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ファクタリングと電子手形の違いは?資金調達手段の特徴と選び方を徹底解説

売掛金の早期資金化を考えるとき、「ファクタリング」と「電子手形(でんさい・電子記録債権)」のどちらを使うべきか迷うケースが増えています。どちらも掛け取引の資金化に使えますが、仕組み・コスト・リスク・事務負担は大きく異なります。この記事では、ファクタリングと電子手形の基本から、現金化スピードや手数料相場、貸倒リスクの違い、中小企業がケース別にどう使い分ければよいかまでを整理し、自社に合った資金調達手段を選ぶための判断材料をわかりやすく解説します。

 

ファクタリングと電子手形の基本

ファクタリングと電子手形(電子記録債権・でんさい)は、どちらも「掛け売りの代金」を資金化・決済する仕組みですが、法律上の位置付けや使われ方は異なります。

ファクタリングは、事業者が保有する売掛債権を期日前に一定の手数料で買い取ってもらう取引で、金融庁は「事業者の資金調達の一手段」であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約と位置付けています。

 

売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、手数料控除後の現金を受け取ることで、入金サイト(支払までの期間)を短縮し、資金繰りを改善するのが主な目的です。

一方、電子手形の実体である「電子記録債権」(通称:でんさい)は、電子記録債権法に基づき創設された新しい金銭債権で、手形や売掛債権の問題点(紛失・盗難リスク、二重譲渡リスク、管理コストなど)を克服するための仕組みとして位置付けられています。

 

電子記録債権は、電子債権記録機関(代表例が株式会社全銀電子債権ネットワーク=でんさいネット)の記録原簿に「電子記録」することが発生・譲渡などの効力要件です。

企業間の取引で、従来の紙の約束手形の代わりに「でんさい」で支払・受取を行うと、決済の電子化や資金決済の効率化が期待できます。

 

つまり、ファクタリングは「売掛債権を第三者(ファクタリング会社)に売却して現金化するサービス」、電子手形(電子記録債権)は「会社同士が掛け取引の決済に使う電子的な金銭債権」であり、前者は資金調達手段、後者は支払手段・決済インフラという性格が強いと言えます。

なお、電子記録債権も銀行等で割引・譲渡することで資金調達に使えますが、その場合でも法律上は「電子記録債権の割引・譲渡」であり、ファクタリングと同じ売掛債権譲渡ではない点が違いです。

 

項目 ファクタリング
法的性質 売掛債権の売買(債権譲渡)契約。事業者が保有する売掛債権等を期日前に手数料付きで買い取るサービス。
主な目的 売掛金の支払期日前に現金化して、短期の資金繰りを改善する(つなぎ資金の確保)。
利用主体 中小企業・個人事業主などが、ファクタリング会社や金融機関系サービスを利用。
対になる債権 売掛債権(請求書)など取引から生じた指名債権。

 

ファクタリングの仕組みと目的

ファクタリングの基本スキームはシンプルで、①取引先に商品・サービスを提供して売掛金(請求書)が発生、②ファクタリング会社にその売掛債権を譲渡(買取依頼)、③ファクタリング会社が審査し、請求書額から手数料を差し引いた現金を支払う、④後日、取引先が売掛金をファクタリング会社(または利用者)に支払う、という流れです。

金融庁は、ファクタリングを「事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス」であり、法的には債権の売買(債権譲渡)だと明示しています。

 

ファクタリングには、売掛先に通知を行う「3社間ファクタリング」と、通知を行わない「2社間ファクタリング」があります。

3社間では、売掛先がファクタリング会社に直接支払うため、回収リスクが低く、手数料は比較的低めに抑えられる傾向があると解説されています。

 

一方、2社間では売掛先への通知が不要なため利用しやすい反面、回収リスクが高い分、手数料率は高くなりやすいとされています。

目的面では、ファクタリングは主に次のような場面で使われます。

 

  • 支払サイトが長い大口取引の売掛金を早めに現金化し、仕入や人件費に充てたいとき
  • 銀行融資の増額や新規借入が難しいが、売掛金自体は十分にある場合の資金繰り調整
  • 売掛先の倒産・延滞に備え、信用リスクを外部に移転したいとき(ノンリコース型・保証型ファクタリング等)

