借り換えシミュレーションのやり方がわかる！総返済額と手数料と金利差の確認手順

借り換えを検討するときは「月々はいくら減るのか」だけでなく、手数料を含めた総返済額や金利タイプの違いまで確認しないと判断を誤りやすいです。資金繰りが不安な状況では、銀行や公庫の審査に通るか、ノンバンクは安全か、税金・社保の遅れが不利にならないかも気になるはずです。本記事では、借り換えシミュレーションに必要な入力項目の集め方、計算の基本、諸費用の見落とし防止、結果の読み方と判断基準、資金繰り表への反映や相談先の考え方までを整理します。

シミュレーション前の準備

借り換えシミュレーションは、入力する数字が正確でないと結果も大きくぶれます。特に重要なのは、現在のローン残高、残り返済期間、金利タイプ、返済方式、毎月返済額、ボーナス返済の有無などです。さらに、借り換えには事務手数料や保証料、繰上返済手数料などが発生する場合があるため、金利差だけで判断しない前提が必要です。中小企業や個人事業主の場合は、資金繰り表と連動させて「不足月が解消するか」「実行月に手数料分の現金が出せるか」まで確認すると、現実的な判断につながります。制度や商品条件は変わる可能性があるため、シミュレーションは最新の返済予定表や契約内容をもとに行うのが安全です。

入力項目の集め方ポイント

入力項目を集めるコツは、まず「今のローン」と「借り換え後のローン」を同じ物差しで比較できるように情報をそろえることです。今のローンは返済予定表を見れば、残高、金利、返済日、返済回数（残り月数）などが確認できることが多いです。借り換え後は、見積書や条件提示の書面から、金利タイプ（固定・変動）、返済期間、手数料の有無、保証料の扱い（別払いか金利上乗せか）を確認します。
具体例として、残高400万円、残期間48か月、金利年3.0%、毎月返済9万円のローンを、金利年2.0%・返済期間48か月で借り換える想定にします。ここで、事務手数料5万円と保証料8万円が必要なら、削減できる利息と比較して回収できるかを見ます。入力項目は「金利」「期間」「費用」をセットで集めると、判断ミスを減らせます。

残高・残期間の確認チェック

残高と残期間は、シミュレーションの土台になる数字です。残高が同じでも残期間が違えば利息総額は変わり、比較結果も大きく変わります。また、返済予定表の残高は「ある時点の残高」なので、借換え実行予定日までの返済分を反映できていない場合があります。実行日が2か月先なら、その間に2回返済が進み、残高が減る前提で計算する必要があります。
さらに、ボーナス返済がある場合は、月々返済だけを入力すると実態より返済負担が軽く見えてしまいます。たとえば毎月5万円＋ボーナス時20万円の返済なら、年2回のボーナス返済を含めて比較しないと、借換え後に月々が下がっても総額が合わないことがあります。

返済方式の前提比較

返済方式が違うと、同じ金利・同じ期間でも利息総額や月々の返済推移が変わります。代表的なのは元利均等返済と元金均等返済です。元利均等返済は毎月返済額がほぼ一定で管理しやすい一方、返済初期は利息の割合が大きく、元金の減りが緩やかになりやすいです。元金均等返済は元金の返済額が一定で、返済が進むほど利息が減るため総利息が抑えられやすい一方、返済初期の月々負担が重くなりがちです。
借り換えでは、現状が元利均等なのに、借換え後が元金均等になるなど、方式が変わることがあります。月々返済額だけを比べると誤解が生じやすいため、返済方式を揃えるか、方式差を理解したうえで総返済額と資金繰りへの影響を確認します。

• 元利均等返済：月々の返済額が一定に近く、資金繰り表に落とし込みやすい
• 元金均等返済：返済初期の負担は重めだが、総利息が抑えられやすい
• 比較の前提：返済方式が同じか、違うなら影響を把握して総額で比較する

計算ロジックの基本

借り換えシミュレーションは、結局のところ「借換え前の総返済額」と「借換え後の総返済額（諸費用込み）」を同じ前提で比べる作業です。総返済額は元金と利息の合計で、利息は金利・残高・期間・返済方式によって決まります。さらに借換えでは、事務手数料や保証料、繰上返済手数料などの一時費用が追加される可能性があるため、利息削減だけで得か損かは決まりません。まずは、金利タイプ（固定・変動）、返済方式（元利均等・元金均等）、返済期間をそろえ、次に費用を合算し、最後に資金繰り表に落として「実行月に払えるか」「不足月が消えるか」を確認すると判断がぶれにくいです。

