赤字決算が続き銀行融資の審査に通らず、資金繰りに行き詰まっている企業は少なくありません。そこで、売掛金を早期に現金化できる資金調達手段としてファクタリングが利用されています。
本記事では、赤字決算企業でも利用しやすい仕組みや審査の見られ方、メリット・デメリット、銀行融資やビジネスローンとの違いを客観的に整理し、選択肢を比較検討するための基礎情報を解説します。
目次
赤字決算企業と資金繰りの現状把握
赤字決算とは、一定期間の収益よりも費用が大きく、当期純損失が計上されている状態を指します。
損益計算書上の赤字が続くと、企業の自己資本は薄くなり、金融機関や取引先からの信用にも影響が出やすくなります。
一方で、減価償却費のように現金支出を伴わない費用も含まれるため、「赤字だから必ず資金ショートしている」とは限りません。
資金繰りを把握するには、損益だけでなく、売掛金・買掛金・在庫の回転、借入金の返済スケジュールなど、実際の入出金のタイミングを合わせて確認する必要があります。
特に中小企業では、売上の季節変動や大口取引先の支払いサイトの長期化により、一時的に資金が不足するケースが多くみられます。
そのような局面で、銀行融資が難しい場合に検討される手段の一つが、売掛金を現金化するファクタリングです。
自社の決算状況と資金繰りの実態を切り分けて把握することが、適切な資金調達手段を選ぶ前提になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 赤字決算 | 当期純損失が計上され、自己資本が減少している状態 |
| 資金繰り | 売上入金と仕入・経費・返済などの支払のタイミング管理 |
| 主な課題 | 信用力低下、資金ショートリスク、銀行融資のハードル上昇 |
赤字決算が資金繰りへ与える影響
赤字決算が続くと、企業内部に留保できる資金が減少し、日々の運転資金の余裕が小さくなります。
例えば、売上1,000万円に対して仕入・人件費・家賃などの費用が1,100万円(いずれも税抜)であれば、利益ベースでは100万円の赤字となり、自己資本を取り崩して運転資金を賄う必要が生じます。
現金収支の面では、売掛金の回収が遅れたり、在庫の滞留が増えたりすると、帳簿上以上に資金繰りが苦しくなります。
また、赤字決算が金融機関や取引先に知られると、支払条件の見直しや与信枠の縮小につながることがあり、結果としてさらなる資金繰り悪化を招くおそれがあります。
資金繰りへの影響を把握するには、月次の資金繰り表を作成し、今後数か月の入金・支払予定を可視化することが重要です。
特に大口の売掛金に依存している企業では、その売掛金が予定どおり入金されない場合の代替手段を事前に検討しておく必要があります。
- 内部留保減少による運転資金の余裕低下
- 金融機関・取引先からの信用低下と条件悪化
- 売掛金回収遅延時の資金ショートリスクの増大
- 追加調達手段が限定され、選択肢が狭まる可能性
赤字決算と銀行融資審査のポイント
銀行が融資審査を行う際、単年度の赤字決算だけで即座に融資不可と判断されるわけではありませんが、慎重な評価の対象となります。
一般的に、銀行は直近数期の決算内容を確認し、売上や利益のトレンド、自己資本比率、借入金残高、債務超過の有無などを総合的に見ています。
赤字決算の場合でも、本業の稼ぐ力を示す営業利益や営業キャッシュフローが改善傾向にあるか、一時的な要因による赤字かどうかが重視されます。
また、既存借入の返済原資が確保できるかを確認するため、返済額とキャッシュフローのバランスも重要なチェックポイントです。
資金使途が運転資金なのか、設備投資なのか、過去の赤字補填なのかによっても評価は変わります。
赤字が複数期続き、債務超過に至っている場合は、新規融資や増額融資のハードルが高まり、保証協会付き融資の利用も難しくなることがあります。
したがって、銀行融資が難しいと判断される局面では、売掛金を活用したファクタリングなど、決算内容とは異なる基準で審査が行われる資金調達手段を検討するケースが増えます。
- 赤字の継続期間と債務超過の有無
- 営業利益・営業キャッシュフローの改善余地
- 既存借入の返済原資と返済能力
- 資金使途の妥当性と具体的な改善計画の有無
ファクタリングの仕組みと赤字決算
ファクタリングは、企業が保有する売掛金(請求書)をファクタリング会社に譲渡し、その代金を早期に受け取る資金調達手段です。
