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公庫融資の審査基準がわかる!審査通過のポイント5選と面談対策を徹底解説

公庫融資は中小企業や個人事業主の資金調達で有力ですが、「審査基準は何を見られる?」「赤字や税金・社保の遅れは不利?」「銀行融資が難しいときの選択肢は?」と不安になりがちです。本記事では、公庫融資の制度種類と資金使途の基本を整理し、審査で重視される事業計画・自己資金・返済能力・信用情報の見られ方をわかりやすく解説します。さらに必要書類、申込みから実行までの流れ、面談対策、資金繰り表での準備、否決時の改善方向までまとめます。

公庫融資の基礎知識

公庫融資は、日本政策金融公庫が中小企業や個人事業主などの資金調達を支えるために提供する融資の総称です。民間金融機関の融資と同様に審査はありますが、創業期や小規模事業者、地域経済を支える事業など、民間だけでは資金が届きにくい層も対象にしやすい設計が特徴です。申し込む際は、まず「どの制度を使うか」「資金使途(運転資金・設備資金)は何か」を整理し、返済期間や必要書類を制度の要件に合わせて整える必要があります。制度名や条件は変更されることがあるため、申込み時点の案内を前提に準備を進めるのが安全です。

基礎で押さえる3点
  • 制度の対象者と目的(創業・運転・設備・セーフティネット等)
  • 資金使途の区分(運転資金か設備資金か)
  • 返済計画の現実性(資金繰り表で返済余力を示す)

制度種類の比較ポイント

公庫融資は「誰の、どんな資金需要を支えるか」で制度が分かれます。代表例としては、創業・開業向け、一般の運転資金・設備資金、売上減少や災害などの影響を受けた事業者向けの制度などがあります。比較のコツは、金利や限度額だけでなく、対象要件(創業年数、業種、資金使途)、必要書類の量、面談で説明すべき論点(事業計画の深さ、見積や契約の裏付け)を同じ土俵で並べることです。たとえば「開業直後で実績が薄い」のか「既存事業で資金繰りが詰まった」のかで、求められる説明の中心が変わります。

制度の方向性 向きやすい場面 比較で見る点
創業向け 開業準備〜開業直後 自己資金の考え方、事業計画の根拠、開業費の内訳
一般(運転・設備) 仕入・外注増、設備更新など 資金使途の妥当性、返済原資、売上の季節変動
セーフティ系 売上減少・災害等の影響 影響の説明資料、回復見込み、当面の資金繰り計画

資金使途の区分ポイント

資金使途は大きく運転資金と設備資金に分かれ、ここがずれると審査の説明が通りにくくなります。運転資金は仕入・外注費・人件費・家賃など、日々の事業運営に必要なお金です。設備資金は機械・車両・内装工事など、長く使う資産の購入や工事費用を指します。区分の実務ポイントは「使い道を証拠で示せるか」です。設備なら見積書と支払条件、運転なら資金繰り表で不足の時期と金額を示すと説明が一貫します。たとえば、翌月末に外注費200万円が集中し、入金は翌々月末で間に合わないなら、運転資金として“何日・いくら不足するか”まで落とし込むと判断されやすくなります。

資金使途を明確にする準備
  • 運転資金:資金繰り表で不足月と不足額を特定し、売掛金の入金予定も添える
  • 設備資金:見積書・納期・支払条件をそろえ、投資効果(売上増・効率化)も説明
  • 共通:借入額が「必要額の合計」と一致するように内訳を作る

金利と返済期間目安

公庫融資の金利や返済期間は、制度の種類、資金使途、事業の状況によって変わります。ここでの目安は「返済期間を長くすれば月々は軽くなるが、支払総額が増え得る」「短くすれば総額は抑えやすいが、月々の資金繰りが厳しくなりやすい」という基本です。設備資金は使用期間に合わせて返済期間を設定しやすく、運転資金は入金サイトや季節変動を踏まえて“返済しても資金が尽きない設計”が重要になります。例えば、毎月の粗利が40万円で固定費が30万円の事業で、返済が月15万円になると赤字月が出やすいため、借入額や期間の見直し、資金繰り表での安全幅の確認が欠かせません。

