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ファクタリング偽造の見抜き方12項目|請求書不正のチェック方法と初動対応ガイド

銀行融資が難しく資金繰りを急ぐ中でファクタリングを検討すると、「請求書の偽造や架空取引に巻き込まれないか」「違法トラブルにならないか」と不安になりがちです。本記事では、ファクタリングで偽造が問題になる典型場面、架空取引・水増しの違い、審査で確認される書類や売掛先確認の観点を整理します。契約前にできるチェック方法、疑わしい時の初動(支払停止・証拠保全・相談先)まで初心者向けにまとめます。

偽造トラブルの全体像

ファクタリングは、利用者が持つ売掛債権(取引先から将来入金される権利)を資金化する取引です。この仕組み自体は債権譲渡として説明されますが、請求書や取引資料が偽造・改ざんされると、回収不能や紛争、刑事事件につながる可能性があります。偽造トラブルは「請求書の紙を偽造する」だけでなく、取引が存在しないのに請求書を作る、金額や支払期日だけを改変する、取引先名や口座情報を差し替えるなど形が複数あります。
資金繰りが厳しいときほど、書類確認が甘くなりやすく、またスピードを優先した非対面手続きでは、資料の真正性(本物かどうか)の確認が不十分になりがちです。ここでは、どんな場面で問題化するか、架空取引と水増しの違い、被害が広がる典型パターンを整理します。

請求書偽造が問題になる場面

請求書偽造が問題になるのは、ファクタリング会社が「回収できる前提」で資金を先払いした後に、売掛先(取引先)が支払を否定する場面です。例えば、請求書額100万円の売掛債権を資金化し、手数料率10.0%で買取率90.0%(請求書額面に対する支払割合)なら、利用者は90万円を受け取ります。しかし、売掛先が「その請求書は存在しない」「金額が違う」「支払期日が改ざんされている」と主張すれば、回収が止まり、関係者全員に損失と手続き負担が発生します。
問題化しやすいのは、2社間で売掛先に通知しない取引や、オンライン申込で書類提出が画像中心のケースです。通知がないと、売掛先の確認が後回しになりやすく、画像提出だけだと、請求書番号・押印・発行日・振込先などの細部の改ざんが見えにくいことがあります。

問題になりやすい場面の共通点
  • 売掛先への事前確認がなく、書類だけで進んでいる
  • 検収(納品後の受領確認)が必要な取引で、検収資料がない
  • 請求書の画像が不鮮明で、金額・日付・名義が判読しにくい
  • 入金を急ぐあまり、契約・納品の証跡を省略している
偽造かどうかの断定は慎重に行う必要がありますが、少なくとも「支払否定が起きる余地がある状態」で資金化を進めることがリスクになります。

架空取引と水増し請求の違い

偽造トラブルは大きく「架空取引」と「水増し請求」に分けて理解すると整理しやすいです。架空取引は、そもそも取引が存在せず、契約・発注・納品がないのに請求書だけを作るパターンです。水増し請求は、取引自体は存在するものの、金額(数量・単価)や請求範囲(期間・追加作業)を実態より大きく見せるパターンです。
例えば、実際の契約が80万円なのに請求書を100万円にする、検収前なのに請求済みとして扱う、既に相殺(返品や値引などで差し引くこと)が見込まれるのに満額請求として提出する、といった形が水増しに近い例です。どちらも回収の前提を崩しますが、架空は「取引実在性そのもの」が否定されるため、立証資料(契約書、注文書、納品書、検収書、メールの発注確認など)の重要性がより高くなります。

区分 見分けの観点(例)
架空取引 契約・発注・納品・検収の証跡が一貫して存在しない
水増し請求 取引はあるが、契約金額や検収状況と請求額が一致しない
初心者向けの一次確認ポイント
  • 契約金額(円)と請求書金額(円)が一致しているか
  • 検収が必要な取引なら、検収完了の証跡があるか
  • 値引・返品・相殺の予定があるのに満額請求になっていないか
  • 請求書番号・発行日・支払期日が取引条件と整合するか
ここでいう「見分け」は断定のためではなく、疑義がある取引を早期に発見して、追加確認に回すための整理です。

