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ファクタリングと資産担保融資の違いとは?仕組み・審査・コスト・使い分け徹底解説

「ファクタリング」と「資産担保融資(ABL)」は、どちらも企業の資金調達手段として耳にするものの、仕組みやリスクが分かりにくいと感じる方は多いです。本記事では、売掛債権を売却して現金化するファクタリングと、売掛債権・在庫・不動産などを担保に融資を受ける資産担保融資の違いを、仕組み・審査・コスト・会計処理の観点から整理します。

中小企業・個人事業主が、自社の資金ニーズや担保状況に応じて、どの方法をどう使い分けるかを検討するための基礎資料として活用できる内容です。

 

ファクタリングと資産担保融資の基本

ファクタリングと資産担保融資(ABL:Asset Based Lending)は、どちらも事業の資金繰りを目的とした手段ですが、法的な位置付けや会計処理、リスクの持ち方が大きく異なります。

ファクタリングは、利用者が保有する売掛金(売掛債権)をファクタリング会社に売却し、期日前に現金化する取引です。

 

一方、資産担保融資は、売掛金や在庫、機械設備、不動産などを担保として差し入れ、銀行やノンバンクから融資を受ける手法です。

実務的には、ファクタリングは「債権の売買」、資産担保融資は「金銭の貸付け」が基本構造になります。

そのため、資産担保融資では貸借対照表に借入金などの負債が計上される一方、ファクタリングでは条件によって売掛金が消滅(譲渡)し、手数料を費用として処理するケースが多いなど、決算書への影響が異なります。

 

資金調達コストの考え方も違い、資産担保融資では金利(年率◯%)と各種手数料、ファクタリングでは手数料率(請求書額に対する%)と前倒し日数から実質コストを見ていくことになります。

中小企業や個人事業主がこれらを検討する際は、「負債として残したいのか」「売掛金をオフバランス化したいのか」「担保に差し入れられる資産がどの程度あるか」といった観点で整理しておくと、後続の比較がしやすくなります。

 

項目 ファクタリングと資産担保融資の違い(概要)
基本構造 ファクタリング:売掛債権の売買/資産担保融資:資産を担保にした金銭の貸付け
対象 ファクタリング:売掛債権が中心/資産担保融資:売掛債権・在庫・機械設備・不動産など
会計上の位置付け ファクタリング:条件によっては売掛金の消滅+手数料の費用計上/資産担保融資:借入金等の負債計上+利息・手数料の費用計上
主な利用目的 ファクタリング:短期の資金繰り改善・売掛金の早期回収/資産担保融資:中長期の運転資金・設備資金など

 

ファクタリングの仕組みと資金化の流れ

ファクタリングは、売掛金(請求書にもとづく債権)をファクタリング会社に売却し、支払期日前に現金化するスキームです。

利用者は、取引先に請求した代金を「将来入金される権利」として保有していますが、支払サイトが長い場合には、その間の仕入・外注費・人件費などの支払いに支障が出ることがあります。

 

そこで、その売掛金をファクタリング会社に譲渡し、手数料を差し引いた金額を早期に受け取ることで、資金繰りを調整します。

典型的な流れは、申込→審査→契約(基本契約書・個別契約書)→債権譲渡の通知・登記(必要に応じて)→資金入金→取引先からの支払い、という順序です。

 

二社間ファクタリングでは、売掛先に通知せずに利用者とファクタリング会社だけで完結する一方、三社間ファクタリングでは、売掛先にも債権譲渡を通知し、売掛先からファクタリング会社へ直接支払ってもらう形を取ります。

簡単な計算例として、請求書額1,000万円、手数料率3%、支払期日前30日で資金化する場合、受け取る金額(買取率)は97%で970万円、手数料は30万円となります(前提:請求書額1,000万円、手数料率3%、買取率97%)。

この30万円を30日分の資金調達コストと考え、他の調達手段(短期借入など)と比較して判断するイメージになります。

 

ファクタリング利用の基本ステップ
  • 売掛金が発生している取引(請求書・契約書など)を整理する
  • ファクタリング会社へ申込・必要書類(請求書・通帳など)を提出する
  • 審査結果にもとづき、手数料率・買取金額・入金日を確認して契約を締結する
  • ファクタリング会社から入金を受け、後日売掛先がファクタリング会社に支払う

 

資産担保融資の概要と対象資産の種類

資産担保融資(ABL:Asset Based Lending)は、企業が保有するさまざまな資産を担保として差し入れ、その価値をもとに資金を借り入れる手法です。

担保となる資産には、売掛債権だけでなく、在庫(商品・原材料)、機械設備、車両、不動産などが含まれることが一般的で、金融機関はこれらの資産価値や換金性を評価したうえで、融資金額(貸出上限)を設定します。

