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SESファクタリング完全ガイド!費用相場・手順・リスク対策10選を解説

SESの請求は月末締め・翌月末払などで資金回収が遅れがちです。SESファクタリングは請求書を早期現金化し、資金繰りの変動を平準化できます。

本ガイドでは、費用相場と手数料内訳、二社間/三社間の違い、申込から入金までの手順、譲渡禁止・相殺条項などの法務注意点を客観整理。見積比較と計算例で実務判断を支援します。

 

SES取引の基礎と債権成立

SES(System Engineering Service)は、時間単価で常駐・準常駐の技術サービスを提供する形態で、契約は多くが「準委任契約」(結果の完成ではなく、善管注意義務をもって業務を遂行する契約)です。

売掛金の成立は、月間の役務提供が完了し、タイムシートや業務報告書が依頼側で承認(検収)された時点を基準に整理します。

 

請求は「月末締め・翌月末払」「月末締め・翌々月末払」などのサイトで行われ、ファクタリングではこの確定した売掛債権を対象に資金化します。

債権譲渡禁止特約や相殺条項の有無、二重譲渡の防止、債権の特定(請求番号・金額・期日)が実務の前提です。検収が遅延すると債権成立が遅れ、資金化タイミングも後ろ倒しになります。

そこで、検収基準・承認期限・差戻し手順を文書化し、請求書・明細・承認ログを一体で保存することが資金化の再現性を高めます。

 

論点 整理内容
契約類型 準委任契約が中心(時間×単価)。請負は成果物完成が要件。
成立要件 役務提供の完了+依頼側承認(タイムシート・報告書)で売掛確定。
請求サイト 月末締め/翌月末払・翌々月末払など。サイトが長いほど運転資金負担増。
資金化対象 成立が客観確認できる債権(請求書・承認記録・契約書で特定)。

 

まず決める3点(資金化の前提)
  • 検収の定義と承認期限(タイムシート・報告書の確定日)
  • 譲渡禁止・相殺条項の扱い(要同意/条項修正の要否)
  • 債権特定の方法(請求番号・金額・期日・相手先の一致)

 

準委任契約と検収基準

準委任契約は、成果物の完成を目的とする請負と異なり、委託業務を適切に遂行する義務に重点があります。

SESの売上は「時間×単価」の積み上げが中心で、売掛成立は①当月の稼働が実際に行われた事実、②依頼側による承認(タイムシート・業務報告書・受入記録)が客観に残ること、の二点で確認します。

 

承認の遅延・差戻し・一部否認があると、当月売上からの控除や次月繰越が発生し、ファクタリング対象額も目減りします。

検収の基準は「承認権限者」「締切日」「差戻し理由と再承認手順」を明文化しておくと、争いが減ります。

常駐先の窓口が複数ある場合は、一次承認(現場)→二次承認(購買・経理)→請求承認(支払部門)と段階を分け、タイムスタンプ付きの履歴で残すと後続の資金化が安定します。

 

項目 準委任 請負
成立基準 役務の提供+承認(時間計上) 成果物の完成・検査合格
検収資料 タイムシート、報告書、受入記録 検査成績、納品書、合格通知
金額確定 時間×単価(控除・割増あり) 出来高・出来形・出来高割合

 

検収で起きやすいトラブル
  • 承認権限の不明確さによる差戻し・否認
  • 休暇・残業・深夜割増の計上根拠の不足
  • 稼働率制限・席替え期間の取扱いの未合意

 

請求サイクルと支払サイト

請求サイクルは多くが月次で、月末締め後に請求書を発行し、支払サイトは「翌月末払」「翌々月末払」などが一般的です。サイトが長いほど運転資金の滞留が増えます。

資金負担は概算で「平均月商×(支払サイト日数/30〜60)」で把握できます。例として、月商1,200万円、翌々月末払(約60日)、買取率90%の三社間を想定すると、同時滞留は約2,400万円、即時資金化の上限は約2,160万円です。

 

締め処理の標準化(承認期限の統一、差戻し時の再承認期限、請求発行の定例化)を行うと、資金化の予見性が向上します。

買い手側の支払システム登録(支払先・振込口座・請求コード)を前もって整備すると、初回の遅延を避けられます。

なお、早期支払制度(早期振込割引)とファクタリングを併用する場合は、どちらを優先するか、相殺・重複の扱いを事前に決めておきます。

 

