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赤字決算の税務調査が不安?個人事業主も要注意な原因7つと適切な対処法

赤字決算が続くと「税務調査は来るのか」「還付申告で目を付けられないか」と不安を感じやすいものです。調査では帳簿・証憑の整合、売上計上の時期、外注費・交際費の根拠、家事按分や棚卸の妥当性などが確認対象になります。本記事では、対象になりやすい要因、準備書類と当日の対応、否認後の税負担が資金繰りや公庫・銀行融資の審査に与える影響、税金・社保の納付遅れ時の注意点、相談先の方向性をまとめます。

赤字決算と税務調査の基礎知識

赤字決算(欠損が出ている決算)であっても、申告内容の確認が必要と判断されれば税務調査の対象になり得ます。税務調査は、申告納税制度のもとで「申告が適正か」を確認するために行われ、売上の計上時期や経費の根拠、帳簿・証憑(領収書や請求書など)の整合性を中心に見られます。赤字の理由が設備投資や一時的な売上減など合理的でも、数字の動きが大きい年や、還付・控除の影響が大きい年は確認の優先度が上がりやすい点が実務上の特徴です。まずは「赤字=安全/赤字=危険」と単純化せず、調査の種類と、どの期間が対象になり得るかを押さえることが不安の軽減につながります。

最初に押さえる3点
  • 税務調査は「赤字か黒字か」だけで決まらず、申告内容の確認必要性で選ばれる
  • 一般的な調査は任意調査が中心で、手続や対応の基本が異なる
  • 対象期間は原則の年限があり、帳簿保存とセットで備える必要がある

赤字でも調査対象の理由

税務調査は、申告に誤りがないかを確認するための手続なので、利益が出ていない(赤字)こと自体が「調査しない理由」にはなりにくいのが実情です。特に赤字の年は、経費が増えた・売上が落ちたなど理由が複合しやすく、売上計上の期ずれや経費の私用混在、外注費の実態など、誤りが起きやすい論点が増えます。また、赤字が続くと翌期以降の欠損金(赤字)の繰越控除により将来の税負担が軽くなるため、根拠の確認が必要と判断されることがあります。さらに消費税では、仕入税額控除の影響で還付申告になるケースがあり、金額が大きいほど確認されやすい傾向があります。

着目理由 見られやすいポイント例
数字の動きが大きい 売上急減・経費急増、粗利率の急変、前年差が大きい勘定科目の増減
控除・還付の影響 欠損金の繰越控除、消費税の還付申告、設備投資による仕入税額控除の影響
誤りが起きやすい取引 現金取引、交際費・会議費、外注費、役員・親族との取引、期末の棚卸や未払計上

任意調査と強制調査の違い

一般に「税務調査」と言われるものの多くは任意調査で、税務署等が質問や帳簿書類の提示を求め、納税者の協力のもとで事実確認を進めます。任意調査は、裁判所の令状にもとづく捜索・差押えのような直接的な強制力を前提とするものではありません。一方、悪質な脱税が強く疑われる場合には、犯則事件としての調査(いわゆる査察)が行われ、刑事手続に準じた形で証拠収集が進むことがあります。両者は目的(適正課税の確認か、犯罪としての立証か)や手続の枠組みが異なるため、同じ「調査」でも備え方が変わります。

誤解しやすい注意点
  • 任意調査は「何でも断れる」という意味ではなく、質問や提示要請への適切な対応が求められる
  • 強制調査(査察)は、故意の不正が疑われる場面での例外的な枠組みで、通常の調査とは目的が異なる
  • 不安が大きい場合は、事実関係の整理と帳簿・証憑の準備を優先し、専門家同席も検討する

対象期間の考え方目安

税務調査で確認される期間は、原則として「過去の一定年数の申告期間」に収まるのが一般的です。国税の更正・決定等には期間制限があり、通常は法定申告期限から一定年数内が目安になります。加えて、意図的な不正が疑われる類型では、より長い年数まで対象になり得るとされています。実務上は、問題が起きやすい年(大きな赤字、還付、数値の急変など)を起点に、前後の年も含めて複数年を確認する運用が多い点に注意が必要です。また、調査対応では帳簿・請求書・領収書などの保存が前提になるため、保存期間を切らさない管理が重要になります。

