個人や個人事業主でも利用できるファクタリングは、「審査が甘い」「誰でも通る」といった情報が見られますが、実際には売掛先の信用や取引実態など一定の基準に沿って判断されています。本記事では、個人向けファクタリングの仕組みと審査の考え方、審査が甘いと言われる理由と実態、違法な給与ファクタリングとの違い、リスクのある業者を見分けるポイント、審査を通過しやすくする事前準備を整理し、安全性を確認しながら資金調達手段を検討できるように解説します。
個人向けファクタリング審査の基本
個人や個人事業主が利用するファクタリングは、大きく分けて「事業で発生した売掛金を使うファクタリング」と、「給与を対象とするいわゆる給与ファクタリング」に分かれます。
前者は、取引先企業に対する売掛債権を期日前に手数料を差し引いて買い取ってもらう仕組みで、法的には債権の売買(債権譲渡)契約と整理されています。
一方、後者の給与ファクタリングは、個人が勤務先に対して持つ賃金債権を対象とするもので、金融庁・消費者庁などは貸金業に該当すると明示し、無登録業者による取扱いに注意喚起を行っています。
本記事で扱う「個人向けファクタリング」は、主に個人事業主やフリーランスが取引先企業に対して持つ売掛債権を対象にした事業者向けファクタリングです。
一般的な銀行融資では、申込者本人の決算内容や信用情報が重く評価されるのに対し、ファクタリング審査では「売掛先の信用力」と「売掛債権の内容」が重視されるとされています。
この構造の違いから、個人事業主やフリーランスにとっては、銀行融資よりも柔軟な審査と説明されることが多く、「審査が甘い」と表現される背景になっています。
ただし、審査が全くないわけではありません。売掛先の支払実績や業歴、取引期間、請求書と契約書・納品書の整合性、申込者の納税状況や事業実態など、一定の確認項目に基づいて可否が判断されます。
特に個人事業主の場合、登記情報がないため、確定申告書や通帳の入出金明細といった資料で事業実態を示すことが重要になります。
| 利用者区分 | 対象となる主な債権・特徴 |
|---|---|
| 個人事業主・フリーランス | 取引先企業に対する売掛金(請負代金、業務委託料など)。売掛先の信用と取引実績を重視。 |
| 中小企業(法人) | 法人名義の売掛金。登記簿謄本や決算書を用いて企業情報を確認。 |
| 給与ファクタリング | 個人の賃金債権を対象とするスキーム。貸金業に該当するとされ、無登録業者による取扱いが問題視されている。 |
【個人向けファクタリングの整理】
- 本来の対象は「事業で発生した売掛金」であり、給与債権とは性質が異なる
- 審査は甘いというより、銀行融資とは評価対象が違う
- 売掛先の信用・取引実績・書類の整合性など、一定の基準に沿って判断される
個人が使えるファクタリングの型
個人が利用できるファクタリングには、いくつかの型があります。
代表的なのは、①個人事業主・フリーランスが取引先企業に対する売掛金を早期現金化する「事業者向けファクタリング」、②フリーランス向けの報酬早期支払サービス、③賃金債権を対象とする給与ファクタリングです。
このうち、金融庁や消費者庁が注意喚起しているのは③の給与ファクタリングであり、貸金業登録のない事業者による取扱いは違法なヤミ金融とされるおそれがあります。
事業者向けのファクタリングは、個人事業主やフリーランスが企業からの請負代金や業務委託料などの売掛金を対象に利用する形式です。
この場合、ファクタリング会社が重点的に見るのは、売掛先企業の信用力や支払実績、取引期間、請求書と契約書の内容です。
銀行融資に比べて、申込者本人の過去の借入状況や赤字決算といった要素は相対的に重みが小さく、売掛先が安定した企業であれば、個人事業主でも利用しやすいとされています。
フリーランス向け報酬早期支払サービスは、クラウドソーシングや制作会社などと提携し、報酬の一部を早期に受け取れる仕組みです。
売掛金の買取というより、「請求書の早期立替え」や「支払サイト短縮」といった位置づけで提供されているものもあり、手数料や対象案件、上限額などはサービスごとに異なります。
いずれも、取引先が企業であり、業務委託契約などに基づく報酬である点は共通しています。
これに対して給与ファクタリングは、個人が勤務先に対して持つ賃金債権を対象とするもので、金融庁や消費者庁は、業として行う場合は貸金業法上の「貸金業」に該当すると整理しています。
貸金業登録のない事業者による給与ファクタリングは違法なヤミ金融とされ、高額な手数料や強引な取立てなどの被害が報告されています。
そのため、個人の生活費目的で給与ファクタリングを利用することは、制度上もリスクの観点からも推奨されていません。
- 個人事業主・フリーランスは、取引先企業への売掛金を対象にした事業者向けファクタリングが中心
- フリーランス向け報酬早期支払サービスは、提携先の企業案件に限定されることが多い
- 給与ファクタリングは貸金業に該当し、無登録業者による取扱いは違法なヤミ金融とされる
- 生活費目的の利用ではなく、事業の売掛金を対象にしたスキームかどうかを確認する必要がある
個人事業主の審査チェック
個人事業主がファクタリングを申し込む場合、法人と比べて登記情報や公開決算書がないため、別の資料で事業実態を確認することが一般的です。
具体的には、取引先企業との基本契約書や発注書・納品書、請求書、取引先からの入金が分かる通帳の入出金明細、確定申告書や青色申告決算書などが、審査の主な確認資料となります。
これらの書類を通じて、「実在する取引に基づき売掛金が発生しているか」「継続的に入金が行われているか」がチェックされます。
審査では、個人事業主本人の信用情報よりも、売掛先の企業の信用力や支払実績が重視されるとされていますが、税金や社会保険料の滞納状況なども確認されることがあります。
