【厳選19社】ファクタリングのサービスや手数料を徹底比較 >

当サイトはプロモーションが含まれています

ファクタリングと手形貸付の違い|仕組み・費用・選び方を中小企業向け徹底解説

資金繰りが厳しくなると、「ファクタリング」と「手形貸付」のどちらを使うべきか迷う中小企業は少なくありません。どちらも売掛金や手形をもとに資金を調達しますが、取引の性質(売却か融資か)、審査のポイント、費用構造、リスクの負担者、決算書への影響は大きく異なります。本記事では、ファクタリングと手形貸付の仕組みと特徴、審査・費用・会計処理の違い、銀行融資が難しい企業での活用場面、選び方チェックポイントまでを客観的に整理します。

 

ファクタリングと手形貸付の基礎

ファクタリングと手形貸付はいずれも「将来入ってくるお金をもとに資金を受け取る」手段ですが、法的な位置付けや決算書への表現、リスクの持ち方がまったく異なります。

ファクタリングは「売掛金などの債権そのものを売却して資金化する取引」であり、法律上は債権譲渡契約として扱われます。

 

一方、手形貸付は「約束手形などを担保・返済原資とする融資」であり、銀行等の金融機関が貸付金を実行し、利息を受け取る融資取引です。

資金化のタイミングという点ではどちらも「期日より前に現金を受け取る」ことができますが、ファクタリングは売掛先(取引先)の信用力を重視するのに対し、手形貸付は手形を振り出した企業と借り手企業の信用力を総合的に見る傾向があります。

 

また、ファクタリングは売掛債権をオフバランス(売却)できる可能性があるのに対し、手形貸付は貸借対照表上「借入金」として残るため、自己資本比率や借入金依存度に直接影響します。

このように、表面的には似ていても、「売買か融資か」「誰の信用を重視するか」「決算書にどう載るか」が異なるため、資金繰りの改善方法として検討する際には、それぞれの仕組みを切り分けて整理することが重要です。

 

項目 ファクタリングと手形貸付の違い(概要)
法的性質 ファクタリング:債権譲渡(売買)/手形貸付:融資(貸付金)
審査の主眼 ファクタリング:売掛先の信用力中心/手形貸付:借り手企業と手形振出人の信用力
決算書への表示 ファクタリング:条件次第で売掛金の減少(オフバランス)/手形貸付:借入金の増加

 

ファクタリングの仕組みと特徴

ファクタリングは、企業が保有する売掛金(請求済みだがまだ入金されていない債権)をファクタリング会社に売却し、期日前に現金化する取引です。

利用者(資金を受け取る企業)は、売掛金額からファクタリング手数料を差し引いた金額を受け取り、売掛先からの入金はファクタリング会社が受け取るか、二社間の場合は一旦利用者が回収したうえで精算する仕組みです。

 

スキームとしては、売掛先に通知する「三社間ファクタリング」と、通知しない「二社間ファクタリング」があり、三社間は売掛先の承諾を得る分、回収リスクが低く手数料も抑えやすい一方、二社間は売掛先に知られずに利用できる反面、手数料は高めになる傾向があります。

また、売掛先の倒産・長期不払いリスクを誰が負うかによって、ノンリコース(償還請求権なし)とリコース(償還請求権あり)に分かれ、ノンリコースでは売掛先の信用リスクを原則としてファクタリング会社が負担します。

 

ファクタリングの特徴は、①売掛先の信用力を重視するため、利用企業が赤字・債務超過でも利用余地があること、②登記や契約条件次第で売掛金を帳簿から切り離せる(オフバランスの可能性がある)こと、③返済スケジュールを組む「借入金」ではないため、追加の借入枠を使わずに資金調達ができること、などに整理できます。

一方で、短期の前倒し資金調達であっても手数料率は相対的に高くなりやすく、実質的なコスト感を把握したうえで利用することが求められます。

 

ファクタリングの主な特徴
  • 売掛金(請求済みの債権)を売却して資金化する取引で、融資とは異なる
  • 二社間・三社間、ノンリコース・リコースなどスキームによりリスクと手数料が変わる
  • 売掛先の信用力を重視するため、利用企業の決算が悪くても利用余地がある
  • 借入金を増やさず資金調達できる一方、手数料水準は融資より高めになりやすい

 

