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ファクタリング二重譲渡とは?危険性と防止策を抑えるべき10ポイント

ファクタリングを活用するうえで、「二重譲渡」は必ず避けなければならない代表的なトラブル要因です。1つの売掛債権を複数のファクタリング会社や金融機関に重ねて譲渡すると、優先的に回収できる先をめぐる争いにとどまらず、詐欺などの刑事責任、損害賠償請求、取引停止による資金繰りの急激な悪化へ発展するおそれがあります。

ここでは、ファクタリングにおける二重譲渡の基本的な仕組みと法的な位置付け、発覚時の影響、さらに中小企業が事前に講じておきたい防止策や実務上のチェックポイントまでを、できるだけ平易な言葉で整理します。

 

ファクタリング二重譲渡の基礎知識

ファクタリングは、企業が保有している売掛債権(商品・サービスを提供した後に発生する代金請求権)をファクタリング会社へ譲渡し、その対価として手数料控除後の現金を先に受け取る取引です。

本来、同一の売掛債権は一度きりしか譲渡できませんが、同じ債権について、同じ期間・同じ金額の範囲で複数のファクタリング会社や金融機関に重ねて譲渡してしまう行為が「二重譲渡」です。

 

法律上は「債権の二重譲渡」として扱われ、民法の債権譲渡に関するルール(対抗要件や優先関係)に加え、状況によっては刑法上の詐欺等の問題が生じます。

ファクタリング取引には、売掛先企業(債務者)、資金調達を行う企業(利用者=譲渡人)、ファクタリング会社(譲受人)の三者が関わります。

 

同じ売掛債権が複数の譲受人に譲渡されると、「どの譲受人が優先して支払いを受けるのか」「回収できなかった側の損失は誰が負担するのか」といった紛争が起こりやすくなり、利用企業にとっても大きなリスクとなります。

このため、実務上はファクタリング契約書に二重譲渡の禁止条項が置かれていることが一般的で、あらかじめ禁止される行為として明確に位置付けられています。

 

項目 内容
売掛債権 取引先に商品や役務を提供した後、将来受け取る代金に関する請求権(例:請求書100万円分の代金請求権)。
ファクタリング 売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、手数料を差し引いた金額を早期に受け取る資金調達手段。
二重譲渡 同じ売掛債権を、重なりのある範囲で複数のファクタリング会社・金融機関に譲渡してしまう行為。
主な問題点 優先回収権を巡る争い、損害賠償請求、詐欺等の刑事責任、信用低下など多面的なリスクが発生する。

 

同じ債権を二重に売るリスク

同一の売掛債権を複数の相手に譲渡した場合、まず問題になるのが「誰が正当な債権者として優先して支払いを受けるのか」という優先順位です。

債権譲渡は、譲渡人と譲受人の合意だけでなく、民法上定められた対抗要件(債務者への通知や確定日付のある通知、債権譲渡登記など)を備えることで、第三者に対しても自らを譲受人と主張できる仕組みになっています。

 

同じ債権が二重に譲渡された場合、一般には対抗要件を先に備えた譲受人が優先して弁済を受けると解されています。

ファクタリング取引で二重譲渡が起きると、先に対抗要件を整えたファクタリング会社が売掛金の支払いを受ける一方、後順位となったファクタリング会社は売掛先からの回収ができず、利用企業に対して損害賠償を請求する可能性があります。

 

利用企業が二重譲渡により複数の先から資金を受け取っていれば、「既に譲渡済みの債権を自社のものと偽って再度譲渡した」と評価され、詐欺罪等の刑事責任が問われるおそれもあります。

また、売掛先企業から見れば、「どこに支払うべきか分からない」「債権者同士の争いに巻き込まれる」といった不安が生じ、支払いの保留や取引条件の見直しといった対応につながりやすくなります。

一度二重譲渡が発生すると、ファクタリング会社だけでなく、取引先や金融機関など、周囲との信頼関係を回復するためにも相当な時間とコストが必要になる点が重要です。

 

同じ債権を二重に売る主なリスク
  • 対抗要件を先に備えた譲受人が優先し、後順位側は回収できず損害賠償問題に発展するおそれがある。
  • 譲渡済みの債権を再度譲渡した場合、詐欺など刑事責任の対象となり得る。
  • 売掛先や金融機関からの信用が大きく損なわれ、取引条件の悪化や資金調達への影響が生じやすい。

 

二重譲渡が起きるよくある場面

二重譲渡は、明確な不正目的だけでなく、資金繰りに追われる中での判断ミスや社内管理の不備から生じることもあります。

たとえば、すでにA社とのファクタリング契約で対象とした売掛債権について、その範囲を十分に把握しないまま、同じ請求書を別のB社にも提示し、結果として対象期間や金額が重なった状態で資金調達を行ってしまうケースが挙げられます。

