【厳選19社】ファクタリングのサービスや手数料を徹底比較 >

当サイトはプロモーションが含まれています

ファクタリング注文書買取とは?仕組み・審査・銀行融資との違いを徹底解説

受注は順調なのに、発注〜請求書発行までの間が長く、資金繰りが苦しい…。そんな企業が検討し始めているのが「ファクタリング注文書買取(注文書ファイナンス)」です。

本記事では、注文書段階で資金化する仕組みと審査の考え方、請求書ファクタリング・銀行融資との違い、手数料とリスク管理のポイント、導入ステップまでを整理し、中小企業・個人事業主が安全に活用可否を判断できるよう解説します。

 

注文書買取ファクタリング基礎知識

注文書買取ファクタリング(注文書ファクタリング)は、取引先から発行された注文書(Purchase Order:PO)をもとに、将来発生する売掛債権を前倒しで資金化する手法です。

従来のファクタリングは、納品・検収が完了し、請求書が発行された「確定した売掛金(確定債権)」が対象でしたが、注文書買取では「これから発生する予定の売掛金(将来債権)」を対象とする点が大きな違いです。

 

2020年の民法(債権法)改正では、第466条の6で将来債権の譲渡性が明文化され、「債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない」と規定されました。

これにより、注文書など将来発生が見込まれる債権についても、一定の条件を満たせば譲渡することが可能であることが明確になり、注文書ファクタリングの法的な位置づけがよりはっきりしたとされています。

 

ただし、将来債権は「まだ仕事が完了していない」「金額や期日が変動する可能性がある」といった不確実性を伴うため、ファクタリング会社側のリスクも高くなりがちです。

そのため、実務では、①契約内容や発注条件が明確であること、②発注元(売掛先)の信用力が高いこと、③過去に同様の取引実績があること、などを前提に、特定の業種・案件に絞って提供されているケースが多いのが現状です。

 

項目 注文書ファクタリングの特徴
対象 注文書に基づき将来発生する売掛債権(将来債権)
タイミング 請求書発行前(受注・発注段階)で資金化が可能
法的根拠 民法第466条の6(将来債権の譲渡性)などを前提とした債権譲渡
主な利用場面 建設・製造・大型受注・開発案件など、発注から納品までの期間が長い取引

 

注文書ファクタリング概要

注文書ファクタリングの基本的な流れは、次のように整理できます。

 

1. 受注企業(利用者)が、発注企業(売掛先)から注文書を受領する。
2. 利用者が、注文書・基本契約書・見積書などを添付して、ファクタリング会社に注文書ファクタリングを申し込む。
3. ファクタリング会社は、発注企業の信用力、案件内容(契約条件・納期・金額)、利用者との取引実績などを審査し、買取の可否と条件(買取率・手数料率・資金化タイミング)を提示する。
4. 契約締結後、ファクタリング会社が注文書に基づき将来発生する売掛債権の譲渡を受け、手数料を差し引いた資金を利用者に支払う。
5. 納品・検収・請求書発行・支払期日到来後、発注企業から支払われる代金がファクタリング会社に入金される(スキームによっては、一旦利用者を経由したうえで精算される場合もあります)。

 

従来の「請求書ファクタリング」と比べると、資金化のタイミングが1ステップ早くなる一方で、「実際に納品が完了するか」「注文内容が途中で変更されないか」といった不確実性が残るため、手数料率は高めに設定される傾向があります。

加えて、民法・下請代金支払遅延等防止法などの観点から、譲渡禁止特約や注文取消し条項、検収条件などを慎重に確認しながらスキームを設計する必要があります。

 

  • 受注段階で資金を調達できるため、原材料仕入・外注費・人件費を先に確保しやすい
  • 将来債権を対象とするため、確定債権ファクタリングより手数料が高くなりやすい
  • 契約条件(キャンセル・仕様変更・検収条件・譲渡禁止特約など)の確認が重要
  • 全案件で使うのではなく、資金負担の大きい大型案件や長納期案件などに絞って活用するケースが多い

 

将来債権ファイナンスとしての位置付け

注文書ファクタリングは、「将来債権ファイナンス」の一種と位置付けられます。将来債権とは、「現時点ではまだ発生していないが、一定の条件のもとで将来発生が見込まれる債権」のことです。

2020年の民法改正では、この将来債権も譲渡できることが明文化され、契約上の根拠がより明瞭になりました。

将来債権ファイナンスの代表例としては、

 

  • 注文書ファクタリング:注文書を根拠に将来の売掛金を譲渡して資金化する
  • 長期請負契約に基づく分割支払の将来債権の譲渡:建設工事などで、出来高に応じた支払いを将来債権として扱う
  • サブスクリプション型サービスの継続的な利用料金債権の流動化:一定期間の継続利用が契約で定められているケース

 

などが挙げられます。いずれも、「債権が将来発生することを裏付ける契約や注文書などの根拠資料」が重要であり、単なる見積りや口頭の依頼では、将来債権としての譲渡性が認められにくい点に注意が必要です。

注文書ファクタリングは、売掛債権の流動化をさらに前倒しした形であり、企業が保有する「受注」という情報を金融資産化する試みといえます。

一方で、金融庁は高額な手数料・大幅な割引率のファクタリング取引が多重債務につながるリスクを指摘しており、将来債権ファイナンスであっても、手数料水準や契約内容が適切かどうかのチェックが欠かせません。

