SES事業は売上は立っていても、人件費先行や長い支払サイトで資金繰りが厳しくなりがちです。「公庫や銀行融資に通るか不安」「ノンバンクは安全なのか」「税金や社会保険料の支払い遅れが今後の融資に影響しないか」と悩む経営者も多いでしょう。
本記事では、SES特有の資金繰り構造と黒字倒産リスク、資金繰り表を使ったキャッシュ管理の基本、日本政策金融公庫や制度融資・ノンバンクの特徴、税金・社保滞納時の一般的な影響と相談先の方向性までを整理し、現実的な改善策と資金調達の選択肢を分かりやすく解説します。
SES事業の資金繰り基礎知識
SES(システムエンジニアリングサービス)は、エンジニアの稼働時間を「工数」としてクライアントに提供し、その対価として月額の準委任・派遣に近い形の報酬を受け取るビジネスモデルです。
一見すると、毎月固定の売上が立つため安定しているように見えますが、実際の資金繰りは「エンジニアに対する給与支払いが先」「クライアントからの入金は後」という構造になりがちです。
さらに、多重下請構造の中で中間マージンが多く重なると、粗利率が圧迫され、一人当たりの売上はあっても資金的な余裕が生まれにくくなります。
SES事業の資金繰りを考える際は、単純な売上規模だけでなく、「エンジニア人数×単価×稼働率」と「給与・社保・オフィス費」などの固定費との関係を把握することが重要です。
| 確認したい項目 | ポイント |
|---|---|
| ビジネスモデル | 工数単価×稼働時間で売上が決まり、人件費が主な原価になる |
| コスト構造 | 給与・社会保険料・営業人件費・オフィス費など固定費比率が高い |
| 資金の流れ | 給与は毎月支払い、売上入金は翌月以降になるケースが多い |
SESビジネスモデルの概要
SESは、エンジニアをクライアント先に常駐させ、月額単価×稼働月数で売上が決まるモデルです。
派遣と異なり、成果物ではなく業務遂行自体に対して対価を受け取る準委任契約が用いられることが多く、エンジニアのスキル・単価・稼働率が売上に直結します。
一方で、エンジニアがベンチ(待機)状態になると売上は立たないのに給与や社会保険料は発生し続けるため、人員構成や受注ポートフォリオを誤ると資金繰りが急速に悪化します。
取引形態としては、元請・一次請・二次請など多重構造になりやすく、中間に入る企業が増えるほど、自社に残るマージンは薄くなる傾向があります。
- 売上は「エンジニア数×単価×稼働率」で決まる
- 原価はほぼ人件費であり、ベンチ期間の長さが収支を左右する
- 多重下請になりすぎると単価が下がり、資金繰りの余裕が減りやすい
売上構造と粗利率のポイント
SESでは、売上と原価の差である「粗利」が、そのまま会社の運営費や利益の源泉になります。
例えば、クライアントへの請求単価が月80万円、エンジニアの給与が月40万円、会社負担の社会保険料や通勤費などを合わせて月10万円とすると、一人当たりの粗利は月30万円程度になります。
この粗利から、営業担当や管理部門の人件費、オフィス家賃、システム費用などの共通費を賄う必要があります。
多重下請構造の中で請求単価が70万円、エンジニア人件費等が50万円という条件になると、粗利は月20万円に縮小し、ベンチ期間や単価ダウンが重なると一気に赤字に転じやすくなります。
| 項目 | 例:単価80万円 | 例:単価70万円 |
|---|---|---|
| 売上 | 80万円 | 70万円 |
| 人件費・社保等 | 50万円(給与40+社保等10) | 50万円(同条件) |
| 一人当たり粗利 | 30万円 | 20万円 |
このように、単価が1〜2万円下がっただけでも、人数やベンチ期間との組み合わせ次第で年間の粗利に大きな差が出ます。
資金繰りの観点では、「粗利額が固定費をどれだけ上回っているか」「単価や稼働率が下振れしたときに耐えられる粗利水準か」を継続的に確認することが不可欠です。
給与支払いと入金サイクルの注意点
SES事業の資金繰りを厳しくしやすい大きな要因が、「給与支払い」と「売上入金」のタイミングのズレです。
多くの会社では、エンジニアの給与は毎月末または25日前後に支払われますが、クライアントからの入金は「月末締め翌月末払い」や「翌々月末払い」といった条件が一般的です。
例えば、4月に稼働した工数分を4月末に締めて請求し、入金が6月末であれば、4月と5月の2か月分の給与・社会保険料・オフィス費用などを先に支払う必要があります。