 

たとえば、売掛債権を担保にしたABLでは、売掛債権残高の一定割合(例:70〜80%程度)を上限として融資枠を設定し、資金需要に応じて借入・返済を繰り返す運転資金ラインとして利用することがあります。

在庫を担保とする場合には、商品性や回転率、保管状況なども評価の対象となり、換金しやすい在庫ほど高い掛け目(担保評価の割合)が適用される傾向があります。

 

不動産担保融資も広い意味では資産担保融資の一種であり、土地・建物などを担保として差し入れ、評価額の一定割合まで融資を受ける形になります。

ただし、不動産は評価額の変動や売却に要する時間などを考慮する必要があるため、売掛債権・在庫とは異なる審査軸になります。

中小企業・個人事業主にとっては、「自社にどのような資産があり、それぞれどこまで担保として評価され得るか」を把握しておくことが、ABLを検討するうえでの第一歩になります。

 

資産担保融資で担保にされやすい主な資産
  • 売掛債権:回収実績のある取引先への売掛金
  • 在庫:商品・原材料など、換金性や回転率が確認できる棚卸資産
  • 機械設備・車両:稼働状況や耐用年数が把握できる設備資産
  • 不動産:土地・建物など、評価額と権利関係が明確な資産

 

融資と債権売却の会計処理の違い

資産担保融資とファクタリングは、資金の流れだけを見ると似ている場面もありますが、会計処理の考え方は大きく異なります。

資産担保融資はあくまで「借入」ですので、会社の貸借対照表には借入金などの負債が計上され、利息や手数料は費用として処理されます。

 

一方、ファクタリングは売掛債権の売却(譲渡)として行われるため、一定の条件を満たす場合には売掛金が帳簿から消滅し、その差額である手数料部分が費用として認識されます。

ただし、ファクタリングであっても、契約条件によって会計処理が変わり得る点には注意が必要です。

 

たとえば、売掛先の不払い時に利用者が全額を買い戻す義務を負っている場合や、リスク・経済価値の多くが利用者側に残っている場合には、会計上「借入」と同様に扱われ、売掛金は残したまま「借入金」などを計上する必要が生じるケースもあります。

実務では、契約条件と会計基準(企業会計基準など)を踏まえて判断します。

資金調達手段を比較する際には、「キャッシュフローがどう動くか」だけでなく、「貸借対照表や損益計算書にどのような形で影響するか」を押さえておくことが、金融機関とのコミュニケーションや将来の融資打診を有利に進めるうえでも重要です。

 

区分 会計処理のイメージ
資産担保融資 借入金などの負債を計上し、利息・手数料を費用として計上。担保資産(売掛金・在庫・不動産など)は原則として貸借対照表に残る。
ファクタリング(リスク移転あり) 売掛金を消滅させ、受け取った金額を現金として計上。売掛金額と受取額の差額(手数料)を費用として計上。
ファクタリング(リスク移転が不十分な場合) 売掛金は残したまま、「借入金」等として負債を計上する扱いとなる場合がある(契約条件・会計基準による)。

 

会計処理の違いを見るときの注意ポイント
  • 資産担保融資は基本的に負債を増やす取引であることを意識する
  • ファクタリングは条件次第で「売却」と「実質的な借入」に分かれ得る
  • 財務指標(自己資本比率・借入金依存度など)への影響も併せて確認する
  • 判断が難しい場合は、公認会計士・税理士など専門家に相談する

 

資産担保融資(ABL)の特徴と活用場面

資産担保融資(ABL:Asset Based Lending)は、売掛債権や在庫などの流動資産に加え、機械設備・車両・不動産など、事業に紐づく資産を担保として評価し、その範囲内で融資を行う手法です。

従来の融資が決算書や担保不動産、個人保証を重視してきたのに対し、ABLは「事業が生み出している資産そのもの」に着目する点が特徴とされています。

 

経済産業省や日本銀行の資料では、ABLを「在庫や売掛債権、機械設備等の事業性資産を活用し、不動産担保や保証人への過度な依存からの脱却を促す金融手法」と位置づけており、中小企業の資金調達手段の多様化に資するものとして紹介しています。

また、全国の信用保証協会では「流動資産担保融資保証制度(ABL保証)」を整備し、売掛債権や在庫を担保とする融資を後押しする枠組みも用意されています。

 