手形貸付の仕組みと特徴

手形貸付は、銀行などの金融機関が、借り手企業が振り出した約束手形などをもとに資金を貸し付ける融資取引です。

代表的なのは「証書貸付」と並ぶ銀行の伝統的な運転資金調達手段で、借入時に貸付金額・利率・返済期日・分割有無などを定め、元本と利息を返済していきます。

 

手形貸付には、自社振出しの約束手形を担保的に用いる場合や、取引先から受け取った手形を割り引く「手形割引」など、複数の形態がありますが、いずれも法的には「貸付金」であり、借り手企業には元本返済義務があります。

審査の主な対象は、借り手企業および手形振出人(支払企業)の財務内容・返済能力です。銀行は決算書・試算表・資金繰り表、担保不動産や保証人の有無、既存借入の状況などを総合的に評価し、融資の可否と限度額を決定します。

 

手形貸付は、一定の与信枠の範囲で繰り返し借入・返済が行われるケースも多く、長年の取引関係や信用保証協会付き融資などと組み合わせて運用されることが一般的です。

特徴としては、①適用金利が比較的低く、長期・継続的な運転資金として利用しやすいこと、②返済義務があり、貸借対照表上は「借入金」として計上されるため、財務指標に影響すること、③審査に時間を要する場合があり、決算悪化や金融機関との関係性によっては新規・増額が難しいこと、などが挙げられます。

短期のつなぎ資金や季節資金を低コストで調達する手段として優れている一方、与信枠が限られる中小企業では「手形貸付だけでは足りない部分」をファクタリング等で補うケースもあります。

 

手形貸付の主な特徴
  • 銀行等による融資であり、借り手企業には元本と利息の返済義務がある
  • 金利水準はファクタリング手数料より低くなることが多いが、審査は厳格
  • 貸借対照表上は「借入金」として計上され、自己資本比率などに影響する
  • 長期・継続的な運転資金調達に適している一方、融資枠の制約を受ける

 

資金化スキームと審査の違い

ファクタリングと手形貸付はいずれも「将来入金予定の資金を前倒しで使えるようにする」手段ですが、仕組み・審査の考え方が根本的に違います。

ファクタリングは、売掛金(請求書にもとづく債権)をファクタリング会社に売却し、その代金として現金を受け取るスキームです。

 

一方、手形貸付は、銀行などが約束手形などを返済原資・担保として資金を貸し付ける融資取引であり、借入金として扱われます。

この違いは、①資金を受け取る時点で「債権を売却しているのか」「借入をしているのか」、②審査の主眼が「売掛先の信用力」か「自社(借り手)の信用力」か、③返済義務の有無や、万一の際のリスク負担者は誰か、という三つの視点で整理すると理解しやすくなります。

 

ファクタリングは売掛債権そのものを譲渡しているため、条件次第では売掛金を帳簿から外せる可能性がありますが、手形貸付は借入金として残るため、金融機関からの与信判断にも影響します。

また、審査プロセスにも違いがあります。ファクタリングでは、売掛先(取引先)の財務内容や取引実績を重視し、請求書や契約書、入金実績の確認が中心です。

一方、手形貸付では、決算書・試算表・資金繰り表などを通じて、借り手企業の返済能力を総合的に判断します。

 

観点 ファクタリングと手形貸付の違い(概要)
資金化スキーム ファクタリング:売掛債権を売却して資金化/手形貸付:手形等をもとに融資を受ける
審査の主眼 ファクタリング:売掛先の信用力と取引実績/手形貸付:自社と手形振出人の信用力
帳簿への影響 ファクタリング:売掛金の減少(条件によりオフバランスの可能性)/手形貸付:借入金の増加

 

売掛債権買取と手形融資の違い

売掛債権買取としてのファクタリングと、手形を使った融資(手形貸付・手形割引)は、同じ「売掛先からの支払予定をもとに資金を受け取る」仕組みでありながら、法的な性質とリスクの持ち方が大きく異なります。

ファクタリングは、売掛金そのものをファクタリング会社へ譲渡(売却)し、その代金を受け取る取引です。

 

取引先が期日に支払う相手は、二社間か三社間かによって異なりますが、基本的には売掛金の権利がファクタリング会社に移ります。

一方、手形貸付・手形割引は、銀行等が約束手形などをもとに資金を貸し付ける融資です。

 

手形割引の場合、「期日より前に銀行が手形金額から利息相当の割引料を差し引いて資金を交付し、期日に手形振出人から全額を回収する」構造になっており、回収できなかった場合は、通常、手形所持人(銀行)が裏書人・振出人などに遡及請求(償還請求)できる仕組みです。

