銀行融資が通りにくく、急な支払いで資金調達を急ぐとき、売掛金を早期に現金化できるファクタリングは選択肢になります。一方で「仕組みが分からない」「2社間・3社間の違いは?」「手数料は高い?」「違法業者やトラブルが不安」「税金・会計処理はどうなる?」と迷う人も少なくありません。この記事では、資金調達としての特徴から、手続き・必要書類、手数料と実質コストの見方、リスク回避、税務・仕訳の注意点まで、初心者向けに要点を整理します。
資金調達としての特徴
ファクタリングは、企業や個人事業主が保有する売掛金(取引先へ請求済みで、将来入金予定の代金)を、ファクタリング会社へ譲渡して早期に現金化する資金調達手段です。
一般に、借入(融資)ではなく「売掛債権の譲渡」として扱われる点が特徴で、資金化までのスピードや審査の見られ方が銀行融資と異なります。
一方で、手数料負担が発生し、契約方式(2社間・3社間)によって取引先への通知有無やトラブルリスクが変わります。
初めて検討する場合は、仕組みを理解したうえで「必要な資金額」「必要な期間」「取引先への影響」を整理し、複数の見積条件を同じ前提で比較することが重要です。
売掛金を現金化する流れ
売掛金を現金化する基本の流れは、「売掛債権を譲渡して、期日前に代金の一部(または全部)を受け取る」という考え方です。
契約書上は、債権の内容(請求書、基本契約書など)と、譲渡条件(手数料、入金時期、通知の要否など)を確認して進みます。代表的な流れは次のとおりです。
- 利用者が売掛金(請求書)と取引関係資料を準備し、申込みを行う
- ファクタリング会社が取引先(売掛先)の信用力や請求の実在性を中心に確認する
- 条件提示(手数料率、入金日、契約方式、必要に応じて費用の内訳)を受ける
- 基本契約書・個別契約書などを締結し、債権譲渡の手続きを行う
- 合意した条件で、利用者へ入金される
受取額のイメージをつかむために、請求書額面が100万円で手数料率が10%の場合、受取額は「100万円×(1−0.10)=90万円」といった形で考えます(別途、振込手数料などが差し引かれることもあります)。
なお、買取率は「請求書額面に対して支払われる割合」を指し、上の例では買取率は90%というイメージです。
- 手数料以外の費用(振込手数料、書類取得費用など)が差し引かれる条件か確認する
- 支払期日後の精算方法(誰が取引先から回収し、誰へ支払うか)を契約書で確認する
- 「買い取り」ではなく実質的に貸付に近い条件になっていないか、条項を丁寧に読む
銀行融資との違い比較
銀行融資は、資金の借入であるため、返済義務(元本と利息)が前提になり、審査では利用者自身の信用力や財務状況、返済能力が重視されます。
これに対しファクタリングは、売掛金の譲渡によって資金化するため、利用者側の返済計画というよりも、取引先(売掛先)が期日に支払えるか、請求が実在するかといった観点が中心になりやすいです。
また、会計上の見え方も異なります。融資は負債として計上されるのが一般的ですが、ファクタリングは契約内容によって、売掛金の消込み(売却)として扱われる場合があります。
ただし、契約条項(償還義務の有無など)によって実質判断が変わり得るため、会計処理は顧問税理士など専門家へ確認するのが安全です。
資金調達としての使い分けは、「時間をかけても低コストを狙うか」「手数料を払ってでもスピードを優先するか」という軸で整理すると判断しやすくなります。
- 総コスト:利息(融資)と手数料(ファクタリング)を同じ期間で比較する
- スピード:必要資金の期日までに間に合うか(申込〜入金まで)を確認する
- 影響範囲:取引先通知の有無、契約条項、会計処理の影響を整理する
2社間・3社間の違い比較
ファクタリングは、当事者の数で大きく2社間・3社間に分かれます。2社間は「利用者とファクタリング会社」の2者で契約し、取引先へ債権譲渡を通知しない形が一般的です。
3社間は「利用者・ファクタリング会社・取引先」の3者が関わり、取引先へ通知(または承諾)を行ったうえで進めるのが一般的です。
違いは主に、取引先への通知有無、手数料の傾向、入金までのスピード、回収(支払)の流れに表れます。
