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ファクタリングと補助金の違いと使い分け!中小企業の資金調達ポイント10選

ファクタリングと補助金は、どちらも中小企業の資金調達に使われますが、「性質」と「タイミング」がまったく異なります。本記事では、売掛金を資金化するファクタリングの仕組みと、返済不要の補助金・助成金制度の基本、補助金採択前後の資金繰りで使われる補助金ファクタリングの流れ、銀行融資との違いと組み合わせ方、併用時の注意点までを客観的に整理します。

 

ファクタリングと補助金の基本関係

ファクタリングと補助金は、どちらも中小企業の資金繰りに役立つ仕組みですが、性質や入金タイミングが大きく異なります。

ファクタリングは、企業が保有する売掛債権を期日前に一定の手数料で買い取ってもらうことで資金を調達する仕組みで、法的には債権の売買(債権譲渡)契約とされています。

 

売掛金という「すでに発生している将来入金」を現金化するため、審査では主に売掛先の信用力と取引実績が重視されます。

一方、補助金・助成金は、国や自治体等が政策目的に沿った取り組みを支援するために、事業費の一部を給付する制度です。

 

多くの補助金は後払いで、事業者がまず自己資金等で支出を行い、その後に実績報告・審査を経て補助金が支払われます。

給付割合は「1/2」「2/3」など一部補助が原則であり、応募しても必ず採択されるとは限らない点も特徴です。

 

このように、ファクタリングは「既に発生した債権を資金化する民間の金融手段」、補助金は「政策目的に沿う将来の投資を支援する公的な給付金」であり、目的も入金のタイミングも異なります。

補助金は支給までに時間がかかることが多く、その間のつなぎ資金として融資やファクタリングを組み合わせて活用するケースもあります。

 

項目 ファクタリングと補助金の違い
資金の性質 ファクタリング:売掛債権の売買による資金調達/補助金:政策目的に沿った事業への給付金
返済の有無 ファクタリング:手数料を支払うが借入ではない/補助金:原則返済不要(要件を満たさない場合は返還となることもある)
入金タイミング ファクタリング:売掛金の支払期日前に入金/補助金:申請・採択・事業実施・実績報告後に精算払いが原則
審査主体 ファクタリング:ファクタリング会社など民間/補助金:国・自治体・事務局など公的機関
主な目的 ファクタリング:運転資金の確保・資金繰りの平準化/補助金:設備投資や販路開拓、IT導入など中長期の投資支援

 

ファクタリングの仕組みと特徴

ファクタリングは、企業が保有する売掛債権(商品・サービスを提供済みで、後日支払を受ける権利)を、ファクタリング会社に譲渡して資金を早期に受け取る仕組みです。

一般的には、売掛金の支払期日よりも前に、請求書額面から手数料を差し引いた金額が入金されます。法的には、売掛債権の売買契約(債権譲渡)にあたり、貸付金ではない点が特徴です。

 

取引の基本的な流れは、①売掛金の発生(取引先へ請求)、②ファクタリングへの申込、③売掛先や取引実績の審査、④基本契約書・個別契約書の締結、⑤買取代金の入金、⑥支払期日に取引先から入金があり、条件に応じて精算、というステップが一般的です。

審査では、利用者の財務状況だけでなく、売掛先の信用力や請求内容の妥当性が重視されます。

 

料金面では、請求書額面に対して数%〜十数%程度の手数料率が設定され、売掛金額のうち前払いの対象となる割合(掛け目・買取率)が決められるのが一般的です。

例えば、請求書額500万円、掛け目90%、手数料率5%の場合、前払い対象額は450万円、手数料はその5%で22万5,000円、利用者が受け取る金額は427万5,000円というイメージになります(実際の条件は契約ごとに異なります)。

 

【ファクタリングの主なポイント】

  • 売掛債権を期日前に現金化する資金調達手段であること
  • 法的には債権の売買契約であり、貸付金とは区別されること
  • 審査では利用者だけでなく売掛先の信用力や取引実態が重視されること
  • 手数料率と掛け目の設定により、実際の受取額が決まること

 