また、派遣元・派遣先の間に複数の企業が入る多重構造では、それぞれの会社の締め・支払サイクルが重なり、実際の入金がさらに後ろ倒しになることもあります。
- 給与・社保は毎月発生する一方、売上入金は1〜2か月遅れることが多い
- 複数の取引先ごとに締め・支払条件が異なり、資金繰り表で整理しないと全体像が見えにくい
- 賞与や決算賞与の月は、通常月よりも一時的な資金需要が大きくなる
- 支払サイトの長い取引先が多いと、売上拡大と同時に運転資金負担も増える
このような構造を踏まえ、SES事業では「売上が順調だから安心」と考えるのではなく、給与支払いと入金サイクルを月ごとに一覧化し、常に数か月先の資金残高を見通すことが重要です。
SES資金繰りが厳しい典型構造
SES事業の資金繰りが厳しくなりやすい背景には、いくつか共通する構造的な要因があります。
代表的なのは「長い支払サイトで入金が遅い」「エンジニアが案件に入らない期間も固定費として給与が発生する」「多重下請構造のなかで単価が押し下げられ、粗利に余裕がない」という3点です。
これらが同時に重なると、売上が一定程度あっても、毎月の給与・社保・家賃などの支払いに追われ、常に資金繰りが綱渡りになりがちです。
まずは、自社のSES事業がどの程度この典型構造にはまっているのかを把握し、「どこを改善すれば資金繰りが楽になるか」を整理することが重要です。
| 要因 | 資金繰りへの影響 |
|---|---|
| 長期支払サイト | 給与などの支払いが先行し、売掛金の入金までの資金負担が大きくなる |
| エンジニア待機 | 売上が立たない期間も給与・社保が発生し、固定費として資金を圧迫する |
| 多重下請構造 | 単価が押し下げられ、一人当たり粗利に余裕がなく、少しのブレで赤字化しやすい |
長期支払サイトのリスク
SESの取引では、「月末締め翌々月末払い」など長めの支払サイトが設定されることがあります。
例えば、4月稼働分を4月末で締めて請求し、6月末に入金される条件だと、4月と5月の2か月分の給与・社会保険料・オフィス費用などを先に支払う必要があります。
エンジニアが10名規模で在籍し、一人あたりの会社負担を月50万円(給与+社保等)とすると、2か月分で1,000万円が先行支出となるイメージです。
売上は帳簿上計上されていても、入金までの間は現金が減り続けるため、余裕資金が薄い会社ほど運転資金の圧迫を強く感じます。
複数の取引先ごとに支払サイトが異なるケースも多く、資金繰り表で一覧化しておかないと、「いつ・いくら足りなくなるか」が見えにくい点もリスクです。
- 締め日・支払日・検収条件を案件ごとに一覧化しているか
- 給与支払日とのずれを資金繰り表で具体的な金額として把握しているか
- 支払サイトの長い取引先が全体の売上に占める比率が高すぎないか
- 新規取引の際、サイト短縮や部分請求が交渉可能か検討しているか
エンジニア待機の資金負担
SESでは、案件が終了して次の案件に入るまでの「待機期間」がどうしても発生します。この期間は売上が立たない一方で、給与や社会保険料は通常どおり発生し続けるため、資金繰りにとって大きな負担となります。
例えば、月50万円の会社負担がかかるエンジニアが1か月ベンチになると、その1人だけで50万円のマイナスインパクトです。
これが3人、2か月続くと合計300万円となり、小規模なSES会社にとっては決して小さくない金額です。
待機が続くと、固定費の一部を変動費に近づける工夫(業務委託の活用など)ができていない場合、すぐに資金繰りが厳しくなります。
| 待機人数・期間 | 会社負担額のイメージ(1人月50万円) |
|---|---|
| 1人・1か月 | 約50万円のマイナス(売上ゼロでも固定費発生) |
| 3人・1か月 | 約150万円のマイナス |
| 3人・2か月 | 約300万円のマイナス |
待機の資金負担を抑えるには、「どの程度の待機率までなら資金的に許容できるか」をあらかじめ資金繰り表上でシミュレーションしておくことが役立ちます。
また、案件の谷間を減らすために、営業案件のパイプライン管理を徹底することや、短期・小規模の案件も組み合わせて受注することで、待機期間を短くする工夫も検討余地があります。
多重下請構造と単価下落