一般論として、3社間は取引先が支払先を把握するため回収面の不確実性が下がり、手数料が相対的に低くなる傾向があります。
一方、2社間は取引先に知られにくい反面、回収管理やリスクを織り込むため手数料が上がりやすい傾向がある、と説明されることが多いです。
| 区分 | 2社間 | 3社間 |
|---|---|---|
| 通知 | 取引先へ通知しない形が一般的 | 取引先へ通知・承諾を行う形が一般的 |
| 手数料 | 相対的に高くなりやすい傾向 | 相対的に低くなりやすい傾向 |
| スピード | 条件次第で早いことがある | 通知・承諾の手続き分、時間を要することがある |
| 回収の流れ | 取引先→利用者→ファクタリング会社(契約条件により異なる) | 取引先→ファクタリング会社(契約条件により異なる) |
- 取引先に知られた場合の関係性への影響(社内稟議や説明要否)
- 回収・支払の役割分担(期日入金後の支払先と期限)
- 同じ売掛金の二重譲渡などを疑われない管理(請求書・入金管理の徹底)
申込み手続きと必要書類
ファクタリングは「売掛金(売掛債権)を譲渡して現金化する取引」なので、申込みでは売上や利益だけでなく、請求内容の実在性や取引先(売掛先)の支払可能性を確認できる資料が求められます。
必要書類は、利用者が法人か個人事業主か、2社間・3社間のどちらか、売掛先の属性(大企業・公的機関など)によって変わります。
最初に「請求書が本当に発生しているか」「入金日までに資金化できるか」「手数料の算定根拠を説明できるか」を軸に、書類を揃えると手続きがスムーズです。
申込み前に揃える書類チェック
申込み前に揃えるべき書類は、大きく「本人・事業の確認」「売掛金の裏付け」「入出金の実績」の3系統です。
たとえば請求書だけ提出しても、取引の根拠(契約や発注)や入金実績が見えないと確認に時間がかかりやすくなります。
法人の場合は登記事項証明書(履歴事項全部証明書)など、個人事業主の場合は確定申告書控えなどが求められることがあります。
- 本人・事業の確認:本人確認書類、登記事項証明書(法人)、確定申告書控え(個人事業主)など
- 売掛金の裏付け:請求書、基本契約書、個別契約書、発注書・納品書・検収書など
- 入出金の実績:通帳コピー(入金実績が分かる範囲)、売掛先の過去入金履歴、売掛金の一覧表など
- 追加で求められやすい資料:直近の試算表、決算書、支払サイト(入金日)が分かる資料など
なお、債権譲渡登記や確定日付(公的に日付を確定させる手続き)に関する資料が必要になるかは、契約の形や条件によって異なります。
必要と言われた場合は、書類名と取得方法を確認し、期限に余裕を持って準備すると安心です。
審査で見られる項目基準
審査では、利用者の与信だけでなく、売掛先が期日に支払えるか、売掛金が実在して二重譲渡(同じ債権を複数へ譲渡すること)の懸念がないか、といった観点が重視されやすいです。
加えて、契約上の反社会的勢力排除条項(いわゆる反社条項)に基づく確認や、本人確認が行われるのが一般的です。以下は、確認されやすい項目の整理です。
| 確認項目 | 見られやすいポイント例 |
|---|---|
| 売掛先の信用力 | 取引規模、支払遅延の有無、過去の入金実績、支払条件(入金サイト)など |
| 債権の実在性 | 契約書・発注書・納品書・検収書と請求書の整合、役務提供の事実関係など |
| 支払条件の明確さ | 支払期日が明確か、分割や相殺の可能性、値引き・返品条件の有無など |
| 二重譲渡リスク | 同一請求書の他社利用の有無、入金口座の管理状況、債権管理の体制など |
| 利用者の確認 | 本人確認、事業実態、反社条項への同意、必要に応じて代表者の確認など |
審査に通るか不安な場合は、「売掛先別に請求根拠と入金実績を1セットで説明できる状態」にしておくと、確認の往復が減りやすいです。
契約から入金までの日数目安
契約から入金までの日数は、書類の揃い具合、売掛先の確認に要する時間、契約方式(2社間・3社間)、契約締結方法(対面・郵送・オンライン)などで変動します。
一般論として、2社間は取引先への通知や承諾を要しない形が多いため、条件次第で短期化しやすく、3社間は通知・承諾の手続きが入る分、時間を要することがあります。