ファクタリングを理解するうえで押さえたい点
  • 「誰の売掛金を、いつ、いくら前倒しするか」を具体的にイメージしておく
  • 請求書額、掛け目、手数料率から、おおよその受取額と実質コストを試算しておく
  • 契約書(基本契約書・個別契約書)で債権の範囲や支払条件を必ず確認する

 

補助金・助成金制度の基礎知識

補助金・助成金は、国や自治体などが、特定の政策目的(生産性向上、IT化、販路開拓、創業支援など)に沿った事業を後押しするために、事業費の一部を給付する制度です。

中小企業向けには、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金、小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金など、さまざまな制度があります。

 

多くの制度で「補助率(1/2、2/3など)」と「補助上限額(例:50万円〜数千万円)」が定められており、事業費の全額ではなく一部が補助対象となります。

基本的な流れは、①公募開始・公募要領公開、②事業者が計画を作成し申請、③審査のうえ採択、④交付申請・交付決定、⑤補助事業の実施(設備導入・販路開拓など)、⑥実績報告・検査、⑦補助金の交付(精算払い)というステップです。

 

原則として後払いのため、事業者はまず自己資金や融資等で事業費を支出し、その後に補助金が支払われます。

また、多くの補助金では、「補助対象期間内の支出のみが対象」「証憑(請求書・領収書・契約書等)の保管・提出が必要」「目的外使用や要件未達の場合は交付額の減額・返還があり得る」といったルールが設けられています。

補助金は原則返済不要ですが、課税所得として取り扱われることが多く、税務上の取り扱いや事業計画全体への影響も踏まえて検討することが重要です。

 

項目 補助金・助成金の基礎ポイント
目的 政策目的(生産性向上、IT化、販路開拓、創業支援等)に沿った事業を支援
補助率・上限 1/2や2/3などの補助率と、制度ごとに定められた補助上限額が設定される
支払時期 原則として事業完了後の精算払い(事前に自己資金等による支出が必要)
採択の有無 公募・審査・採択を経るため、申請しても必ず利用できるわけではない
留意点 対象期間・対象経費・証憑管理・事業報告などの要件を満たさないと、減額や不支給になる可能性がある

 

補助金・助成金を検討するときの基本チェック
  • 自社の事業計画が補助金の目的・対象に合致しているかを確認する
  • 自己資金やつなぎ資金を含め、事業費全体を賄える見通しがあるかを整理する
  • 公募要領で、対象期間・対象経費・報告ルールなどの条件を事前に確認する
  • 採択後の事務負担(書類作成・証憑管理)も含めて社内体制を検討する

 

補助金ファクタリングの仕組み概要

補助金ファクタリング(補助金早期受取サービスなどと呼ばれることがあります)は、採択された補助金・助成金の「受給権」をもとに、入金前の段階で資金を調達するスキームの総称です。

通常、補助金は①公募・申請、②採択決定、③交付決定、④事業実施、⑤実績報告、⑥精算払(入金)という流れで支払われ、交付決定から実際の入金まで数か月〜1年程度かかることもあります。

 

この間のつなぎ資金は、自己資金や融資で賄うのが原則ですが、その一部を「補助金の受給見込み」を活用して調達しようとするのが補助金ファクタリングです。

実務上は、大きく二つのタイプに整理できます。ひとつは、補助金の交付決定通知書などを根拠に、補助金の受給権を債権として評価し、それを担保・原資として資金を供給するタイプです。

 

もうひとつは、補助金交付決定額を「電子記録債権」(電子的に記録された金銭債権)として発生させ、その電子記録債権を担保に金融機関からつなぎ融資を受けるPOファイナンス型のサービスです。

いずれも「補助金の受給が見込まれる」という前提のもとで、事業者の資金繰りを平準化することを目的としています。

 

ただし、補助金は「交付決定=必ず満額入金」ではなく、事業内容や実績報告の内容によっては減額や不交付となる可能性もあります。

そのため、補助金ファクタリングでは、採択通知・交付決定通知、事業計画、事務局のスケジュールなどを総合的に確認したうえで、対象額の範囲や条件が設定されます。

補助金・助成金自体のルール(対象経費・対象期間・報告義務など)に抵触しないことも前提となるため、「補助金のルール」と「資金調達スキーム」の両方を理解しておくことが重要です。

