【厳選19社】ファクタリングのサービスや手数料を徹底比較 >

当サイトはプロモーションが含まれています

ファクタリングと証書貸付の違いとは?仕組み・審査・コストを基礎から徹底解説

「ファクタリング」と「証書貸付(銀行の一般的な融資)」は、どちらも資金調達の手段としてよく名前は聞くものの、仕組みやリスクの違いが分かりづらいと感じる方は多いです。

本記事では、売掛債権を売却して現金化するファクタリングと、金銭消費貸借契約に基づく証書貸付の基本構造、審査のポイント、金利・手数料の考え方、決算書への影響の違いを整理します。銀行融資が難しい場面での位置付けや併用パターン、注意すべきリスクも客観的に解説し、自社の状況に合う資金調達方法を選びやすくすることを目的としています。

 

ファクタリングと証書貸付の基本

ファクタリングと証書貸付は、どちらも事業の資金調達方法ですが、法律上の位置付けや決算書への影響が大きく異なります。

ファクタリングは、企業が保有する売掛債権(請求書にもとづく将来の売上)をファクタリング会社に売却し、支払期日前に現金化する取引です。

 

融資ではなく「売掛債権の売買」として行われ、ファクタリング会社は手数料を差し引いた買取代金を利用者に支払い、後日、売掛先から入金を受け取ります。

これに対して、証書貸付は、金融機関と「金銭消費貸借契約書(借入条件を書いた契約書)」を取り交わして行う一般的な融資形態です。

 

融資金額・返済方法・利率・返済期間などを契約書に明記し、その条件に従って元利金を返済していきます。

主に1年以上の中長期資金で利用されることが多く、住宅ローンや事業性ローン、プロパー融資などで広く使われています。

 

ファクタリングは「売掛債権をどれだけ保有しているか」、証書貸付は「企業全体の返済能力や担保状況」を主な審査対象とする傾向があり、資金調達のスピードやコスト、利用しやすさも変わってきます。

まずは、両者の基本構造を整理しておくと、後の比較や使い分けを理解しやすくなります。

 

項目 ファクタリングと証書貸付の違い(概要)
取引の性質 ファクタリング:売掛債権の売買/証書貸付:金銭の貸付(借入)
契約書 ファクタリング:債権譲渡契約書・基本契約書など/証書貸付:金銭消費貸借契約書(証書)
主な審査の軸 ファクタリング:売掛債権の内容・売掛先の信用力/証書貸付:決算内容・返済能力・担保・保証など
会計上の扱い ファクタリング:条件により売掛金の消滅+手数料の費用計上/証書貸付:借入金の負債計上+利息費用

 

ファクタリングの仕組みと資金調達の流れ

ファクタリングは、売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、支払期日前に現金化する仕組みです。

利用者(売掛債権の保有者)は、取引先に対して請求した売掛金を、期日まで待たずに資金化したいときにファクタリングを検討します。

 

ファクタリング会社は、請求書や取引基本契約書、通帳明細などから売掛債権の実在性や売掛先の信用力を確認し、買取可能な金額と手数料率を提示します。

一般的な流れは、①申込(売掛債権の内容を提出)、②審査(売掛先の信用・取引実績の確認)、③契約締結(債権譲渡契約・基本契約書など)、④必要に応じた債権譲渡登記や売掛先への通知、⑤ファクタリング会社から利用者の口座へ買取代金の入金、⑥支払期日に売掛先からファクタリング会社へ入金、というステップです。

 

二社間ファクタリングでは売掛先への通知を行わない方式もありますが、三社間ファクタリングでは売掛先に債権譲渡を通知し、直接ファクタリング会社に支払ってもらう形をとります。

例えば、請求書額1,000万円、手数料率3%、支払期日前30日で資金化する場合、買取率は97%で受取額970万円、手数料は30万円となります(前提:請求書額1,000万円、手数料率3%、買取率97%)。

この30万円が30日分の資金調達コストに相当するため、他の短期借入などと比較するときは、年率換算した実質コストとして評価する必要があります。

 

ファクタリング利用前に整理したいポイント
  • どの取引先のどの請求書(売掛債権)を対象にするかを明確にする
  • 売掛先の信用力や入金実績を説明できる資料(通帳・契約書など)を準備する
  • 二社間か三社間かで、売掛先への通知有無や手数料水準が変わることを理解する
  • 手数料率と前倒し日数から、実質的な資金調達コストを概算しておく

 

証書貸付の概要と他の融資との違い

証書貸付は、金融機関と金銭消費貸借契約書(いわゆる「金消契約書」)を取り交わし、その内容に従って融資を行う形式の貸付です。

契約書には、融資金額、資金使途、返済期間、返済方法(元利均等返済など)、利率、利息の計算方法、担保・保証の有無と内容などが記載されます。

 