赤字決算かどうかではなく、「売掛金が実在し、回収見込みが高いかどうか」が基本的な前提になります。
代表的な形態として、取引先に通知を行う三社間ファクタリングと、通知を行わない二社間ファクタリングがあり、二社間の方が手数料率(請求書額面に対する手数料の割合)は高くなる傾向があります。
また、買い取り型(売掛金を譲渡して資金化する方式)と保証型(売掛金の回収不能リスクのみを保証する方式)、償還請求権の有無(回収不能時に利用者が買い戻す義務があるかどうか)など、スキームによってリスクとコストの構造が異なります。
赤字決算企業であっても、売掛先の信用力や取引実績が十分であれば利用可能なケースは多く、損益の赤字と資金繰りの課題を切り分けて検討できる点が特徴です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 二社間ファクタリング | 利用者とファクタリング会社で契約。取引先へ通知なしが一般的で、手数料率は比較的高い。 |
| 三社間ファクタリング | 利用者・ファクタリング会社・取引先の三者で契約。取引先に債権譲渡を通知し、手数料率は抑えられやすい。 |
| 買取率 | 請求書額面に対して実際に支払われる割合。請求書100万円・買取率95%なら入金額は95万円。 |
ファクタリングの基本構造と流れ
ファクタリングの一般的な流れは、申込→審査→契約→入金→売掛金の回収という順序で進みます。
まず利用者は、請求書や取引基本契約書、決算書、試算表などをファクタリング会社に提出し、売掛金の内容と取引実態を説明します。
審査では、売掛先の企業情報、取引期間、支払サイト、支払遅延の有無などが確認され、問題がなければ買取金額・手数料率・入金予定日などの条件が提示されます。
条件に合意したうえで、基本契約書および個別契約書を締結し、必要に応じて債権譲渡登記や債権譲渡通知書の作成を行います。
その後、ファクタリング会社から利用者へ買取代金が振り込まれ、期日到来時に取引先からファクタリング会社へ売掛金が支払われる、という構造です。
請求書額500万円、手数料率5%、買取率95%の場合、利用者は概ね475万円(税・諸費用を除く)の入金を支払いサイトより前倒しで受け取るイメージになります。
- 売掛金内容と取引実績を前提に申込・資料提出を行う
- 売掛先の信用力や支払履歴などを中心に審査が行われる
- 条件合意後、契約締結と債権譲渡の手続を実施する
- 買取代金が先に入金され、後日ファクタリング会社が回収する
赤字決算でも審査対象は売掛先中心
ファクタリングの審査では、赤字決算かどうかよりも、売掛先企業の支払能力や取引履歴が重視されるのが一般的です。
具体的には、売掛先の規模や業歴、財務内容、公的な信用情報、支払遅延や不払いの有無などが確認されます。
利用者側についても、反社会的勢力との関係がないか、税金や社会保険料の滞納がないか、取引が実在しているかといった点はチェックされますが、赤字決算というだけで一律に利用不可になるわけではありません。
例えば、売掛先が上場企業や大手企業であり、長期間にわたり安定した取引が継続している場合、利用者が赤字決算でも、売掛金の回収見込みが高いと判断されれば買取対象となるケースがあります。
一方で、売掛先の数が極端に少ない、循環取引が疑われる、請求書と実際の取引内容が一致しないといった場合は、赤字かどうかにかかわらず審査が厳しくなります。
- 売掛先の信用力・支払実績が十分かどうか
- 請求書・契約書・納品書などの書類が整っているか
- 税金・社会保険料の滞納や重大な法令違反がないか
- 取引内容が実態に即しており、循環取引等の疑念がないか
赤字決算でファクタリングを使うメリット
赤字決算の企業にとって、銀行融資は「直近の損益」「自己資本比率」「債務超過の有無」などが重く評価されるため、希望どおりの金額やスピードで資金調達できないことが少なくありません。
これに対してファクタリングは、売掛金という既に発生している債権を現金化する取引であり、審査の重心が売掛先の支払能力や取引実績に置かれる点が特徴です。
決算が赤字であっても、売掛先の信用力が高く、請求書や納品書などの書類が整っていれば、短期間で運転資金を確保できる可能性があります。
また、売掛債権の譲渡として処理されるスキームでは、新たな有利子負債を増やさずに資金調達ができるため、自己資本比率を大きく悪化させずに資金繰りを改善しやすいというメリットがあります。