 

項目 補助金ファクタリングの概要
対象となる権利 採択・交付決定を受けた補助金・助成金の受給権(交付決定金額等)
主な目的 補助事業の実施期間中に必要な運転資金・自己負担分の一部を早期に確保すること
代表的な形態 交付決定通知等を根拠とした受給権を活用するタイプ/補助金を電子記録債権化しPOファイナンスとして利用するタイプ
入金の原資 補助事業完了後に事務局等から支払われる補助金(精算払い)
留意点 補助金の減額・不交付リスク、事務局のスケジュール、補助金要件との整合性を事前に確認する必要がある

 

補助金受給権ファクタリングの流れ

補助金受給権ファクタリングでは、補助金の交付決定により将来発生が見込まれる「補助金受給権」を金銭債権として評価し、その受給権をもとに資金を受け取る流れになります。

基本的なイメージは、売掛債権ファクタリングと似ていますが、「売掛先」が国・自治体・補助金事務局である点と、「事業完了・実績報告・検査」を経てから支払われる点が異なります。

一般的な流れの一例は次のとおりです。

 

  • 補助金の公募に申請し、採択・交付決定通知を受ける
  • 補助事業の内容・交付決定額・スケジュールなどをもとに、補助金対応のファクタリング・POファイナンスサービスに相談する
  • サービス提供者が補助事業者(利用者)の信用状況や補助金の内容を審査し、対象額・条件を提示する
  • 契約締結後、補助金の受給権(交付決定額の範囲内)を対象に、一定割合の資金が事前に入金される
  • 補助事業の実施・実績報告・検査を経て、補助金が事務局等から支払われる
  • 補助金の入金を原資として、ファクタリング会社や金融機関への返済・精算を行う

 

ここで重要なのは、「補助金受給権を譲渡・担保提供すること」が補助金の交付要件や事務局のルールと矛盾していないかを確認することです。

補助金の公募要領や交付要綱では、権利の譲渡や債権放棄に関する取り扱いが定められている場合があり、事務局の同意や指定の手続きが必要となるケースもあります。

また、補助事業の内容が変更になったり、実績報告の結果として補助金額が減額されると、当初想定していた返済原資が減る可能性もあるため、利用額や用途を慎重に設計することが求められます。

 

補助金受給権ファクタリングの流れのポイント
  • 前提として「採択・交付決定」が出ていることが多く、交付決定額の範囲で資金調達する
  • 補助事業の実施・実績報告・補助金の入金までのスケジュールをもとに返済計画を立てる
  • 補助金の要綱・公募要領で、受給権の取扱いや担保設定の可否を必ず確認する
  • 減額・不交付の可能性も踏まえ、利用額は必要最小限にとどめる発想が重要

 

対象となる補助金・電子記録債権

補助金ファクタリングや補助金対応POファイナンスの対象となるのは、「支払元(補助金の交付主体)の信用力が高く、交付決定額や支払条件が明確な補助金」です。

代表的な例としては、国の中小企業向け補助金(ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金など)や、類似の仕組みを持つ自治体補助金が挙げられますが、どの補助金が対象となるかはサービスごとに異なります。

 

一部のサービスでは、「補助金交付決定金額を額面とする電子記録債権」を発生させ、その電子記録債権を担保として金融機関からつなぎ融資を受けるPOファイナンス型の仕組みが採用されています。

電子記録債権は、電子記録債権法に基づいて電子債権記録機関に記録される金銭債権であり、紙の手形・売掛金などと同様に譲渡・担保として利用できる決済・資金調達手段の一つです。

 

補助金の交付決定額を電子記録債権化しておき、補助事業完了後に実際の補助金入金を通じてその電子記録債権を決済・消滅させることで、自動的に融資の返済に充てる、といった構造が用いられています。

電子記録債権を利用するメリットは、①権利関係や担保関係を電子的に明確に記録できること、②紙の手形のような紛失・盗難リスクが低いこと、③分割や譲渡が制度上整理されていることなどです。

