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ファクタリングで債務超過でも資金調達?銀行融資NG時の活用法と注意点

債務超過になると銀行融資が難しくなり、「このまま資金が尽きてしまうのでは」と不安を抱える経営者は少なくありません。その一方で、売掛金を早期に現金化するファクタリングは、債務超過の企業でも条件次第で利用を検討できる手段です。

本記事では、債務超過の意味と融資への影響、ファクタリングを検討できる理由、具体的な利用シーン、債務超過ならではのリスク、公的支援や専門家との併用までを整理し、再建局面での資金調達を客観的に考えるためのポイントを解説します。

 

債務超過とファクタリングの基礎

債務超過とは、貸借対照表上で「資産<負債」となり、純資産(自己資本)がマイナスの状態を指します。

過去の赤字計上や評価損の計上などにより、利益剰余金がマイナスとなり、結果として債務超過に陥るケースが多いです。

 

この状態が続くと、金融機関は「返済原資となる自己資本が不足している」と判断し、融資や条件変更に慎重になります。

一方で、債務超過であっても、事業そのものは継続しており、売掛金や在庫などの運転資産を持っている会社も少なくありません。

 

ファクタリングは、この「売掛金(取引先に対する請求権)」をファクタリング会社に売却し、手数料を差し引いた現金を早期に受け取る取引です。

法的には「債権譲渡(売買)」であり、借入金ではない点が銀行融資と大きく異なります。審査では、利用企業の財務内容だけでなく、「売掛先が支払いを履行できるか」「売掛金の内容が適正か」が重視されます。

 

そのため、債務超過で銀行融資が難しい会社でも、売掛先が安定していれば検討対象となるケースがあります。

債務超過の局面では、「どのくらいの期間、どの程度の資金不足が続くのか」「業績や構造をどこまで改善できる見込みがあるのか」を前提に、銀行融資・公的支援・ファクタリングなどの組み合わせを考えることになります。

ファクタリングはあくまで「将来入る予定の売掛金を前倒しする」手段なので、再建計画全体の中で位置付けを整理しておくことが重要です。

 

項目 内容
債務超過 資産より負債が多く、純資産(自己資本)がマイナスの状態
銀行融資への影響 返済能力への懸念から、新規融資・条件変更に慎重な判断となりやすい
ファクタリング 売掛債権をファクタリング会社へ譲渡し、期日前に現金化する取引(債権の売買)
債務超過との関係 債務超過でも、売掛先の信用力次第で検討可能な資金調達手段の一つとなる

 

債務超過の意味と銀行融資への影響

債務超過とは、貸借対照表において「総資産<総負債」となり、純資産(資本金+資本剰余金+利益剰余金などの合計)がマイナスとなっている状態です。

会計上は、過去の累積赤字や評価損の計上によって利益剰余金がマイナスとなり、それが資本金等の合計額を上回ると債務超過となります。

 

債務超過=即倒産ではありませんが、「資産をすべて処分しても負債を返しきれない」という意味を持つため、金融機関や取引先からの信用評価に直接影響します。

銀行は融資審査の際、決算書・試算表・資金繰り表などを通じて、返済能力や財務の健全性を確認します。

 

その中で、自己資本比率や債務償還年数などと並び、「債務超過かどうか」は重要なチェックポイントです。

債務超過の状態が続いている場合、たとえキャッシュフローが黒字であっても、「将来の損失吸収力が乏しい」「追加の損失が発生すると一気に資金繰りが行き詰まる」と判断され、新規融資を断られたり、既存融資の条件変更が認められにくくなったりすることがあります。

 

さらに、税金や社会保険料に滞納がある場合、金融機関の目線は一段と厳しくなります。

公租公課は他の多くの債権より優先的に回収される性質があるため、債務超過かつ滞納がある状態では、「返済原資が税金支払いに先に振り向けられる可能性が高い」と見なされます。

