スタートアップは売上が伸びても入金までのタイムラグで資金繰りが崩れやすく、銀行融資の審査に時間がかかる、ノンバンクの安全性が不安、税金や社保の支払い遅れが影響しないか気になるという悩みが出やすいです。本記事では、ファクタリングの基本と2社間・3社間の違い、審査で見られる点を整理し、広告費や人件費の先払い、検収待ちなど場面別の活用事例を紹介します。あわせて手数料の見方、契約リスクの注意点、資金繰り表での管理、制度融資や補助金との比較、相談先の方向性もまとめます。
スタートアップの資金繰り課題
スタートアップは、売上が伸びていても資金繰りが不安定になりやすい特徴があります。理由は、売上(会計上の計上)と入金(現金の着金)のタイミングが一致しないことに加え、広告費・外注費・人件費などの支払いが先行しやすいからです。
さらに、受託開発やSaaSなどでは検収や利用期間に応じて売上計上が分かれ、請求・入金のルールも複雑になりがちです。
資金繰り対策の第一歩は、損益(利益)ではなくキャッシュ(現金)の増減を中心に見直すことです。
月次の資金繰り表で「いつ資金が足りなくなるか」を先に把握し、資金調達・支払条件の見直し・回収改善の優先順位を付けると、突発的な資金ショートを避けやすくなります。
- 売上は立つが入金が遅い(支払サイトが長い、検収が遅い)
- 先行費用が大きい(広告費・人件費・外注費・仕入れ)
- 月末・四半期に支払が集中しやすい(税金・社保、決算対応)
- 資金調達の確度と時期が読みにくい(審査・投資判断の変動)
売上計上と入金ズレの注意点
売上計上は、会計上「いつ売上として認識するか」というルールに基づきます。一方、入金は請求書の支払期日や検収の完了、取引先の支払処理によって左右されます。
このズレが大きいほど、帳簿上は黒字でも現金が足りない状態が起きやすくなります。
例えば、月末締め翌々月末払い(実質60日)で100万円の請求を出す取引が続くと、売上は毎月立つ一方で入金は2か月後に集中します。
その間に給与や広告費の支払いが毎月発生すると、資金残高が急減しやすいです。さらに受託開発では、検収が遅れると請求自体が後ろ倒しになり、入金も遅れます。
対策としては、請求・検収の条件を契約で明確にし、入金予定を月次で管理することが基本です。
| ズレの原因 | 起きやすい状況例 |
|---|---|
| 支払サイト | 月末締め翌々月末払いなど、入金までの期間が長い |
| 検収遅れ | 受託開発で承認が遅れ、請求・入金が後ろ倒しになる |
| 請求条件 | マイルストーン請求で、達成まで入金が発生しない |
| 相殺・減額 | 値引きや相殺が入り、入金額が想定より減る |
黒字でも資金不足の典型例
黒字でも資金不足になる典型は、売上増に伴い運転資金が先に必要になるパターンです。売上が伸びると、広告費や外注費、サーバー費、人員増などの先行投資が増えますが、入金は支払サイト分だけ遅れます。
結果として、利益は出ていても現金が減ることがあります。
例えば、BtoBのSaaSで初期費用を投じて顧客獲得を進め、月次の売上が増えているのに、広告費の支払いが先行し、入金は翌月末以降にまとまるといったケースです。
また、受託開発で外注費を先に支払い、検収後に一括入金される契約だと、外注費の支払い時点で資金が足りなくなることがあります。
黒字倒産を避けるには、資金繰り表で最低残高を設定し、支払ピーク月の資金手当てを事前に決めておくことが重要です。
- 採用・外注を増やした直後(固定費が先に増える)
- 広告投下を強めた直後(先行投資が膨らむ)
- 四半期・年度末(税金・社保、決算対応の支出が重なる)
- 大口案件の検収遅れ(入金が読めず資金計画が崩れる)
銀行融資が進みにくい理由
スタートアップは、銀行融資が進みにくい場面があります。一般に銀行は返済原資(返済に回せる利益やキャッシュ)と財務の安定性を重視するため、創業直後で実績が短い、赤字や先行投資で利益が出ていない、資産が少ないといった状況では審査が慎重になりやすいです。
また、売上の見込みがあっても、契約が継続する確度や入金の安定性を数字で示しにくいと、条件が整いにくいことがあります。