さらに、多くの取引では個人信用情報機関のローン履歴のような形で登録されないため、今後の融資交渉に与える影響を抑えつつ、当面の資金ニーズに対応できる手段として位置付けられます。
【赤字決算でファクタリングを利用する主なメリット】
- 決算が赤字でも、売掛先の信用力次第で利用可能な余地がある
- 借入ではなく売掛金の現金化として資金繰りを改善できる
- 入金サイトを短縮し、支払予定への備えが立てやすくなる
- 取引条件により、自己資本比率や信用情報への影響を抑えやすい
資金繰り早期改善と入金スピード
ファクタリングの最大の特徴は、売掛金の入金を前倒しできることによる資金繰りの早期改善です。
例えば、売掛金500万円(税抜)、支払サイト60日という取引で、二社間ファクタリング・手数料率3%・買取率97%の条件だとします。
この場合、請求書に対する手数料額は15万円(500万円×3%)、実際の入金額はおおむね485万円となり、本来60日後に受け取るはずだった資金を数日〜1週間程度で確保できます。
入金スピードが早まることで、仕入代金や給与、外注費、家賃、リース料などの支払に充当しやすくなり、資金ショートの回避や支払条件の信用維持に役立ちます。
一方、手数料は実質コストとなるため、「どれだけ入金サイトを短縮できるか」と「手数料率」が重要な判断材料です。
概算の実質年率は「手数料率÷短縮日数×365日」といった簡便な式で把握でき、上記の例では3%÷60日×365日≒年18%程度の水準になります。
赤字決算企業では、こうしたコストとスピードを比較しながら、資金ショートを防ぐための緊急性や必要額を整理することが重要です。
- 支払サイト(何日後入金か)と短縮できる日数を把握する
- 請求書額・手数料率・入金日数から実質コストを試算する
- 早期入金で回避できる資金ショートや遅延損失を整理する
- 一時的な資金難なのか、構造的な資金不足なのかを区別する
負債計上なしで自己資本比率維持
ファクタリングのうち、売掛債権の譲渡として会計処理されるスキームでは、一般的に貸借対照表上の売掛金が減少し、現金預金が増加する形になります。
ファクタリング手数料は「支払手数料」などの科目で費用計上されますが、新たな借入金や社債といった有利子負債は発生しないため、自己資本比率(自己資本÷総資産)の低下を抑えやすい点がメリットです。
赤字決算が続く企業では、すでに自己資本が薄くなっているケースが多く、追加の借入で負債が膨らむと、将来の融資審査で「財務体質が脆弱」と評価されやすくなります。
これに対して、売掛金を現金化するファクタリングであれば、総資産の構成が「売掛金中心」から「現金中心」に変化するだけで、負債の増加を伴わずに流動性を高めることができます。
ただし、契約条件や会計基準によっては、実質的に借入とみなされる取扱いもあり得るため、具体的な処理方法は顧問税理士や会計事務所など専門家へ確認することが望ましいといえます。
- 売掛債権の譲渡として処理されるスキームかどうかを確認する
- 手数料の費用計上が損益に与える影響を事前に把握する
- 借入金を増やす場合との自己資本比率の変化を比較する
- 会計処理方法は顧問税理士等の専門家とすり合わせておく
信用情報に履歴が残らない仕組み
ファクタリングは、銀行融資やビジネスローンのように資金を「貸し付ける」取引ではなく、売掛債権を「買い取る」取引として行われるのが一般的です。
そのため、多くのファクタリング取引は、個人信用情報機関におけるローン・クレジットの利用履歴としては登録されず、「借入が増えた」という形で信用情報に残らないスキームになっています。
赤字決算企業の場合、今後の金融機関との取引や保証協会付き融資の申し込みを見据え、信用情報への影響をできるだけ抑えたいというニーズが少なくありません。
この点で、ファクタリングは運転資金を補いつつ、将来の融資余力を温存しやすい手段と位置付けられます。
ただし、取引条件や契約違反があった場合の取扱いは各社で異なり、延滞や不正が判明した場合には、別の形で取引情報が共有される可能性もあります。
また、銀行が事業実態を確認する際には、通帳の入出金や決算書からファクタリング利用の有無を把握できるため、「まったく影響しない」という意味ではなく、あくまでローン履歴としての登録とは異なる点が特徴です。
- 多くのファクタリングはローン履歴として個人信用情報機関に登録されない
- 通帳や決算書から金融機関が利用状況を把握する可能性はある