【返済期間を決める前の確認】

  • 返済日と大口支払(税金・社保・賞与・仕入)が重なる月がないか
  • 売上が落ちた月でも返済できる安全幅があるか
  • 運転資金は「入金までのつなぎ」の期間に合っているか
  • 設備資金は「設備の使用期間」と返済期間が離れすぎていないか

審査基準のチェック観点

公庫融資の審査は、書類の形式だけでなく「事業の実態と返済可能性」を総合的に確認する点が特徴です。大きな観点は、事業計画の実現性、自己資金と資金使途の整合、返済能力(利益と資金繰り)、信用情報や納付状況などです。どれか一つだけ良ければ通るというものではなく、弱い部分を別の根拠で補えるかが重要になります。たとえば創業期は実績が薄い分、取引先の契約や見積、開業準備の進捗、資金繰り表で不足の理由を丁寧に示すことが評価につながりやすいです。既存事業なら、直近の試算表や資金繰り表で「今の数字」を説明できると審査の理解が進みます。

審査で評価されやすい説明の型
  • なぜ必要か:資金不足が起きる理由と時期を資金繰りで示す
  • 何に使うか:資金使途を見積書・契約書・支払条件で裏付ける
  • どう返すか:売上・粗利・固定費から返済余力を説明する
  • 弱点補強:実績不足や赤字は、原因と改善策を数字で示す

事業計画の評価ポイント

事業計画は「売上が増えるはず」という希望ではなく、根拠のある前提で作れているかが見られます。特に創業期は、過去実績がないため、ターゲット、販売方法、単価、粗利率、固定費、入金サイトなどの前提が妥当か、そして数字がつながっているかが重要です。例えば月商200万円を目標にするなら、客単価2万円で月100件、または客単価5万円で月40件など、実現ルートが説明できると説得力が増します。既存事業の場合は、過去の売上推移や取引先構成、価格改定の状況など、実績と計画が矛盾しないことが重要です。加えて、入金が遅い業種は「黒字でも資金が足りない」状態が起きるため、資金繰り表で資金不足の月を示すと計画の現実性が伝わりやすくなります。

項目 評価されやすいポイント
売上計画 客数・単価・受注根拠(契約・見積・実績)で説明できる
利益計画 粗利率と固定費が現実的で、赤字月の説明がある
資金計画 入金サイト・支払サイトを踏まえ、資金不足の月が示せる
計画でつまずきやすい例
  • 売上は増える前提だが、販売方法や件数の根拠がない
  • 粗利率が高すぎる、または固定費が漏れている
  • 入金サイトを無視し、黒字でも資金不足になる月が見えていない

自己資金と資金使途基準

自己資金は、借入に頼りすぎずに事業を進める体力や準備状況を示す材料になりやすいです。創業融資では特に、自己資金の形成過程が確認されることがあり、通帳で積み上げが説明できると整合が取りやすくなります。また、資金使途は「具体的に何に使うか」を証拠で示すことが重要です。設備資金なら見積書・発注書・契約書、運転資金なら資金繰り表と支払予定(仕入・外注・人件費など)を用意し、借入額が必要額の合計と一致するように内訳を作ります。例えば、設備150万円、内装80万円、開業備品20万円で合計250万円なら、見積書で裏付けて説明します。使途が曖昧だと、審査側が必要性を判断できず、減額や見送りにつながりやすくなります。

自己資金・資金使途で準備したい資料
  • 自己資金:通帳の入出金履歴(貯蓄の積み上げが分かる期間)
  • 設備資金:見積書、仕様、納期、支払条件、契約書
  • 運転資金:向こう3〜6か月の資金繰り表、支払予定と入金予定の根拠

返済能力の算定ポイント

返済能力は、単に利益が出るかではなく、返済に回せる現金が残るかで確認されます。基本は、粗利(売上−原価)から固定費を差し引き、そこに返済を乗せても資金が尽きないかを見る考え方です。例えば、月商180万円、粗利率30%で粗利54万円、固定費40万円なら、返済に回せる余力は14万円程度です。ここで返済が月20万円になると、売上が落ちた月に資金不足が起きやすくなります。返済計画は、売上の季節変動や入金サイトも踏まえ、安全幅を確保することが重要です。資金繰り表では、月末残高だけでなく月中の最低残高を意識し、税金・社保・家賃など固定支出と返済が重なる月でも回るかを確認します。