 

中小企業庁や金融機関の資料では、売掛債権を担保や譲渡対象として活用することは、担保不動産に依存しない資金調達手段として評価されています。

一方で、金融庁や日本貸金業協会は、ファクタリングを名乗りながら実態は高金利貸付になっている「偽装ファクタリング」への注意喚起も行っており、正しいスキーム・手数料水準を理解したうえで利用することが重要とされています。

 

ファクタリングの仕組みと目的を押さえるポイント
  • 法的には売掛債権の売却(債権譲渡)であり、融資ではない
  • 主目的は「売掛金の早期現金化」と「一部の与信リスク移転」
  • 2社間・3社間、リコース有無によって、手数料・リスク・目的が変わるので契約内容の確認が必須

 

電子手形・電子記録債権の仕組み

電子手形のベースとなる「電子記録債権」は、電子記録債権法に基づき、電子債権記録機関の記録原簿に電子記録することで効力が発生する新しいタイプの金銭債権です。

でんさいネット(株式会社全銀電子債権ネットワーク)は、全国銀行協会が設立した電子債権記録機関で、自社が扱う電子記録債権を「でんさい」と呼んでいます。

 

でんさいネットの解説によれば、電子記録債権は手形・売掛債権(指名債権)の問題点を克服する金銭債権として位置付けられており、手形の紛失・盗難や二重譲渡リスク、紙の保管・管理コストを大きく削減できるとされています。

仕組みとしては、売手(債権者)と買手(債務者)が、銀行などの参加金融機関を通じて電子記録債権を発生させ、決済期日になったら買手の口座から売手の口座へ振替決済が行われます。

 

紙の約束手形のように「手形を振り出す・裏書きする」のではなく、電子記録情報として「発生記録」「譲渡記録」が記録原簿に登録されるのが特徴です。

譲渡や分割もシステム上で管理されるため、手形の分割不可・人的抗弁・譲渡禁止特約など、従来の手形・売掛債権が抱えていた問題を緩和・解決することが期待されています。

 

電子記録債権も、銀行等で「割引」や「譲渡」の対象として利用できるため、資金調達手段として使うことが可能です。

中小企業庁は、電子記録債権制度を、事業者の資金調達の円滑化と金融の効率化を図るために創設したと説明しており、売掛債権を担保に融資を行う流動資産担保融資保証制度とも組み合わせて活用することを想定しています。

さらに、公正取引委員会や中小企業庁は、下請代金の支払手段として用いられる手形や電子記録債権の「サイト(支払期間)」が60日を超える長期になることを是正する方針を示しており、紙手形から電子記録債権への移行とともに、支払条件の適正化も進められています。

 

電子手形・電子記録債権の仕組みのポイント
  • 電子記録債権は、電子債権記録機関の記録原簿に記録することで発生・譲渡の効力が生じる新しい金銭債権
  • 紙の手形・売掛債権の課題(紛失・盗難・二重譲渡・管理コスト等)を軽減しつつ、割引・譲渡による資金調達も可能
  • でんさいネットなどを通じて、決済の電子化・支払サイトの適正化・中小企業金融の効率化を図る制度として整備されている

 

資金調達手段としての違い

ファクタリングと電子手形(電子記録債権・でんさい)は、いずれも「売掛債権を早めに現金化する」手段として使えますが、資金調達のスピード・利用条件・リスクの持ち方がかなり違います。

ファクタリングは、専門のファクタリング会社や一部の金融機関が、売掛債権を期日前に買い取ってくれるサービスで、オンライン完結型では最短10分〜当日入金など、非常に短いリードタイムが案内されています。

 

一方、電子記録債権はあくまで「電子化された決済手段」であり、その割引(でんさい割引)を銀行に申し込んで資金化する場合、取引銀行の審査や記録手続きが必要となるため、資金化までには一定の時間がかかるのが一般的です。

