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黒字倒産はなぜ起きる?資金繰りの理由と中小企業が現場視点で防ぐ5つのポイント

売上や利益は一応プラスなのに、「税金や社会保険料の支払いがこわい」「取引先への支払いがギリギリ」といった不安を抱える中小企業は少なくありません。こうした状況が行き過ぎると、決算上は黒字にもかかわらず支払資金が尽きてしまう、いわゆる「黒字倒産」に近づいていきます。

この記事では、黒字倒産が起こる資金繰り上の背景と、中小企業が資金繰り表や金融機関・専門家との連携を通じてリスクを抑えるための考え方を整理します。

 

黒字倒産と資金繰りの基礎知識

黒字倒産とは、帳簿上は利益が出ているのに、支払期日までに現金を用意できなくなり、取引先や金融機関への支払い継続が難しくなる状態を指すとされています。

売上が伸びている局面では、売掛金や在庫が増える一方で、実際の入金は先送りされやすく、思ったほど現金が残らない状況になりがちです。

 

中小企業では、銀行残高や請求書の金額だけを見て判断し、入金と支払いのタイミングのズレを見落としてしまうケースも見られます。

ここで鍵になるのが「資金繰り」の視点です。資金繰りとは、売上入金・仕入支払い・人件費・家賃・税金・借入金返済など、お金の出入りを時系列で並べ、必要な現金を切らさないように管理することをいいます。

 

損益計算書が「利益が出ているかどうか」を示すのに対し、資金繰りは「いつ・いくら現金が動くか」を確認するためのものです。

黒字倒産を防ぐには、利益の多寡だけでなく、時間軸で資金の動きを把握することが欠かせません。

 

この章のポイント整理
  • 黒字倒産は「利益」ではなく「現金不足」が引き金になって生じるとされる
  • 資金繰り管理では金額だけでなく入出金のタイミングの把握が重要
  • 決算書とあわせて資金繰り表を作成し、現金の動きを定期的に確認していくことが有効

 

黒字倒産の意味と倒産と呼ばれる状態のポイント

一般に「黒字倒産」と呼ばれるのは、会計上は当期純利益がプラスであるにもかかわらず、支払期日までに必要な現金を準備できなくなり、支払不能に陥るケースを指すとされています。

たとえば、設備投資や在庫積み増しに多額の資金を投じているうえに、売掛金の回収が遅れ、給料・家賃・仕入代金・返済金の支払いに必要な資金が足りなくなるような状況です。

一方、「倒産」という言葉は法律用語ではなく、一般的には次のような状態の総称として用いられます。

 

  • 支払期日に継続して支払いができない「支払不能」の状態
  • 破産手続・民事再生など、法的整理の手続きに入った状態
  • 取引停止処分などにより、事実上事業の継続が難しいと判断される状態

 

黒字倒産は、このうち「支払不能」に至る原因が赤字ではなく資金繰りの悪化にあるケースと考えると、イメージしやすくなります。

数字上の黒字・赤字だけで経営を判断するのではなく、日々の入出金や将来の支払い予定も合わせて確認することが重要です。

 

利益とキャッシュフローの違いの注意点

黒字倒産を理解するうえでは、「利益」と「キャッシュフロー」は別の概念だという点を押さえておく必要があります。

損益計算書に出てくる利益は、売上や費用が発生したタイミングで計上する「発生主義」に基づいています。

 

一方、キャッシュフローは実際にお金が入った日・出た日を基準とする「現金の増減」です。

たとえば、120万円の商品を仕入れて同額で販売した場合を考えてみます。会計上の利益はほぼゼロですが、「販売から90日後に入金」「仕入代金は60日後に支払い」といった条件だと、30日間は資金が120万円不足する計算になります。

同じ取引でも、支払いと回収のタイミングによって、資金に余裕が出る場合もあれば、逆に不足を招く場合もあります。

 

指標 主な内容
利益 発生主義で計算される損益。売上計上や減価償却など、現金の出入りを伴わない項目も含まれる。
キャッシュフロー 現金主義で見たお金の増減。売掛金回収・仕入や経費の支払い・返済・税金など、実際の入出金時点が反映される。

 

「利益が出ているから安心」という見方だけでは不十分で、「いつ・いくら現金が増減するのか」を資金繰り表で確認することが、黒字倒産を避けるうえで大切なポイントになります。