- 契約違反や不正があれば、別の形で信用に影響する可能性がある
- 将来の融資計画も踏まえたうえで、利用目的と回数を検討する
赤字決算企業が押さえるべきリスク
赤字決算の企業がファクタリングを利用する場合、「すぐ資金が入る」という利点の裏側に、いくつかのリスクが存在します。
代表的なものが、手数料による利益圧迫、債権譲渡登記や取引先への通知による信用影響、税金・社会保険料の滞納に伴う審査上のマイナス評価、そして架空債権・循環取引など不適切な取引が刑事・民事の問題につながるリスクです。
これらは個別に発生するだけでなく、重なった場合に財務・信用・法的リスクが連鎖的に拡大する可能性があります。
特に赤字決算企業では、短期的な資金繰り改善を優先するあまり、手数料負担や取引先との関係への影響を十分に検討しないまま利用を進めてしまうケースも見られます。
自社の財務状況・取引構造・税務・労務の状態を整理し、それぞれのリスクを事前に把握したうえで、利用額や利用頻度、スキーム選択を検討することが重要です。
| リスク種別 | 内容 |
|---|---|
| コスト面 | 手数料負担により利益率が低下し、赤字拡大につながる可能性 |
| 信用・取引面 | 債権譲渡登記や通知により、取引先から資金難と受け取られるおそれ |
| コンプライアンス面 | 税金滞納・社会保険料未納があると、審査でマイナス評価を受けやすい |
| 法的リスク | 架空債権や循環取引が詐欺・粉飾などの違法行為と判断される可能性 |
高い手数料が利益に与える負担度
ファクタリング手数料は、売掛金を早期に現金化する対価として支払うコストであり、実質的には売上総利益を削る要因となります。
例えば、売掛金1,000万円、粗利率20%(粗利200万円)の取引を想定し、手数料率が5%であれば手数料は50万円となり、粗利から差し引くと残りの利益は150万円に減少します。
複数の請求書で繰り返し利用すれば、その分だけ利益が圧縮され、赤字幅が拡大したり、黒字転換の時期が遅れたりする可能性があります。
また、支払サイトの短縮日数が短いにもかかわらず高い手数料率が設定されている場合、実質年率に換算すると相当高いコスト負担となることも少なくありません。
手数料には、基本手数料に加えて事務手数料・登記費用・振込手数料などが含まれる場合もあり、合計額で判断しないと正確な負担度を把握できません。
赤字決算企業では、資金ショートを回避できるメリットと、利益を圧迫するデメリットを比較し、「どの売掛金を」「どの頻度で」ファクタリングするのかを慎重に検討する必要があります。
- 請求書額に対する手数料率だけでなく、諸費用を含めた総コストを把握する
- 粗利率と比較し、利益がどの程度減少するかを試算する
- 支払サイト短縮日数から実質年率を概算し、他の調達手段と比較する
- 同じ売掛先・同じ取引で反復利用しすぎていないかを確認する
債権譲渡登記や取引先へ知られる影響
三社間ファクタリングでは、取引先に対して債権譲渡通知を行い、売掛金の支払先をファクタリング会社へ変更するのが一般的です。
また、一定の場合には債権譲渡登記を行い、債権の譲渡事実を公的に対抗できる状態にしておくことがあります。
これらの手続は、法的安定性を高める一方で、取引先から「資金繰りが厳しいのではないか」「金融機関からの調達が難しくなっているのではないか」と受け取られる可能性があります。
取引先が与信管理を厳格に行っている場合、債権譲渡の発生をきっかけに取引条件の見直し(支払サイト短縮、取引限度額の縮小、前払・保証の要求など)が行われることも考えられます。
二社間ファクタリングを選択すれば、取引先への通知は行わないスキームが多いものの、その分手数料率が高くなりやすく、債権譲渡登記のみ実施されるケースもあります。
赤字決算企業にとっては、短期の資金繰り改善と引き換えに、長期的な取引関係や信用評価へどの程度影響が出るかを事前に整理しておくことが重要です。
取引先との信頼関係が売上の大半を支えている場合には、事前説明や今後の改善方針の共有なども検討対象となります。
- 資金繰り難と受け取られ、与信枠が縮小される可能性
- 支払条件の変更(サイト短縮・前払要求など)につながるおそれ
- 長期の取引関係に不安を与え、新規取引の拡大に影響する可能性
- 二社間・三社間の選択により、通知有無とコストのバランスが変化する
税金滞納や社保未納が審査へ与える懸念