加えて、税金や社会保険料の支払い遅れがあると、資金繰りの厳しさを示す要素として見られる可能性があります。
融資を検討する場合は、試算表の鮮度を上げ、入金予定と支払予定を資金繰り表で示し、資金使途(何に使い、どう回収するか)を説明できる資料を用意することが現実的です。
- 実績が短く、返済原資を説明するデータが不足しやすい
- 先行投資で赤字になりやすく、財務が弱く見えやすい
- 担保や自己資金が少なく、保全面の条件が整いにくい
- 税金・社保の遅れがある場合、追加説明や資料が必要になりやすい
ファクタリング活用の基本
ファクタリングは、売掛金を早期に資金化し、入金までの待ち時間を短くする方法です。スタートアップでは、広告費や人件費などの支払いが先行しやすい一方、売上入金は月末締め翌月末払いなど遅れがちで、資金繰りの谷が生まれやすくなります。
この谷を埋める選択肢としてファクタリングを検討する場合、まず押さえるべきは「2社間・3社間の違い」と「手数料だけでなく契約条件のリスク」です。
また、ファクタリングは融資ではないため返済という形ではありませんが、手数料が発生し、回収不能時の取り扱い(償還請求の有無)によっては追加負担が生じる可能性があります。
導入の前に、資金繰り表で必要資金の時期と金額を整理し、対象とする売掛金を選び、複数社の見積りを同条件で比較することが重要です。
- 目的(支払ピークを乗り切るのか、回収遅延リスクに備えるのか)
- 対象債権(取引先、金額、支払期日、検収条件)
- 方式(2社間か3社間か)
- 条件(手数料、入金スピード、償還請求の有無、必要書類)
2社間・3社間の比較ポイント
2社間は、利用企業とファクタリング会社の間で契約し、取引先に通知せず資金化する形が一般的です。
取引先に影響を与えにくい一方、回収を利用企業が担う運用になりやすく、手数料が高めになる傾向があります。
3社間は、取引先に債権譲渡を通知し、入金先をファクタリング会社に切り替える形が多く、回収導線が明確になるため手数料が抑えられやすい場面があります。
ただし、取引先の理解や手続きが必要で、実行までに時間がかかることがあります。
スタートアップでは、資金化スピードと取引先対応のバランスが重要です。
例えば、来月10日に給与支払いがあり、売掛金の入金が月末に偏る場合は、スピード重視で2社間を検討し、継続取引で取引先の理解が得られるなら3社間でコストを抑える、といった使い分けが現実的です。
| 方式 | 特徴の目安 | 注意点の目安 |
|---|---|---|
| 2社間 | 取引先へ通知せず進めやすい。資金化が早い場合がある。 | 手数料が高めになりやすい。回収管理の運用が重要。 |
| 3社間 | 回収導線が明確で、手数料が抑えられやすい場合がある。 | 取引先対応が必要で、実行まで時間がかかる場合がある。 |
スタートアップ向きの使い方
スタートアップに向くのは、「一時的な資金繰りの谷」を明確にし、必要最小限の範囲で使う活用です。
たとえば、広告費の支払いが先行する月、採用強化で人件費が膨らむ月、受託開発で外注費を先払いする月などは、入金前にキャッシュが不足しやすいです。
このような月に、入金予定が確度の高い売掛金を対象にして資金化し、支払いを遅らせずに回すことで信用を守りやすくなります。
一方で、毎月の赤字を埋めるために恒常的に利用すると、手数料負担が固定費化し、資金繰りが改善しにくくなるリスクがあります。
利用する場合は、資金繰り表で「いつまでに、いくら必要か」「資金化後にどこへ充当するか」を明確にし、回収後のキャッシュが残る設計にすることが重要です。
- 手数料込みの総コストを見ずに、毎月繰り返し利用してしまう
- 検収未了や紛争リスクのある請求書を対象にして資金化が止まる
- 資金化した資金の使途が曖昧で、結局資金ショートが再発する
- 取引先対応(3社間)を後回しにし、実行が遅れて支払に間に合わない
審査で見られる項目チェック
ファクタリングの審査は、利用企業の信用だけでなく「売掛金が本当に回収できるか」を重視するのが一般的です。