  • 直近の申告書・決算書を「年度ごと」に並べ、赤字要因(売上減・経費増・一時費用)をメモ化する
  • 還付申告や大きな設備投資がある年は、契約書・請求書・支払記録まで一式で確認できる形にする
  • 期末近辺の取引(売上計上、未払・前払、棚卸)は、根拠資料が揃うかを優先点検する
  • 保存期限が近い資料は、廃棄前に「対象になり得る年限」と照合して整理する

選定されやすい赤字の特徴

赤字決算そのものが直ちに「調査に直結」するわけではありませんが、申告内容の整合性を確認する必要が高いと判断されると、調査の候補になり得ます。実務上は「前年差が大きい」「説明資料が不足しやすい取引が多い」「還付・控除の影響が大きい」といった要素が重なるほど、確認の優先度が上がりやすい傾向があります。ここでは、赤字の中でも“なぜ見られやすいのか”を、典型パターン別に整理します。

特徴 確認されやすい理由
連続赤字 赤字要因の継続性・計上の妥当性を説明する必要が出やすい 3期連続赤字、赤字幅が年々拡大
急減・急増 売上・経費の動きが急で、期ずれや計上漏れの点検対象になりやすい 前年同月比で売上が大きく落ちた、外注費が急増
還付が絡む 還付額の根拠(請求書・支払・用途)の確認が必要になりやすい 消費税の還付申告、予定納税等の還付
現金・交際費 証憑の不足や私用混在が起きやすく、事実確認が必要になりやすい 現金売上が中心、交際費が売上規模に比べ多い

連続赤字・急減の注意点

連続赤字や急な売上減は、事業環境の変化で起きることも多い一方で、外形的には「売上計上の漏れ・期ずれ」「経費の過大計上」「実態の薄い外注費」などの誤りと区別がつきにくい面があります。そのため、赤字の原因を“数字と資料”で説明できる状態にしておくことが重要です。たとえば、主要取引先の発注停止があった、単価が下がった、原材料費が高騰した、設備投資で減価償却費が増えたなど、理由は複数に分かれがちです。月次推移(売上・粗利・固定費)と、赤字要因が出た時期の契約書・見積・発注書・議事メモを紐づけると、説明が一貫します。

赤字理由を説明する準備チェック
  • 月次の売上・粗利・主要経費の推移が追える(前年同月比も用意)
  • 急減した月の根拠資料がある(受注減の通知、見積失注、単価改定など)
  • 大きく増えた経費の根拠がある(契約、請求書、納品・作業実態の記録)
  • 期末付近の売上計上ルールが明確(検収日・役務提供完了日など)

還付申告が絡む点の比較

還付が発生する申告は、一般に「還付額の根拠」を確認する必要が高くなりやすい類型です。代表例としては、消費税で仕入税額控除の影響が大きくなり還付となるケース(設備投資や輸出取引がある等)が挙げられます。この場合、請求書等の保存状況、課税仕入れに該当するか、事業用としての使用実態があるか、といった点が確認されやすくなります。法人税・所得税でも、予定納税や中間納付の結果として還付になることがありますが、ここでも“計算の前提(所得の算定や経費の根拠)”が整っているかが重要です。

還付の種類 事前に整えるとよい資料・論点
消費税の還付 請求書・領収書・支払記録、取引内容の説明資料、事業用としての使用実態(設備の設置記録など)
予定納税等の還付 売上・経費の根拠資料一式、前年差の説明メモ、特殊要因(臨時損失・投資)の裏付け

売上水準と消費税のチェック

売上規模が一定ラインをまたぐ事業は、消費税の課税・免税の判定や届出の有無によって、申告内容の見え方が変わります。一般に、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えるかどうか、また一定の条件により「特定期間」の状況が影響するか、といった枠組みで判定されます(制度改正で要件が変わることがあるため、最新要件の確認が前提です)。赤字決算でも、売上の計上・区分(課税/非課税/不課税、輸出等)が整理できていないと、消費税申告の整合性確認が必要になりやすい点に注意が必要です。