確認項目 見られ方の目安
利益の安定性 売上の波があっても赤字が続かない設計になっているか
返済余力 粗利−固定費−生活費相当などを踏まえ、返済が無理なく出るか
資金繰り 入出金のズレを踏まえ、最低残高が不足しないか
返済能力を示す資料の例
  • 資金繰り表(向こう3〜6か月)と、返済額を反映したシミュレーション
  • 直近の試算表(既存事業の場合)または売上根拠資料(創業期の場合)

信用情報と納付状況注意点

信用情報は、借入や返済の履歴、延滞の有無など、返済の信頼性に関わる情報を指します。公庫融資でも、返済遅れが継続している、複数の延滞があるといった状況は慎重に見られる可能性があります。また、税金や社会保険料の遅れは、資金管理の課題として評価に影響し得ます。重要なのは、隠すことではなく、遅れがある場合は状況を整理し、相談・分納などの手続きや支払計画を示すことです。例えば、納税が厳しい月があるなら、借入で返済を軽くして納付計画を守る設計にする、入金サイトの改善や固定費削減で再発防止を示す、といった説明が現実的です。

信用・納付で不利になりやすい例
  • 返済遅れや延滞が継続し、改善の見通しが示せない
  • 税金・社保の遅れが放置され、相談や計画がない
  • 資金繰り表がなく、資金管理が場当たりになっている

必要書類と準備

公庫融資は、面談での説明だけでなく「書類で根拠が示せるか」が重要です。必要書類は制度や申込者(法人・個人事業主)、資金使途(運転・設備)で変わりますが、基本は「申告・決算など実績の確認」「事業内容と資金使途の確認」「返済計画の確認」の3本立てです。書類が不足すると追加提出が増え、審査が長引きやすくなります。逆に、数字の整合が取れていれば、面談でのやり取りも短くなり、誤解が減ります。準備の段階では、まず必須書類をそろえ、次に資金使途を裏付ける資料(見積書や契約書)、最後に資金繰り表で「いつ・いくら必要か」を示すと、説明の流れが作りやすいです。

書類準備の基本方針
  • 直近の申告・決算資料を先にそろえ、数字の整合を確認する
  • 資金使途は証拠資料で裏付け、借入額の内訳を一致させる
  • 資金繰り表で不足月と返済計画まで見える化する
書類カテゴリ 目的
申告・決算資料 売上・利益・納税状況など、事業実績と信頼性の確認
資金使途資料 何にいくら使うか、必要性の確認(見積・契約等)
資金計画資料 返済の継続性、資金不足の理由と時期の確認(資金繰り表等)

申告書類の準備チェック

申告書類は、法人なら決算書(損益計算書・貸借対照表など)、個人事業主なら確定申告書と青色申告決算書などが中心になります。審査では、売上や利益だけでなく「数字が継続して取れているか」「急なブレの理由が説明できるか」「税金の申告・納付が適切か」といった観点が確認されます。例えば、前期は黒字でも直近で赤字になった場合、値上げが遅れた、原材料が上がった、取引先が入れ替わったなど、要因を数字で示せると説明が通りやすくなります。また、個人事業主は家計混在で通帳残高が増えないことがあるため、主要な事業入出金が分かる資料を整えると誤解が減ります。

申告書類の準備チェック
  • 直近分がそろっている(年度・期が欠けていない)
  • 売上・経費の主要項目で、前年差の理由が説明できる
  • 納税状況が分かる資料があり、遅れがある場合は経緯と計画を整理している
  • 直近の試算表がある場合は、月次で更新されている
つまずきやすい例
  • 申告書はあるが、売上根拠や経費根拠が整理できていない
  • 赤字の理由が「景気が悪い」だけで、数字の説明がない
  • 納付遅れがあるのに、相談状況や計画が用意できていない

