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ファクタリング会社の手数料比較|2社間・3社間相場と安く抑えるチェックポイント

ファクタリング会社を調べると「手数料◯%〜」「2社間専門」「3社間で低コスト」など、条件がバラバラで比較が難しいと感じる方も多いはずです。本記事では、2社間・3社間それぞれの手数料相場と、手数料の内訳(表面手数料・登記費用・事務手数料など)を整理しつつ、売掛先や債権額・支払サイトによって手数料がどう変わるかを客観的に解説します。さらに、資金ニーズ別の会社・プランの選び方と、自社で実質コストを計算するチェックポイントまでまとめます。

 

ファクタリング会社手数料の基礎

ファクタリング会社を比較するとき、まず押さえておきたいのが「手数料という言葉の中身」です。

一般的に「手数料◯%」と表示されているのは、売掛金(請求書額)に対して何%を差し引くかという率のことですが、実務ではこれ以外にも、事務手数料・登記費用・振込手数料などが別途かかる場合があります。

 

そのため、「表に書いてある%」だけで判断すると、実際にいくら手元に残るのか、いくらコストを負担するのかが見えにくくなります。

また、ファクタリングには二社間と三社間というスキームの違いがあり、一般的に二社間の方が手数料は高め、三社間の方が低めに設定される傾向があります。

 

これは、売掛先に通知しない二社間の方がファクタリング会社にとって回収リスクが大きく、売掛先に直接支払ってもらう三社間の方がリスクを抑えやすいためです。

さらに、売掛先の信用力、売掛金額のサイズ、支払サイト(回収までの日数)、業種などによっても手数料は上下します。

 

手数料の基礎を押さえるポイントは、「どの金額に、どの費用が、どんな順番でかかるのか」を整理することです。

例えば、売掛金1,000万円に対して手数料5%・事務手数料5万円と表示されている場合、手数料だけで50万円、事務手数料と合わせて総コストは55万円となり、実質的な手数料率は5.5%になります。

 

用語 ファクタリング手数料での位置付け
手数料率 請求書額(売掛金額)に対して差し引かれる%。見積書・サイトに表示される「◯%〜」。
掛け目・買取率 請求書額に対して実際に受け取れる割合(例:掛け目90%=100万円の請求書で受取額90万円)。
固定費 事務手数料・登記費用・振込手数料など、金額にかかわらず一定でかかる費用。
総コスト 手数料額+固定費の合計。実質手数料率や実質年率を計算する際のベースになる。

 

手数料の内訳と基本用語

ファクタリング会社の「手数料」は、いくつかの要素に分解できます。まず中心になるのが「手数料率(ファクタリング手数料)」です。

これは請求書額(売掛金額)に対して何%差し引くかを示す数字で、一般的には三社間で数%台、二社間で一桁後半〜10数%といった水準が目安として紹介されることが多いです。

 

手数料率は、「対象となる売掛先の信用力」「取引金額」「支払サイト」「利用企業の財務状況」などを総合して決まります。

次に重要なのが「掛け目(買取率)」です。掛け目とは、請求書額に対してどの程度の金額まで資金化できるかを示す割合で、たとえば掛け目90%であれば、100万円の請求書に対して受け取れるのは90万円という意味になります。

 

掛け目が高いほど利用者の手元に残る資金は多くなりますが、その分、ファクタリング会社のリスクが大きくなるため、手数料率とのバランスで決まることが一般的です。

さらに、見積書で見落としやすいのが「固定費」です。具体的には、申込時の審査料・契約書作成の事務手数料・債権譲渡登記を行う場合の登録免許税や司法書士報酬・振込手数料などがあります。

 

これらは請求書額の大小にかかわらず一定額で発生することが多いため、少額のファクタリングや短期の利用では、固定費の割合が高くなり、実質的な手数料率を押し上げる要因になります。

最後に、「総コスト」という考え方を持つことが大切です。総コストとは、「名目手数料額+固定費の合計」です。

 

総コストを請求書額で割り直すことで、名目手数料率よりも実態に近い「実質手数料率」が分かります。

また、前倒し日数で年換算すれば、銀行融資など他の資金調達手段と比較するときの目安にもなります。

 