ファクタリング会社は、反社会的勢力排除や法令遵守の観点から、利用企業の税金(法人税・消費税など)や社会保険料の納付状況を重要な審査項目として確認することがあります。
税務署や自治体による滞納処分・差押えが行われている場合、売掛金の優先的な差押えリスクが高まり、ファクタリング会社にとっては回収可能性の低下要因となります。
そのため、一定規模以上の滞納があると取引が難しくなる、または条件が厳しくなることが想定されます。
社会保険料の未納が長期にわたる場合も、コンプライアンス上の問題として評価されやすく、銀行融資と同様にマイナス要因となり得ます。
赤字決算企業では資金不足から税・社保の支払を後回しにしてしまうケースもありますが、ファクタリングを利用しても根本的な滞納状況が解消されなければ、審査通過や継続利用に支障をきたすおそれがあります。
可能な範囲で分納制度の活用や支払計画の見直しを行い、滞納を縮小・解消していくことが、ファクタリングや今後の融資利用においても重要な前提となります。
- 税金や社会保険料の滞納がある場合、審査でマイナス評価となることが多い
- 滞納処分や差押えがあると、売掛金の回収順位に影響する可能性がある
- 分納計画や解消に向けた対応状況も、審査時に確認されることがある
- 税・社保の適正な納付は、ファクタリングだけでなく銀行融資でも重要な条件
架空債権や循環取引が犯罪リスクとなる
ファクタリングの審査では、請求書の内容や取引実態が重視されますが、一部では資金調達目的で実態のない架空債権や、同一グループ内で売上と債権を見せかける循環取引が問題になることがあります。
実際には納品やサービス提供が行われていないのに請求書だけを発行して資金化を図る行為や、相互に請求書を発行し合って売掛金を膨らませる行為は、詐欺や粉飾決算などの違法行為と判断されるおそれがあります。
これらは、ファクタリング会社だけでなく金融機関・投資家・税務当局などを誤認させる結果につながり、刑事責任・民事責任の双方を負う可能性があります。
また、こうした不正が発覚した場合、取引先や信用保証機関との関係悪化、取引停止、代表者個人の信用失墜など、事業継続に重大な影響を及ぼします。
赤字決算企業ほど短期的な資金需要が高まりやすいものの、実在する売掛金に限定して利用すること、取引の実態を裏付ける契約書・納品書・検収書などを適切に保管しておくことが不可欠です。
ファクタリングはあくまで正当な債権の早期資金化手段であり、財務内容を取り繕う目的で利用すべきではありません。
- 架空債権・循環取引は詐欺や粉飾決算と判断されるおそれがある
- 発覚時には刑事責任・民事責任を問われる可能性が高い
- 取引先や金融機関との信用が失われ、取引停止につながり得る
- 正当な売掛金のみを対象とし、取引実態を示す書類を整備しておくことが重要
融資が難しい赤字企業の資金調達選択
赤字決算で銀行融資が難しい場合でも、資金調達の選択肢がまったくないわけではありません。代表的な手段としては、銀行融資(プロパー・保証付き)、ファクタリング、ビジネスローン、カードローン型の与信枠、リース・割賦などが挙げられます。
それぞれ「審査の重視ポイント」「資金調達までのスピード」「コスト(利息・手数料)」「財務諸表への影響」が異なるため、自社の状況に合わせて組み合わせて検討することが重要です。
特に赤字決算企業の場合、短期的にはファクタリングなどで資金ショートを回避しつつ、中長期的には収益性改善と財務体質の立て直しを図るといった二段構えの発想が求められます。
個々の手段の特徴を整理したうえで、「何のために、いつまでに、いくら必要か」という資金計画から逆算して選択肢を比較検討することが、リスクを抑えた資金調達につながります。
- 必要額・必要時期・使用目的を具体的に整理する
- 銀行融資・ファクタリング・ビジネスローンなどの特徴を把握する
- コストとスピード、財務への影響のバランスを比較する
- 短期の資金繰り対策と中長期の改善策を分けて検討する
銀行融資とファクタリングの比較
銀行融資とファクタリングは、どちらも運転資金を確保する手段ですが、仕組みと審査基準、財務への影響が大きく異なります。
銀行融資は、元金と利息を分割で返済していく借入であり、審査では過去の決算内容や自己資本比率、キャッシュフロー、担保・保証の有無など、企業全体の信用力が総合的に評価されます。