その結果、銀行融資だけで再建を図るのが難しくなり、私的整理スキームや公的な再生支援、社債・出資・ファクタリングなど、他の手段も含めて再建計画を組み立てる必要が出てきます。

 

債務超過と銀行融資の関係で意識したい点
  • 債務超過は「資産を全て処分しても負債が残る」状態を意味する
  • 銀行は債務超過を重視し、新規融資・条件変更に慎重になりやすい
  • 税金や社会保険料の滞納があると、返済原資への懸念がさらに強まる
  • 債務超過が続く場合は、融資以外も含めた再建スキームの検討が必要になる

 

債務超過企業が使える主な資金調達手段

債務超過に陥った企業が資金調達を検討する際には、「借入れに頼る手段」と「借入れ以外の手段」を分けて整理すると分かりやすくなります。

借入れに頼る手段としては、金融機関からの追加融資や条件変更(リスケジュール)、信用保証協会付き融資、日本政策金融公庫などの公的融資制度があります。

 

ただし、いずれも債務超過の程度や今後の収支計画、再建可能性を示す資料が求められ、単に「資金が足りない」という理由だけでは利用が難しいことが多いです。

一方、借入れ以外の手段としては、売掛債権を資金化するファクタリング、保有資産の売却(不要な不動産や遊休資産の売却など)、ノンコア事業の譲渡、社債・劣後ローン・出資などの資本性の高い資金調達が挙げられます。

 

ファクタリングは、売掛金という既に発生している債権をもとに資金を前倒しする取引であり、貸借対照表上は売掛金の減少と現金の増加として処理されるのが一般的です(取引内容によっては借入れに近い性質となる場合もあります)。

また、公的な再生支援スキームとして、中小企業再生支援協議会や地域の産業振興機関などが提供する「再生計画策定支援」「金融機関との調整支援」なども選択肢となります。

 

これらは、金融機関と協議しながら抜本的な再建計画を策定し、既存債務の条件緩和や新たな資金調達の枠組みを時間をかけて整えるものです。

ファクタリングは、こうした中長期の再生スキームと並行して「当面の資金繰りを安定させる」ための手段として位置付けられることが多いです。

 

債務超過企業が検討しやすい資金調達手段の例
  • 銀行融資・公的融資:再建計画や将来収支を前提に追加融資・条件変更を相談する
  • ファクタリング:売掛金を活用し、短期の運転資金を前倒しで確保する
  • 資産売却・事業譲渡:不要資産やノンコア事業を整理し、現金化と固定費圧縮を図る
  • 公的再生支援:中小企業再生支援協議会等で、金融機関との協調による再建スキームを検討する

 

債務超過でもファクタリングを検討できる理由

債務超過になると、銀行融資では自己資本のマイナスが大きなマイナス要因となり、新規融資や追加枠の設定が難しくなりがちです。

一方、ファクタリングは「売掛債権そのものの信用力」に着目する仕組みであり、審査の軸が融資とは異なります。

 

具体的には、利用者(債務超過の会社)ではなく、その取引先(売掛先)が支払を履行できるかどうかが重視されるため、債務超過の企業でも、売掛先が大手企業や官公庁・自治体など信用力の高い相手であれば、検討の土俵に乗るケースがあります。

また、ファクタリングは法的には債権の売買(債権譲渡)であり、借入金とは異なる位置付けになります。

 

貸借対照表上も、売掛金が減少し現金が増加する処理が基本で、負債科目(借入金)を新たに増やさずに資金を確保できる点が特徴です。

もちろん、2社間ファクタリングのように、売掛金回収後に利用者がファクタリング会社へ支払う契約形態では、実務上は「将来の入金を原資とした支払い義務」が伴いますが、「貸付」ではなく「債権譲渡とその精算」という形で設計されます。

 

債務超過の局面では、短期的な資金ショートを防ぐことと、中長期的な再建計画を進めることの両立が必要です。

ファクタリングは、税金や給与、主要仕入先への支払など「止めてはいけない支出」をカバーするための短期資金として位置付けやすく、銀行融資や公的支援スキームと併用することで、時間を稼ぎながら構造改善を進める選択肢の一つになります。