 

将来債権ファイナンスとして見るときの注意点
  • 将来債権として譲渡できるだけの契約上の根拠(注文書・基本契約書・発注条件)があるか
  • 「売掛債権の前倒し」をどこまで行うか(受注時点か、出来高の節目か)を自社のリスク許容度に応じて選ぶ
  • 高額な手数料で将来債権を売却すると、長期的な利益を削ることになるため、コストとのバランスを検証する
  • 将来債権の譲渡は、売掛先との契約関係にも影響し得るため、取引先との合意・信頼関係を重視する

 

2社間/3社間とPO融資の違い

注文書ファイナンスには、ファクタリング(債権譲渡)型だけでなく、注文書を担保として融資を受ける「POファイナンス(注文書担保融資)」型があります。

前者は、将来発生する売掛債権を譲渡(売却)して資金を得る取引であり、後者は注文書を担保に金融機関から貸付を受ける取引です。

 

注文書ファクタリングには、通常のファクタリングと同様に2社間・3社間の区別があります。2社間は、利用企業とファクタリング会社だけで契約し、発注企業には通知しない方式、3社間は発注企業を含めて売掛金の支払先を変更する方式です。

POファイナンスは、注文書情報を電子記録債権化し、その金銭債権に担保権を設定して融資を受けるスキームが代表的です(Tranzax社・セゾンファンデックス社のスキームなど)。

 

比較項目 注文書ファクタリング POファイナンス(注文書担保融資)
法的性質 将来売掛債権の譲渡(売却) 注文書等を担保にした融資(借入金)
返済義務 原則なし(ノンリコースの場合)。ただし契約により買戻し義務ありのケースも 借入れのため返済義務あり。売上代金から返済する仕組みが一般的
資金提供者 ファクタリング会社 銀行・ノンバンク等金融機関
コストのイメージ 手数料率として表示(売掛金額の数%〜) 金利+事務手数料等として表示(年利+α)

 

2社間・3社間・PO融資を比較するときの視点
  • 「借入を増やしたくない」「バランスシート上は売掛金を減らしたい」ならファクタリング型
  • 「金利を抑えながら、受注段階で融資枠を持ちたい」ならPOファイナンス型
  • 2社間か3社間かは、「発注企業への通知の可否」と「手数料水準」のトレードオフで判断する
  • いずれの方式でも、高額な手数料・リコース条件の有無・違法な貸付スキームでないかを確認する

 

注文書買取が生まれた背景

注文書買取ファクタリングやPOファイナンスが登場した背景には、「受注は増えているのに、納品前の運転資金が足りない」という中小企業の構造的な課題があります。

特に、製造業・建設業・IT開発・イベント・印刷・広告など、「受注→設計・製造→納品→検収→請求→入金」という長いサイクルを持つ業種では、受注増がそのまま資金繰りの悪化につながることが指摘されてきました。

 

一方、金融機関側でも、「過去の決算書だけでなく、今後の受注状況や事業性を評価して資金提供する」事業性評価融資への転換が求められており、将来売掛債権を担保とするPOファイナンスは、その流れの中で開発された商品です。

Tranzax社のPOファイナンスは、電子記録債権の仕組みを活用して注文書や補助金の交付決定通知書を電子債権化し、受発注情報をもとに融資を行うモデルとして紹介されています。

 

また、中小企業庁による売掛債権担保融資保証制度の創設など、売掛債権の活用を支援する公的な枠組みも整備されてきました。

これらの流れを受け、「売掛金」だけでなく「注文書」「補助金決定通知書」など、将来のキャッシュインを金融資産化していく方向性が広がっています。

その一方で、金融庁は「高額な手数料・大幅な割引率」のファクタリング取引に対する注意喚起も行っており、成長機会の拡大と多重債務リスクの双方を意識したバランスの取れた活用が求められています。

 

注文書買取・POファイナンスが広がった背景
  • 受注増に伴って納品前の運転資金が不足し、「成長と資金繰り」が矛盾しやすい業種が多い
  • 金融機関側でも、決算書だけでなく受注情報・事業性を評価する流れが強まっている
  • 民法改正で将来債権の譲渡性が明文化され、注文書を使ったファイナンスの法的根拠が明確化した
  • 一方で、高額な手数料のファクタリングは多重債務リスクを伴うため、公的機関から注意喚起が行われている

 

注文書買取の対象条件と注意点整理

注文書ファクタリングは「どんな注文書でも買い取れる」わけではなく、対象となる注文書に一定の条件があります。

一般的な解説やサービス案内では、①発注元が法人(企業・官公庁など)であること、②注文内容・金額・納期・支払条件などが明記された正式な注文書(発注書)であること、③受注が実質的に確定していること、が前提とされています。

 

また、民法の将来債権に関する規定(466条の6)により、注文書に基づき将来発生する売掛債権も原則として譲渡可能ですが、譲渡制限特約や契約条件との関係には注意が必要です。

