ファクタリングを検討するとき、「平均どれくらいの金額が利用されているのか」「自社は小口なのか大口なのか」が気になる方は多いと思います。本記事では、ファクタリングの平均利用額のイメージから、法人・個人事業主別・業種別の金額帯、二者間・三者間ごとのレンジ、月商や売掛残高から見た適正な利用割合までを整理します。
さらに、利用額と手数料・実質コストの関係、銀行融資との組み合わせ方も解説し、自社にとって無理のない利用額の決め方を理解できる構成としています。
ファクタリング平均利用額の基本
ファクタリングの「平均利用額」は、あくまで全体像を掴むための目安です。複数の業界向け調査では、ファクタリングの平均利用額はおおむね200万円台〜約250万円前後とされています。
ただし、この数字には数千万円〜億単位の大口案件も含まれており、データを小さい順に並べたときの真ん中の値(中央値)は、平均額よりも小さくなると解説されています。
実際には、全体の9割前後が500万円未満の取引で、そのうち半数以上が200万円未満というデータも公表されています。
また、ファクタリング会社の「取扱可能額」は数千万円〜数億円と幅広く設定されている一方で、実務上よく利用されるゾーンは数十万円〜数百万円規模の少額案件が多いことが指摘されています。
中小企業向けの解説では、「中小企業の一般的な利用額は数百万円〜数千万円程度が主流」としたうえで、個別の資金需要に応じて利用額を決めることが推奨されています。
こうした平均値・分布を知っておくと、「自社の想定利用額が、一般的なレンジから大きく外れていないか」「大手ファクタリング会社に相談すべきか、少額特化型サービスが向いているか」といった判断材料になります。
以下は、公開されている調査値をもとにした全体像の整理例です。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 平均利用額 | 約247.5万〜250万円前後とする調査結果が複数存在する(超高額案件は平均算出から除外した例もあり)。 |
| 金額帯の分布 | 500万円未満が約9割、200万円未満が過半数というデータもあり、小口〜中口の利用が中心。 |
| 上限側のイメージ | 中小企業向けでも利用限度額は数千万円に設定されるケースが多く、大手やグループ系では数億円規模の案件にも対応している。 |
| 中小企業の一般的な利用額 | 中小企業の場合は、数百万円〜数千万円程度の利用が主流とする解説がある。 |
全体平均利用額と主な金額帯
複数の専門サイトや業界コラムでは、「ファクタリングの平均利用額はおよそ250万円前後」とする解説が繰り返し示されています。
あるデータでは、平均利用額を「247.5万円」と具体的に算出し、1,000万円以上の超高額案件は平均値を押し上げるため条件から除外したと説明しています。
同じ資料では、利用額の分布も公開されており、100万円未満・100〜200万円・200〜300万円…といったクラスごとの割合が示されています。
要点を整理すると、500万円未満の利用が全体の約9割、200万円未満の利用が半数以上を占めており、「平均250万円」とはいえ、実際には少額〜中口の利用が中心であることが分かります。
別の調査でも「過半数が200万円未満」「法人と個人事業主の割合は7:3」といった結果が示されており、平均額の背景には、小規模事業者の少額利用が数多く含まれていることが読み取れます。
このような実態を踏まえると、「ファクタリングは数千万円以上の大口案件しか対象にならない」というイメージは必ずしも当てはまらず、特に中小企業や個人事業主では、当座の運転資金や仕入代金の支払いに充てるため、数十万円〜300万円程度の範囲で利用するケースが多いと考えられます。
- 公開データでは「平均利用額およそ250万円」「500万円未満の利用が約9割」といった水準が示されている。
- 統計上の平均値は、大口案件に引き上げられているため、実際の中心ゾーンは200万円未満の少額〜中口利用。
- 自社の想定利用額がこのレンジとかけ離れていないかを確認すると、相談先やサービス選定の目安になる。
法人・個人事業主別の利用額傾向
ファクタリングの平均利用額は、企業形態(法人か個人事業主か)によっても傾向が異なります。
ある調査では、利用者全体に占める法人の割合が約65〜70%、個人事業主が約30〜35%とされており、平均利用額247.5万円という結果の内訳を詳しく見ると、「個人事業主は100万円以下の利用が過半数」という特徴が示されています。
また、同様の解説では、「ファクタリング利用企業の過半数が200万円未満」であり、そのうち特に個人事業主・フリーランス層では、10万円〜100万円程度の請求書を対象とする少額利用が多いとされています。
一方、法人の場合は、月商・売掛残高の規模に応じて利用額も広がりやすく、数百万円〜数千万円の利用が主流とする解説もあります。
