ファクタリングの広告で「手数料◯%〜」「掛け目95%」といった表現を見ても、自社が実際いくら受け取り、いくらコストを負担するのか直感的に分かりにくいと感じる方は多いと思います。
本記事では、二社間・三社間ファクタリングでよく使われる手数料・掛け目・買取率・割引料の意味から、基本の計算式と具体例、実質年率や日割りコストの簡易計算、登記費用や印紙税を含めた総コストの考え方までを整理します。自社で簡単なシミュレーションができるようになることをゴールとします。
目次
ファクタリング手数料の基礎
ファクタリングの「手数料」を正しく理解するには、関連する用語をセットで押さえておくことが大切です。
実務では「手数料率(◯%)」「掛け目(かけめ)」「買取率」「割引料」などの言葉が使われますが、どれも請求書額(売掛金額)との関係を表す指標です。
意味を取り違えると、「手数料は安いと思ったのに手取りが少なかった」「見積書の数字が合わない」といったギャップが生じやすくなります。
手数料率は、売掛金額に対してファクタリング会社に支払う割合を示す数字です。掛け目は「売掛金額に対して何%まで資金化できるか」を表す率で、買取率(請求書額面に対する実際の支払割合)とほぼ同じ意味で使われることもあります。
割引料は、商業手形の手形割引などで使われる言葉ですが、「あらかじめ差し引かれる利息・手数料」という点ではファクタリング手数料と近い概念です。これらの用語を整理しておくと、自社での計算や他社比較がスムーズになります。
| 用語 | 概要 |
|---|---|
| 手数料率 | 売掛金額に対するファクタリング手数料の割合(例:5%なら100万円の売掛金に対して手数料5万円) |
| 掛け目 | 売掛金額に対して資金化できる割合(例:掛け目90%なら100万円の請求書で受取額90万円) |
| 買取率 | 請求書額に対する実際の受取額の割合。掛け目とほぼ同じ意味で使われることが多い |
| 割引料 | 手形割引などで用いられる用語。帳簿上は利息・手数料に相当する性格の費用 |
手数料・掛け目・買取率・割引料
手数料率・掛け目・買取率・割引料は、いずれも「請求書額からいくら差し引かれ、いくら受け取れるか」を表すための指標です。
例えば、請求書額100万円・手数料率10%・掛け目90%とした場合、基本的な考え方は「手数料=100万円×10%=10万円」「受取額=100万円−10万円=90万円」であり、このときの買取率は90%です。
実務では、率として「手数料10%」「掛け目90%」のように別々に表示されますが、元の計算式は同じです。
割引料は主に手形取引で使われる用語ですが、「期日前に資金を受け取る代わりに、あらかじめ差し引かれる費用」という意味ではファクタリング手数料と似た性格を持ちます。
帳簿上は、売上割引料や支払利息、支払手数料などの勘定科目で処理されることが多く、どの勘定科目を使うかは会社の会計方針や税務上の整理によって決まります。
実務上のポイントは、「率」だけでなく「金額」で把握することです。たとえば、同じ10%でも、100万円なら手数料10万円、300万円なら30万円となり、資金繰りへのインパクトが変わります。
また、掛け目や買取率には、事務手数料・送金手数料などが織り込まれている場合と、別建てで請求される場合があるため、見積書で「どの費用がどこに含まれているのか」を確認することが重要です。
- 手数料率は「売掛金額に対する費用の割合」、掛け目・買取率は「実際の受取割合」
- 割引料は手形取引の用語だが、性格としてはファクタリング手数料と似ている
- 率だけでなく「いくら差し引かれるのか」を金額ベースでも確認する
- 事務手数料などが掛け目に含まれているのか、別途発生するのかを見積書で確認する
二社間・三社間別の手数料相場イメージ
ファクタリングの手数料は、「二社間ファクタリングか三社間ファクタリングか」によって大きく変わります。
