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赤字決算でも中間納付は必要?仮決算で減らす5つのポインを徹底解説

赤字決算でも「中間納付」の通知が来て、納付資金や延滞税、資金ショートが不安な方へ。税金・社保の遅れが銀行融資や公庫融資の審査に影響しないかも気になるところです。本記事では、予定申告で中間納付が発生する条件と、仮決算申告で税額を減らす(0円にする)要件を整理し、どちらを選ぶべきかの判断軸も示します。対象税目の違い、提出期限・必要書類、電子申告、資金繰り表への反映、猶予・分納の相談先までまとめます。

中間納付が発生する条件

中間納付(中間申告・予定申告)は、前の事業年度(課税期間)の実績に基づき、当期の途中で税金を前払いする仕組みです。赤字決算の見込みでも、原則は「前期の確定税額が一定以上」などの条件に当てはまると通知や申告書が届きます。なお、通知が来た場合でも、前期実績で計算する「予定申告」ではなく、期中の損益で計算し直す「仮決算(期中決算)」を選び、税額を減らす(0円を含む)ことも可能です。対象税目や判定基準は税目ごとに異なるため、まずはどの税が対象かを切り分けるのが第一歩です。

まず確認したい3点
  • 対象税目(法人税・消費税・地方税など)と、通知元(税務署/自治体)
  • 前期の確定税額が「中間が出る水準」だったか
  • 当期の途中で赤字見込みか(仮決算で減額検討の余地)
確認項目 見るポイント
前期実績 前期の確定申告での税額(中間はここを基準に出やすい)
当期見込み 期中の売上・粗利・固定費を踏まえ、黒字/赤字の見込みを立てる
申告方法 予定申告(前期実績ベース)か、仮決算(期中損益ベース)かを選ぶ

対象税目の違い比較ポイント

「中間納付」が問題になりやすいのは、法人税・消費税(地方消費税を含む)・法人住民税/法人事業税などです。税目ごとに、申告先(税務署か自治体か)、計算の考え方、減額できる余地が違います。たとえば法人税は、一般に「前期の法人税額」を基準に中間税額が計算されやすく、赤字見込みなら仮決算での減額検討が重要になります。消費税は、前期実績が一定以上だと中間申告回数が増える場合があり、資金繰り表への反映が欠かせません。地方税(住民税・事業税)は自治体への申告・納付となり、法人税と同様に前期実績を起点にするケースが多い一方、手続の様式や扱いは自治体案内に従う必要があります。

税目 申告・納付先 押さえる比較ポイント
法人税 税務署(国税) 前期税額を基準に出やすい/赤字見込みなら仮決算で減額余地
消費税 税務署(国税) 前期税額が大きいほど回数が増えやすい/納付回数=資金繰り負担
法人住民税・事業税 都道府県・市区町村(地方税) 自治体ごとに様式・案内が異なる/法人税とスケジュール連動が多い

中間申告回数の目安チェック

中間申告の回数は、税目によって考え方が異なります。法人税は多くのケースで「年1回(期首から6か月分)」が基本イメージです。一方、消費税は前期の税額が一定以上になると、中間申告が複数回になり得ます(四半期ごと、毎月相当など)。回数が増えるほど、納付タイミングが分散するため、月次の資金繰りに影響が出やすくなります。赤字決算が見込まれる場合は、予定申告のまま進めるか、仮決算で税額を圧縮できるかを、期中の損益見込みとあわせて検討します。

回数が増えやすい場面
  • 前期の税額が大きく、当期も同程度の規模で推移している
  • 消費税の納付額が大きく、複数回の中間申告に該当しやすい
  • 期中の資金繰りがタイトで、納付月が重なると資金ショートが起きやすい
税目 回数の一般的イメージ
法人税 年1回(6か月経過時点の中間が中心)
消費税 年1回〜複数回(四半期相当、最大で毎月相当)
地方税 年1回(自治体の案内に従う)
よくある誤解と注意点
  • 「赤字見込み=自動で中間が止まる」わけではなく、手続(仮決算申告)が必要になることがある
  • 回数が多い税目ほど、納付月が分散し、資金繰り表の更新頻度が重要になる
  • 地方税は自治体ごとに扱いが異なるため、通知内容(課税期間・納期限)を必ず確認する
回数の判定や扱いは前期実績と制度要件で決まるため、通知に記載の「対象期間」と「申告方法(予定/仮決算)」を先に確認すると迷いが減ります。