 

契約書に記載された対象債権(売掛先・請求書番号・期間など)を正確に管理していないと、利用企業自身が二重譲渡になっていることに気付かないこともあります。

また、期近の売掛金を対象とするスポット型ファクタリングと、金融機関との間で締結した包括的な売掛債権譲渡担保(融資に付随するもの)を併用している場合にも、対象範囲が重複する可能性があります。

 

金融機関との基本契約に「現在および将来の売掛債権を一括して担保とする」といった包括的な条項が盛り込まれていると、その対象となる売掛債権を別のファクタリング会社に譲渡した時点で、結果として二重譲渡に該当する場合があります。

さらに、経理部門と資金調達を担当する部門が分かれており、売掛債権の利用状況が社内で共有されていないケースでは、担当者ごとに別会社へ同じ請求書を持ち込んでしまうリスクも考えられます。

特に、短期間に複数の資金調達手段を検討している局面では、「どの請求書を、誰に、どの条件で譲渡したのか」を一覧化し、全社で把握しておくことが重要です。

 

二重譲渡が生じやすい典型パターン
  • 既存のファクタリング契約の対象範囲を確認しないまま、別の会社に同じ請求書を提示してしまう。
  • 売掛金担保付き融資とファクタリングを併用し、対象売掛債権が重複してしまう。
  • 経理・資金担当間の情報共有が不十分で、部署ごとに同じ債権を別々に資金調達に用いてしまう。

 

相見積もりとの違いと注意点

複数のファクタリング会社から条件を比較するための「相見積もり(相見積)」自体は、一般的な商慣行として認められています。

相見積もりの段階では、あくまで見積依頼や仮審査であり、売掛債権の譲渡に関する正式な契約(基本契約書・個別契約書)が締結されていなければ、債権譲渡そのものは成立していません。

そのため、同じ請求書を複数社に提示して条件を比較する行為そのものは、通常、二重譲渡には該当しません。

 

一方で注意が必要なのは、利用者側が「見積段階のつもり」でいても、実際には契約まで進んでいるケースです。

申込書への署名・押印や、債権譲渡の合意を内容とする書面に承諾した時点で、債権譲渡契約が成立したと評価されることがあります。

さらに、債務者への通知や債権譲渡登記といった対抗要件の手続きが行われると、法律上も譲渡が完了した状態となります。

 

その後、同じ売掛債権について別会社とも契約を結べば、二重譲渡に該当するおそれが生じます。

安全に相見積もりを行うためには、「見積・事前審査の段階」と「正式契約・債権譲渡の段階」を明確に区別し、社内で共有することが重要です。

また、契約書の中に「他社への譲渡禁止」や「本契約の対象債権を第三者に譲渡しない」といった条項が含まれていないかを確認し、一社と正式に契約した段階で、他社には速やかに辞退の連絡を行うことが望ましい対応です。

 

相見積もりと二重譲渡を混同しないためのポイント
  • 見積・仮審査段階と、正式に債権譲渡契約を締結する段階を社内で区別して管理する。
  • 申込書や契約書に署名する前に、それが正式な債権譲渡契約か、他社譲渡禁止条項があるかを確認する。
  • 一社と正式契約を締結した時点で、同じ債権について他社との交渉を継続しないよう社内ルールを整える。

 

二重譲渡で問題になる法律の知識

ファクタリングにおける二重譲渡は、「同じ売掛債権を複数の相手に譲渡してしまう」行為であり、民法上の債権譲渡のルールと密接に関係します。

売掛債権(特定の取引先に対する売上代金債権)は、原則として自由に譲渡できますが、債務者(売掛先)や他の債権者など第三者に対して、自分が正当な債権者であることを主張するためには「対抗要件」を具備する必要があります。

 

代表的な対抗要件として、債務者への通知・承諾(確定日付のある証書によるものを含む)や、動産・債権譲渡登記制度による登記などが用いられます。

同一の売掛債権が二重に譲渡された場合、民法および判例の考え方では、「第三者対抗要件を先に備えた譲受人が優先する」という整理が一般的です。

 

このため、二つのファクタリング会社に同じ売掛金が譲渡されていると、どちらが優先して支払いを受けるのか、回収できない側の損失を誰が負担するのか、といった問題が発生します。

あわせて、多くのファクタリング契約では、二重譲渡禁止条項や契約違反時の損害賠償条項が定められており、契約上の責任も問題となります。

 

さらに、既に譲渡した売掛債権を自社の債権であるかのように装って再度譲渡し、資金を受け取った場合には、刑法上の詐欺罪や横領罪等に該当し得ることが、裁判例や法律解説で示されています。