二社間ファクタリングは、利用者(資金を受け取る企業)とファクタリング会社だけで契約を結び、売掛先には通知しないスキームです。
売掛金の回収は一旦利用者が行い、その後ファクタリング会社に支払う流れになるため、ファクタリング会社から見ると回収リスクが高くなります。
その分、手数料率は高く設定される傾向があり、売掛先・取引内容・利用回数にもよりますが、おおよそ数%〜10数%台が目安として紹介されることが多いです。
一方、三社間ファクタリングは、利用者・売掛先・ファクタリング会社の三者で債権譲渡を合意し、売掛先がファクタリング会社へ直接支払うスキームです。
売掛先が債権譲渡を承諾しているため、二社間に比べて架空債権や二重譲渡、入金遅延のリスクを抑えやすく、手数料率も相対的に低く設定されることが一般的です。
公表される相場感では、数%台〜1桁台前半程度の水準が紹介されることが多く、回収リスクの低さが手数料に反映されています。
ただし、これらの「相場」はあくまで目安であり、実際の手数料率は、売掛先の信用力・取引期間・取引金額・売掛金の分散状況・過去の入金実績などを踏まえて個別に決まります。
また、同じ二社間であっても、継続利用で取引実績が蓄積されると手数料が下がるケースもあれば、少額・単発利用では最低手数料の影響で割高になるケースもあります。
- 二社間は売掛先に通知しない分、回収リスクが高く手数料も高くなりやすい
- 三社間は売掛先が直接支払うため、手数料は二社間より低めに設定されやすい
- 「相場」は目安にとどめ、自社の売掛先・取引内容をもとに見積りで確認する
- 少額・単発利用は最低手数料の影響で、相場より高く見えることがある点に注意する
基本の手数料計算方法と具体例
ファクタリング手数料の計算は、基本的には「売掛金額 × 手数料率」で求められます。ここでいう売掛金額とは、請求書に記載されている税込の請求金額を指すのが一般的です(ただし、税抜金額を基準にする会社もあるため、見積書・契約書で要確認です)。
手数料率は%表示なので、実際には「売掛金額 × 手数料率 ÷ 100」で手数料額が出ます。受け取る金額は、「売掛金額 − 手数料額」で計算できます。
このとき重要なのは、「手数料率だけを見ずに、手数料額や受取額を具体的な数字で把握すること」です。
たとえば、同じ5%でも、100万円なら手数料5万円ですが、300万円なら15万円となり、資金繰りへの影響は大きく変わります。
また、事務手数料や送金手数料が別途発生する場合は、それも合算して「総コスト」として考える必要があります。
| 売掛金額 | 手数料率 | 手数料額 | 受取額 |
|---|---|---|---|
| 100万円 | 5% | 5万円 | 95万円 |
| 100万円 | 10% | 10万円 | 90万円 |
| 300万円 | 5% | 15万円 | 285万円 |
売掛金から手数料を求める計算式
売掛金から手数料額・受取額を求める基本の計算式は、次のとおりです。
- 手数料額 = 売掛金額 × 手数料率 ÷ 100
- 受取額 = 売掛金額 − 手数料額
具体例で見てみます。請求書額が税込100万円、手数料率が8%の二社間ファクタリングを利用するケースを想定します。
- 手数料額
100万円 × 8% = 8万円 - 受取額
100万円 − 8万円 = 92万円
この場合、買取率(実際に受け取る割合)は、92万円 ÷ 100万円 × 100 = 92%となります。もし事務手数料1万円が別途かかるとすると、実際に手元に残る現金は「92万円 − 1万円 = 91万円」です。
この段階で「名目上の手数料率8%」と「実質的に差し引かれている合計額9万円(9%)」の差が生じていることが分かります。
同じ請求書額100万円でも、手数料率が5%と10%では、受取額は95万円と90万円で5万円の差になります。