納付期限の基本ルール

中間納付は、原則として「中間申告書の提出期限=納付期限」と考えると管理しやすいです。多くの税目で、対象期間(例:期首から6か月)の末日の翌日から一定期間内に申告・納付します。期限を過ぎると、延滞税などの負担が増える可能性があるため、赤字で資金に余裕がない局面ほど、先にスケジュールを確定させておくことが大切です。なお、予定申告のまま納めるのか、仮決算で減額を狙うのかによって、期中の締め処理や資料準備の負担が変わります。

【スケジュールの見え方(例:3月決算法人の法人税中間)】

  1. 期首(4月)〜6か月経過(9月末)で中間対象期間が区切られる
  2. 10月〜11月にかけて、申告書作成(予定申告か仮決算かを選択)
  3. 期限までに提出・納付(納付資金の確保が必要)
期限管理をラクにするコツ
  • 通知が届いたら、納期限を資金繰り表に先に入力して固定する
  • 仮決算を検討する場合は、月次試算表の精度(売上計上・経費計上)を早めに整える
  • 納付が厳しい兆しがある場合は、期限前に相談先(税務署・自治体・税理士)を確保する

赤字決算時の中間納付判断

赤字見込みでも、中間納付(中間申告・予定申告)の対象になると、原則は期限までに申告・納付が必要です。ここで重要なのは「前期実績で計算する予定申告のまま納めるか」「期中の損益で計算し直す仮決算を選ぶか」を早めに決めることです。仮決算は、期中の利益が小さい・赤字のときに中間税額を引き下げやすい一方、月次の締め精度や資料準備が欠かせません。資金繰りが厳しい場合ほど、納付月を資金繰り表に落とし込み、どの税目で、どの方式を選ぶかを整理してから動くと判断ミスが減ります。

選択肢 向くケース 注意点
予定申告 月次が未整備でも対応しやすい/当期も前期並みの利益見込み 赤字見込みでも税額が下がらないことがある
仮決算 赤字・利益減の見込みが強い/納付資金を圧縮したい 期限までの締め・資料が必要/期限後の切替が難しい税目がある

予定申告の納付要否チェック

予定申告は、前期の確定税額などを基準に中間税額が計算される方式です。赤字見込みでも通知が届くのは珍しくありません。まずは「どの税目の中間か」「提出・納付期限はいつか」「税額はいくらか」を確認します。例えば、前期の法人税が120万円だった会社で、事業年度が12か月の場合、予定申告の中間税額が概算で60万円相当になることがあります(あくまで計算イメージです)。この場合、当期が赤字見込みでも、仮決算に切り替えない限り、予定申告ベースでの納付資金を用意する必要が出てきます。

予定申告で先に確認するチェック
  • 中間の対象税目(法人税・消費税・地方税など)
  • 納付期限と、資金繰り上の重なり(社保・仕入・賞与など)
  • 当期の見込み(黒字か赤字か)と、仮決算に切り替える価値
  • 期限までに仮決算の締めが現実的か(試算表・請求書・経費計上)

仮決算で0円にするポイント

仮決算は、中間対象期間(例:期首から6か月)を区切って決算を組み、期中の実態に近い税額で中間申告する方法です。赤字であれば、その期間の課税所得(利益)が出ないため、中間税額を0円にできる可能性があります。ただし、仮決算は「期限までに」行うことが前提で、月次の計上漏れや在庫・未払の反映が甘いと、想定より利益が出て0円にならないこともあります。減額の可否は、売上の計上時期、外注費・原価・固定費、減価償却などの影響も受けるため、根拠のある数値で締めることが重要です。

【仮決算で0円に近づける手順】

  1. 中間対象期間を確定(期首から6か月など)し、締め日を決める
  2. 売上・原価・経費の計上漏れを点検し、月次試算表を確定させる
  3. 赤字見込みの根拠を整理(受注減、原材料高、人件費増など)
  4. 仮決算の申告書を期限内に提出し、税額を確定させる