中長期の運転資金や設備資金に利用されることが多く、融資額と返済条件を事前に確定させる分、計画的な返済がしやすい点が特徴です。

他の融資形態としては、約束手形を差し入れて短期資金を調達する「手形貸付」や、上限枠の範囲内で自由に借入・返済を行う「当座貸越」などがありますが、証書貸付は一度にまとまった資金を借り入れ、決められたスケジュールで返済していくオーソドックスな手法です。

 

貸付期間1年を超える長期融資で採用されることが多く、住宅ローンや事業性融資、プロパー融資、保証協会付き融資などでも金銭消費貸借契約書が用いられます。

証書貸付は、返済能力とともに担保(不動産・保証人・保証協会保証など)が重視されるのが一般的であり、審査には一定の時間を要します。

一方で、条件が整えば金利は相対的に低めに設定されやすく、中長期の資金需要を賄ううえでの中核的な手段となります。

 

証書貸付を理解するための基本ポイント
  • 金銭消費貸借契約書に融資条件(額・期間・利率・返済方法など)が明記される
  • 中長期の運転資金や設備資金など、計画的な返済を前提とした資金ニーズに向いている
  • 手形貸付・当座貸越などの短期・枠型の融資とは、使い方や返済ルールが異なる
  • 返済能力・担保・保証などを総合的に評価するため、審査に時間を要する傾向がある

 

売掛債権売却と金銭消費貸借の法的位置付け

ファクタリングと証書貸付の本質的な違いは、「売掛債権の売買」と「金銭の貸付け」という法律上の位置付けにあります。

ファクタリングは、売掛債権の譲渡(売買)を行う契約であり、民法上の債権譲渡・売買契約の枠組みの中で行われます。

 

売掛債権の所有権が利用者からファクタリング会社へ移転し、その対価として買取代金が支払われます。差額(債権額と買取額の差)がファクタリング手数料に相当します。

一方、証書貸付の前提となる金銭消費貸借契約は、民法587条が定める「消費貸借契約」の一種であり、「金銭を受け取り、同額の金銭(利息を含む場合は利息も含めて)を返還する義務」を生じさせる契約です。

 

つまり、「金銭を借りて返す」典型的な借入契約であり、その条件は金銭消費貸借契約書に明記されます。この違いは、適用される規制にも影響します。

ファクタリングは売掛債権の売買であるため、通常は利息制限法や貸金業法の「利息規制」の対象にはなりませんが、実態が「債権を担保にした短期の高金利貸付け」に近い場合には、金融庁は貸金業法上の貸付けに該当するおそれがあると注意喚起しています。

一方、証書貸付は典型的な貸付契約であり、金利や手数料については利息制限法や出資法などの規制を受けます。

 

法的位置付けを整理する際のチェックポイント
  • ファクタリング:売掛債権の売買・譲渡として行われる(民法上の債権譲渡・売買)
  • 証書貸付:金銭消費貸借契約にもとづく「借入」であり、利息制限法等の規制対象
  • ファクタリングでも、実態が貸付と同様の場合は貸金業法の適用が問題となることがある
  • 契約書の名称だけでなく、資金の流れとリスク分担(誰が何を負うか)を確認することが重要

 

証書貸付の種類と運転資金・設備資金への活用

証書貸付は、金融機関と金銭消費貸借契約書(いわゆる金消契約)を取り交わして実行される融資の総称で、その中には「プロパー融資(銀行独自の融資)」と「信用保証協会付き融資」などいくつかのタイプがあります。

いずれも契約書に融資金額・期間・利率・返済方法・担保や保証の有無と内容が明記され、事業者はその条件に従って元金と利息を返済していきます。

 

ファクタリングが売掛債権の売却による資金調達なのに対し、証書貸付は決算書上「借入金」として負債計上される点が大きな違いです。

証書貸付は、運転資金・設備資金ともに利用されますが、運転資金では3〜7年程度の中期返済、設備資金ではより長期の返済期間が設定されることが多く、返済期間の設計によって月々の返済負担を調整できます。

 

利用者の立場から見ると、「まとまった金額を計画的に返していく軸の資金=証書貸付」「売掛債権を使って短期的につなぐ資金=ファクタリング」と整理しておくと、自社の資金繰り全体を組み立てやすくなります。