譲渡制限特約があると、対抗要件具備前の譲渡は制約を受ける可能性があると整理されており、契約書・基本取引契約における譲渡制限条項の確認は欠かせません。

さらに、注文内容が実現可能かどうか(期間・金額・技術的難易度など)や、案件規模が一定以上であるか(小口注文は審査コストに見合わず対象外とされることが多い)といった点も、注文書ファクタリングの対象となるかどうかを左右します。

 

観点 注文書ファクタリングで求められやすい条件
発注元 法人(企業・官公庁など)で、一定の信用力があること
書類内容 注文書に発注内容・金額・納期・支払条件等が具体的に記載されていること
契約との整合 基本契約書・個別契約と内容が一致し、譲渡制限特約等がネックにならないこと
案件規模 審査コストに見合う一定規模以上の注文であること(小口は対象外のことが多い)

 

注文書買取の対象となる注文書の条件

注文書ファクタリングの対象となるのは、一般に「売掛先(発注元)が自社に宛てて発行した正式な注文書・発注書」です。ここでいう正式な注文書とは、少なくとも以下のような情報が記載されているものを指します。

 

  • 発注元企業名・所在地・担当部署・担当者名
  • 受注企業名(利用者)と宛先
  • 具体的な商品・サービス内容、数量、単価
  • 合計金額・消費税の扱い
  • 納期・納品場所・検収条件
  • 支払条件(支払サイト、支払方法など)

 

これらがきちんと記載されていることで、ファクタリング会社は「どのような契約に基づく、いくらの将来売掛金が、いつ発生する予定か」を判断できます。

逆に、見積書段階で発行された書類や、メール・口頭ベースの発注のみで正式な注文書が存在しない場合は、「受注が確定した将来債権」として認めにくく、注文書ファクタリングの対象外となることが多くなります。

 

また、業界によっては、形式上は「注文書」と呼ばれていても、実際には発注の一部を示すのみで、後続の仕様確定や契約締結が前提になっているケースもあります。

その場合、ファクタリング会社は、注文書単体ではなく、基本契約書・仕様書・受注確認メールなどを合わせて審査し、「商流としてどこまで確定しているか」を確認することになります。

 

対象となりやすい注文書の条件チェック
  • 発注元が法人で、会社情報・担当者情報が明記されている
  • 受注内容・金額・納期・支払条件が具体的に記載されている
  • 基本契約書や見積書と内容が矛盾していない
  • 単なる見積承認や口頭合意ではなく、「正式発注」を示す書類である

 

個人事業主・小規模企業が利用しやすい要件

注文書ファクタリングは、中小企業・個人事業主にとって「受注時に運転資金を確保できる手段」として紹介されることが多いものの、誰でも簡単に使えるわけではありません。

実務上、「利用しやすい」といえるのは、次のような条件がそろっているケースです。

 

1つ目は、発注元が大企業・上場企業・官公庁など、信用力の高い法人であることです。注文書ファイナンスやPOファイナンスの解説でも、発注企業の信用力を前提に低利融資や資金化が可能になると説明されており、発注側の格付けが審査に大きく影響します。

2つ目は、取引自体が事業として安定していることです。具体的には、同じ発注元からの受注実績が複数回あり、納期遅延やキャンセルが少ない、取引量が徐々に増えている、といった状況が該当します。

中小企業向けの解説でも、「初回取引のみ」や「スポットの単発案件」は注文書ファクタリングの対象になりにくいとされており、継続性が重要視されます。

 

3つ目は、業種・案件内容が注文書ファクトリングに適していることです。

一般に、建設・製造・IT開発・印刷・イベント・人材派遣など、「受注から納品まで一定のリードタイムがある業種」で利用が進んでおり、短期・少額・単純な取引よりも、ある程度の規模と工期を伴うプロジェクト型の案件に向いているとされています。

 

個人事業主・小規模企業が利用しやすい条件
  • 発注元が大企業・官公庁など信用力の高い法人である
  • 同じ発注元との継続的な取引実績があり、納品・支払の信頼性が高い
  • 建設・製造・IT開発など、受注から納品までの期間がある程度長い案件である
  • 発注書・契約書などの書類が整っており、商流を第三者に説明できる

 

審査で確認される発注元企業と取引実績

注文書ファクタリングは、通常の請求書ファクタリング以上に「発注元企業(売掛先)の信用力」と「過去の取引実績」が重視されます。

将来債権を対象とするため、最終的に発注元が代金を支払うことが前提であり、その履行可能性を見極める必要があるからです。

具体的には、発注元企業について以下のような点がチェックされます。

 

  • 企業規模(資本金・売上高・従業員数)と業歴
  • 業種・事業内容・市場でのポジション
  • 決算内容や信用調査レポートによる財務健全性
  • 過去の支払実績(支払遅延の有無・頻度)

 

加えて、「利用者と発注元の取引実績」も重要な審査ポイントです。

中小企業支援機関や各社の解説では、注文書ファクタリングの審査において、①過去の受注回数、②過去の納品・検収状況、③過去の支払サイトと遅延の有無、④今回の案件が過去の案件と比べて極端に大きすぎないか、といった点が総合的に判断されるとされています。

 

初回取引や取引実績の少ない発注元との案件については、ファクタリング会社側のリスクが高いため、「対象外」もしくは「条件が厳しくなる」(買取率が低い・手数料が高い・追加担保を求められるなど)傾向があります。