ファクタリングの中でもノンリコース(償還請求権なし)型では、取引先の倒産・長期不払いリスクを原則としてファクタリング会社が負担します。

 

一方、手形融資では、期日に手形が不渡りになった場合、借り手企業は貸付金の返済義務を負い続けます。

この意味で、「どちらが借入なのか」「どこまでリスクを移転できるのか」という点で、両者ははっきりと分かれます。

 

売掛債権買取と手形融資の整理ポイント
  • ファクタリング:売掛債権の売買(譲渡)で資金化するスキーム
  • 手形貸付・割引:手形をもとにした融資であり、借入金として返済義務が残る
  • ノンリコース型ファクタリングは、取引先倒産リスクを外部に移転しやすい
  • 手形融資では、手形不渡り時でも借入金の返済義務は継続する

 

審査対象と必要書類の比較

ファクタリングと手形貸付では、審査の際に重視される対象と、求められる書類が異なります。

ファクタリングでは、「どの取引先から、どのような条件で売掛金が発生しているか」が焦点となり、売掛先の財務内容や取引実績、支払遅延の有無などが審査の中心です。

 

必要書類としては、請求書・納品書・発注書・取引基本契約書など「債権の実在性を示す書類」に加え、売掛金年齢表(売掛金一覧)、入金明細、決算書や試算表などが挙げられます。

一方、手形貸付では、借り手企業自体の返済能力が重視されます。銀行などは、過去数期分の決算書、試算表、資金繰り表、税金の納付状況、既存借入の一覧、担保不動産に関する資料などを確認し、借入限度額や条件を判断します。

 

手形割引の場合には、手形の写しや裏書関係の確認資料も必要です。取引先が信用力の高い大企業であっても、自社の財務内容が厳しければ、手形貸付の審査は通りにくいことがあります。

このように、「ファクタリング=売掛先中心の審査」「手形貸付=自社中心の審査」と整理しておくと、自社の状況に応じてどちらを選びやすいかが見えやすくなります。

赤字決算や債務超過が続いていても、取引先が安定していればファクタリングで資金化できる余地がある一方、手形貸付は決算悪化が続いていると新規・増額が難しい、といった傾向があります。

 

項目 ファクタリング 手形貸付・手形割引
審査対象の中心 売掛先の信用力・取引実績 借り手企業と手形振出人の信用力
主な書類 請求書・納品書・発注書・取引基本契約書・売掛金一覧・決算書など 決算書・試算表・資金繰り表・担保資料・手形の写しなど
決算への影響 売掛金の売却として扱われる可能性あり 借入金として計上され、債務残高に反映

 

審査と必要書類を比較するときの注意点
  • ファクタリング:売掛先情報と取引実績の整理が鍵
  • 手形貸付:自社の決算書・資金繰り表など、金融機関向け資料の整備が必須
  • 赤字・債務超過でも、取引先が安定していればファクタリングの余地がある
  • どちらも事前に必要書類リストを確認し、準備期間を確保する

 

限度額・担保と入金スピードの比較

ファクタリングと手形貸付では、「どこまで資金化できるか(限度額)」「担保・保証の要否」「入金までのスピード」も異なります。

ファクタリングでは、基本的に「対象とする売掛金の範囲」が実質的な上限になります。

 

例えば、売掛金1,000万円分を対象にした場合、その範囲内で買取率(請求書額に対する支払い割合)を掛け合わせた金額が入金されます。

担保や保証人を求めないサービスも多く、売掛先の信用力が高ければ、無担保でも大きめの金額を資金化できるケースもあります。

 

手形貸付の場合、限度額は金融機関の与信枠(信用限度)と担保評価額によって決まります。

例えば、運転資金枠として2,000万円、設備資金枠として3,000万円、といった形で総枠が設定され、その範囲内で手形貸付や証書貸付が実行されます。

 

担保として不動産や保証協会の保証、代表者の連帯保証などを求められることが一般的で、担保余力が乏しい企業は、融資枠の拡大に時間がかかることがあります。

入金スピードについては、ファクタリングは「必要書類が揃っていれば比較的短期(数日程度)」での実行をうたうサービスが多く、急な資金需要にも対応しやすいのが特徴です。

 

一方、手形貸付は、金融機関内部での審査や稟議プロセスを経るため、新規取引では数週間程度を要することもあり、スピード面ではファクタリングに劣る場合があります。

ただし、すでに与信枠が設定されている既存顧客であれば、手続きが簡素化され、比較的早期に資金実行されるケースもあります。

 