消費税の還付不可注意点

消費税の中間申告を仮決算で行う場合、計算結果がマイナス(還付になりそう)でも、その時点で還付を受けることはできません。還付が見込まれる業種(設備投資が大きい、輸出取引がある等)でも、「中間で現金が戻る」と見込んで資金計画を組むのは危険です。また、期限までに中間申告書を提出しないと、前期実績に基づく内容で提出があったものとみなされ、仮決算による中間申告を期限後に出せない扱いになります。中間納付で資金が流出する局面ほど、納期限前に仮決算の可否を判断し、資金繰り表で納付月の不足を早めに把握することが大切です。

消費税の中間でつまずきやすい注意点
  • 仮決算で税額がマイナスでも、中間では還付を受けられない
  • 期限までに出さないと、前期実績ベースで「提出があったもの」とみなされる
  • 仮決算へ切替できる税目でも、期限後は選べないケースがある

仮決算申告の提出手続

仮決算申告は、中間対象期間(多くは期首から6か月など)で一度「区切りの決算」を行い、その期間の利益(課税所得)に基づいて中間税額を計算し直す手続です。予定申告だと前期実績ベースで納付額が出るため、当期が赤字見込みでも納付資金が必要になります。一方、仮決算で赤字が確認できれば、中間税額を0円まで下げられる可能性があります。ただし、期限までに月次締めを完成させ、申告書の提出まで行う必要があるため、経理の段取りが重要です。実務上は「締め日→試算表確定→申告書作成→提出・納付」を逆算し、納付月の資金繰り表とセットで管理します。

論点 予定申告 仮決算申告
税額の根拠 前期の確定税額など 期中(中間期間)の損益
準備負担 比較的軽い 月次締め・資料整備が必要
資金繰り効果 当期赤字でも納付が残ることがある 利益減・赤字なら減額(0円含む)の余地

必要書類と添付のチェック

仮決算申告でつまずきやすいのは「赤字の根拠はあるのに、締めが間に合わない」ケースです。必要書類は税目や申告方法で変わりますが、共通して重要なのは、期中の損益を裏づける資料(試算表や帳票)を期限までに固めることです。例えば、前期の法人税が120万円で予定申告だと中間が60万円相当になりそうでも、上期の損益が赤字であることを仮決算で示せれば、納付資金を圧縮できる可能性があります。月末の売上計上漏れ、外注費の未計上、棚卸の未反映などがあると「赤字のつもりが利益が出てしまう」こともあるため、チェックリストで機械的に潰すのが安全です。

仮決算で整えたい資料チェック
  • 中間対象期間の試算表(売上・原価・経費の計上が反映されたもの)
  • 請求書・領収書・外注費の検収資料(計上漏れ防止)
  • 棚卸の集計(在庫・仕掛がある業種は特に重要)
  • 減価償却の見込み(設備投資がある場合の費用計上)
  • 消費税の計算資料(課税売上・課税仕入、区分経理の根拠)

提出期限と期限後の注意点

中間申告の期限は、多くの税目で「中間対象期間の末日の翌日から2か月以内」が目安になります(休日に当たる場合は翌開庁日になるのが一般的です)。この期限管理が重要なのは、期限を過ぎると延滞税などの負担が増える可能性があるだけでなく、税目によっては「期限内に提出しないと前期実績ベースで扱われ、仮決算への切替ができない」リスクがあるためです。資金繰りが厳しい局面ほど、期限の直前で慌てると締めの精度が落ち、結果として減額幅が縮むことがあります。

例(12か月決算) スケジュールの考え方
4月開始・3月決算 中間対象期間:4/1〜9/30 → 提出・納付期限の目安:11月末(2か月以内)
10月開始・9月決算 中間対象期間:10/1〜3/31 → 提出・納付期限の目安:5月末(2か月以内)
期限後に起きやすいデメリット
  • 延滞税などで実質負担が増える可能性
  • 仮決算への切替ができず、前期実績ベースの納付が残る扱いになる可能性
  • 資金繰り表の見込みが崩れ、仕入・給与・社保と納付が重なりやすい