利用条件の面でも、ファクタリングは売掛先の信用力や取引実績を重視しつつ、赤字企業や創業間もない企業でも利用できるケースがあるのに対し、電子記録債権はでんさいネット等の電子債権記録機関への参加、金融機関の口座・インターネットバンキング契約など、一定の事務インフラが前提になります。

これらの違いを踏まえると、「とにかく早く現金化したい」のか、「取引先との決済手段を整えつつ、必要に応じて割引も使いたい」のかによって、適した手段が変わってくることが分かります。

 

比較軸 ファクタリング 電子手形(でんさい)
現金化スピード オンライン型で最短10分〜当日入金の例もあり、非常に速い。 銀行の割引手続き・審査を経るため、一定の時間(通常は銀行営業日単位)が必要。
利用条件 売掛先の信用力重視。赤字企業・創業期でも案件によっては利用可。 でんさいネット等への参加、金融機関との契約が前提。取引先も対応している必要あり。
主な位置付け 短期の資金調達手段(つなぎ資金確保)。 手形・売掛金に代わる決済インフラ。割引・譲渡により資金調達にも利用可能。

 

現金化スピード・利用条件の比較

現金化スピードという観点では、ファクタリングが圧倒的に優位です。オンライン完結型のファクタリングでは、「最短10分審査・即時入金」「当日17時までの契約で最短即日入金」といったサービスが複数紹介されており、請求書と通帳の明細、本人確認書類といった最低限の書類で、当日中に資金化できるケースも珍しくありません。

対して、電子記録債権の割引(でんさい割引)の流れを見ると、①商取引後にでんさいを受け取り、②取引銀行へ割引を申込、③銀行で審査、④でんさいネットへ譲渡記録請求、⑤譲渡記録成立後に割引料差引後の資金が入金、というステップを踏む必要があり、どうしても1営業日以上のリードタイムが発生しやすくなります。

 

利用条件の違いも重要です。ファクタリングは、ファクタリング会社が売掛先の信用力や取引実績を審査し、売掛先が大企業や官公庁など信用度の高い相手であれば、利用者側が赤字決算でも利用可能なケースがあると解説されています。

一方、電子記録債権を利用するには、でんさいネットなどの電子債権記録機関へ金融機関を通じて参加し、インターネットバンキング(ビジネスダイレクト)などの契約が必要な場合があるとされています。

 

さらに、取引先も電子記録債権に対応していることが前提となるため、「自社だけが導入しても使えない」という制約もあります。

まとめると、「明日・今日中にどうしても資金が必要」という場面では、書類さえ揃っていれば即日対応が期待できるファクタリングが現実的な選択肢になりやすい一方、「ある程度余裕を持って決済手段を整えたい」「手形・売掛金の管理を電子化したい」という場面では、電子記録債権をベースに、必要に応じて割引を組み合わせる方が中長期的には効率的といえます。

 

スピード・利用条件を比較するときの着眼点
  • 資金が必要になるタイミング(今日〜数日以内か、数週間〜1か月先か)
  • 売掛先の信用力・取引実績と、自社の財務状況(赤字・創業期など)
  • 自社・取引先がでんさい等の電子記録債権に対応しているか(口座・IB契約などの有無)
  • 一時的な資金不足を埋めたいのか、決済手段そのものを整えたいのかという目的の違い

 

貸倒リスクと保証スキームの違い

貸倒リスク(売掛先が支払わないリスク)の扱い方も、ファクタリングと電子手形では大きく異なります。ファクタリングでは、買取型のうち「ノンリコース」(償還請求権なし)であれば、売掛金の回収リスクはファクタリング会社が負担し、売掛先が倒産しても原則として利用者に償還義務はありません。

一方、「ウィズリコース」(償還請求権あり)の契約では、売掛金が回収できなかった場合、利用者がファクタリング会社に補填・買戻しを行う義務を負い、実質的に貸倒リスクを負い続けることになります。

 

また、売掛保証型ファクタリング(保証型)は、売掛金は自社に残したまま、一定範囲の貸倒損失を保証してもらうスキームであり、保証料を払う代わりに貸倒リスクの一部を外部に移す形です。