長期の滞納や差押えが進んでいる場合には、売掛金や預金が差し押さえられる可能性があるため、ファクタリング会社にとっては回収リスクとなり得ます。
また、通帳の入出金から見て事業の実態が不明瞭な場合や、売掛先からの入金がほとんど確認できない場合も、審査上は慎重な判断につながります。
一方で、個人事業主向けプランを用意しているファクタリング会社では、必要書類を請求書と通帳のコピーなど最小限にし、事業規模や業歴よりも売掛先の信用と取引実績を重視する運用が行われています。
ただし、この場合でも、「請求書と通帳の入金内容が一致しているか」「取引が継続しているか」「売掛先の業績に問題がないか」といった基本的な確認は行われます。
審査が柔軟とされるサービスであっても、売掛金の実在性と回収可能性が確認できなければ、承認は難しくなります。
個人事業主としては、売掛先との取引経緯や金額の推移、支払サイト(締め日と支払日の関係)、過去の入金実績を整理し、質問された際に客観的な資料をもとに説明できるように準備しておくことが重要です。
特に初めて利用する場合は、通帳や請求書に付箋を付けて対応関係を示すなど、第三者にも分かりやすい形にしておくと、審査のスムーズさにつながります。
- 請求書・契約書・納品書と通帳の入金内容が整合しているか
- 売掛先企業の規模・業歴・支払実績に大きな問題がないか
- 確定申告書や決算書から事業実態と売上規模が把握できるか
- 税金・社会保険料の滞納や差押えなど、回収を妨げる要因がないか
給与ファクタリングとの区別
個人向けファクタリングを考える際に、必ず押さえておきたいのが「給与ファクタリング」との違いです。
給与ファクタリングは、個人が勤務先に対して持つ賃金債権を対象に、事業者が一定の手数料を差し引いて買い取り、後に労働者を通じて資金を回収するスキームです。
金融庁は、このような取引は貸金業法上の「貸金業」に該当すると整理しており、貸金業登録を受けずに行う事業者は違法なヤミ金融に当たると注意喚起しています。
消費者庁や国民生活センターなども、給与ファクタリングを装うヤミ金融に関する相談事例として、年利換算で数百%に達する高額な手数料や、家族・勤務先への執拗な連絡、強引な取立てなどを挙げています。
賃金債権は労働基準法により原則として労働者本人に直接支払うことが定められており、賃金債権を買い取った者が勤務先に直接請求することは認められていません。
その結果、実質的には「個人への貸付け」と同様の構造となり、貸金業としての規制対象になります。
これに対し、事業者向けファクタリングは、企業間取引などで発生した売掛債権を対象に、ファクタリング会社が期日前に買い取るスキームです。
売掛先は企業であり、債権譲渡や支払先変更に関する手続きが整理されているため、制度上の位置付けも給与ファクタリングとは異なります。
金融庁や消費者庁も、事業者向けファクタリングそのものを否定しているわけではなく、あくまで「貸金業登録のない事業者がファクタリングを装って違法な貸付けを行うケース」に注意するよう呼びかけています。
したがって、個人がファクタリングを利用する際には、対象となる債権が「事業で発生した売掛金か」「賃金債権か」をまず区別し、給与ファクタリングやそれに類するスキームを避けることが重要です。
サービス内容や契約書の表現が分かりにくい場合は、「貸金業登録の有無」「対象となる債権の種類」「実質的に返済義務がどうなっているか」を確認し、不明点があれば利用を控える判断も選択肢となります。
- 給与ファクタリングは賃金債権を対象とし、貸金業に該当すると整理されている
- 事業者向けファクタリングは企業への売掛金が対象で、債権譲渡契約として扱われる
- 給与ファクタリングを無登録で行う事業者は違法なヤミ金融とされるおそれがある
- 個人で利用する場合は、事業の売掛金を対象とするスキームかどうかを必ず確認する
個人と法人の審査ポイントの違い
個人事業主と法人では、ファクタリング審査で確認される資料や着眼点にいくつか違いがあります。
法人の場合、登記簿謄本(履歴事項全部証明書)や法人税の確定申告書、決算書などが整備されているため、会社の沿革や資本構成、役員構成、売上高や利益水準などを比較的容易に把握できます。
一方、個人事業主の場合は登記情報がないため、開業届の控えや所得税の確定申告書、青色申告決算書、事業用口座の通帳などを用いて、事業の継続性や売上規模、主要取引先などを確認することが一般的です。
審査の中心となる売掛先企業への評価項目は、個人・法人いずれの利用者でも共通です。
売掛先の規模や業歴、財務状況、支払実績、業種などが総合的に見られますが、個人事業主の場合は、売掛先が個人である取引や、取引実績が少ない新規先のみの売掛金については、審査が厳しくなる傾向があります。
売掛先が個人事業主である場合は、法人に比べて与信情報が少ないため、請求書や入金明細、通帳のコピーなどで継続的な取引実績を証明できるかどうかが重要になります。
さらに、個人事業主では、事業用口座と生活費の入出金が同一口座で行われているケースも多く見られます。
この場合、売掛金の入金とその他の入出金が混在し、取引の流れが分かりにくくなるため、ファクタリング会社が売掛債権の実在性や回収可能性を評価しにくくなるおそれがあります。
一方で、法人は損益計算書や貸借対照表などが分かれているため、売掛金の位置づけや回収状況を把握しやすい傾向があります。
このような違いを踏まえると、個人事業主がファクタリングを利用する際には、可能な範囲で事業用口座を分ける、主要取引先ごとの売上と入金実績を一覧にまとめるなど、法人と同程度に「事業の見える化」を進めておくことが有効です。
売掛先の属性や取引実績、請求から入金までの流れを整理した資料があれば、ファクタリング会社に対しても客観的な説明がしやすくなります。
- 法人:登記簿謄本や決算書から会社の沿革・財務状況を把握しやすい