消費税まわりでズレが出やすいポイント
  • 基準期間・特定期間の判定に使う売上の範囲が社内で統一されていない
  • 売上の区分(課税/非課税等)と、請求書・契約内容の整合が取れていない
  • 簡易課税・課税事業者選択など届出の有無と、申告処理が一致していない
  • 設備投資など大きな仕入れの用途が、事業用として説明できない

現金取引・交際費の警戒点

現金取引が多い事業は、銀行入出金だけでは取引の流れが追いにくく、現金出納(小口現金)の管理状況が重要になります。また交際費は、業務関連性の判断に個別事情が入りやすく、私的費用の混在が起きやすい領域です。調査対応としては「いつ・誰と・何のために・いくら」を説明できる状態にし、帳簿と証憑がつながる形で保管しておくのが基本です。たとえば、月末に現金売上がまとまって計上されている場合は、日々の売上記録やレジデータ、入金のタイミングと一致するかが確認しやすいポイントになります。

  • 現金売上がある場合:日次売上表(レジ集計、予約台帳、売上日報など)と入金・預入の記録を対応させる
  • 小口現金がある場合:現金出納帳を作り、残高が合うよう定期的に締める
  • 交際費がある場合:相手先、参加者、目的、日時、場所をメモし、領収書とセットで保管する
  • 私用混在が疑われやすい支出:家事按分の基準(面積・利用時間など)を決め、継続的に同じ基準で処理する

調査で見られる重要論点

税務調査では、申告書の数字が「帳簿」「請求書・領収書などの証憑」「銀行口座の入出金」「取引実態」と矛盾していないかが中心に確認されます。赤字決算の場合でも、売上の計上時期や経費の根拠にズレがあると、赤字の理由説明が難しくなりがちです。特に期末をまたぐ取引(納品・検収、役務提供、未払・前払、棚卸)や、私用が混ざりやすい支出、外注費などは“確認の優先度が上がりやすい論点”として準備しておくと安心です。制度は変更されることがあるため、実際の判断に迷う場合は専門家へ確認する前提で進めます。

この章で押さえる確認ポイント
  • 売上:計上のタイミングと根拠資料の整合
  • 経費:業務関連性と私用混在の管理
  • 外注費・人件費:取引実態と契約・支払の一致
  • 在庫・棚卸:期末残高の数え方と評価の一貫性

売上計上の期ずれチェック

売上の「期ずれ」は、期末前後の取引で起きやすい典型論点です。入金日や請求書発行日だけで計上すると、納品・検収や役務提供の完了時点とズレることがあります。たとえば12月に納品して1月に検収・請求となる取引や、月末締めで作業が翌月にまたがる役務提供は、契約内容と実態に沿って整理しておく必要があります。調査対応では、売上台帳と根拠資料がセットで追える状態にすることが重要です。

取引の型 ズレが出やすい場面 根拠資料の例
物販・納品 納品は年内、検収・請求が年明け 納品書、検収書、出荷記録、契約書
役務提供 作業が月末をまたぐ、完了基準が曖昧 作業報告、成果物、議事メモ、契約条項
継続取引 月次請求の締め日と実提供期間が不一致 請求明細、提供期間の管理表、利用ログ等

経費の私用混在の注意点

私用混在とは、事業と個人の両方で使う支出が同じ領収書や請求に含まれる状態を指します。代表例は通信費(スマホ・ネット)、車両費、旅費交通費、飲食を伴う支出、そして自宅兼事務所の水道光熱費などです。ポイントは「業務に必要な範囲」を、継続的に同じ基準で按分(分ける)し、説明できる記録を残すことです。例えばスマホを事業60%・私用40%で使うなら、その根拠(通話明細、稼働時間、利用目的)を簡単なメモでも残しておくと整理がしやすくなります。

私用混在でつまずきやすい例と対策
  • 飲食費:参加者・目的・日時が不明 → メモを領収書に紐づけて保存
  • 車両費:走行目的が曖昧 → 走行記録(行き先・用務)を簡易で残す
  • 通信費:按分割合が毎月変動 → 基準(稼働日数・通話割合など)を固定
  • 自宅費用:面積・利用時間が説明不能 → 面積比や稼働時間で算定し継続