被害が広がる典型要因

偽造被害が広がる背景には、確認の抜けと、情報管理の弱さが重なりやすい点があります。特に、資金繰りが厳しい企業ほど「早く現金化したい」圧力が強く、請求書だけで進めてしまう、担当者が単独で判断する、提出資料のチェックが形式的になる、といった状況が生まれます。さらに、請求書の電子化が進む中で、PDFや画像の改ざんが容易になり、経理・営業・現場の情報が分断されていると矛盾に気づきにくくなります。
また、売掛先側の経理が支払先変更や請求内容に違和感を覚えても、問い合わせ窓口が不明確だと確認が遅れ、支払停止や紛争に発展しやすいです。

被害が拡大しやすい典型パターン
  • 請求書と契約・納品の照合をせず、画像だけで判断している
  • 社内承認フローがなく、担当者が単独で申込・提出している
  • 取引先マスター(正式名称・口座・担当)管理が不十分
  • 不一致が出ても「後で合わせる」と放置し、証拠が散逸する
偽造対策は、特別な機器や専門知識だけでなく、「照合」「承認」「記録」という基本動作を仕組みに落とすことで効果が出やすいです。次章では、審査で見られる確認項目を踏まえ、どの資料をどう揃えると疑義を減らせるかを具体化します。

審査で見られる確認項目

ファクタリングの審査は、請求書が「回収できる売掛債権か」を確認する作業です。偽造や架空取引を防ぐため、主に①取引実在性(本当に取引があるか)、②売掛先の支払見通し(支払能力と支払意思)、③申込者の本人確認と反社排除(取引相手として適切か)が点検されます。書類の提出が早くても、金額・支払期日・当事者情報が資料間で食い違うと確認が止まりやすいです。逆に、契約→発注→納品→検収→請求→入金という流れが資料で追えるほど、疑義が減り審査が進みやすくなります。

取引実在性の証拠書類基準

取引実在性は「請求書がある」だけでは足りず、取引の前後関係が説明できるかで判断されやすいです。典型的には、契約書や注文書(発注内容・金額・納期)、納品書や作業完了報告(履行した証跡)、検収書(検収が必要な取引の場合)、請求書(請求先・金額(円)・支払期日)を突合します。金額の一致は重要で、例えば契約80万円なのに請求100万円であれば、水増しや追加作業の有無を追加資料で確認する流れになります。電子データ提出が多いほど、改ざんの疑いを避けるため「原本に近い形式」「発行経路が分かる資料」を揃えることが有効です。

取引実在性の提出セット例
  • 契約書または注文書(取引条件と金額が分かる)
  • 納品書・作業完了報告・検収書(履行済みを示す)
  • 請求書(請求先・金額(円)・支払期日)
  • 過去の入金実績(同一売掛先の通帳明細等)
取引実在性は「一式で説明できるか」が要点です。資料が散らばっている場合は、請求書番号ごとにまとめ、差異が出た箇所は理由(追加作業、値引、相殺予定など)を資料で補強します。

売掛先の支払確認の観点

売掛先確認は、回収可能性と偽造リスクの両方に関わります。支払条件(支払期日、入金サイト、振込名義)、取引先の支払実績(遅延の有無)、請求内容の妥当性(契約範囲・検収状況)などが確認対象になりやすいです。特に3社間では、売掛先が支払先変更に対応できるか(通知・承諾の可否)が重要になり、2社間でも、必要に応じて売掛先へ「請求の存在確認」を行う場合があります。確認の目的は、売掛先の信用を断定することではなく、支払に必要な前提(請求が正しい、期日が確定している、相殺や減額の予定がない等)を崩さないことです。