- 個人事業主:確定申告書や通帳から事業実態を読み取るため、資料の整理が重要
- いずれも、売掛先企業の信用力と売掛金の実在性・取引実績が審査の中心
- 個人事業主は、事業用口座の分離や取引実績の一覧化により、審査で説明しやすくなる
審査が甘いと言われる理由と実態
「ファクタリング 審査 甘い 個人」といった言葉は、広告や比較サイトでよく見かけます。
ここでいう「審査が甘い」という表現は、多くの場合、「銀行融資よりも審査の観点が違う」「赤字決算や個人事業主でも検討余地がある」といった意味で使われています。
ファクタリングは、利用者本人の信用力よりも、売掛先の企業の支払能力や売掛債権の内容を重視する取引であり、この構造の違いが「融資よりハードルが低い」という印象につながりやすいと言えます。
一方で、金融庁や消費者庁は、高額な手数料や、ファクタリングを装った違法な貸付けに関する注意喚起を行っています。
特に、貸金業登録のない業者が、「売掛債権の買取」と称しながら、実質的には高金利の貸付けを行っている事案や、「給与ファクタリング」の名目で賃金債権を利用したヤミ金融が問題視されています。
こうした業者は「審査が甘い」「ブラックでもOK」といった表現を用いることが多く、審査が緩いように見える一方で、利用者の負担は非常に大きくなる危険があります。
そのため、「審査が甘い=安全で借りやすい」という意味ではなく、「審査の着眼点が銀行と違う正規の事業者」と「審査をほとんど行わず高額な手数料を取る業者」が混在しているのが実態です。
個人や個人事業主がファクタリングを検討する際は、審査の厳しさだけでなく、手数料水準や契約条件、業者の登録状況などを併せて確認することが重要になります。
- 銀行と評価対象が異なるため「通りやすい」と説明されるケースがある
- 一方で、「審査が甘い」をうたい高額手数料を取る業者も存在する
- 公的機関は、ファクタリング名目の違法な貸付けや給与ファクタリングに注意喚起している
審査が甘いと言われる業者の特徴
「審査が甘い」「誰でも通る」といった表現を多用する業者には、いくつか共通した特徴が見られます。
第一に、手数料や割引率が相場と比べて極端に高いことです。高額な手数料や大幅な割引率によるファクタリング契約を結ぶと、かえって資金繰りが悪化し、多重債務に陥る危険があると指摘されています。
「審査が甘い代わりに手数料が高い」という構図になっている場合は、慎重な見極めが必要です。第二に、形式上は「債権の買取」としながら、実質的には貸付けに近いスキームをとるケースです。
高額な手数料を差し引いて売掛金の買取代金を支払い、売掛先からの回収を利用者に委ね、回収できなければ利用者が自らの資金で支払うことを義務付けるような契約形態では、売掛金の回収リスクが利用者側に残っており、実質的には高金利の借入と同様の負担になり得ます。
第三に、「ブラックでもOK」「他社NGでも即日現金」「収入証明・決算書不要」など、審査をほとんど行わないかのような宣伝を行う点です。
正規の事業者であれば、売掛先の信用や取引内容を確認するため、一定の書類や情報提供は必須となります。
にもかかわらず、本人確認書類とキャッシュカードだけで多額の資金提供をうたうような場合は、ファクタリングではなくヤミ金融的な貸付けである可能性が高くなります。
- 手数料・割引率が相場と比べて極端に高い
- 回収不能時に利用者が全額支払う契約で、実質的に貸付けと同じ構造になっている
- 「ブラックOK」「誰でもOK」など審査をほとんど行わないかのような宣伝をしている
- 貸金業登録や事業内容の情報開示が不十分で、運営実態が不明確である
提出書類と審査の通りやすさ
ファクタリングの審査では、通常、売掛金に関する書類(請求書、基本契約書、発注書・納品書など)や、入出金の状況が分かる通帳、確定申告書や決算書などが確認されます。
これは、「売掛金が実在するか」「過去に同じ取引先から入金があったか」「取引が継続しているか」を客観的に判断するための情報です。
提出書類が整っているほど、売掛金の実態と回収可能性を評価しやすくなり、結果として審査がスムーズに進みやすくなります。
一方で、「審査が甘い」「書類ほぼ不要」とうたう業者の中には、必要な確認を十分に行わない代わりに、高額な手数料や強い返済義務を課すケースがあります。
例えば、請求書の実在性や売掛先の信用をほとんど確認せずに資金を交付し、その代わりに利用者本人に対して強い返済義務を負わせるような契約は、ファクタリングというより高金利の貸付けと評価され得ます。
このようなスキームでは、形式は売掛金の買取であっても、実質的には借入と同様の負担を負うことになります。
したがって、「書類が少ない=良い業者」「書類が多い=審査が厳しすぎる」という単純な図式では評価できません。
むしろ、必要な範囲で売掛金の実在性や取引実績を確認し、そのうえで条件を提示する事業者の方が、契約内容が明確でトラブルになりにくいと考えられます。
個人や個人事業主としては、請求書と通帳の入金記録を紐づけて整理する、主要取引先ごとの売上と入金の一覧を作るなど、書類を分かりやすく準備しておくことが、結果的に「通りやすさ」にもつながります。
- 請求書・契約書・納品書・通帳など、売掛金の実在性を示す書類は一定程度必要
- 書類がほとんど不要な場合は、ファクタリングではなく高金利の貸付けの可能性もある
- 書類を整理して提出することで、審査のスピードと通りやすさが高まりやすい
- 必要な書類を丁寧に案内する事業者かどうかも、信頼性の判断材料になる
審査が甘い広告表現の注意点
広告やランディングページでは、「審査が甘い」「審査ほぼなし」「ブラックでも即日現金」など、利用者の不安を和らげる表現が目立つことがあります。
違法な金融業者の手口として、「今すぐ現金」「誰でも借りられる」「ブラックOK」「借金ではありません」といった文言が挙げられており、これらの広告に安易に飛びつかないよう注意が呼びかけられています。