資金繰り表の作成ポイント

資金繰り表は、融資の必要性と返済の現実性を同時に示せる資料です。作成のコツは、売上の「計上」ではなく、通帳ベースで「入金日」と「支払日」で並べることです。例えば、月末締め翌々月末入金の取引が中心なら、10月の売上は12月末に入金されます。一方で、外注費は翌月末、税金は中間納付が11月、賞与が12月など、支出が先に来ると資金の谷ができます。この谷がどこで、いくら不足するかを示し、融資で埋める設計を作ると説明が一貫します。最低でも向こう3か月、可能なら6か月で作り、返済開始後の返済額も入れて“返済しても回る”状態を見せます。

【資金繰り表の作り方(基本手順)】

  1. 確度の高い入金予定(請求済み・検収済み)を入金日で入力する
  2. 固定支出(家賃・人件費・社保・税金)を納期限ベースで入力する
  3. 仕入・外注など変動支出を支払サイトに合わせて入力する
  4. 最低残高が不足する月を特定し、融資額と資金使途を一致させる
見るべき指標 理由
最低残高 月末は残っても月中に不足するケースを早期に発見できる
不足額 借入額の根拠になり、過不足のない申込みができる
返済反映後 返済開始後も資金ショートしない計画かを示せる

見積書と契約資料チェック

資金使途が設備資金の場合、見積書や契約資料は審査の根拠として重要です。金額だけでなく、納期、支払条件(前払・分割・検収後など)を確認し、資金が必要になる時期を資金繰り表と一致させます。例えば、厨房設備300万円で、契約時に半額、納品時に半額の支払条件なら、いつ資金が必要かが明確になり、融資実行の希望時期も説明しやすくなります。運転資金でも、仕入契約や外注契約など、支払根拠が示せる資料があると説得力が上がります。逆に、見積が口頭のみ、金額がざっくり、支払時期が曖昧だと、必要性が判断されにくくなります。

見積・契約資料の確認チェック
  • 金額・内容が具体的で、内訳が明記されている
  • 納期と支払条件が分かり、資金が必要な月が特定できる
  • 契約書や発注書がある場合は、当事者・対象物・支払条件が一致している
  • 資金繰り表の不足月と、見積の支払月が矛盾していない

申込みから実行までの流れ

公庫融資は、申込み後すぐに入金されるものではなく、事前相談→申込→面談→審査→契約→実行(入金)の順で進みます。資金が必要な月から逆算して動くことが重要で、特に納税や賞与、仕入・外注の支払集中月に合わせたい場合は、早めの相談が安全です。段取りでつまずきやすいのは、必要書類の不足、資金使途の根拠が弱い、面談で数字の説明が一致しない、といった点です。逆に、資金繰り表で不足月と不足額が明確で、見積書・契約書などの根拠がそろい、返済計画まで一貫していれば、審査側の確認も進みやすくなります。

段階 やること つまずきやすい点
相談・予約 制度選定、必要書類の確認、希望時期の共有 資金使途が曖昧で制度が決められない
申込・提出 申込書・事業計画・証拠資料の提出 書類不足で追加提出が増える
面談・審査 事業内容と数字の確認、必要に応じて追加確認 入金と支払のズレ説明ができない
契約・実行 契約手続→入金→資金使途どおりに支払い 実行後の資金管理が崩れ、返済計画がずれる

相談予約と事前確認ステップ

最初の相談では「どの制度が適合するか」と「いつまでに資金が必要か」を確認します。相談をスムーズにするには、資金使途(運転・設備)と必要額、支払時期を先に整理し、最低限の資料を持っていくことが有効です。例えば、来月末に設備の支払が200万円、翌月に外注費が150万円集中し、入金は翌々月末で間に合わないなら、設備資金と運転資金を分けて説明し、資金繰り表で不足月を示します。事前確認では、必要書類の一覧、面談の有無、追加提出になりやすい資料(見積書の詳細、通帳など)を確認し、準備の順番を決めます。