手数料の内訳と基本用語の押さえ方
  • 「手数料率」は請求書額に対する%、「掛け目(買取率)」は実際の受取割合
  • 事務手数料・登記費用・振込手数料などの固定費を含めて「総コスト」を見る
  • 総コスト÷請求書額で「実質手数料率」を把握し、二社間・三社間・他手段と比較する
  • 前倒し日数もセットで把握し、必要に応じて年率換算でコスト感を確認する

 

2社間・3社間別の相場と目安

ファクタリング会社の手数料を検討するとき、多くの方がまず気にされるのが「二社間と三社間の相場の違い」です。

一般論としては、三社間ファクタリングの方が手数料は低め、二社間ファクタリングの方が高めに設定される傾向があります。

 

三社間は、利用企業(あなたの会社)・売掛先・ファクタリング会社の三者で契約し、売掛先がファクタリング会社へ直接支払うスキームのため、架空債権や二重譲渡のリスクが低く、回収も比較的安定していると評価されます。

その分、ファクタリング会社は低めの手数料率を提示しやすくなります。

 

一方、二社間ファクタリングは、利用企業とファクタリング会社のみで契約を結び、売掛先には債権譲渡を通知しないケースが一般的です。

この場合、売掛金の回収はまず利用企業が行い、その後ファクタリング会社に精算する流れとなるため、ファクタリング会社にとっては「売掛先の信用リスク」と「利用企業側の支払リスク」の両方を負う構造になります。

 

このリスクを織り込むため、同じ売掛先・金額・サイトであれば、三社間より二社間の方が手数料率は高くなるのが通常です。

相場感としては、あくまで目安ですが、三社間ファクタリングで数%台〜一桁前半、二社間ファクタリングで一桁後半〜10数%といった水準が紹介されるケースが多く見られます。

ただし、この数字だけで判断するのではなく、売掛先が上場企業かどうか、取引期間が長いかどうか、取引金額がまとまっているか、支払サイトが短いか、といった要素で個別に条件が変わる点に注意が必要です。

 

2社間・3社間手数料相場を見るときのポイント
  • 三社間は売掛先が直接ファクタリング会社へ支払うため、手数料は相対的に低くなりやすい
  • 二社間は売掛先に通知しない分、ファクタリング会社のリスクが高く、手数料は高めに設定されやすい
  • 相場はあくまで目安であり、売掛先の信用力・支払サイト・金額規模などで個別に変動する
  • 二社間・三社間で見積り条件を揃えたうえで、実質手数料率とサービス内容を総合比較する

 

手数料が変動する主な要因

同じファクタリング会社でも、案件ごとに手数料が変わるのは、「リスク」と「コスト」の大きさが案件によって違うからです。

ファクタリング会社は、売掛先(あなたの取引先)がきちんと支払ってくれるか、利用企業(あなたの会社)が約束どおり精算してくれるか、売掛金額はいくらか、支払サイト(入金までの日数)はどれくらいか、といった情報をもとにリスクを数値化し、そのリスクに見合う手数料率を設定します。

 

一般的には、「回収リスクが低い案件」「金額がまとまっている案件」「支払サイトが短い案件」「取引実績が長く安定している案件」ほど、手数料は低くなりやすいと考えられます。

一方で、「売掛先の財務内容が読みづらい」「取引開始から日が浅い」「業種として景気変動に影響されやすい」「一社への売上依存度が高い」といった条件が重なると、ファクタリング会社にとってのリスクは大きくなります。

 

そのリスクを手数料に織り込むため、同じ売掛金額であっても案件ごとに手数料率が変動します。

中小企業側としては、自社の条件がどのあたりに位置しているのかを理解しておくことで、「この手数料が妥当なのか」「どこを改善すれば次回以降の条件が良くなりうるのか」を検討しやすくなります。

 

要因区分 手数料に影響する主なポイント
信用力要因 売掛先の財務状況・支払遅延歴・取引期間、利用企業の財務内容・税金納付状況など。
取引条件要因 債権額の大小、支払サイトの長さ、取引の継続性、一社への売上依存度、二社間/三社間の別など。
業種・傾向要因 景気変動の影響の受けやすさ、回収慣行(建設・運送・小売など)、業界全体の倒産件数など。

 