活用場面としては、売上拡大に伴う運転資金の増加、仕入・製造コストが先行するビジネスモデル、季節変動の大きい業種、事業再生局面での資金繰り改善などが典型です。

特に、不動産担保や代表者保証に頼りにくい企業でも、売掛債権や在庫が一定規模あれば、それらを担保として融資枠を確保できる可能性があります。

一方で、担保資産の状況を継続的にモニタリングし、在庫や売掛債権の管理水準を保つことが前提になるため、「資金繰りと同時に管理体制の強化も求められる融資手法」という性格も持ちます。

 

観点 資産担保融資(ABL)の主な特徴
担保資産 売掛債権・在庫・機械設備・車両・不動産など、事業に紐づく資産を対象
目的 運転資金・成長資金・事業再生など、中小企業の多様な資金ニーズに対応
メリット 不動産や個人保証に依存しにくく、事業性資産を活かして融資枠を確保できる
留意点 担保資産の評価・モニタリングが前提となり、在庫・売掛債権管理の体制整備が必要

 

売掛債権・動産・不動産を担保にする

ABLで担保とされる資産は、大きく「売掛債権」「動産(在庫・機械設備等)」「不動産」に分けられます。

全国銀行協会の解説や各種研究資料では、「売掛債権や在庫といった流動資産を包括的に担保にして運転資金を融資する手法」として紹介されており、不動産を中心とする従来の担保とは異なる資産を活用できる点が特徴とされています。

 

売掛債権担保型のABLでは、企業が取引先に対して持つ売掛債権残高を定期的に報告し、その一定割合を上限として融資枠を設定します。

金融機関は、売掛先の信用力や入金実績、ダイリューション(返品・値引き等による債権減少)の状況を確認しながら、担保価値を評価します。

 

動産担保型では、在庫や原材料、機械設備などが対象となります。経済産業省の資料では、日本では在庫・売掛債権を対象としたABLが中心であり、動産担保管理システムや鑑定を活用して担保評価を行う事例が紹介されています。

不動産担保融資も広義にはABLに含まれますが、実務上は「流動資産を担保とするABL」と区別して議論されることが多く、不動産は別枠で評価されるケースが一般的です。

 

担保設定の方法としては、動産・債権譲渡担保、根抵当権、集合動産譲渡担保などが用いられます。

いずれの場合も、権利関係を明確にし、必要に応じて登記等の対抗要件を備えることが、金融機関にとっての債権保全の前提となります。

 

ABLで担保にされやすい資産のポイント
  • 売掛債権:回収実績があり、取引先の信用力が確認できるもの
  • 在庫・原材料:市場性・回転率・保管状況が把握できる棚卸資産
  • 機械設備・車両:稼働状況や耐用年数が明確な事業用資産
  • 不動産:評価額と権利関係が整理されている土地・建物

 

ABLの審査ポイントと金利水準

ABLの審査では、決算書だけでなく、担保となる資産の内容・価値・管理状況が重視されます。

経済産業省や日本銀行の資料では、「売掛債権・在庫・機械設備等の事業収益資産の実態を把握し、モニタリングすることが前提」とされており、定期的な在庫報告や売掛債権の残高報告を条件とするスキームが紹介されています。

 

具体的な審査ポイントとしては、①担保資産の種類・市場性(換金しやすさ)、②売掛先の信用力や入金実績、③在庫の回転率や陳腐化リスク、④企業の事業計画やキャッシュフロー、⑤担保管理体制(在庫管理・売掛管理の仕組み)などが挙げられます。

特に、売掛債権・在庫を担保とするABLでは、定期的な残高確認や現場確認を通じて担保価値をモニタリングすることが強調されています。

 

金利水準については、調査結果によれば、「ABLは従来の銀行借入と比べて同等またはやや低い水準と評価された」とする研究もありますが、実際の金利は金融機関・保証制度の有無・担保資産の内容・企業の信用力などにより個別に設定されます。

また、日本銀行がABLを対象とした資金供給制度(ABL特則)を設け、金融機関に対して政策金利での長期資金供給を行った経緯もあり、こうした仕組みが金利水準の下支えに寄与したとされています。

利用者側としては、提示された金利だけでなく、保証料・担保評価費用・登記費用などの諸費用を含めた実質的な調達コストを把握し、他の融資手段やファクタリングとの比較を行うことが重要です。

 

ABL審査・金利を見るときのチェックポイント
  • 担保資産の内容(売掛債権・在庫・設備など)と、その管理体制が整っているか
  • 売掛先の信用力や在庫の回転率など、担保価値に関わる指標を説明できるか
  • 金利だけでなく、保証料・評価費用・登記費用などを含めた総コストを把握する
  • 提示条件を、通常の事業性融資やファクタリングの条件と比較して検討する

 