 

一方で、電子記録債権化やPOファイナンスの利用には、指定の電子債権記録機関・金融機関との契約やシステム利用が必要であり、事前の手続きが求められます。

また、すべての補助金が電子記録債権化の対象となるわけではなく、対象補助金・対象事業者はサービスごとに条件が定められています。

 

対象補助金・電子記録債権まわりで確認したい点
  • 自社が利用する予定の補助金が、そのサービスの対象補助金に含まれているか
  • 交付決定額を電子記録債権化する場合の手続き(必要書類・期間・費用)が整理されているか
  • 電子記録債権を担保に融資・ファクタリングを行う際の返済・決済の流れが明確か
  • 補助金要綱上、受給権の譲渡や担保提供に関する制限がないかを事前に確認しているか

 

補助金事業での資金繰り活用方法

補助金を活用した設備投資やIT導入、販路開拓は、中小企業の成長に有効ですが、「補助金は後払い」という点から、事業期間中の資金繰りが課題になりやすいです。

実務では、自己資金・銀行融資・リース・ファクタリングなどを組み合わせ、「いつ・どのタイミングで・いくら資金が出入りするか」を資金繰り表で可視化しておくことが重要です。

 

特に、補助金ファクタリングを利用する場合は、交付決定の前後、実績報告の時期、補助金入金予定日を軸に、他の資金調達手段との役割分担を整理しておく必要があります。

一般的な補助金は、採択後に交付決定が行われ、事業期間中に発生した対象経費を実施・支払い、期間終了後に実績報告書や証憑を提出し、審査を経て補助金が支払われます。

 

この流れを前提にすると、「①申請〜採択前」「②採択〜交付決定後」「③事業実施〜実績報告〜入金」の各フェーズで必要な資金と調達手段が異なります。

ファクタリングは主に②〜③の間、すなわち「補助事業の実施に必要な資金を先に確保したい」「補助金入金までのギャップを埋めたい」という場面で位置付けられます。

 

フェーズ 資金繰り上のポイント
申請〜採択前 採択の有無が不透明なため、大きな支出は通常控え、自己資金・既存枠の範囲で準備
採択〜交付決定後 事業内容・予算枠が固まり、事業開始に合わせて運転資金・自己負担分の手当てを検討
事業実施〜実績報告〜入金 仕入・外注費・人件費の支払いが先行し、補助金入金までのギャップをファクタリング等で補う余地がある

 

採択決定前後の資金計画パターン

補助金事業で資金繰りを検討する際は、「採択前」と「採択後(交付決定後)」で考え方を分けると整理しやすくなります。

採択前は、補助金の採否が不明なため、多額の発注や支出は行わず、採択された場合の事業計画・資金計画をシミュレーションする段階にとどめるのが一般的です。

 

この段階では、自己資金の目安、既存の融資枠や信用保証付き融資の可能性、売掛金ファクタリングを含む他の資金調達手段の候補を整理しておきます。

採択・交付決定後は、補助金の上限額や補助率が確定し、対象経費の範囲・期間も明示されます。

 

このフェーズでは、①事業期間中に発生する支出(設備、システム、外注、広告、人件費など)を時系列で並べる、②補助金の精算払い時期を見込み、③その間の運転資金をどのように賄うかを決める、というステップで資金計画を組み立てます。

ファクタリングやPOファイナンスを組み込む場合は、補助金の交付決定額を前提に、「どの時点で・いくら前倒しするか」を具体的に決めることが重要です。

 

例えば、総事業費1,500万円、補助率2/3、補助金上限1,000万円というケースでは、残り500万円は自己負担となります。

事業期間中に、①自己資金で300万円、②銀行融資で200万円、③補助金ファクタリングで一部繰り上げ資金を確保する、といった組合せが考えられます。

この際、「補助金の減額リスク」を踏まえ、ファクタリングやつなぎ融資で前倒しする金額は、交付決定額の一定割合にとどめるなど、余裕を持った設計が望ましいです。

 