売掛先・利用企業の信用力要因

ファクタリング手数料に最も大きく影響するのが、「誰からお金を回収するか」という信用力の問題です。

買取型ファクタリングでは、基本的に売掛先(取引先)が期日に代金を支払えるかどうかが回収リスクの中心となります。

 

売掛先が上場企業や大手企業で、支払遅延の実績がほとんどない場合と、財務内容が見えにくい中小企業で支払遅延が散見される場合とでは、ファクタリング会社が想定するリスクが異なり、その差が手数料率に反映されます。

また、売掛先との取引期間が長く、毎回期日どおりに入金されているかどうかも、信用力を測る重要な材料です。

 

一方、二社間ファクタリングでは、売掛先からの入金を一旦利用企業が受け取り、その後ファクタリング会社に支払う流れになるため、利用企業自身の信用力も重視されます。

決算内容(自己資本比率・債務超過の有無・営業利益の傾向)、税金や社会保険料の納付状況、既存借入の返済状況などから、「約束どおりに精算をしてくれるか」が評価されます。

 

税金の滞納や差押え、延滞がある場合は、同じ売掛先であっても手数料が高めに提示される、あるいは利用自体が難しくなることもあります。

このように、「売掛先の信用力」と「利用企業の信用力」の組み合わせによって、ファクタリング会社が感じるリスクは大きく変わります。

中小企業側としては、売掛先の安定性をアピールできる資料(取引基本契約書、支払実績の一覧など)を用意したり、自社の決算内容や納税状況を整理して提示したりすることで、手数料の引き下げ余地を広げられる可能性があります。

 

信用力要因で押さえたいポイント
  • 売掛先の規模・財務状況・支払実績が良いほど手数料は下がりやすい
  • 二社間では、利用企業の決算内容や納税状況も重要な審査材料になる
  • 取引期間が長く遅延が少ない売掛先は、条件改善を交渉する材料になる
  • 売掛先・自社の信用力を客観的に説明できる資料をそろえておくと有利

 

債権額・支払サイト・業種の影響

手数料は、信用力だけでなく、「いくら・どれくらいの期間・どのような取引を資金化するか」によっても変動します。

まず債権額については、一般に金額が大きく、かつ分散された複数の債権をまとめてファクタリングする方が、1件あたりの手数料率は抑えやすい傾向があります。

 

これは、一定の固定コスト(審査・契約・事務コストなど)をまとめて処理できるためです。逆に、小口・単発の案件では、固定コストを回収するために手数料率が高くなりやすくなります。

支払サイト(回収までの日数)も重要です。売掛金の入金までの期間が短ければ、ファクタリング会社が資金を拘束する期間も短くて済むため、その分リスク期間・資金コストも小さくなります。

 

例えば、30日前倒しと90日前倒しでは、同じ手数料率でも年率換算するとコスト感が大きく異なります。

回収サイトが長い業界(建設、広告、一部の卸売など)では、ファクタリング会社のリスク保有期間が長くなるため、同じ信用力でも手数料が高めに設定されることがあります。

 

業種ごとの特性も、手数料に影響します。景気変動の影響を受けやすい業種や、倒産件数が多い業種、回収に時間がかかりやすい業種(例:建設工事の出来高払い、医療報酬・介護報酬など)では、統計的なリスクを織り込んで手数料が設定されることがあります。

一方で、公共性の高い取引(官公庁向け、地方自治体向け、安定した大企業グループ向けなど)は、業種としてのリスクが相対的に低いと評価され、条件が優遇されるケースもあります。

 

債権額・サイト・業種が手数料に与える影響
  • 債権額が大きく、案件が分散しているほど、1件あたりの手数料率は下がりやすい
  • 支払サイトが短い案件は、資金拘束期間が短くリスクも小さいため、条件改善の余地がある
  • 業種ごとの倒産件数や回収慣行に応じて、業界全体のリスクが手数料に反映される
  • 公共性の高い取引や安定した業種は、手数料交渉の際のプラス材料になり得る

 

ファクタリング会社ごとの手数料比較軸

複数のファクタリング会社を比較するときは、「手数料◯%」という表面の数字だけで判断せず、いくつかの軸で立体的に見ることが大切です。

特に押さえたいのは、①表面手数料率か実質コストか、②二社間・三社間の違い、③固定費(登記費用・事務手数料など)の扱い、④審査スピードや対応範囲など、サービス面の条件です。