電子記録債権の場合、基本的な貸倒リスクは従来の手形や売掛金と同様に「債務者(支払企業)の信用リスク」として債権者が負います。

 

電子記録債権法に基づくでんさいネットのスキームは、発生・譲渡・決済を電子的に記録・管理するものであり、それ自体が支払保証を行う仕組みではありません。

ただし、金融機関やファイナンス会社の中には、「でんさいファクタリング」「売掛保証サービス」など、電子記録債権をノンリコースで買い取ったり、貸倒リスクを保証する商品を組み合わせて提供している例もあります。

 

このように、ファクタリングは「契約形態によって貸倒リスクの所在をある程度コントロールできる」手段であり、電子記録債権は「決済インフラとしては便利だが、貸倒リスクは基本的に残る」点が本質的な違いです。

貸倒リスクをどこまで外部に移したいかによって、ノンリコースファクタリング・売掛保証・電子記録債権+保証サービスなど、選択肢が変わってきます。

 

貸倒リスク・保証スキームの選び方のポイント
  • ノンリコース買取型:売掛先倒産リスクを極力外部に移したいときに有効(その分手数料は高め)
  • リコース買取型・電子記録債権割引:貸倒リスクは基本的に自社負担でよい代わりに、コストを抑えたい場合に選択肢となる
  • 売掛保証・保証付き電子記録債権:決済インフラを整備しつつ、一定範囲の貸倒リスクだけ外部に移したいときに検討
  • 契約書の「償還請求権」「保証範囲」「免責条項」を確認し、自社が最終的にどこまでリスクを負うのかを必ず把握する

 

手数料・事務負担・リスクの比較

ファクタリングと電子手形(電子記録債権・でんさい)を資金調達の観点から比べると、「手数料の付き方」「事務負担」「リスクの持ち方」が大きく異なります。

ファクタリングは売掛債権を一定の料率(%)でディスカウントするビジネスで、2社間ファクタリングの手数料相場はおおむね10〜30%、3社間は1〜10%程度とする解説が多く、売掛先やスキームによっては5〜20%といったレンジも示されています。

 

一方、電子記録債権は、発生記録手数料・入金手数料など「1件あたり数百円クラス」の手数料と、インターネットバンキング等の基本利用料で構成されるのが一般的で、紙の手形に比べて用紙代・印紙税・郵送料などが不要になる分、トータルコストは下がりやすいとされています。

事務負担の比較では、ファクタリングは取引ごとに審査・契約書作成・請求書提出などのプロセスが発生し、オンライン完結型でも一連のアップロード作業やコミュニケーションが必要です。

 

電子記録債権は、一度金融機関経由ででんさいネット等に参加すれば、Web上の入力・承認のみで発生・譲渡・決済が完結するため、紙手形に比べて事務負担は大幅に軽減されます。

リスク面では、ファクタリングは契約内容によって貸倒リスクの所在が変わります。ノンリコースの買取型では売掛先の倒産リスクをファクタリング会社に移転できますが、その分手数料は高めです。リコース付きや保証型では、一定範囲のリスクが自社に残ります。

電子記録債権は、基本的に紙の手形や売掛金と同様、支払企業の信用リスクを債権者側が負う構造であり、制度そのものが貸倒リスクを吸収するわけではありません。

 

比較項目 ファクタリング 電子手形(電子記録債権)
コスト構造 請求書額×手数料率(+事務・振込手数料)。2社間10〜30%、3社間1〜10%が目安。 発生記録手数料・入金手数料(数百円程度)+IB基本料など。印紙税・郵送料・紙管理コストは不要。
事務負担 取引ごとに審査・契約・請求書提出。オンライン型でも都度の申込が必要。 でんさいネット等のシステム上で発生・譲渡・決済を一元管理。紙手形に比べ保管・郵送が不要。
貸倒リスク 契約によりファクタリング会社に移転(ノンリコース)も可能。ただしリコース条項や保証範囲に注意。 原則として債権者が負担。電子記録債権単体では保証はなく、必要に応じて別途保証商品を利用。

 