さらに、資金化する売掛金が複数ある場合には、案件ごとに手数料率が異なることもあるため、1件ずつ計算したうえで合計額を出すと、資金繰り表に反映しやすくなります。
- 手数料額=売掛金額×手数料率÷100
- 受取額=売掛金額−手数料額(+事務手数料等があればさらに控除)
- 買取率=受取額÷売掛金額×100(%)
- 名目の手数料率だけでなく、別途費用を含めた「実質手数料率」を意識する
掛け目を使った買取額・受取額の計算例
掛け目(かけめ)は、「売掛金額に対して何%まで資金化するか」を示す指標で、買取率とほぼ同じ意味で使われます。
実務では、「掛け目90%」「掛け目95%」といった形で提示されることが多く、この数字から直接「受取額」を計算できます。計算式はシンプルで、
- 受取額 = 売掛金額 × 掛け目 ÷ 100
となります。掛け目を使った計算では、手数料額そのものは「売掛金額 − 受取額」として逆算できます。
具体例として、請求書額が100万円、掛け目90%の三社間ファクタリングを想定します。
- 受取額の計算
100万円 × 90% = 90万円 - 手数料額の逆算
100万円 − 90万円 = 10万円(実質手数料率10%)
同様に、請求書額200万円で掛け目95%の場合は、
- 受取額=200万円×95%=190万円
- 手数料額=200万円−190万円=10万円(実質手数料率5%)
となります。掛け目が同じでも、売掛金額が大きくなると手数料額も比例して増えることが分かります。
掛け目を確認するときは、「この掛け目の中に事務手数料・調査料・送金手数料などがすべて含まれているのか」「別立てで請求される費用はないのか」を見積書で確認することが重要です。
掛け目95%と聞くと有利に見えても、別途2万円の事務手数料がかかれば、実際の買取率はそれより低くなります。
- 受取額=売掛金額×掛け目÷100 で直接計算できる
- 手数料額=売掛金額−受取額 で逆算し、実質手数料率を把握する
- 掛け目の中に含まれる費用と、別途請求される費用を見積書で区別する
- 複数案件をまとめて利用する場合は、案件ごとに掛け目・受取額を計算してから合計する
実質コストを把握するための応用計算
ファクタリングの見積りを受け取ったとき、「手数料◯%」という名目の数字だけでは、他の資金調達手段(銀行融資・カードローンなど)と正しく比較できません。
資金をどれくらいの期間前倒ししているのか、手数料のほかに登記費用や印紙税、事務手数料などがどれだけかかるのかを考慮し、実質的なコストを把握する必要があります。その際に役立つのが、「実質年率」と「日割りコスト」という考え方です。
実質年率は、前倒し期間を1年に引き直したときのコスト感を示す指標で、他の金利商品と比較するときの共通の物差しになります。
日割りコストは、1日あたりいくらのコストを負担しているかを確認するための指標で、「あと何日繰り上げると、どの程度コストが変わるのか」を検討するときに便利です。
さらに、登記費用・司法書士報酬・印紙税・振込手数料などを合算して「総コスト」を出し、その総コストを売掛金額や前倒し日数で割ることで、より実態に近い実質手数料率・実質年率を計算できます。
| 計算の視点 | 確認できる内容 |
|---|---|
| 名目手数料率 | 見積書に記載されている◯%。売掛金額に対する基本の手数料率。 |
| 実質手数料率 | 手数料に登記・印紙・事務手数料等を合算し、売掛金額で割り直した割合。 |
| 実質年率 | 実質手数料率を前倒し日数で年換算したもの。銀行金利などとの比較に利用。 |
| 日割りコスト | 総コストを前倒し日数で割った1日あたりの負担額。繰り上げ期間を調整するときの目安。 |
実質年率・日割りコストの簡易計算方法
名目の手数料率だけでは、期間の違いを加味した比較ができません。そこで活用したいのが、実質年率と日割りコストです。
考え方はシンプルで、「いくら受け取って」「最終的にいくら支払うか」「前倒し日数は何日か」を整理すれば、電卓レベルで計算できます。