限度額・担保・スピードを比較する際のポイント
  • ファクタリング:売掛金額の範囲内で資金化。無担保・短期実行のサービスが多い
  • 手形貸付:与信枠と担保余力が限度額を左右し、審査に時間を要することがある
  • 急な資金需要にはファクタリング、計画的な長期資金には手形貸付といった使い分けが現実的
  • 限度額だけでなく、担保条件・保証人の有無・スピードを総合的に比較する

 

費用・リスクと会計処理の違い

ファクタリングと手形貸付を比較するときは、「いくらかかるか(費用)」「誰がどこまでリスクを負うか(償還義務・リスク分担)」「決算書にどう表れるか(会計処理)」の3つをセットで見ることが重要です。

単純に「ファクタリングは手数料、手形貸付は金利」という違いだけで判断すると、実際の資金化期間や繰り返し利用の有無を踏まえたときの実質コストを見誤るおそれがあります。

 

また、ノンリコース型ファクタリングでは、取引先倒産リスクを外部に移すことができる一方、手形貸付では貸付金の返済義務が残るなど、万一のときの負担も変わります。

会計処理の面では、ファクタリングは「売掛金の売却」として扱われる取引であり、条件によっては売掛金を帳簿から外せる(オフバランス)場合があります。

 

これに対し、手形貸付は「借入金」として貸借対照表に残るため、自己資本比率や金融機関からの見え方に直接影響します。

同じ金額を資金化しても、決算書上の姿が変わるため、銀行交渉や格付け、将来の融資余力まで含めて検討することが求められます。

 

観点 ファクタリングと手形貸付の違い
費用 ファクタリング=手数料(売掛金から控除)/手形貸付=金利+諸費用
リスク ノンリコース型では取引先倒産リスクを外部に移転可能/手形貸付は自社が返済義務を負う
会計処理 売掛金の売却として処理されることがある/借入金として貸借対照表に計上

 

手数料・金利と実質コスト

ファクタリングの費用は「手数料率(%)」、手形貸付の費用は「金利(年率%)」で表示されるのが一般的ですが、どちらも「実際の資金化期間」と「繰り返し利用の有無」を踏まえて実質コストを見ておく必要があります。

ファクタリングは、売掛金額から一括で手数料を差し引くため、見かけの手数料率が同じでも、資金化期間が短いほど年率換算では高い数字になります。

 

一方、手形貸付は借入期間に応じて利息を支払う仕組みで、期間が長くなれば総利息額も増えますが、年率としてはファクタリング手数料より低く抑えられることが多くなります。

例えば、請求書額100万円を対象に、30日前倒しでファクタリングを利用し、手数料10%だったとします。

 

この場合、受け取れる金額は90万円で、買取率(=入金額÷請求書額×100)は90%です。簡便的に実質年率を計算すると、

10%×365日÷30日≒約121.7%となり、短期間の前倒しであっても、年率換算では高い数字になります。

 

同じ100万円を30日間だけ手形貸付で借り、年利5%とすると、利息はおおよそ
100万円×5%×30日÷365日≒約4,100円

で、実質コストは約0.41%に相当します。単純な数字だけを見れば融資の方が有利に見えますが、手形貸付には「審査時間」「担保・保証の要否」「与信枠の制約」といった要素があるため、単純に年率だけで優劣を判断せず、「スピード」「必要条件」と合わせて総合的に比較することが大切です。

 

費用比較で押さえたいポイント
  • ファクタリングは短期でも年率換算では高コストになりやすい
  • 手形貸付は年利ベースでは低コストだが、審査・担保など条件が厳しくなりやすい
  • 買取率(実際に受け取れる割合)と実質年率を自社で概算しておく
  • 金利・手数料だけでなく、スピードや利用条件も含めて総合比較する

 

償還義務とリスク分担の違い

償還義務とは、「将来、元本を返済する義務があるかどうか」を示す考え方です。手形貸付では、借入金として元本と利息を返済する義務が借り手企業にあります。

期日に手形が決済できなかった場合でも、借入金の返済義務そのものは消えず、不渡りが発生すれば信用情報に大きな影響を与えます。

 

一方で、ファクタリングのうちノンリコース型は、売掛債権の売却後、取引先の倒産・長期不払いが発生しても、原則として利用者に償還義務が生じない契約形態です(ただし、架空債権や二重譲渡など利用者側の不正・契約違反は別扱い)。