  1. 月末:タイムシート確定・一次承認→二次承認。
  2. 翌月初:請求書・明細・受入記録を発行・送付。
  3. 支払期日:入金照合・差異(控除・相殺)確認。
  4. ファクタリング:成立債権を前倒し資金化、回収後に清算。

 

資金化スピードを上げる工夫
  • 承認締切のカレンダー化(例:月末−3営業日で一次承認)
  • 請求書と明細の電子化・データ連携(差戻し削減)
  • 支払マスター登録の事前完了(初回遅延の回避)

 

対象債権と必要書類

ファクタリングの対象は、成立が客観的に確認できる売掛債権です。SESでは、①基本契約書・注文書(発注書)で業務範囲と単価が明示され、②当月の稼働が実際に行われ、③依頼側の承認が付されたタイムシート・業務報告書等が揃っていることが前提です。

請求書と明細は、請求番号・対象期間・時間数・単価・金額・支払期日・相手先情報が一致している必要があります。

 

反社チェック・KYC、二重譲渡防止(台帳・番号管理)、譲渡禁止特約の扱い(承諾取得や条項修正の要否)も同時に確認します。

派遣契約や請負契約が混在する場合は、債権の発生原因ごとに請求書を分け、対象外の債権(未承認・係争中・相殺予約あり)を除外します。

 

書類 主な内容
基本契約書・注文書 業務範囲、単価、期間、検収・相殺・譲渡条項
タイムシート等 稼働時間、承認者、承認日(履歴付きが望ましい)
請求書・明細 請求番号、対象期間、金額、支払期日、相手先情報
受入記録 業務報告書、受領書、検収合意の記録

 

対象外・要精査になりやすい例
  • 承認未了・差戻し中・一部否認の時間
  • 譲渡禁止・相殺予約が強い契約(要同意・条項修正)
  • 請求書と明細・承認ログの不一致(番号・金額・期日)

 

売掛成立の時点整理

売掛成立の判断は、①役務の提供が完了していること、②依頼側による承認があり金額・期日が確定していること、③相手先に弁済意思・能力が認められること、の三点で行います。

SESでは、当月の稼働完了→承認→請求発行→支払期日の順で進むため、承認がズレると売掛成立も遅れます。

 

成立時点の記録(承認ログ、受入記録、請求発行日)は、ファクタリングの適格性審査でも確認されるため、台帳で一元管理します。

相殺や減額の可能性がある場合は、控除順序と証憑(差異報告・合意書)をセットで保管します。争いを避けるには、成立の「証拠性」を高めることが重要です。

 

  1. 役務提供:当月稼働の完了(勤怠・実績の確定)。
  2. 承認手続:一次承認→二次承認→最終承認(日時・権限者を記録)。
  3. 請求発行:請求番号付与、対象期間・金額・期日の確定。
  4. 成立確認:承認ログ・請求書・受入記録の突合で売掛確定。

 

成立時点の確認チェック
  • 承認日時・承認者・対象期間が請求書と一致しているか
  • 差戻し・減額の合意書やメールを証憑化できているか
  • 相殺・リベート等の控除順序が契約別紙で定義されているか

 

スキーム比較と選定基準

SESの資金化では、二社間/三社間、買取/保証、リコース(償還請求権)有無の組合せでコストと回収確度が変わります。

意思決定の前に、①契約条項(譲渡禁止・相殺・検収期限)、②支払サイト(日数)と売上の季節波動、③売掛先の信用分布(集中・分散)、④社内の承認スピード(証憑整備)を並べ、方式ごとの強み・弱みを具体的に照合します。

 

例えば、検収の遅延や差戻しが多い先は三社間で支払先を切替えたほうが回収のブレが抑えられます。

一方、取引先の関係上、通知が難しい場合は二社間で内部統制を強化し、与信枠や留保金の運用でリスクをコントロールします。

見積は「前倒し日数×料率」「保証の射程」「留保金の充当順序」を同一前提で比較し、実質年率とネット受取額で評価します。

 