 

資金繰り表と決算書の役割比較チェック

決算書は、通常1年間など一定期間の経営成績や財政状態をまとめ、金融機関や取引先など外部に説明するための資料です。

これに対して資金繰り表は、月単位・週単位といった短い期間で現金収支を整理し、将来の資金不足を早めに把握するための管理ツールとして使われます。目的が違うため、それぞれの役割を意識して活用することが重要です。

 

決算書だけを見ていると、売上や利益、自己資本比率などの指標には目が向きますが、「数か月先に資金が足りなくなる時期がないか」といった視点は得にくくなります。

一方で、資金繰り表ばかりを見ていると、事業全体の採算性や投資の妥当性を十分に検討しないまま、短期的な資金手当てに偏るおそれもあります。

 

決算書だけでは見逃しやすいポイント
  • 数か月先までの現金残高の推移(どの月に資金不足が起こり得るか)
  • 売掛金・在庫・借入返済など、資金を圧迫している要因の具体的な金額
  • 税金・賞与・ボーナス払いなど、季節要因による大口支払いの影響

 

黒字倒産リスクを抑えるには、「決算書で収益性・安全性を確認しつつ、資金繰り表で現金収支の見通しを管理する」という二本立ての運用が有効です。

売掛金・買掛金・在庫・返済・税金支払いなどの主要項目を織り込んだ資金繰り表を作り、少なくとも3か月先までの資金残高を継続的にチェックしていくことが望まれます。

 

黒字倒産が起きる主な資金繰り理由

黒字倒産は、1つの要因だけで突然起こるというより、複数の資金繰り要因が重なった結果として表面化するケースが多いとされています。

典型的なのは、「売掛金の回収条件が厳しいのに、仕入や外注費・人件費の支払いは早い」「在庫や設備投資に資金を多く投じている」「借入金の返済や税金・社会保険料の支払いが同じ時期に集中している」といったパターンです。

 

決算書上は利益が出ていても、「どのタイミングで現金が出ていくのか」「いつ回収できるのか」を十分に確認していないと、ある月を境に一気に資金不足が顕在化することがあります。

中小企業では、売上拡大を優先して値引きや支払条件の譲歩を続けた結果、資金繰りが急に苦しくなるといったケースも見られます。

 

主な要因 資金繰りへの影響
売掛金回収の遅れ 売上は計上されても現金化が遅れ、支払いに回せる資金が不足しやすくなる。
在庫・投資の増加 現金が在庫や設備に固定され、日々の運転資金に使えるお金が減少する。
返済・税金支払いの集中 借入返済や税金・社会保険料の支払いが重なる時期に、資金残高が大きく落ち込む。

 

売掛金回収遅れと支払サイトの注意点

売掛金の回収が遅い一方で、仕入や外注費の支払いが早い状況は、黒字倒産の代表的なパターンといわれます。

たとえば、「月末締め翌々月末入金」の取引が多いのに、仕入や外注費は翌月末払いで現金が出ていく場合、売上が増えるほど売掛金が積み上がり、資金繰りがきつくなりやすくなります。

数字上は売上・利益が増えていても、現金の残り方は逆に悪化する可能性があります。

 

新規取引の獲得を優先するあまり、「販売先の回収サイトは長く、仕入先への支払いは早く」という条件を受け入れ続けると、一定の売上規模を超えたところで資金ショートが一気に表面化するおそれがあります。

取引開始時には問題なくても、売上が伸びる局面で負担が急に重くなる点に注意が必要です。

 

売掛金・支払条件を確認するときのチェックポイント
  • 主要取引先ごとの回収サイトと、仕入先への支払サイトを一覧で比較する
  • 売上が増えている月に、売掛金残高が急増していないか月次で確認する
  • 回収条件が長くなる一方で、支払い条件が徐々に短くなっていないかを振り返る

 

在庫増加や投資負担による資金不足ポイント

在庫の増加や設備投資・新店舗開設などは、将来の収益拡大には欠かせない取り組みですが、短期的には資金流出が大きくなる要因です。

在庫を抱えるということは、仕入代金として現金を先に支払っているにもかかわらず、まだ売上・入金に結びついていない状態が続くということでもあります。

 