証書貸付を検討する際は、単に金利水準だけでなく、保証料・担保条件・元金据置期間の有無(一定期間利息のみ支払う期間)なども含めて総合的に比較することが重要です。

特に中小企業の場合は、信用保証協会付きの証書貸付を起点に実績を積み、その後プロパー融資やABL、ファクタリングとの組み合わせを検討していくケースも多く見られます。

 

区分 証書貸付の主な位置付け
資金の性格 中長期の運転資金・設備資金など、計画的な返済を前提とする資金
審査の軸 決算内容・事業計画・担保・保証など、企業の総合的な返済能力
ファクタリングとの関係 証書貸付:資金調達の「軸」、ファクタリング:売掛債権を活用した「短期のつなぎ」

 

プロパー融資・保証付き融資としての証書貸付

証書貸付は、大きく「プロパー融資」と「信用保証協会付き融資」などの保証付き融資に分けられます。プロパー融資は、金融機関が自らリスクを負う融資であり、企業の信用力や取引実績、事業計画などを総合評価して実行されます。

保証付き融資は、信用保証協会などの公的機関が一定割合を保証することで、金融機関のリスクを軽減し、中小企業への資金供給を促す仕組みです。

 

保証付きの場合、保証料の支払いが必要になる一方、プロパーに比べて融資が受けやすくなる面があります。

運転資金・設備資金ともに、まずは保証付き証書貸付を利用し、その返済実績や業績改善を通じてプロパー融資へ移行していくのが一般的なステップです。

 

金融機関にとっては、保証付きであっても返済は借主から直接受けるため、返済実績が良好であればプロパーへの切り替えや追加融資の検討にもつながります。

利用者の側から見れば、「保証付きで実績を積み、その後は保証料負担のないプロパー枠を増やしていく」という中長期的な視点が重要です。

 

ファクタリングと組み合わせる場面では、「日々の運転資金のベース=証書貸付」「急な資金需要や売上急増時の一時的なギャップ=ファクタリング」というイメージで役割を分けると整理しやすくなります。

証書貸付単独で返済負担が重い場合には、返済期間や返済方法の見直しを金融機関に相談しつつ、売掛債権のファクタリングを一時的に併用して資金繰りを整える、といった対策も選択肢に入ります。

 

プロパー融資・保証付き融資を整理するポイント
  • 保証付き証書貸付で返済実績を積み、その後プロパー融資の拡大を目指す
  • 保証付きは保証料負担がある一方で、融資が受けやすいメリットがある
  • 証書貸付を運転資金の「軸」とし、ファクタリングは短期のギャップ対応に位置付ける
  • 返済条件が重く感じたら、早めに金融機関へ条件変更や再構築を相談する

 

運転資金・設備資金で使い分ける証書貸付

証書貸付は、運転資金・設備資金のいずれにも利用されますが、資金使途によって期間や返済方法の考え方が異なります。

運転資金向けの証書貸付は、仕入・人件費・外注費・販管費など、事業が継続する限り発生し続ける支出を賄うためのものです。

 

この場合、売掛金の回収や在庫の回転を前提として、3〜5年程度の中期で均等返済するケースが一般的です。

一方、設備資金向けの証書貸付は、機械設備や車両、店舗の内装工事など長期にわたって利益を生む資産への投資を対象とし、耐用年数に合わせた7〜10年程度の長期返済が選ばれることが多くなります。

 

運転資金を短期間で返しきれないほど長期に借りると、借入が常態化しやすく、次の資金需要が発生したときに追加融資を受けにくくなるリスクがあります。

逆に、設備資金を短期間で返済しようとすると、月々の返済負担が重くなり、日々の資金繰りに悪影響が出ることがあります。

 

そのため、「運転資金は回転期間に見合った中期」「設備資金は耐用年数に見合った長期」という基本を押さえつつ、決算上の負担と現金収支のバランスを見て返済期間を設計することが重要です。

ファクタリングと併用する際には、「運転資金としての証書貸付+売掛の一部をファクタリングで前倒し」という組み合わせも考えられます。

この場合、証書貸付の返済スケジュールと、ファクタリングによる入金スケジュールが重ならないよう、資金繰り表で事前に確認しておくことが望ましいです。

 

資金の種類 証書貸付の組み立て方のイメージ
運転資金 売掛回転・在庫回転を踏まえて3〜5年程度の中期で返済。必要に応じてファクタリングで短期のギャップを補う。
設備資金 設備の耐用年数や収益貢献期間を踏まえ、7〜10年程度の長期で返済。月々の返済負担が過大にならないよう設計。

 

手形貸付・当座貸越との違いと併用パターン

証書貸付と並ぶ融資形態として、「手形貸付」と「当座貸越」があります。手形貸付は、企業が銀行に約束手形を振り出し、その手形を裏付けとして資金を借り入れる短期融資で、通常1年以内の返済が前提です。