リコース型ファクタリングや一部の契約では、売掛先から回収できなかった場合に利用者が差額を支払う義務や、一定条件での買戻し義務が定められていることがあります。

 

この場合、形式上はファクタリングであっても、実質的には手形割引に近い「貸付」に近い性格を持ち、倒産・不払い時の損失は最終的に自社が負う構図になります。

「倒産リスクをどこまで外部に出したいのか」という視点で、ノンリコースかリコースか、手形貸付かを選別することが重要です。

 

償還義務・リスク分担での注意ポイント
  • 手形貸付は常に元本返済義務があり、不渡り時も借入金の責任は残る
  • ノンリコース型ファクタリングは、取引先倒産リスクを原則として外部に移転できる
  • 「ノンリコース」とされる契約でも、買戻し・差額精算条項がないか契約書を確認する
  • 倒産リスクをどこまで許容できるかを前提に、スキームを選ぶ

 

決算書への影響と勘定科目の違い

会計処理の観点では、ファクタリングと手形貸付は決算書への表れ方が異なり、金融機関や取引先からの見え方に影響します。

ファクタリングは「売掛債権の売却」として扱われる取引であり、一定の条件を満たす場合には、売掛金を貸借対照表から消去し、代わりに受け取った現金とファクタリング手数料(売上割引料・支払手数料など)を計上する処理が行われます。

 

このように売掛金をオフバランスできれば、貸借対照表上の売掛金残高が減少し、回収リスクが外部へ移転した状態が反映されます。

一方、手形貸付は融資取引であるため、貸借対照表上は「借入金」や「短期借入金」として計上されます。

受け取った資金は現金や預金の増加として計上され、時間の経過とともに元本返済と利息支払いが行われます。

 

利息は「支払利息」として損益計算書に計上され、借入金残高は返済に応じて減少していきますが、借入金が増えることで自己資本比率や負債比率にはマイナスに働く可能性があります。

勘定科目の違いという観点では、ファクタリングの手数料は「支払手数料」「売上割引料」「ファクタリング手数料」などで処理されることが多く、手形貸付の利息は「支払利息」で処理されます。

どちらも費用として損金算入されるのが一般的ですが、貸借対照表の見た目や金融機関の与信判断には差が出るため、「一時的に売掛金を減らして見せたいのか」「借入金を増やしても低コストで調達したいのか」といった観点で選択することになります。

 

項目 ファクタリング 手形貸付
貸借対照表 売掛金減少+現金増加(条件によりオフバランス) 現金増加+借入金増加
損益計算書 ファクタリング手数料(支払手数料・売上割引料など) 支払利息・保証料など
与信への影響 売掛金残高の圧縮により、回収リスクの外部移転が反映される 借入金の増加により、自己資本比率や負債比率に影響

 

会計・決算面で比較するときのポイント
  • ファクタリングは売掛金の売却として処理され、条件によりオフバランスが可能
  • 手形貸付は借入金として残り、財務指標や銀行の与信判断に直結する
  • 手数料は「支払手数料」等、利息は「支払利息」で処理するのが一般的
  • 将来の借入余力や格付けへの影響も含めて、どちらが自社に適するか検討する

 

銀行融資が難しい企業の活用場面

銀行融資や手形貸付は、一定の自己資本や利益水準、担保余力が求められるため、赤字決算が続いている企業や債務超過の企業、保証人・担保を十分に用意できない企業では、追加融資や枠の拡大が難しくなることがあります。

一方で、売上そのものは継続しており、売掛金や手形は積み上がっているというケースも多く見られます。

 

このような場合に「取引先からの入金は数か月後だが、仕入や人件費の支払いは目前に迫っている」という資金ギャップを埋める手段として検討されるのが、ファクタリングや手形割引といった売掛債権・手形を活用した資金調達です。

ファクタリングは売掛先の信用力を主な審査対象とするため、自社の決算が赤字でも、取引先が安定していれば利用余地があります。

 

手形貸付・手形割引は銀行融資の一形態であり、自社・手形振出人双方の信用力や担保の有無に左右されますが、条件を満たせば比較的低い金利でまとまった運転資金を確保できる点が特徴です。

銀行融資が難しい企業にとっては、「自社の財務状況」「取引先の信用力」「必要なスピード」「担保余力」の4点を整理したうえで、どの手段をどの程度組み合わせるかを検討することが実務的です。