具体的には、取引先の信用力、取引の実在性(契約・請求・納品や役務提供の証跡)、支払条件、過去の入金実績などが確認されます。
スタートアップは自社の実績が短い場合があるため、取引先が大企業・上場企業などで支払能力が高いと見なされやすい場合は、条件が整いやすいことがあります。
一方で、取引先の支払遅延が多い、相殺や返品が頻繁、検収条件が曖昧といった取引は、審査が厳しくなりやすいです。
- 取引先情報:会社概要、与信の目安、支払実績の確認
- 請求の根拠:契約書、発注書、請求書、納品書・検収書等の整合
- 支払条件:支払期日、相殺条項、検収条件、値引き・返品の有無
- 入金実績:過去の入金履歴、遅延の有無、入金口座の管理状況
活用事例のパターン
スタートアップのファクタリング活用は、業種を問わず「入金までの待ち時間」と「支払いの山」がぶつかる場面で起こりやすいです。
特にBtoB取引は支払サイトが長く、広告費や外注費、人件費などは先に出ていくため、黒字でも一時的に資金が足りなくなることがあります。
ここでは、典型的な4パターンを紹介します。いずれも共通するポイントは、資金化する売掛金の回収確度が高いこと(取引実在性・検収済み・入金実績がある等)と、資金使途が明確であること(支払日と支払先が決まっている)です。
- 数字はイメージであり、条件は取引内容・契約・審査で変動します
- 資金化対象は「回収確度が高い売掛金」から選ぶのが基本です
- 資金繰り表で支払日と入金日を並べ、必要額を先に確定します
広告費先払いの補填事例
広告運用型の事業やSaaSでは、広告費が先に発生し、売上入金が遅れることで資金繰りが詰まりやすいです。
例えば、月初に広告費300万円を支払い、月末締め翌月末払いで売掛金500万円が入金される契約だと、月中に現金が大きく減ります。
広告が当たり売上は伸びていても、入金が追いつかないと広告停止や支払遅延につながりやすく、成長を止めてしまうリスクがあります。
このような場合、入金実績のある取引先の売掛金(例:翌月末に500万円入金予定)を一部資金化し、広告費の支払いに充当します。
重要なのは、広告費の先払いを「何日までにいくら必要か」で分解し、必要最小限の資金化に留めることです。過剰に資金化すると手数料負担が膨らみ、利益を圧迫しやすくなります。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 資金が必要な理由 | 広告費の先払いで月中の資金残高が不足 |
| 対象債権 | 入金実績のある売掛金(翌月末入金予定500万円) |
| 充当先 | 広告費300万円の支払い |
| 注意点 | 広告費が膨らみやすいので、資金化額を必要最小限に抑える |
受託開発の検収待ち事例
受託開発は、納品後に検収が完了して初めて請求・入金が確定する契約が多く、検収待ちが長引くと資金繰りが崩れやすいです。
例えば、開発を外注し月末に外注費200万円を支払う一方、顧客の検収が翌月中旬までずれ込み、請求が翌月末、入金がさらに翌月末になると、外注費を先に払い続ける状態が続きます。
このケースでは、検収完了後に確定した請求書(回収確度が高い状態)を対象に資金化し、外注費や人件費の支払いに充当します。
検収前の請求書は対象外になりやすいため、プロジェクト管理の観点で「検収条件」「承認フロー」「検収予定日」を契約と運用で明確にし、資金化できるタイミングを前倒しできるかも検討すると効果的です。
- 検収未了のままでは資金化対象になりにくく、支払いだけが先行する
- 仕様変更や追加要件で請求額が揺れ、回収確度の説明が難しくなる
- 検収基準が曖昧だと遅延が常態化し、資金繰り計画が崩れやすい
大口取引の支払サイト対策事例
大口取引が成立すると売上規模は伸びますが、支払サイトが60日〜90日など長いと、運転資金が一気に必要になります。
例えば、単月で売掛金1,000万円が発生し、入金が90日後だと、仕入・外注・人件費などを3か月分先に回す必要が出ます。資金が足りないと、受注を拡大したくても供給や採用が追いつかず、機会損失になり得ます。