確認観点 偽造リスクと関係するポイント
支払条件 支払期日・入金サイトが資料間で一致しているか
取引状況 検収未了・追加精算など、金額が動く要因が残っていないか
支払実績 過去の入金履歴が確認でき、遅延が常態化していないか

売掛先確認は、取引先との関係に影響し得るため、通知の要否や確認範囲は契約方式(2社間・3社間)に合わせて整理し、社内の説明窓口を一本化しておくと混乱を減らせます。

本人確認と反社排除の注意点

本人確認は、申込者が実在し、権限を持って取引していることを確かめる手続きです。法人なら代表者の本人確認に加え、登記事項などで会社の基本情報を確認し、個人事業主なら本人確認書類と事業の実態が分かる資料(口座入出金や申告関連資料等)が求められることがあります。反社排除は、契約書に反社会的勢力の排除条項を置き、取引関係からリスクを遮断する目的で行われます。ここが弱いと、偽造や架空取引の温床になりやすいため、審査では「名義貸し」「連絡先の不自然さ」「書類の不一致」といった兆候も含めて慎重に見られます。

本人確認で止まりやすい不一致
  • 社名・住所・代表者名が書類ごとに食い違う
  • 口座名義が申込者と一致せず、資金の流れが説明できない
  • 連絡先が固定されず、同じ質問への回答がぶれる
  • 権限者不明のまま契約手続きが進もうとしている
本人確認と反社排除は「形式」ではなく、取引の安全性を担保するための最低条件です。疑義が残る状態で進めると、後から回収不能や紛争に発展しやすいため、資料の整合を優先し、不明点は書面で確認してから契約に進む姿勢が重要です。

契約前のセルフチェック

偽造トラブルを防ぐうえで最も効果が出やすいのは、契約前に「矛盾がない状態」を作ることです。審査の厳しさは会社ごとに異なりますが、契約前の時点で請求書・契約書・納品や検収の証跡が整合し、入金口座や連絡先が真正(本物)で、二重譲渡や相殺など回収を揺らす要因が整理されていれば、偽造や架空取引に巻き込まれる確率を下げやすいです。
ここでいうセルフチェックは、相手を疑うためではなく「事実を一致させて、説明できる状態にする」ための作業です。特に資金繰りが厳しい局面では、急いで提出しがちですが、焦りが矛盾を増やし、後の紛争コストを上げます。以下の3点を順に点検すると、初心者でも抜け漏れを減らせます。

請求書・契約書の整合チェック

まずは、請求書が契約条件と一致しているかを点検します。最低限の照合は、請求書番号、取引先名、請求金額(円)、支払期日、取引内容(品目やサービス名)です。契約書や注文書にある金額・数量・納期・検収条件と、請求書の記載が一致しない場合、水増しや改ざんの疑い以前に、単純な入力ミスや未確定の請求である可能性もあります。いずれにせよ、そのまま資金化すると回収で揉めやすいので、差異の理由を資料で説明できる状態にします。
例として、契約金額80万円のはずが請求書100万円になっている場合、追加作業が発生したなら追加注文書や合意書が必要です。検収後に金額が確定する契約なら、検収書や完了報告が揃っていない段階での請求は注意が必要です。

整合チェックの最小項目
  • 取引先名・担当部署が契約書と一致している
  • 請求金額(円)と契約・注文の金額が一致している
  • 支払期日が取引条件(入金サイト)と整合している
  • 検収が必要なら、検収完了の証跡がある
整合が取れない場合は、先に請求内容を確定させてから進める方が、偽造疑義や回収不能のリスクを下げやすいです。