ファクタリング分野でも、同様のキャッチコピーが用いられるケースがあり、特に個人を対象とした宣伝では慎重な判断が必要です。
また、「審査が甘い」という表現は、具体的にどのような審査項目を省略しているのかが示されていないことが多く、利用者にとっては実態を把握しにくいという問題があります。
売掛先の信用や売掛債権の内容といった本来必要な確認を省略しているのか、銀行融資と比べて評価するポイントが違うだけなのかによって、意味合いは大きく異なります。
にもかかわらず、審査の内容やリスク説明を十分に行わず、「簡単」「手軽」といったイメージだけを強調する広告は、慎重な検討が求められます。
さらに、「借金ではなく売掛金の買取なので安心」「信用情報に影響しないから大丈夫」といった説明も、手数料水準や契約内容によってはミスリードになり得ます。
実質的に高金利の負担となる手数料設定や、回収不能時に利用者が支払い義務を負う契約であれば、形式が債権譲渡でも実質的には借入に近い負担を負うことになります。
広告のキャッチコピーだけで判断するのではなく、契約書の内容や費用負担、リスクの所在を必ず確認することが重要です。
- 「審査ほぼなし」「誰でもOK」「ブラックOK」など審査を過度に軽く見せる表現
- 「借金ではありません」と強調しつつ、手数料や返済負担の説明が乏しい広告
- 「今すぐ現金」「スマホだけで即日」など、緊急性だけをあおる訴求
- 審査の中身や費用の内訳が具体的に示されていないまま「安心」「安全」とうたう宣伝
審査が甘い宣伝への公的な注意
金融庁は、ファクタリングの利用に関する注意喚起の中で、売掛債権を譲渡して資金調達するファクタリングにおいて、高額な手数料や大幅な割引率による契約を結ぶと、かえって資金繰りが悪化し、多重債務に陥る危険があると指摘しています。
また、ファクタリングを装って貸金業登録のない業者が違法な貸付けを行っている事案が確認されているとして、あやしいと感じた場合は警察や相談窓口に連絡するよう呼びかけています。
消費者庁も、違法な貸付や悪質な金融業者に関する注意喚起の中で、給与ファクタリングを含むさまざまなヤミ金融の手口に警鐘を鳴らしています。
給与ファクタリングについては、「業として行うことは貸金業に該当し、貸金業登録が必要」「無登録業者を利用すると高額な手数料や悪質な取立て、本来の給与より少ない金額しか受け取れず生活破綻につながるおそれがある」として、利用しないよう強く注意を促しています。
こうした公的な注意喚起は、「審査が甘い」「今すぐ現金」といった宣伝に安易に飛びつくことの危険性を示しています。
特に、個人や個人事業主が資金繰りに困っている場面では、短時間で申し込めるサービスほど魅力的に見えますが、公的機関は、まず登録された貸金業者や公的融資・貸付制度、専門相談窓口の活用を検討するよう案内しています。
- 高額な手数料や大幅な割引率のファクタリングは資金繰りを悪化させるおそれがある
- ファクタリングを装った違法な貸付けや給与ファクタリングはヤミ金融として問題視されている
- あやしいと感じた場合は、警察や金融当局・消費生活センターなどの相談窓口に早めに相談すること
- 「審査が甘い」宣伝だけで判断せず、公的な支援制度や登録業者の利用も含めて比較検討すること
個人事業主が意識したい審査基準
個人事業主がファクタリングを利用する場合、「審査が甘いかどうか」よりも、どのような基準で見られているかを理解しておくことが重要です。
ファクタリング会社は、銀行と違い、事業そのものの将来性よりも「今ある売掛債権」の回収可能性を重視します。
そのため、売掛先の信用力(支払能力・支払実績)と、売掛債権や請求書の内容、個人事業主自身の納税状況や事業実態などを組み合わせて審査します。
とくに個人事業主の場合は、法人のような登記情報や決算公告がないため、確定申告書や通帳の入出金明細、取引先との契約書など「裏付けとなる資料」が重視されます。
審査基準を意識して日頃から資料を整理しておけば、必要書類の準備がスムーズになるだけでなく、条件提示や可否判断も円滑になりやすくなります。
| 審査の視点 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 売掛先 | 支払実績・入金遅延の有無・業歴・規模・業種など |
| 売掛債権 | 請求書・契約書との整合性、金額、支払期日、取引条件など |
| 個人事業主 | 確定申告書、通帳明細、納税状況、事業の継続性など |
| 取引構造 | 売上の集中度(特定取引先に偏っていないか)、継続性、単発かどうか |
【個人事業主が押さえたい観点】
- 売掛先の信用状態と支払実績を日頃から把握しておく
- 請求書と契約書・納品書の内容をそろえておく
- 確定申告書や通帳明細など、事業を説明できる資料を整える
- 売上が一部の取引先に偏りすぎていないかを確認する
売掛先の信用と支払実績
ファクタリングの審査では、「誰に対する売掛金か」が最も重要なポイントの一つです。ここでいう売掛先の信用とは、「支払能力」と「支払姿勢」の両方を指します。
たとえば、売掛先が一定規模の企業で、過去に支払遅延がほとんどなく、何年も継続して取引している場合は、同じ金額の請求書でも評価しやすくなります。
逆に、取引を始めたばかりで支払実績が少ない先や、過去に支払期日が何度も延びている先の場合は、慎重に見られやすくなります。
個人事業主としては、売掛先の信用状態を直接コントロールすることはできませんが、「情報を把握しておく」ことはできます。
具体的には、支払が遅れたことがあるか、支払サイト(締め日と支払日の組み合わせ)が急に変わっていないか、経営状況に大きな変化がないかなどを、日頃から記録しておくとよいでしょう。