前提として、
- 売掛金額:100万円
- 手数料率:10%
- 前倒し日数:30日
とします。
- 名目手数料額
100万円 × 10% = 10万円 - 受取額
100万円 − 10万円 = 90万円 - 手数料率を売掛金ベースで見る実質手数料率
10万円 ÷ 100万円 × 100 = 10%(ここでは名目と同じ) - 実質年率(簡易式)
実質年率(%)≒ 手数料率(%) × 365日 ÷ 前倒し日数
= 10% × 365 ÷ 30
= 約121.7%
同じ10%でも、30日間の前倒しで考えると「1年分に引き直した場合は年率100%超の負担感になる」というイメージがつかめます。
日割りコストは、総コスト(ここでは10万円)を前倒し日数で割るだけです。
- 日割りコスト = 10万円 ÷ 30日 ≒ 3,333円/日
この数字を見ると、「この資金を1日早く受け取るために、1日あたり約3,300円のコストを払っている」という感覚を持てます。
前倒し日数が15日なら実質年率は約243%、日割りコストは10万円÷15日≒約6,666円/日となり、「どこまで前倒し日数を短くするのか」を検討するときの判断材料になります。
- ①売掛金額・受取額・前倒し日数を整理する
- ②総コスト=売掛金額−受取額(+別途費用)を計算する
- ③実質年率≒(総コスト÷売掛金額)×365÷前倒し日数×100(%)
- ④日割りコスト=総コスト÷前倒し日数で1日あたりの負担を確認する
手数料以外の費用(登記費用・印紙税等)の合算方法
ファクタリングの見積りには、名目手数料のほかに「登記費用」「司法書士報酬」「印紙税」「事務手数料」「振込手数料」などが別立てで記載されることがあります。
これらを考慮しないと、「手数料率は5%のはずなのに、実感としてはもっと高い」といったズレが生じます。
実質コストを把握するには、これらの付随費用も含めた「総コスト」で計算し直すことが重要です。
例として、以下の条件を仮定します。
- 売掛金額:500万円
- 名目手数料率:5%
- 前倒し日数:60日
- 登記費用(登録免許税・司法書士報酬等):3万円
- 契約書の収入印紙:1万円
- 事務手数料:2万円
- 名目手数料額
500万円 × 5% = 25万円 - 付随費用の合計
3万円(登記)+1万円(印紙)+2万円(事務)= 6万円 - 総コスト
25万円+6万円=31万円 - 実質手数料率(総コストを売掛金額で割り直す)
31万円 ÷ 500万円 × 100 ≒ 6.2%
名目上は「5%」でも、付随費用を含めた実質手数料率は約6.2%となります。 - 実質年率(簡易計算)
実質年率(%)≒ 6.2% × 365 ÷ 60
≒ 6.2% × 6.08
≒ 約37.7%
このように、登記や印紙など一度きりの費用も加味すると、特に取引金額が小さい場合や前倒し日数が短い場合に、実質コストが相対的に高くなりやすいことが分かります。
少額の単発利用で登記が必要なスキームを選ぶと、名目の手数料率に対して実質負担が重くなることがあるため注意が必要です。
- 登記費用・司法書士報酬・印紙税・事務手数料・振込手数料を「総コスト」に含めて計算する
- 名目手数料率と、総コストを売掛金で割った実質手数料率の差を確認する
- 取引金額が小さい・前倒し期間が短いほど、固定費(登記・印紙等)の影響は大きくなる
- 複数回利用する場合は、登記など一時的な費用を何回分に「ならす」かも含めて検討する
ケース別ファクタリング手数料シミュレーション
ここまでで「手数料率」「掛け目」「実質年率」の考え方を確認しましたが、実務で判断するには、具体的な金額・期間のパターンごとにシミュレーションしてみることが重要です。
同じ5%・10%という手数料率でも、「少額の1回だけ利用するケース」と「毎月継続的に利用するケース」「複数社に分散して利用するケース」では、年間の総コストや資金繰りへの影響が大きく変わります。