入金口座・連絡先の真正性確認

偽造トラブルでは、請求書の内容だけでなく「入金先口座」や「連絡先」の差し替えが起点になることがあります。例えば、請求書の振込先口座が過去と違う、口座名義が取引先名と一致しない、連絡先がフリーメールのみで固定電話や所在地が確認できない、といった場合は慎重に確認します。正当な変更(銀行変更、支店統合、経理委託など)もあり得ますが、正当性を裏付ける情報がないまま振込や承認をすると、誤送金や詐欺被害につながりやすいです。
ファクタリングでは、2社間・3社間のいずれでも、支払先の変更や確認が発生し得ます。特に3社間で通知・承諾を行う場合は、売掛先が誤送金しないように、口座情報の真正性を揃えたうえで案内する必要があります。

真正性確認で注意したいサイン
  • 口座名義が会社名と一致せず、理由説明もない
  • 振込先変更が急で、確認書面が提示されない
  • 連絡先が不自然に変わる、担当者が固定されない
  • 確認を求めると、支払を急かして詳細説明を避ける
確認は、登録済みの取引先マスター(正式名称・所在地・代表電話・過去の口座)と突合し、変更がある場合は書面や公式な通知で裏付けを取るのが基本です。

二重譲渡・相殺リスクの点検

二重譲渡は、同じ売掛債権を複数に譲渡してしまう状態で、偽造と同様に回収を止める大きな原因になります。見積り取得中の段階で複数社へ同じ請求書を提出し、どこまでが「審査用提出」でどこからが「契約による譲渡」かが曖昧になると、意図せず二重譲渡に近い状態を招くことがあります。契約締結前後のステータス(見積・申込・契約)を社内で管理し、対象請求書を固定することが重要です。
相殺は、売掛先が返品・値引・損害賠償などを理由に売掛金を差し引くことです。相殺が起こると、請求書額100万円でも実際の回収額が90万円などに減り得ます。ファクタリングでは、回収額が減ると精算条件や負担範囲の問題になりやすいため、相殺や減額の余地がある取引は事前に点検します。

二重譲渡・相殺のセルフ点検
  • 同じ請求書を複数社へ同時に契約対象として出していない
  • 対象請求書の一覧を作り、担当・提出先を記録している
  • 値引・返品・追加工事など、減額要因が未確定のまま残っていない
  • 取引基本契約書に債権譲渡禁止特約や相殺条項がないか確認している
二重譲渡や相殺は、偽造がなくても回収を不安定にします。契約前に「対象債権が確定しているか」「金額が動かないか」を固めておくことが、トラブル予防の実務的な近道です。

偽造が疑われた時の初動

偽造や改ざんが「確定」していなくても、疑いが出た時点での初動が被害の拡大を左右します。ファクタリングは売掛債権(請求書)を前提に資金が動くため、誤った支払や誤送金が発生すると回収が複雑になり、取引先との関係悪化や紛争化につながりやすいです。初動の基本は、①資金の流出を止める(支払・送金の凍結)、②事実関係を短時間で整理できる状態にする(証拠保全と時系列整理)、③窓口を一本化して外部連絡を統制する(売掛先・ファクタリング会社・社内)です。
重要なのは、疑いの段階で断定的に相手を非難しないことです。事実確認を優先し、必要な関係者に限定して連絡しながら、証拠と契約条件に沿って対応します。

支払停止と連絡手順の注意点

疑いが出たら、まず「支払停止(これ以上お金を動かさない)」を検討します。対象は、売掛先への誤った案内、ファクタリング会社への送金、取引先への振込など、トラブルに直結し得る支払全般です。特に2社間は、売掛先から利用者口座に入金後、利用者がファクタリング会社へ送金する流れになりやすいため、送金を一度止めて事実確認を優先する判断が重要になります。3社間は売掛先が直接支払う流れになりやすいため、売掛先に「支払先を変更しない」「確認が取れるまで保留する」など、誤送金を防ぐ案内が要点です。
連絡手順では、社内の窓口を一本化し、同じ説明を繰り返せる状態にします。売掛先へ連絡する場合も、偽造と断定せず「請求内容・支払先に相違の可能性があるため確認したい」といった事実ベースの伝え方にとどめます。ファクタリング会社への連絡は、契約番号・対象請求書番号・疑義点(例:金額、期日、口座)を明確にし、追加で求められる資料の見込みも確認すると実務が進みやすいです。