採択決定前後の資金計画で意識したいパターン
  • 採択前は支出を抑えつつ、採択された場合の自己資金・融資・ファクタリングの候補をシミュレーションする
  • 採択・交付決定後は、事業期間中の支出と補助金入金時期を資金繰り表で可視化する
  • 補助金ファクタリングを使う場合は、交付決定額や事務局スケジュールを前提に前倒し額を決める
  • 減額・不交付の可能性を踏まえ、前倒し資金は「必要最小限+安全マージン」を意識する

 

自己資金要件とファクタリングの組合せ

多くの補助金では、「補助率」が1/2や2/3などに設定されており、残りの1/2や1/3は事業者の自己負担(自己資金または融資等)となります。

この自己負担部分をどのように用意するかが、補助金事業の実現可能性を左右するポイントです。

 

自己資金だけで全額をまかなえない場合、銀行融資や信用保証付き融資、リース、売掛金ファクタリングなどを組み合わせて、事業全体の資金調達構成を組み立てる必要があります。

補助金ファクタリングを組み込む場合の考え方としては、「補助金部分の一部を前倒しして、自己負担分にも一部充てる」「売掛金ファクタリングで日常の運転資金を確保し、浮いた資金を補助事業に回す」といったパターンが考えられます。

いずれにしても、補助金は事業完了後の精算払いであり、減額・不支給の可能性もあるため、「自己資金要件をすべて外部資金で埋める」前提にはしない方が安全です。

 

例えば、総事業費900万円、補助率2/3(補助金600万円、自己負担300万円)のケースで考えます。

自己資金150万円、銀行融資150万円が確保できている場合、補助金ファクタリングを組み込むとすれば、「交付決定額600万円のうち、最大○%(例:50〜70%)を上限として前倒し」「前倒しした資金は、補助事業に必要な支払や自己負担分の一部に充当」といった枠組みになります。

 

同時に、売掛金ファクタリングを活用して日常の運転資金を確保し、補助事業に伴う一時的な資金負担が本業の資金繰りを圧迫しないように調整することも一案です。

このとき重要なのは、①補助金の要綱・公募要領上、自己負担分の調達方法に制限がないか、②補助事業の支出が補助対象経費の範囲内に収まっているか、③ファクタリングにかかる手数料や利息相当の負担も含めて、事業全体の採算が確保できるか、という3点です。

補助金は返済不要で魅力的ですが、手数料等を含めた総コストを踏まえ、「補助金+ファクタリング+融資」の組合せが本当に自社の資金力に見合っているかを客観的に確認する必要があります。

 

自己資金要件とファクタリングを組み合わせる際の注意点
  • 補助率(1/2・2/3など)と自己負担額を金額ベースで算出し、確保手段を具体的に決めておく
  • 補助金ファクタリングは「自己負担をすべて置き換える手段」ではなく、不足分を補う位置付けで考える
  • 売掛金ファクタリングを併用する場合は、本業の運転資金とのバランスを崩さないよう資金繰り表で管理する
  • 補助金要綱・公募要領で、自己負担分の資金調達方法に関する制限や留意事項を必ず確認する

 

銀行融資と補助金・ファクタリング比較

銀行融資・補助金(助成金を含む)・ファクタリングは、いずれも中小企業の資金調達手段ですが、「資金の性質」「返済の要否」「審査の基準」「入金タイミング」がそれぞれ異なります。

中小企業白書などでは、資金調達の代表例として「融資」「出資」「補助金・助成金」が挙げられ、これらを組み合わせて事業段階に応じた資金調達を行うことが重要とされています。

 

一方、金融庁はファクタリングを「事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス」であり、法的には債権の売買(債権譲渡)であって融資ではないと整理しています。

銀行融資は、金融機関から借入金として資金を受け取り、元金と利息を約定に基づいて返済していく仕組みです。

 

貸借対照表上は「負債」として計上され、返済能力・担保・保証・事業計画・税金の納付状況などを総合的に審査されます。

補助金は、政策目的に沿った取組に対して、国や自治体が事業費の一部を返済不要で給付する制度であり、公募・審査・採択を経て、事業実施後に実績報告と精算払いが行われるのが一般的です。