ただし、将来の売掛金を前倒しする取引である以上、「どの売掛金を、いつまで、どの程度前倒しするか」を明確にしなければ、資金繰りをさらに圧迫する結果にもなり得るため、利用条件の設計が重要です。

 

観点 債務超過でも検討できる理由
審査の軸 利用者よりも売掛先の信用力・取引実績が重視されるため、債務超過でも売掛先が優良なら検討余地がある
会計上の扱い 売掛金の譲渡による現金化が基本で、新たな借入金を計上せずに資金を確保できる
役割 銀行融資や再生支援が整うまでの「つなぎ資金」として、短期の資金ショートを防ぐ役割を持ち得る

 

審査で重視される売掛先の信用力

ファクタリングの審査で大きなポイントになるのが、「売掛先の信用力」です。売掛先とは、商品・サービスの提供を受け、後日代金を支払う相手先企業や自治体のことです。

ファクタリング会社は、将来の回収リスクを評価するために、「売掛先が期日どおりに支払うかどうか」を、決算情報・支払実績・業歴・業種・取引条件などから総合的に判断します。

 

そのため、利用者が債務超過でも、売掛先が上場企業や大手企業、公共性の高い団体などであれば、審査上プラスに評価されやすい傾向があります。

具体的には、売掛先の「支払遅延や未払いの有無」「過去の取引期間と件数」「取引金額のボリューム」「同業他社からの情報(与信管理情報)」などの要素が確認されます。

 

売掛金の内容(請求書・納品書・契約書など)についても、取引の実在性や継続性が確かめられます。

ファクタリング会社から見れば、「利用者が倒産しても、売掛先が存続し、売掛金が支払われれば回収できるかどうか」が重要なポイントであり、その意味で、売掛先の信用力が審査の中心となります。

 

また、売掛先が複数に分散しているか、一社に集中しているかも重要です。

売掛先が1社に集中している場合、その取引先にトラブルが生じると売掛金全体の回収リスクが高まるため、手数料率が高めに設定されたり、掛け目(買取率=請求書額面に対する前払いの割合)が抑えられたりすることがあります。

一方、複数の安定した売掛先に分散している場合は、リスクが分散されるため、条件が比較的良くなる傾向があります。

 

売掛先の信用力に関するチェックポイント
  • 売掛先が上場企業・大手企業・官公庁・自治体など、支払能力の高い相手かどうか
  • 取引期間や取引実績(件数・金額)が一定以上あり、支払遅延の履歴がないか
  • 売掛先が一社集中か、複数に分散しているか(集中度が高いとリスクも高まりやすい)
  • 契約書・請求書・納品書など、売掛債権の実在性を示す書類が整っているか

 

負債を増やさない資金調達としての特徴

ファクタリングは、法的には売掛債権の売買(譲渡)であり、融資のような「借入金」ではありません。

貸借対照表上は、売掛金が減少し、代わりに現金が増加する形で処理されるのが一般的で、新たに「借入金」や「短期借入金」といった負債科目を計上しない点が特徴です。

 

このため、債務超過の企業にとっては、「負債をこれ以上増やさずに必要な現金を確保する」手段として位置付けやすいという側面があります。

ただし、実務上は注意点もあります。2社間ファクタリングでは、取引先からの入金はいったん利用者の口座に入り、その後ファクタリング会社との契約に基づき支払いが行われます。

 

このため、「売掛金を前倒しでもらい、後で精算する」という構造上、利用者には一定の支払義務が残ります。

また、リコース(償還請求権)付きの契約形態では、売掛先が倒産するなどして支払不能となった場合、利用者が代わりにファクタリング会社へ支払う義務が生じることもあります。

 