当座貸越は、一定の極度額(枠)を設定し、その範囲内で当座預金の残高を超えて引き出しができる仕組みで、必要なときに必要な分だけ借り入れ・返済ができる柔軟な資金調達手段です。

 

証書貸付が「一括で借りて計画的に返していく」性格が強いのに対し、手形貸付は「短期のスポット資金」、当座貸越は「日々の出入りに応じた変動資金」の色合いが強くなります。

中小企業の実務では、証書貸付でベースとなる運転資金・設備資金を確保しつつ、季節変動や大口案件の発生時には手形貸付や当座貸越で一時的に厚みを持たせる、といった併用パターンが一般的です。

 

ファクタリングとの関係で見ると、「売掛金の早期資金化=ファクタリング」「短期のつなぎ融資=手形貸付・当座貸越」「中長期の基盤資金=証書貸付」という役割分担になります。

どれか一つに頼り切るのではなく、事業の特性(季節変動の有無、受注単価の大きさ、売掛・在庫の比率など)に応じて組み合わせを考えることで、資金繰りの安定性を高めやすくなります。

 

証書貸付・手形貸付・当座貸越の併用イメージ
  • 証書貸付:運転資金・設備資金の「骨格」となる中長期資金
  • 手形貸付:大口案件や一時的な支出増に対応する短期スポット資金
  • 当座貸越:日々の出入りに応じて柔軟に使う変動資金の枠
  • ファクタリング:売掛金を早期に資金化し、上記と組み合わせて資金繰りの安全余裕を確保

 

ファクタリングと証書貸付の比較ポイント

ファクタリングと証書貸付は、どちらも事業資金を調達する手段ですが、「誰をどう審査するか」「どれくらいのスピードで資金化できるか」「いくらまで調達できるか」「決算書にどう表れるか」といったポイントが大きく異なります。

ファクタリングは、既に発生している売掛債権を対象とし、売掛先の信用力や取引実績を重視して審査するのに対し、証書貸付は決算内容・事業計画・担保・保証など、企業全体の返済能力を総合的に見て判断するのが一般的です。

 

また、ファクタリングは売掛金を期日前に資金化する短期の資金繰り調整向き、証書貸付は運転資金・設備資金など中長期の資金ニーズに対応する「軸となる借入」という位置付けになります。

どちらが優れているというより、「必要な金額・期間・目的」によって適した手段が変わるため、比較軸を整理したうえで選択することが重要です。

 

比較軸 ファクタリングと証書貸付の違い(概要)
審査対象 ファクタリング:売掛債権の内容・売掛先の信用力中心/証書貸付:決算・事業計画・担保・保証など企業全体
スピード ファクタリング:書類が揃えば短期で資金化しやすい/証書貸付:審査・稟議に一定の時間
コスト ファクタリング:手数料率で表示/証書貸付:金利+手数料・保証料など
財務への影響 ファクタリング:条件によっては売掛金のオフバランス化/証書貸付:借入金として負債計上

 

審査対象・必要書類・スピードの違い

審査の見られ方は、ファクタリングと証書貸付で大きく違います。ファクタリングでは、「売掛債権が確かに存在しているか」「売掛先が支払能力のある企業か」「過去に支払遅延がないか」といった点が中心となり、利用者自身の財務内容は補助的な確認にとどまるケースもあります。

必要書類も、請求書・取引基本契約書・納品書・通帳明細(売掛先からの入金実績)など、対象となる売掛債権の成り立ちを証明するものが主役になります。

 

これに対して証書貸付は、決算書(貸借対照表・損益計算書)、試算表、資金繰り表、事業計画、税務申告書、担保に関する書類(不動産登記事項証明書など)、代表者保証を行う場合には代表者個人の資産状況など、多岐にわたる資料が必要です。

金融機関は、これらを総合して「返済原資が継続的に確保できるか」「担保・保証でどの程度リスクをカバーできるか」を判断します。

 

スピード面では、対象が既に発生している売掛債権に限定されるファクタリングの方が、少額〜中規模の案件で短期間に結論が出やすい傾向があります。

一方、証書貸付は、融資金額が大きくなるほど社内稟議や審査に時間を要しますが、その分、決まれば長期的な資金ラインとして利用できる強みがあります。

 

審査・書類・スピードを比較するときの着眼点
  • ファクタリング:売掛先・売掛債権の内容と入金実績が審査の主軸になる
  • 証書貸付:決算書・事業計画・担保・保証など、企業全体の返済能力が問われる
  • 短期のつなぎや特定案件の資金化にはファクタリングのスピードが活かせる
  • 中長期の資金枠づくりには、時間をかけて証書貸付の条件を整える発想が必要