電子申告と納付の選び方

提出は、国税はe-Tax、地方税はeLTAXといった電子申告を選ぶと、期限管理や控えの保存がしやすくなります。納付方法は複数あり、資金繰りの状況に合わせて「いつ引き落とされるか」「手数料がかかるか」を基準に選ぶのが実務的です。例えば、ダイレクト納付(口座引落)を使うと、引落日を指定できる方式があり、入金予定日に合わせて調整しやすい一方、事前の利用開始手続が必要です。クレジットカード納付は手元資金のタイミング調整に役立つ場合がありますが、別途手数料が発生することがあるため、総コストの確認が欠かせません。

納付方法の選び方ポイント
  • 期日までの資金確保が確実なら、口座引落やインターネットバンキングで遅れを防ぐ
  • 入金が期日直前になりやすい業種は、引落日指定の可否や処理時間を先に確認する
  • カード納付を使う場合は、手数料と資金繰り効果(支払日後ろ倒し)を比較する
  • 国税(e-Tax)と地方税(eLTAX)で手続窓口が分かれる点に注意する

資金繰り表への反映方針

中間納付がある年は、利益が出ているかどうかにかかわらず、資金繰り表で「いつ・いくら出ていくか」を先に確定させることが最重要です。税金は支払日が固定されやすく、支払が遅れると延滞税などの負担増につながり得るため、資金ショートの引き金になりやすい支出です。予定申告のまま納めるのか、仮決算で減額を狙うのかで、納付額の見込みが変わりますが、どちらにせよ「提出期限→納付期限→引落日(または振込日)」まで落として管理します。資金繰り表の目的は、赤字でも黒字でも「資金が尽きる月」を早く見つけ、打ち手(支払調整・資金調達・相談)を前倒しすることにあります。

資金繰り表で最初に固定する枠
  • 税金・社保・給与・家賃など、期日が動きにくい支出
  • 入金の確度が高い売掛金(請求済み・検収済み)
  • 中間納付の「納期限」と、実際の引落・振込日
反映項目 資金繰り表での扱い
中間納付(国税) 納付期限月に「税金支出」として計上し、引落日が決まる方式は日付まで記載
中間納付(地方税) 自治体ごとの納期限を別行で管理し、国税と月が重なる場合は資金不足を再確認
仮決算の効果 税額見込みを「予定」「仮決算」の2パターンで並べ、資金不足月を比較する

納付スケジュール活用法

納付スケジュールは「税金のカレンダー」ではなく、「資金繰りの警報装置」として使うと効果が出ます。例えば、4月開始・3月決算の会社で、11月に法人税の中間納付があり、同じ11月に賞与と社会保険料の納付が重なる場合、資金繰り表で一気に資金が減る月になります。ここで、予定申告の中間税額が60万円相当、賞与が200万円、社保が80万円、家賃が30万円だとすると、固定支出だけで370万円規模になります。入金予定が300万円しかない月なら、差額70万円は「何もしないと足りない」と早期に見える化できます。

【納付スケジュールを資金繰りに落とす手順】

  1. 通知・申告書にある納期限を月次一覧にし、資金繰り表へ転記する
  2. 国税・地方税・社会保険料を同じ月に並べ、重なりを可視化する
  3. 予定申告と仮決算の2パターンで税額を置き、資金不足月の差を比較する
  4. 不足が見える月から逆算し、支払調整・資金調達・相談の順に打ち手を決める
スケジュール管理の落とし穴
  • 納期限と引落日・振込日のズレを見落とし、残高不足で遅れる
  • 国税と地方税を別々に管理してしまい、同月に重なる支出を見逃す
  • 仮決算の準備が間に合わず、予定申告の税額で資金計画が崩れる

資金不足の早期サイン

資金不足は「残高が0円になる直前」ではなく、もっと手前で兆候が出ます。特に赤字局面では、売上が減るだけでなく、入金サイト(入金までの期間)が長いまま固定費だけが出ていくため、資金が細るスピードが速くなります。資金繰り表では、月末残高だけでなく「最低残高(最小残高)」を意識すると、危険な月が早く見つかります。例えば、月末残高は50万円残る見込みでも、月中に税金・社保・仕入の支払が集中して一時的にマイナスになるなら、実務上は資金ショートです。