 

これらを一覧化して比較することで、単純な%だけでは見えない「本当に有利な会社・プラン」が見えてきます。

実務では、同じ「手数料5%」でも、ある会社は登記費用込み・事務手数料なし、別の会社は登記別・事務手数料あり、といった違いが普通にあります。

 

また、同じ会社でも「三社間は◯%〜、二社間は△%〜」といった形で、スキームによって手数料レンジが分かれていることも多く、どのパターンで見積もりが出ているのかを揃えて比較しないと正確な判断ができません。

そのため、ファクタリング会社ごとの比較表を、自社用に作っておくと便利です。縦軸に会社名、横軸に「二社間/三社間」「表面手数料率」「掛け目(買取率)」「登記費用の有無」「事務手数料の有無」「最低利用額・上限額」「対応スピード」などを並べます。

各社から見積書をもらったら、必ずこの表に転記し、「総コスト」「受取額」「実質年率」まで自社で計算する運用にすると、条件差が一目で分かるようになります。

 

比較軸 確認したい内容
表面手数料率 二社間・三社間それぞれの「◯%〜」。請求書額に対する基本の手数料率。
掛け目・買取率 請求書額に対して実際に受け取れる割合。95%/90%など。
固定費 登記費用・事務手数料・振込手数料など、金額にかかわらず発生する費用の有無と金額。
スキーム 二社間/三社間、ノンリコース/リコースなど、リスク分担と手数料の関係。

 

表面手数料と実質コスト比較視点

ファクタリング会社を比較するうえで最も誤解が生じやすいのが、「表面手数料」と「実質コスト」のズレです。

表面手数料とは、請求書額に対して表示される手数料率(例:5%、10%)のことで、見積書やウェブサイトに記載される「◯%〜」は通常この数字を指します。

 

一方、実質コストとは、表面手数料に固定費(登記費用・事務手数料・振込手数料など)を加えた総コストを、請求書額や前倒し日数で割り直したものです。実際の負担感は、この実質コストで見ないと正しく比較できません。

例えば、請求書額100万円を30日前倒しで資金化するケースで、A社とB社の条件が以下のような場合を考えます。

 

・A社:手数料率5%、固定費なし
・B社:手数料率3%、事務手数料2万円

 

A社の総コストは5万円(実質手数料率5%)、B社の総コストは3万円+2万円=5万円(実質手数料率5%)で、実は両社とも同じ負担です。

表面だけを見るとB社の「3%」が有利に見えますが、固定費を加えると差がないことが分かります。

 

さらに、請求書額が50万円の場合には、A社:2万5,000円(5%)、B社:1万5,000円+2万円=3万5,000円(7%)となり、逆にA社の方が有利になる、という結果になります。

このように、表面手数料率だけでなく、「請求書額」「固定費」「前倒し日数」の3点をセットで見て、実質的な負担を計算することが重要です。

実務では、簡易的なExcelシートを作成し、請求書額・手数料率・固定費・前倒し日数を入力すると、総コスト・実質手数料率・実質年率・日割りコストが自動的に出るようにしておくと、見積書をもらった時点で瞬時に比較ができるようになります。

 

表面手数料と実質コストを比較するポイント
  • 「◯%〜」の表記はあくまで表面手数料率であり、固定費を含んでいない場合が多い
  • 総コスト=(請求書額×手数料率)+固定費として計算し、請求書額で割って実質手数料率を出す
  • 同じ手数料率でも、請求書額や前倒し日数が違うと実質年率は大きく変わる
  • Excelなどで自社シミュレーションを用意し、各社の見積条件を同じ計算式で比較する

 

登記費用・事務手数料など隠れコスト

ファクタリング会社ごとの手数料を比較するときに、特に注意したいのが「隠れコスト」となりやすい登記費用・事務手数料・振込手数料などです。

多くの会社は、ウェブサイト上では「手数料◯%〜」という表現にとどめ、登記費用や事務手数料については脚注やQ&Aの中で説明しているだけ、というケースもあります。

 

これらの費用は見積書の明細を見ないと分からないため、事前に「手数料率以外にかかる費用はありますか」「登記費用は誰負担ですか」などと確認しておく必要があります。

代表的な隠れコストには、以下のようなものがあります。

 