IT業界のSES取引では、元請→一次請→二次請→三次請といった多重下請構造が見られることがあります。
それぞれの層でマージンが差し引かれるため、末端に近い立場になるほど、クライアントから支払われる金額に対して自社が受け取る単価は低くなります。
例えば、クライアント側の予算がエンジニア1人月100万円の場合でも、多重構造のなかで実際に自社に入る単価が70万円、60万円と下がっていくことがあります。
人件費や社会保険料の水準は大きく変えにくいため、単価下落が続くと、一人当たり粗利が薄くなり、わずかな待機や残業増加でも赤字になりやすくなります。
- 自社が取引チェーンの何次請に位置しているかを把握しているか
- エンジニア1人当たりの「粗利額」が固定費を賄える水準にあるか
- 単価ダウン要請を受ける際、人数・期間・ベンチリスクも含めて採算を確認しているか
- 元請や一次請との直接取引比率を少しずつ高める中長期の方針を検討しているか
多重下請構造そのものを一気に変えることは難しい場合もありますが、「どのレイヤーで、どのような採算になっているか」を見える化し、単価交渉や取引先のポートフォリオ見直しを少しずつ進めていくことで、資金繰りの余裕を高める余地が生まれます。
SES資金繰り悪化のリスク要因
SES事業の資金繰りは、日々の売上だけでなく「予期せぬ出来事」の影響も受けます。代表的なのが、黒字倒産につながりうる入金遅延や売掛金増加、税金・社会保険料の滞納、主要取引先の倒産や支払遅延などです。
どれも一度に発生するわけではなく、少しずつ蓄積した結果として、ある月を境に一気に資金ショートが表面化するケースが目立ちます。
特にSESは売掛金残高が膨らみやすく、人件費比率も高いため、小さなズレが重なると現金残高が急速に減っていきます。
この章では、SES事業の資金繰りを悪化させやすい典型的なリスク要因を整理し、「どの指標を見ておくべきか」「どのタイミングで対策に動くべきか」を考えるヒントを示します。
- 売掛金の増加や入金遅延による黒字倒産リスク
- 税金・社会保険料の滞納による資金圧迫と信用への影響
- 主要取引先の倒産や支払条件変更による売上・回収への影響
黒字倒産リスクと典型パターン
黒字倒産とは、損益計算書上は利益が出ているにもかかわらず、手元の現金が不足し、支払いが行えなくなる状態を指します。
SES事業では、売掛金として帳簿上の売上が積み上がりやすく、実際の入金タイミングが遅れると、この黒字倒産リスクが高まりやすくなります。
例えば、月次の試算表では営業利益が出ているにもかかわらず、売掛金が毎月増え続けている、あるいは長期滞留している案件が増えている場合、資金繰り表では現金残高が減少傾向にある、といった典型的なパターンが見られます。
| 状況 | 会計上の見え方 | 資金繰りへの影響 |
|---|---|---|
| 売上増加 | 損益計算書上は売上・利益が増加 | 売掛金が増え、現金化が追いつかないと資金不足に |
| 入金遅延 | 決算上は売掛金として資産計上 | 実際には現金が入らず、給与・社保の支払に影響 |
| 投資・採用増 | 設備・人員拡大で将来利益を期待 | 短期的には資金流出が増え、余裕資金が薄くなる |
黒字倒産リスクを抑えるには、損益だけでなく「売掛金回転期間」「手元資金残高」「借入金返済額」といった指標を定期的に確認することが重要です。
特に、売掛金残高が売上の何か月分に相当するかを把握し、増加傾向が続く場合には、取引条件の見直しや資金調達の検討を早めに行うことが望まれます。
税金社保滞納が与える影響
資金繰りが厳しくなると、法人税や消費税、源泉所得税、社会保険料などの支払いを後回しにせざるを得ない局面が出てくる場合があります。
しかし、これらの滞納は延滞税・加算税などの負担増につながるほか、差押えなどの強制徴収が行われるおそれもあり、長期化すると事業継続に大きな影響を与えます。
また、税金・社保の滞納状況は、金融機関が融資を検討する際の重要な判断材料のひとつとされるため、新規融資や条件変更のハードルが高くなる要因にもなり得ます。
- 延滞税や加算税の発生により、将来の資金負担が増える
- 給与や仕入よりも優先的に差押えが行われる場合があり、口座凍結などのリスクがある
- 金融機関との面談で滞納状況を聞かれることが多く、融資判断に影響する可能性がある