このように二重譲渡の問題は、①民法上の債権譲渡と対抗要件、②債権譲渡登記制度、③刑法上の詐欺・横領、④契約上の損害賠償・違約金といった複数の法的枠組みが重なって現れる点が特徴です。

 

法律・制度 内容と二重譲渡との関係
民法(債権譲渡・対抗要件) 指名債権は原則として譲渡自由だが、債務者や第三者に対して主張するには通知・承諾や確定日付、登記などの対抗要件が必要。同一債権が二重に譲渡された場合、先に対抗要件を具備した譲受人が優先する考え方がとられる。
動産・債権譲渡登記制度 債権譲渡の事実を登記することで、登記日に第三者対抗要件を具備したものと扱う制度。二重譲渡が生じた際の優先関係を判断するうえで重要な資料となる。
刑法(詐欺罪・横領罪など) 譲渡済みの売掛債権を自社のものと偽って再譲渡し資金を得る行為や、預かった売掛金を流用する行為は、詐欺罪・横領罪等に該当し得ると解されている。
契約法(損害賠償・違約金) ファクタリング契約には、二重譲渡禁止や違反時の損害賠償条項が置かれていることが多く、違反すると買取代金の返還、遅延損害金、訴訟費用の負担などを請求される可能性がある。

 

優先弁済のルールと対抗要件

指名債権の譲渡は、譲渡人(利用企業)と譲受人(ファクタリング会社)の間で契約が成立した時点で、当事者間では有効になります。

しかし、そのままでは売掛先や他の債権者に対して「新たな債権者である」と主張することはできません。

 

民法では、債務者への通知または債務者の承諾を得ることで債務者に対抗できるとされており、さらに第三者に対抗するためには確定日付のある通知・承諾や債権譲渡登記などの第三者対抗要件を備えることが必要とされています。

同一の売掛債権が複数の先に譲渡された場合、一般的な考え方として「第三者対抗要件を先に具備した譲受人が優先する」と整理されます。

 

例えば、A社とB社という二つのファクタリング会社に同じ売掛金1,000万円が譲渡されていたケースを考えます。

このとき、A社が先に確定日付付きの通知を行うか、債権譲渡登記を完了していれば、A社が優先的に1,000万円の支払いを受け、後から譲渡を受けたB社は売掛先に対して支払いを求めることができません。

 

その場合、B社は利用企業に対して買取代金の返還や損害賠償を請求することになります。

実務上、三者間ファクタリングでは、ファクタリング会社が売掛先に直接譲渡通知を行い、対抗要件の取得と支払先の変更を同時に実行するスキームが用いられることが一般的です。

 

二者間ファクタリングでは、売掛先に通知せずに債権譲渡登記を利用して第三者対抗要件を確保するパターンがよく見られます。

いずれの方式でも、「どのファクタリング会社が優先権を持つのか」を明確にすることで、二重譲渡が生じた際の紛争を一定程度抑える役割を果たしています。

 

優先弁済ルールと対抗要件の押さえどころ
  • 同じ債権が二重に譲渡された場合、原則として第三者対抗要件(通知・承諾・登記など)を先に備えた譲受人が優先する。
  • 三者間ファクタリングは債務者通知、二者間ファクタリングは債権譲渡登記など、それぞれ対抗要件の確保方法が異なる。
  • 優先権を得られなかったファクタリング会社は回収できない分を利用企業に請求する可能性があり、利用企業の負担が大きくなる。

 

詐欺など刑事責任に問われる場合

ファクタリングの二重譲渡は、民事上の優先関係や損害賠償の問題にとどまらず、刑事責任が問われる場合もあります。

典型的な例として、すでに他社へ譲渡済みの売掛債権について「まだ自社の債権である」と装い、別のファクタリング会社に再度譲渡して買取代金を受け取る行為が挙げられます。

 

この場合、ファクタリング会社を欺いて財産上の利益を得ている構造となるため、刑法上の詐欺罪に該当し得ると解釈されています。

また、二者間ファクタリングなどで、売掛先から入金された売掛金について、本来であればファクタリング会社に支払う義務があるにもかかわらず、利用企業が自己の運転資金に流用した場合には、横領罪や業務上横領罪が問題となる可能性があります。

 

これは、「他人のために管理している財産を自己のために処分した」と評価されるためです。さらに、実在しない取引を前提とした架空債権によるファクタリングも、刑事責任の典型例です。

存在しない売上に基づく請求書や契約書を作成し、その債権が実在するかのように装ってファクタリング会社から資金を得る行為は、詐欺罪に加え、有印私文書偽造・同行使などの対象となる可能性があります。

このような不正行為は、発覚した場合に刑事・民事の両面で重い責任を負うことになるため、資金繰りが厳しい局面であっても絶対に行ってはなりません。

 