取引年数や取引件数、平均支払遅延日数などを自分なりに一覧にしておくと、ファクタリング会社から質問されたときにも説明しやすくなります。
また、売掛先が法人ではなく個人の場合や、事業規模が小さい個人事業主である場合は、公開されている情報が少ないため、通帳の入出金明細や契約書、領収書などで実際に支払が行われていることを示す資料がより重要になります。
売掛先が「法人か個人か」「どの程度の規模か」によって、必要な説明や資料の厚みが変わる点も意識しておくとよいでしょう。
- 取引年数・取引件数・入金遅延の有無を一覧にしておく
- 支払サイトや条件が変わった経緯を把握しておく
- 売掛先が個人の場合は、入金実績を示す通帳や領収書を整理する
- 主要取引先ごとの売上割合を把握し、依存度を確認する
売掛債権と請求書のチェック
売掛債権とは、商品やサービスを提供した後に、取引先へ発行した請求書に基づいて支払われる債権のことです。
ファクタリングでは、この売掛債権を買い取るため、「請求書の内容」と「取引の実態」が一致しているかが重要な審査ポイントになります。
請求金額・数量・単価・締め日・支払期日・取引内容などが、基本契約書や発注書・納品書と整合しているかを確認しておく必要があります。
たとえば、契約書では「月末締め翌月末払い」となっているのに、請求書の支払期日が大きくずれている場合や、契約にない条件で一括請求している場合は、後で売掛先とトラブルになるおそれがあります。
また、検収(成果物の確認)前に請求しているケースや、返品・値引きの条件が未整理のまま請求しているケースも、売掛金の確定性が低いと見なされ、ファクタリングの対象外になったり、条件が厳しくなったりする可能性があります。
個人事業主としては、請求書を発行する前に、契約書・発注書・納品書との内容を照らし合わせ、抜け漏れや齟齬がないかをチェックする習慣をつけることが大切です。
特に、イレギュラーな案件(成果報酬型、追加作業、仕様変更など)の場合は、メールなどで合意内容を残し、請求書の備考欄に一言補足を入れておくと、第三者にも経緯が分かりやすくなります。
ファクタリング会社から見ても、「請求書と裏付け資料がきちんとそろっている案件」は評価しやすくなります。
- 請求書の金額・数量・単価・期日が契約書・発注書と一致しているか
- 納品書や検収の有無など、取引完了を示す資料がそろっているか
- 返品・値引き・成果条件など、金額が変動する要素が整理されているか
- イレギュラーな条件は、メールなどで合意が残っているか
納税状況と事業の実態
個人事業主の審査では、「売掛先」と「売掛債権」に加えて、本人の納税状況や事業の実態も確認されます。
これは、ファクタリング会社が「事業が継続しているか」「事業収入の流れが安定しているか」を把握するためです。
具体的には、所得税の確定申告書や青色申告決算書、消費税の申告書、事業用口座の通帳明細などが主な確認資料となります。
納税状況が審査に影響する理由の一つは、税金や社会保険料に滞納がある場合、将来的に差押えが行われる可能性があるためです。
差押えの対象には、預金や売掛金が含まれることがあり、支払期日に売掛金が差し押さえられると、ファクタリング会社は代金を回収できなくなるおそれがあります。そのため、長期間にわたる滞納やすでに差押えが始まっている場合は、慎重な判断がなされます。
また、通帳の入出金が事業収入と生活費で混在している場合、どの入金がどの売掛金に対応しているのかが分かりにくくなります。
こうした状況では、売掛債権の実在性や回収実績を評価しづらくなるため、審査上のネックになりかねません。
事業用口座を分けることが難しい場合でも、主要取引先ごとに入金日と金額を一覧にしておき、通帳のどの入金がどの請求書に対応するのかを説明できるようにしておくとよいでしょう。
- 確定申告書や決算書を毎年保管し、すぐに提示できる状態か
- 税金・社会保険料に滞納がある場合、その金額や解消の見通しを把握しているか
- 通帳の入出金から、主要取引先ごとの入金実績を説明できるか
- 事業収入と生活費の入出金が混在している場合、一覧表などで整理しているか
少額取引と継続取引のバランス
個人事業主の場合、「単発の大口案件」と「少額だが継続している案件」が混在していることが少なくありません。
ファクタリング審査では、請求書1枚ごとの金額だけでなく、「その売掛金が今後も継続して発生する取引の一部かどうか」も重視されます。
継続して毎月発生している売掛金であれば、過去の支払実績をもとに評価しやすく、リスクが読み取りやすいからです。
一方、初めて取引する先に対する単発の大口案件は、金額が大きいほど、売掛先の支払状況や案件の進行状況によっては不確定要素も増えます。
たとえば、1回限りのプロジェクトで、検収条件や成果基準があいまいなまま進んでいる場合、後から金額や支払期日をめぐって調整が必要になる可能性があります。
このような売掛金は、同じ金額でも継続取引の請求書に比べ、ファクタリング会社から慎重に見られやすくなります。
そのため、個人事業主としては、「少額でも継続している取引」と「単発の大口案件」を切り分けて整理し、どの売掛金をファクタリングの対象にするかを検討することが重要です。
継続取引で支払実績がしっかりしている先の請求書を優先して対象に選ぶことで、審査の通りやすさや条件の安定につながりやすくなります。
- 主要取引先ごとに、月ごとの売上と入金実績を一覧にしておく
- 初回取引や単発案件は、契約条件・検収条件を特に明確にしておく
- ファクタリング対象とする請求書は、継続取引で支払実績のある先を優先する
- 大口案件だけでなく、複数の少額案件を組み合わせて利用する選択肢も検討する
審査が甘い業者を使うリスク
「審査が甘い」「誰でも通る」とアピールするファクタリング業者は、一見すると個人事業主にとって利用しやすそうに見えます。