さらに、ファクタリングは短期の資金調達であり、手数料も売掛金額に対して数%〜十数%程度かかるのが一般的です。

例えば、請求書額500万円、掛け目90%、手数料率10%とすると、前払い対象額450万円、手数料額45万円、実際の受取額は405万円となります。

このように、「負債を増やさない」とはいえ、将来受け取るはずの売掛金の一部を手数料として支払う取引であることを踏まえ、どのくらいの期間・回数で利用するかを計画的に決める必要があります。

 

負債を増やさない資金調達として利用する際の留意点
  • 会計上は売掛金の譲渡として処理されるが、契約内容によっては実質的に返済義務が伴う部分がある
  • リコース付きかどうか、2社間か3社間かによって、リスクと負担の範囲が変わる
  • 手数料や掛け目を踏まえ、受取額と実質コストを事前に試算しておく
  • 「負債を増やさない」ことだけを目的にせず、再建計画全体の中で位置付けを検討する

 

債務超過時のファクタリング利用シーン

債務超過の企業でも、日々の取引は続き、売掛金や仕入、給与、家賃、税金などの支払いは発生し続けます。

このとき、銀行融資が難しい状態でも、取引先への請求書が一定規模で発生している場合には、その売掛金をもとにファクタリングで短期資金を確保する選択肢があります。

 

とくに多いのは、資金ショートに陥る前に「このままだと給与や主要仕入の支払いが危うい」という局面や、リスケジュール(返済条件変更)の協議中に、当面の運転資金を確保したい場面です。

債務超過時にファクタリングが検討されるシーンとしては、①売上はあるが支払サイトが長く、資金ギャップが拡大している場合、②税金・社会保険料の分納を続けながら、今月・来月の支払を確保したい場合、③再建計画を金融機関と合意したが、その実行期間中の運転資金が不足している場合、などが挙げられます。

 

いずれも、「売掛先は比較的安定しているが、自社の財務状況から追加融資は難しい」という共通点があります。

ファクタリングは、あくまで将来の入金を前倒しする手段であり、資金ショートそのものの原因を解決するものではありませんが、「どのタイミングで」「何に使うために」「いくら前倒しするか」を明確にすれば、資金繰りの山場を越えるための手段として機能します。

とくに、資金ショート直前ではなく、数か月前から資金繰り表を作成し、必要な金額と期間を見積もったうえで検討することが重要です。

 

場面 ファクタリングの位置付け
資金ショート前 給与・仕入・税金など「止められない支払」を守るための短期資金として活用
リスケ協議中 金融機関との再建協議がまとまるまでの運転資金を補う手段として検討
再建計画実行中 コスト削減・構造改善を進める期間の「つなぎ」として限定的に利用

 

資金ショート前後での具体的な活用例

資金ショート前後でファクタリングが検討される具体的なイメージを、いくつかのパターンで整理します。

 

  • 売上は伸びているが、売掛先の支払サイトが「締め後60日」など長く、仕入や外注費、給与の支払いが先行しているケース
  • 主要取引先への支払い遅延を避けたいが、既存の借入枠は使い切り、銀行からの追加融資が難しいケース
  • 税金や社会保険料の分納を開始したものの、初回納付・継続納付分の資金が不足しているケース

 

例えば、月末に3,000万円の売掛金が発生し、支払サイトが翌々月末(約60日)だとします。一方、仕入や外注費は翌月末に2,000万円、給与・家賃・その他固定費が500万円必要で、手元資金は1,000万円しかない状況を想定します。

このままでは翌月末に1,500万円が不足する計算になりますが、売掛金3,000万円のうち1,500万円分をファクタリングで前倒しし、買取率90%・手数料率5%の条件で利用した場合、前払い対象額1,350万円、手数料67万5,000円、実際の受取額は約1,282万5,000円となります。

 

この受取額を仕入・外注費・給与などの支払に充てることで、資金ショートを避けるイメージです。

資金ショート後、すでに支払遅延やリスケ要請が発生している段階でファクタリングを検討するケースもありますが、この場合は、①売掛先が遅延なく支払っているか、②差押えや譲渡禁止特約がないか、③金融機関との協議内容と矛盾しないか、といった確認がより重要になります。