外注費・人件費の整合ポイント

外注費や人件費は金額が大きくなりやすく、取引実態の確認が入ることがあります。外注費は「誰に、何を、いつ、いくらで依頼し、何が納品されたか」を示せることが基本です。契約書や発注書、納品物、業務報告、請求書、振込記録が一本の線でつながるように整理します。また、実態として雇用に近い働き方になっていないか(指揮命令、勤務時間の拘束、専属性など)を気にするケースもあるため、業務委託の範囲が曖昧な場合は、契約内容と運用の一致を見直すことが重要です。

  • 外注先ごとの「契約・発注・納品・請求・支払」が一式で追えるか
  • 作業内容が分かる成果物や報告が残っているか(メールでも可)
  • 毎月定額・同一人物に偏る支払がある場合、業務内容が説明できるか
  • 給与・外注の区分に迷う場合、処理を固定する前に専門家へ確認する

在庫・棚卸の確認ステップ

商品や原材料を扱う事業では、期末の棚卸(在庫の数量と金額の確定)が利益計算に直結します。棚卸が甘いと、売上原価が過大・過少になり、赤字の理由自体が説明しにくくなります。例えば年末に仕入れたが未入荷のもの、出荷したが売上計上がまだのもの、返品・値引きが混ざるものなど、期末前後の動きはズレが出やすい部分です。調査では、棚卸表と帳簿、仕入・売上の記録が整合するかが見られやすいため、「数え方」と「評価のルール」を継続して運用することが重要です。

  1. 棚卸日を決め、対象範囲(倉庫・店舗・預け在庫)を明確にする
  2. 棚卸表を作成し、品目・数量・保管場所を記録する
  3. 期末前後の入出荷を締め、未入荷・未出荷・返品を区分して整理する
  4. 評価ルール(仕入単価の決め方等)を統一し、前年差が大きい品目を確認する
  5. 棚卸表と帳簿の差異があれば、原因(記入漏れ・伝票未処理等)をメモで残す

事前準備と当日の対応

税務調査の不安は「何を、いつまでに、どこまで用意すればよいか」が見えないことで強くなりがちです。実際は、事前通知から当日対応までの流れを把握し、帳簿・証憑を“探さず出せる状態”にしておくことで、対応負担を大きく減らせます。赤字決算の場合は、赤字の理由(売上減・固定費増・設備投資など)を数字で説明できる資料があると、質問への回答がぶれにくくなります。ここでは、初心者でも準備しやすいように、スケジュール感、書類の揃え方、受け答えの基本、税理士立会いの判断基準を整理します。

準備のゴール
  • 依頼された資料を「すぐ提示できる」状態にする
  • 赤字要因を「月次推移+根拠資料」で説明できるようにする
  • 当日の受け答えは「事実ベース」で統一し、推測で埋めない

事前通知から当日までの流れ

一般的な任意調査では、事前に連絡が入り、調査日程や対象税目・対象期間、必要資料の案内が示されることが多いです。日程調整の段階で、決算期や繁忙期など事情があれば相談し、現実的に準備できる日程に合わせます。通知から当日までの期間はケースで異なりますが、最低でも「資料の所在確認」「不足資料の洗い出し」「説明メモ作成」の3点を回すと対応が安定します。調査当日は、帳簿や証憑の確認、取引内容の質問が中心で、確認内容によっては後日追加資料の提出を求められることもあります。

時期 やることの目安
事前連絡〜日程確定 対象税目・対象期間の確認、業務都合の共有、立会い(税理士等)の要否判断
日程確定〜1週間前 帳簿・証憑の所在確認、赤字要因の整理(前年差・月次推移)、不足資料の補完
直前〜前日 資料を税目別・年度別に並べ替え、質問されやすい論点の説明メモを準備
当日〜後日 提示・説明、追加資料が出た場合は期限と提出方法を確認して対応

帳簿・証憑のそろえ方ステップ

調査対応で最も時間を取られるのは、資料が分散していて「探す」作業が発生することです。理想は、申告書の数字がどの帳簿から来ているか、帳簿の数字がどの証憑で裏付くかを一本道で追える状態です。電子取引データ(メール添付の請求書やPDF領収書など)も含め、年度ごとに同じルールでまとめると、当日の提示がスムーズになります。赤字決算の場合は、売上急減・経費急増・設備投資・外注費増など、変動が大きい勘定科目の証憑を優先的に揃えると効率的です。