 

金利と手数料の比較と実質コストの考え方

ファクタリングと証書貸付は、表示の仕方が違うため、そのまま数字だけを見比べてもコスト感がつかみにくくなります。ファクタリングでは、「手数料率◯%」「買取率◯%」といった形式で示されるのが一般的です。

例えば、請求書額1,000万円、手数料率3%の場合、受取額は970万円、手数料は30万円となります。前倒し期間が30日なら「30日分のコストが30万円」という関係になります。証書貸付の場合は、年率で金利が表示されます。

 

例えば、年利2%で1,000万円を1年間借りた場合、単純化すると利息はおおよそ20万円前後(返済方法により実際の利息総額は変動)というイメージです。ここに、融資実行時の事務手数料や、保証付き融資であれば保証料が上乗せされます。

実質コストを比較する際には、ファクタリングの手数料を年率換算してみるのが一つの目安です。

 

先ほどの例で、1,000万円の売掛金を手数料30万円で30日早く受け取るケースを単純に年換算すると、「30日で3%=1年(365日)で約36%程度」の負担感になります(実務では正確な計算式を用いますが、イメージとして)。

これに対し、証書貸付は年率数%台であることが多く、長い期間をかけて返済する前提のため、1日あたり・1か月あたりのコスト感は異なります。

 

実質コスト比較で押さえたいポイント
  • ファクタリング:手数料率と前倒し日数から、年率に換算したイメージを持つ
  • 証書貸付:金利だけでなく、保証料・事務手数料も含めた総コストで見る
  • 「一時的につなぐ資金」か「長期に利用する資金」かで、適切なコスト水準が変わる
  • 複数の手段を比較し、自社の利益率・資金繰りに照らして許容範囲かを検討する

 

負債計上と財務指標への影響の違い

決算書への影響という点でも、ファクタリングと証書貸付は性質が異なります。証書貸付は、金銭消費貸借契約に基づく借入であるため、貸借対照表の負債の部に「短期借入金」「長期借入金」などとして計上されます。

その結果、自己資本比率や有利子負債比率、債務償還年数など、金融機関が重視する財務指標に直接影響を与えます。

 

一方で、借入金で調達した資金が設備投資や運転資金として活用され、利益を生めば、長期的には財務体質の改善につながる可能性もあります。

ファクタリングは、売掛債権の売却として行われ、かつ売掛先の不払いリスクがファクタリング会社側に移転している場合には、会計上、売掛金を消去し、受け取った現金と手数料(費用)として処理されます。

 

この場合、借入金のような負債は計上されないため、短期的には自己資本比率や有利子負債比率への悪影響を避けつつ資金化できる点が特徴です。ただし、売掛金残高が減る一方で現金が増えるため、売掛回転期間などの指標には影響が出ます。

一方で、ファクタリングでも、契約条件によっては「売掛金を残したまま、実質的には借入と同様に扱う」べきケースも存在します。

 

例えば、売掛先が支払わなかった場合に利用者が全額を買い戻す義務を負うなど、リスクが実質的に利用者に残っている場合には、会計上「借入金」として処理する判断がなされることもあります。

どちらの手段を選ぶにしても、資金繰りだけでなく、財務指標や将来の融資に与える影響まで見通しておくことが大切です。

 

財務指標への影響を整理するときの視点
  • 証書貸付:借入金として負債が増え、自己資本比率・有利子負債比率に直接影響する
  • ファクタリング:条件によっては負債を増やさず、売掛金を現金化できるが、売掛残高は減少する
  • リコース型ファクタリングなど、実質的に借入と同じ構造の場合は会計処理に注意が必要
  • 金融機関が重視する指標(自己資本比率・債務償還年数など)への影響を事前に試算する

 

銀行融資が難しいときの選択肢としての位置付け

銀行の証書貸付は、中長期の運転資金・設備資金をまかなう「資金調達の軸」ですが、赤字決算が続いている、自己資本が薄い、担保不動産や保証人が不足している、設立から間もないといった理由で希望どおりの借入が難しいケースも少なくありません。

そのような場面で「ほかに何が使えるのか」を整理する際に候補となるのが、売掛債権を資金化するファクタリングや、売掛債権・在庫などを担保にした資産担保融資、当座貸越・短期借入などの枠型融資です。

 

重要なのは、「銀行融資が出ないからファクタリングしかない」と単純に捉えるのではなく、自社の資産構成や資金ニーズの期間を踏まえて、複数の手段の役割を分けて考えることです。