そのため、個人事業主・小規模企業としては、「どの発注元との取引を注文書ファクタリングに出すか」を、過去の実績と信用力を踏まえて慎重に選ぶ必要があります。

 

審査で見られやすい発注元・取引実績のポイント
  • 発注元の信用力(規模・決算・信用調査結果)が十分か
  • 同じ発注元との継続した取引実績と、支払遅延が少ないかどうか
  • 今回の注文書の金額・内容が、過去の案件と比べて極端に大きすぎないか
  • 案件内容(仕様・納期)が実行可能で、受注企業が履行できる体制かどうか

 

キャンセル・仕様変更リスクと契約確認ポイント

注文書買取で特に注意しなければならないのが、「注文のキャンセルや仕様変更が発生した場合のリスク分担」です。

請求書ファクタリングと異なり、注文書ファクタリングは「仕事が完了する前」の段階で資金化するため、納品前にキャンセルや仕様変更が入ると、当初想定していた将来債権が減少したり消滅したりするリスクがあります。

この点は、契約書や注文書の条項でどのように定められているかによって、リスクの所在が大きく異なります。たとえば、

 

  • 注文書・基本契約に「発注者の都合によるキャンセル」条項があり、その場合の違約金・解約金の規定がどうなっているか
  • 仕様変更や追加発注が頻繁に発生する業種かどうか(システム開発・建設工事など)
  • 出来高払いか、一括納品・一括請求か

 

といった点は、将来債権の金額が確定するまでの不確実性に直結します。

さらに、譲渡制限特約や下請法(下請代金支払遅延等防止法)との関係にも注意が必要です。

譲渡制限特約がある場合、将来債権譲渡の対抗要件具備前に特約が結ばれていると、債権譲受人は悪意とみなされ、債務者(発注元)は履行を拒むことができる可能性があるとされています。

 

キャンセル・仕様変更リスクへの対応チェック
  • 注文書・基本契約書におけるキャンセル条項・仕様変更条項の内容を確認する
  • キャンセル時の違約金・解約金が将来債権としてどこまで評価されるかをファクタリング会社と共有する
  • 譲渡制限特約の有無と、将来債権譲渡の対抗要件(通知・登記)のタイミングを確認する
  • 仕様変更が多い案件は、注文書ファクタリングではなく、出来高ベースの請求書ファクタリングやPO融資との組み合わせも検討する

 

注文書買取と請求書買取の違い整理

注文書買取ファクタリングと、一般的な請求書買取(売掛金ファクタリング)は、「資金化のタイミング」「対象とする債権の確実性」「手数料水準」「向いている案件のタイプ」が異なります。

請求書買取は、納品・検収が完了し、請求書が発行された「確定債権」を対象にするため、ファクタリング会社から見た回収リスクは比較的低く、手数料も注文書買取より抑えやすいのが一般的です。

 

一方、注文書買取は受注・発注の段階で資金化できる反面、「納品が完了しない」「仕様変更で金額が変わる」「検収が遅れる」といった不確実性を内包しており、その分だけリスク評価と手数料設定がシビアになります。

企業側の実務としては、「すべてを注文書買取に切り替える」というより、「案件の規模・期間・リスクに応じて、注文書買取と請求書買取、銀行融資などを組み合わせる」スタンスが現実的です。

 

以下では、4つの観点から違いと使い分けを整理します。

観点 注文書買取と請求書買取の違い
タイミング 注文書買取=受注時/請求書買取=納品・検収後
債権の確実性 注文書買取=将来債権/請求書買取=確定債権
手数料 注文書買取の方がリスクが高く、手数料も高くなりがち
適した案件 注文書買取=大型・長期案件/請求書買取=一般的な継続取引や中小案件

 

請求書買取との資金化タイミング比較

請求書買取(売掛金ファクタリング)は、納品・検収・請求書発行までのプロセスが完了したあとに、「既に計上済みの売掛金」を資金化するスキームです。

例えば、建設・製造・IT開発で「○月末検収→翌月請求→翌々月末入金」といった流れの場合、請求書買取で資金化できるのは「請求書発行後〜支払期日まで」の期間です。

 

一方、注文書買取は「注文書が発行された段階」で資金化を行うため、資金化のタイミングが1〜2ステップ早くなります。

先ほどの例でいえば、「受注(注文書)→設計・製造→納品→検収→請求→入金」という流れのうち、「受注直後」の段階で一定割合を現金化できるイメージです。

これにより、原材料仕入や外注費、人件費などの先行支出を前倒しで賄いやすくなる一方、「その後の工程が予定通り進むこと」を前提としているため、遅延・キャンセル等のリスクをどう吸収するかが重要になります。

 

資金化タイミングを比較するときのポイント
  • 請求書買取:納品・検収完了後〜支払期日の資金ギャップを埋める手段
  • 注文書買取:受注〜納品・検収までの「製造・施工期間」の資金ギャップもカバーできる
  • 早く資金化できるほどリスクも増えるため、「どこまで前倒しするか」を案件ごとに検討する
  • 自社のプロジェクトの流れ(受注〜入金)を図式化し、資金ギャップが最大になるポイントを把握しておく

 