支払停止時に避けたい対応
  • 証拠が揃う前に「偽造だ」と断定して取引先へ通告する
  • 担当者がバラバラに連絡し、説明内容が食い違う
  • 口頭だけでやり取りし、合意や指示が記録に残らない
  • 支払を急ぎ、誤送金や二重支払を発生させる

証拠保全と時系列メモ作成ポイント

次に行うべきは証拠保全です。偽造の有無にかかわらず、後から事実関係を説明できる資料がないと、売掛先・ファクタリング会社・専門家との協議が進みません。保全対象は、請求書データそのものだけでなく、契約・注文・納品・検収・請求・入金の一連の流れが分かる資料です。例えば、請求書額100万円のうち「支払期日が改ざんされている疑い」がある場合、元の請求書(発行時のPDFや送付メール)、契約書の支払条件、過去の入金実績(同一取引先の通帳明細等)を並べることで、相違点が具体化します。
時系列メモは、記憶が新しいうちに作るほど精度が上がります。「いつ」「誰が」「何を」「どの媒体で」受け取ったかを短文で積み上げ、添付資料のファイル名や保存場所も紐付けます。証拠は改変と疑われないように、原本データは別フォルダに保管し、編集用のコピーを作って扱うと管理しやすいです。

  1. 対象請求書を特定(請求書番号、金額(円)、支払期日、売掛先名)
  2. 原本データを保全(受領メール、添付PDF、紙原本のスキャン)
  3. 契約・注文・納品・検収など取引実在性資料を収集
  4. 入出金の証憑を収集(通帳明細、振込控え、口座情報)
  5. 時系列メモを作成(出来事+証拠の所在を紐付け)
時系列メモに入れる項目
  • 発生日(年月日)と出来事(請求書受領、条件提示、入金など)
  • 関係者(社内担当、売掛先担当、ファクタリング会社担当)
  • 連絡手段(メール、電話、チャット)と要点
  • 根拠資料(ファイル名、保管場所、紙原本の有無)

警察・弁護士の相談目安

偽造が疑われる場合、相談先の切り分けが重要です。刑事事件の可能性がある(なりすまし、詐欺、文書偽造の疑いが強い)場合は警察相談が視野に入ります。一方、契約関係の整理、支払停止の可否、取引先への連絡文案、損害回復の手続きなどは弁護士の領域です。特に、支払を止めると契約違反を主張される可能性があるため、契約書(基本契約書・個別契約書)を前提に、どこまでが許容される対応かを確認する意味で弁護士相談は有効です。
相談の目安は「被害の現実性」と「時間制約」です。例えば、すでに90万円が入金済みで(買取率90.0%)、売掛先から請求否認が来ている、別口座への振込指示が出ている、二重請求が来ているといった状況は、早期相談で拡大防止を図る価値が高いです。

早めに相談したいケース
  • 売掛先が請求書の存在や金額を否認している
  • 口座変更を急かされ、根拠書面が提示されない
  • 同一請求書で別名義から支払催促が来ている
  • 社内で改ざんの可能性(内部不正)も否定できない
相談時は、対象請求書一式、契約書、やり取り履歴、入出金明細、時系列メモを揃えると、論点(偽造の疑い点、支払停止の適否、取引先対応)を短時間で整理しやすくなります。

経理担当の再発防止策

請求書の偽造・改ざんは、外部の詐欺だけでなく、社内のチェック不足や運用の属人化が重なると発見が遅れやすくなります。再発防止は「疑わしい取引を早く止める」より前に、「疑わしい取引が通りにくい仕組み」を作ることが重要です。具体的には、請求書の発行から入金確認までの承認フローを分離し、取引先情報(口座・連絡先)の変更管理を厳格化し、電子データの保存ルールを統一します。これにより、書類の整合性が担保され、異常があった場合も原因と責任範囲を切り分けやすくなります。