【相談前に整理しておくステップ】

  1. 資金使途(運転・設備)と必要額の内訳を作る
  2. 支払時期と入金予定を資金繰り表で整理し、不足月を特定する
  3. 見積書・契約書など、支払根拠資料をそろえる
  4. 希望する実行時期を決め、逆算で提出期限を決める
初回相談で持参すると話が早い資料
  • 直近の申告書類(決算書または確定申告書)
  • 資金繰り表(向こう3〜6か月、最低残高が分かる形)
  • 見積書・契約書など資金使途の根拠
  • 事業計画のたたき台(売上・粗利・固定費の前提が分かるもの)

面談質問の準備チェック

面談では、事業の実態と計画の整合、返済可能性が確認されます。質問は制度や事業者の状況で変わりますが、共通して「何を、誰に、どう売るか」「なぜその売上計画が成立するか」「資金を何に使い、いつ必要か」「どう返すか」が中心です。特に、創業期や赤字局面は、弱点を隠すよりも、理由と改善策を数字で示す方が説明として自然です。例えば、原材料高で粗利率が5ポイント低下したが、価格改定で翌月から回復見込み、固定費を月10万円削減した、というように具体化すると理解されやすくなります。

面談で聞かれやすい質問チェック
  • 事業内容:商品・サービス、顧客、競合との差、販売チャネル
  • 売上根拠:単価・件数・契約状況、季節変動、受注見込み
  • 資金使途:内訳、支払時期、見積書との一致
  • 資金繰り:入金サイトと支払サイト、資金不足の月と原因
  • 返済計画:月々返済額の根拠、安全幅、赤字月の対応
避けたい受け答えの例
  • 売上や費用の数字が資料と一致せず、説明がぶれる
  • 資金使途が途中で変わり、見積書の根拠が弱くなる
  • 入金サイトを把握しておらず、資金不足の月が説明できない

審査期間と連絡目安

審査期間は、制度の種類、申込内容、書類の整い具合、面談後の追加確認の有無などで変わります。実務上は、書類が不足すると追加提出で時間がかかりやすく、資金使途の根拠や資金繰り表が弱いと、確認事項が増えて連絡回数も増える傾向があります。逆に、必要書類がそろい、資金使途と返済計画が一貫していれば、確認が進みやすくなります。連絡の目安としては、申込後に面談日程や追加資料の依頼が入りやすく、面談後は審査の進捗に応じて追加確認が来ることがあります。資金が必要な期日が決まっている場合は、申込時点で希望時期を共有し、追加資料に即対応できる体制(税理士や経理との連携)を作っておくと安心です。

審査を遅らせないためのポイント
  • 申込時に必要書類をまとめて提出し、追加提出を減らす
  • 資金使途の根拠(見積・契約)と資金繰り表を整合させる
  • 面談で出た宿題(追加資料)は早めに返し、連絡の滞りを防ぐ

創業期と個人事業主の通過対策

創業期や個人事業主の申込みでは、法人のように決算年数が十分でないことが多く、実績面が弱点になりやすいです。その分、公庫融資では「根拠のある計画」と「資金使途の明確さ」「資金管理の姿勢」で補強するのが基本になります。通過対策とは、審査をすり抜けるテクニックではなく、事業の実態と返済可能性を資料で誤解なく伝える準備です。具体的には、契約・見積・開業準備の進捗を示し、資金繰り表で不足月を説明し、自己資金や生活費も含めた安全幅を確認します。特に赤字局面は、赤字そのものより「原因が説明できるか」「改善策が数字で示せるか」「資金が尽きない設計か」が重要になります。

創業期・個人事業主で評価されやすい補強軸
  • 実績の代替:契約書・受注書・見積書などで売上の確度を示す
  • 資金使途:支払時期と内訳を明確にし、必要額と借入額を一致させる
  • 資金管理:資金繰り表で不足月と返済後の安全幅を示す