  • 債権譲渡登記にかかる登録免許税・司法書士報酬
  • 契約書に貼付する収入印紙代
  • 初回利用時の審査料・契約事務手数料
  • 入金時の振込手数料(利用者負担)

 

例えば、請求書額300万円・手数料率5%・登記費用3万円・事務手数料2万円・振込手数料1,000円という条件を想定すると、

 

・名目手数料額:300万円×5%=15万円
・固定費合計:3万円+2万円+1,000円=5万1,000円
・総コスト:15万円+5万1,000円=20万1,000円

 

となり、実質手数料率は
20万1,000円÷300万円×100≒約6.7%
です。

表面上の「5%」に比べて、実際の負担は約1.7ポイント高くなっています。少額の案件や短期の案件では、固定費の比率がさらに高まり、実質手数料率の差は拡大します。

 

隠れコストを抑えるためには、「登記不要」「事務手数料無料」「振込手数料も会社負担」などの条件をうたっている会社も候補に入れつつ、請求書額や利用頻度に応じてどの組み合わせが有利かをシミュレーションすることが大切です。

登記が必要なスキームでも、複数回の利用を前提にして費用を平均化できるかどうかで、1回あたりの実質コストは変わってきます。

 

隠れコスト確認のためのチェック項目
  • 登記費用(登録免許税・司法書士報酬)が発生するか、誰が負担するか
  • 初回・更新時の審査料や契約事務手数料の有無と金額
  • 振込手数料や解約手数料など、利用のたびに発生する細かなコスト
  • これらの固定費を含めた総コストを請求書額で割り、実質手数料率として比較する

 

資金ニーズ別の会社・プランの選び方

ファクタリング会社を選ぶときは、「どの会社が一番手数料が安いか」だけでなく、「自社の資金ニーズにその会社・プランが合っているか」を軸に考えることが重要です。

具体的には、①少額を短期間だけ前倒ししたい「小口・短期資金」、②毎月・四半期ごとなど継続的に利用したい「反復利用」、③大型案件や成長投資に伴う「高額利用」といったパターンに分け、それぞれで重視すべき条件を整理すると、ミスマッチを避けやすくなります。

 

例えば、小口・短期資金では、登記費用や事務手数料などの固定費が実質コストを押し上げやすいため、「登記不要」「事務手数料無料」「少額利用に対応」といった条件が重要になります。

一方で、継続・高額利用では、単発のスペックよりも「年間トータルのコスト」「条件の安定性」「継続利用による手数料引き下げ余地」といった視点が欠かせません。

このように、「小口・短期」と「継続・高額」では優先順位が変わるため、あらかじめ自社の資金ニーズを棚卸しし、「どのパターンでいくら・どのくらいの頻度で利用する見込みか」を整理したうえで会社・プランを選ぶことが、手数料を抑えつつ資金繰りを安定させる近道になります。

 

資金ニーズ 重視したい条件の例
小口・短期 固定費の有無、最低利用額、入金スピード、オンライン完結可否など。
継続・高額 表面手数料率、年間の総コスト、取引安定性、担当者のサポート体制など。

 

小口・短期資金で重視したい条件

小口・短期資金とは、「数十万円〜数百万円規模を、30〜60日程度だけ前倒ししたい」といったニーズを指します。

例えば、急な仕入れや外注費の支払い、税金やボーナス支給月の一時的な資金不足などが典型です。

 

このようなケースでは、1回あたりの利用金額が比較的小さいため、手数料率だけでなく、登記費用や事務手数料などの固定費が実質コストに与える影響が大きくなります。

そのため、小口・短期資金でファクタリング会社を選ぶ際には、まず「固定費がどの程度かかるのか」を確認することが重要です。

 

登記不要型や事務手数料無料の会社は、表面手数料率がやや高めでも、総コストで見ると有利になる場合があります。

また、オンライン完結・最短即日入金といったスピード面も、小口資金では重要な比較軸です。支払期日まで残り日数が短い状況では、数%の手数料差よりも「間に合うかどうか」が優先される場面も多いためです。

 

さらに、最低利用額や最低手数料にも注意が必要です。「最低利用額◯◯万円以上」「最低手数料◯万円」といった条件がある場合、少額を資金化したつもりが相対的に高コストになってしまうことがあります。