  1. 「年度→税目→資料種類(申告書/帳簿/証憑)」の順でフォルダを作る
  2. 申告書と決算書(損益・貸借)を起点に、主な科目の増減をチェックする
  3. 増減が大きい科目から、請求書・領収書・契約書・振込記録を紐づける
  4. 現金取引がある場合は、現金出納帳・売上日報・レジデータ等をまとめる
  5. 電子データは、取引日・相手先・金額で検索できる名称に統一して保存する
不足しがちな資料と代替の考え方
  • 領収書がない支出:支払先の請求書、カード明細、振込控えなどで補う
  • 業務内容が不明な外注:成果物、メール、作業報告で実態を示す
  • 期末取引の根拠:納品書・検収書・作業完了報告で時点を明確にする

質問対応の受け答えコツ

受け答えの基本は「事実に基づき、短く、確認できる資料とセットで答える」ことです。曖昧な記憶で話を膨らませると、説明がぶれたり、追加確認が増えたりして負担が大きくなります。分からない質問はその場で推測せず、確認してから回答する方が結果的にスムーズです。赤字決算に関する質問では、赤字要因を“感覚”ではなく“数字”で説明できるように、月次推移と一時要因(設備投資、取引先の変更、原価上昇等)を準備しておくと回答が安定します。

受け答えの基本ルール
  • 結論→根拠資料→補足の順で答える
  • 推測で断定しない(不明なら確認して回答する)
  • 「例外処理」を説明できるようにする(通常ルールと違う処理をした理由)
  • 口頭だけで終わらせず、帳簿・証憑で裏付ける
  • よく聞かれやすい論点:期末前後の売上計上、交際費の内容、外注費の実態、棚卸の方法
  • 赤字に関する質問例:どの月から悪化したか、固定費の増減理由、利益率の変化理由
  • 対応のコツ:月次推移表(売上・粗利・主要経費)を用意し、数字で説明する

立会い税理士の選び方基準

税理士の立会いは必須ではありませんが、帳簿や申告内容の説明に不安がある場合、また取引が複雑で論点が多い場合は有効な選択肢になります。立会いを依頼する場合は、単に同席するだけでなく「どの税目・どの論点に強いか」「事前準備をどこまで支援してくれるか」「当日の受け答え方針を一緒に整えられるか」を基準に選ぶと失敗が減ります。顧問税理士がいる場合は、まず顧問に相談し、必要に応じて調査対応の経験が豊富な税理士に追加支援を依頼する考え方もあります。

選び方の観点 確認ポイント例
対応範囲 事前準備(資料整理・説明メモ作成)から当日立会い、後日の追加資料対応まで支援できるか
経験の適合 法人/個人、消費税還付、外注費が多い業種など、自社の論点に近い経験があるか
コミュニケーション 受け答え方針(事実ベース・資料提示中心)を共有し、過度な断定や対立を避ける運びができるか
費用の見通し 立会い料・事前作業料・追加対応の課金単位(時間/件)などが明確か

個人事業主の申告注意点

個人事業主の税務調査では、売上の計上漏れや期ずれに加えて、生活費が混ざりやすい支出(家事按分)や、現金取引の管理、外注費の実態などが確認されやすいです。白色申告と青色申告で、帳簿の付け方や提出書類、赤字の扱い(繰越など)の前提が変わるため、まず自分の申告区分に合った「証拠のそろえ方」を決めておくことが重要です。否認(経費と認められない等)が出た場合は、追加納税だけでなく延滞税などで資金繰りに影響が出ることがあるため、早めに試算し、必要なら相談先へつなぐ流れを用意します。

個人事業主が不安になりやすいポイント
  • 家事按分の根拠が曖昧で、説明がぶれる
  • 現金売上・小口現金の記録が弱く、裏付けが出せない
  • 外注費が定額・同一先に偏り、実態説明が不足する
  • 否認後の追加税負担を見込まず、資金繰りが詰まる