支払が困難な場合は、放置せずに税務署や年金事務所などに早期に相談し、分割納付や納付猶予の制度が利用できないか検討することが重要です。
その際、SES事業の売上・人件費・資金繰り状況を整理した資料を用意しておくと、現実的な納付計画を立てやすくなります。
取引先倒産・支払遅延の注意点
SES事業では、特定の大手SIerやエンドユーザーへの売上比率が高くなりやすく、主要取引先の倒産や支払遅延が発生すると、売掛金の回収不能・回収遅延が一気に顕在化するリスクがあります。
例えば、月売上の3割以上を占める取引先が支払を2か月遅延すると、その期間の人件費や固定費を自社で負担し続ける必要があり、運転資金への影響は大きくなります。
また、多重下請構造のなかで上位の企業が資金難に陥った場合、自社に情報が届くのが遅れ、気づいたときには既に売掛金が多額に積み上がっていることもあります。
- 売上の集中度(上位数社の売上比率)を定期的に確認し、偏りが大きい場合はリスクとして認識する
- 支払遅延が発生した場合は、理由と今後の見通しを丁寧に確認し、資金繰り表に反映する
- 信用状態に不安がある取引先については、取引条件の見直しや与信枠の設定を検討する
- 主要取引先が複数ある場合は、売上構成や支払サイトの違いを一覧化し、全体のバランスを見る
取引先の倒産や支払遅延は完全には防ぎきれませんが、売上の集中度を把握し、与信管理や取引条件の調整を行うことで、影響を一定程度抑えることは可能です。
万が一、回収が困難になった場合には、顧問税理士や専門家と相談しながら、税務・法務上の対応と今後の資金計画を検討していくことが重要になります。
SES資金繰り改善の具体策
SES事業の資金繰りを改善するには、「売上を増やす」「コストを下げる」といった大きな話だけでなく、日々のキャッシュフローを細かく管理し、取引条件と資金調達手段を組み合わせて調整する視点が重要です。
特に、資金繰り表で数か月先までの現金残高を予測すること、単価交渉や支払サイトの見直しで運転資金の負担を軽くすること、公的融資や制度融資を含めた資金調達の選択肢を整理しておくこと、売掛金の早期回収・早期資金化の手段を検討しておくことが、SES特有の「人件費先行・入金遅れ」構造を和らげるカギになります。
| 対策の切り口 | 主な内容 |
|---|---|
| 見える化 | 資金繰り表で案件別・取引先別の入出金を把握する |
| 条件調整 | 単価交渉や支払サイト見直しで運転資金負担を軽減する |
| 資金調達 | 公庫・制度融資・ノンバンクなどを比較し必要枠を確保する |
| 売掛管理 | 売掛金の回収管理やファクタリング等で早期資金化を検討する |
資金繰り表によるキャッシュ管理
資金繰り改善の出発点は、資金繰り表による「見える化」です。SES事業では、案件ごとに締め日・支払サイト・エンジニアの人数や単価が異なるため、感覚だけでは「いつ・いくら足りなくなるか」を把握しづらくなります。
月ごとの売上・売掛金回収・人件費・社保・家賃・借入返済などを一覧にし、最低でも3〜6か月先までの現金残高を予測することで、資金ショートが生じるタイミングを早めに把握できます。
たとえば、「3か月後に大手クライアント2社の入金が重なるが、その前の月はベンチが増えて人件費がかさむ」といった状況も、資金繰り表があれば数字で確認できます。
- 取引先ごとの売上予定と入金予定(締め日・支払日)
- エンジニアごとの人件費・社保負担・賞与月の増加分
- 固定費(家賃・システム費・営業人件費など)と借入返済
- 新規採用・設備投資など一時的に増える支出
資金繰り表は、専門的なツールでなくても、表計算ソフトで「日付・入金・出金・残高」を並べる簡易版から始められます。
ポイントは、営業・経理・経営者が共通の表を見ながら、案件の増減やベンチの見通しを共有し、必要に応じて融資や条件変更の検討を前倒しで行うことです。
単価交渉と支払サイト見直し
SESの資金繰りは、工数単価と支払サイトの組み合わせで大きく変わります。粗利に余裕がない単価設定のまま支払サイトも長いと、売上が増えても運転資金の負担が増えるだけになりかねません。
そのため、「単価をどこまで上げられるか」「支払サイトを短縮できないか」を、案件ごとに検討することが重要です。
たとえば、長期稼働が見込める案件では、契約更新のタイミングで単価の見直しを相談する、スポット的な難易度の高い案件では、短期でも高めの単価を提示するなど、交渉の余地は少なくありません。