短期の資金ギャップを埋めるのか、構造的な運転資金不足に対応したいのかによって、適切な手段は変わります。

また、ファクタリングや資産担保融資を利用しながら、決算内容の改善や自己資本の厚みづくりを進め、中長期的には再び証書貸付を使いやすい状態を目指すという考え方も重要です。

 

手段 銀行融資が難しい場面での位置付け
証書貸付 中長期の運転資金・設備資金の「軸」。赤字・担保不足などでハードルが上がる。
ファクタリング 売掛先の信用を活用し、短期の資金ギャップを埋める手段。負債を増やさず資金化できる場合もある。
資産担保融資等 売掛債権・在庫・設備などを担保に、決算数字だけでは活かしきれない事業性資産をテコにする融資。

 

赤字決算・担保不足の場合のファクタリング活用

赤字決算や債務超過が続いている場合、銀行は証書貸付について慎重になりやすく、追加融資や条件変更が難航することがあります。また、担保となる不動産や高額な設備が乏しい場合、希望額に届かないケースも少なくありません。

その一方で、売掛先が大企業や信用力の高い取引先であれば、売掛債権自体の信用度は高く、ファクタリングを通じてその部分だけを切り出して資金化することが可能になる場合があります。

 

ファクタリングの審査では、「利用者」ではなく「売掛先」の信用力と売掛債権の実在性が重視されるため、利用者側が赤字決算であっても、売掛先に支払能力があり、継続的な取引と入金実績が確認できれば、個別の案件ベースで利用可否が検討されます。

ただし、慢性的な赤字をファクタリングで埋め続けると、手数料が利益を圧迫し、かえって財務が悪化するリスクもあるため、あくまで「一時的な資金繰りの調整」にとどめる考え方が重要です。

 

実務上は、短期的にはファクタリングで支払いを乗り切りつつ、並行してコスト削減や粗利改善、不要資産の売却などの施策を実行し、決算の黒字化・自己資本の回復を図ることが望まれます。

その過程で、信用保証協会付き融資などを活用して証書貸付の枠を再構築し、「ファクタリング中心」から「銀行融資中心+必要時のみファクタリング」というバランスに戻していくイメージです。

 

赤字・担保不足でファクタリングを使うときのポイント
  • 売掛先の信用力と入金実績を重視し、案件ごとに利用可否を検討する
  • 慢性的な赤字補填ではなく、一時的な資金ギャップの解消に用途を限定する
  • ファクタリング利用と並行して、決算改善・自己資本の回復策を実行する
  • 将来的には保証付き証書貸付などと組み合わせ、資金調達の軸を再び銀行融資側に寄せていく

 

証書貸付とファクタリングの併用パターン

証書貸付とファクタリングは、「どちらか一方」ではなく、目的に応じて併用することで、それぞれの弱点を補い合うことができます。

典型的なパターンの一つは、「証書貸付をベースにしつつ、売上増加期や大口案件発生時の一時的な資金不足をファクタリングでカバーする」という使い方です。

 

たとえば、新規の大口取引で仕入や外注費が先行する場合、証書貸付だけではタイミングが合わないときがありますが、その案件から発生する売掛債権をファクタリングで一部前倒しすることで、入金までのギャップを埋めることができます。

別のパターンとして、「新規融資が実行されるまでのつなぎ資金」としてファクタリングを利用するケースもあります。

 

銀行融資の審査・稟議には時間がかかることが多く、申込から実行までに数週間〜数か月を要することもあります。

その間の資金繰りを維持するために、売掛債権の一部をファクタリングで資金化し、融資実行後にファクタリング利用の頻度を減らしていく、という流れです。

 

併用する際の注意点は、証書貸付の返済スケジュールと、ファクタリングによる入金タイミング・手数料負担を一つの資金繰り表に落とし込み、「どの月にいくら資金が出入りするのか」を見える化しておくことです。

これにより、「返済と手数料が特定の月に集中しすぎて資金ショートを招く」といった事態を避けやすくなります。

 

証書貸付とファクタリングの併用例
  • 日常の運転資金は証書貸付で確保し、大口案件の売掛部分をファクタリングで前倒し
  • 新規融資実行までの数か月を、既存の売掛債権のファクタリングでつなぐ
  • 資金繰り表で「借入返済+ファクタリング手数料+入金タイミング」を月次で確認する
  • 併用が常態化している場合は、根本的な資金計画の見直しを検討する

 

短期資金と中長期資金の役割分担

資金調達を考えるうえで、「短期資金」と「中長期資金」をきちんと分けて管理することは、銀行融資が難しい場合でも共通の重要ポイントです。

短期資金は、売掛金の入金と支払いのタイミングのズレを埋めるための資金で、期間としては数週間〜数か月程度が中心です。

 