 

ファクタリングは、既に発生した売掛債権や補助金の受給権等を対象として、それを期日前に買い取ってもらうことで現金を前倒しで受け取る仕組みです。

融資と異なり「債権の売買」であるため、決算上は売掛金の減少と現金の増加として処理されるのが基本で、貸借対照表上の借入金を増やさずに資金化できる点が特徴です。

 

項目 銀行融資 補助金・ファクタリング
資金の性質 借入金(元金・利息の返済が必要) 補助金:給付金(原則返済不要)/ファクタリング:売掛債権等の売買
審査の基準 決算内容、返済能力、担保・保証など 補助金:公募要件と事業計画/ファクタリング:売掛先等の信用力・債権内容
入金までのタイミング 契約締結後、融資実行日 補助金:事業完了・実績報告後/ファクタリング:対象債権の期日前
主な用途 長期運転資金・設備資金など 補助金:設備・IT・販路開拓等の投資/ファクタリング:運転資金の前倒し確保

 

3つの手段を比較するときの着眼点
  • 「借入」「給付」「債権売買」という法的な性質の違い
  • 返済の有無と、決算・財務指標に与える影響
  • 入金までの期間と、資金繰り上の役割(長期・中期・短期)
  • 審査主体(金融機関/公的機関/ファクタリング会社)と審査ポイント

 

融資・補助金・ファクタリングの違い

融資・補助金・ファクタリングの違いを整理すると、「資金の出どころ」と「返済義務」、「目的と使い方」が明確に分かれます。融資は、金融機関等から借りる資金であり、元本と利息を返済する義務があります。

中小企業向けには、日本政策金融公庫や信用保証付き融資など、目的別の融資制度が用意されており、複数の融資制度の組合せも可能とされています。

 

補助金・助成金は、国や自治体などが実施する公的支援で、返済不要の資金ですが、必ず採択されるわけではなく、公募・審査を経て採択された事業のみが対象となります。

日本政策金融公庫の解説では、融資とは異なり返済不要である一方、採択や報告義務など独自のルールがある点が整理されています。

 

また、中小企業庁の資料では、補助金は設備投資やIT導入、生産性向上など特定の政策目的に沿った事業を対象とし、補助率・上限額・対象経費があらかじめ定められていることが示されています。

ファクタリングは、事業者が保有する売掛債権等を期日前に一定の手数料で買い取るサービスであり、法的には債権譲渡による売買契約と整理されています。

 

融資とは異なり、貸金業法上の金利規制は直接適用されませんが(リコース型など例外あり)、売掛債権の内容・売掛先の信用力・取引条件などに応じて手数料率が決まります。

補助金ファクタリングやPOファイナンスの場合は、補助金の交付決定額や支払スケジュールを前提として、将来の補助金入金を原資に資金を受け取る点が特徴です。

 

  • 融資:長期的な資金需要(設備・運転資金)に対応し、返済を通じて信用実績を積み上げる手段
  • 補助金:中長期の設備投資・IT導入・販路開拓など、政策目的に沿う投資を後押しする給付
  • ファクタリング:既に発生した売掛金や補助金受給見込みを前倒しで資金化する短期資金の手段

 

3つの違いを整理する際のポイント
  • 「誰から」「どのような契約に基づき」資金を受け取るのかを区別する
  • 返済義務の有無だけでなく、審査・報告・書類作成などの事務負担も含めて比較する
  • 投資(補助金)、長期資金(融資)、短期資金(ファクタリング)という役割の違いを意識する
  • 1つに偏らず、事業計画に合わせて複数手段を組み合わせる前提で考える

 

中小企業が検討したい組み合わせ

中小企業が現実的に検討したいのは、「融資+補助金+ファクタリング」を、事業の目的や時間軸に応じて組み合わせる発想です。

中小企業庁の資料では、成長段階に応じて、融資・出資・補助金・保証など複数の手段を使い分けることの重要性が指摘されています。

 