特に、小口・短期利用では固定費(登記費用・事務手数料等)の比率が高くなりやすく、継続利用や複数社利用では「塵も積もれば山となる」形で手数料負担が累積しやすくなります。
こうした傾向を把握するためには、①1件あたりのコスト、②月次・年次の総コスト、③売上や利益に対する割合、の3つを軸に見ていくと分かりやすくなります。
シミュレーションは難しいものではなく、「売掛金額」「手数料率」「前倒し日数」「固定費」を入力すれば、電卓レベルで計算できます。
自社の典型的な取引パターンをいくつか選び、パターン別に数字を出しておくことで、「今回は利用する価値があるのか」「どのラインを超えたら使うのを控えるのか」という社内基準づくりにもつながります。
| ケース | シミュレーションのポイント |
|---|---|
| 小口・短期利用 | 売掛金額が小さい/前倒し日数が短い取引。固定費の影響が大きく、実質手数料率が上がりやすい。 |
| 継続・反復利用 | 毎月・毎シーズンなど継続的な利用。年間の手数料総額が利益を圧迫していないかを確認。 |
| 複数社利用 | 案件・売掛先によってファクタリング会社を使い分けるケース。トータルのコスト把握と条件比較が重要。 |
小口・短期利用時のコスト試算
小口・短期のファクタリングは、「少額の売掛金を、短い期間だけ前倒ししたい」というニーズに対応するものです。
一見すると「金額が小さいから負担も軽そう」と感じますが、登記費用や事務手数料など固定費の比率が高くなりやすく、結果として実質的な手数料率が相対的に高くなる傾向があります。
例として、次のような条件を仮定します。
- 売掛金額:50万円
- 手数料率:5%
- 前倒し日数:30日
- 事務手数料:1万円(固定)
- 名目手数料額
50万円 × 5% = 2万5,000円 - 総コスト(手数料+事務手数料)
2万5,000円 + 1万円 = 3万5,000円 - 受取額
50万円 − 3万5,000円 = 46万5,000円 - 実質手数料率
3万5,000円 ÷ 50万円 × 100 = 7%
名目は「5%」でも、固定の事務手数料1万円を含めると実質手数料率は7%に上がっていることが分かります。
同じ条件で売掛金額が100万円であれば、名目手数料5%(5万円)+事務手数料1万円=6万円、実質手数料率は
6万円 ÷ 100万円 ×100 = 6%
となり、売掛金額が大きいほど固定費の影響が薄れることが分かります。
また、前倒し日数が短い場合、実質年率で見るとコスト感はさらに高くなります。先ほどの50万円・総コスト3万5,000円・前倒し30日の例では、
実質年率≒(3万5,000円 ÷ 50万円)×365 ÷30×100
= 7% × 12.17
≒ 年率約85.2%
となり、「短期の前倒しでも、年率換算するとかなり高めの資金調達になっている」ことが見えてきます。
- 事務手数料・登記費用などの固定費が、金額に対してどの程度の割合かを必ず確認する
- 売掛金額が小さいほど、同じ固定費でも実質手数料率が高くなりやすい
- 前倒し日数が短い場合は、年率換算した実質コストも確認しておく
- 「少額だから大丈夫」と考えず、総コストと得られるメリットを数字で比較して判断する
継続利用・複数社利用時の総コスト比較
ファクタリングは一度だけのスポット利用にとどまらず、「毎月のように利用している」「取引先ごとに複数のファクタリング会社を使い分けている」といった継続・複数社利用のケースも少なくありません。
この場合、1件ごとの手数料率は許容範囲でも、年間で見ると「思った以上に利益を削っていた」ということが起こりやすくなります。
継続利用の影響を把握するには、月次・年次の合計額でシミュレーションすることが重要です。
例として、次の前提を置きます。
- 毎月の売掛金額:1,000万円
- 毎月、うち300万円分をファクタリング(手数料率5%)