観点 二社間(非通知) 三社間(通知)
回収確度 自社回収。関係維持に向くがブレやすい 支払先切替で一本化。延滞時の可視化が高い
費用水準 やや高め(回収リスク上乗せ) 相対的に低め(回収確度の改善)
社内負荷 照合・精算が増える 通知・合意取得の工数が必要
適合例 通知困難・関係配慮・小口多件 与信集中・遅延常習・単価大口

 

二社間/三社間の違い

二社間は、債務者(取引先)に通知せずに自社へ入金される売掛金を前倒し資金化します。回収は自社で行い、入金後にファクタリング会社へ精算します。

メリットは関係性への配慮と導入のしやすさですが、入金遅延や控除(相殺・減額)の検知が遅れると償還負担が発生しやすい点に注意します。

 

三社間は、債権譲渡と支払先変更を相手先へ通知し、回収をファクタリング会社に一本化します。与信枠の実効性が高く、延滞の可視化に優れますが、通知合意の取得や支払マスター変更など初期工数が必要です。

SESでは、請求金額が人月単価に比例し、単価が高い案件ほど延滞の影響が大きいため、主要先に対しては三社間を検討する価値があります。

小口多件・通知が難しい案件は二社間をベースに、期日前リマインドや差異照合のルールで統制を補います。

 

  • 二社間:関係性重視・導入容易/回収ブレ・償還負担に注意
  • 三社間:回収一本化・費用低位傾向/通知・合意の初期工数が必要
  • 併用設計:主要先は三社間、その他は二社間で配分

 

買取/保証とリコース

買取は、売掛債権を譲渡して前倒し資金を受け取る方式です。保証は、回収は自社またはファクタリング会社が行いつつ、信用不履行(倒産・支払不能等)を一定範囲でカバーする保険・保証的な枠組みです。

リコース(償還請求権あり)は、延滞・不払時に利用者が前払金を返す義務があり、料率は抑えやすい一方で資金繰りの逆回転リスクが残ります。

 

ノンリコース(償還請求権なし)は、信用不履行をカバーする代わりに保証料が上乗せされます。留意点は、ノンリコースでも品質・数量・検収などの取引紛争は原則として保証対象外であることです。

SESではタイムシート承認が遅延しやすく、紛争と信用不履行の切り分けが重要です。契約別紙で待機日数(例:期日+90日)や対象外事由(未検収・相殺予約等)を特定し、留保金の充当順序や償還条件を明文化します。

 

用語と射程の注意点
  • 買取率=請求書額面に対する前払割合(例:80〜95%)
  • リコース=延滞・不払時に前払金を返す義務が残る
  • ノンリコース=信用不履行をカバー、取引紛争は原則対象外
  • 対象外事由=未検収・相殺・返品等は保証適用外になりやすい

 

SES特化サービスの確認

SES特化型では、タイムシートの電子承認連携、稼働実績のAPI取込、請求明細フォーマット(プロジェクト・人員別)の対応、小口多件の一括アップロード、差戻し・減額情報の自動フィードバックなど、事務面の負荷を下げる機能が用意される場合があります。

これらは見積の料率に直結しないように見えても、差し戻し率や請求確定までのリードタイムを縮め、実質コスト(実質年率)を下げます。

 

比較時は、単価・人月・控除(中抜け・待機・稼働率制限)を明細単位で扱えるか、承認ログ(権限者・日時)を証憑として扱えるかを確認します。

さらに、支払マスターの登録支援や初回の通知文面テンプレ、相殺・リベートの処理手順のテンプレ化まで用意されていると、初期の立上げが滑らかになります。

 

  • 電子承認連携:承認ログを証憑化し、成立判定を迅速化
  • 明細粒度:プロジェクト・人員別の控除や割増の反映可否
  • 一括処理:小口多件のアップロード・照合の省力化
  • 導入支援:通知テンプレ・支払マスター登録支援の有無

 

与信枠と留保金の扱い

与信枠は「買い手(債務者)ごとに許容される同時滞留の上限」で、財務内容・支払履歴・取引規模・サイト長で決まります。留保金は、前払時に差し引かれ、回収後に精算する残額です。

与信枠の設計は、平均月商×(支払サイト日数/30〜60)を目安に、主要先の集中度と季節変動を織り込みます。

 