手数料相場・コスト構造の違い

ファクタリングの手数料は、「売掛金額×○%」という形で課金されるのが基本です。

楽天銀行の解説では、3社間ファクタリングの手数料相場は1〜9%程度、2社間は10〜30%程度とされており、2社間の方がリスクが高い分、料率が高くなる傾向が明示されています。

 

他の専門サイトでも、2社間10〜30%、3社間1〜10%といったレンジが紹介されており、売掛先の信用力・取引金額・入金サイトの長さなどに応じて実際の水準が決まるとされています。

一方、電子記録債権(でんさい)のコストは、1件あたりの発生記録手数料・入金手数料など「定額料金」と、インターネットバンキング等の基本利用料で構成されます。

 

でんさいネットの資料によれば、発生記録手数料や取立・入金手数料は金融機関ごとに数百円程度の水準で設定されており、紙の手形で必要だった用紙代・印紙税・郵送料・紛失リスク対策などは不要になるため、全体としてはコスト削減につながると説明されています。

具体的なイメージを数字で見てみます。

 

  • 売掛金500万円を2社間ファクタリング(手数料15%・その他手数料なし)で資金化 → 手数料500万円×15%=75万円、入金額425万円。
  • 同じ500万円をでんさいで受け取り、その電子記録債権を銀行で年3%相当の割引率・30日サイトで割引、手数料・発生記録等を合計1万円と仮定 → 割引料は500万円×3%×30日/365日≒12万3千円、諸費用と合わせて約13万3千円。

 

単純比較すると、ファクタリングの方が「速さ」と引き換えにコストが重いことが分かります。

ただし、実際にはファクタリングは数日〜数週間早く資金化できるのに対し、でんさい割引は銀行の審査や取引条件が絡むなど、「スピードと条件」を総合的に見て判断する必要があります。

 

手数料・コスト構造を比較するときのポイント
  • ファクタリングは「金額比例型(%)」、電子手形は「件数比例型(定額)」のコスト構造になりやすい
  • 高額・長期サイトの売掛金ほど、%課金のファクタリングはコストインパクトが大きくなる
  • でんさいは印紙税・郵送料が不要になる一方、IB基本料や発生記録手数料などの固定費・定額費用がかかる
  • 単純な料率比較ではなく、「何日早く資金化できるか」「総額いくら払うか」で判断する

 

契約手続き・管理方法とシステム面の違い

契約・管理・システム面でも、ファクタリングと電子記録債権は性質が異なります。ファクタリングは、取引ごとに審査・契約が必要であり、基本契約書と個別契約書を締結したうえで、売掛債権ごとに譲渡通知や債権譲渡登記を行うケースもあります。

オンライン完結型サービスでも、Webフォームへの入力・請求書データのアップロード・本人確認などのプロセスがあり、案件ごとに取引記録を管理する必要があります。

 

電子記録債権(でんさい)は、でんさいネットのような電子債権記録機関と金融機関のシステムを通じて利用します。

仕組み上、債権の発生・譲渡・決済は記録原簿への電子記録で管理され、紙の手形のような物理的な保管・郵送・印鑑管理は不要です。

 

また、債権内容や支払期日、譲渡履歴をWeb画面で一覧できるため、二重譲渡リスクの軽減や期日管理の効率化といったメリットがあります。

ただし、でんさいを利用するためには、取引金融機関でのサービス契約(中信でんさいサービスやSMBCでんさいネットなど)と、法人インターネットバンキングの契約が前提になる場合があり、「最初の導入ハードル」はファクタリングより高いと感じる中小企業も少なくありません。

一方、ファクタリングは、決まったシステム導入までは不要で、スポットで利用しやすい反面、案件ごとの契約・管理が属人的になりやすいという側面があります。

 

手続き・システム面の違いを整理するポイント
  • ファクタリング:案件ごとに審査・契約・書類提出。システム導入は不要だが、取引管理は自社側で整理が必要
  • 電子手形(でんさい):最初に金融機関・記録機関との契約・IB設定が必要だが、その後はWeb上で一元管理できる
  • 紙の手形からでんさいに切り替えると、印紙・郵送・保管・紛失リスクなどの事務負担を大きく削減できる
  • どちらを選ぶかは、「スポット利用重視」か「決済インフラとして標準化したいか」で判断する