元利均等・元金均等の比較

元利均等返済は、毎月の返済額（元金＋利息）がほぼ一定になる方式です。家計や資金繰りに組み込みやすい反面、返済初期は利息の割合が大きく、元金の減りが緩やかになりやすいです。元金均等返済は、元金の返済額を毎月一定にし、利息は残高に応じて減っていく方式です。返済が進むほど月々の返済額が下がり、総利息は抑えられやすい一方、返済初期の負担が大きくなりがちです。
たとえば借入300万円を金利年3.0%、3年で返す場合、元利均等は月々がほぼ一定で、元金均等は最初の月が最も重く、徐々に軽くなります。借換えで方式が変わると「初年度の月々」や「途中の返済負担」が想定とずれることがあるため、方式差を理解したうえで比較することが重要です。

金利差と損益分岐の目安

金利差によるメリットは「利息がどれだけ減るか」で測れますが、借換えには諸費用がかかるため、費用を回収できるかが損益分岐の考え方になります。簡易的には「諸費用合計÷月々の削減額」で回収に必要な月数を見積もれます。
例として、借換え費用が合計15万円、月々の返済が4,000円下がる場合、回収には約37〜38か月かかります。残り返済期間が30か月しかないなら、金利が下がっても費用回収が難しく、結果として損になる可能性があります。逆に、残り期間が長く、金利差が大きいほど回収しやすくなります。なお、変動金利の場合は将来の金利が確定しないため、損益分岐は「現時点の金利での仮計算」として扱い、上振れ時の耐性も合わせて確認します。

期間変更の影響ポイント

借換えで返済期間を変えると、月々返済額と利息総額がトレードオフになります。期間を延ばすと月々は下がりやすい一方、返済が長期化するため利息が増え、総返済額が上がる可能性があります。期間を短くすると総利息は抑えやすいですが、月々返済が増えて資金繰りを圧迫しやすくなります。
たとえば残高500万円を、同じ金利で5年から8年に延長すると、月々は軽くなりやすい一方、利息が積み上がる期間が伸びます。逆に8年から5年に短縮すると、総額は抑えられても月々が重くなります。シミュレーションでは、期間変更で浮いた資金を何に使うか（運転資金の不足解消、納税資金の確保など）まで決め、資金繰り表で不足月が消えるかを確認することが重要です。

1. 借換え前後で、月々返済と総返済額を同時に確認する
2. 期間延長なら、浮いた月次資金の使い道を明確にする
3. 期間短縮なら、返済増に耐えられるかを資金繰り表で確認する
4. 変動金利の場合は、金利上昇時の返済増も試算しておく

諸費用と総返済額

借り換えシミュレーションで差が出やすいのが、利息以外の諸費用です。金利が下がっても、手数料や保証料などが増えると総返済額が思ったほど下がらない、または逆に増えることがあります。特に、借換えの費用は「実行時に一括で支払うもの」と「金利に上乗せされて見えにくいもの」が混在し、見落としやすい点が注意ポイントです。中小企業や個人事業主は、実行月に費用が集中すると資金繰りが詰まることがあるため、総返済額の比較と同時に、支払タイミングを資金繰り表へ反映して確認します。制度や商品条件は変更される可能性があるため、費用は必ず見積書面等の最新情報で確認してください。

手数料・保証料の見方目安

借り換えに伴う代表的な費用は、事務手数料、保証料、印紙税などです。保証会社を使うローンでは保証料が発生し、支払方法が一括か分割か、または金利に上乗せされるかで資金繰りへの影響が変わります。金利上乗せ型は、表面上は費用が見えにくい反面、実質コストとして利息の形で負担が続くため、総返済額の計算に必ず含めます。
具体例として、借換え費用が合計20万円かかり、月々の返済削減が5,000円なら、回収には約40か月が目安になります。残り期間が短い場合は、金利差があっても回収が難しく、借換えメリットが出にくいことがあります。費用は「合計額」と「いつ払うか」をセットで整理し、回収見込みと資金繰りの両面で判断します。