最近では、個人事業主やフリーランス向けに「1万円〜」「25万円〜100万円」といった小口枠を設けるオンライン完結型のサービスも増えており、法人・個人で利用金額のレンジが自然に分かれつつあります。
こうした傾向を把握しておくと、「自分の金額感が、法人向けの大口サービスに合うのか」「個人向け少額特化型を選ぶべきか」の判断をしやすくなります。
| 区分 | 利用割合・金額帯の傾向 | 主なサービスレンジ例 |
|---|---|---|
| 法人 | 利用者全体の約65〜70%。平均利用額は全体平均(約250万円)とほぼ同水準で、数百万円〜数千万円の案件も多い。 | 買取可能額の下限は30〜50万円、上限は数千万円〜数億円とするサービスが多数。 |
| 個人事業主・フリーランス | 利用者全体の約30〜35%。個人だけを見ると100万円以下の利用が過半数で、10〜50万円程度の少額利用も多い。 | 1万〜25万円から利用可、調達可能額25〜100万円、あるいは300万円前後までとする少額特化型サービスが増加。 |
- 法人:月商・売掛残高に応じて数百万円〜数千万円の案件も多く、全体平均(約250万円)に近いゾーンが中心。
- 個人事業主:100万円以下の利用が過半数で、オンライン完結の小口サービス(1万〜100万円程度)との相性が良い。
- 自社の売上規模・請求書金額の平均に合わせて、「法人向け大口サービス」か「少額特化型」を選ぶとミスマッチを防ぎやすい。
業種別にみる利用額イメージ
業種別の平均利用額については、公的な統計が細かく公表されているわけではありませんが、業界向けの解説や事例紹介から、おおまかなレンジをイメージすることは可能です。
ファクタリング利用率が高い業種としては、建設業・運送業・製造業などが挙げられ、プロジェクト規模や売掛サイトの長さに応じて、数百万円〜数千万円単位の利用が多いとされています。
例えば、建設業では、完成した工事の請求書500万円をファクタリングで早期資金化するケースや、個人事業主の建設業者が30万〜150万円の債権を対象に利用する実例が紹介されています。
運送業では、燃料費・人件費の先払い負担が大きく、月間100万〜500万円程度の売掛金を一部ファクタリングする事例がよく取り上げられます。
一方、IT・広告・クリエイティブ系のフリーランスや小規模事業者の場合、月次の請求書が10万〜数十万円規模になることが多く、10万円以下〜30万円前後の少額を対象としたオンライン型ファクタリング(請求書買取・先払いサービス)の利用が中心です。
このように、業種ごとに「売掛金の単価」「取引ボリューム」「支払いサイト」が異なるため、平均利用額も自ずと変わってきます。
| 業種 | 典型的な利用シーン・金額イメージ | 参考となる公表例 |
|---|---|---|
| 建設業 | 工事請負代金の入金までのギャップを埋める目的で、500万円前後の請求書を資金化する事例が紹介されている。個人の一人親方では30万〜150万円程度の利用も。 | 建設業向けファクタリング解説・活用事例(500万円の工事請求書の例、30万〜150万円の債権実績など)。 |
| 運送業 | 燃料費・人件費の先払いに対応するため、月次の売掛金100万〜500万円程度の一部をファクタリングする事例が多いとされる。 | 運送業向けファクタリングの利用率解説、資金繰り改善事例など。 |
| 製造業 | 原材料費や外注費の支払いに備え、数百万円〜数千万円の売掛金を対象とする利用が一般的とする解説がある。 | 「中小企業の一般的な利用額は数百万〜数千万円程度」とするコラムや、業種別ファクタリング解説。 |
| IT・広告・士業などの小規模事業者 | 月次の請求書10万〜数十万円規模が多く、1万円〜100万円程度の少額を対象とするオンライン型ファクタリングの利用が中心。 | 個人事業主・フリーランス向けサービスの紹介(下限1万〜30万円、上限100〜300万円など)。 |
- 建設・運送・製造など「案件単価が大きく支払いサイトも長い業種」は、数百万円〜数千万円の利用が選択肢に入りやすい。
- IT・広告・フリーランスなど「請求書単価が小さい業種」は、1万〜100万円程度の少額オンライン型サービスとの相性が良い。
- 自社の売掛金1件あたりの金額と、月次の売掛残高を確認し、「どのゾーンに近いか」を把握すると、想定利用額の目安が立てやすくなる。
契約タイプ別の利用額と上限
ファクタリングの利用額や上限は、「二者間・三者間」といった契約タイプだけで決まるわけではなく、保有している売掛債権の金額と、各ファクタリング会社が設定している利用限度額の両方で決まります。
中小企業向けの解説では、「ファクタリングの調達限度額=売掛金総額−手数料(ただしファクタリング会社の利用限度額が上限)」と整理されており、会社ごとに数十万〜数百万円に上限を置く少額特化型から、「上限なし」「数億円まで調達可能」とするサービスまで幅広いことが示されています。