しかし、その裏側には、高額な手数料や実質的に返済義務が残る契約、違法な給与ファクタリング、強引な取立てなど、資金繰りをさらに悪化させるリスクが潜んでいます。
審査が丁寧な業者は、売掛先の信用や取引実態を確認したうえで条件を提示しますが、審査が極端に甘い業者は、この確認をほとんど行わず、その分を「高いコスト」と「強い拘束条件」で回収しようとする傾向があります。
また、ファクタリングをうたいながら、実際には貸金業に近いスキームで高利の負担を生じさせるケースもあります。
形式上は「売掛金の買取」としていても、売掛先から入金がなかった場合に利用者が自腹で支払うことを義務付けていたり、短期間で大きな手数料を差し引くことで、実質的な年利が数百%に達することもあります。
こうした契約は、資金繰りの一時しのぎにはなっても、長期的には負担を膨らませる原因になりかねません。
| リスクの種類 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 費用面 | 手数料率・割引率が高く、実質的な金利負担が大きくなる |
| 契約面 | 回収不能時に全額支払義務を負う条項など、実質的に借入と同じ構造になる |
| 法令面 | 給与ファクタリングなど、貸金業に該当し得るスキームが含まれる場合がある |
| 情報面 | 個人情報や口座情報が不適切に扱われ、トラブルや被害につながるおそれがある |
- 「審査が甘い」こと自体がメリットではなく、裏側のコスト・条項・リスクを確認する必要がある
- 正規の事業者かどうか、契約の中身がファクタリングの範囲にとどまっているかを必ずチェックする
違法な給与ファクタリングの危険性
違法な「給与ファクタリング」は、個人が勤務先に対して持つ賃金債権を対象に、「給料を先に買い取る」と称して資金を渡し、後から給料日に利用者から回収するスキームです。
表向きは「債権の買取」とされていますが、実質的には給料日までの短期間の立替えに高額な手数料を上乗せする構造であり、法律上は貸金業に該当するものと解釈されています。
貸金業登録のない事業者がこれを行う場合、ヤミ金融と同様の扱いとなるおそれがあります。
利用者から見ると、「審査が甘い」「ブラックでも利用できる」といった宣伝に惹かれやすい一方で、実際には数万円の手取りに対して数千円〜数万円の手数料を差し引かれ、年利換算では数百%に達する負担となるケースも報告されています。
支払えない場合には、携帯電話や勤務先、家族に頻繁に連絡されたり、SNS・メッセージアプリを通じた強い督促を受けるなど、精神的な負担も大きくなりがちです。
給与ファクタリングは、生活費やカードローンの返済資金を穴埋めするために利用されることが多く、一度利用すると「次の給料分をまた前借りする」という悪循環に陥りやすい点も大きな問題です。
賃金債権は本来、労働者保護の観点から厳格に扱われるべきものであり、職場との関係悪化や退職・収入減など、生活全体に深刻な影響を与えるリスクがあります。
- 短期間で高額な手数料が差し引かれ、実質年利が極めて高くなる
- 支払えない場合に勤務先や家族への連絡など、強い督促を受けるおそれがある
- 給料日ごとに前借りを繰り返す「抜けにくい悪循環」に陥りやすい
- 貸金業登録のない事業者による違法な取引となる可能性が高い
実質金利が高いスキームの注意
ファクタリングは「債権の売買」であり、法律上は利息ではなく手数料や買取価格の問題として整理されますが、利用者の負担を考えるうえでは、実質的な金利(実質年率)に換算して考えることが重要です。
たとえば、請求書額面100万円の売掛金に対して、20%(20万円)の手数料が差し引かれ、支払期日まで30日とすると、1か月で20万円を負担する計算になります。
単純化すると、20万円÷100万円×365日÷30日≒約243%となり、年率換算では一般的なローンやカードローンを大きく上回る水準になります。
もちろん、全てのファクタリングがこのような高い負担になるわけではなく、手数料率が低く、支払期日までの日数が短い案件であれば、実質的な負担は相対的に小さくなります。
しかし、「審査が甘い」「即日資金化」といった訴求をする業者ほど、手数料率が二桁台後半〜三桁に近い水準まで設定されていることもあり、短期取引であっても年率換算では極めて高いコストになることがあります。
個人事業主としては、提示された手数料率や買取額だけでなく、「請求書額面に対していくら差し引かれるのか」「それが何日分の資金前倒しか」「同じ金額を一般的な借入で調達した場合と比べてどうか」という点を数字で確認することが大切です。
特に、資金繰りが厳しい状況では、目先の入金だけに注意が向きがちですが、実質的なコストが高すぎるスキームを繰り返し利用すると、事業の収益力そのものを圧迫することにつながります。
- 手数料額(円)を請求書額面(円)で割り、負担率(%)を把握する
- 支払期日までの日数を確認し、短期間でどれだけの負担が発生しているかを意識する
- 同じ金額を借入で調達した場合と比べて、どちらが総コストを抑えられるかを検討する
- 手数料率が高く、前倒し期間が短いスキームは、年率換算で非常に高コストになりやすいと理解しておく
契約条件と債権譲渡登記のチェック
ファクタリング契約では、「どこまでが売掛金のリスクで、どこからが利用者の責任なのか」という線引きを契約条件で定めます。
たとえば、売掛先の倒産や支払不能のリスクを誰が負うか、売掛金が未回収となった場合に利用者が買い戻す義務(リコース)を負うのかどうか、といった点は、実質的に貸付に近いスキームかどうかを判断するうえで重要なポイントです。
売掛先の支払遅延や倒産など、本来ファクタリング会社が負うべきリスクまで利用者に転嫁している条項がないか、契約書をよく確認する必要があります。
また、三者間ファクタリングや一部の二者間ファクタリングでは、「債権譲渡登記」が行われることがあります。債権譲渡登記とは、売掛金の債権者がファクタリング会社に移ったことを、第三者に対して示すための登記手続きです。