刑事責任が問題になりやすい代表的なケース
  • すでに他社へ譲渡済みの売掛債権を自社の債権と偽り、別のファクタリング会社へ再譲渡して資金を受け取るケース(詐欺の可能性)。
  • 売掛先からの入金をファクタリング会社に送金せず、自社の資金として使用するケース(横領・業務上横領の可能性)。
  • 実在しない取引に基づく請求書や契約書を作成し、架空債権を譲渡して資金を得ようとするケース(詐欺や文書偽造等の可能性)。

 

損害賠償請求を受ける主なケース

二重譲渡が発生した場合、刑事責任とは別に、民事上の損害賠償責任が問題になるケースが多数存在します。

ファクタリング会社は、債権譲渡が有効であることを前提として買取代金を支払っていますので、結果としてその債権を回収できなかった場合、「その支払いがなければ被らなかった損害」として、買取代金相当額などの返還を請求することが考えられます。

 

利用企業にとっては、受け取った資金の返還に加え、契約条項に基づく遅延損害金や弁護士費用などの負担が生じる可能性があります。

例えば、売掛金1,000万円を買取率95%(買取率=請求書額面に対する支払割合)でファクタリング会社に譲渡し、利用企業が950万円を受け取ったとします。

 

その後、同じ売掛金を別の会社にも譲渡し、優先権は後から譲渡された会社にあると判断された結果、最初のファクタリング会社が売掛金の回収を行えなかった場合、利用企業は少なくとも950万円の返還を求められる可能性があります。

さらに、契約で定められた年◯%といった遅延損害金や訴訟費用が上乗せされれば、返還額が当初の受取額を上回ることもあり得ます。

 

多くのファクタリング契約には、二重譲渡禁止条項に加え、「禁止行為があった場合の契約解除」「期限の利益喪失」「残高一括返済」「損害賠償義務」などが規定されています。

売掛金入金後にファクタリング会社への支払いを行わなかったケースや、重要な事実について虚偽の説明を行ったケースも、契約違反として損害賠償請求の対象となり得ます。

 

損害賠償請求を受けやすい主なケース
  • 二重譲渡によりファクタリング会社が売掛金を回収できず、買取代金の返還と遅延損害金を含めた請求を受けるケース。
  • 契約書の二重譲渡禁止条項などに違反し、契約解除・期限の利益喪失・違約金支払いが同時に発生するケース。
  • 売掛金入金後にファクタリング会社へ送金しないなどの契約違反が重なり、訴訟費用・弁護士費用の一部まで負担を求められるケース。

 

二重譲渡が発覚したときの影響

ファクタリングの二重譲渡が発覚すると、単に当該取引が問題となるだけでなく、信用・法的責任・資金繰り・取引関係など、企業活動全般に影響が広がるのが一般的です。

二重譲渡は、同じ売掛債権を複数のファクタリング会社に譲渡する明らかな契約違反であり、場合によっては詐欺罪や横領罪など刑事責任の対象にもなり得る行為です。

 

発覚のきっかけとしては、売掛先に対して複数のファクタリング会社から同じ債権について支払請求や通知が届くケース、債権譲渡登記の記録や社内の債権管理で重複が判明するケース、金融機関の与信調査で情報の食い違いが見つかるケースなどが挙げられます。

いずれの場合も、「債権管理が適切に行われていないのではないか」「意図的な不正ではないか」といった疑念を招きやすく、売掛先・金融機関・ファクタリング会社からの信用低下は避けられません。

 

その結果、ファクタリング会社からの買取代金返還請求や損害賠償請求、既存契約の解除、銀行融資の見直し、取引先からの取引条件変更などが連鎖的に発生し、短期間で資金繰りが悪化する可能性があります。

最終的には、売上の減少と資金調達難が重なり、事業継続が困難になるケースも想定されます。

 

影響区分 主な内容
信用面 売掛先・金融機関・ファクタリング会社からの信用低下。業界内で不信情報が共有されるおそれ。
法的責任 契約違反に基づく損害賠償請求に加え、場合によっては詐欺罪・横領罪など刑事責任が問題となる。
資金繰り 取引停止・融資引き揚げ・ファクタリング利用停止により運転資金の確保が難しくなり、倒産リスクが高まる。
取引関係 主要取引先との取引条件悪化や契約解除、他の資金調達手段へのアクセス制限など、中長期的な影響。

 

売掛先・金融機関からの信用低下

二重譲渡が明らかになると、まず表面化しやすいのが売掛先や金融機関からの信用低下です。

売掛先企業から見ると、同じ売掛金について複数のファクタリング会社から支払い請求や通知が届く状況は、「同じ債権を複数に売却しているのではないか」という強い不信感を抱かせます。

 