白色・青色で変わる確認点

白色と青色では、帳簿の整え方や、赤字(損失)の扱い、提出書類の前提が異なります。青色は事前の承認手続きや一定水準の記帳が求められる一方、要件を満たす前提で税務上の取扱いが広がります。調査対応としては「自分がどの区分で申告しているか」と「帳簿・証憑が要件に沿ってそろっているか」を先に確認すると、準備の優先順位が付けやすくなります。

観点 確認ポイント例
申告区分 白色か青色か、青色の承認手続きが適切に行われているか
帳簿の形 日々の売上・経費が追えるか、摘要(内容)が説明できる粒度か
赤字の扱い 赤字の繰越等を適用している場合、根拠資料と継続管理ができているか
提出・保存 申告書・決算(収支内訳/青色の決算書)と、証憑が年度別にそろっているか

家事按分と経費の決め方

家事按分は、事業と私生活で共用する支出を、合理的な基準で事業分だけ経費にする考え方です。典型例は自宅兼事務所の家賃・電気代・通信費・車両関連などです。重要なのは「基準を先に決め、同じ基準で継続する」ことです。例えば月2万円の通信費を、業務利用が3割と判断するなら、2万円×30%=6,000円を毎月の事業経費とするイメージです。調査では割合そのものより、根拠(面積・利用時間・業務日数など)と継続性が確認されやすい点に注意します。

家事按分の決め方:迷いを減らす3ステップ
  • 対象費目を決める(家賃、光熱費、通信費、車両費など)
  • 基準を固定する(面積比・利用時間・走行記録など、説明しやすいもの)
  • 証拠を残す(間取り図、請求書、明細、簡易メモを年度別に保管)

否認後の税負担と資金繰り目安

否認が出ると、課税所得(利益)が増える方向に修正され、追加の所得税・住民税が発生し得ます。さらに状況により、加算税や延滞税が発生することもあるため、資金繰りには「追加納税+付帯税の可能性」を織り込む必要があります。税率は所得水準や控除で変動するため一概には言えませんが、概算でも影響額を早めに試算しておくと、納付資金の手当てや分割相談の判断がしやすくなります。

資金繰りへの影響イメージ
経費50万円が否認 課税所得が50万円増える可能性があります(税率は個別)。追加で所得税・住民税が発生し得ます。
売上計上の期ずれ 対象年の所得が増え、翌年は減るなど年をまたいで税負担が動くことがあります。
付帯税の可能性 申告内容や経緯によって、加算税・延滞税が付く場合があり、納付総額が増えることがあります。

修正申告と相談先チェックリスト

指摘事項に納得できる場合、修正申告(申告内容を正しく直す手続き)を行うことになります。逆に、事実関係に誤解がある場合は、証拠を整理して説明し、必要に応じて見解の違いを調整します。いずれにしても「追加で必要な資料」「納付期限」「資金手当て」の3点を先に押さえると、慌てず進められます。納付が厳しい場合は、税務署で納付方法の相談(分割や猶予の可否を含む)を検討し、顧問税理士や税理士へ早めに状況共有するのが現実的です。

相談前にそろえるチェックリスト
  • 指摘された取引の資料一式(契約・請求・領収・振込記録・作業実態メモ)
  • 年度別の申告書・決算書・帳簿(売上台帳、経費帳、現金出納など)
  • 赤字理由の説明メモ(月次推移、前年差の大きい科目の根拠)
  • 追加納税の概算と納付資金の見込み(いつ・いくら払えるか)

まとめ

赤字であっても税務調査が行われる可能性はあり、調査対象は申告内容などを踏まえて選定されます。調査では、期ずれ(計上時期の誤り)や経費の私用混在、外注費・交際費の妥当性、棚卸の整合といった論点が重点的に確認されやすいです。否認が生じると追加の税負担が発生し、資金繰りの悪化や融資審査への影響につながり得るため注意が必要です。事前通知を受けたら、帳簿と証憑を突き合わせて整合を確認し、根拠資料と説明メモを用意しておくと対応が進めやすくなります。次の行動として、入出金予定と資金繰り表を更新し、公庫や制度融資などの選択肢も比較しながら、短期の資金確保だけでなく納税・返済計画と事業計画を合わせて検討しましょう。