- 条件提示まで:書類提出後、確認が完了して見積条件が出るまでに一定の時間がかかる
- 契約締結:基本契約書・個別契約書の締結、必要に応じて債権譲渡の手続き
- 入金:契約条件どおりに振込(金融機関の営業時間や手続きタイミングで前後する)
入金を急ぐ場合でも、手数料や条項の確認を省くと後のトラブルにつながりやすいです。特に「入金日」「手数料以外の差引」「期日入金後の精算方法(誰が回収し、誰へ支払うか)」は、契約前に文字で確認しておくと安心です。
手数料と実質コスト計算
ファクタリングのコストは、見積書に記載される「手数料率(%)」だけで判断すると誤解が出やすいです。
理由は、同じ手数料率でも「入金までの日数」「差し引かれる費用の有無」「2社間・3社間などの契約方式」によって、手元に残る金額と実質的な負担感が変わるためです。
そこで、請求書額面(円)を起点に、①入金額(円)②手数料額(円)③資金化までの日数(日)を同じ前提で並べ、必要に応じて実質年率の目安に置き換えると比較がしやすくなります。
実質年率は利息ではありませんが、短期で資金化する取引ほど年換算で大きく見えやすい点も含め、判断材料として使うのが現実的です。
手数料が決まる要因例
手数料は、単に「利用者の信用力」だけで決まるわけではなく、主に売掛金そのものの回収可能性と、確認に要する手間・リスクの大きさで変動します。
たとえば、支払期日までの日数が短い売掛金はリスクが低く見えやすい一方、期日が先であれば不確実性が増えるため、条件に影響しやすいです。
また、2社間は取引先に通知しない形が多く、回収面の不確実性を織り込みやすい一方、3社間は通知・承諾が関わるため確認プロセスが増える反面、回収が明確になりやすいという違いがあります。
加えて、請求書の根拠資料(基本契約書、発注書、納品書、検収書など)が揃っているか、入金実績が確認できるかも重要です。
| 要因 | 手数料に影響しやすい理由 |
|---|---|
| 契約方式 | 取引先通知の有無や回収フローの違いで、確認負担とリスクが変わるため |
| 売掛先の信用 | 支払遅延や回収不能の可能性が条件に反映されやすいため |
| 期日までの日数 | 期間が長いほど不確実性が増え、リスク要因になりやすいため |
| 証憑の揃い方 | 請求の実在性確認に要する手間が増減するため |
| 請求条件の複雑さ | 値引き・返品・相殺などがあると、債権額が確定しにくくなるため |
- 請求書とセットで、契約・発注・納品(検収)までの根拠資料を揃える
- 売掛先ごとの入金実績(通帳の該当箇所など)を提示できる状態にする
- 支払期日、値引き条件、相殺の可能性を事前に整理して説明できるようにする
手数料相場の目安比較
手数料に「公的に統一された相場」はなく、案件条件によって幅が大きいのが実態です。一般に紹介される例でも、数%台から二桁%台まで幅があるとされ、同じ事業者でも売掛先の信用力や期日、契約方式で条件が変わります。
そのため「相場の数字」を探すより、同じ前提(請求書額面・期日・方式)で複数見積を取り、入金額ベースで比較する方が実務的です。
特に、2社間・3社間で同じ売掛金を比較すると、3社間の方が手数料が抑えられやすい一方で、通知・承諾の手続きが必要になるため、スピードや社内調整のしやすさも合わせて検討する必要があります。
| 観点 | 2社間の傾向 | 3社間の傾向 |
|---|---|---|
| 手数料 | 相対的に高くなりやすい | 相対的に低くなりやすい |
| スピード | 条件次第で短期化しやすい | 通知・承諾で日数が伸びることがある |
| 社内調整 | 取引先に知られにくい | 取引先対応が必要になり得る |
比較時は、手数料率(%)だけでなく「入金額(円)」と「差し引かれる費用」を必ずセットで見て、同じ売掛金条件で判断するのが安全です。
実質年率に置く換算例
実質年率は、ファクタリングを「短期の資金化」として他の資金調達と比較するための目安です。利息ではありませんが、同じ資金化でも日数が短いほど年換算が大きく見えるため、数値だけで良否を決めず、資金繰り上の必要性と合わせて判断します。