このような場合は、当該取引先の信用力が高いことを前提に、売掛金の一部を資金化して運転資金に充当し、資金繰りの谷を平準化します。
併せて、取引先と支払条件の見直し(一部前受、分割請求、検収の分割など)を交渉できる余地があるかも確認すると、ファクタリング依存を下げやすくなります。
- 大口案件は金額が大きく、支払サイトが長いほど資金不足が急に表面化しやすい
- 対象債権は入金確度が高い取引先に寄せ、根拠資料を整える
- 分割請求や前受など、商流側の条件改善も同時に検討する
- 資金化後は資金繰り表で最低残高を維持できるか確認する
人件費ピーク月のつなぎ事例
採用を強化するスタートアップでは、人件費が急増する月が発生しやすいです。例えば、月末に賞与やインセンティブが重なり、人件費支払いが通常月の1.5倍になる一方、入金は翌月末に偏っていると、月中〜月末に資金残高が底をつきやすくなります。
支払い遅延は信用低下に直結するため、給与・社保・外注費などの固定支出は優先度が高いです。
このケースでは、入金予定の売掛金を資金化して人件費の支払いに充当し、支払遅延を回避します。ポイントは、資金化する前に「給与・社保・外注費の支払日」と「入金日」を並べて不足額だけを埋めることです。
余裕がある月に繰上返済や内部留保を厚くするなど、次回のピークに備える運用もセットで設計すると、短期対応で終わりにくくなります。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 資金不足の原因 | 賞与・採用増で人件費がピーク、入金が翌月末に偏る |
| 不足が出る時期 | 月末の支払集中期(給与・社保・外注費) |
| 対応 | 入金予定の売掛金を必要額だけ資金化して支払いに充当 |
| 再発防止 | 資金繰り表でピーク月を予測し、前倒しで資金手当てする |
費用とリスクの管理
スタートアップがファクタリングを使う際は、資金化のメリットだけでなく、手数料を含む総コストと契約上のリスクを同時に管理することが重要です。
手数料は、方式(2社間・3社間)、売掛先の信用力、入金までの日数、請求書の金額、取引実在性の確認負担などで変わり得ます。
また、契約条項によっては、売掛先の支払不能以外の理由(相殺、検収未了、紛争など)で回収できない場合に利用企業側の負担が残ることがあります。
さらに、売掛金を二重に譲渡してしまうと重大なトラブルにつながるため、社内ルールと証跡管理が欠かせません。
資金繰り表へ反映し、いつ・いくらの資金が入出金するかを可視化したうえで、必要最小限の利用にとどめると運用が安定しやすいです。
- 手数料は「条件で変動」する前提で、同条件で比較する
- 償還請求の有無と「対象外になる原因」を条項で確認する
- 二重譲渡を防ぐため、売掛金の管理台帳と権限を整える
- 資金繰り表に反映し、短期の穴埋めと中長期の改善を分ける
手数料相場の見方ポイント
手数料の「相場」は一律ではなく、同じ売掛金でも条件で上下します。比較するときは、料率だけでなく、差し引かれる費用の範囲と、資金化までの日数をセットで見ます。
たとえば、3社間は回収導線が明確になりやすく手数料が抑えられる場合がありますが、取引先対応に時間がかかることがあります。
2社間はスピード面で選ばれやすい一方、回収管理や確認負担が増え、手数料が高めになることがあります。
さらに、前払い率(請求額のうち先に入金される割合)によって、資金化時点で受け取れる金額が変わります。
見積り比較は、対象債権(取引先・請求額・支払期日)を揃え、同じ前提(償還請求の有無、必要書類、入金タイミング)で複数社に依頼すると判断がぶれにくいです。
| 確認項目 | 見方のポイント |
|---|---|
| 手数料の範囲 | 料率だけでなく、事務手数料・振込手数料などが別建てかを確認します。 |
| 前払い率 | 「資金化時にいくら着金するか」を左右します。必要額に対して不足が出ないか確認します。 |
| 入金までの日数 | 支払期限までの期間と、審査・契約に要する日数を分けて見積もります。 |