- 事務手数料:1回あたり1万円
- 利用期間:12か月(毎月同じ条件で利用)
1回あたりのコストは、
手数料:300万円×5%=15万円
事務手数料:1万円
→ 合計:16万円
年間の総コストは、
16万円 × 12か月 = 192万円
となります。1件あたりの手数料率は5%でも、年間で約200万円のコストが発生している計算です。
会社の年間営業利益が例えば1,000万円であれば、その約2割弱をファクタリング手数料が占めていることになり、「資金繰りは安定したが利益は圧迫されている」という状況も考えられます。
さらに、複数社利用の場合を考えます。
・A社:二社間ファクタリング 手数料率6%
・B社:三社間ファクタリング 手数料率3%
・毎月、A社で200万円、B社で200万円を資金化
A社:200万円×6%=12万円/月
B社:200万円×3%=6万円/月
→ 月間合計:18万円、年間合計:18万円×12か月=216万円
このとき、「A社分をB社条件に近い三社間スキームに切り替えられないか」「そもそも月間400万円すべてをファクタリングする必要があるのか」といった観点で見直す余地が出てきます。
- 1件あたりの手数料だけでなく、「月次・年次の手数料総額」を必ず集計する
- 営業利益や売上総利益に対して、ファクタリング手数料が占める割合を確認する
- 複数社利用の場合は、各社の条件(率・固定費)を一覧化し、どこまで集約・見直しできるか検討する
- 資金繰りが落ち着いてきたら、ファクタリング利用額・頻度を減らしていく前提で中長期計画を立てる
手数料を抑えるための実務チェックポイント
ファクタリングのコストは、「どの会社を選ぶか」よりも、「見積条件をどこまで詰めて確認するか」「自社の利用パターンをどう設計するか」で大きく変わります。
同じ手数料率に見えても、対象とする売掛金の範囲、前倒し日数、登記や事務手数料の有無、二社間・三社間の違いなどによって、実際の受取額や年間手数料総額は大きく変動します。
したがって、単に「一番%が低い会社」を探すのではなく、「どの条件なら自社の資金繰りと費用負担のバランスがよいか」を見極めることが、手数料を抑えるうえでの基本的な考え方になります。
加えて、ファクタリングを「毎月なんとなく使う」運用にしてしまうと、資金繰りは改善しても利益が削られ続け、結果的に財務体質の改善が遅れるリスクがあります。
逆に、資金繰りが厳しい時期を乗り切るための「期間・金額・対象先を絞った計画的な利用」であれば、手数料負担を抑えながら資金繰り改善効果を得やすくなります。
そのためには、見積書の読み方・社内シミュレーションの作り方・交渉のポイントなどを一連のチェックリストとして整理しておくと、都度判断の質を保ちやすくなります。
| チェック視点 | 手数料を抑えるための考え方 |
|---|---|
| 条件確認 | 率だけでなく、対象債権の範囲・前倒し日数・固定費(登記・事務手数料等)を含めて比較する。 |
| 利用パターン | 毎月全額ではなく、不足分に絞る・繁忙期だけ使うなど、利用額・頻度の上限を決めておく。 |
| 複数見積 | 二社以上から見積書を取得し、自社のシミュレーションシートで横並び比較する。 |
| 交渉材料 | 継続利用や売掛先の信用力、三社間利用への切り替えなど、率の引き下げ材料を整理して提示する。 |
見積書で確認すべき計算根拠チェック
見積書を受け取った段階で手数料を抑えるためには、「計算の前提」と「総コスト」の両方を正しく把握することが重要です。
まず確認したいのは、①対象となる売掛金額(税抜か税込か)、②手数料率、③掛け目(買取率)、④前倒し日数、⑤固定費(事務手数料・登記費用・印紙税など)の有無、の5点です。
これらが明示されていない見積書は、後から追加費用が発生するリスクがあるため、契約前に必ず質問して明確にしておくべきです。