実際のサービス例を見ると、オンライン完結型の小口サービスでは「上限30万円」「1〜300万円」「限度額100万円以下」といった設定があり、フリーランスや個人事業主でも利用しやすい少額レンジを対象にしています。
一方、医療・介護報酬や一般の売掛債権を扱う法人向けファクタリングでは、「買取金額50万円〜1億円」「100万円〜1億円」「数万〜数億円」といった上限設定が公表されており、一定規模以上の売掛債権を保有する企業でも対応可能な枠が用意されています。
また、ビートレーディングのように「調達可能額の上限下限なし」としつつ、実績ベースで「1万円〜7億円」の買取実績を公表している事例もあり、売掛債権の規模が大きければ、相応の高額案件にも対応できることが分かります。
このように、契約タイプ別の利用額を考える際には、「二者間か三者間か」だけでなく、「自社の売掛債権規模」「利用したいサービスの限度額レンジ」をセットで確認することが重要です。
| タイプ | 利用額・上限のイメージ |
|---|---|
| 少額特化型(主に二者間) | 上限30万円、100万円以下、1〜300万円など。小規模事業者・個人事業主・フリーランス向けが中心。 |
| 一般的な中小企業向け | 買取額50万円〜1億円、100万円〜1億円、数万〜数億円とするサービスが多く、中小企業の数百万円〜数千万円ニーズに対応。 |
| 大口・業種特化型 | 診療報酬3か月分(例:月1億円なら2.7億円)など、数億円規模の資金調達が可能なメディカル・大口特化のスキームも存在。 |
二者間・三者間ごとの金額レンジ
二者間ファクタリングと三者間ファクタリングでは、手数料水準や手続きに違いがありますが、「扱える金額帯」については双方とも小口から大口まで幅広く対応するサービスが存在します。
一般的な解説では、手数料相場は三者間が売掛金額の1〜10%程度、二者間が10〜30%程度とされており、二者間の方がやや高コストな代わりに、売掛先への通知が不要でスピード重視の小口〜中口案件と相性が良いと説明されています。
金額レンジを見ると、二者間ファクタリングでは、オンライン完結型で「1万円〜300万円」「1万円〜必要な金額のみ」「限度額100万円以下」といった小口サービスが複数あり、個人・小規模企業の少額利用を支えています。
同時に、ビートレーディングのように二者間・三者間両方を扱い、「1万円〜7億円までの実績」「調達可能額 上限下限なし」とするサービスもあり、二者間でも数千万円〜数億円規模の案件に対応できる例が確認できます。
三者間ファクタリングは、診療報酬・介護報酬などの公的債権や、信用力の高い大口売掛金を対象とするスキームとして用いられることが多く、「買取額100万円〜1億円」「最大診療報酬3か月分(例:2.7億円)」など、高額レンジに対応した事例が目立ちます。
つまり、二者間=小口、三者間=大口と単純に割り切れるわけではありませんが、実務では「小口〜中口は二者間中心」「大口・医療介護などは三者間中心」といった使い分けがなされていると整理できます。
- 二者間:オンライン少額特化(1〜300万円、100万円以下)から、中堅以上の高額案件(数千万円〜数億円)までサービスによって幅広い。
- 三者間:診療報酬・介護報酬などの公的債権や大口売掛金を対象に、100万円〜1億円超・数億円規模まで対応するケースが多い。
- 自社の案件規模と売掛先の性質(一般企業か公的機関か)を踏まえ、どちらのスキームが適しているかを検討することが重要。
少額ファクタリング利用事例と注意点
少額ファクタリングは、個人事業主やフリーランス、小規模事業者が10万円前後〜数十万円規模の請求書を対象に、当座の運転資金を確保する手段として利用されることが多いです。
オンライン完結型のサービスを見ると、「買取金額1〜300万円」「初回上限30万円」「限度額100万円以下」「下限・上限なし(数万円〜数千万円)」など、小口でも申し込みやすい条件が示されています。
これらは審査書類がシンプルで、最短30〜60分で入金といったスピードを特徴としており、突発的な資金需要にも対応しやすいのがメリットです。
一方で、少額利用ならではの注意点もあります。第一に、1件あたりの金額が小さいほど、固定費や最低手数料の影響で実質コストが割高になりやすい点です。
オンラインサービスでも「手数料◯%〜」と下限が表示されていますが、実際には最低手数料や振込手数料が加算されるケースがあります。
第二に、少額とはいえ継続的に利用すると、年間のトータルコストが無視できない水準になることです。毎月30万円を手数料10%で前倒ししていると仮定すると、12か月で36万円の手数料負担になります。