これが適切に行われていれば、同じ売掛金を別の金融機関や業者にも譲渡してしまう「二重譲渡」のトラブルを防ぎやすくなります。
一方で、登記を行わずに複数業者と取引をしてしまうと、権利関係が複雑になり、結果として利用者や取引先との紛争につながるおそれがあります。
さらに、契約書には、解約条件や違約金、情報提供義務、反社会的勢力排除条項など、多数の条文が含まれます。
これらを十分に理解しないまま署名・押印すると、「解約すると高額な違約金が発生する」「追加の契約を半ば強制的に結ばされる」といったトラブルに発展するリスクもあります。
個人事業主であっても、重要な条文についてはメモを取りながら読み進め、不明点は事前に質問し、可能であれば専門家に相談することが望ましいと言えます。
- 売掛先の支払不能時に、利用者がどこまで責任を負うのかが明確か
- 債権譲渡登記を行うかどうか、その目的と影響が説明されているか
- 解約条件・違約金・追加契約の有無などが契約書にどのように書かれているか
- 二重譲渡や権利関係のトラブルを避けるためのルールが整理されているか
個人情報の扱いと主なトラブル
ファクタリングを利用する際には、本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)、通帳のコピー、確定申告書、請求書・契約書など、多くの個人情報・取引情報を業者に渡すことになります。
正規の事業者であれば、これらの情報を法令やガイドラインに基づいて適切に管理し、目的外利用や第三者提供を行わないルールを整備していますが、中には個人情報の扱いが杜撰な業者も存在します。
過去のトラブル例としては、返済や支払に遅れが出た際に、登録された家族の連絡先や勤務先、取引先などに何度も電話をかける、SNSやメッセージアプリの連絡先を使って執拗に督促を行うといった行為が挙げられます。
また、本人が提供した身分証や通帳の画像データが、別の金融勧誘や詐欺的なサービスに転用されるなど、意図しない形で利用されるケースも報告されています。
個人事業主の場合、事業用と私用の情報が混在しやすいため、被害が生活面にも及びやすい点に注意が必要です。
情報管理やプライバシー保護に関する記載が約款やプライバシーポリシーに明示されているか、問い合わせへの対応が丁寧かどうかも、業者選びの重要な判断材料です。
特に、「銀行口座のインターネットバンキングのID・パスワードを入力させる」「スマートフォンに専用アプリを入れさせ、端末内の情報に広くアクセスしようとする」といった方法は、個人情報の過剰な取得につながるおそれがあり、慎重な対応が必要です。
- 本人確認書類・通帳・確定申告書などの扱い方が明示されているか
- 家族・勤務先・取引先への連絡範囲や条件が契約書でどう定められているか
- ネットバンキングのID・パスワードなど、過度な情報提供を求められていないか
- プライバシーポリシーや問い合わせ窓口が整備されているか、対応が適切か
個人が審査を通過する準備と選び方
個人事業主やフリーランスがファクタリングを利用する際は、「どこに申し込むか」以前に、「どの状態で申し込むか」が審査に大きく影響します。
ファクタリング会社が見ているのは、主に売掛先の信用力と売掛金の実在性、そして申込者の事業実態と納税状況です。
これらを事前に整理しておけば、必要書類の不足や説明の食い違いを減らすことができ、結果として審査の通過率や条件の安定につながります。
また、審査の通りやすさだけを重視して「審査が甘い」とうたう業者を選ぶのではなく、手数料水準・契約内容・相談体制などを総合的に比較することが重要です。
さらに、銀行融資や公的な補助金・助成金と併用し、短期の資金繰りをファクタリングで補いながら、中長期の資金は他の手段で確保する、といった役割分担を考えることで、無理のない資金調達計画を立てやすくなります。
| 準備・選び方の視点 | 主な内容 |
|---|---|
| 事前準備 | 売掛金に関する請求書・契約書・通帳明細、確定申告書などの整理 |
| 費用・条件 | 審査通過率だけでなく、手数料率や実質負担、契約条項を確認 |
| 相談体制 | 個人事業主向けの説明や相談窓口が整っているか |
| 他制度との併用 | 銀行融資・補助金・助成金などとの組み合わせ方 |
- 売掛金と必要書類の整理が、審査の土台になる
- 「通りやすさ」だけでなく、コストと契約条件も必ず比較する
- 相談しやすい窓口かどうか、公的な制度との併用を含めて検討する
売掛金と必要書類の事前準備
審査を通過するうえで最も基本となるのが、「売掛金の実在性」と「取引実績」を示す書類の準備です。
ファクタリング会社が重視するのは、売掛先への請求が実際の取引に基づいているか、過去に同じ先からきちんと入金が行われているかという点です。
そのため、請求書だけでなく、基本契約書・発注書・納品書・検収書などの取引資料と、売掛先からの入金が分かる通帳明細をセットで整理しておくことが重要です。
個人事業主の場合、確定申告書や青色申告決算書も、事業実態や売上規模を示す資料として使われます。
直近1〜2年分を手元に用意し、主要取引先別の売上を把握しておくと、「この売掛先とはいつから、どの程度の取引があるか」を説明しやすくなります。
売掛金の額面(円)、支払期日、支払サイト(例:末締め翌月末払いなど)も一覧にしておくと、ファクタリング会社が案件を評価する際の前提が共有しやすくなります。
必要書類はサービスによって多少異なりますが、一般的には次のようなものが想定されます。
- 売掛金に関する書類(請求書、基本契約書、発注書・納品書・検収書など)
- 取引先からの入金が分かる通帳の写し(直近数か月分)
- 所得税の確定申告書・青色申告決算書など事業収入が分かる書類