 

中小企業が使い分けるケース別判断

中小企業がファクタリングと電子手形(電子記録債権)を選ぶ際には、「目的」と「時間軸」を分けて考えることが有効です。

ファクタリングは、「今月の資金が足りない」「大型案件の仕入・人件費に先行資金が必要」といった短期の資金繰りギャップを埋めるための手段として設計されています。

 

金融庁や各種解説でも、「売掛債権を担保・譲渡して資金調達の円滑化を図る一手段」と位置付けられています。

電子記録債権は、「紙の手形・売掛金」に代わる決済インフラとして、支払の電子化・印紙税負担の削減・事務負荷軽減といった観点から導入が進められており、中小企業における利用割合も徐々に増加していると公表されています。

 

資金調達というよりも、「標準の支払・受取手段をどう設計するか」という中長期的な視点に立ったツールです。

したがって、「今月の資金ショートをどう乗り切るか」という局面ではファクタリングを、「今後の取引全体の決済手段をどう合理化するか」というテーマでは電子記録債権を中心に考えるのが自然です。

さらに、取引先の規模・業種・ITリテラシー、既存の銀行取引状況、手形利用の有無などを加味して、自社にとって現実的な選択肢を絞り込んでいく必要があります。

 

観点 判断のポイント
時間軸 「今すぐ資金が欲しい」のか、「今後の決済インフラを整えたい」のかで手段が変わる。
取引先 大企業・官公庁との取引が多い場合は電子記録債権対応が進んでいるケースが多く、でんさい導入の余地が大きい。
既存の借入状況 銀行融資の枠が限界に近い場合、ファクタリングはバランスシートを膨らませずにつなぎ資金を確保する手段にもなる。

 

ファクタリングが向いている場面

ファクタリングが力を発揮するのは、「短期的な資金ギャップが明確で、売掛金はあるが現金が足りない」という場面です。具体的には、以下のようなケースが挙げられます。

 

  • 売掛先が大企業でサイトが60〜90日と長く、月末の仕入・給与・外注費の支払いに間に合わせたいとき
  • 新規大型受注があり、仕入や人件費が一時的に膨らむが、銀行融資の審査を待つ時間がないとき
  • 赤字決算や創業間もないことから、銀行融資の追加が難しいが、売掛金自体は十分にあるとき

 

各種解説でも、2社間ファクタリングは「売掛先に知られずに、最短即日で資金化できる」点が強調されており、急な資金ショート対策として紹介されています。

また、3社間ファクタリングは、売掛先と三者で合意したうえで売掛金を直接ファクタリング会社に支払ってもらうスキームのため、比較的手数料が低く、安定した資金調達手段として利用されることが多いとされています。

 

ただし、ファクタリングはあくまで「入金の前倒し」であり、利益水準や固定費構造そのものを改善するわけではありません。

中小企業向けのコラムでは、ファクタリングの常態化により高コスト体質になり、手数料が利益を圧迫して再び資金ショートに陥る「依存スパイラル」に注意を促しています。

したがって、ファクタリングが向いているのは「一時的な山を乗り切る」「銀行融資実行までのつなぎ」といった限定的な使い方であり、慢性的な運転資金不足を補うメイン手段にするのは避けるべきといえます。

 

ファクタリング適合ケースの目安
  • 売掛金はあるが、支払サイトが長く短期資金にギャップが生じている
  • 銀行融資の審査・実行までの時間が足りないが、売掛金の入金は確度が高い
  • 利用は特定案件・特定期間に限定し、常態化させない前提で使う
  • 手数料総額が粗利の範囲に収まるかを、事前に計算して判断する

 

電子手形・でんさいが向いている場面

電子手形(電子記録債権・でんさい)が向いているのは、「取引先との継続的な決済を効率化したい」「紙の手形・売掛金の管理コストとリスクを減らしたい」という場面です。

でんさいネットの説明によれば、でんさいは手形と同様の支払手段として利用でき、紛失・盗難リスクや印紙税・郵送コストを削減しつつ、決済期日の自動管理や二重譲渡防止などのメリットがあります。