ABLが向いている業種と資金ニーズ

ABLは、「売掛債権や在庫などの事業性資産が一定規模あり、その管理状況が把握できる企業」に向いているとされています。

経済産業省や各種調査では、製造業・卸売業・小売業・物流業など、売掛債権や在庫がバランスシート上で大きな割合を占める業種が典型的な対象として挙げられています。

 

資金ニーズとしては、①売上拡大局面で運転資金が膨らむケース、②季節要因で在庫や売掛が一時的に増える業種(季節商品の製造・販売など)、③事業再生や構造改革の過程で、既存の不動産担保では十分な融資が受けにくいケースなどが想定されています。

中小企業基盤整備機構の資料や研究レポートでも、「売上も利益も出ているが、売掛債権や在庫に資金が寝てしまい手元資金が不足している企業」にとって、ABLが有力な選択肢になり得るとされています。

 

一方で、売掛債権や在庫が少ない業種(例:一部のサービス業や人的サービス中心のビジネス)では、ABLよりも無担保融資やファクタリングなど別の手段が適している場合もあります。

また、在庫管理や売掛管理の体制が整っていない企業では、ABLを導入する過程で管理体制の見直しが必要となるため、社内リソースとのバランスを考える必要があります。

 

ABLが特に検討しやすい業種・ニーズの例
  • 製造業・卸売業・小売業など、売掛債権や在庫が多い業種
  • 繁忙期と閑散期で在庫・売掛残高が大きく変動するビジネス
  • 不動産担保に乏しいが、事業性資産は充実している中小企業
  • 事業再生や成長投資の局面で、運転資金ラインを柔軟に確保したい企業

 

ファクタリングと資産担保融資の比較

ファクタリングと資産担保融資(ABL)は、どちらも事業のキャッシュフローを補う手段ですが、「スピード」「コスト」「調達可能額」「信用力の評価軸」「決算書への影響」が大きく異なります。

ファクタリングは、既に発生している売掛債権を売却して現金化するため、審査対象が「売掛先の信用力」と「債権の実在性」に比較的集中しやすい一方、ABLは売掛債権・在庫・設備・不動産など広い資産を担保に取り、会社全体の事業性も含めて総合的に評価する傾向があります。

 

資金調達のスピードという点では、既に売掛債権が揃っているファクタリングの方が、少額・短期ニーズに対して迅速に対応しやすい傾向があります。

一方、ABLは、担保資産の評価や契約書作成に一定の時間を要するものの、融資枠として設定できれば、継続的に利用しやすい運転資金ラインになり得ます。

また、コスト面では、ファクタリングは期間あたりの実質コストが高くなりやすいのに対し、ABLは金利ベースで比較的抑えられることが多いなど、それぞれの特徴を踏まえた検討が必要です。

 

比較項目 ファクタリングと資産担保融資の違い(概要)
資金化スピード ファクタリング:売掛債権があれば比較的短期間で資金化しやすい/ABL:担保評価・契約整備に一定の時間が必要
コスト構造 ファクタリング:手数料率(%)を中心に見る/ABL:金利+保証料・担保評価費用などを総合的に見る
調達可能額 ファクタリング:対象売掛債権の範囲内/ABL:売掛債権・在庫・設備・不動産などを合算した担保価値の範囲内
財務への影響 ファクタリング:条件によっては売掛金のオフバランス化/ABL:借入金として負債計上

 

スピード・コスト・調達可能額の違い

スピードの観点では、ファクタリングは「対象となる売掛債権が既に存在していること」が前提となるため、必要書類(請求書・取引契約書・通帳明細など)が揃っていれば、審査から入金までが比較的短期間で完了しやすい手法です。

特に、少額・短期の資金需要や、特定の案件だけを早期に資金化したい場合には、個々の請求書単位で柔軟に対応できる点がメリットになります。

 

一方、資産担保融資(ABL)は、注目する資産が売掛債権だけでなく在庫や設備、不動産にまで広がるため、初期導入時には担保評価や契約スキームの設計に一定の時間を要することが一般的です。

ただし、いったん融資枠が設定されれば、その枠の範囲内で継続的に借入・返済を行う運転資金ラインとして利用でき、長期的な視点では「使い慣れるほど運用しやすくなる」という側面もあります。

 

コスト面では、ファクタリングは「請求書額×手数料率」で一括の手数料が発生するため、短期で前倒しするほど年率換算した実質コストが高く見えやすくなります。

例えば、1,000万円の売掛債権を手数料率3%で30日前倒しする場合、30万円を30日分のコストとして見ることになり、年換算すると高い割合になります。

 