第三に、少額ファクタリングは審査が簡便なため、「一時的なつなぎ資金」として活用する前提を維持しないと、慢性的な資金繰り対策として常用してしまうリスクがあります。
資金繰り表で利用頻度や年間コストを定期的に確認し、「どの金額帯までなら短期利用の範囲か」「どこからは銀行融資や公的融資を検討すべきか」の線引きをしておくと、安全に使いやすくなります。
- 1件10万〜数十万円の小口でも、最低手数料や振込手数料を含めた実質コストを確認する。
- 毎月継続利用すると年間コストが積み上がるため、資金繰り表で「利用額×回数」の総額を把握する。
- 短期のつなぎ資金用途にとどめ、慢性的な赤字補填になっていないかを定期的に点検する。
大口ファクタリングの上限と審査要素
大口ファクタリングでは、数千万円〜数億円規模の売掛債権を対象に資金調達を行うケースもあります。
サービス比較記事では、「買取額の上限は数千万〜数億円規模までサービスによって大きく異なる」「買取可能額:数万〜数億円」といったレンジが示されており、ビートレーディングのように「1万円〜7億円」の実績を持つ事業者もあります。
医療・介護報酬向けの専門ファクタリングでは、「買取総額100万円〜1億円」「診療報酬3か月分相当(例:月1億円なら2.7億円)」など、高額な資金ニーズに対応するメニューが公表されています。
大口案件の審査では、金額そのものだけでなく、複数の要素が総合的に判断されます。中小企業向けの解説では、「ファクタリングの限度額は売掛金総額とファクタリング会社の利用限度額によって決まる」としたうえで、売掛先の信用度・支払サイト・取引実績、利用企業の決算内容や財務状況などが重要と説明されています。
とくに大口の場合、売掛先が上場企業や公的機関かどうか、売掛先の数が分散しているかどうかが、リスク評価に強く影響します。
また、医療・介護系の三者間ファクタリングでは、診療報酬債権や介護報酬債権の性質上、債権の信用力が高いとされる一方で、審査にあたっては診療報酬の請求・入金実績、過去の返戻・減額状況なども確認されます。
大口ファクタリングを検討する中小企業にとっては、「自社の月商・売掛残高・主要取引先の信用力」を正確に把握し、どの程度までなら継続的に利用できるかを資金繰り表でシミュレーションしておくことが実務上のポイントです。
- 売掛債権の規模(単発金額と月次合計)と、ファクタリング会社が設定する利用限度額。
- 売掛先の信用力(上場企業・公的機関か、支払遅延の有無など)と取引継続年数。
- 利用企業の財務内容(決算・資本構成)や、既存の借入・他ファクタリング利用状況。
- 医療・介護報酬の場合は、請求・入金実績や返戻・減額の傾向といった診療報酬の運用実績。
中小企業が決める適正な利用額
ファクタリングの平均利用額が分かっても、自社にとって「どこまで使ってよいか(適正な利用額)」は別問題です。
適正額を考える際の軸になるのは、①月商や売掛金残高とのバランス、②資金繰り表(キャッシュフロー)の実績・見通し、③社内の運用ルール(利用上限・利用目的)の3点です。
平均額だけを基準にせず、「自社の売上規模・固定費・支払サイト」を踏まえて、どの程度の割合までであれば継続的に利用しても資金繰りに無理がないかを数値で把握することが重要です。
とくに中小企業の場合、売掛金の大部分を継続的にファクタリングに回すと、将来の入金余力が小さくなり、毎月の資金繰りがかえって不安定になるおそれがあります。
まずは月商・売掛残高から利用割合の目安を考え、次に資金繰り表で「いつ・いくら必要か」を確認し、最後に社内ルールとして上限額や利用目的を明文化する、という順番で検討すると整理しやすくなります。
| 検討ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①規模の把握 | 月商・売掛残高・固定費(月次)の金額を把握し、資金繰りのベースラインを確認する。 |
| ②必要額の算出 | 資金繰り表で「資金不足が生じる時期と金額」を洗い出し、ファクタリングで補うべき金額を試算する。 |
| ③ルール化 | 売掛残高に対する利用割合の上限や、利用目的(つなぎ資金など)を社内ルールとして定める。 |
月商・売掛残高からみた利用割合
適正な利用額を考えるうえで、まず押さえておきたいのが「月商」と「売掛金残高」の関係です。
月商は、1か月あたりの売上高(例:年商1億2,000万円なら月商1,000万円)、売掛金残高は、請求済みでまだ入金されていない売掛金の合計です。
一般的に、売掛金残高が月商の1〜2か月分に相当する企業が多く、その中からどの程度を前倒し資金化するかを検討することになります。
具体例で見てみます。
- A社:月商1,000万円、売掛金残高1,500万円(約1.5か月分)
- ケース1:売掛金300万円をファクタリング(売掛残高の約20%)
- ケース2:売掛金900万円をファクタリング(売掛残高の約60%)