計算の考え方はシンプルで、入金額を「実際に使える資金」とみなし、その資金を確保するために支払う手数料を期間で年換算します。
- 入金額(円)=請求書額面(円)×(1−手数料率)
- 手数料額(円)=請求書額面(円)−入金額(円)
- 実質年率(目安)=(手数料額÷入金額)×(365÷資金化日数)×100(%)
例として、請求書額面100万円、手数料率10%、資金化日数30日の場合、入金額は90万円、手数料額は10万円です。
実質年率の目安は(10万円÷90万円)×(365÷30)×100 ≒ 135.2%になります。短期のため年換算が大きく見える典型例で、実務では「手数料10万円を払ってでも30日早く90万円を確保する価値があるか」を資金繰り表で検討する、という使い方が現実的です。
- 実質年率は比較の目安で、利息や法定利率を示すものではありません
- 計算前提(資金化日数・差引費用)を揃えないと比較が歪みます
- 必要額・必要期間が短いほど、年換算は大きく見えやすいです
見積書の確認項目チェック
見積書は「手数料率」だけでなく、入金額と精算条件まで読んで初めて比較できます。特に、同じ10%でも、別途費用が差し引かれる場合は手元資金が減り、実質負担が変わります。
また、債権譲渡の取引である以上、回収フロー(誰が売掛先から受け取り、誰へ支払うか)と、契約条項(償還請求権の有無など)はトラブル防止の要です。
契約書の理解が難しい場合は、弁護士や税理士など専門家へ相談する姿勢が重要です。
- 入金額(円)と控除内訳:手数料以外の差引(振込手数料、書類取得費用など)の有無
- 手数料率(%)と算定根拠:売掛先・期日・方式がどこに反映されているか
- 契約方式:2社間・3社間、取引先への通知・承諾の要否
- 回収と精算:売掛先からの入金先、期日入金後の支払期限、遅延時の扱い
- 償還請求権:売掛先が不払いの場合の負担が誰にあるか(条項で確認)
- 債権譲渡の範囲:対象請求書、将来債権を含むか、追加譲渡の条件
- 債権譲渡登記・確定日付:必要となる条件、費用負担、手続きの担当
- 税務・会計:仕訳方法の前提(売却処理か等)を税理士へ確認できる情報があるか
見積比較は、各社の表記が違っても「請求書額面(円)→入金額(円)→差引費用(円)→資金化日数(日)」に統一して並べると、判断がブレにくくなります。
資金繰り悪化時の活用判断
資金繰りが悪化したときは、「損益(黒字・赤字)」と「資金の出入り(入金・支払)」を分けて整理することが出発点です。
ファクタリングは売掛金を早期に現金化できる一方、手数料負担が発生し、契約方式によって取引先対応やトラブルリスクも変わります。
そのため、思いつきで使うのではなく、資金繰り表(将来の入金予定と支払予定を時系列で並べた表)で不足時期・不足額・必要期間を見える化し、売掛金の入金日(入金サイト)と支払期日のズレを埋める用途に限定して検討するのが現実的です。
資金化のスピードだけでなく、実質コスト、取引先への影響、契約条件の妥当性まで同じ前提で比較して判断します。
資金繰り表での使いどき判断
「いつ・いくら足りないか」を数字で確認できれば、ファクタリングが必要かどうかの判断がぶれにくくなります。
資金繰り表は、最低でも今月〜翌々月の入金予定(売掛金の入金日)と支払予定(給与、外注費、家賃、税金・社会保険料など)を日付ベースで並べ、残高がマイナスになる日を特定します。
たとえば、10日後に120万円の支払がある一方で、売掛金150万円の入金が30日後の場合、20日間の資金ギャップが生じます。
このとき「不足額120万円を丸ごと資金化する」のではなく、必要額と期間を絞り、資金化日数が短い売掛金から検討すると、手数料負担の見通しを立てやすいです。
- 残高が不足する日と不足額(円)を資金繰り表で確定する
- 不足を埋める期間(日)と、入金が確実な売掛金(請求書)を紐づける
- 入金額(円)と差引費用を前提に、必要額を満たすか確認する
- 不足が継続する場合は、原因(粗利・回収遅れ・固定費)も同時に点検する
取引先に知られない条件注意点
取引先に知られずに進めたい場合、一般に2社間(利用者とファクタリング会社の2者で契約)を検討する場面が多いです。