金利水準は比較的低めで、長期的な資金需要に向いている一方、赤字決算が続く企業や債務超過の場合は、新規融資や増額が難しくなることが少なくありません。
これに対してファクタリングは、既に発生している売掛金を譲渡して現金化する取引であり、審査の中心は売掛先の支払能力や取引実績です。
入金スピードは銀行融資より早いケースが多いものの、手数料率は一般的に銀行金利より高く、短期の資金繰り対策向きの手段と位置付けられます。
財務処理の面では、売掛金の減少と現金の増加として認識されるスキームが多く、新たな借入金を増やさずに資金を確保できる点が特徴です。
赤字決算企業では、長期的な資金ニーズは銀行融資、急を要する資金ショート回避にはファクタリングといった役割分担を意識し、目的と期間に応じて使い分けることが重要です。
- 審査対象:企業全体の信用力か、売掛先の信用力か
- コスト:金利と手数料を実質年率ベースで比較する
- スピード:審査〜入金までの期間の違いを確認する
- 財務への影響:借入金増加か、売掛金の現金化かを整理する
ビジネスローンなど他の資金調達法
融資が難しい赤字企業でも、ノンバンク系のビジネスローンや、銀行のカードローン型事業ローン、当座貸越枠、リース・割賦などを組み合わせることで、一定の資金調達余地を確保できる場合があります。
ビジネスローンは、財務諸表に加えて代表者の信用情報も重視されるケースが多く、担保や第三者保証を不要とする代わりに金利水準が高めに設定されるのが一般的です。
審査から実行までが比較的早いものの、利用限度額や返済期間は銀行融資より短めで、短中期の資金需要に向いた性格を持ちます。
また、当座貸越枠は、上限額の範囲内で必要なときに資金を引き出せる仕組みであり、売掛金回収のズレを埋める用途に適していますが、赤字決算や財務悪化が進むと枠の維持・更新が難しくなることがあります。
設備投資については、リースや割賦販売を利用することで、初期の資金負担を平準化する方法もありますが、いずれも契約期間中は定期的な支払義務が続く点に留意が必要です。
赤字決算企業の場合、これらの手段を追加で利用する際には、「既存の返済負担」と合わせて総返済額・返済比率を確認し、過大な負担にならない範囲かを客観的にチェックすることが重要です。
- ビジネスローンは無担保だが金利水準が高めになりやすい
- 当座貸越枠は便利な反面、財務悪化で更新が難しくなる可能性
- リース・割賦は初期負担を軽減する代わりに定期支払が続く
- 既存借入を含めた総返済負担を把握したうえで利用可否を判断する
ファクタリング審査通過へ向けた準備
ファクタリングを有効な選択肢とするためには、事前準備の有無が審査結果に大きく影響します。まず前提として、売掛金が実在し、取引内容が明確に説明できることが重要です。
そのために、取引基本契約書、個別契約書、発注書・見積書、納品書・検収書、請求書などの関連書類を整理し、売上計上の根拠を一連の流れとして示せる状態にしておきます。
加えて、主要な売掛先ごとの売上推移、支払サイト、過去の入金遅延の有無などを一覧化しておくと、取引の安定性を客観的に説明しやすくなります。
利用企業側については、直近の決算書や試算表、資金繰り表を用意し、赤字となっている要因や今後の改善計画を簡潔に整理しておくことが望ましいといえます。
また、税金や社会保険料の納付状況は審査で重視されるため、滞納がある場合は分納合意などの状況を含めて説明できるようにしておく必要があります。反社会的勢力と無関係であることの誓約書や、本人確認書類の提出も一般的です。
こうした準備を行うことで、審査過程での質問に対して一貫性のある回答がしやすくなり、結果として審査通過の可能性を高める効果が期待できます。
- 取引基本契約書・発注書・納品書・請求書など取引実態を示す書類
- 売掛先ごとの売上推移・支払サイト・入金遅延の有無を整理した一覧
- 直近の決算書・試算表・資金繰り表と、赤字要因・改善計画の概要
- 税金・社会保険料の納付状況や分納合意などの説明資料
まとめ
赤字決算でも、売掛金があればファクタリングで資金調達できる可能性があります。
審査は自社ではなく取引先の信用力が中心となり、負債計上が不要で入金も早い一方、手数料負担や債権譲渡登記、取引先への通知など固有のリスクも存在します。
銀行融資やビジネスローンと条件・コストを比較し、自社の資金ニーズと与信状況に応じて適した資金調達手段を検討する際の参考情報として位置付けられます。
