資金不足の早期サインチェック
  • 月中の支払集中で、最低残高がゼロ近辺まで落ちる
  • 売掛金の入金が「予定」止まりで、請求・検収・入金日の確度が低い
  • 税金・社保・給与の固定支出が、売上総利益の範囲を超え始める
  • 支払遅延(外注費・家賃・税金)が発生し、延滞コストが増える兆しがある
兆候 次の一手の例
最低残高が不足 支払の優先順位付け、支払条件の調整、短期資金の確保策を検討
入金の確度が低い 請求漏れ・検収遅れの解消、入金予定日の前倒し交渉、与信管理の強化
固定費が重い 役員報酬・人件費・サブスクの見直し、変動費化の検討

金融機関へ説明する要点

金融機関に相談するときは、「赤字の理由」だけでなく「いつ資金が不足し、何に使い、どう返すか」を、資金繰り表で説明できるかが重要です。中間納付が絡む場合、税金の支払を避けるのではなく、納付計画を含めて資金繰りを管理している姿勢が伝わると、話が進めやすくなります。例えば「11月に税金60万円と社保80万円が重なり、月中の最低残高がマイナス70万円になる。仮決算で税額を0〜20万円まで圧縮できる見込みだが、確実性を見て80万円の運転資金枠を用意したい」といった形で、数字と期限をセットで示すと具体性が増します。

説明資料に入れたい要点
  • 資金使途(税金・仕入・人件費など)と必要額(不足額の根拠)
  • 資金繰り表(向こう3〜6か月)と、最低残高が不足する月の特定
  • 赤字の要因と改善策(受注回復策、価格改定、固定費削減など)
  • 仮決算の方針(減額見込み・提出期限までの段取り)
  • 返済原資の説明(利益計画・回収サイト・月次の返済可能額)
避けたい伝え方の例
  • 「とにかく足りないので貸してほしい」と金額根拠がない
  • 税金や社保の支払計画が曖昧で、延滞のリスクが見える
  • 売上見込みが希望的観測のみで、入金予定日の裏付けが弱い

赤字企業の納税資金対策

赤字局面の納税資金対策は、「払えないから後回し」ではなく、「期限前に状況を開示して、現実的な支払計画に組み替える」ことが基本です。税金は期限を過ぎると延滞税などの負担が増える可能性があり、資金繰りをさらに圧迫します。中間納付が重なる年は、国税(法人税・消費税)と地方税、さらに社会保険料が同月に重なりやすいため、資金繰り表で不足額を早期に把握し、相談・手続を前倒しすることが重要です。なお、制度上の猶予や分納は一定の要件や手続があり、ケースにより扱いが異なるため、一般論として「相談先の選び方」「準備すべき資料」「遅れる前の動き方」を押さえるのが安全です。

赤字時の資金対策の基本方針
  • 納期限と不足額を資金繰り表で確定し、いつから不足するかを明確化する
  • 予定申告か仮決算かを早めに判断し、中間納付額を圧縮できる余地を確認する
  • 納付が難しい場合は、期限前に相談し、猶予・分納などの可能性を検討する
場面 優先する打ち手の例
まだ期限前 仮決算で減額可否を確認/納税資金の手当て/相談予約
期限が迫る 納付方法の選定(引落日・振込日)/分納案の作成/必要資料の準備
遅れが出そう 相談先へ早期連絡/遅れの理由・回復見込みの説明/支払計画の再設計

納税猶予の相談先目安

納税の猶予や分納を考えるときは、まず「どの税の話か」で相談先が分かれます。国税(法人税・消費税など)は税務署、地方税(法人住民税・事業税など)は都道府県・市区町村、社会保険料は年金事務所などが窓口になります。相談では「払えない事情」だけでなく、「いつ・いくらなら払えるか」を数字で示すことが重要です。例えば、11月に税金60万円と社保80万円が重なり、月中の最低残高がマイナス70万円になる見込みなら、「今月は全額が難しいが、入金予定(12月10日に120万円)に合わせて、12月に30万円、1月に30万円、残りは仮決算の結果を踏まえて調整したい」といった形で、資金繰り表を根拠に提案します。