場当たり的に売掛金を次々と前倒しすると、翌月以降の入金が細くなり、慢性的な資金不足に陥るリスクが高まります。

 

資金ショート前後での活用イメージ
  • ショート前:資金繰り表で不足額・不足時期を見積もり、主要支払を守るために必要な分だけ前倒しする
  • ショート後:支払遅延の状況や金融機関との協議内容を整理し、再建方針と整合する範囲内で利用を検討する
  • いずれの場合も、「売掛金のどの部分を対象にするか」「何回まで使うか」をあらかじめ決めておく

 

経営改善計画とセットで使うときのポイント

債務超過の企業がファクタリングを活用する場合、単に資金ショートを埋めるだけでなく、「経営改善計画とセットで利用する」ことが重要です。

経営改善計画とは、売上・粗利・固定費・借入返済・税金などの項目について、今後数年の収支を見通し、赤字解消や債務超過解消の道筋を示す計画です。

 

この計画の中で、「何か月目までに資金繰りをプラスに転じさせるか」「その間の資金ギャップをどう埋めるか」を明確にし、その一部としてファクタリングを位置付けます。

例えば、「今後12か月で赤字幅を半減し、15か月目以降は営業キャッシュフローをプラスにする」という計画を立てる場合、最初の6〜9か月間は、売上の回復やコスト削減の効果が十分に出る前で、資金繰りの山場になることが多いです。

 

この期間に限定して、売掛金の一部をファクタリングで前倒しし、給与・仕入・税金を確保しながら改善施策を実行していきます。

そのうえで、売上や粗利の改善が進んできた段階で、徐々にファクタリングの利用額や利用回数を減らしていくのが、無理のない使い方の一例です。

 

計画とセットで使う際には、①ファクタリングに頼る期間(開始月・終了月)、②毎月の上限額(売掛残高の何%までなど)、③資金の使途(どの支払に優先的に充てるか)、④並行して進める改善施策(コスト削減・価格見直し・採算の悪い取引の整理など)を、具体的な数値とともに決めておきます。

顧問税理士や金融機関、再生支援機関と共有できるレベルまで整理しておけば、ファクタリングを「再建の一手段」として説明しやすくなり、関係者の理解も得やすくなります。

 

経営改善計画とセットで使うときのポイント
  • ファクタリングは「改善効果が出るまでの期間限定」で使う前提を計画に明記する
  • 利用額・利用回数の上限を決め、売掛残高に対する割合も管理する
  • 調達した資金は、売上維持・回復に不可欠な支払(仕入・給与・税金など)に優先配分する
  • 顧問税理士や金融機関と計画を共有し、再建プロセス全体の中で位置付けを確認する

 

債務超過ならではの注意点とリスク

債務超過の企業がファクタリングを利用する場合、「とにかく現金を作る」ことだけに気を取られると、既存の借入契約や担保設定との関係を見落とし、後から大きなトラブルになるおそれがあります。

多くの中小企業では、すでに銀行やノンバンクとの間で、売掛金や在庫、預金、不動産などに担保権を設定していたり、代表者個人やグループ会社が連帯保証人になっていることが一般的です。

 

債務超過の状態では、これらの担保・保証が金融機関にとって重要な回収手段となるため、新たに売掛金をファクタリングに出す際には、「既存の担保権や契約条項と矛盾しないか」を事前に確認しておく必要があります。

また、債務超過局面では、目先の資金繰りのためにファクタリングの利用頻度や金額が増えやすくなります。

 

売掛金を前倒しすることで一時的には資金が潤いますが、その分将来の入金が減るため、何も手を打たないまま継続利用すると、実質的な資金繰りはむしろ厳しくなっていきます。

「債務超過だからこそ、ファクタリングをどう位置づけるか」「どこまでなら利用しても再建計画の範囲内か」を、数値ベースで検討することが重要です。

 