ケース1では、売掛金の一部を前倒しすることで、一時的な支払いピークを乗り切る「つなぎ資金」としての色合いが強くなります。
一方、ケース2のように売掛残高の過半を継続的に前倒しすると、本来の入金時点に手元に残る資金が少なくなり、翌月以降もファクタリングを前提とした資金繰り構造になりやすくなります。
そのため、実務では「売掛金残高のうち、どの程度までを前倒し資金化の対象とするか」を、自社の固定費や手元資金の水準を踏まえて決めておくことが重要です。
目安としては、まずは売掛残高の一部(例:20〜30%程度)から試算し、資金繰り表で影響を確認したうえで、必要に応じて増減を検討する方法がとりやすくなります。
- 月商・売掛残高・固定費(月次)を把握し、「売掛金=何か月分の売上か」を確認する。
- 売掛残高全体ではなく、「一部(例:20〜30%)」からファクタリング対象とし、影響を試算する。
- 前倒し比率が高くなるほど、翌月以降の入金余力が小さくなる点を意識しておく。
資金繰り表を使った利用額シミュレーション
次に、資金繰り表(キャッシュフロー表)を使って、ファクタリングの利用額を具体的にシミュレーションする方法です。
資金繰り表は、一定期間(通常は月次・週次)について、「期首残高+入金予定−出金予定=期末残高」を整理した表です。
ここに「ファクタリングによる入金」と「本来の入金時点での差額」を加えることで、「いつ・いくらファクタリングを使えば、資金不足を解消できるか」を可視化できます。
簡単な月次モデルで考えてみます。
| 項目 | ファクタリング利用前 | ファクタリング利用後(例) |
|---|---|---|
| 期首残高 | 200万円 | 200万円 |
| 当月入金 | 売掛金入金:800万円 | 売掛金入金:500万円+ファクタリング:270万円(請求額300万円・手数料10%と仮定) |
| 当月出金 | 仕入・外注:600万円、固定費:300万円 | 同左(600万円+300万円) |
| 期末残高 | 200+800−900=100万円 | 200+770−900=70万円 |
上記はあくまで一例ですが、当月の資金不足を解消するためにファクタリングで前倒しした結果、本来の入金時点(翌月)に入ってくる金額は減少します。
そのため、資金繰り表では「ファクタリングを使った月」と「その翌月・翌々月」の残高推移をセットで確認し、「当月の資金不足は解消できても、将来の資金不足が新たに発生していないか」をチェックすることが重要です。
シミュレーションの際は、以下のようなステップで整理すると分かりやすくなります。
- 現状の資金繰り表(ファクタリング利用前)を作成し、資金不足が生じる月と赤字額を把握する。
- ファクタリングで前倒しする売掛金額・手数料率・入金時期を設定し、「利用後」の資金繰り表を作る。
- 当月だけでなく翌月・翌々月の期末残高も比較し、「一時しのぎ」に終わっていないかを確認する。
使い過ぎを防ぐ社内ルールとチェック
最後に、適正な利用額を維持するための「社内ルール」と「チェック体制」です。ファクタリングは手続きが比較的迅速なため、資金繰りが厳しい局面では「とりあえずファクタリングで埋める」という判断が繰り返されやすくなります。
これを防ぐには、あらかじめ「利用目的」「利用上限」「決裁フロー」をルールとして定めておくことが有効です。
例えば、次のようなルール設計が考えられます。
- 利用目的:一時的な売上増・入金サイトの延長・支払ピークへの対応など、具体的な目的に限定する。
- 利用上限:売掛金残高の◯%以内、月商の◯%以内など、数値で上限を設定する。
- 決裁フロー:一定額以上の利用は、経理部門と経営者の承認を必須とする。
あわせて、毎月の決算・資金繰り会議などで「今月のファクタリング利用額」「年間累計」「平均手数料率」などを簡単なレポートにまとめ、利用状況を見える化しておくと、使い過ぎの早期発見につながります。
また、ファクタリングへの依存が高くなっている場合には、「在庫・売掛回収の見直し」「支払条件の調整」「銀行融資や公的融資の活用検討」など、根本的な資金繰り改善策をセットで検討することが重要です。
- ファクタリングの利用目的・上限(売掛残高や月商に対する割合)を社内規程で明文化しておく。
- 月次で「利用額・件数・手数料の累計」をレポート化し、経営会議などで共有する。
- 利用が増えてきた場合は、売掛回収・コスト構造・他の資金調達手段を含めて、資金繰り全体の見直しを行う。
利用額と手数料・コストの関係
ファクタリングのコストは、「何%の手数料か」だけでなく、「いくらを・どのくらいの期間前倒しするか」で大きく変わります。
一般的な手数料相場は、二者間ファクタリングでおおむね8〜18%、三者間ファクタリングで2〜9%程度とする解説が多く、請求書買取型やオンライン特化型では2〜20%程度のレンジが目安とされています。