繰上返済・解約費用の注意点

借り換えでは、既存ローンを完済するために繰上返済を行うのが一般的です。このとき、繰上返済手数料や、固定金利型などで途中解約に伴う清算金が発生する場合があります。これらは借換えのメリットを直接削る費用なので、シミュレーションに入れないと判断を誤りやすいです。
また、手続き面でも注意が必要です。完済金額の確定、返済口座からの引落日、担保がある場合の抹消書類の準備などに日数がかかり、借換え実行日がずれることがあります。実行日が遅れると、想定より利息が増える、二重返済期間が発生するなど、資金繰りに影響する可能性があります。借換えを決める前に、既存ローン側の「完済時の費用」と「必要日数」を確認することが重要です。

担保登記など周辺費用チェック

不動産担保ローンなど担保を設定する借換えでは、登記に関する費用と手続きが発生します。代表例は、既存の抵当権の抹消登記と、新しい抵当権の設定登記です。これらには登録免許税や司法書士報酬などが関係し、案件によって金額が変わります。また、登記手続きは即日で終わらないこともあるため、実行スケジュールにも影響します。
さらに、担保を入れると、返済が難しくなった場合に担保処分の可能性が出るため、金利が下がるメリットだけで判断せず、担保提供によるリスクや制約も含めて検討します。借換えシミュレーションでは、周辺費用を「一時費用」として計上し、実行月の資金繰りで支払可能かまで確認しておくと安全です。

1. 担保の有無を確認し、登記が必要か整理する
2. 抹消・設定それぞれの費用の概算を把握する
3. 登記に必要な書類と所要日数を確認する
4. 実行月の資金繰り表に費用を反映し、残高不足がないか確認する

結果の読み方と判断基準

借り換えシミュレーションの結果は、月々の返済額が下がったかどうかだけで判断すると失敗しやすいです。見るべきは、諸費用を含めた総返済額、実行月の一時費用の支払い可否、そして借換え後の資金繰りが安定するかです。特に中小企業や個人事業主は、納税・社会保険・賞与・仕入など大口支出の月があり、月々が軽くなってもその月に残高不足が出るなら実務上は危険です。シミュレーションは「数字の比較」と「資金繰りの比較」をセットで行い、返済負担を軽くしたい目的なのか、総額を減らしたい目的なのかを先に決めて読み解くと、結論がぶれにくくなります。

月々返済と総額の優先基準

優先すべき指標は、借り換えの目的によって変わります。資金繰りが厳しく、当面の支払いを乗り切ることが目的なら、月々返済を下げることの優先度が高くなります。ただし、月々を下げる方法は返済期間の延長になりやすく、総返済額が増える可能性があるため、増えた分を許容できるかを確認します。逆に、家計や経営が安定しており、利息を抑えて総負担を減らしたい場合は、総返済額を優先し、期間短縮や固定金利の検討が中心になります。
具体例として、月々の返済を1万円下げられても、総返済額が30万円増えるなら、資金繰り改善の効果（不足月の解消や仕入資金の確保）が30万円の増加分に見合うかを検討します。資金繰り表で不足月が解消し、遅延や延滞のリスクが下がるなら、総額増でも合理的な場合があります。

変動金利リスクの比較ポイント

変動金利を含む借換えでは、シミュレーション結果は「現時点の金利が続く」という仮定で出ていることが多く、将来の金利上昇を織り込む必要があります。比較のポイントは、金利見直しの頻度、返済額の見直しルール、上限設定の有無などです。これらは商品ごとに違うため、契約前に確認が必要です。
試算の考え方としては、現行金利に加えて、金利が一定幅上がった場合の返済額を追加で計算し、資金繰り表で耐えられるかを見ます。例えば借入残高1,000万円で金利が年1.0%上がると、利息が年間約10万円増える可能性があり、月々の負担も増え得ます。固定費が重い業種や入金サイトが長い事業は影響が出やすいため、余裕のある残高推移になるかを確認することが重要です。