手数料水準と実質コストの違い

注文書買取は将来債権を対象とするため、ファクタリング会社から見た回収リスクが高く、同じ売掛先・同じ金額であっても請求書買取より手数料が高く設定されるのが一般的です。

実務上のレンジは事業者や案件によって大きく異なりますが、請求書買取であれば数%〜10%前後の水準が多いのに対し、注文書買取では一段高いレンジが提示されるケースが多いとされています。

 

コストを評価する際には、「手数料率」だけでなく「前倒し日数」を加味した実質コストを試算することが重要です。

例えば、請求書額面1,000万円・支払期日まで60日・手数料5%の請求書買取と、同じ1,000万円の注文書について受注時点(支払期日の120日前)に10%の手数料で注文書買取を行うケースを比較してみます。

 

  • 請求書買取:60日前に950万円入金(1000万円×5%=50万円のコスト)
  • 注文書買取:120日前に900万円入金(1000万円×10%=100万円のコスト)

 

単純な年率換算イメージでは、

 

  • 請求書買取の実質負担 ≒ 50万円÷1000万円×365日÷60日 ≒ 約30%
  • 注文書買取の実質負担 ≒ 100万円÷1000万円×365日÷120日 ≒ 約30%

 

となり、「期間が2倍・手数料率も2倍」であれば年率イメージは近くなります。ただし、実際には審査・リスク評価・金額規模などの要素により、必ずしも比例関係にならず、注文書買取の方が年率ベースで割高となるケースも珍しくありません。

 

手数料と実質コストを比較する簡易チェック手順
  1. 請求書額面・手数料・前倒し日数(受注〜入金)を整理する
  2. 手数料額÷額面×365日÷前倒し日数 で年率イメージを算出する
  3. 請求書買取・注文書買取・短期融資など、複数手段で同様に試算して比較する
  4. 「1年あたりのコスト」と、「前倒しによって得られる利益・機会」のバランスを検討する

 

案件規模・期間別の向き不向き

注文書買取と請求書買取は、案件の規模・期間によって「向くケース」「向かないケース」がはっきり分かれます。注文書買取が向いているのは、概ね次のような案件です。

 

  • 受注金額が大きく、原材料仕入・外注費・人件費などの先行支出も大きい
  • 受注から納品・検収までに数か月以上のリードタイムがある
  • 発注元が大企業・官公庁など信用力が高く、キャンセルリスクが比較的低い

 

こうした案件では、請求書発行までの期間に多くの資金が寝てしまうため、「受注時点の資金化」によるメリットが大きくなります。

一方、請求書買取は、比較的短納期の継続取引(例えば、月次の保守・運送・人材派遣など)や、納品後の入金サイクルを平準化したい場合に向いています。

小口・短期の案件や、仕様変更・キャンセルが頻発する案件、発注元の信用力が低い案件では、注文書買取はコストに見合わないことが多く、「通常の請求書買取+短期融資」「請求条件の見直し(前受金・着手金)」などで対応した方が合理的なケースも多くなります。

 

案件規模・期間から見た向き不向きの目安
  • 注文書買取向き:大型・長期・高信用の案件(建設・製造・システム開発など)
  • 請求書買取向き:中小規模で納期〜入金までの期間が比較的短い継続案件
  • どちらも向きにくい:小口・短期・仕様変更頻発・信用力が低い発注元の案件
  • 「どの案件にどの手段を使うか」を売上構成・案件特性ごとに整理することが重要

 

注文書買取と通常ファクタリングの使い分け方

実務で注文書買取と通常の請求書ファクタリングを使い分ける際は、「資金繰りの山谷」と「案件ごとのリスク」を基準に考えると整理しやすくなります。基本的な考え方は、次の通りです。

 

  1. まず、受注〜入金までのキャッシュフローを時系列で可視化し、「どのタイミングで現金が最も不足するか」を把握する。
  2. そのうえで、「受注時点で資金が必要な大型案件」には注文書買取、「納品後〜入金までのギャップ調整」が主目的の案件には請求書買取を検討する。
  3. 全体としての手数料総額・金利負担が許容範囲かどうかを、年間ベースで試算する。

 

例えば、年間を通じて継続的に発生する売掛金の多くは請求書買取で対応し、特定の大型プロジェクトについてだけ注文書買取を利用する、といった「ハイブリッド運用」も考えられます。

また、銀行融資やPOファイナンスと併用して、「長期資金は融資」「短期・案件別の資金ギャップはファクタリング」で役割分担をするのも一案です。

 

使い分けを検討する際のチェックリスト
  • 案件ごとの「受注〜納品〜入金」までの期間と、必要運転資金を把握しているか
  • 注文書買取に回す案件は、「大型・長期・高信用」のものに絞れているか
  • 請求書買取は、「納品済みの継続案件」に集中させ、過剰利用になっていないか
  • ファクタリングと銀行融資の役割分担(短期・長期・案件別)を社内で共有しているか

 

注文書買取の費用とリスク管理実務

注文書買取ファクタリングは、「受注時点で資金化できる」というメリットの一方で、請求書買取よりも手数料が高くなりやすく、キャンセル・仕様変更・二重譲渡など将来債権特有のリスクも抱えています。