| 方式の違い | 2社間・3社間で手数料と運用負担、実行スピードが変わり得ます。 |
償還請求条項の注意点
償還請求とは、売掛先から入金がなかった場合に、利用企業へ支払い(買戻し等)を求める条項を指します。
償還請求がある契約では、売掛先の支払遅延や支払不能が起きたとき、最終的な負担が利用企業に戻る可能性があります。
一方、償還請求なし(ノンリコース)と説明される場合でも、どの原因までが対象かは契約で異なり、検収未了や紛争、相殺、返品・値引きなどは対象外とされることがあります。
スタートアップは受託開発や広告運用など、検収や成果の評価が絡む取引が多いことがあります。
契約不適合や追加要件で請求額が変動しやすい取引は、対象外リスクが増えやすいので、資金化する請求書は「検収済み」「請求確定」「過去入金実績がある」ものから選ぶと管理しやすいです。
- 「支払不能」の定義と、対象となる事故の範囲
- 対象外となる原因(相殺、検収未了、紛争、返品・値引き等)の明記
- 入金遅延時の対応(督促、連絡期限、追加費用)のルール
- 売掛先とのトラブル発生時に、誰が何を行うかの役割分担
二重譲渡防止のチェック
二重譲渡は、同じ売掛金を複数の相手に譲渡してしまう状態で、重大なトラブルになり得ます。資金繰りが厳しい局面ほど「どの請求書を資金化したか」が社内で曖昧になりやすいため、台帳管理と権限設計が重要です。
特に、営業部門が請求書を発行し、経理が入金管理をし、財務が資金調達を進める体制では、情報の断絶が起きやすいです。
防止策は難しいものではなく、「対象債権を一元管理し、資金化済みの印を残す」「譲渡・入金口座の変更を経理が把握できるようにする」といった基本を徹底することが有効です。
- 売掛金台帳に「資金化済み」区分と契約先を必ず記録する
- 請求書番号・取引先・金額・支払期日で一意に特定できる管理ルールにする
- 資金化の申込み権限を限定し、申請→承認のフローを固定する
- 入金口座の変更(通知ありの場合)や入金消込の担当を明確にする
資金繰り表への反映ステップ
ファクタリングは、資金化の入金が早まる一方、手数料の支払いと、回収後の精算(差額の入金や追加控除)が発生する場合があります。
そのため、資金繰り表には「資金化日」「精算日」「費用支払日」を別イベントとして入れると、過不足が見えやすくなります。
スタートアップでは、給与・社保・外注費などの固定支出が毎月発生するため、資金化で一時的に資金残高が回復しても、次月以降に再び不足するケースがあります。
資金繰り表に反映し、資金化が“単発のつなぎ”なのか“構造改善が必要なサイン”なのかを見分けることが重要です。
- 対象売掛金の入金予定日と金額を確定し、通常の入金予定として資金繰り表に入れます。
- ファクタリングを使う場合、資金化日を入金として追加し、通常の入金予定は精算の形に組み替えます。
- 手数料・事務費用・振込費用などの支払日と金額を、出金として別枠で入れます。
- 回収後の精算(残額入金、追加控除など)がある場合は、精算日で入出金を反映します。
- 資金化後の最低残高が維持できるか確認し、再発する不足があれば支払条件や回収条件の見直しも検討します。
代替策と相談先
ファクタリングは「入金までの時間を短縮する」手段として有効な場面がありますが、手数料が発生するため、恒常的な資金不足を根本から解決する手段とは限りません。
スタートアップでは、成長投資が先行して資金が薄くなりやすいため、資金ニーズを「短期のつなぎ」と「中長期の資金調達」に分け、代替策も含めて組み合わせることが重要です。
具体的には、公庫・制度融資で中長期の運転資金を厚くする、補助金・助成金で投資負担を軽くする、取引条件(支払サイト・検収・請求)を見直してキャッシュの谷を小さくする、といった方向性が考えられます。
どの手段も審査や手続きに時間がかかることがあるため、資金繰り表で不足時期を早めに把握し、逆算で準備を進めるのが現実的です。
- 資金の目的(運転資金の穴埋めか、成長投資か、返済負担の軽減か)
- 必要時期(何日後にいくら必要か)
- 返済原資(返済に回せる利益・キャッシュの見込み)
