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ファクタリングとPOファイナンスの違いは?受注前後の資金調達スキームを徹底比較

受注は取れたのに、仕入や外注費を払う資金が足りない――そんなときに検討されるのが「ファクタリング」と「POファイナンス」です。どちらも銀行融資とは異なるスキームで資金を前倒しできますが、対象となる債権(請求書/注文書)、資金調達のタイミング、コスト・リスクの構造が大きく異なります。この記事では、両者の仕組みと違い、売掛債権担保融資やでんさいとの比較、中小企業が活用しやすい場面、安全な導入ステップまでを整理し、自社に合う資金調達の選択肢を見極められるよう解説します。

 

ファクタリングとPOファイナンス基礎

ファクタリングとPOファイナンス(Purchase Order Finance/注文書ファイナンス)は、どちらも銀行融資とは別の枠で資金を前倒しする手法ですが、「どの時点の何を対象にするか」が大きく異なります。

ファクタリングは、納品・検収が終わって請求書が発行された後に発生する売掛債権(請求書)の譲渡・買取を通じて資金化するスキームです。

 

一方、POファイナンスは、発注書(Purchase Order:注文書)をもとに「これから発生する売上・売掛金」を見込んで、仕入や外注費などのプロジェクトコストを先に調達するスキームです。

受注産業では「受注→仕入・外注→納品→請求→入金」という流れが一般的なため、キャッシュは後ろ(請求〜入金)に偏りがちです。

 

このギャップを埋めるのがPOファイナンスとファクタリングの役割であり、前者は受注〜生産段階、後者は請求〜入金段階にそれぞれ対応します。

違いを整理しておくことで、「今の課題はどの段階の資金不足か」「どのスキームを組み合わせるべきか」を判断しやすくなります。

 

項目 内容
ファクタリング 納品・検収完了後に発生した売掛債権(請求書)を譲渡・買取して資金化。
POファイナンス 信用力ある発注者からの注文書をもとに、仕入・外注費などプロジェクト資金を調達。
主な目的 売掛回収サイトの短縮/受注〜納品までの運転資金の前倒し。

 

ファクタリングの仕組みと対象債権

ファクタリングは、企業が保有する売掛債権(掛取引で発生した請求書)をファクタリング会社に譲渡し、その対価として請求書額面から手数料を差し引いた金額を受け取る取引です。

請求書額に対して実際に支払われる割合を買取率と呼び、手数料率(○%)とセットで語られます。

 

2社間ファクタリングでは、利用者(売掛債権を持つ会社)とファクタリング会社の2者が契約当事者となり、売掛先には通知しない形が一般的です。

3社間ファクタリングでは、売掛先を含む3者契約とし、売掛先からファクタリング会社に直接支払いが行われます。

 

対象となるのは、すでに納品・役務提供が完了し、請求書が発行されている売掛債権です。

通常、売掛先が法人・官公庁など一定の信用力を持つこと、取引実態が契約書や注文書・納品書で裏付けられること、支払期日までの期間や取引継続実績が一定以上あることなどが審査のポイントになります。

 

ファクタリングの基本ポイント
  • 対象は「発生済みの売掛債権(請求書)」であること
  • 納品・検収が完了していることを示す資料(契約書・納品書等)が重要
  • 2社間/3社間の違いで、手数料水準や売掛先への通知有無が変わる

 

POファイナンスの基本構造

POファイナンス(Purchase Order Finance)は、発注者からの注文書をもとに、プロジェクト開始前〜進行中の段階で必要な資金を調達する手法です。

ここでいう注文書(Purchase Order)は、「誰が・何を・いくらで・いつまでに」発注するかを明記した書面であり、発注者側の支払意思・支払義務が一定程度示されていることから、「将来の売上・売掛金の根拠」として扱われます。

典型的なスキームは、次のような流れです。

 

  • 発注者が利用企業に対して注文書を発行(受注)
  • 利用企業がPOファイナンス会社に資金調達を申込(注文書・見積書・仕入先情報等を提出)
  • POファイナンス会社が、仕入先への支払い・前払いや利用企業への資金供給を行う
  • 利用企業が製造・施工・納品を行い、発注者から最終的な代金を受け取る
  • 発注者からの入金の一部または全部を使って、POファイナンス会社に返済・精算する

 

このように、POファイナンスは「売掛債権そのもの」ではなく、「将来の売掛債権発生が見込まれる注文書」を根拠にした資金調達であり、一般的なファクタリングよりも一歩早いタイミングで資金を得られることが特徴です。