これに対し、ABLは金利(年率)をベースに、保証料や担保評価費用などを加味して総コストを考えるのが一般的で、期間が長くても相対的にコストを抑えやすいケースが多くなります。

調達可能額の観点では、ファクタリングはあくまで対象となる売掛債権の範囲内での資金化に限定されますが、ABLは売掛債権・在庫・設備・不動産など複数の資産を組み合わせて担保価値を算定できるため、条件が整えばより大きな枠を確保できる可能性があります。

 

スピード・コスト・金額を比較するときのポイント
  • 「今すぐ必要な金額」と「今後も継続して必要な金額」を分けて考える
  • ファクタリングは短期の資金ギャップ解消向き、ABLは中長期の運転資金ライン向きと整理する
  • 手数料率(%)と金利(年率)を同列で見ず、それぞれ実質コストを概算して比較する
  • 自社の保有資産(売掛・在庫・設備・不動産)の量と質から、現実的な調達規模を想定する

 

信用力が低い場合の利用しやすさ

企業や個人事業主の信用力が十分でない場合、「どの手段が利用しやすいか」は重要な検討ポイントです。

ファクタリングは、基本的に売掛先の信用力と売掛債権の実在性・回収可能性を重視するため、利用者側が新設法人であったり、直近決算が赤字であったりしても、売掛先が信用力の高い企業であれば、個別に利用が認められる余地があります。

 

これは、リスクの主な焦点が「利用者」ではなく「売掛先」に置かれるためです。

一方、資産担保融資(ABL)も、従来の融資よりは決算数字だけに依存しない融資手法として位置付けられていますが、担保となる資産の評価に加えて、事業継続性や返済能力を総合的に見る点は変わりません。

 

売掛債権・在庫がある程度あっても、継続的な赤字や債務超過が続いている場合、融資枠が限定的になったり、追加の保証や条件が求められたりすることがあります。

そのため、「信用力が低下しているが、売掛先は安定している」というケースでは、まずファクタリングで短期の資金繰りを安定させつつ、その間に決算内容の改善や在庫・売掛管理の整備を進め、ABLや通常融資も利用できる状態に持っていく、といった段階的な活用も選択肢になります。

ただし、どの手段も万能ではなく、信用不安が極端に高い場合や、売掛先も含めて回収リスクが高い場合には、いずれのスキームでも利用が難しくなる点には注意が必要です。

 

信用力が十分でない場合の整理ポイント
  • ファクタリングは「売掛先の信用力」と「債権の実在性」が軸になることを理解する
  • ABLは担保資産+事業継続性の両方を見られるため、決算の改善も並行して進める
  • 短期のつなぎとしてファクタリング、中長期の枠づくりとしてABLという組み合わせも検討する
  • いずれの手段でも、過度な調達は返済負担を高めるため、自社の返済可能額を基準に判断する

 

負債計上と財務指標への影響整理

ファクタリングと資産担保融資の大きな違いの一つが、貸借対照表への影響です。資産担保融資(ABL)は金銭の貸付けであるため、借り入れた時点で「借入金」などの負債が計上されます。

これにより、自己資本比率や負債比率、銀行が重視する有利子負債の水準などに直接影響が出ます。

 

一方、担保となった売掛債権や在庫・設備・不動産は、原則として貸借対照表に残り続けます。

ファクタリングは、売掛債権の売却(譲渡)として行われ、かつ売掛先の不払リスクがファクタリング会社に移転している場合には、売掛金を帳簿から消し、その差額(手数料)を費用として認識する処理が採用されることがあります。

 

この場合、借入金のような負債は増えず、結果として自己資本比率や有利子負債比率に与える影響は小さくなります。

一方で、将来回収できるはずだった売掛金が先に現金化されるため、売掛金残高は減少します。

 

ただし、ファクタリングでも、買戻し義務(リコース)や実質的な返済義務が利用者側に残っている場合には、会計上、売掛金を残したまま「実質的な借入」として処理されるケースもあり得ます。

その場合、ABLと同様に負債が増加し、財務指標への影響も近いものになります。

このように、「資金繰りにはプラスでも、財務指標にはマイナスになり得る」「逆にオフバランス化によって指標が改善する」など、手段ごとにメリット・デメリットが異なるため、決算書の見え方も踏まえて選択することが大切です。

 

財務指標への影響を整理するときの視点
  • ABLは借入金として負債を増やす一方、担保資産は基本的に貸借対照表に残る
  • リスク移転が明確なファクタリングは、売掛金のオフバランス化により負債を増やさず資金化できる
  • リコース型・買戻し義務付きの場合は、会計上「実質的な借入」として扱われる可能性がある
  • 自己資本比率・有利子負債比率・流動比率など、金融機関が重視する指標への影響を事前に試算する