- 必要書類(試算表、資金繰り表、事業計画、契約・請求の証跡)
公庫・制度融資との比較基準
公庫や制度融資は、資金使途に応じた融資商品が用意されており、資金繰りの土台を作る手段として検討されます。
一般に融資は借入なので返済が必要ですが、ファクタリングと比べると資金使途の自由度やコスト構造が異なります。ファクタリングは売掛金の入金前倒しであり、資金化できるのは売掛金がある範囲に限られます。
一方、融資は売掛金の有無に関わらず運転資金・設備資金として確保できる可能性がありますが、審査と手続きに時間がかかりやすい点に注意が必要です。
比較の基準は「資金が必要な期限」「返済計画の立てやすさ」「必要書類の準備負担」「総コスト」です。
例えば、2週間以内に支払いが迫っている場合はファクタリングが現実的になりやすい一方、数か月先の成長投資に備えるなら、公庫・制度融資で資金枠を確保する方が資金繰りが安定しやすいです。
| 比較軸 | 見方のポイント |
|---|---|
| 資金化・実行まで | 急ぎの支払いか、余裕があるかで選択肢が変わります。 |
| 資金の範囲 | ファクタリングは売掛金の範囲、融資は資金使途に応じた借入枠の可能性があります。 |
| 返済・負担 | 融資は返済が必要、ファクタリングは手数料負担と回収条件の管理が必要です。 |
| 必要資料 | 融資は事業計画や試算表、資金繰り表が重視されやすい傾向があります。 |
補助金・助成金の活用法
補助金・助成金は返済不要の支援制度として活用できる一方、申請から入金まで時間がかかることが多く、原則として「先に支払い、後で入金される」流れになりやすいです。
そのため、短期の資金不足を直接解消する手段というより、投資負担を軽くし、結果として資金繰りを改善する位置づけで考えるのが現実的です。
例えば、採用や設備投資、研究開発、販路開拓などで制度を活用できる場合、自己資金の持ち出しを抑えられます。
ただし、対象経費や要件、実績報告の手続きがあり、支出の証憑(契約・請求・領収・振込記録)を整えておく必要があります。
資金繰り面では、補助金の入金時期を保守的に見積もり、つなぎ資金(融資や売掛金の回収条件改善など)と組み合わせて計画するのが安全です。
- 入金まで時間がかかるため、資金繰り表で立替期間を見える化する
- 対象経費の範囲や証憑要件があり、経理処理の整合が必要
- 採択されない可能性もあるため、過度に前提にしない
- 実績報告や期限管理が重要で、社内担当を決めると運用が安定する
税理士・金融機関の相談目安
スタートアップの資金繰りは、税務・会計の整合と資金調達の実務が密接に関係するため、相談先を役割で分けると進めやすいです。
税理士は、試算表や決算の精度を上げ、資金使途や利益構造を説明できる形に整える支援が期待できます。
また、税金・社会保険料の支払いが厳しい場合の整理や、資金繰り表の作成支援にもつながります。金融機関は、融資や制度融資の選択肢、必要書類、審査で重視されるポイントを確認する窓口になります。
相談の目安は「資金が足りなくなる前」です。例えば、資金繰り表で2〜3か月先に残高が危険水準になるなら、その時点で相談を始め、資料準備と手続きに時間を確保するのが安全です。
- 税理士へ:月次試算表が遅れている、申告内容と実態にズレがある、資金繰り表を整えたいとき
- 金融機関へ:融資・制度融資を検討する、必要書類とスケジュールを確認したいとき
- 共通:支払い遅延が出る前に、資金不足の時期と金額を示して相談する
まとめ
スタートアップの資金繰りは、売上計上と入金のズレや先行コストで黒字でも資金不足になりやすく、必要資金のタイミングが鍵になります。
ファクタリングは売掛金を早期に資金化できる一方、2社間・3社間で手数料や運用が異なり、審査では請求の実在性や取引先信用などが確認されます。
活用時は手数料だけでなく償還請求条項や二重譲渡防止を押さえ、資金繰り表に反映して返済・支払い計画と整合させることが重要です。
公庫や制度融資、補助金も含めて比較し、必要に応じて税理士や金融機関へ早めに相談しましょう。


