 

状況 想定される活用イメージ
赤字・債務超過 銀行の新規融資や枠拡大が難しく、取引先の信用力を活用したファクタリングを検討。
担保・保証不足 不動産担保や保証協会枠が足りない場合に、売掛金・手形を使った資金調達を併用。
急な資金需要 決算・稟議に時間がかかる融資より、比較的スピードの出やすいファクタリングを優先。

 

赤字・債務超過企業の資金調達例

赤字決算や債務超過が続いている企業は、銀行の格付けが下がりやすく、新規融資や手形貸付の増額が難しくなります。

特に、既存借入の返済条件を変更(リスケジュール)している企業では、「追加の融資は当面困難」と判断されるケースもあります。

 

一方で、事業自体は継続しており、売掛金や受取手形は積み上がっていることも多く、売上と資金繰りのギャップが課題となります。

このような局面で、取引先の信用力を前提として売掛債権を資金化するファクタリングは、赤字・債務超過企業が選択しやすい手段の一つです。

 

例えば、売掛金1,500万円があり、入金サイトが「月末締め翌々月末払い」である企業を考えます。

原材料の仕入や外注費の支払いが先行し、月末に1,000万円の支払いが発生する一方、銀行からの短期融資は既存枠いっぱいでこれ以上借りられない状況とします。

 

このとき、売掛金のうち500万円分だけをファクタリングで資金化(手数料10%、入金額450万円)し、不足分を補うといった使い方が考えられます。

このようなケースでは、「すべてをファクタリングに頼る」のではなく、「足りない部分だけを一時的に資金化し、構造的な赤字は別途対策する」という切り分けが重要です。

ファクタリングを利用しても、根本的な収支構造や利益率が改善されなければ、資金繰りの問題は先送りされるだけになるため、コスト削減や採算の取れない取引の見直しとセットで検討することが求められます。

 

赤字・債務超過企業がファクタリングを使う際のポイント
  • 銀行融資の難易度と、取引先の信用力(売掛先の与信)を切り分けて整理する
  • 売掛金全体ではなく、不足分の資金だけを対象にするなど利用額に上限を設ける
  • ファクタリング利用と並行して、赤字体質・債務超過の是正策を検討する
  • 毎月の固定的な手数料負担にならないよう、利用頻度と期間もあらかじめ決めておく

 

保証不足企業と手形貸付の選択基準

手形貸付や他の銀行融資では、信用保証協会の保証枠や不動産担保、代表者の連帯保証などが求められることが少なくありません。

すでに保証協会枠を使いきっている、担保に出せる不動産がない、追加で代表者保証を差し入れたくない、といった企業では、手形貸付の選択肢が狭まり、資金調達方法の見直しが必要になります。

 

その一方で、ある程度の財務内容が維持されている企業であれば、低い金利でまとまった金額を借りられる手形貸付は、長期的な資金調達手段として依然有力です。

保証不足企業が「手形貸付を優先するか、それともファクタリング等を組み合わせるか」を判断する際には、次のような基準で整理すると分かりやすくなります。

 

  • 現在の保証協会利用残高と、今後の借入需要(設備投資・長期運転資金)の大きさ
  • 担保不動産の有無と評価額、追加で担保提供することへの許容度
  • 短期的な資金不足か、構造的な運転資金不足かといった資金ニーズの性質
  • 主要取引先の信用力(ファクタリングに転用できる売掛先があるか)

 

手形貸付を優先するパターンは、財務内容がある程度維持されており、今後も継続的に運転資金が必要になるケースです。

この場合、低金利で長めの返済期間を設定できるため、年間の資金コストは抑えやすくなります。

一方、保証枠・担保余力が不足している場合や、急な資金需要で稟議に時間をかけられない場合は、ファクタリングなど担保・保証人を前提としない手段を併用する方が現実的です。

 

保証不足企業での手形貸付・ファクタリング選択基準
  • 長期的な運転資金は、可能であれば低金利の手形貸付・証書貸付を優先
  • 保証枠・担保余力が不足している部分は、売掛債権を使ったファクタリングで補う
  • 急な資金需要はスピードの出やすい手段、計画的な需要は融資で対応する
  • 保証協会枠や担保を温存したい場合は、「借入に頼り過ぎない」方針も選択肢に含める

 