ただし、「通知しない」ことが常に保証されるわけではなく、契約条項や状況によっては取引先へ連絡が入る可能性があります。
たとえば、債権の内容確認が必要な場合、支払遅延や紛争が生じた場合、契約上の規定に基づき通知・照会が行われるケースもあり得ます。
また、取引先に知られないことを優先し過ぎて、手数料や精算条件の確認が甘くなると、資金繰りの再悪化につながりやすいです。
通知の有無だけでなく、回収と精算の流れ(取引先→誰へ入金し、誰が誰へ支払うか)を文章で確認し、社内の入金管理ルールも整えておく必要があります。
- 取引先への通知・照会が行われ得る条件を契約書で確認する
- 入金口座と回収フロー(期日入金後の支払期限・遅延時の扱い)を明確にする
- 請求書の二重譲渡を疑われないよう、譲渡対象の管理台帳を作る
- 社内で説明が必要になった場合の想定問答(資金繰りの理由・再発防止)を用意する
赤字決算時の利用可否目安
赤字決算でも、売掛金が実在し、取引先が期日に支払える見込みが高い場合は、資金化の検討余地があると説明されることがあります。これはファクタリングが「売掛金の回収可能性」を重視しやすい取引であるためです。
ただし、赤字そのものが直ちに問題ではなくても、資金繰りが逼迫して支払遅延が多い、請求根拠資料が不十分、売掛先の支払状況に不安がある、といった事情があると確認が厳しくなりやすい点には注意が必要です。
特に、税金・社会保険料の滞納、差押えの可能性、主要取引先の集中などは、資金繰り上のリスクとして整理しておくと判断材料になります。
会計処理や税務上の扱いは契約内容で異なり得るため、決算への影響を含めて税理士等へ相談する姿勢が安全です。
他の資金調達と併用基準
資金繰り悪化が一時的か、構造的(利益率・固定費・回収条件の問題)かで、選ぶ手段は変わります。
ファクタリングは「売掛金の入金までのつなぎ」に向きやすい一方、長期的な資金不足を恒常的に埋める用途には手数料負担が重くなりやすいです。
そのため、短期はファクタリングで当面の資金ショートを回避しつつ、中長期は銀行融資や制度融資、支払条件の見直し(支払サイト短縮・分割請求)、在庫や固定費の圧縮などと組み合わせて再発防止を図る、という整理が実務的です。
| 目的 | 併用判断の目安 |
|---|---|
| 急ぎの支払対応 | 入金までのつなぎが必要なら、資金化日数と入金額で比較し、最小限の必要額に絞る |
| 運転資金の安定 | 利益率・回収条件を見直しつつ、融資・制度資金など中期資金の検討を並行する |
| 資金繰り再発防止 | 資金繰り表の更新、与信管理(売掛先別の回収遅延管理)、固定費の適正化をセットで行う |
併用する場合は、契約条件の整合(入金口座・回収フローの混乱防止)と、総コスト(差引費用を含む)を同じ前提で比較することが重要です。
資金繰りが継続的に厳しい場合は、金融機関や専門家へ早めに状況を共有し、打ち手を複数持つことが現実的です。
リスク回避と税務注意点
ファクタリングは売掛金を現金化できる一方、契約内容によっては想定外の負担や取引先トラブルにつながることがあります。
特に注意したいのは、実態が貸付けに近い取引になっていないか、契約書の条項で不利な義務を負っていないか、連絡・督促の運用が適切かという点です。
また、消費税や印紙税、仕訳処理は「契約の形(債権譲渡か、実質的に借入に近いか)」で取り扱いが変わり得ます。
制度や運用は改正・更新の可能性もあるため、最終判断は税理士・弁護士など専門家へ確認する前提で整理します。
違法な貸付け疑いのチェック
本来のファクタリングは「売掛債権の譲渡」ですが、契約の実態が「資金を渡して返済させる」形だと、貸付けに近い取引とみなされるリスクが高まります。
初心者が見落としやすいのは、手数料率だけでなく、利用者側に返済義務や買戻し義務に近い負担があるかどうかです。
名称が「手数料」でも、実態が利息のような構造になっていないかを確認し、説明が曖昧な場合は契約を急がないのが安全です。
- 売掛先が不払いでも、利用者が必ず支払う(買戻し・立替・償還のような義務が強い)
- 分割で返す、返済日が固定されるなど「返済スケジュール」が前提になっている
- 遅延時の損害金や違約金が過大で、実質的に利息のように増える