例:月商1,500万円、サイト60日、買取率90%、留保金5%の場合、同時滞留は約3,000万円、前払上限は約2,700万円、うち即時受取は2,700万円×(1−留保5%)=約2,565万円となります。

延滞が発生した場合、留保金の充当→不足分の償還→回収継続の順序を契約で特定し、対象外事由(未検収・相殺等)の在庫化を防ぎます。

枠不足は、支払サイト短縮・請求分散・保証併用でリスクウエイトを下げ、枠の拡張を打診します。

 

項目 内容
与信枠 買い手別の同時滞留上限。財務・履歴・サイトで決定
留保金 前払時の差引残。回収後に精算(充当順序を契約で特定)
目安計算 平均月商×(サイト日数/30〜60)で滞留を概算
是正策 サイト短縮・請求分散・保証併用で枠効率を改善

 

選定時に揃える数字
  • 買い手別:月商・サイト・延滞率・集中度
  • 見積別:料率・前倒し日数・留保金・保証射程
  • 実効評価:ネット受取額と実質年率(365日換算)

 

手数料・相場と計算例

SESのファクタリング費用は、①ディスカウント料(前倒し資金の時間価値)②保証料(ノンリコース時の信用カバー)③事務費(計上・照合・精算の処理費)④送金・受取費用(銀行手数料等)で構成されます。

買取率(請求書額面に対する前払割合)は80〜95%の範囲で設計されることが多く、留保金(回収後に精算する差引残)を5〜10%程度置く運用も見られます。

 

料率は「スキーム(二社間/三社間、リコース有無)」「与信(買い手の信用力・集中度)」「サイト(支払期日までの日数)」に依存し、成立証憑(タイムシート承認・受入記録)の確からしさで上下します。

実務評価は、見積の名目料率だけでなく「実質年率(総費用を365日換算)」と「ネット受取額(前払受取−総費用)」で比較することが重要です。

 

費用評価の着眼点(要約)
  • 前提統一:前倒し日数・買取率・留保金・対象外事由
  • 算式の確認:料率×(対象額)×(日数/365)+定額費
  • 二指標評価:実質年率とネット受取額で横並び比較

 

項目 内容(評価の要点)
ディスカウント料 前倒し資金×年率×日数/365(起算日と休日繰延を確認)
保証料 信用不履行カバー分。対象外(未検収・紛争)は除外前提
事務費 計上・照合・精算の定額費。通貨や処理頻度で差
送金費用 発信・中継・受取手数料。区分(OUR/SHA/BEN)を確認

 

ディスカウント料の要因

ディスカウント料は、前倒し対象額と時間(前倒し日数)に比例し、買い手の信用度・取引集中度・サイト長・スキーム(通知有無、リコース有無)・証憑の確実性で水準が決まります。

三社間(通知あり)は回収確度が高く、二社間(非通知)より低位になりやすい一方、通知の合意・支払先変更の工数が必要です。

与信面では、延滞率が高い先や売上集中度が高いポートフォリオは上乗せ要因になります。SESではタイムシート承認・受入記録がディスカウント料に影響するため、承認プロセスの安定化が料率交渉の材料になります。

 

要因 具体例 料率への影響
スキーム 三社間(通知)/二社間(非通知) 通知ありは低位傾向、非通知は上乗せ
与信 買い手の格付・延滞履歴・集中度 格付良好・分散は低下、集中・遅延は上昇
サイト 翌月末/翌々月末などの期日 長いほど上昇(時間価値の増大)
証憑 承認ログ、受入記録の確実性 確度高いほど低下(争いの余地が小)

 

見落としやすい上乗せ要因
  • 差戻し・減額の頻発(承認プロセスの不安定)
  • 契約の相殺条項・譲渡禁止条項の強さ
  • 大型単価の集中(主要2〜3社への依存)

 

保証料・事務費の内訳

ノンリコース運用では、信用不履行(倒産・支払不能等)をカバーする保証料が付加されます。射程は「信用不履行」が中心で、取引紛争(未検収・品質・数量・納期)は原則対象外です。

事務費は、契約・計上・照合・精算・帳票連携に係る定額費で、月額/件単価のいずれかで提示されます。

SES特化の運用では、タイムシート電子承認のAPI連携、明細の一括アップロード、照合自動化が事務費に反映されることがあります。

 