 

中小企業・個人事業主の使い分け戦略

ファクタリングと資産担保融資(ABL)はどちらも資金繰りを支える手段ですが、「どちらが有利か」を一律に決めることは難しく、自社の状況に応じて使い分ける考え方が重要です。

判断の主な軸は、①銀行融資の利用可能性(与信・保証・担保)、②必要な金額とタイミング(短期のスポットか、継続的な運転資金か)、③保有資産の内容(売掛債権・在庫・設備・不動産など)、④財務指標や将来の融資に与える影響、の4点に整理できます。

 

たとえば、決算上は黒字で売掛債権や在庫も一定規模あるが、不動産担保が不足している企業は、ABLにより事業性資産を活用して融資枠を確保する選択肢があります。

一方、急な支払に対して短期間で現金が必要な場合には、既に発生している売掛金の範囲でファクタリングを利用する方が、手続きやスピードの面で適している場合もあります。

このように、「どの手段を選ぶか」ではなく、「どの場面でどの手段を組み合わせるか」という視点で整理しておくと、資金調達の選択肢を柔軟に検討しやすくなります。

 

調達手段 主な位置付け
ファクタリング 既存の売掛債権を早期資金化する短期の資金繰り手段。負債を増やさずに資金化できる場合がある。
資産担保融資(ABL) 売掛債権・在庫・設備・不動産などを担保に継続的な運転資金枠を確保する融資手段。
通常の銀行融資 決算内容・事業計画・保証・担保などを総合評価した長期的な資金調達の中核。

 

銀行融資が難しいときの選択肢

銀行融資が難しいと判断される場面として、設立間もない新設法人、直近決算の赤字や債務超過、過去の返済遅延履歴、担保不動産や保証人の不足などが挙げられます。

このような状況では、「当面の資金繰りをどう維持するか」と「中期的にどのように財務内容を改善するか」を切り分けて考えることが重要です。

 

前者の短期的対応としては、売掛債権を活用したファクタリングや、売掛債権を担保とするABLなど、保有する事業性資産をテコに資金を確保する手段が検討対象になります。

ファクタリングは、売掛先の信用力と売掛金の実在性を重視するため、利用者の決算状況が厳しい場合でも、売掛先が安定した企業であれば利用余地が生じるケースがあります。

ABLは、売掛債権・在庫などの担保価値に着目するため、決算数字だけでは評価されにくい資産を活かせる可能性がありますが、融資である以上、返済能力や事業継続性も合わせて見られる点は変わりません。

 

並行して、公的融資(信用保証協会付き融資、小規模事業者向け制度融資など)やリスケジュール(返済条件の見直し)を金融機関と協議することも一般的な選択肢です。

短期的にはファクタリング等で支払いを乗り切りつつ、中長期的には収益改善やコスト削減、資本増強などを通じて、再び銀行融資を利用しやすい状態を目指す、といった段階的な戦略が取られています。

 

銀行融資が難しいときに整理したい選択肢
  • 既存の売掛債権を活用したファクタリングによる短期資金確保
  • 売掛債権・在庫等を担保にしたABLによる運転資金枠の検討
  • 公的制度融資・信用保証協会付き融資の利用可否の確認
  • 金融機関との対話を通じた返済条件見直しや中期改善計画の策定

 

短期資金と長期運転資金の判断軸

短期の資金ニーズと長期の運転資金ニーズを整理することは、ファクタリングと資産担保融資の使い分けを考えるうえで重要な前提になります。

短期資金とは、数週間〜数か月程度の資金ギャップ(売掛金の入金と支払いのタイミングのズレ)を埋めるための資金を指すことが多く、具体例としては「大口案件の仕入費用や外注費が先行する」「賞与支給月や税金納付月に一時的に資金が不足する」といったケースが挙げられます。

 

一方、長期運転資金は、売上成長に伴う売掛・在庫の増加、事業規模の拡大、人員増強など、構造的に必要となる資金を指します。

短期資金については、請求書単位で柔軟に対応できるファクタリングの適性が高いとされています。

 

すでに発生している売掛金のうち必要な分だけを対象とし、支払期日前に資金化することで、一時的な資金ギャップを埋めることができます。

ただし、手数料負担を踏まえ、「どの案件にどの程度利用するか」をあらかじめ決めておくことが望ましいとされています。

 