一方で、少額の請求書を対象とする場合には「最低手数料」が影響し、同じ手数料額でも利用額が小さいほど実質的な割合が高くなることが指摘されています。
また、支払期日までの日数(入金までの期間)が短いほど手数料は低く、期間が長いほどリスクが大きくなるため手数料も高めに設定される傾向があります。
そのため、「利用額が大きいから手数料率が必ず高くなる」とは限らず、むしろ一定の金額以上になると料率を抑えやすくなるケースもあります。
売掛先の信用度や取引期間、二者間・三者間といったスキームの違いも加わるため、自社にとっての実質コストを把握するには、利用額・期間・スキームを含めて整理することが重要です。
こうした視点からは、「何%か」だけでなく、「何円負担するのか」「年率換算するとどの程度に相当するのか」「他の資金調達と比べて許容できる水準か」を、利用額ごとに試算しておくことが実務上のポイントとなります。
| 観点 | 確認したい内容 |
|---|---|
| 利用額 | 1件あたり・月間の利用額。最低手数料の影響を受けやすいか(少額か中口以上か)。 |
| 手数料率 | 二者間か三者間か、オンラインか対面かなどによる相場の違い。 |
| 期間 | 支払期日までの残り日数。短いほど料率が下がりやすく、長いほど上がる傾向。 |
| 実質コスト | 「手数料総額」と「前倒し日数」から見た年率換算イメージや、他手段との比較。 |
利用額別に変わる手数料水準
ファクタリングの手数料は、同じサービスでも「いくら利用するか」によって実質的な水準が変わります。
一般論として、売掛金の金額が大きいほど手数料率(%)は下がりやすく、逆に少額の売掛金ほど手数料率が高くなりやすいと解説されています。
背景には、多くの事業者が1回あたりの最低手数料額(例:1万円など)を設けていることがあり、売掛金額が小さいほど、この最低手数料が割合として重くのしかかる構造があります。
例として、「最低手数料1万円」の条件で考えます。
- 売掛金10万円:手数料1万円 → 手数料率10%
- 売掛金5万円:手数料1万円 → 手数料率20%
このように、金額が半分になっても手数料額が同じであれば、手数料率は2倍になります。少額ファクタリングについて「1〜20%」という幅広い相場が示されるのは、このような構造が背景にあります。
一方で、数百万円〜数千万円といった中口以上の利用では、売掛先の信用度や三者間スキームの採用などにより、手数料率が1〜5%台に抑えられる事例もあります。
つまり、利用額が大きいほど「率」は下がる傾向があるものの、「額」としては相応のコストになるため、「率」と「額」の両方を確認することが重要です。
- 少額利用ほど最低手数料の影響で手数料率が高くなりやすい(例:5万円で20%など)。
- 中口〜大口では、売掛先の信用度や三者間スキームにより、1〜10%前後まで抑えられるケースもある。
- 「率」だけでなく、「何円負担するか」「そのコストで何日分前倒しできるか」をセットで確認する。
調達額と期間からみた実質コスト
ファクタリングは融資ではないため「金利」は設定されませんが、手数料を金利に換算して実質的な負担感を把握する考え方はよく用いられています。
専門サイトでも、「ファクタリングは利息ではなく手数料だが、比較のために年率換算することがある」と説明されています。 ここでは、具体的な計算例を使って、実質コストのイメージを整理します。
前提:
- 請求書額:300万円
- 買取率:90%(=請求書額に対する支払い割合)
- 手数料率:5%(買取額に対する割合)
- 支払期日までの日数:60日
この場合、
- 買取額:300万円×90%=270万円
- 手数料:270万円×5%=13万5,000円
- 実際の受取額:270万円−13万5,000円=256万5,000円
ここで、13万5,000円を「60日間で270万円を利用するためのコスト」とみなし、単純に年率換算すると、
- 実質年率 ≒(13万5,000円 ÷ 270万円)×(365日 ÷ 60日)≒ 0.05×約6.08 ≒ 約30%
となります。利息制限法の直接の対象ではありませんが、銀行融資の年利(数%台)と比較すると、短期資金をスピーディに調達できる代わりに、実質コストは高めになりやすいことが分かります。
もちろん、実務では「銀行融資に間に合わないタイミング」「与信の関係で銀行融資が難しい状況」なども考慮して判断する必要があります。
そのうえで、「この金額を、この期間だけ前倒しするのであれば、実質コスト◯%相当を許容できるか」という視点を持つと、ファクタリングを他の資金調達手段と比較しやすくなります。
- 手数料額を「前倒し利用する金額×期間」に対する対価と捉え、簡易的に年率換算してみる。
- 銀行融資など他の手段と比較し、「スピード・与信条件」と「実質コスト」のバランスを検討する。