確認すべき視点 債務超過ならではの注意ポイント
既存担保・保証 売掛金に担保権や譲渡禁止条項が付いていないか、保証人への影響がないかを事前に確認する
資金繰りへの影響 ファクタリングで前倒しした分だけ、将来の入金が減る点を資金繰り表で織り込む
再建計画との整合性 ファクタリングを「いつまで・いくら・何回」使うのかを、経営改善計画の中で明確にする

 

既存担保・保証と二重譲渡リスクの確認

債務超過の企業では、すでに銀行などとの間で「包括根抵当権」「集合債権譲渡担保」「在庫担保」「事業性融資に付随する保証協会保証」などが設定されていることが少なくありません。

特に、売掛金を対象とした「集合債権譲渡担保」や「譲渡禁止特約付きの貸出契約」がある場合、同じ売掛金をファクタリング会社に譲渡すると、法律上の「二重譲渡」や契約違反に該当する可能性があります。

 

二重譲渡とは、同一の債権を複数の相手に譲渡してしまう状態で、どちらの譲受人が優先するかは、通知・承諾や登記などの対抗要件の有無・先後で決まります。

こうしたトラブルを避けるためには、まず自社の借入契約書や保証契約書、担保設定の内容を整理する必要があります。

 

具体的には、①売掛金全般に担保権が設定されていないか、②特定の売掛先に対する債権が担保の対象になっていないか、③譲渡禁止条項や金融機関への事前承諾義務がないか、といった点を確認します。

また、保証協会付き融資の場合、一定の条件下で売掛金の譲渡が「担保処分」「財産の減少行為」と見なされるリスクもあるため、事前に金融機関や専門家に相談しておくことが大切です。

 

ファクタリング会社との契約側でも、基本契約書や個別契約書に「既に担保設定や譲渡がないこと」を表明保証させる条文が置かれるのが一般的です。

この条文に違反していた場合、契約解除や損害賠償の対象となるおそれがあります。

債務超過の局面では、「とにかく資金を作りたい」という思いから、こうした条件を十分に確認せずに契約してしまうケースも見られますが、結果として金融機関との関係や再建計画そのものに悪影響を及ぼす可能性があります。

 

既存担保・保証と二重譲渡リスクを確認するポイント
  • 借入契約書・担保契約書・保証契約書を見直し、売掛金に関する条項(担保・譲渡禁止・承諾義務)を確認する
  • 集合債権譲渡担保や根抵当権が設定されている場合、金融機関にファクタリング利用の可否を相談する
  • ファクタリング契約書の「他者への譲渡・担保設定がないこと」の条文を読み、虚偽申告にならないよう注意する
  • 保証協会保証付き融資や代表者保証への影響も含め、専門家(税理士・弁護士など)に事前相談する

 

依存し過ぎによる資金繰り悪化の懸念

ファクタリングは、売掛金を前倒しで現金化できる便利な手段ですが、債務超過の企業がこれに過度に依存すると、かえって資金繰りが悪化するリスクがあります。

理由はシンプルで、「将来入ってくるはずの売上(売掛金)を割り引いて先に受け取っている」ため、継続的に利用すると、毎月の入金の大部分がすでに前倒しされている状態になり、新たに確保できる余力がどんどん小さくなっていくからです。

 

例えば、毎月の売掛金が3,000万円、掛け目90%、手数料率10%の条件で、ほぼ毎月全額をファクタリングしているケースを考えます。

前払い対象額は2,700万円、手数料は270万円、実際の受取額は2,430万円です。これを毎月続けると、3,000万円の売上に対して常に270万円の手数料が発生し、1年間では3,240万円ものコストになります。

債務超過を解消するためには利益の積み上げが不可欠ですが、手数料負担が重いままでは、黒字化が遠のきやすくなります。

 