一方、日本政策金融公庫のQ&Aでも、複数の融資制度を組み合わせて利用できることが示されており、単一の手段に依存しない資金調達設計が前提となっています。

代表的な組み合わせのイメージは次のとおりです。

 

  • 設備投資・IT導入:補助金で一部をカバーし、不足分を銀行融資・リースで手当てする
  • 補助金事業のつなぎ資金:補助金入金までの期間を、銀行のつなぎ融資や補助金ファクタリングで補う
  • 日常の運転資金:売掛金ファクタリングや運転資金融資で平準化し、補助事業に伴う資金負担と切り分ける

 

例えば、生産設備更新とIT導入を伴う補助事業の場合、①補助金で対象経費の一部をカバー、②長期的な返済計画を前提に設備資金として銀行融資を利用、③補助金の交付決定後、必要に応じて補助金ファクタリングで一部を前倒しし、事業期間中の資金ギャップを埋める、といった組合せが考えられます。

ここで重要なのは、「どの手段を主役にし、どれを補助的に使うか」を明確にすることです。

 

また、ファクタリングを組み合わせる場合は、「日常の売掛金を対象とするか」「補助金受給権を対象とするか」で役割が異なります。

前者は主に日々の運転資金、後者は補助事業に伴うつなぎ資金という位置づけになりやすいため、資金繰り表上で別枠として管理することが望ましいです。

補助金の採択・交付決定が見込まれる場合には、申請書の作成段階から金融機関や専門家に相談し、融資・保証・ファクタリングを含めた「事業全体の資金計画」として設計しておくと、採択後の資金手当てもスムーズになります。

 

中小企業が組み合わせを考えるときの実務ポイント
  • 補助金は「投資の後押し」、融資は「長期資金」、ファクタリングは「短期のつなぎ」と役割を分けて考える
  • 資金繰り表で、設備投資・補助事業・日常運転資金を別レーンとして管理する
  • 補助金申請の段階で、金融機関・専門家と相談し、採択後のつなぎ資金も含めた計画を作る
  • いずれの手段も「使えるだけ使う」ではなく、自社の返済能力・キャッシュフローに見合う範囲で組み合わせる

 

補助金と併用する際の注意点

補助金とファクタリングを併用する場合は、「補助金のルール」と「資金調達スキーム」の両方を満たしているかを整理しておくことが重要です。

補助金は、公募要領や交付要綱で、対象経費・対象期間・証憑(請求書・領収書・契約書など)の取り扱い、権利の譲渡可否、他制度との重複受給の禁止など、細かな条件が定められています。

 

一方で、ファクタリングは売掛債権や補助金受給権をもとに資金を前倒しする取引であるため、「補助金の交付要件を損なわない形で利用しているか」を事前に確認する必要があります。

特に注意したいのは、①補助事業と関係のない経費への流用と誤解されないか、②他の補助金・助成金・給付金との「二重取り」になっていないか、③補助金受給権の譲渡や担保提供について、要綱上の制限がないか、の3点です。

また、補助金は実績報告や検査の結果によって減額・不交付となることがあり、補助金を原資としたファクタリングやつなぎ融資を利用する場合は、そのリスクも踏まえた利用額の設定が求められます。

 

【補助金とファクタリング併用時に整理しておきたいポイント】

  • 補助金の公募要領・交付要綱で「権利の譲渡・担保」「資金使途」「他制度との併用」の条件を必ず確認する
  • 補助金入金前に必要となる運転資金・自己負担分の金額と時期を、資金繰り表で可視化しておく
  • 補助金が減額・不交付となった場合の影響(返済原資・自己資金への負担)を事前に試算しておく
  • ファクタリングは「補助金を使いやすくするための補助的な手段」と位置付け、使い過ぎを避ける

 

補助金要件違反を避けるチェック事項

補助金とファクタリングを組み合わせる際にもっとも避けたいのは、「補助金要件違反」とみなされ、交付額の減額や返還が生じるケースです。

補助金の公募要領や交付要綱では、補助対象経費・対象期間・自己負担分の扱い・他の公的支援との併用可否・権利の譲渡や担保提供などが詳細に定められています。

 