- 同じ手数料率でも、利用期間が短いほど実質年率は高くなる点を踏まえて判断する。
複数社見積もりで比較すべき金額指標
複数のファクタリング会社から見積もりを取得する場合、「手数料◯%」だけを比較すると判断を誤るおそれがあります。
専門サイトでも、手数料相場を確認したうえで、「売掛先の信用度や売掛金額、利用頻度、二者間・三者間の違いによって手数料が変動するため、複数社の条件を総合的に比較することが重要」と解説されています。
実務で比較するときに見ておきたい主な指標は、次の4つです。
- ①手数料率(%)…見積書に記載された「◯%」の数字。
- ②その他費用…審査手数料・事務手数料・振込手数料・債権譲渡登記費用など。
- ③実際の受取額…請求書額から、すべての費用を差し引いた手取り額。
- ④期間…申込〜入金までの日数、入金をどれだけ前倒しできるか。
このうち③と④が、資金繰りに直接効いてくる「実務上の差」となります。例えば、A社は手数料5%・その他費用0円・入金まで2日、B社は手数料3%・その他費用3万円・入金まで5日という条件であれば、請求書額や必要なタイミングによって、どちらが有利かは変わります。
比較表の形にすると、判断しやすくなります。
| 項目 | A社 | B社 |
|---|---|---|
| 請求書額 | 300万円(共通条件) | |
| 手数料率 | 5% | 3% |
| その他費用 | 0円 | 事務手数料3万円 |
| 受取額 | 300万円−15万円=285万円 | 300万円−9万円−3万円=288万円 |
| 入金までの目安 | 2日 | 5日 |
この例では、受取額はB社の方が多いものの、「いつまでに資金が必要か」によってA社の方が適しているケースも考えられます。
複数社からの見積もりを比較する際には、「%」だけでなく、「手取り額」と「前倒しできる日数」のバランスを見て、自社の資金繰りに合った条件を選ぶことが大切です。
- 手数料率だけでなく、その他費用を含めた「実際の受取額(いくら手元に残るか)」。
- 申込〜入金までの日数や、入金をどれだけ前倒しできるか(資金繰りへの影響)。
- 自社の売掛先・金額・利用頻度を伝えたうえで、条件改善の余地があるかどうかも含めて比較する。
初めて利用する前のQ&A
初めてファクタリングを検討する際、多くの中小企業が気にするのは「最低いくらから使えるのか」「最大いくらまで調達できるのか」「銀行融資とどう組み合わせればよいのか」といった実務的な金額感です。
ファクタリング会社の公式情報や業界向け調査からは、少額特化サービスから数億円規模まで幅広いレンジが示されていますが、自社の規模や資金需要に対してどのゾーンが現実的かを整理しておくことが重要です。
特に、手数料や上限額だけでなく、「下限額」「最低手数料」「審査のポイント」「銀行融資とのバランス」といった要素を事前に確認しておくと、相談の段階でミスマッチを減らせます。
以下では、初めて利用する前に押さえておきたい金額まわりのQ&Aを、「下限目安」「上限と条件」「銀行融資との組み合わせ」という三つの観点から整理します。
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| 下限目安 | 数万円〜数十万円から利用可能な少額特化型と、数十万〜数百万円以上を想定する一般型に大きく分かれる。 |
| 上限と条件 | 中小企業向けでは数百万円〜数千万円、大口・業種特化では数億円規模まで。上限は売掛金規模と審査内容で決まる。 |
| 銀行融資との組み合わせ | 長期・基礎運転資金は融資、短期のギャップはファクタリングといった役割分担を意識して利用額を決める。 |
いくらから利用できるかの下限目安
ファクタリングの「いくらから利用できるか」は、サービスのタイプによって大きく異なります。対面型・一般的な法人向けサービスでは、買取金額の下限を30〜50万円程度に設定している例が多く、月商数百万円以上の中小企業を主な対象としているケースが一般的です。
一方、オンライン完結型やフリーランス・個人事業主向けの少額特化サービスでは、1万円〜10万円程度から利用できるメニューや、25万〜100万円程度の小口枠を中心に提供している例も見られます。
下限額は、ファクタリング会社の事務コストや審査コストとのバランスで決められています。売掛金があまりに少額だと、手数料収入より事務コストの方が重くなるため、「最低手数料」や「最低利用額」が設定されることが多く、結果として利用者側から見ると手数料率(%)が高く見えることがあります。
そのため、「下限額」だけでなく、「最低手数料がいくらか」「手数料率が何%〜何%か」を組み合わせて確認することが重要です。
初めて利用する際は、自社の請求書1件あたりの金額と、想定している調達額が「サービスの下限〜上限レンジ」に収まっているかを確認したうえで、少額特化型か一般型かを選択すると、審査・条件のミスマッチを避けやすくなります。