ファクタリングを優先するケース

ファクタリングを優先して検討すべきケースは、「銀行融資が難しい」「時間的な猶予が少ない」「売掛先の信用力が高く、債権が十分ある」という3条件がそろう場面です。

典型的なのは、決算が悪化している、保証枠・担保余力が限られている、すでに借入金が多くこれ以上バランスシートを膨らませたくない、といった企業が、短期の資金ギャップを埋めたいケースです。

 

取引先が大企業・上場企業などで支払い遅延が少ない場合、売掛債権そのものは高い信用力があり、ファクタリングの対象として評価されやすくなります。

また、受注が急増したタイミングで仕入や外注費が先行し、売上は十分だが運転資金が一時的に不足する場面でも、ファクタリングの優先度は高まります。

 

銀行融資では、決算書ベースの評価や稟議に時間を要するのに対し、ファクタリングは取引先との売買契約書や請求書・入金実績をもとに審査が行われるため、比較的短期間での資金化が期待できます。

さらに、将来の設備投資や借換えのために「これ以上借入金を増やしたくない」という方針を持つ企業にとっても、ファクタリングは有効な選択肢です。

売掛金を一時的に現金化しつつ、貸借対照表上の借入金残高を増やさずに済むため、自己資本比率や金融機関からの見え方を大きく変えずに資金を確保できる可能性があります。

 

ファクタリングを優先して検討したいケース
  • 赤字・債務超過などで銀行融資の新規・増額が難しい
  • 支払期日が近く、融資の審査・稟議を待つ時間的余裕がない
  • 主要取引先が安定しており、売掛債権の信用力が高い
  • 将来の借入枠や財務指標を悪化させたくないため、借入以外の手段を使いたい

 

選び方チェックと比較ポイント

ファクタリングと手形貸付のどちらを使うかを検討するときは、「どれくらい必要か(金額)」「いつまで必要か(期間)」「何に使うか(目的)」に、自社の財務状態(赤字・債務超過・担保余力など)を重ねて整理することが重要です。

一般的に、金額が大きく期間も長い運転資金や設備資金は、低金利の銀行融資・手形貸付が候補になります。

 

一方、決算悪化や保証枠不足で融資が難しい、あるいは支払期日が迫っており稟議を待てない、といった状況では、売掛金を使ったファクタリングの優先度が高まります。

選び方のイメージをつかむには、「短期の資金ギャップを埋めるのか」「毎月の運転資金を長期的に賄うのか」を切り分け、「借入枠を増やしても問題ないか」「借入金をこれ以上増やしたくないか」といった財務方針も併せて確認します。

同じ1,000万円の資金でも、1か月だけ足りないのか、1年通して足りないのかで、適切な手段は変わります。

 

比較軸 検討のポイント
必要金額 数百万円規模の短期不足か、数千万円規模の長期運転資金・設備資金か。
必要期間 1〜2か月の一時的なギャップか、1年以上続く構造的な不足か。
財務制約 赤字・債務超過・保証枠・担保余力の有無、借入金を増やせるか。
スピード 支払期日までの残り日数と、融資審査・ファクタリング審査にかかる時間。

 

資金ニーズ別の選び方フロー

資金調達手段を選ぶときは、最初に「どのタイプの資金ニーズなのか」を整理すると判断しやすくなります。

大まかには、①突発的な資金ショートを埋める「短期・スポット資金」、②季節要因による売上変動に対応する「短期・反復資金」、③事業拡大や設備投資を支える「中長期・継続資金」に分けて考えることができます。

 

それぞれに向き・不向きがあり、「何となく急いでいるからファクタリング」「とりあえず銀行に相談」という決め方は避けた方が安全です。

例えば、「月末の支払いに数百万円だけ足りない」「来月に大型入金が確定している」といった短期・スポット資金であれば、審査・稟議に時間のかかる融資よりも、売掛債権を対象としたファクタリングの方が現実的な場合があります。

 

一方、「売上は安定しているが、慢性的に運転資金が不足している」「設備投資のために1〜5年かけて返済したい」という中長期・継続資金は、基本的に銀行融資・手形貸付の領域です。

ここでファクタリングを常用してしまうと、手数料負担が積み上がり、収益性を大きく損なうおそれがあります。

 

資金ニーズ別・ざっくり選び方フロー
  • 短期・スポット(1〜2か月):売掛金の範囲内でファクタリングを検討
  • 短期・反復(季節資金):手形貸付など短期融資+必要に応じてファクタリングを補完
  • 中長期・継続(1年以上):原則は手形貸付・証書貸付などの融資を軸に検討
  • 赤字・債務超過・保証不足:融資が難しい部分だけファクタリングで補う、という役割分担を意識