開業初期の補強ポイント

開業初期は、過去実績が短い分、売上見込みの根拠が薄いと判断されやすい時期です。補強のポイントは「計画を細分化して、成立ルートを示す」ことです。例えば、月商120万円を目標にするなら、客単価1.2万円で月100件、または客単価3万円で月40件など、具体的な達成パターンを示します。さらに、開業準備の進捗(物件契約、内装工事の工程、仕入先の確保、許認可の状況など)を提示できると、計画の現実性が上がります。資金使途は、開業費・内装・設備・初期仕入・運転資金を分け、見積書や契約書で裏付けます。例えば、内装200万円(契約時100万円、完工時100万円)、設備150万円(納品時一括)など支払条件まで示すと、融資の必要時期が明確になります。

補強項目 示し方の例
売上根拠 単価×件数、契約・見積、予約状況などで説明する
準備進捗 物件・内装・仕入先・許認可の状況を時系列で示す
資金使途 見積書・支払条件で内訳を明確にし、借入額と一致させる
開業初期でつまずきやすい例
  • 売上計画が希望的で、単価や件数の根拠が示せない
  • 開業準備の工程が曖昧で、資金が必要な時期が説明できない
  • 見積がざっくりで、借入額の内訳が一致しない

赤字局面の説明ポイント

赤字局面では「赤字=即NG」と決めつけず、赤字の性質を分解して説明することが重要です。例えば、開業直後の広告費や採用費が先行して一時的に赤字、原材料高で粗利率が下がった、売上が季節要因で落ちたなど、原因はさまざまです。説明の型は、原因→対策→数字の改善見込み→資金繰りへの反映、の順で組み立てると一貫します。例えば、粗利率が30%から25%に下がったが、価格改定で翌月から28%へ戻す見込み、固定費を月10万円削減、売掛金回収を10日早める交渉を進めている、というように具体化します。資金繰り面では、黒字でも入金が遅いと資金不足が起きるため、赤字の説明と同時に、資金繰り表で不足月と不足額、融資で埋める範囲を示すことが重要です。

赤字の説明でそろえるべき材料
  • 赤字の原因:粗利率低下、固定費増、売上減などを数字で示す
  • 改善策:価格改定、コスト削減、販路改善などの実施状況
  • 改善見込み:いつからどれだけ改善するか(月次ベース)
  • 資金繰り:不足月・不足額・不足期間を資金繰り表で示す

否決後の改善ステップ

否決(見送り)になった場合は、落胆よりも先に「理由を分解して再発防止策を作る」ことが重要です。多くの場合、理由は一つではなく、資料不足、資金使途の曖昧さ、返済余力の不足、計画の根拠不足、納付状況などが重なります。改善は、最短で効果が出る順に行うと再申込につながりやすいです。例えば、書類不足が原因なら不足資料の追加と整合チェック、計画が弱いなら売上根拠(契約・見積)を増やす、返済余力が弱いなら借入額や期間の見直しと固定費削減を行う、といった形です。再申込を急ぐ場合でも、同じ内容で繰り返すと結果が変わりにくいため、改善点を明確にしてから動くのが安全です。

【否決後の改善ステップ】

  1. 見送り理由を整理し、書類不足か計画不足か返済余力かを切り分ける
  2. 不足資料を補い、数字の整合(申告・通帳・見積・資金繰り)を取り直す
  3. 売上根拠や改善策を追加し、計画の前提を現実的に修正する
  4. 借入額・期間を見直し、返済後も資金が尽きない設計にする
  5. 必要に応じて相談先を変え、再申込の段取りを組む
避けたい行動
  • 理由確認をせず、同じ資料のまま短期間で再申込する
  • 弱点を隠して説明し、後で整合が崩れて信用を落とす
  • 返済余力の改善がないまま、借入額だけを増やそうとする

まとめ

公庫融資の審査では、制度と資金使途が適合しているかを前提に、事業計画の実現性、自己資金の裏付け、返済能力、信用情報や納付状況が総合的に確認されます。申告書類や見積書等で根拠をそろえ、資金繰り表で入出金と返済計画を見える化すると説明が通りやすくなります。申込みは事前相談から面談、審査、実行まで段取りがあるため、必要時期から逆算して準備することが重要です。創業期や赤字局面でも、弱点を補う資料と改善策を整え、否決時は理由を分解して再挑戦につなげましょう。