具体例としては、次のようなケースが考えられます。

 

  • 従来から手形取引が多く、紙の手形発行・保管・取立の事務負担と紛失リスクを軽減したい
  • 複数の取引先・支店間での決済を電子化し、資金繰りの見える化と支払遅延防止を図りたい
  • 手形サイトの短縮や支払条件の適正化に合わせて、決済手段も見直したい

 

中小企業向けのでんさい普及資料では、「中小企業はまだ紙手形・小切手の利用割合が高く、電子記録債権の利用割合は低いものの、コスト・リスク面から切り替え余地がある」と指摘されています。

また、電子記録債権は割引や譲渡も可能なため、決済手段であると同時に、必要に応じて銀行で割引を受けて資金調達することもできます。

 

電子手形が特に向いているのは、「ある程度の規模があり、取引先も電子化に前向き」「手形決済が多く、現状の事務コスト・リスクを課題と感じている」企業層です。

小規模事業者にとっては初期導入のハードル(IB契約・システム理解)もありますが、主要な取引先・仕入先がでんさいを採用し始めている場合には、決済方法の標準化という観点から、検討する価値が高まります。

 

電子手形・でんさい適合ケースの目安
  • 紙手形・売掛金の管理(印紙・郵送・保管・紛失リスク)に負担を感じている
  • 主要取引先がでんさい等の電子記録債権を導入しており、決済方法の標準化が求められている
  • 短期の「資金ショート」対策よりも、中長期の決済インフラ整備・業務効率化を重視している
  • 必要に応じて、電子記録債権の割引を資金調達手段として使う余地も検討している

 

併用・切り替え時の注意ポイント

ファクタリングと電子記録債権は、どちらか一方だけを使わなければならないものではなく、「短期資金調達=ファクタリング」「標準的な決済手段=電子記録債権」といった形で併用することも可能です。

ただし、切り替え・併用を行う際には、契約内容の理解・会計処理・資金繰り管理など、いくつか押さえておくべきポイントがあります。

 

会計面では、電子記録債権は日本基準上、手形債権に準じた会計処理を行うことが適当とされつつも、貸借対照表上の表示は「電子記録債権」「電子記録債務」を用いることが原則とされています(企業会計基準委員会・実務対応報告第27号)。

一方、ファクタリングは売掛債権の譲渡として、売掛金を未収金等に振り替え、譲渡差額を「売上債権売却損」などで処理するのが一般的です。

 

両者を併用する場合、どの債権をファクタリングに回し、どの債権を電子記録債権として保有・割引するかが、会計処理と資金繰りの両面で影響してきます。

また、契約面では、同じ売掛債権をファクタリングと電子記録債権の両方で処理してしまう(二重譲渡・二重担保)のリスクにも注意が必要です。

電子記録債権は記録原簿で譲渡状況が管理されるため二重譲渡リスクは低いとされていますが、紙の請求書ベースでのファクタリングと組み合わせる場合には、社内管理で債権のステータスを厳密に把握しておく必要があります。

 

論点 併用・切り替え時に確認したい内容
会計処理 電子記録債権は手形債権に準じて処理しつつ、ファクタリングは売上債権売却損等で処理する線引きを明確にする。
債権管理 どの売掛債権が電子記録債権化され、どの売掛債権がファクタリング・担保に供されているかを一覧で管理する。
契約条件 ファクタリング契約・電子記録債権利用契約の条項(譲渡制限・禁止条項など)を確認し、抵触がないかチェックする。

 

契約内容・会計処理で押さえる論点

ファクタリングと電子記録債権を併用・切り替えする際の第一の注意点は、「契約内容と会計処理の整合性」です。

電子記録債権については、企業会計基準委員会の実務対応報告第27号で、手形債権に準じた会計処理を行い、貸借対照表上は「電子記録債権」「電子記録債務」として表示することが原則とされています。

 

一方、ファクタリングは売掛債権を譲渡し、譲渡差額を損益として認識するため、「売掛金」「電子記録債権」「売上債権売却損」の動きを仕訳上明確に区別する必要があります。