長期運転資金については、ABLや通常の事業性融資のように、一定の融資枠を設定したうえで、借入・返済を繰り返すスキームの方が適している場合が多くなります。

売上増加や在庫増加が継続的に見込まれる場合、個別の売掛金だけでなく、全体の事業規模や担保資産の水準に応じた資金ラインを用意しておくことで、都度の資金調達にかかる手間を抑えることができます。

 

短期資金か長期運転資金かを判断する視点
  • 必要な資金が「一時的なギャップ」か「構造的な増加」かを分けて整理する
  • 資金ニーズの期間と金額を、売掛回転期間・在庫回転期間とあわせて確認する
  • 短期資金にはファクタリング、長期運転資金にはABL・事業性融資を組み合わせる発想を持つ
  • 将来の売上計画や投資計画と照らし、必要な資金ラインを中期的に設計する

 

担保資産が乏しい場合の代替手段

担保に差し入れられる不動産や高額な設備が乏しい企業・個人事業主にとって、資産担保融資(ABL)の利用余地が限られることがあります。

このような場合でも、売掛債権が一定規模あれば、ファクタリングによって短期の資金繰りを補うことは可能です。

 

売掛債権は「すでに役務提供・商品納入が完了している将来キャッシュフロー」であり、担保資産の一種と位置付けられるため、従来の不動産担保とは異なる形で活用できる点が特徴です。

それでも売掛債権も少ない、あるいは取引形態上売掛が発生しにくい業種(例:現金商売中心の小売・サービスなど)では、無担保の事業性融資や公的な制度融資、小規模事業者向けの信用保証協会付き融資など、別の手段を検討する必要があります。

 

また、リース・割賦・サブスクリプション型サービスなど、設備投資を分割支払で行うスキームを活用することで、一度に多額の資金を調達せずに済むケースもあります。

さらに、取引先との支払サイト交渉(支払条件の見直し)や、仕入先との掛取引条件の調整、在庫圧縮による必要運転資金の削減など、「資金調達の前に資金需要そのものを抑える取り組み」も有効とされています。

担保資産が乏しい場合は、調達手段だけでなく、事業構造や資金サイクルの見直しを組み合わせることが重要です。

 

担保資産が乏しい場合の主な代替手段
  • 売掛債権がある場合:ファクタリングや売掛保証など、売掛を活用した資金調達
  • 売掛も少ない場合:無担保事業性融資、公的制度融資、信用保証協会付き融資の活用
  • 設備投資ニーズ:リース・割賦・サブスクリプション型サービスで一時的な負担を抑える
  • 資金需要の削減:支払サイト交渉、在庫圧縮、コスト見直しなどによる運転資金の低減

 

リスクと注意点・チェックリスト

ファクタリングと資産担保融資(ABL)は、どちらも適切に使えば有効な資金調達手段ですが、使い方を誤ると「資金繰りは一時的に楽になったものの、負債や手数料の負担が重くなってしまう」「契約条件を十分理解しておらず、想定外のリスクを抱えた」といった結果につながるおそれがあります。

特に、中小企業・個人事業主にとっては、代表者個人の生活や信用にも影響し得るため、事前にリスクの種類を整理し、自社の許容範囲を明確にしておくことが重要です。

実務的には、①返済・支払能力を超える調達をしないこと、②金利や手数料を年率換算などで比較すること、③契約書の条文(特に担保・期限の利益喪失・保証・買戻し条項)を確認すること、④担保評価の前提とモニタリング方法を把握すること、⑤必要に応じて専門家や金融機関に相談すること、の5つを押さえておくと、過度なリスクを避けやすくなります。

 

リスクの種類 主な内容
返済・支払負担 借入金の返済やファクタリング手数料が資金繰りを圧迫するリスク
契約条件 買戻し義務・期限の利益喪失・高い違約金など、想定以上の義務を負うリスク
担保・保証 不動産や在庫・売掛等の担保評価の変動、代表者保証が個人資産に及ぶリスク
運用・管理 在庫・売掛管理体制が不十分で、ABLやファクタリングの条件維持が難しくなるリスク

 

過度な借入・手数料負担を避けるポイント

資金調達の場面では、「今不足している金額をどう埋めるか」に意識が向きがちですが、その結果として借入や手数料の負担が過大になり、数か月後にかえって資金繰りが悪化するケースも少なくありません。

ファクタリングの場合、請求書額に対する手数料率だけを見るのではなく、前倒し日数を踏まえて年率換算した実質コストを概算し、短期借入など他の手段と比較することが重要です。

 

ABLの場合も、金利だけでなく保証料・担保評価費用・登記費用などを含めた総コストで判断する必要があります。

また、「一度使って資金繰りが楽になったので、その後も同じペースで使い続けてしまう」といった常用化にも注意が必要です。

 