また、資金繰り表の観点では、「ファクタリングをやめた瞬間、手元資金が急に細る」という現象が起こり得ます。

ファクタリングを前提にした資金繰りを続けていると、売掛金の入金を待つ余裕がなくなり、「今月も前倒ししないと支払いができない」状態が常態化します。

債務超過の企業にとっては、こうした状態は再建計画の実現を難しくする要因となり、金融機関や支援機関からも「抜本的な改善が進んでいない」と評価されるおそれがあります。

 

依存し過ぎによる悪化を防ぐためのポイント
  • ファクタリングは「一時的な資金ギャップを埋める手段」であり、常時利用を前提にしない
  • 売掛金に対する利用割合(何%を前倒しするか)と期間(何か月続けるか)に上限を設ける
  • 手数料総額を年単位で把握し、債務超過解消に必要な利益水準とのバランスを確認する
  • コスト削減・粗利改善・不採算取引の見直しなど、根本的な改善策と並行してファクタリングを利用する

 

専門家・公的支援と併用した再建ステップ

債務超過に陥った企業が再建を目指す場合、ファクタリングだけで状況を好転させることは難しく、多くのケースで「専門家・金融機関・公的支援」を組み合わせたステップ型の対応が必要になります。

典型的には、①現状把握(決算・資金繰りの整理)、②短期資金の確保(ファクタリングやリスケ協議)、③経営改善計画の策定、④公的融資や再生支援スキームの活用、⑤計画のフォローアップという流れです。

 

ファクタリングはこの中で、②の「当面の資金ショートを防ぎながら、③〜④に進むための時間を確保する」役割を担うことが多くなります。

公的な支援策としては、日本政策金融公庫や信用保証協会付き融資による「経営改善・再生支援型の融資」、商工会・商工会議所等を通じた「経営改善計画策定支援」、より深刻なケースでは中小企業再生支援機関などによる「再生計画の策定・金融調整支援」などがあります。

 

これらは、金融機関との協調のもとで複数年の見通しを立てる取り組みであり、実行までに一定の時間がかかります。

その準備期間に、税金や給与、主要仕入先への支払いを止めないための短期資金としてファクタリングを位置づける、という考え方が現実的です。

 

ファクタリングを公的支援と併用する場合、「どのステップで、どの程度使うのか」を他の関係者と共有しておくことが重要です。

金融機関から見て、ファクタリングが「無計画に資金を前倒ししているだけ」に見えてしまうと、再建計画への信頼が損なわれるおそれがあります。

一方で、「再生計画の○〜○か月目までに限定」「売掛残高の○%を上限」といったルールを明示し、改善のための投資や固定費削減とセットで説明できれば、再建に向けた合理的な一手段として理解されやすくなります。

 

ステップ ファクタリング・公的支援の位置付け
現状把握 決算書・資金繰り表を整理し、債務超過の原因と資金不足額・時期を明確化
短期資金確保 給与・仕入・税金を守るため、売掛金を対象にファクタリングを検討
改善計画策定 専門家や金融機関と経営改善計画を作成し、必要資金・期間・手段を設計
公的支援活用 公的融資・保証・再生支援スキームの利用を検討し、ファクタリングは補完的に利用
フォローアップ 計画の進捗を定期的に確認し、ファクタリング依存度を徐々に下げていく

 

公的融資・再生支援とファクタリング併用

公的融資や再生支援スキームとファクタリングを併用する場合、役割分担をはっきりさせておくことが重要です。

公的融資(日本政策金融公庫の経営改善関連融資、信用保証協会付きのリスケ後新規融資など)は、数年単位での返済を前提とした中長期資金の確保が目的です。

 

一方で、ファクタリングは数十日〜数か月程度の運転資金ギャップを埋める短期の手段です。この二つを混同すると、「長期資金の代わりに短期手段を使い続けてしまう」というミスマッチが生じます。

実務上よくあるパターンは、「金融機関と協議し、一定のリスケ(元金返済の一時停止や減額)と経営改善計画に合意する」「そのうえで、計画の初期フェーズに発生する資金ギャップをファクタリングで補う」という流れです。