相談前に用意したい情報
  • 納期限・税目・金額(通知書や申告書の内容)
  • 直近3〜6か月の資金繰り表(最低残高が分かる形)
  • 売掛金の入金予定(請求済み・検収済みなど確度も記載)
  • 赤字の要因と改善策(受注回復、価格改定、固定費見直し等)
避けたい動き方
  • 納期限を過ぎてから連絡し、説明材料もなく「待ってほしい」と伝える
  • 入金予定が不確かなまま、無理な分納計画を出してすぐ崩れる
  • 国税・地方税・社保の窓口を混同し、手続が遅れる

延滞税を避ける優先順位

延滞税などの負担を増やさないためには、「支払の順番」を決めて資金を配分するのが現実的です。すべてを同時に満額で払えないときに、場当たりで支払いを止めると、信用悪化や追加コストにつながりやすくなります。一般的には、期限が厳格で影響が大きい支払い(税金・社保・給与など)を優先し、交渉余地がある支払い(仕入先・外注先など)は、事前に条件調整を検討します。ここで重要なのは、違法な隠ぺいや債務逃れをせず、必ず相手や窓口に事情を説明し、合意できる形に整えることです。

優先度 具体例と理由(一般論)
給与・外注費の一部(生活・事業継続に直結)/期限が固定で遅延コストが増えやすいもの
税金・社会保険料(期限後の負担増や信用面の影響が出やすい)
家賃・リース(契約条件次第だが、早期に相談すると調整余地がある場合)
中〜低 仕入先・外注先の支払(交渉でサイト調整の余地がある場合がある)
延滞を防ぐための実務ポイント
  • 納期限の1〜2か月前に、税金・社保・給与の「固定支出」を先に確定する
  • 支払が難しい場合は期限前に相談し、分納・猶予の方向性を固める
  • 仕入・外注は、支払サイト延長や分割の相談を「先に」行い、書面やメールで残す

税理士と役割分担ポイント

赤字時の中間納付対応は、経営者だけで抱えると判断が遅れやすいため、税理士と役割分担を決めて動くと進めやすくなります。税理士は、仮決算の可否判断(期中損益の精度確認)、申告書類の作成、税務署への説明の整理などを担い、経営者・経理は、資金繰り表の更新、入金予定の確度管理、支払交渉や資金調達の実行を担うのが一般的です。例えば、月次の締めが遅れがちな会社は「毎月10日までに請求・経費を締める」「15日までに試算表を確定する」など、仮決算に耐える運用ルールを作るだけでも、中間納付の判断スピードが上がります。

役割分担の例
  • 経営者:資金の優先順位決定、仕入先・金融機関との交渉、資金調達方針
  • 経理:入出金予定の更新、証憑の回収、資金繰り表の最新化
  • 税理士:仮決算の可否判断、申告書作成、税務上のリスク整理と説明支援
トラブルになりやすいパターン
  • 試算表が遅れ、仮決算の締めが間に合わず予定申告のまま納付になる
  • 入金予定が曖昧で、分納計画を立ててもすぐ崩れる
  • 税理士に「税金を減らしたい」だけ伝え、資金繰りの情報共有が不足する

まとめ

中間納付は原則として予定申告により行いますが、赤字見込みなど一定の場合は仮決算による減額が可能です。回数や期限は税目によって異なるため、自社が対象となる税目のスケジュールを確認し、必要書類を整えて電子申告も含めて期限管理を徹底することが重要になります。納付が遅れると延滞税が発生し得るため、延滞税を増やさない支払い優先順位を決め、資金繰り表に中間納付を反映して早めに手当てします。納付が難しい場合は猶予や分納の相談を先送りせず、早期に窓口へ相談することが現実的です。次の行動として、入出金予定を整理したうえで仮決算による減額の可否を税理士等と確認し、短期の資金確保だけでなく返済計画や事業計画と合わせて判断します。