したがって、単に「資金が早く入るかどうか」だけで判断するのではなく、①手数料相場と決まり方、②未納・キャンセル時のリスク分担、③契約条項と債権譲渡登記、④会計・税務処理の基本、という4つの観点から費用対効果とリスクを整理しておくことが重要です。

金融庁は、高額な手数料・大幅な割引率のファクタリングを利用すると、かえって資金繰りが悪化し多重債務に陥る危険があると注意喚起しており、注文書買取のような高リスク・高コストのスキームを導入する際には、事前の試算と社内稟議が欠かせません。

 

論点 実務上のチェック内容
費用 注文書買取と請求書買取・融資の手数料/金利を年率イメージで比較する
リスク分担 未納・キャンセル時に誰がどこまで負担するか(リコース条項の有無)
契約・登記 将来債権譲渡条項・譲渡制限特約・債権譲渡登記の要否とメリット/デメリット
会計・税務 売掛債権の売却か実質借入れかの判断、消費税非課税、手数料の損金処理

 

注文書買取の手数料相場と決まり方

公開情報ベースの相場感として、請求書ファクタリングの手数料は概ね2〜10%程度とされるのに対し、注文書ファクタリング(将来債権買取)では10〜30%に達する場合もあると解説されています。

また、GMO BtoB早払いなど一部サービスでは、「請求書買取1〜10%、注文書買取2〜12%」と、同一サービス内でも請求書より注文書のほうが高めに設定されている例が紹介されています。

 

これは、注文書段階ではまだ納品・検収が完了しておらず、「案件の完遂」「金額の確定」「支払の実行」という3つのリスクが残っているためです。

ファクタリング会社は、①発注元(売掛先)の信用力、②案件の規模・期間・内容(技術的難度、工期など)、③利用企業の納品能力・実績、④注文書の条件(キャンセル条項・譲渡制限特約の有無)、⑤前倒し日数(受注から入金までの期間)を総合評価して手数料を決定します。

 

同じ発注元・同じ金額であっても、「納品済み・請求書発行済み」の確定債権と、「受注したばかりで仕様が固まりきっていない将来債権」では、必要なリスクマージンが異なります。

注文書買取の手数料が高く提示された場合は、「受注段階で資金化する価値があるか」「別の案件や別の手段(請求書買取・短期融資)で代替した方がよいか」を、数字で比較検討することが重要です。

 

手数料が決まる主な要因と確認ポイント
  • 発注元の信用力(大企業・官公庁か、中小・新興企業か)
  • 案件の規模・期間(短期・小口か、長期・大型か)と、前倒し日数
  • 利用企業の納品実績・技術力・過去のトラブル有無
  • 注文書・契約書の内容(キャンセル条項・譲渡制限特約・検収条件)

 

未納・キャンセル時のリスク分担と対応策

注文書買取では、「発注元が途中でキャンセルした」「仕様変更で金額が減った」「検収が遅れて支払期日がずれ込んだ」といったケースが起こり得ます。

このとき、損失を誰が負担するかは、契約上のリコース(償還請求権)条項によって決まります。

 

ノンリコース型(原則買取後の回収リスクはファクタリング会社負担)のスキームでも、将来債権を対象とする場合は、「利用者側の責に帰すべき事由(重大な契約違反・納品不能など)がある場合は買戻し」といった条件が付く例が一般的です。

リコース型(回収不能時は利用者が支払う)に近い条件になると、実質的には短期の高利借入と同じ構造になり得るため、「どの範囲までがファクタリング会社のリスクで、どこからが自社のリスクか」を条文レベルで確認する必要があります。

対応策としては、①キャンセル条項・仕様変更条項が注文書・基本契約書にどう書かれているかを把握する、②自社の履行リスク(技術・工程管理・下請体制など)を客観的に評価する、③「キャンセル時は違約金○%」といった定めがある場合に、その違約金債権を将来債権として評価してもらえるかを事前に確認する、④資金繰りが逼迫しているからといって、リコース範囲が過度に広い契約には安易に応じない、といった点が挙げられます。

 

未納・キャンセルリスクを整理するための実務ポイント
  • 契約書・注文書のキャンセル条項・仕様変更条項の内容を必ず確認する
  • 「どのような場合に買戻し義務が発生するか」をファクタリング会社に明示させる
  • 自社のミス・債務不履行と、発注元の都合によるキャンセルを契約上区別できているかを確認する
  • リコース範囲が広すぎる契約は、実質的に借入と変わらないことを前提に慎重に検討する

 

契約条項チェックと債権譲渡登記の論点

注文書買取を含むファクタリング契約では、「何を譲渡するのか」「誰に対して主張できるのか」を明確にする条項とともに、債権譲渡登記を行うかどうかも重要な論点になります。

債権譲渡登記とは、法人が行う金銭債権の譲渡について、その内容を登記所に登記し、債務者以外の第三者に対抗できるようにする制度です。

 

2社間ファクタリングでは、売掛先に通知・承諾を行わない代わりに、二重譲渡防止・法的証拠の確保のため、債権譲渡登記を求める事例が多く報告されています。

一方、3社間ファクタリングでは、売掛先が債権譲渡を承諾した時点で対抗要件を備えるため、原則として債権譲渡登記は不要と解説されています。

 