見積り段階で、請求書額・手数料率・固定費から「総コスト」と「実質手数料率」を自社で計算し、他社や他の資金調達手段(短期融資・支払サイト交渉など)と比較することが、小口・短期資金では特に重要です。

 

小口・短期資金で重視したい条件
  • 登記費用・事務手数料など固定費の有無と金額
  • 最低利用額・最低手数料が自社の利用金額に見合っているか
  • オンライン完結の可否や、審査〜入金までのスピード
  • 総コストと実質手数料率を他社・他手段と比較したうえで判断できるか

 

継続利用・高額利用で重視したい条件

継続利用・高額利用とは、「毎月数百万円〜数千万円単位で定期的に利用する」「繁忙期ごとにまとまった金額(1,000万円超)を繰り返し資金化する」といったパターンです。

この場合は、小口・短期と異なり、「1回あたりのスピード」よりも「年間トータルで見たコスト」と「条件の安定性」が重視されます。

 

表面手数料率が1〜2ポイント違うだけでも、年間の総額では数十万円〜数百万円の差になることがあるため、長期的な視点で会社・プランを選ぶ必要があります。

継続・高額利用で注目したいのは、まず「表面手数料率のレンジ」と「利用実績に応じたディスカウント有無」です。

 

たとえば、「初回は6%だが、一定期間継続利用すれば5%台まで下げられる」といった条件があれば、長期的には有利になる可能性があります。

また、三社間スキームやノンリコース・リコースの選択肢がある会社であれば、売掛先や取引規模に応じてスキームを使い分けることで、トータルのリスクとコストをコントロールしやすくなります。

 

次に、「担当者のサポート体制」と「審査方針の一貫性」も重要です。高額・継続利用では、単発の案件ごとに条件が大きくブレると資金計画が立てにくくなります。

あらかじめ、年間の利用見込みや売掛先の構成を共有し、「どの条件ならどの程度の手数料で対応可能か」をすり合わせておくことで、決算期や繁忙期に条件が急に変わるリスクを抑えられます。

また、登記費用などの固定費についても、「複数案件をまとめて一度だけ登記する」「一定期間内の取引は登記なしで対応する」など、継続利用を前提とした設計が可能かどうかも確認ポイントです。

 

継続・高額利用で重視したい条件
  • 表面手数料率のレンジと、利用実績に応じたディスカウントの有無
  • 三社間スキームやノンリコース/リコースなど、リスクとコストを調整できる選択肢
  • 年間利用を見据えた条件の安定性と、担当者によるサポート体制
  • 登記費用など固定費を、複数案件・複数期間で平準化できる運用が可能かどうか

 

手数料を抑えるための実務チェック

ファクタリング会社の手数料は、広告に出ている「◯%〜」だけで決まるわけではなく、見積りの取り方・質問の仕方・自社での比較方法によって、実際の負担額が大きく変わります。

とくに中小企業では、「急いでいたのでそのまま契約してしまった」「他社と条件を比べていなかった」という理由で、本来より高い条件を受け入れてしまっているケースも少なくありません。

 

逆に、毎回きちんと条件を揃えて見積書を比較し、総コストを自社で計算したうえで交渉に臨めば、同じ売掛先・同じ金額でも1〜2ポイント程度手数料を抑えられる余地が出てきます。

そのための実務上のコツは、①見積り依頼段階で比較軸を揃えること、②見積書を受け取ったら総コストと実質手数料率を自社で計算すること、③交渉では「安くしてほしい」ではなく、具体的な条件と材料を出して相談すること、④最終的な判断を自社のシミュレーション結果に基づいて行い、記録に残すこと、の4点に整理できます。

 

ステップ 手数料を抑えるための実務ポイント
見積り依頼 売掛先・金額・前倒し日数・二社間/三社間など条件を統一して複数社に提示する。
見積り確認 手数料率だけでなく、固定費・掛け目・総コストを自社で再計算する。
交渉 売掛先の信用力や継続利用の見込みなど、率を下げる材料をセットで提示する。
意思決定 シミュレーション結果を社内で共有し、なぜその会社・プランを選んだかを記録しておく。

 

見積書比較と交渉時の確認ポイント

見積書を比較するときは、「A社5%・B社4%だからB社が安い」といった表面だけの比較ではなく、固定費や掛け目を含めた総コストで判断する必要があります。そのためには、まず各社に同じ条件で見積りを依頼することが前提になります。