- 本人確認書類(運転免許証など)と、必要に応じて開業届の控え
審査通過率と手数料水準のチェック
「審査通過率が高い」「審査が甘い」とうたうサービスであっても、手数料率が高すぎれば、実質的な負担は大きくなります。
ファクタリングの手数料率は、請求書額面に対して何%差し引かれるかを示すもので、たとえば請求書100万円・手数料10%の場合、入金額は90万円となります。
このとき、前倒しされる期間が30日程度であれば、年率換算の負担は相応に高くなるため、「通過しやすいがコストも高い」のか、「通過しやすくかつコストも一定水準か」を見極める必要があります。
複数のファクタリング会社から見積りをとるときは、単に「利用できるかどうか」だけでなく、「同じ売掛金・同じ期間で、手数料率や入金タイミングがどう違うか」を比較することが大切です。
審査通過率が高いサービスでも、手数料率が二桁台後半〜それ以上になると、短期で見れば資金は確保できても、中長期では利益を圧迫する可能性があります。
一方、審査がやや厳しめでも手数料率が低いサービスは、事業全体のコスト管理の観点から見るとメリットが大きい場合もあります。
個人事業主としては、「審査に通るかどうか」「手数料率がどの程度か」「入金までのスピード」「契約の明確さ」の4点をセットで評価することが有効です。
審査が甘いことだけを強調する広告ではなく、費用やリスクを具体的な数字や条件で説明している事業者かどうかも、信頼性の判断材料になります。
- 請求書額面に対して何%差し引かれるか(手数料率)を必ず確認する
- 前倒しされる日数と手数料率から、実質的な負担感をイメージする
- 審査通過率だけでなく、手数料水準・入金スピード・契約内容を比較する
- 費用やリスクを具体的に説明している事業者かどうかをチェックする
相談しやすいファクタリング窓口
個人事業主が初めてファクタリングを利用する場合、「何を聞いたらよいか分からない」「どの書類を出せばよいか分からない」といった不安を抱えがちです。
そのため、単にオンラインで申込フォームがあるだけでなく、電話やメール、チャットなどで丁寧に相談に乗ってくれる窓口かどうかは重要なポイントです。
質問に対して具体的な回答が返ってくるか、メリットだけでなくリスクや他の選択肢についても説明してくれるかといった対応の質は、事業者選びの判断材料になります。
また、個人事業主向けのプランを明示しているかどうかも確認したいところです。
個人事業主やフリーランスに特化したサービスでは、決算書ではなく確定申告書や通帳を前提とした審査フローが整えられていることが多く、必要書類の案内も「個人事業主目線」で整理されている傾向があります。
一方で、企業向けを前提としたサービスでは、法人登記や決算書を前提とした説明が中心となる場合もあり、そのままでは個人事業主にとって分かりにくいことがあります。
さらに、公的な相談窓口(商工会議所、商工会、中小企業支援機関など)で、ファクタリングの位置づけや他の資金調達手段との比較について意見を聞いておくことも有効です。
事業全体の資金繰りや投資計画を踏まえて、ファクタリング以外の選択肢(銀行融資、制度融資、補助金・助成金など)も併せて整理してくれる場合があり、中立的な視点から助言を受けることができます。
- 個人事業主向けのプランや説明が用意されているか
- 質問に対して丁寧かつ具体的に回答してくれるか
- リスクや他の選択肢についても説明してくれるか
- 必要に応じて、公的な相談窓口の活用も検討しているか
銀行融資や補助金との併用ポイント
ファクタリングは、すでに発生している売掛金を早く現金化する手段であり、基本的には短期の運転資金の補完に向いています。
一方、設備投資や新規事業の立ち上げなど、中長期的な資金需要については、銀行融資や制度融資、公的な補助金・助成金などを活用する方が、コストや返済期間の面で適している場合が多くなります。
そのため、「短期の資金繰り=ファクタリング」「中長期の資金=融資・補助金」といった役割分担を意識することが重要です。
併用する際には、同じ売掛金を複数の手段で重複して利用しないよう注意が必要です。たとえば、売掛金を担保にした銀行融資(売掛債権担保融資)を受けている場合、その売掛金をさらにファクタリングで譲渡すると、権利関係が複雑になり、契約違反となる可能性があります。
銀行との契約書に、売掛金の担保設定や譲渡制限の条項がないかを事前に確認し、必要であれば銀行側と相談したうえでファクタリングを利用することが望ましいです。
また、補助金・助成金については、支給までに時間がかかる一方で、返済不要という大きなメリットがあります。
採択が決まっているものの入金までタイムラグがある場合に、つなぎ資金としてファクタリングや融資を利用するケースも想定されますが、その場合でも「どの時点でいくら入ってくるか」「その資金で何を返済・支払うか」をあらかじめ資金繰り表に落とし込み、二重に資金手当てしないよう整理しておくことが重要です。
- ファクタリングは短期の運転資金向け、銀行融資・補助金は中長期資金向けと役割を分けて考える
- 売掛金を担保にした融資とファクタリングを重ねないよう、契約条項を確認する
- 補助金・助成金の入金予定と返済・支払計画を資金繰り表で整理する
- 全体の資金計画を踏まえて、「どの手段にどれだけ頼るか」を決める
まとめ
本記事では、個人向けファクタリングの審査の基本、審査が甘いと言われる背景と実態、個人事業主が意識したい売掛先の信用・書類整合性・納税状況などの基準、審査が甘い業者を利用する際の主なリスク、安全なサービスを選ぶための準備ポイントを整理しました。
売掛金と必要書類を事前に整え、手数料水準や契約条件、公的機関の注意喚起内容を踏まえて確認することで、個人でも過度なリスクを避けながらファクタリングを選択肢の一つとして検討しやすくなります。



