費目 定義・算定 評価ポイント
保証料 信用不履行のカバーに対する料率。対象額×年率×日数/365 待機日数・免責割合・対象外事由(未検収・相殺)
事務費 契約・計上・照合・精算の定額費(月額/件) 処理頻度・データ連携の有無・通貨/言語の数
送金費 発信・中継・受取の各手数料 OUR/SHA/BEN、ショートペイ対策、銀行ルート

 

内訳チェックの勘所
  • 保証の射程:信用不履行のみ/紛争時停止の条件
  • 事務費の範囲:照合・差異調整・再発行の含否
  • 送金区分と被仕向費用:受取側控除の想定値

 

前倒し日数と実質年率

実質年率は、総費用を前倒し受取額で割り、365日換算した指標です。名目料率が低く見えても、前倒し期間が長いと実質年率は上がります。計算手順は次のとおりです。

 

  1. 前払金額=請求額×買取率。
  2. 留保差引受取=前払金額×(1−留保率)。
  3. 費用合計=〔ディスカウント料(前払金額×年率×日数/365)+保証料(対象額×年率×日数/365)〕+事務費+送金費。
  4. 実質年率=(費用合計÷留保差引受取)×(365÷前倒し日数)。

 

【計算例】
請求額12,000,000円、買取率90%、留保5%、前倒し45日、ディスカウント年率8.0%、保証料年率2.0%、事務5,500円、送金3,300円。

・前払金額=10,800,000円/留保差引受取=10,260,000円
・ディスカウント料=10,800,000×8.0%×45/365≒106,119円
・保証料(例:請求額基準)=12,000,000×2.0%×45/365≒29,589円
・総費用=106,119+29,589+5,500+3,300=144,508円
・実質年率≒(144,508÷10,260,000)×(365÷45)≒約11.4%

 

期間感応度(参考)
  • 前倒し30日:他条件同一なら実質年率は低下
  • 前倒し60日:費用は増加、実質年率も上昇
  • 留保率上昇:分母(受取額)が減り、年率は悪化

 

見積比較と相場乖離

見積比較は、前提条件を完全にそろえることが前提です。特に「前倒し起算日」「休日繰延」「対象額(額面・前払金額のどちらに乗算か)」「保証の待機日数」「留保金の充当順序」「送金区分(OUR/SHA/BEN)」が異なると、名目料率だけでは正しく比較できません。

相場から乖離するケースは、与信の集中・延滞履歴・長期サイト・非通知・未検収比率の高さ等が背景になりがちです。必ず「実質年率」と「ネット受取額」で横並び評価を行い、差分の要因を特定します。

 

比較軸 A社(例) B社(例)
起算日 請求日翌日 承認日翌日(実質+3日)
対象額 前払金額ベース 額面ベース(保証料)
待機日数 90日 120日
送金区分 OUR SHA

 

【同一条件での概算比較例】
請求額12,000,000円、買取率90%、留保5%、前倒し45日。

・A社:ディスカウント8.0%、保証2.0%、事務5,500円、送金3,300円 → 実質年率約11.4%、ネット受取=10,260,000−144,508=10,115,492円。

・B社:ディスカウント7.0%、保証3.0%、事務0円、送金5,500円 → 総費用≒〔10,800,000×7.0%×45/365〕+〔12,000,000×3.0%×45/365〕+5,500≒92,877+44,384+5,500=142,761円、実質年率≒(142,761÷10,260,000)×(365÷45)≒約11.3%、ネット受取=10,260,000−142,761=10,117,239円。

 

名目料率だけでは優劣が逆転し得るため、最終判断はネット受取と条項(待機日数・対象外事由)の総合で行います。

 

チェックリスト(最終比較用)
  • 算式の一致(対象額・起算日・日数・休日繰延)
  • 保証射程(信用不履行の定義・待機日数・免責)
  • 留保金の充当順序・償還条件・延滞閾値
  • 実質年率・ネット受取額・運用負荷の三点セット

 

申込から入金までの手順

SESの請求債権を資金化する流れは、①申込・事前審査、②与信設定、③契約締結・通知整備、④前払実行(資金化)、⑤回収照合・清算、⑥延滞・差異の是正という段階で進みます。