借換え不要の判断目安

借換えが不要または見送りが妥当な目安は、諸費用を回収できるほど利息が減らない、総返済額が増える、リスクが増える割に資金繰りが改善しない、といったケースです。残り期間が短い場合は利息削減余地が小さく、費用負けしやすい傾向があります。また、借換えで月々返済が下がっても、納税月や賞与月の不足が解消しないなら、借換えの目的を達成しにくいです。
さらに、税金・社保の遅れがある、試算表が整っていない、資金使途が曖昧といった状況では、借換えの審査自体が進みにくくなる可能性があります。この場合は、既存の条件変更相談や、支払サイト交渉、固定費の見直しなど、資金繰り改善策を先に進める方が合理的なことがあります。

1. 諸費用を含めても総返済額が下がらない、または増える
2. 回収期間が残り返済期間を上回り、費用回収が難しい
3. 変動金利や担保条件でリスクが増え、資金繰り余裕がない
4. 借換え後も資金繰り表で不足月が残る

中小企業・個人事業主の試算視点

中小企業や個人事業主の借り換えシミュレーションは、金利や総返済額の比較だけでなく「資金繰りが実際に回るか」を重視するのが現実的です。売掛金の入金サイトが長い業種や、季節で売上がぶれる業態では、月々返済が下がっても、納税・社保・賞与・仕入が重なる月に残高不足が起きることがあります。また、借換えで返済を平準化したつもりでも、実行月に手数料や保証料が集中すると一時的に資金が詰まる場合があります。法人は代表者保証や担保条件の変化、個人は信用情報の見られ方や家計支出との兼ね合いも含めて、試算結果を資金繰り表へ落とし込んで確認することが重要です。制度や商品条件は変更される可能性があるため、最終判断は最新条件の確認を前提に進めてください。

資金繰り表への反映ステップ

借り換えの結果は、返済額が減ったかではなく「月次の残高が安定するか」で判断するとぶれにくいです。資金繰り表では、売上計画よりも入金予定と支払予定を優先して置き、借換え後の返済日・返済額・一時費用を反映します。たとえば、借換えで月々返済が2万円下がっても、実行月に手数料10万円が出るなら、その月の残高がマイナスにならないかを先に確認します。資金繰りの谷が残る場合は、返済日の変更、期間の調整、支払サイト交渉などの組み合わせが必要になることがあります。

1. 向こう3〜6か月の入金予定と支払予定を確定し、資金繰り表に配置します。
2. 借換え後の返済日・返済額を入れ、借換え実行月の手数料や保証料など一時費用も同じ月に計上します。
3. 納税・社会保険・賞与・仕入など大口支出の月を置き、残高の谷がどこに出るかを確認します。
4. 不足が出る場合は、返済期間や返済日の調整案を作り、残高がプラスで回る形に再試算します。

税金・社保遅れの影響注意点

税金や社会保険料の遅れがある場合、借り換え審査で不利に働く可能性があります。遅れは資金繰り悪化のサインと受け取られやすく、納付状況の確認が必要になることがあるためです。また、遅れが続くと追加負担（延滞税・延滞金など）が発生し得て、返済計画に影響します。重要なのは、隠すことではなく、未納の内訳と対応状況を整理し、資金繰り表に分納予定を反映して「返済と両立できる形」を示すことです。状況によっては、税務署や年金事務所等への相談を先に進め、分納や猶予の枠組みに沿って履行している事実が説明材料になります。

公庫・保証付きとの比較目安

借り換えの選択肢は、既存借入の借換えだけでなく、公庫融資や信用保証協会の保証付き融資など、枠組みの違う手段も含めて比較すると判断ミスを減らせます。一般に、公庫は中小企業向けの制度が整備されており、民間金融機関とは商品設計や審査の観点が異なる場合があります。保証付き融資は保証料が発生する一方、銀行単独より取り組みやすい場面があるとされます。どれが有利かは、必要時期、資金使途、総コスト、手続きの工程、担保・保証条件で変わるため、同じ前提で並べて比較することが大切です。

まとめ

借り換えシミュレーションは、金利差だけでなく総返済額と諸費用を含めて比較することが重要です。返済方式や返済期間の違いで利息総額が変わり、変動金利は将来の上昇リスクも考慮が必要になります。試算結果は月々の返済だけでなく、資金繰り表に落として不足月が解消するかで判断すると現実的です。中小企業や個人事業主は、税金・社保の状況や審査の見られ方も踏まえ、公庫や保証付きなど代替策も比較しながら、無理のない返済計画と合わせて検討しましょう。