その結果、支払いを一時的に留保したり、取引条件を見直したり、新規発注を控えるなど慎重な対応を取る可能性が高まります。

金融機関にとっても、二重譲渡は「債権管理やコンプライアンス体制に問題がある企業」と受け止められやすい事象です。

 

既存の融資については、与信の見直しや融資枠の縮小、新規融資の抑制といった対応が検討される場合があります。

今後新たに融資を申し込む際にも、審査で不利な評価を受けることが想定されます。ファクタリング会社においても、二重譲渡の事実があれば、その後の取引について慎重になり、取引中止や条件の厳格化が行われやすくなります。

一度低下した信用を取り戻すには時間がかかります。誠実な対応を続けても、以前と同じ条件での取引や融資をすぐに受けられるとは限らず、中長期的な経営にも影響を及ぼす点に注意が必要です。

 

信用低下がもたらす主な影響
  • 売掛先が支払い保留や与信枠の縮小を検討し、取引条件を厳しくする可能性がある。
  • 金融機関から不正リスクの高い企業と評価され、融資枠の縮小や新規融資の抑制につながりやすい。
  • ファクタリング会社の審査で不利となり、今後の資金調達手段が制限されるおそれがある。

 

資金繰り悪化と倒産リスクの広がり

二重譲渡が判明した場合、資金繰りへの影響も極めて大きくなります。ファクタリング会社は、二重譲渡が確認された時点で、当該売掛債権に関する買取代金の返還や損害賠償を求めるのが通常です。

利用企業から見れば、すでに運転資金や支払いに充てた資金について、短期間での返還を求められるケースが多く、まとまった資金流出が一度に発生します。

 

同時に、二重譲渡が発覚したファクタリング会社は、その後の新規取引を停止するのが一般的であり、これまでファクタリングにより確保していた運転資金の調達ルートが途切れます。

さらに、金融機関側でも信用低下を踏まえ、短期継続融資の更新見送りや当座貸越枠の縮小、新規融資の抑制などを行えば、仕入代金や人件費、家賃、税金など日々の支払いに充てる資金の確保が難しくなります。

 

このような状況が続くと、仕入先への支払い遅延、給与の遅配、税金・社会保険料の滞納といった問題が生じ、さらに信用に悪影響が出ます。

場合によっては、差押えなどの強制執行や、任意整理・破産などの法的整理手続きに進まざるを得ない場面も想定されます。

二重譲渡は、その発覚をきっかけに、短期間で倒産リスクが高まる引き金となり得る点を認識しておく必要があります。

 

資金繰り・倒産リスクの広がり方
  • 買取代金返還や損害賠償により、短期間で多額の資金流出が発生する。
  • ファクタリングや銀行融資など複数の資金調達ルートが同時に細り、運転資金の確保が難しくなる。
  • 支払い遅延や滞納が続くと、差押え・法的整理などに発展し、倒産リスクが急速に高まる。

 

取引停止や契約解除につながる事例

二重譲渡は、売掛先や金融機関との取引継続にも大きな影響を与えます。売掛先は、トラブルへの巻き込まれを避ける観点から、「今後も従来どおり掛売りで取引してよいのか」「決済条件を厳しくすべきではないか」といった視点で与信の再評価を行います。

その結果、これまで掛売りで取引していたものが現金払い・前払いに変更される、あるいは新規注文や長期契約が見送られるといった判断がなされることがあります。

 

金融機関やファクタリング会社との契約面でも、二重譲渡は「重大な契約違反」と評価されるのが一般的です。

多くの契約書には、重大な違反があった場合に通知なしで契約を解除できる条項や、期限の利益喪失条項(残高の一括返済を求められる条項)が盛り込まれています。

 

二重譲渡が確認されると、これらの条項が適用され、既存のファクタリング枠や融資枠がまとめて停止される可能性があります。

中小企業の場合、主要取引先やメインバンクの数が限られていることも多く、数社との関係悪化がそのまま売上の減少や資金調達の難化に直結します。

一度の二重譲渡がきっかけとなり、取引停止や契約解除というかたちで表面化すると、その後の事業計画や再建にも長期間影響を残すことになりかねません。

 

取引停止・契約解除につながるポイント
  • 売掛先はトラブル回避のため、取引停止や決済条件の厳格化を検討しやすい。
  • 金融機関・ファクタリング会社は二重譲渡を重大な契約違反と捉え、契約解除や残高一括返済を求めることがある。
  • 主要取引先やメインバンクとの関係悪化は、中小企業にとって売上・資金調達双方で深刻な影響を与え得る。

 

中小企業が取るべき防止策

ファクタリングにおける二重譲渡は、故意の不正だけでなく、売掛債権の管理不足や社内の情報共有の欠如からも生じます。

一度発生すると、ファクタリング会社との紛争にとどまらず、売掛先や金融機関からの信用低下、資金繰りの悪化など、事業全体に影響が広がりやすい点が特徴です。

 