具体的には、「売掛先」「請求書額(税込)」「前倒ししたい日数」「二社間か三社間か」「ノンリコースを希望するかどうか」といった情報を揃えて提示し、「この条件での手数料率・掛け目・固定費を教えてください」と依頼します。条件がバラバラだと、後から比較ができません。

 

見積書を受け取ったら、「請求書額」「手数料率」「掛け目」「事務手数料」「登記費用」「振込手数料」などを抜き出し、自社のシートで「総コスト」「受取額」「実質手数料率」を再計算します。

そのうえで、交渉に進みますが、このとき大切なのは「具体的な材料」を持って話をすることです。

例えば、「売掛先は上場企業で支払サイトも短く、3年以上遅延もない」「今後半年間は毎月同程度の利用が見込めるので、長期的なお付き合い前提で条件を検討してほしい」といった情報は、ファクタリング会社のリスクを下げる材料になるため、手数料率や掛け目の改善余地が生まれやすくなります。

 

見積書比較・交渉時に確認したいポイント
  • 各社に「売掛先・金額・前倒し日数・スキーム(二社間/三社間)」を揃えて見積り依頼しているか
  • 見積書から「手数料率」「掛け目」「事務手数料」「登記費用」「振込手数料」を抜き出し、総コストを再計算したか
  • 交渉時に、売掛先の信用力・取引実績・継続利用の見込みなど、条件改善につながる材料を提示しているか
  • 「いくらなら利用するか」という自社の上限ライン(実質手数料率・実質年率)を事前に決めているか

 

自社シミュレーションでの意思決定フロー

ファクタリング会社を選ぶ最終判断は、「感覚」ではなく、自社シミュレーションの結果に基づいて行うのが安全です。

実務的には、Excelなどで簡単なシートを用意し、「請求書額」「手数料率」「掛け目」「固定費(登記・事務・振込など)」「前倒し日数」を入力すると、「総コスト」「受取額」「実質手数料率」「実質年率」「日割りコスト」が自動計算されるようにしておくと便利です。

 

見積書が届いたら、その内容をシートに入力し、会社ごとの結果を並べて比較します。

意思決定のフローとしては、まず①資金ニーズ(いくらを、いつまでに、どのくらいの期間前倒ししたいか)を明確にし、次に②候補会社の条件をシートに入力・比較します。

 

その結果から、③条件が自社基準(例えば「実質手数料率◯%以下」「実質年率△%以下」など)を満たす会社・プランを絞り込み、④支払条件や将来の利用見込みも含めて社内で合議し、最終的な選択を行います。

利用後は⑤実際の入金日・コスト・利用感をシートに記録し、次回以降の判断材料として活用します。

 

このように、シミュレーションと意思決定のプロセスをルール化しておけば、「その場の資金繰りに追われて高コスト案件に飛びつく」というリスクを減らすことができます。

また、過去にどの会社とどの条件で取引したかが履歴として残るため、「この条件なら前回は◯社で×%だった」という具体的な裏付けをもって交渉に臨むことも可能になります。

 

自社シミュレーションを活用した意思決定フロー
  • 請求書額・手数料率・掛け目・固定費・前倒し日数を入力すると総コスト等が自動計算されるシートを用意する
  • 候補会社ごとに見積条件を入力し、「実質手数料率」「実質年率」「日割りコスト」で横並び比較する
  • 自社の許容ライン(実質手数料率・年率の上限)をあらかじめ決め、その基準で採否を判断する
  • 利用後の結果(実際の入金日・総コスト・担当者対応)を記録し、次回の会社選定・交渉の材料として活用する

 

まとめ

ファクタリング会社の手数料は、「2社間か3社間か」「売掛先の信用力」「債権額や支払サイト」「登記・事務手数料の有無」によって大きく変わります。

表面上の手数料率だけで判断せず、登記費用・事務手数料・振込手数料を含めた実質コストを自社でシミュレーションすることが大切です。

記事で紹介した比較軸とチェック項目を使えば、複数社の見積書を同じ土俵で比べやすくなり、資金ニーズに合った会社・プランを選びつつ、過度な手数料負担を避ける判断がしやすくなります。