注文書買取では、「将来発生する債権」を譲渡するため、民法第466条の6に基づく将来債権譲渡条項と、債務者への通知・承諾または債権譲渡登記による対抗要件具備の方法が問題になります。

債権譲渡登記を行うと、ファクタリング会社の権利保護や手数料引き下げにつながる一方で、登記費用が発生し、登記簿を閲覧した取引先にファクタリング利用が知られる可能性もある、と指摘されています。

 

契約条項・債権譲渡登記をチェックする視点
  • 将来債権の範囲(どの注文書・どの期間の債権まで含むか)が契約書に明確に記載されているか
  • 譲渡制限特約の有無と、それが将来債権譲渡にどう影響するか(顧問弁護士と要確認)
  • 2社間の場合、債権譲渡登記を行うメリット(手数料引き下げ等)と費用・情報開示リスクを比較する
  • 3社間の場合、売掛先の承諾による対抗要件具備と、債権譲渡登記の必要性の有無を整理する

 

会計処理・税務上の取り扱いの基本

会計・税務の観点からは、「注文書買取であっても、実質が売掛債権の譲渡か、それとも借入か」を見極めることが重要です。

一般に、買取型ファクタリングは「売掛債権の譲渡」として扱われ、売掛金の減少と「売上債権売却損」などの費用計上で処理されるのが中小企業向けの代表的な処理方法です。

 

税務上、ファクタリングによる売掛債権の譲渡は、国税庁が定める「非課税となる取引」のうち「金銭債権などの譲渡」に該当し、消費税は課税されません。

売掛債権を譲渡して得た現金や、ファクタリング手数料についても、消費税法上は非課税取引として取り扱われると、金融機関・決済事業者の解説で整理されています。

 

一方、注文書段階で資金化する取引については、「将来発生する売掛債権の譲渡」として処理するのか、「受注を根拠とした短期借入」として処理するのかは、契約内容や実務慣行によって異なり得ます。

売上計上時期自体は従来どおり「検収・引渡し完了時」が基準となるため、注文書買取で早期に資金を受け取っても、売上認識のタイミングが前倒しされるわけではありません。

 

会計・税務で押さえたい基本ポイント
  • 買取型ファクタリングは、原則として「売掛債権の譲渡+売上債権売却損(手数料)」として処理する
  • 売掛債権の譲渡と手数料は、消費税法上「金銭債権の譲渡」に該当し非課税となる
  • 注文書買取が「実質的な借入」に近い構造の場合、会計処理が異なる可能性があるため顧問税理士と要相談
  • 売上の計上時期(検収・引渡し完了時)と、資金化のタイミング(注文書買取)を混同しないことが大切

 

注文書ファイナンス活用ステップ

注文書ファイナンス(注文書買取・POファイナンス)を本格的に活用するには、「単発で申し込んで終わり」ではなく、自社の資金計画や売掛構成の中にどう位置づけるかを決めてから導入することが重要です。

具体的には、①導入前に資金ニーズと売掛構成を整理する、②注文書買取に対応しているファクタリング会社(またはPOファイナンス取扱い金融機関)を比較・選定する、③注文書担保融資など銀行側の商品と併用戦略を設計する、④導入後に手数料と効果をモニタリングし、継続・縮小・停止の基準を明確にしておく、という4ステップで考えると整理しやすくなります。

 

この一連のプロセスを文書化しておけば、担当者が変わっても同じ方針で運用しやすく、銀行との対話や内部監査にも説明しやすくなります。

「資金繰りが苦しいからとりあえず使う」のではなく、「どの案件を、どこまで、どの期間だけ使うか」を決めたうえで導入することが、費用対効果とリスク管理の両面から重要です。

 

ステップ 主な内容
①事前分析 資金ニーズと売掛・受注構成を見える化する
②パートナー選定 注文書買取対応の事業者・金融機関を比較する
③併用設計 銀行融資・POファイナンスと役割分担を決める
④モニタリング 手数料・効果・リスク指標を定期的に確認し見直す

 

導入前に整理したい資金ニーズと売掛構成

導入の第一歩は、「どのタイミングで、いくら、どれくらいの期間資金が足りないのか」を明確にすることです。まず、月次または週次の資金繰り表を作成し、受注から納品・検収・請求・入金までのキャッシュフローを時系列で並べます。

そのうえで、「受注直後に材料費・外注費・人件費が集中する大型案件」「請求書発行後から入金までのギャップが問題になっている継続案件」を区別し、どのフェーズが一番資金を圧迫しているのかを特定します。

 

次に、売掛金・受注残の構成を「発注元別」「案件規模別」「期間別」に分類します。

例えば、「大企業向けの長期案件」「中小企業向けの短期案件」「官公庁向けの年度案件」などに分け、それぞれの残高・回転期間・利益率を整理することで、「注文書ファイナンスを使う候補」と「通常の請求書ファクタリングや銀行融資で十分な領域」を切り分けやすくなります。

この整理なしに導入すると、コストの高い注文書買取を小口案件にまで広げてしまい、利益を圧迫する原因になりかねません。

 