そのため、中小企業にとって重要なのは、「二重譲渡を起こさない仕組み」を平時から作っておくことです。

具体的には、売掛債権の管理方法、社内承認フロー、契約書の管理、複数社比較のやり方など、各段階ごとにチェックポイントを整理しておく必要があります。

 

以下では、中小企業が実務上押さえておきたい主な防止策を整理します。

区分 主な防止策のポイント
売掛債権管理 どの請求書をどの金融機関・ファクタリング会社に提供したかを台帳などで一元管理し、重複を防ぐ。
社内チェック 資金調達の申請時に、担当者と承認者が二重譲渡の有無を確認するフローを設ける。
契約書管理 二重譲渡禁止条項や包括的な債権譲渡条項の有無を確認し、対象範囲を一覧表で管理する。
複数社比較 見積段階と契約段階を明確に区分し、一社と正式契約を結んだ時点で他社との交渉を終了する。

 

売掛債権管理と社内チェック体制

二重譲渡を防ぐうえでの基本は、「売掛債権の状態が見えること」と「社内でのダブルチェック体制」です。

まず、売掛債権ごとに「取引先名」「請求書番号」「請求額」「請求日・入金予定日」「担保・譲渡の有無」「ファクタリング利用先」などを一覧化した売掛債権管理台帳を作成し、常に最新の情報に更新することが重要です。

 

表計算ソフトや会計ソフトの機能を活用し、「ファクタリング利用中」「融資の担保に設定済み」などのステータスを付けておくと、重複の有無を確認しやすくなります。

次に、社内の申請・承認フローを整えることが欠かせません。営業部門や個々の担当者が独自にファクタリングを進めると、同じ債権が別ルートで外部に持ち込まれる可能性が高まります。

 

これを防ぐために、「売掛債権を外部に提供する場合は必ず経理・財務部門を通す」「申請前に管理台帳で重複の有無を確認する」といったルールを設け、承認者が台帳との照合を行ってから申請を承認する仕組みを構築することが有効です。

また、定期的な内部チェックも役立ちます。例えば、月次決算のタイミングで「売掛債権一覧」と「ファクタリング契約一覧」「売掛金担保付き融資一覧」を突き合わせ、同じ債権が複数の先に提供されていないかを確認するルーチンを設定しておくことで、早期発見と是正につながります。

 

売掛債権管理・社内チェックの実務ポイント
  • 売掛債権を台帳やシステムで一元管理し、「譲渡・担保の有無」を必須項目として登録する。
  • ファクタリングや担保設定の申請は、経理・財務部門を経由する社内ルールと承認フローを整備する。
  • 月次など定期的に、売掛債権一覧とファクタリング・融資契約一覧を突合し、重複の有無を確認する。

 

契約書の二重譲渡禁止条項の確認

多くのファクタリング契約書や融資契約書には、「同一債権を第三者に譲渡・担保提供しない」といった二重譲渡禁止条項が盛り込まれています。

また、金融機関との基本契約の中には、「現在および将来の売掛債権一切を担保とする」といった包括的な債権譲渡条項や根保証的な担保設定が含まれていることもあります。

 

このような条項がある場合、意図せず別のファクタリング会社に売掛債権を譲渡すると、結果として二重譲渡に該当するおそれがあります。

そのため、「どの契約が、どの範囲の売掛債権に影響しているか」を一覧で把握しておくことが重要です。

 

契約書を個別に保管しているだけでは、過去に締結した契約の存在を失念し、同じ債権を別の取引に利用してしまうリスクが高まります。

ファクタリング契約、売掛金担保付き融資、譲渡担保契約などをまとめて管理し、二重譲渡禁止条項の有無や対象となる売掛債権の範囲を表形式で整理することで、実務上の確認が容易になります。

 

また、契約条項の解釈が難しい場合には、顧問税理士・司法書士・弁護士などの専門家に相談し、「この契約でどの売掛債権が対象になっているか」「新たにファクタリングを利用して差し支えない範囲はどこか」といった点を確認することも検討すべきです。

契約書の内容を把握したうえで、社内ルールや管理台帳に反映させることが、二重譲渡防止に直接つながります。

 

契約書チェックで押さえたいポイント
  • ファクタリング契約・融資契約・担保契約を一覧化し、二重譲渡禁止条項や包括的な債権譲渡条項の有無を整理する。
  • どの売掛債権がどの契約の対象になっているかを台帳に反映し、関係部署で共有する。
  • 条文の解釈が難しい場合は、専門家に相談し、新たな資金調達との関係を事前に確認する。

 