ファクタリングの対象を「補助金受給権」とする場合は、これらの条件と整合しているかを丁寧に確認する必要があります。

まず確認したいのは、「対象経費」と「資金使途」です。補助金は、対象経費の範囲と期間が明確に決められており、その範囲外への支出は補助対象になりません。

 

ファクタリングで調達した資金自体は自由に使える資金ですが、補助事業に関連する支払いに充てた部分と、それ以外の支払いを区分しておくと、後の実績報告や確認がスムーズになります。

また、他の補助金・助成金・給付金が同じ経費を対象としている場合は、「重複して補助を受けていないか(いわゆる二重取り)」をチェックしておくことが大切です。

 

次に、「権利の譲渡・担保提供」に関する規定です。補助金によっては、交付の権利を第三者に譲渡したり、担保に提供することを制限・禁止している場合があります。

補助金受給権を対象としたファクタリングやPOファイナンスを利用する際は、事前に事務局・補助金窓口へ相談し、必要に応じて同意や所定の手続きを行うことが求められます。

 

補助金要件違反を避けるためのチェック項目
  • 公募要領・交付要綱で「二重受給・他制度との併用」「権利の譲渡・担保提供」に関する規定を確認したか
  • 補助対象経費とそれ以外の支出を区分し、帳簿や証憑を分かりやすく整理しているか
  • 補助金受給権を対象にファクタリング等を利用する場合、事務局への事前相談や必要手続きを済ませているか
  • 減額・返還となった場合の影響と、その際の返済原資をあらかじめ検討しているか

 

手数料・スケジュール確認の実務ポイント

補助金とファクタリングを併用する場合、資金調達コストとスケジュールを事前に具体的な数字で確認しておくことが実務上の重要ポイントです。

補助金は、交付決定から事業実施・実績報告・審査を経て入金されるまでに一定の期間がかかります。

 

一方、ファクタリングは比較的早く資金化できますが、手数料や各種費用が発生します。「どのタイミングで、いくらを、何日分前倒しするのか」を決めたうえで、実質的な負担を把握しておくことが必要です。

例えば、補助金交付決定額が600万円、補助事業完了から補助金入金まで6か月見込まれるケースを考えます。

 

補助金ファクタリングで交付決定額のうち300万円を前倒しし、手数料率が5%の場合、手数料は15万円となります。

このとき、300万円を6か月間前倒しで利用するイメージとなるため、「15万円を300万円に対して6か月で支払うコスト」として、他のつなぎ融資や売掛金ファクタリングとの比較を行うと判断しやすくなります。

 

また、スケジュール面では、①補助事業の実施期間、②実績報告の提出期限、③補助金入金の見込み時期、④ファクタリングの審査・契約・入金までの期間、⑤返済・精算時期を一覧化しておくことが重要です。

これにより、「補助金入金より先にファクタリングの返済期限が来てしまう」といったミスマッチを防ぐことができます。

手数料以外にも、契約書に記載された事務手数料・登記費用・解約時の費用など、総コストを確認しておくと、補助金によるメリットとのバランスを客観的に評価しやすくなります。

 

手数料・スケジュール確認の実務ポイント
  • 「前倒し額」「前倒し期間」「手数料率」から、実質的な資金コストを概算しておく
  • 補助事業期間・実績報告期限・補助金入金予定日と、ファクタリングの入金・返済スケジュールを並べて確認する
  • 手数料率だけでなく、事務手数料・登記費用・解約時の費用などを含めた総コストを把握する
  • 他のつなぎ融資や売掛金ファクタリングとの条件も比較し、自社にとって合理的な組み合わせかを検討する

 

まとめ

ファクタリングは将来の売掛金を前倒しで資金化する手段、補助金は採択・実績報告後に支給される返済不要の資金というように、役割と入金タイミングが異なります。

両者の仕組みと、補助金受給権を対象としたファクタリングの流れ、自己資金要件を補う活用パターン、銀行融資との違い・組み合わせ方を理解しておくことで、自社の計画に合った資金調達設計がしやすくなります。

併用時は、補助金要件と手数料・スケジュールを事前に確認することが重要です。