 

契約前に確認すべき注意点

ファクタリング・手形貸付のいずれにおいても、契約前に「見落としやすいポイント」を押さえておくことが重要です。

まず費用面では、ファクタリングの手数料率や手形貸付の金利だけでなく、事務手数料・保証料・印紙税・振込手数料などの付随費用を含めた「総コスト」を確認します。

 

特にファクタリングでは、「最安◯%」という表示に対し、実際の適用率や最低手数料の有無を問い合わせておくとギャップを減らせます。

次に、契約条件・リスク分担です。ファクタリングでは、ノンリコースかリコースか、買戻し義務や差額精算条項の有無、対象債権の範囲(特定の請求書のみか、包括的か)を必ず確認します。

 

手形貸付では、返済期間や据置期間の有無、期限の利益喪失条項(返済遅延が発生した場合に一括返済を求められる条件)、追加担保・追加保証を求められるケースを事前に把握しておく必要があります。

さらに、決算・銀行取引への影響もチェックポイントです。ファクタリングを多用すると売掛金残高は圧縮されますが、粗利や営業利益との関係で「手数料負担が大きすぎないか」を確認する必要があります。

手形貸付は借入金を増やすため、自己資本比率や利息負担の増加を踏まえ、将来の借入余力がどの程度残るかも検討しておくと安心です。

 

契約前に最低限チェックしておきたい事項
  • 表示利率・手数料率だけでなく、総コスト(事務手数料・保証料など)
  • ファクタリング:ノンリコース/リコース、買戻し・差額精算条項、対象債権の範囲
  • 手形貸付:返済条件、期限の利益喪失条項、担保・保証の条件
  • 決算・銀行与信への影響(借入金残高、手数料負担、将来の借入余力)

 

シミュレーションで比較する実務視点

実務で手段を選ぶ際には、「感覚」ではなく簡単なシミュレーションに落とし込むことが有効です。

たとえば、同じ1,000万円を30日間必要とするケースを想定し、「ファクタリングを利用した場合」「手形貸付を利用した場合」「何も利用せずに支払い条件交渉を行った場合」など複数パターンを並べて比較します。

 

それぞれについて、①調達コスト(手数料・利息)、②入金までのスピードと確実性、③決算への影響(売掛金・借入金・利益)、④社内リソースや今後の借入余力への影響を一覧化します。

簡単な例として、請求書額1,000万円、入金は60日後、30日前倒しで資金が必要なケースを考えます。

手数料10%のファクタリングなら、受け取る金額は900万円で、コストは100万円。年率換算では高コストですが、審査が通れば数日で資金化できます。

 

一方、年利5%の手形貸付で30日借りた場合、利息は
1,000万円×5%×30日÷365日≒約4.1万円

と、金利面では大きな差が出ますが、審査・稟議に2〜3週間かかる可能性があるうえ、担保や保証が必要になるかもしれません。

 

このような比較を行うことで、「今の自社にとって何がボトルネックか」が見えてきます。時間が最優先なのか、金利・手数料なのか、借入枠の温存なのかによって、選ぶべき手段は変わります。

Excelなどで簡易シミュレーションシートを作り、金額・期間・手数料率・金利を入力すると、自社にとっての実質コストがすぐ分かるようにしておくと、今後の案件でも素早く判断しやすくなります。

 

シミュレーションで比較するときの実務チェック
  • 「金額・期間・手数料率・金利」を入力する簡易シートを作っておく
  • ファクタリングと手形貸付で、総コスト・年率換算・入金スピードを並べて比較する
  • 決算書への影響(売掛金・借入金・利益)も簡単な前後比較で確認する
  • 毎回感覚で決めず、過去のシミュレーション結果を蓄積して社内基準にしていく

 

まとめ

ファクタリングは売掛債権を売却して資金化する取引、手形貸付は約束手形等を担保・返済原資とする融資であり、同じ「資金調達」でも性質は異なります。

審査対象(取引先か自社か)、費用構造(手数料か金利か)、償還義務の有無、決算書への影響を整理することで、自社の資金ニーズとリスク許容度に合った手段を選びやすくなります。

記事で示した比較表やシミュレーションの視点をヒントに、銀行融資・手形貸付・ファクタリングを並べて検討し、短期資金・継続資金それぞれに最適な組み合わせを設計することが重要です。