 

例えば、売掛回収サイトが60日で、債務返済や固定費の支払いが当面重なっている期間だけ、売掛残高の一部を前倒しし、3〜6か月後にはファクタリング利用額を段階的に減らす、といった設計が考えられます。

このとき、公的融資や再生支援側の視点からは、「ファクタリングの利用が再建計画にどう組み込まれているか」が重要になります。

 

計画書の中で、①ファクタリングの利用期間、②対象とする売掛金の範囲と上限額、③手数料コストの見込み、④利用終了後の資金繰りの姿、を具体的な数字で示しておくと、公的支援と矛盾しない形で併用しやすくなります。

また、補助金や設備投資が絡む場合には、その入金・支出スケジュールとファクタリング・融資の返済スケジュールが無理なく噛み合っているかも確認が必要です。

 

公的融資・再生支援と併用するときのポイント
  • 公的融資=中長期資金、ファクタリング=短期つなぎ資金として役割を分けて設計する
  • 経営改善計画書の中に、ファクタリングの利用期間・上限額・コストを明示しておく
  • リスケや公的再生支援を受ける場合、金融機関・支援機関にファクタリング利用の方針を共有する
  • 補助金・設備投資など他の施策とのスケジュールも含め、返済・入金の流れを時系列で確認する

 

顧問税理士や支援機関へ相談するタイミング

債務超過や資金繰り悪化が見え始めた段階で、顧問税理士や商工会・商工会議所、金融機関の担当者などに早めに相談することは、再建の可能性を広げるうえで非常に重要です。

相談のタイミングが遅れ、「すでに複数の支払が滞っている」「差押えや強制執行が進んでいる」といった状態では、選べる選択肢が大きく限られてしまいます。

 

相談の目安としては、①資金繰り表を作ったときに、今後3〜6か月以内に明確な資金不足が見込まれるとき、②債務超過の状態が2期以上続き、自己資本の回復見込みが立っていないとき、③返済負担や税金・社会保険料の支払いが経常利益を上回る状態が続いているとき、などが挙げられます。

こうした兆候が見えた段階で、顧問税理士には「現状の数値に基づく改善余地」、金融機関には「条件変更や新規融資の可能性」、公的支援機関には「利用できる制度や相談窓口」について助言を求めるとよいでしょう。

 

ファクタリングについても、「どの売掛金を対象に、どの程度の期間・金額で利用するのが現実的か」を、税理士や支援機関と一緒に検討することが有効です。

特に、既存の借入契約や担保設定との関係、税務上の取扱い(手数料の費用処理など)、将来の資金繰りへの影響は、専門家の視点で確認しておくと安心です。

また、商工会・商工会議所や自治体の相談窓口では、必要に応じて中小企業診断士や弁護士などの専門家との面談の場を調整してもらえることもあります。

 

専門家・支援機関へ相談するタイミングとポイント
  • 3〜6か月以内に資金不足が見込まれる段階で、顧問税理士・金融機関・支援機関へ早めに相談する
  • 債務超過が続いている場合は、原因分析と改善余地を第三者の目線で整理してもらう
  • ファクタリング利用方針(対象債権・期間・金額)は、既存借入や税務への影響も含め専門家と確認する
  • 一度の相談で解決を目指すのではなく、定期的なフォロー面談を前提に「再建ステップ」を一緒に描いていく

 

まとめ

債務超過でも、売掛先の信用力が十分であれば、ファクタリングを通じて運転資金を確保できる可能性があります。

一方で、負債を増やさない手段とはいえ、手数料負担や継続依存による資金繰り悪化、既存担保や保証との関係など、債務超過ならではの注意点も存在します。

本記事で整理した「銀行融資・公的支援・ファクタリング」の違いと組み合わせ方、二重譲渡リスクや再生支援機関への相談タイミングを踏まえ、自社の再建計画の中でどの程度ファクタリングを位置付けるかを、資金繰り表とあわせて冷静に検討することが重要です。