需要の読み違いや季節要因を十分に加味せず在庫を積み増してしまうと、「黒字だが現金が足りない」状況を招きやすくなります。

設備投資や内装工事なども、一度にまとまった支払いが発生しやすい費用です。その期間に運転資金の余裕がないと、通常の仕入・給与・家賃などとの両立が難しくなります。

投資自体が悪いわけではありませんが、「どのタイミングで、どの規模であれば資金的に耐えられるのか」を事前に資金繰り表で試算しておくことが重要です。

 

  • 在庫回転期間(仕入から販売・回収までの期間)が延びていないか
  • 投資支払いの時期と、売上・入金が増えるタイミングに大きなズレがないか
  • 投資を行っても、数か月分の固定費を賄える水準の手元資金が残るかどうか

 

在庫・投資を行う際に意識したい点
  • 在庫増加や設備投資による資金流出を、必ず資金繰り表に反映して検討する
  • 投資後も、最低限の運転資金(数か月分の固定費)を残すことを一つの目安にする

 

借入返済と税金支払い遅延の注意点

借入金の元本返済・利息、法人税や消費税、源泉所得税、社会保険料といった支払いは金額が大きく、支払期限も契約や法令で決まっています。

通常は問題なく支払えていても、一時的な売上低下や入金遅れが重なると、これらの支払いが資金繰りを強く圧迫します。

 

特に消費税や源泉所得税は「預かり金」の性格があり、運転資金として使い過ぎると、納付時に大きな資金ギャップが生じるおそれがあります。

一度でも返済や税金・社会保険料の支払いが期日に行えなくなると、延滞税や遅延損害金が発生するだけでなく、金融機関からの信用評価にも影響する可能性があります。

その後の借換えや追加融資が難しくなる場合もあるため、「支払えなくなってから対応する」のではなく、資金繰り表で支払予定をあらかじめ一覧化し、資金不足の兆しが見えた段階で金融機関や税務署・年金事務所などに相談することが重要です。

 

返済・税金支払いで押さえたいポイント
  • 借入返済と税金・社会保険料の支払月を年単位で一覧にし、資金繰り表に反映する
  • 消費税などの預かり金を、日常的な運転資金として常用しないよう管理する
  • 資金不足が予測される場合は、支払期日前に金融機関・税務署・年金事務所などへ相談する

 

中小企業の資金繰り構造とリスク要因

中小企業の資金繰りを考えるうえでは、「売上の入金タイミング」と「仕入・外注費・人件費・設備投資・税金・返済などの支払タイミング」の組み合わせがどうなっているかを整理することが重要です。

とくに建設業や製造業など、BtoB取引が中心の業種では、工事や製造が完了し、検収を経て請求書を発行し、その後に入金となるまで時間がかかるケースが多く見られます。

 

一方で、材料費・外注費・人件費・リース料・家賃などは毎月出ていきます。

同じ売上規模であっても、在庫をどの程度抱えるか、外注比率はどのくらいか、前受金を受け取れるかどうかによって、必要となる運転資金の水準は大きく変わります。

自社の資金繰り構造を把握し、「どのタイミングで資金不足を起こしやすいか」を整理しておくことが、黒字倒産リスクを下げるうえで役立ちます。

 

項目 入金の特徴 資金繰り上の注意点
建設・製造 工事完了・検収後に請求し、入金までの期間が比較的長い。 工期中の材料費・外注費・人件費などを先に負担する必要がある。
卸売・小売 BtoBは掛売が多く、BtoCは現金・カード決済が中心。 在庫と売掛金のバランスを見ないと、資金が在庫・債権に固定されやすい。
サービス業 月額課金・都度決済・チケットなど、入金形態が多様。 前受金で有利な面もあるが、返金リスクやサービス提供コストも考慮が必要。

 

建設業・製造業など入金サイトの特徴比較

建設業や製造業は、受注から入金までのリードタイムが長くなりやすい業種です。建設業では、着工前に一部前受金を受け取る場合もありますが、出来高に応じた中間金や竣工後の最終金など、工期全体を通じた資金計画が必要になります。

製造業でも、材料仕入から製造・納品・検収・請求・入金までの流れが長いほど、売上計上前から多くの資金を先に投じることになります。

 

一方、飲食業や小売業など消費者向けのビジネスでは、現金売上やカード決済による早期入金が多く、同じ売上規模でも資金繰りへの影響は大きく異なります。

売上高の大きさだけでなく、「自社の主要な取引がどのような入金サイトになっているか」を整理することで、必要な運転資金の水準が見えやすくなります。

 