また、複数の請求書をまとめて利用するケースもあるため、「1件あたりの下限」と「合計額としての下限」の両方を質問しておくと安心です。
- 自社の請求書1件あたりの金額が、サービスの「最低利用額」を上回っているかを確認する。
- 最低手数料の有無・金額を確認し、少額利用時の実質手数料率がどの程度になるかを試算する。
- 複数請求書をまとめる場合の取扱い(合算できるか、枚数制限があるか)も合わせて確認する。
いくらまで調達できるかの上限と条件
上限額については、「サービス側が設定する限度額」と「利用企業側が保有する売掛債権の規模」の両方が関係します。
中小企業向けのファクタリング会社では、「50万円〜1億円」「100万円〜1億円」「数万〜数億円」といった買取可能額レンジを公表している例が多く、実務上は数百万円〜数千万円程度の利用が中心と解説されることがよくあります。
医療・介護報酬向けの専門スキームでは、「診療報酬3か月分相当」など、数億円規模の上限を設定する事例もあります。
ただし、これらはあくまで「理論上の上限」であり、実際の調達額は、売掛金の金額・売掛先の信用力・取引実績・請求書の点数・支払サイトなどを総合的に審査したうえで決まります。
例えば、月商1,000万円・売掛金残高1,500万円の企業が、1億円の上限枠を使い切ることは現実的ではなく、売掛金の一定割合(例:1〜2か月分の売上)を基準とした上限が設定されるイメージです。
上限額を確認する際は、サービス紹介ページの「買取可能額」だけではなく、実際の相談時に「自社の月商・売掛残高・主要取引先の情報」を伝えたうえで、「どの程度までなら継続的に利用可能と見込まれるか」をヒアリングすることが重要です。
また、既存の銀行融資や他のファクタリング利用状況も審査材料になるため、複数の資金調達手段を利用している場合は、その情報も整理しておくとスムーズです。
- サービスの「買取可能額レンジ」と、自社の「月商・売掛残高」が現実的に噛み合うかを確認する。
- 売掛先の信用力(上場企業・公的機関か、支払い実績はどうか)が上限に影響する点を踏まえて相談する。
- 既存の借入・他ファクタリング利用状況も含めて情報提供し、「継続利用を前提とした上限の目安」を聞いておく。
銀行融資と組み合わせた利用額決定
ファクタリングの利用額を決めるうえで、銀行融資との組み合わせをどう設計するかは、中小企業にとって重要なテーマです。
一般に、銀行融資は中長期の運転資金や設備資金の確保に適しており、金利も相対的に低い一方で、審査に時間を要し、与信枠にも限りがあります。
ファクタリングは、手数料は高めでも審査や入金が早く、売掛金の入金タイミングを前倒しする手段として、短期的なギャップの調整に向いています。
この違いを踏まえると、「基礎的な運転資金や設備投資は可能な範囲で銀行融資を活用し、売上増や支払サイトのずれなど一時的なギャップはファクタリングで補う」という役割分担が考えられます。
具体的には、資金繰り表において次のような分担をイメージすると整理しやすくなります。
- 銀行融資:常に発生する固定費やベースとなる仕入代金(例:毎月の人件費・家賃・一定量の仕入れ)をカバーする長期・中期資金。
- ファクタリング:繁忙期や大型案件に伴う一時的な仕入増・外注費増など、「特定の月にだけ発生する不足分」を補う短期資金。
利用額を決める際には、「銀行融資がどこまで確保できているか」「既存の借入返済が資金繰りにどの程度影響しているか」を前提にしつつ、ファクタリングで補うべき金額を資金繰り表から逆算して設定します。
併せて、銀行側の担当者とも情報共有を行い、「ファクタリングを併用することで、むしろ返済能力を安定させる」という説明ができると、融資継続の面でもプラスに働きやすくなります。
- まずは銀行融資など長期資金でカバーできる範囲を把握し、「残りの不足分」をファクタリングで補うイメージを持つ。
- ファクタリング利用額は、「特定の月にだけ発生する資金不足」を埋める金額にとどめ、恒常的な赤字補填に使わない。
- 銀行担当者とも資金繰り計画とファクタリング利用方針を共有し、過度な依存になっていないかを第三者視点でも確認する。
まとめ
ファクタリングの平均利用額は、業種や規模によって幅がありつつも、共通して「月商や売掛残高の一部を前倒しする」使い方が中心です。
本記事で整理した、全体の金額帯のイメージ、二者間・三者間ごとのレンジ、中小企業が参考にできる利用割合の考え方を押さえることで、自社にとって適切な調達額の目安が立てやすくなります。
あわせて、利用額と手数料・実質コストの関係や、銀行融資との組み合わせも確認し、複数社の見積もりを比較しながら、資金繰りとコストのバランスが取れた金額設定を検討していくことが重要です。
























