高い商品かどうか
  • 粗利率や将来の販売計画を踏まえ、早期資金化が妥当かどうか
  • 他の資金調達手段(融資・リース等)の金利・条件と比較してコスト面で納得できるか
  • 在庫数量・品質・保管場所を正確に把握できる管理体制が整っているか

 

まとめ

商品在庫を活用したファイナンスやABLは、売掛金が少ない業種でも在庫を資金化できる手段として位置付けられます。

一方で、在庫評価額や買取率の水準、保管義務・劣化リスクなど、売掛金ファクタリングとは異なる管理ポイントがあります。

自社の在庫構成と売掛金のバランスを把握し、「どの在庫をどの程度資金化するか」「既存の借入とどう組み合わせるか」を検討することで、過剰在庫の圧縮とキャッシュフロー改善を両立しやすくなります。