入金サイトを整理するときの視点
  • 受注から入金までの日数を、業種別・主要取引先別に把握する
  • 工期・製造リードタイムが長い案件では、追加の運転資金が必要か検討する
  • 前受金・着手金の有無や金額によって、資金繰りがどう変わるか試算する

 

下請・孫請の立場で起きやすいリスク事例

元請や大手企業から仕事を受ける下請・孫請の立場では、取引条件が自社側でコントロールしにくく、入金サイトが長くなる、単価が抑えられる、追加作業が無償になりやすいといったリスクがあります。

たとえば、工事開始から完了まで数か月かかるにもかかわらず、中間金がなく、完工後60日経過してから一括で入金される条件の場合、材料費や外注費、現場の人件費などを長期間立て替えることになります。

 

さらに、元請都合で工期が延びたり、検収が遅れたり、仕様変更が生じたりすると、支払期日が後ろ倒しになる一方で、現場にかかるコストは増えていきます。

売上規模の大きい案件ほど、「売上は増えたのに資金繰りは厳しくなる」という逆転現象が起こりやすくなる点には注意が必要です。

 

下請・孫請で注意したい資金繰りリスク
  • 元請・主要取引先の締日・支払日と、自社の仕入・外注の支払日を一覧で比較する
  • 大口案件は、着手金・中間金の有無や条件変更時の取り決めを事前に確認する
  • 一社への依存度が高い場合、その取引先の支払遅延や与信リスクにも目を向ける

 

成長期に売上急増したときの注意ポイント

売上が急激に伸びている時期は、経営が順調に見える一方で、資金繰りリスクも高まりやすい局面です。

受注増に対応するため、仕入や外注、人員増加、残業代、追加の車両・機械のリース料など、先に支払う費用が増えるからです。掛売の割合が高い場合、売上と同じペースで売掛金も膨らみ、運転資金の必要額も増えていきます。

 

新規取引を増やす過程では、「値引き」「支払条件の譲歩」「長めの回収サイト」を受け入れてしまうことも少なくありません。

売上が倍増しても、粗利率が下がり、売掛金や在庫の回転期間が延びていれば、資金繰りはむしろ悪化している可能性もあります。

 

  • 売上拡大局面では、同時にどれだけ運転資金需要が増えるか試算する
  • 新規取引の条件や値引きが、粗利や資金繰りに与える影響を事前に確認する
  • 成長スピードに応じて、融資枠や短期資金の確保についても併せて検討する

 

黒字倒産を防ぐ資金繰り表と管理体制

黒字倒産を防ぐためには、「なんとなくの勘」や銀行残高だけで判断するのではなく、資金繰り表を用いて入出金の見通しを数字で確認することが重要です。

月次の試算表や決算書は過去の結果を示す資料ですが、資金繰り表はこれから先の現金収支を予測するための管理票です。

 

小規模事業者であっても、売掛金・買掛金・在庫・借入返済・税金支払いなどの主要項目を整理し、少なくとも月次、資金繰りが厳しいときは週次で資金繰り表を更新することで、早い段階で資金不足の兆しをつかみやすくなります。

経営者だけが数字を抱え込むのではなく、経理担当者や顧問税理士と共有し、客観的な数字に基づいて対策を検討できる体制づくりも大切です。

 

資金繰り表と管理体制づくりのポイント
  • 月次に加えて、必要に応じて週次の資金繰り表も作成・確認する
  • 経営者・経理担当者・顧問税理士など複数人で資金繰り情報を共有する
  • 売上や利益だけでなく、現金残高と将来の不足時期に目を向ける

 

月次・週次で作る資金繰り表の基本ステップ

資金繰り表は、表計算ソフトなどを使えば比較的簡単に作成できます。考え方としては、「期首の現金残高」に「期間中の入金予定」を足し、「期間中の出金予定」を差し引いて、期末の残高を算出していきます。

最初は大まかな科目からスタートし、徐々に細かい項目を追加していく形でも構いません。

 