また、支払サイトについても、完全な変更が難しくても「中間金の導入」「検収基準の明確化」を行うことで、資金負担を軽くできる場合があります。
- 単価交渉では「エンジニアのスキル・評価」「市場単価の相場感」を資料にまとめて提示する
- 長期案件は、契約更新や増員のタイミングを単価見直しの機会と捉える
- 支払サイトが長い取引先には、部分検収・中間請求の導入可否を相談する
- 値引き要請を受ける際は、単価だけでなく支払条件や期間も含めて採算を確認する
単価や支払条件は、一度決まると長く続きやすいため、「最初の交渉がその後数年の資金繰りを左右する」といえます。
短期的に受注を優先した結果、長期的に資金繰りを圧迫してしまうことがないよう、採算とキャッシュフローの両面から取引条件を見直していくことが大切です。
公庫制度融資など資金調達策
資金繰りが厳しいときに、運転資金を補う手段として、日本政策金融公庫や信用保証協会付き制度融資などの公的な融資制度を検討することも有効です。
これらは中小企業向けに用意された制度で、一般的なビジネスローンと比べて金利を抑えられる場合がある一方、申請から実行まで一定の時間を要することも多くなります。
そのため、「資金ショート直前に駆け込む」というよりは、「数か月先の資金不足が予測できた段階で早めに準備する」使い方が基本になります。
- 直近の決算書・試算表に加え、SES事業の売上・粗利見通しをまとめた事業計画を用意する
- 資金繰り表で「いつ・いくら不足するか」を示し、資金の使途を明確にする
- 既存借入・税金・社保の支払状況について、正直に説明できるよう整理する
- 銀行融資・公庫融資・制度融資など複数の選択肢を比較し、返済原資と期間に無理がないか検討する
公的融資は、単独で利用するだけでなく、メインバンクとの連携の一環として活用されることもあります。
日頃から金融機関や公的支援機関に資金繰りの状況を共有しておくことで、いざというときに相談しやすくなります。
ファクタリングなど売掛金対策
売掛金の回収まで時間がかかる場合、その一部を早期に現金化する手段として、ファクタリングや売掛債権担保融資などがあります。
ファクタリングは、既に発生している売掛金を専門会社に譲渡し、手数料を差し引いた金額を受け取る仕組みで、「借入枠をこれ以上増やしたくないが、入金までのつなぎ資金が必要」という場面で検討されることがあります。
SESの売掛金は、比較的安定した取引先に対する継続請求であることが多く、条件によってはファクタリングの対象となり得ますが、その分手数料負担も発生します。
- 手数料率だけでなく、振込手数料・事務手数料などを含めた総コストを確認する
- 2社間(取引先へ通知なし)か3社間(取引先へ通知あり)かによる影響を理解する
- 取引先との関係性や今後の取引方針に与える影響を社内で検討する
- 銀行の売掛債権担保融資や、支払サイトの短縮交渉とあわせて比較する
売掛金対策は、「一度ファクタリングを使えばすべて解決」という性質のものではありません。資金ショートを避けるための一時的な手段として位置づけ、同時に売掛金の回収管理・請求フローの見直し・取引条件の調整など、根本的な改善策も並行して進めることが重要です。
SES経営者の相談先と対応方針
SES事業の資金繰りは、人件費先行・売掛金増加・多重下請構造など、構造的な要因が重なりやすく、経営者だけで抱え込むと判断が偏りがちです。
そこで重要になるのが、顧問税理士・金融機関・公的支援機関など、外部の専門家と継続的に情報を共有しながら対応方針を検討することです。
「資金が足りなくなってから」相談するよりも、「数か月先に資金ギャップが見え始めた段階」で早期に動くことで、取れる選択肢の幅が広がります。
特にSESでは、案件ポートフォリオ・ベンチ率・単価動向・売掛残高の偏りといった、業種特有のポイントを踏まえて助言を受けることが有効です。
| 相談先 | 主な役割イメージ |
|---|---|
| 顧問税理士 | 試算表・資金繰りの整理、税金・融資まわりの一般的な助言 |
| 金融機関 | 運転資金・制度融資の提案、返済条件見直しの検討 |
| 公的支援機関 | 経営相談、資金繰り・取引条件見直しのアドバイス、専門家紹介 |
顧問税理士との連携ポイント