導入前に整理しておきたいポイント
  • 受注〜納品〜入金までの流れを資金繰り表に落とし込み、「資金の谷」がどこにあるかを特定する
  • 売掛金・受注残を「発注元」「案件規模」「期間」で分類し、長期・大型案件を抽出する
  • 注文書ファイナンスを使う候補は、「大口・長期・高信用」の案件に絞る前提で検討する
  • 年間の手数料総額の上限(売上や利益に対する%)を仮置きしておく

 

注文書買取対応ファクタリング会社の選び方

注文書買取に対応している事業者は、通常の請求書ファクタリングより数が少なく、サービス内容も事業者によってかなり異なります。

そのため、「とにかく注文書も買い取ってくれる会社」を探すのではなく、「自社の業種・案件特性・発注元の属性に合うスキームを持つ会社」を選ぶことが重要です。

 

選定の際は、①対応している業種(建設・製造・IT・人材など)、②対応可能な案件規模(〇〇万円〜〇億円まで)、③対象となる注文書の種類(官公庁の契約書・サブコンとしての下請契約・補助金採択通知等)、④2社間・3社間の別と、発注元への通知方針、⑤手数料レンジと計算方法(注文書買取と請求書買取の差)、⑥契約条項(リコース条件・キャンセル時の扱い)などを比較します。

少なくとも2〜3社から見積りと契約書のひな型を取り寄せ、条件だけでなく説明の丁寧さやトラブル時の対応方針も確認しておきたいところです。

 

注文書買取対応会社を選ぶチェックリスト
  • 自社の業種・案件規模・発注元のタイプに対応実績があるか
  • 注文書買取と請求書買取、それぞれの手数料レンジと条件が明示されているか
  • 2社間・3社間のスキーム、発注元への通知の有無を選べるか
  • リコース条件・キャンセル時の扱いなど、リスク分担を契約書ベースで丁寧に説明してくれるか

 

銀行の注文書担保融資(POファイナンス)との併用戦略

注文書ファイナンスの選択肢には、ファクタリング会社による買取型だけでなく、銀行・信用金庫・ノンバンクが提供する注文書担保融資(POファイナンス)もあります。

こちらは、「注文書や契約書を根拠に、将来の売掛金を返済原資とする短期融資」を受けるスキームであり、法的には「借入金+担保・保証」の扱いになります。

 

その分、金利ベースのコストはファクタリングより低く抑えられることが多い一方、与信審査や条件交渉に時間がかかる場合もあります。

現実的な併用戦略としては、「大型・長期・安定的な取引はPOファイナンスで枠を取り、急ぎのスポット案件はファクタリングで補う」といった役割分担が考えられます。

例えば、毎年継続して受注する官公庁・大企業向けの案件は、銀行に事前に相談して注文書担保融資の枠を設定し、それ以外の不定期案件については、必要なものだけ注文書買取や請求書買取を使う、というイメージです。

 

POファイナンスとファクタリングを組み合わせるポイント
  • 長期・反復性のある案件は、事前に銀行と相談し「注文書担保融資の枠」でカバーする
  • 急ぎのスポット案件や銀行の枠を超える部分は、ファクタリングで補う
  • 借入金残高・財務制限条項・担保設定状況を踏まえ、バランスシートへの影響も考慮する
  • メインバンクにファクタリング利用方針を共有し、「隠れた借入れ」と誤解されないようにする

 

導入後のモニタリング指標と見直し基準

導入後に重要なのは、「どれだけ資金繰りが改善したか」と「どれだけコストを支払っているか」を定期的に確認し、必要に応じて利用範囲を拡大・縮小・停止する判断を行うことです。

モニタリング指標としては、①注文書ファイナンス利用額(四半期・年間)、②手数料総額および平均手数料率、③前倒し日数(受注から実際の入金までの日数の変化)、④売掛金回転期間や運転資本の改善状況、⑤大型案件の受注機会を逃さずに済んだ金額(売上・利益ベース)などが挙げられます。

見直し基準としては、「手数料総額が営業利益の〇%を超えたら要警戒」「同じ発注元の案件を連続して〇件以上注文書買取に回したら、一度請求書買取や融資に切り替えを検討」「資金繰り表上の資金ショートがほぼ解消されている状態が続いたら、利用頻度を下げる」など、定量的な基準を決めておくと運用のブレを防げます。

 

モニタリング・見直しの実務チェックリスト
  • 四半期ごとに「利用額・手数料総額・平均前倒し日数」を一覧で確認しているか
  • 売掛金回転期間や運転資本(売掛+在庫−仕入債務)の推移を指標として追っているか
  • 営業利益に対する手数料負担の割合が高くなり過ぎていないか
  • 事前に決めた「利用縮小・停止の基準」に近づいた場合、経営会議等で方針を再検討する仕組みがあるか

 

まとめ

本記事では、注文書買取ファクタリングの基本構造と「将来債権ファイナンス」としての位置付け、対象となる注文書の条件や審査ポイント、請求書買取・銀行融資との違い、手数料相場とキャンセル時のリスク分担、会計・税務上の扱い、導入〜モニタリングまでの実務手順を整理しました。

自社の受注形態と資金ニーズ、売掛構成を可視化したうえで、注文書買取と通常ファクタリング・PO融資を比較し、コストとリスクに見合う範囲で部分的に活用することで、成長局面の資金繰りを安定させやすくなります。