資金繰り表作成の基本的な流れは、次のように整理できます。

ステップ 内容 ポイント
現金残高の確認 月初・週初時点の銀行預金や現金の残高を確認する。 複数口座がある場合は合算し、拘束預金など自由に使えない資金は別枠で管理する。
入金予定の整理 売掛金回収、前受金、借入実行予定などを日付別に記入する。 請求書や契約書の支払条件をもとに、入金予定日をできるだけ具体的に入力する。
出金予定の整理 仕入・外注費・給与・家賃・リース料・返済・税金・社会保険料などを洗い出す。 金額の大きい支払いから優先的に記入し、漏れを防ぐ。

 

月次の資金繰り表に加え、入出金の動きが激しい業種や資金繰りがタイトな時期には、週次の資金繰り表も作成することで、「どの日に資金が足りなくなりそうか」をより具体的に把握しやすくなります。

 

3か月先までの資金残高を予測する流れ

黒字倒産を避けるには、「今月を乗り切れるかどうか」だけでなく、「数か月先に資金不足が生じる月がないか」を確認することが重要です。

目安として、少なくとも3か月先までの資金繰りを予測しておくと、大きな支払いイベントや売上の変動に前もって備えやすくなります。

3か月先までの資金残高を予測する手順は、次のように整理できます。

 

  • 各月の月初現金残高(前月からの繰越額)を記入する
  • 売上計画と支払条件から、各月の売掛金回収見込み額を算出する
  • 仕入・外注・人件費・家賃などの出金を、各月に振り分ける
  • 借入返済、賞与、税金・社会保険料などの大口支払いも組み込む
  • 各月の期末残高を計算し、マイナスになる月がないか確認する

 

3か月先資金繰りを確認するメリット
  • 資金不足が見込まれる月を早めに把握し、前倒しで融資や条件交渉を検討できる
  • 投資や人員増などの意思決定を、資金面からも判断しやすくなる
  • 「いつまでに、いくら必要か」が明確になり、具体的な対策を立てやすい

 

資金繰り表は作成して終わりではなく、売上実績や支出の変化を踏まえて、毎月更新していくことが前提となります。

 

入出金シミュレーションと安全資金の目安

資金繰り表が整ってきたら、「売上が計画より減った場合」「大口取引先の入金が1か月遅れた場合」など、いくつかのパターンを想定して試算してみると、黒字倒産リスクをより具体的にイメージできます。

たとえば、売上が一時的に1〜2割減少したケースや、特定の入金がズレ込んだケースをシミュレーションし、その場合でも資金残高がマイナスにならないかを確認します。

 

安全資金の水準は、業種や売上の安定度によって異なりますが、「数か月分の固定費(人件費・家賃・リース料など)」を一つの目安として、最低限確保しておく考え方が紹介されることがあります。

ただし、どの企業にも共通する絶対的な正解があるわけではないため、自社の売上変動・取引条件・借入状況などを踏まえ、顧問税理士や金融機関とも相談しながら検討することが望ましいといえます。

 

シミュレーションと安全資金で意識したい点
  • 売上減少や入金遅延など複数パターンを試算し、資金不足が生じる月を確認する
  • 資金不足が想定される場合は、早期に融資や支払条件見直しの検討を始める
  • 安全資金の目安はあくまで参考とし、自社の実情に合わせて柔軟に調整する

 

金融機関・専門家への相談タイミング

金融機関や専門家への相談は、「資金が尽きてしまってから」では遅くなることが多く、「資金不足が見通せた段階」で動き始めることが重要です。

資金繰り表で数か月先の資金残高を眺めてみて、どこかの月でマイナスに転じそうな見込みが立った時点を、具体的な相談のきっかけと考えるとよいでしょう。

 

売掛金の回収遅れや設備投資の実行、税金・賞与・返済が重なる月などが見えている場合は、早めに情報を整理しておくことで、利用できる選択肢を検討しやすくなります。

金融機関だけでなく、顧問税理士や中小企業支援機関など第三者の視点を取り入れることで、「どの程度の資金がどの期間必要なのか」「どのような調達方法が現実的なのか」を具体化しやすくなります。

その結果、黒字倒産につながるリスクを下げるための対策も検討しやすくなります。

 

  • 資金不足が「起きてから」ではなく「起きそうな段階」で相談を始める
  • 資金繰り表をベースに、必要資金と必要となる時期を数字で説明できるようにする
  • 金融機関・税理士・支援機関など、複数の相談先を持っておく

 