複数社比較時の安全な進め方

ファクタリングを検討する際に、複数の会社から見積を取り、手数料や入金スピード、契約条件を比較すること自体は有効な方法です。

ただし、相見積もりの段階と、正式な債権譲渡契約の段階を混同すると、結果的に二重譲渡に近い状態を招くリスクがあります。

 

そのため、「比較のステップを段階的に分けること」と「各段階でどこまで情報を開示するか」をあらかじめ決めておくことが重要です。

たとえば、初期段階では具体的な請求書番号などは伏せ、売掛先や売上規模などの概要情報をもとに概算見積を依頼します。

 

次の段階で候補を2〜3社に絞り込み、一部の請求書情報を提示して詳細見積を依頼します。そのうえで、最終的に選んだ1社とだけ正式な申込書・基本契約書・個別契約書を締結し、債権譲渡通知や登記といった手続きに進む流れを明確にしておくと、安全性が高まります。

一社と正式契約を締結した後は、同じ売掛債権について他社との交渉を続けないことが重要です。

 

社内では、「見積依頼段階」「正式契約段階」といったステータスを区別し、進捗が進むたびに経理・財務部門へ情報共有するルールを設けると、二重譲渡の防止につながります。

見積段階の案件を一覧表で管理し、正式契約に移行した案件には明確なマークを付けるといった視覚的な管理も有効です。

 

安全な相見積もりの進め方の目安
  • 初期段階では請求書番号を伏せた概算見積で条件感を把握し、候補を絞り込む。
  • 正式な債権譲渡契約を結ぶのは一社のみに限定し、契約後は他社への申込や交渉を終了する。
  • 見積段階と契約段階を社内で区別し、進捗を経理・財務部門と共有して二重譲渡を防ぐ。

 

安全にファクタリングを使うポイント

ファクタリングは、売掛金の入金タイミングを前倒しすることで、資金繰りを安定させる手段として利用されています。

一方で、契約内容の理解不足や社内管理が不十分な場合、二重譲渡や支払い遅延などのトラブルにつながる可能性があります。

 

安全に活用するためには、「どのような会社と契約するか」「自社の資金調達全体の中でどう位置付けるか」「利用前に何を確認しておくか」という三つの視点から整理しておくことが有効です。

まず、ファクタリング会社の選定では、会社情報や手数料体系、契約条件の開示状況、相談対応の内容など、客観的な情報を確認することが大切です。

 

次に、ファクタリングを資金調達全体の一手段として位置付け、銀行融資やリース、公的融資制度などと組み合わせることで、利用額や依存度を適切な範囲に抑えやすくなります。

さらに、初めて利用する前に、費用・契約期間・売掛債権管理などに関する疑問点を洗い出し、事前に確認しておくことで、想定外の負担やトラブルを避けやすくなります。

 

観点 安全に使うための主なポイント
業者選定 会社情報・手数料体系・契約条件の開示状況・問い合わせ対応などを総合的に確認する。
資金調達全体 銀行融資・リース・公的融資制度などと組み合わせ、ファクタリングの利用額・利用頻度を適切な水準に保つ。
事前確認 利用目的・必要金額・期間・社内管理体制を明確にし、契約書の内容と照らして確認する。

 

信頼できるファクタリング会社の選び方

信頼性の高いファクタリング会社を選ぶには、複数の客観的なチェック項目を確認することが有効です。

まず、商号・所在地・代表者名・設立年月日などの基本情報が公表されているか、問い合わせ先(電話番号・メールアドレス)が明確に示されているかを確認します。

 

加えて、手数料率や買取率、最低手数料、その他の費用(振込手数料・登記費用など)の有無や、実際の受取額の算出方法が具体的な数字とともに説明されているかどうかも重要なポイントです。

契約面では、基本契約書・個別契約書のひな形が事前に提示されるか、契約前に内容説明が行われるか、解約条件や中途解約時の扱いが明記されているかを確認します。

二者間・三者間ファクタリングの違いや、償還請求権(リコース)の有無など、スキームごとの特徴についても資料や担当者の説明で把握しておくと、自社のリスク許容度に合った選択がしやすくなります。

 

さらに、相談や問い合わせへの対応も重要な判断材料です。見積段階から説明内容が一貫しているか、追加費用が発生する可能性についても説明があるか、入金スケジュールや必要書類が分かりやすく案内されるか、といった点は、契約後の運用のスムーズさにも直結します。

可能であれば、複数社から同じ観点で情報を取得し、一覧表で比較する方法が実務上有効です。

 

ファクタリング会社選定のチェック項目例
  • 商号・所在地・連絡先・代表者などの基本情報が分かりやすく開示されているか。
  • 手数料率・買取率・その他費用と、実際の受取額の計算方法が具体的に示されているか。
  • 契約書の内容(禁止事項・解約条件・償還請求権の有無など)について事前説明があるか。
  • 問い合わせへの説明が一貫しており、メリットだけでなくリスクや注意点にも言及があるか。