これに対し、中長期資金は、売上拡大や人員増、設備投資、拠点拡大など、事業の規模拡大や構造的な運転資金増加を支えるための資金で、返済期間も数年単位になります。

ファクタリングは、短期資金の調達手段として位置付けるのが基本です。既に発生している売掛債権の一部を前倒しで現金化することで、一時的な支払ラッシュ(月末の仕入・外注費・人件費・税金など)を乗り切る用途に向いています。

 

一方で、毎月のように常態的にファクタリングを利用していると、手数料が固定費化し、結果として中長期的な収益力を損ねるリスクがあります。

中長期資金については、証書貸付や資産担保融資、公的制度融資などを組み合わせ、「何年かけて返すのが妥当か」「どの程度の返済額なら事業の成長に支障がないか」という観点から設計していくことが求められます。

短期資金と中長期資金を混同せず、資金繰り表や資金計画で役割を分担させることで、「ファクタリング頼み」「短期借入頼み」の状態を避けやすくなります。

 

短期資金と中長期資金の役割分担の考え方
  • 短期資金:売掛入金までのギャップ調整。ファクタリングや短期借入で機動的に対応する。
  • 中長期資金:売上成長・設備投資・構造的な運転資金増加を支える。証書貸付やABL、公的融資で設計。
  • 「短期資金で長期の赤字を埋め続けない」「長期資金を短期間で返済しすぎない」を基本ルールにする。
  • 資金繰り表で両者の役割と金額を分けて管理し、必要に応じて見直す。

 

中小企業・個人事業主が確認したいリスクと注意点

ファクタリングも証書貸付も、使い方次第で資金繰りを助けてくれる一方、条件をよく確認せずに契約すると「思った以上にコストが高かった」「返済・支払負担が重くなり過ぎた」という結果になりかねません。

特に中小企業・個人事業主の場合、経営者自身の信用や個人資産が連動しやすいため、リスクの把握とコントロールが重要になります。

 

押さえておきたいリスクは、大きく分けると「コスト(利息・手数料)が高すぎる」「契約条件が利用者に偏っている」「担保・保証の範囲が広すぎる」「将来の資金調達に悪影響が出る」の4つです。

ファクタリングでは、手数料率と前倒し日数から実質コストを概算し、証書貸付では金利だけでなく保証料・違約金なども含めて総額をイメージすることが欠かせません。

また、契約書の条文や金銭消費貸借契約証書の内容を確認し、「万が一の事態が起きたときに、どこまで責任を負うのか」を具体的に想像しておく必要があります。

 

リスクの種類 主な内容
コスト 利息・手数料・保証料・違約金などが利益を圧迫し、資金繰りがかえって悪化するおそれ
契約条件 買戻し義務・期限の利益喪失・高い遅延損害金など、想定以上の負担を負うおそれ
担保・保証 不動産や売掛金、在庫、代表者保証など、担保・保証の範囲が広く、万一の際の影響が大きい
将来への影響 負債増加や高コスト調達の常態化により、今後の融資や再建の選択肢が狭まる

 

偽装ファクタリング・高コスト融資を避けるチェック

ファクタリングと称しながら、実態は「短期の高金利融資」に近い取引や、名目上の金利は低く見せつつ、各種名目の手数料を積み上げた高コスト融資には注意が必要です。

契約書や見積書の表現だけでは判断しづらいため、「どのくらいの期間、いくら使って、トータルでいくら支払うのか」を数字でならして見ることが大切です。

 

ファクタリングの場合は、請求書額・手数料率・前倒し日数から、ざっくりとした年率換算を行い、自社の利益率や他の調達手段(短期借入など)と比較します。

証書貸付の場合は、金利に加えて事務手数料・保証料・繰上返済手数料・遅延損害金などをリストアップし、「予定どおり返済したとき」「返済が遅れたとき」のコストをイメージしておくとリスクを把握しやすくなります。

 

また、「審査ほぼなし」「必ず実行」「売掛がなくてもOK」「詳細は面談時に」といった、条件の具体性に欠ける勧誘には慎重になる必要があります。

条件の良し悪し以前に、「総額でいくら支払うのか」「不払い・返済遅延のときにどうなるのか」がきちんと説明されているかどうかが、健全性を見分ける最初のフィルターになります。

 