次に、「総コスト」と「受取額」を自社で再計算します。売掛金額に手数料率を掛けて手数料額を求め、そこに固定費を加えたものが総コストです。
受取額は「売掛金額 − 総コスト」で求められます。見積書記載の受取額・手数料額と自社計算が一致しているかを照合することで、計算根拠が明瞭かどうかを確認できます。
また、前倒し日数から実質年率を概算しておくと、「この条件は自社として受け入れられる水準か」を判断しやすくなります。
さらに、二社間・三社間の違いや、ノンリコース/リコースの別も、見積書や事前説明の段階で確認しておきたいポイントです。同じ手数料率でも、回収リスクの持ち方が異なれば「割高か割安か」の評価が変わります。
見積依頼時には、「売掛先」「金額」「前倒し日数」「二社間/三社間希望」「ノンリコース希望かどうか」など、条件をできる限り揃えたうえで複数社に提示してもらうと、横並び比較がしやすくなります。
- 対象売掛金額(税抜・税込のどちらか)と手数料率・掛け目が明示されているか
- 事務手数料・登記費用・印紙税・振込手数料など、別途費用の有無と金額
- 前倒し日数を前提に自社で総コスト・受取額・実質年率を再計算してみる
- 二社間/三社間・ノンリコース/リコースなど、リスク条件をそろえて複数社の見積りを比較する
自社シミュレーションシート作成と交渉のポイント
手数料を抑えるうえで実務的に有効なのが、「自社専用のシミュレーションシート」を用意しておくことです。
Excelなどで、①売掛金額、②手数料率、③掛け目、④前倒し日数、⑤固定費(登記・事務・印紙等)を入力すると、⑥総コスト、⑦受取額、⑧実質手数料率、⑨実質年率、⑩日割りコストが自動計算されるようにしておくと、見積書が届いた段階で瞬時に「数字の感触」をつかめます。
同時に、毎月の利用額・年間の手数料総額を集計できるようにしておけば、継続利用時の影響も一目で分かります。
交渉の場面では、単に「もう少し下げてほしい」と伝えるよりも、「売掛先の信用力」「取引の継続性」「三社間への切替可能性」「利用額・件数の見込み」といった具体的な材料を示すことがポイントです。
例えば、「今後半年間、毎月300万円程度を御社にお願いしたいので、手数料率を◯%台に抑えられないか」「この主要取引先は上場企業で支払遅延もなく、三社間にも応じてくれる見込みなので、リスクを踏まえて率を再検討してほしい」といった形で、ファクタリング会社のリスク軽減につながる情報を提供すると、条件改善の余地が生まれやすくなります。
また、自社シミュレーションの結果をもとに、「このラインを超えると採算が合わない」という基準を社内で共有しておくことも重要です。
たとえば、「実質年率で◯%を超える案件は原則利用しない」「年間手数料総額が売上総利益の△%を超えた場合は利用方針を見直す」などのルールを決めておけば、その場の資金繰りだけで判断して高コスト案件に飛びつくリスクを減らせます。
- 売掛金額・手数料率・固定費・前倒し日数を入力する自社シートを作り、総コスト・実質年率を自動計算できるようにする
- 継続利用を前提に、月次・年次の手数料総額と利益への影響を一目で把握できるようにする
- 交渉時は、売掛先の信用力や三社間利用の可否など、ファクタリング会社のリスクを下げる材料を提示する
- 「この条件なら利用する/しない」という社内基準をあらかじめ決め、その基準に沿って判断する
まとめ
ファクタリング手数料は「◯%」という表面の数字だけでなく、掛け目・買取率・利用日数・付随費用を含めた実質コストで見ることが大切です。
売掛金から手数料を求める基本計算式、掛け目による受取額の出し方、実質年率の簡易計算、登記費用・事務手数料の合算方法を押さえておけば、見積書の妥当性を自社でチェックしやすくなります。
記事で紹介したシミュレーションの視点をもとに、自社シートを作成し、複数社比較と手数料交渉を行うことで、資金繰りを助けつつ過度なコストを避ける判断がしやすくなります。