 

二重譲渡を避ける資金調達の組み合わせ

二重譲渡を防ぎつつ資金繰りを安定させるためには、ファクタリングだけに依存しない資金調達の組み合わせを検討することが有効です。

例えば、売上の季節変動や一時的な資金不足への対応にはファクタリングを活用し、設備投資や中長期的な運転資金については銀行融資やリース、公的融資制度などを利用するといった役割分担が考えられます。

これにより、同じ売掛債権を頻繁に早期資金化する必要を抑えることができます。

 

また、すでに売掛金を担保とする融資や包括的な債権譲渡担保契約を締結している場合には、対象となる売掛債権とファクタリングで利用する売掛債権が重ならないよう整理しておくことが重要です。

売掛債権管理台帳や資金調達一覧表を作成し、「どの金融機関・ファクタリング会社に、どの売掛債権を提供しているか」を一元管理することで、二重譲渡が生じるリスクを低減できます。

 

さらに、短期的な資金需要については、支払サイトの調整やリース・割賦による支出の平準化、公的機関による短期融資制度なども選択肢となります。

こうした手段を組み合わせることで、ファクタリングの利用額・利用頻度を適切な範囲に抑えつつ、二重譲渡の発生を防ぎやすくなります。

 

資金調達を組み合わせる際のポイント
  • 短期の資金ギャップにはファクタリング、長期の資金需要には融資・リースなどを充て、役割を分けて検討する。
  • 売掛債権を担保とする融資や譲渡担保契約の対象と、ファクタリングで利用する売掛債権が重ならないよう台帳で管理する。
  • 公的融資や支払条件の見直しなども含めて検討し、ファクタリングへの依存度を適切な水準に保つ。

 

初めて利用する前に確認したいQ&A

初めてファクタリングを利用する際には、「どの程度の費用がかかるのか」「どの売掛債権を対象にすべきか」「社内で何を準備しておく必要があるか」など、多くの疑問が生じます。

事前に代表的な論点を整理しておき、社内担当者・専門家・ファクタリング会社との間で確認しておくことで、契約後の認識のずれやトラブルを防ぎやすくなります。

 

よくある論点としては、①手数料・買取率・その他費用を含めた実際の受取額、②契約期間・解約条件・更新の方法、③売掛先通知の有無(2社間・3社間の違い)、④既存の融資や担保契約との関係、⑤社内の売掛債権管理方法や承認フローなどが挙げられます。

これらについて、契約書や約款の該当箇所を確認しながら質問事項を整理すると、抜け漏れを減らすことができます。

 

以下は、初回利用前によく確認される質問と、その際にチェックしておきたいポイントの整理例です。

主な質問 確認したい内容 社内での整理ポイント
費用に関する質問 手数料率・買取率・その他費用、実際の受取額の計算方法、入金までのスケジュール。 必要な資金額と必要なタイミングを明確にし、複数社の条件を比較できるようにしておく。
契約条件に関する質問 契約期間、途中解約の可否と条件、二重譲渡禁止条項、違反時の取扱い。 既存の融資契約・担保契約と合わせ、どの売掛債権がどの契約の対象かを一覧化する。
運用面に関する質問 必要書類、取引開始までの手順、売掛先への通知の方法と取引先への影響。 売掛債権管理台帳や社内承認フローに、ファクタリング利用時の手順を組み込む。

 

初回利用前に最低限確認しておきたい事項
  • 「いくら必要か」「いつまでに必要か」「どの売掛債権を対象にするか」を社内で明確にしておく。
  • 手数料・買取率・契約条件(期間・解約・禁止事項など)を契約書・見積書で具体的に確認する。
  • 既存の融資・担保契約や社内の売掛債権管理体制との整合性を確認し、二重譲渡を防ぐ仕組みを事前に整える。

 

まとめ

ファクタリングにおける二重譲渡は、同じ売掛債権を複数の相手に譲渡する行為であり、優先弁済をめぐる紛争だけでなく、詐欺等の刑事責任、信用低下、資金繰り悪化など、事業継続に直結する深刻な問題を招く可能性があります。

こうしたリスクを避けるためには、売掛債権の一元管理と社内承認フローの整備、契約書に含まれる二重譲渡禁止条項や包括的な債権譲渡条項の確認、複数社比較時の進め方のルール化など、平時からの準備が不可欠です。

 

安全にファクタリングを活用するには、信頼できるファクタリング会社を選び、資金調達全体の中での位置付けを整理したうえで、自社の管理体制と整合する形で利用することが重要です。

本記事の内容を参考に、自社の債権管理や資金調達の方法を見直し、二重譲渡を防ぎながら、ファクタリングを安定した資金調達手段として活用する体制づくりを検討してみてください。