- 契約書の名目は譲渡でも、説明が「借入」「返済」と同じ言い回しになっている
契約書で注意したい条項例
契約書は、手数料率よりも「誰がどのリスクを負担するか」を確認する文書です。特に重要なのは、償還請求権(売掛先が払わない場合に、利用者へ支払いを求められる条項)の有無と範囲です。
加えて、債権の表明保証(請求が実在し二重譲渡でない等の保証)、相殺・減額(返品・値引き等)時の扱い、取引先への通知・照会条件、回収事務の権限、期限の利益喪失や解除条件も確認します。条項の解釈に迷う場合は、法律相談は弁護士等の専門家へ確認する姿勢が重要です。
- 対象債権:請求書番号、額面(円)、支払期日、譲渡範囲
- 費用:手数料(%)と控除内訳、振込手数料などの負担者
- 不払い時:償還請求権の有無、例外条件、連絡手順
- 通知・回収:取引先への通知条件、入金口座、精算期限
連絡・督促で起きる注意点
2社間では取引先に知られにくい反面、売掛先への照会や支払遅延時の連絡が発生すると、関係悪化のきっかけになり得ます。
契約前に「どの条件なら取引先へ連絡するのか」「連絡する場合の名義・方法」「利用者はどう対応するのか」を決めておくと、トラブルを抑えやすいです。
また、督促の言動が強引だと、利用者側の信用問題にも波及します。社内では、売掛金の入金管理担当を決め、期日管理・連絡窓口・記録(日時と内容)を一体で運用するのが基本です。
- 取引先への連絡条件を契約書で明文化し、口頭説明だけで進めない
- 入金予定日と入金確認の担当者を固定し、遅延時の連絡手順を用意する
- やり取りは記録し、誤解が起きやすい表現(断定・威圧)を避ける
- 取引先説明が必要になった場合の説明文(資金繰りの再発防止策含む)を準備する
消費税・印紙税の扱い目安
税務は契約の実態により取り扱いが変わり得るため、ここでは典型的な整理にとどめます。一般に、売掛債権そのものの譲渡と、ファクタリング会社へ支払う手数料(役務の対価)では性質が異なり、課税関係も分けて考えます。
印紙税は、紙の契約書として作成するか、契約書の種類が何に該当するかで負担が変わることがあります。
実務では、見積時点で「税区分」「印紙要否」「電子契約の扱い」を確認し、処理は税理士へ相談するのが安全です。
| 論点 | 確認の目安 |
|---|---|
| 消費税 | 債権譲渡と手数料(役務提供)の区分を分けて、請求書・明細の税区分を確認する |
| 印紙税 | 紙の契約書を作成する場合、文書の種類により印紙要否が変わることがある |
| 電子契約 | 電子データのみで完結する場合の扱いは、紙とは異なることがあるため要確認 |
仕訳と費用計上の注意点
仕訳は「売掛金を売却した取引」か、「実質的に借入に近い取引」かで考え方が変わります。例として、請求書額面100万円、手数料10%で90万円が入金された場合、売却として処理するイメージは次のとおりです。
- 入金時:借方)普通預金 900,000円/借方)支払手数料 100,000円 貸方)売掛金 1,000,000円
- 取引先入金後の精算がある契約では、入金経路(誰の口座に入るか)に応じて追加仕訳が必要になる
一方、償還請求権が強いなど実態が借入に近い場合は、売掛金の扱いと負債計上の検討が必要になることがあります。
会計方針や監査・金融機関対応も絡むため、契約書を前提に税理士等へ確認するのが安全です。
- 「手数料率(%)」だけ見て、差引費用(円)や税区分を仕訳に反映しない
- 回収・精算フロー(入金口座、支払期限)を把握せず、入金消込が崩れる
- 契約の実態確認をせず、売却処理で固定してしまう
まとめ
ファクタリングは売掛金を現金化して資金調達する方法で、融資とは審査観点や資金化スピードが異なります。
要点は①2社間・3社間の違いと取引先通知の有無、②必要書類と審査で見られる項目、③手数料の内訳と実質コストの確認、④契約条項・連絡方法などトラブル回避のチェック、⑤消費税・印紙税・仕訳を含む会計処理です。
次は、必要額と期間を資金繰り表で整理し、融資や制度資金等とも比較したうえで、契約前チェックリストを作り専門家・金融機関へ相談しながら、焦らず慎重に判断しましょう。