偽装ファクタリング・高コスト融資を避けるチェックポイント
  • 「手数料率◯%」「金利◯%」だけでなく、期間と合計支払額を必ず数字で確認する
  • 売掛先不払い時や返済遅延時に、どのような追加負担が発生するかを事前に把握する
  • 条件の説明があいまいな提案(「必ず実行」「審査不要」など)は慎重に検討する
  • 他社の見積りや銀行の条件とも比較し、自社の利益率と照らして過大な負担になっていないかを見る

 

契約書・金銭消費貸借契約証書で見るべき条項

ファクタリング契約書や金銭消費貸借契約証書(証書貸付の契約書)は、専門用語が多く読みづらいものですが、「どの条項を見ればリスクを把握しやすいか」を押さえておけば、要点を効率的にチェックできます。

ファクタリングでは、対象となる売掛債権の範囲、手数料率やその他費用の明記、償還請求権(買戻し義務)の有無と内容、売掛先不払い時の取り扱い、二重譲渡禁止や解除条件などが重要な条項です。

 

証書貸付の契約書では、金利・返済期間・返済方法(元利均等・元金均等など)に加えて、「期限の利益喪失条項」「遅延損害金」「担保・保証の条項」が特に重要になります。

期限の利益喪失条項とは、一定の条件(返済の遅延・破産申立てなど)が発生した場合に、残りの元本を一括返済しなければならなくなる規定であり、実務上のインパクトが大きい部分です。

 

また、担保に関する条項では、どの資産がどの範囲で担保に取られているのか、追加担保を求められる場面がどう定義されているのかを確認する必要があります。

契約書を読むときは、「通常のケース」「少し遅れたケース」「大きなトラブルが起きたケース」の3パターンをイメージし、それぞれの場面で自社がどのような義務を負うことになるかを確認すると、リスクの全体像をつかみやすくなります。

 

契約書で特に確認したい主な条項
  • ファクタリング:対象債権の範囲、手数料・諸費用、償還請求権の有無、不払い時の責任分担、二重譲渡禁止
  • 証書貸付:金利・返済方法・返済期間、期限の利益喪失条項、遅延損害金、担保・保証の範囲
  • 共通:契約解除・解約条件、違約金、条件変更の手続き(リスケジュール)
  • 「通常」「軽度の遅延」「重大なトラブル」それぞれの場面で、何が起きるかをイメージしながら読む

 

専門家・金融機関への相談と複数社比較のすすめ

ファクタリングや証書貸付の条件は、金額・期間・業種・財務内容などによって大きく変わります。

1社から提示された条件だけで判断すると、他にもっと適した選択肢があったにもかかわらず、気づかないまま高コストな契約を続けてしまう可能性があります。

 

そのため、可能な限り複数社から見積り・条件を取り、比較することが重要です。ファクタリングであれば手数料率と前倒し日数、証書貸付であれば金利と保証料・返済条件を並べてみるだけでも、見え方が変わります。

また、顧問税理士や公認会計士には「この取引をしたときに決算書がどう変わるか」「財務指標にどのような影響が出るか」を相談できます。

 

契約内容の法的リスクが気になる場合は、弁護士に契約書のチェックを依頼することも選択肢です。

さらに、既存の取引銀行に対しても、他の金融商品や公的制度融資、条件変更の可能性などを相談し、「本当に外部の資金調達が必要か」「社内の改善で対応できる部分はないか」を一緒に考えてもらうことができます。

 

こうした相談は、「契約直前になってから」ではなく、「検討を始めた段階」で行うほど選択肢が広がります。

特に、返済条件の重い借入や高コストのファクタリングを検討する場合には、第三者の視点を入れて冷静に見直すことが、長期的には経営者自身を守ることにもつながります。

 

専門家・金融機関・複数社比較を活用するポイント
  • ファクタリング・融資ともに複数社の条件を並べて比較し、実質コストと条件を整理する
  • 顧問税理士・公認会計士には、会計処理と財務指標への影響を事前に相談する
  • 契約条項に不安がある場合は、弁護士等にポイントを絞ってチェックを依頼する
  • 取引銀行には、他の融資商品や制度融資、条件変更の可能性も含めた相談を早めに行う

 

まとめ

ファクタリングは売掛債権の売却による短期資金手当て、証書貸付は負債を計上して中長期の運転資金や設備資金を賄う方法というように、役割と会計上の扱いが異なります。

審査対象(売掛先か自社か)、スピード、金利・手数料の構造、財務指標への影響を比較しながら、「いくらを・どの期間・どの目的で調達するのか」を明確にすることが重要です。

本記事で挙げたチェックポイントをもとに、複数の金融機関・ファクタリング会社から条件を確認し、必要に応じて専門家へ相談しながら、自社にとって無理のない資金調達の組み合わせを検討していくことが望まれます。