ファクタリングは本来、売掛金の入金タイミングを調整するための手段であり、慢性的な赤字補填に使い続けると、手数料が利益を圧迫しやすくなります。

ABLも、担保余力があるうちは借入枠を広げやすい一方で、返済計画が甘いと将来の選択肢を狭める可能性があります。

 

借入・手数料負担をコントロールするためのポイント
  • 必要資金は「最低限いくらか」「いつまで必要か」を具体的に試算する
  • ファクタリングの手数料やABLの金利を、年率換算などで他手段と比較する
  • ファクタリングは特定案件・特定時期に限定して利用する方針を決めておく
  • 借入残高・手数料総額の推移を定期的に確認し、増加が続く場合は根本原因を見直す

 

契約条件と担保評価で確認したい点

契約書の条文と担保評価の前提を理解していないと、「想定していたよりも自社にリスクが偏っていた」「担保価値の見直しで急に枠が縮小した」といった事態になりかねません。

ファクタリングでは、債権譲渡の範囲(どの請求書が対象か)、手数料の算定方法、償還請求権(リコース)の有無・範囲、売掛先の不払い時の対応、二重譲渡禁止条項などを確認することが重要です。

 

資産担保融資では、どの資産が担保対象か、評価方法(掛け目)、定期的な評価見直しの条件、期限の利益喪失条項、担保処分時の手続きなどがポイントになります。

特に、ABLでは売掛債権・在庫・設備などの評価額が融資枠に直結するため、在庫の回転率が落ちたり、特定の売掛先に過度に依存したりすると、担保価値の見直しによって利用可能枠が縮小するリスクがあります。

ファクタリングでも、売掛先の信用状況が悪化した場合に利用条件が変わる可能性があります。したがって、「いま提示されている条件」だけでなく、「条件が変わるトリガー」と「変わった場合の影響」を把握しておくことが大切です。

 

契約・担保で必ずチェックしたい主な条項
  • ファクタリング:対象債権の範囲、手数料率、償還請求権の有無、不払い時の責任分担
  • ABL:担保資産の種類・評価方法・掛け目、評価見直しの条件、期限の利益喪失条項
  • 共通:二重譲渡禁止、解約・更新条件、違約金や追加担保の要請条件
  • 条件変更のトリガー(業績悪化・担保価値低下など)と、その際の影響範囲

 

専門家や金融機関への相談活用法

ファクタリングや資産担保融資の契約は、専門用語や法的な条文が多く、経営者や経理担当者だけで判断しようとすると負担が大きくなりがちです。重要なのは、「分からないまま進めないこと」と「自社だけで抱え込まないこと」です。

具体的には、顧問税理士や公認会計士に会計処理・財務への影響を相談したり、商工会議所や中小企業支援機関の窓口で、資金繰り全体の設計について助言を受けたりする方法があります。

 

また、既存の取引銀行に対しても、ファクタリングやABLの利用予定を率直に伝え、今後の融資方針や保証協会付き融資、公的融資制度の利用可能性などを含めて意見を聞くことが有効です。

銀行側から見ると、ファクタリングやABLをどのような位置付けで利用しているかは、今後の取引を検討するうえで重要な情報となるため、「短期のつなぎ」なのか「構造的な資金不足への対応」なのかを明確に説明できるようにしておくと良いでしょう。

 

必要に応じて、弁護士や司法書士に契約内容のリーガルチェックや担保設定手続きの確認を依頼することも検討できます。

特に、大口の取引や長期にわたる枠契約の場合は、初期段階で専門家に目を通してもらうことで、後々のトラブルを防ぎやすくなります。

 

相談先を活用する際のポイント
  • 顧問税理士・公認会計士には、会計処理と財務指標への影響を相談する
  • 商工会議所・支援機関には、資金繰り全体の設計や公的融資制度について相談する
  • 取引銀行には、ファクタリング・ABL利用の背景と今後の資金計画を共有する
  • 大口・長期の契約は、弁護士等による契約書チェックも視野に入れる

 

まとめ

ファクタリングは売掛債権の売却により負債を増やさずスピーディーに資金化しやすい一方、資産担保融資は在庫や不動産も含めた広い担保を活かして比較的低金利でまとまった資金を調達しやすいという特徴があります。

本記事で整理した「仕組み・審査・コスト・財務への影響」の違いを踏まえ、短期のつなぎ資金か中長期の運転資金か、担保にできる資産がどの程度あるかを軸に検討することが重要です。

複数の金融機関・ファクタリング会社に条件を確認し、専門家への相談も活用しながら、自社にとって無理のない資金調達手段を選択していくことが望まれます。