顧問税理士は、決算書や申告だけでなく、資金繰りに関する相談相手としても活用できます。
特にSES事業では、「売上は伸びているが資金繰りが苦しい」「ベンチが増えたときにどの程度まで耐えられるか」といった論点を、試算表や資金繰り表をもとに一緒に確認してもらうことで、客観的な視点を得やすくなります。
また、税金・社会保険料の支払いが厳しくなりそうなときには、納付計画の立て方や、関係機関への相談の進め方について一般的な助言を受けることもできます。
- 月次試算表だけでなく、簡易な資金繰り表も共有する
- 案件別の売上・粗利・ベンチ状況など、SES特有の情報を説明する
- 数か月先の資金不足が見込まれる場合、その規模と時期を一緒に試算してもらう
- 融資や条件変更を検討する前に、返済可能額の目安について意見を聞く
顧問税理士側から見ても、資金繰りや案件情報が詳しく共有されているほど、具体的な数字に基づいた助言がしやすくなります。
決算のタイミングだけでなく、資金繰りが変化しそうな局面でこまめに相談することが、リスクの早期発見につながります。
金融機関への説明と相談の進め方
金融機関への相談は、「返済ができなくなった時点」ではなく、「将来の資金ギャップが予測できた段階」で行うことが基本です。
SES事業では、エンジニア数の増減や売掛金の増加に伴い、必要な運転資金の水準が変動しやすいため、資金繰り表と併せて説明することが重要です。
相談の際には、直近の決算書・試算表に加え、SES事業の売上構造(人数・単価・稼働率)、主要取引先の構成、今後の採用計画や投資予定などを資料に整理しておくと、状況を共有しやすくなります。
| ステップ | 準備する内容 | 説明のポイント |
|---|---|---|
| 現状共有 | 決算書・試算表・資金繰り表 | 売上・粗利・人件費・売掛金の状況と資金推移を率直に説明する |
| 課題整理 | ベンチ状況・長期サイトの案件一覧 | どの要因が資金繰りを圧迫しているかを具体的に示す |
| 対応案検討 | 事業計画・コスト見直し案 | 必要な運転資金額と期間、返済原資の見込みを説明する |
融資や条件変更を検討する場合、税金・社会保険料の支払い状況や既存借入の返済状況についても、隠さずに説明することが重要です。
情報を開示したうえで、どのような対策を取ろうとしているのかを共有することで、金融機関も中長期的な視点で支援の可能性を検討しやすくなります。
専門機関・公的支援窓口の活用法
資金繰りが厳しくなり始めた段階では、顧問税理士や金融機関以外にも、商工会・商工会議所、中小企業支援機関などの公的な相談窓口を活用することができます。
これらの窓口では、経営改善計画の作成支援や、資金繰り・取引条件見直しに関する一般的なアドバイス、必要に応じて専門家(中小企業診断士など)の派遣・紹介が行われることがあります。
SES事業に特化した相談でなくても、「売掛金の増加」「人件費先行」「特定取引先への依存度が高い」といった共通課題について、中立的な視点から整理してもらうことが可能です。
- 直近の決算書・試算表・資金繰り表を持参し、現状を数字で説明する
- SES事業の特徴(ビジネスモデル・人員構成・取引構造)を簡潔にまとめて伝える
- 「いつ頃・どの程度の資金ギャップが生じそうか」を共有し、選択肢を一緒に検討する
- 必要に応じて、専門家派遣や制度融資の情報提供を依頼する
複数の相談先を持つことで、単一の視点に偏らずに対応方針を検討できます。
SES経営者としては、「資金繰りが厳しくなってから駆け込む」のではなく、「厳しくなりそうだと感じた段階」で外部の知見を取り入れ、無理のない改善策と資金調達の組み合わせを早期に探っていくことが重要です。
まとめ
SES事業の資金繰りが厳しくなる背景には、長い支払サイトと人件費先行構造、多重下請による単価下落、売掛金回収遅れや税金・社保負担の重さなど複数の要因が重なっています。
まずは資金繰り表で案件別の入出金と人件費負担を見える化し、単価交渉や支払サイト見直し、公庫・制度融資・ノンバンク・ファクタリングなど資金調達手段の特徴と向き不向きを比較することが重要です。
そのうえで、税金・社保・既存借入の状況を整理し、顧問税理士や金融機関、公的支援窓口に相談する準備を進めながら、短期の資金確保だけでなく、中長期の返済計画と事業戦略をセットで検討していきましょう。