資金ショート前に相談したいタイミング目安

資金ショート前に相談したいタイミングとしては、「少なくとも1〜3か月先に資金不足が見込まれる段階」を一つの目安として考えるとわかりやすくなります。

融資の審査や実行には、相談から実際の入金まで数週間から1か月程度かかることも多いため、資金繰り表で将来のマイナスが見えた時点で準備を始めることが重要です。

 

また、「今月は何とか支払えるが、来月・再来月の残高がほとんど残らない」「税金や賞与など大口支払いを乗り切るめどが立たない」といった状況も、相談を始めるサインといえます。

取引金融機関に早めに状況を共有しておくことで、短期のつなぎ資金や返済条件の見直し、公的融資の活用など、検討できる選択肢が広がります。

 

相談開始のタイミングとして意識したい場面
  • 3か月先までの資金繰りで、どこかの月の残高がマイナスになりそうなとき
  • 税金・賞与・大口返済などの支払月に、手元資金が大きく減る見込みのとき
  • 売上減少や回収遅延が続き、今後の資金見通しに強い不安があるとき

 

公的融資やリスケを検討する判断基準

日本政策金融公庫や信用保証協会付き融資などの公的融資、あるいは既存借入のリスケジュール(返済条件の変更)を検討する際には、「一時的な資金不足なのか」「構造的な収益不足なのか」「返済可能な見通しを描けるかどうか」といった視点が重要になります。

売上や粗利率が一定水準を維持していて、一時的な設備投資や取引条件の変化が資金不足の主因であれば、公的融資による運転資金の確保が選択肢になり得ます。

 

一方で、返済負担が慢性的に重く、資金繰り表を見ても先々まで余裕が見込みにくい場合には、返済条件の変更(リスケジュール)を視野に入れざるを得ないケースもあります。

ただし、リスケは今後の融資取引に影響する可能性もあるため、短期的な資金繰り改善だけを目的に安易に選ぶのではなく、事業計画やコスト削減策とセットで検討することが重要です。

 

手段 主な目的 検討時のポイント
公的融資 一時的な資金不足や成長投資に必要な資金を確保する。 返済原資となる利益やキャッシュフローの見通しを説明できるかどうか。
リスケジュール 既存の返済負担を軽減し、資金繰りの改善を図る。 事業改善策と合わせて、中長期的な再建計画を示せるかどうか。

 

顧問税理士・専門家に伝える情報チェック

顧問税理士や中小企業診断士などの専門家に相談する際は、「何となく不安」という状態をそのまま伝えるのではなく、一定の資料を揃えたうえで相談した方が、具体的な助言を受けやすくなります。

最低限準備しておきたいのは、直近の決算書・月次試算表、資金繰り表、借入金の一覧表、税金や社会保険料の納付状況、主要取引先の入金・支払条件などです。

 

さらに、今後の売上・投資・人員計画や、「ここは守りたい」「ここは見直してもよい」といった経営者自身の優先順位も共有しておくと、資金調達・コスト削減・事業ポートフォリオの見直しなど、選択肢を整理しやすくなります。

情報が具体的であればあるほど、金融機関への説明資料の作成や、公的支援制度の検討にもつなげやすくなります。

 

  • 直近の決算書・月次試算表・資金繰り表
  • 借入金ごとの残高・金利・返済条件をまとめた一覧
  • 税金・社会保険料の納付状況や、滞納がある場合はその内容
  • 主要取引先の売上構成、回収・支払サイト、今後の見込み
  • 今後の投資計画や人員計画、経営者としての希望や優先順位

 

専門家へ相談するときの準備ポイント
  • 数値資料(決算書・試算表・資金繰り表)を事前に揃えておく
  • 現状の課題と今後どうしたいかを簡潔なメモにしておく
  • 相談内容を金融機関との打ち合わせにも活用できるよう整理しておく

 

まとめ

黒字倒産は、利益が出ていても、売掛金回収の遅れや在庫・設備投資の負担、借入返済や税金・社会保険料の支払いが重なることなどが背景となり、資金ショートを起こすことで生じるとされています。

資金繰り表を活用して、少なくとも3か月先までの入出金予定と現金残高の推移を確認し、安全資金の目安を意識しておくことが重要です。

支払・入金予定を整理し、公的融資や金融機関・税理士・支援機関などへの相談準備を早めに進めながら、中長期の返済計画と事業計画を組み合わせて検討していくことで、黒字倒産のリスクを抑えやすくなります。