契約面では、ファクタリング契約書とでんさい利用契約書・約款の両方を確認し、以下のような点をチェックすることが重要です。

 

  • 売掛債権に譲渡禁止特約や制限条項が付いていないか(電子記録債権化・ファクタリングに影響)
  • ファクタリング契約で、電子記録債権を含めた一括譲渡・包括譲渡が規定されていないか
  • 電子記録債権の割引・譲渡時に、保証記録や注記が必要なスキームになっていないか

 

会計・税務の観点では、電子記録債権の割引や譲渡が手形割引と同様の処理になるのか、ファクタリングが売掛債権売却損として損金算入されるのか、といった論点について、顧問税理士と事前に方針を共有しておくと安心です。

実務対応報告や各社の会計解説でも、「電子記録債権は手形債権に準じて処理する」「重要性が乏しければ受取手形に含めることもできる」といった取扱いが示されているため、自社の規模・重要性に応じて判断することになります。

 

契約・会計で押さえるべきチェックポイント
  • 電子記録債権・ファクタリングそれぞれの契約書を読み、「譲渡制限」「包括譲渡」「保証範囲」などを確認する
  • 仕訳上、「売掛金」「電子記録債権」「売上債権売却損」の動きが混ざらないよう、勘定科目と補助科目を整理する
  • 電子記録債権割引・ファクタリング取引が決算書のどこに表示され、税務上どのように扱われるかを税理士と共有する

 

資金繰り表にもとづく選び方とチェックリスト

併用・切り替えの判断を感覚で行うと、「とりあえず早い方(ファクタリング)を使い続けてしまう」という結果になりがちです。

そこで重要になるのが、資金繰り表にもとづく定量的な判断です。中小企業庁や中小機構は、資金不足による倒産を防ぐには、月次の資金繰り表を作成し、将来の資金不足を予測することが基本と繰り返し指摘しています。

資金繰り表を使ってファクタリングと電子記録債権の使い分けを検討する際は、以下のようなステップが有効です。

 

  1. 今後3〜6か月の売上入金(売掛・電子記録債権・現金)と支払(仕入・経費・借入返済)を一覧化する
  2. 資金残高がマイナスまたはギリギリになりそうなタイミングを特定し、その金額と期間を把握する
  3. 短期の資金ギャップ部分について、「ファクタリングでどこまで前倒しすべきか」「電子記録債権の割引・融資でカバーできないか」を検討する
  4. ファクタリング手数料と電子記録債権の割引・手数料を比較し、「同じ期間を埋めるのに、どちらがトータルコストが低いか」を試算する

 

このプロセスを経ることで、「すべてファクタリング」「すべて電子記録債権」という極端な選択ではなく、「ここまではでんさい+銀行割引で対応し、急場だけファクタリングを併用」など、バランスの取れた組み合わせを設計しやすくなります。

 

資金繰り表にもとづく選び方チェックリスト
  • 資金繰り表で、資金ショートが予想される「時期」と「金額」が明確になっているか
  • そのギャップをファクタリングだけで埋めようとしていないか(手数料総額を粗利と比較しているか)
  • 電子記録債権+銀行割引、公的融資・補助金など、他の低コスト手段を併用する余地がないか
  • 毎月・四半期ごとに「ファクタリング利用額」「電子記録債権残高」「手数料総額」をモニタリングし、依存度が高まりすぎていないかを確認しているか

 

まとめ

ファクタリングは「売掛金を売却して即現金化する手段」、電子手形(電子記録債権・でんさい)は「決済インフラを電子化し、割引や譲渡もできる手形のデジタル版」という役割を持ちます。

短期の資金ショートに素早く対応したい場面ではファクタリング、取引先との継続的な掛け取引や事務負担・決済リスクを抑えたい場面では電子手形が有力な選択肢になります。

どちらか一方に固執するのではなく、資金繰り表で必要なタイミングと金額を見える化しながら、費用・リスク・取引先の事情を踏まえて組み合わせることが、安定した資金調達と再発防止につながります。