初回はKYC(本人確認)や取引検証のため書類が多く、与信枠(買い手ごとの同時滞留上限)の設定に時間を要します。

 

二社間(非通知)と三社間(通知)で必要書類と社内作業が異なり、三社間では支払先変更通知と買い手の合意を要する点が実務の分岐です。

前倒し日数(資金化から回収までの日数)と買取率(請求書額面に対する前払割合)、留保金(回収後に精算する差引残)の設計が、費用とキャッシュフローの両方に影響します。

入金後は差異(相殺・控除・減額)を突合し、契約の精算順序に沿って清算します。延滞が発生した場合は、待機日数や保証の射程(信用不履行の定義)に従い、留保金の充当、償還、回収継続のいずれかで処理します。

 

標準フロー(全体像)
  • 申込・事前審査 → 与信設定 → 契約・通知 → 前払実行
  • 回収照合・清算 → 延滞・差異の是正 → 運用の定例化
  • 要点:前倒し日数・留保金・保証射程・起算日の統一

 

申込審査と与信設定

申込時は、会社情報、登記事項、反社チェック、主要取引先一覧、売上推移、請求と承認のワークフロー(タイムシート・業務報告書の承認権限と期限)を提出します。

与信(信用供与の可否・範囲)は、買い手(債務者)単位で審査され、同時滞留の上限として与信枠が設定されます。

 

与信枠は「平均月商×(支払サイト日数/30〜60)」を目安に、集中度(上位数社への依存)や延滞履歴、検収の安定度で調整されます。

SES特有の論点は、承認遅延・差戻しが費用と枠効率に直結する点で、承認ログ(日時・権限者)の証憑性が高いほど評価は安定します。二社間の場合は自社回収力が、三社間では買い手の合意取得力が重点確認事項です。

 

提出・確認 内容(例)
基本情報 登記事項証明書、印鑑証明書、定款、代表者ID、反社チェック結果
取引実績 主要取引先別の売上・入金実績、延滞率、集中度
証憑フロー タイムシート承認の権限・期限、差戻しプロセス、請求発行手順
枠設定 買い手別の与信枠、対象外事由(未検収・相殺予約)

 

審査で減点されやすい点
  • 承認期限が形骸化し差戻し率が高い
  • 上位2〜3社に売上が過度集中
  • 譲渡禁止・相殺条項が強く回収一本化が困難

 

契約締結と通知整備

審査後は、基本契約書・個別契約書で対象債権(発生原因・期間・金額・期日)を特定し、譲渡禁止・相殺・検収・停止条件・保証の射程(信用不履行の定義・待機日数)を明文化します。

二社間では自社入金・後精算、三社間では買い手に支払先変更を通知して回収を一本化します。対抗要件の整備として、確定日付のある債権譲渡通知・承諾、または債権譲渡登記(債権譲渡登記事項証明書の取得)を準備します。

 

支払マスターの登録(支払先口座・請求コード)や請求フォーマットの合意、OUR/SHA/BENの費用区分の明記も初回遅延防止に有効です。

通知文面には請求番号・金額・期日・通貨・支払先口座を記載し、期日前に小口でテスト送金を行うと運用が安定します。

 

  1. 契約締結:基本契約・個別契約で対象範囲・除外事由を定義。
  2. 対抗要件:確定日付通知/承諾、または債権譲渡登記を整備。
  3. 通知実務:支払先変更、費用区分(OUR等)、請求コードの登録。
  4. テスト送金:期日前に検証し、差戻し要因を除去。

 

通知・登記の実務ポイント
  • 通知は確定日付を付与、対象債権を請求番号で特定
  • 登記は二重譲渡・差押え対抗のための公示手段
  • 買い手の承認経路(法務・経理)と期日を事前確認

 

回収照合と清算処理

入金時は、金額・期日・請求番号・通貨を突合し、差異があれば相殺・値引・遅延控除等の根拠資料を収集します。

三社間では買い手→ファクタリング会社→自社の順で入金が流れ、留保金の範囲で差額を精算します。

二社間では自社入金→ファクタリング会社への精算という順序で、入金遅延・不足の検知が遅れるリスクがあるため、期日前リマインド(−7日、−1日)と入金当日の自動照合を定例化します。

 