請求書発行・承認フロー改善

フロー改善の軸は「作成者と承認者を分ける」「根拠資料で照合する」「例外を記録する」の3つです。例えば、請求書額80万円の請求であれば、注文書・納品書(または作業完了報告)・検収書(必要な取引の場合)と突合して承認します。金額が増減した場合は、追加注文や値引の合意が分かる資料を添付し、理由が説明できる状態にします。承認段階を増やすだけでは効果が薄いため、どの項目をチェックするかを固定し、抜け漏れを減らすのがポイントです。

承認フローに入れるチェック項目例
  • 請求先名、金額(円)、支払期日が契約条件と一致
  • 検収が必要な取引は検収完了の証跡がある
  • 過去実績と比べて金額が急増している場合は理由資料を添付
  • 例外承認(緊急対応など)は理由と承認者を記録
社内ルールの例として「50万円以上は二段階承認」など金額基準を置くと運用しやすいですが、実態に合わせて見直し可能な基準にしておくと形骸化を防げます。

取引先マスター管理の整備

偽造トラブルでは、請求書そのものより「振込先口座」や「連絡先」の差し替えが起点になることがあります。そこで、取引先マスター(正式名称、所在地、代表電話、担当部署、登録口座など)を整備し、支払や請求のたびにマスターと突合できる状態にします。特に口座変更は、正当な変更でも被害が出やすいため、変更申請の窓口・必要書面・承認者を固定し、メール一本での変更を避ける運用が有効です。

管理対象 運用の要点
口座情報 変更時は根拠書面を保存し、承認者を固定する
連絡先 担当者変更は履歴を残し、確認ルートを一本化する
取引条件 支払期日・検収条件など、請求と照合できる項目を残す

マスターの更新履歴(いつ、誰が、何を変えたか)が残るだけでも、不正の抑止力と事後調査のしやすさが大きく上がります。

電子取引データ保存の注意点

請求書や契約書がPDFやメール添付でやり取りされる場合、電子取引データは「後から内容を確認できる形」で保存する運用が重要です。改ざん疑義を減らすには、受領メールや添付ファイルを含めて原本データを保全し、ファイル名・保存場所・アクセス権限を統一します。検索性(取引先名、日付、金額など)を確保し、誤って上書き・削除しない運用も必要です。制度は改正され得るため、保存要件の詳細は税理士等に確認する前提で、社内ルールを定期的に点検します。

電子データ保存で起きやすい失敗
  • メール本文を残さず添付だけ保存し、発行経路が追えない
  • フォルダが分散し、同じ請求書の版が複数できる
  • 閲覧権限が広すぎて、改ざん・削除リスクが上がる
  • 検索できず、監査や紛争時に提出が遅れる
保存は「保管しているつもり」になりやすい領域です。取引単位で一式(契約・納品/検収・請求・入出金)をまとめ、誰が見ても同じ結論にたどり着ける形に整えることが再発防止につながります。

まとめ

偽造は請求書の改ざんに限らず、架空取引や水増し請求といった形でも起こり得ます。審査では、取引が実際に行われたことを示す証拠(契約・発注・納品・検収・過去の入金実績など)、売掛先の支払確認、申込者の本人確認が重視されやすいです。契約前には、請求書と契約書・納品書等の整合、入金口座や連絡先の真正性、二重譲渡や相殺のリスクを点検し、書類や取引先情報に不自然な点がないかを確認します。疑いがある場合は、まず支払いの停止と証拠保全(やり取り履歴、振込記録、原本・PDFデータ等)を優先し、警察や弁護士に相談することが重要です。次は必要額と期間を資金繰り表で整理し、契約前チェックリストを作成したうえで、複数社の条件を比較しながら、手数料負担や取引先への影響も踏まえて慎重に判断しましょう。