清算は契約の充当順序(費用→利息相当→元本→留保金)に従い、仕訳(前払金・割引料・保証料・送金費用)を即日反映します。

通貨差がある場合は為替差益・差損の計上基準を経理規程に合わせ、月次で「前払残高/留保金/延滞一覧」を突合します。

 

照合項目 内容 差異時の対応
金額 請求額と入金額の一致 相殺・値引の合意書・明細を取得
期日 支払期日と着金日の一致 遅延理由と利息・違約の扱いを確認
請求番号 請求番号・対象期間の一致 誤送金・重複入金の振替処理
通貨 請求通貨と受取通貨の一致 為替差と中継控除(ショートペイ)の検証

 

清算でのつまずき例
  • 留保金の充当順序が曖昧で精算が遅延
  • SHA送金で中継控除を見落とし差額が発生
  • 請求番号の不一致で照合に時間を要する

 

延滞・差異の是正手順

延滞・差異が生じた場合は、原因を「信用不履行(資金繰り断絶・倒産等)」「取引紛争(未検収・品質・数量・納期等)」「事務差異(請求・通知・口座情報の不整合)」に一次区分し、契約の待機日数・対象外事由に基づき処理します。

ノンリコース(償還請求権なし)の保証は通常、信用不履行に限定され、紛争は原則対象外です。三社間では延滞の可視化が容易で、留保金の充当→不足分の償還→保証手続の順に進みます。

二社間では自社回収のため、期日前リマインドと期日超の即日エスカレーションが重要です。是正の最短経路は、証憑の整備と合意形成の迅速化にあります。

 

  1. 原因特定:信用・紛争・事務の三区分で切り分け。
  2. 証憑収集:承認ログ、差額明細、相殺合意、配送・検収記録。
  3. 暫定処理:留保金の充当、差額請求、支払先・請求の訂正。
  4. 最終処理:償還・回収継続・保証請求のいずれかを選択。

 

是正の実務ポイント
  • 待機日数・延滞閾値・対象外事由を別紙で特定
  • 小口テスト送金と再発防止の手順書化
  • 月次の「延滞・相殺・差額」レビューと枠再配分

 

リスク対応と法務・運用

SESのファクタリングでは、契約条項(譲渡禁止・相殺)、紛争発生時の停止条件、送金・規制(AML/CFT・反社チェック)、そして社内統制と証憑管理が主要リスクの柱になります。

まず、譲渡禁止特約(債権を第三者に譲渡できない旨の条項)や相殺条項(買い手が反対債権で差し引く権利)は、資金化の可否や留保金の設計に直結します。

 

次に、クレーム(品質・数量・役務内容)発生時は、検収の有無と係争範囲を切り分け、支払停止の条件や再承認の手順を契約別紙で明記します。送金面では、入金口座の登録・名義・手数料区分の整合が差額発生を抑えます。

最後に、内部統制(職務分掌・承認権限・ログ保存)と証憑の改ざん防止が、審査・監査・回収の全段で有効に働きます。

 

リスク対応の骨子(先に決めること)
  • 譲渡禁止・相殺条項の扱い(同意・条項調整・対象外の線引)
  • 紛争時の停止条件・再承認手順・証憑の提出期限
  • 送金情報・費用区分・入金照合の標準フロー
  • 職務分掌・承認ログ・保存基準(版管理・アクセス権限)

 

譲渡禁止・相殺条項の確認

譲渡禁止特約は、債権を第三者に譲渡しない取り決めです。特約が強い契約では、原則として買い手の承諾や条項修正が必要になり、二社間より三社間(通知)の方が運用しやすい場合があります。

相殺条項は、買い手がリベート・遅延損害金・別取引の債権などで差し引ける規定で、実務では「相殺予約」「控除順序」「係争時の扱い」を明確にします。

資金化の前提として、対象外事由(未検収・係争中・相殺予約あり)を別紙で列挙し、留保金で吸収する範囲と、償還・回収継続の切替基準を定義します。

 

論点 確認事項(実務のポイント)
譲渡禁止 承諾要否、例外条項の有無、通知・登記の要否と手順
相殺条項 相殺可能範囲、予約の有無、控除順序、係争時の扱い
対象外 未検収・差戻し中・一部否認・相殺予定の扱いを別紙で明記

 

条項でつまずく典型例
  • 譲渡禁止の承諾未取得で入金が買い手口座に留まる
  • 相殺予約の想定不足で留保金を超える差額が発生
  • 控除順序不明確で精算が長期化し償還が先行

 

クレーム時の停止条件

クレーム発生時は、①検収の有無、②係争範囲(時間・金額・期間)、③再実施・値引・返品のいずれで解決するか、を最初に確定します。

停止条件とは、合理的な係争が存在する間、支払いを一時停止できる取り決めであり、発動要件(証憑・期限)と解除要件(再承認・合意)が必要です。

 

SESでは、タイムシートの差戻しや稼働率の否認が起点になりやすく、停止のまま長期化すると保証の対象外(信用不履行ではない取引紛争)となります。

したがって、受付窓口・回答期限・再承認のプロセスを定め、証拠(承認ログ・差異報告・合意書)を確定日付のある形で保全します。

 

  • 受付→一次区分(紛争/事務)→時限付き回答→再承認
  • 停止発動の要件(必要資料・期限)と解除条件の明記
  • 清算への影響(留保金の充当順序・差額請求)を定義

 

停止条件の設計ヒント
  • 係争の対象金額のみ停止し、非係争部分は支払継続
  • 再承認の期限(営業◯日)と責任部署を明記
  • 差戻し率が高い先は三社間へ切替を検討

 

為替・送金と規制対応

国内SESは日本円での振込が一般的ですが、外資系・海外拠点経由の支払いでは外貨や中継銀行を経由することがあります。

実務では、入金口座名義・支払先コード・請求番号・費用区分(送金手数料の負担)が一致しているかを確認し、ショートペイ(中継銀行控除などによる不足)を防ぎます。

 

規制面では、反社会的勢力の排除、AML/CFT(マネロン・テロ資金供与対策)に基づくKYC、制裁・外為関連のスクリーニングを定例化します。

外国送金を伴う場合は、送金ルート・取引当事者・役務内容が一貫しているか、請求・承認・契約の証憑で裏づけます。

 

項目 確認ポイント 是正の例
送金情報 口座名義・支払コード・請求番号の一致 マスター更新、テスト送金で事前検証
手数料 区分(OUR/SHA/BEN)と差額の想定 請求書へ明記、端数上乗せ、差額請求フロー
規制対応 KYC・制裁・反社・外為のスクリーニング 定期レビュー、ヒット時の停止・再審査手順

 

差額・送金トラブルの回避
  • 期日前の小口テスト送金で経路・名義を確認
  • 入金当日の自動照合で請求番号の不一致を検知
  • 中継銀行控除は見積段階で想定し、請求に反映

 

内部統制と証憑管理

内部統制の目的は、資金化の再現性と回収の確実性を高めることです。職務分掌を「申請(営業)」「承認(管理)」「入金照合(経理)」で分離し、与信超過・延滞・差額発生時の自動エスカレーションを設定します。

証憑は、契約・注文書・タイムシート承認ログ・請求書・差異報告・合意書・入金エビデンスを紐付けて保存し、版管理・アクセス権限・改ざん防止を運用に組み込むと監査・審査の通過率が向上します。

月次で「前払残高・留保金・延滞・相殺差額」の突合表を作成し、翌月の枠配分(主要先の三社間化、サイト短縮の交渉)に反映させます。

 

  • 職務分掌:申請/承認/照合の分離と代行者の指定
  • 台帳管理:請求番号・対象期間・期日・与信枠残の一元化
  • 保存基準:証憑の関連付け・版管理・アクセス制御

 

運用ドキュメントの必須セット
  • 与信ポリシー(枠・対象外事由・停止条件)
  • 請求・承認・通知・清算の標準手順書
  • 延滞・差額時のエスカレーションと是正期日

 

まとめ

SESの債権は検収・タイムシート確定で成立します。これを前提に、スキーム選定(2社/3社、リコース有無)、費用の算式確認、手順の標準化、法務・内部統制の整備が要点です。

次の一歩は、①必要書類の洗い出し、②譲渡禁止・相殺条項の確認、③複数社での見積比較、④期日管理表の作成と与信枠の可視化です。実務に落とし込み、ムリ・ムダのない資金化を実現しましょう。