その分、案件ごとのリスク(キャンセル・遅延・仕様変更など)を慎重に見る必要があり、発注者の信用力や案件内容の審査が重視されます。

 

POファイナンスの押さえどころ
  • 対象は「受注時点の注文書」であり、まだ売掛金は発生していない
  • 発注者の信用力や案件の実現可能性が審査の中心になる
  • 調達した資金は、仕入・外注費・人件費などプロジェクトコストに充てる前提

 

請求書ファクタリングと注文書ファイナンスの違い

請求書ファクタリングと注文書ファイナンス(POファイナンス)は、似たような用語で語られますが、「対象となる書類」と「リスクの位置」が違います。

請求書ファクタリングは、すでに完了した取引に基づく請求書(売掛債権)を対象とし、「回収リスク(売掛先の支払能力・支払意思)」に焦点を当てます。

 

一方、注文書ファイナンスは、まだ完了していない取引の注文書を対象とし、「案件の履行リスク(自社の遂行能力)+発注者の支払リスク」に焦点を当てます。

そのため、同じ1,000万円の案件でも、

 

  • 請求書ファクタリング:納品・検収完了後の請求書1,000万円を90%で買取→900万円入金
  • 注文書ファイナンス:受注時点の注文書1,000万円をもとに、仕入・外注費500万円のうち◯%を融資または立替

 

といった形で、「必要なタイミング」と「必要な金額」が変わります。前者は売掛金の回収サイト短縮が目的、後者はプロジェクト着手資金の確保が目的と整理すると分かりやすくなります。

 

請求書 vs 注文書ファイナンスの比較視点
  • 請求書ファクタリング=完了した取引の売掛債権の資金化
  • 注文書ファイナンス=これから実行する取引のための調達
  • 回収リスクだけでなく、案件遂行リスクも見るのがPOファイナンス

 

建設・製造など受注産業での活用イメージ

建設業・製造業・システム開発会社など、受注産業では「受注から入金までの期間が長い」「材料費・外注費・人件費が先行する」という構造的な課題があります。

たとえば建設工事では、発注時に注文書が発行されても、実際の請求は出来高払い・引渡し時の一括などに分かれ、入金まで数か月〜1年以上かかることもあります。

 

この間、現場人件費・材料費・協力会社への支払いは先に発生するため、大型案件を取れば取るほど手元資金が苦しくなる「受注貧乏」に陥りやすくなります。

POファイナンスは、こうした業種で「受注直後〜工事・製造の初期段階」に必要な資金を手当てする役割を果たします。

一方、ファクタリングは、工事の完成・検収後に発生した請求書を資金化することで、「完成から入金までの待ち時間」を短縮する役割を果たします。両者を組み合わせることで、

 

  • 受注時:POファイナンスで材料費・外注費の一部を調達
  • 工事完了後:ファクタリングで請求書を資金化し、次の案件の着手資金に回す

 

といった、「前工程と後工程の両方をカバーした資金繰り設計」が可能になります。もちろん、どちらもコストがかかるため、「成長・拡大のために一時的に使うのか」「慢性的な資金不足を埋めるために常用するのか」を見極めることが重要です。

 

受注産業で検討するときのポイント
  • 自社の受注〜請求〜入金までの平均期間を把握する
  • どの段階で資金ギャップが最も大きいか(受注時/工事中/完成後)を確認する
  • POファイナンスとファクタリングを「前後工程でどう組み合わせるか」を資金繰り表でシミュレーションする

 

資金調達タイミングとスキーム比較

ファクタリングとPOファイナンスを比較するうえで、最も重要なのが「資金調達のタイミング」です。

受注産業では、一般的に「見積り→受注(注文書)→仕入・外注→納品・検収→請求書発行→入金」という流れをたどりますが、売上として入金されるのは最後の段階です。

 

そのため、受注が増えるほど、受注〜納品の間の資金(材料費・外注費・人件費など)が不足しやすく、さらに納品後も入金サイトが長い場合は、請求〜入金の間にも資金ギャップが発生します。

POファイナンスは「受注〜仕入・外注」のフェーズで、ファクタリングは「請求〜入金」のフェーズで、それぞれ資金ギャップを埋める役割を持ちます。

 

加えて、売掛債権担保融資や電子記録債権(でんさい)を組み合わせることで、同じ売掛金をベースにしつつも、融資・割引・譲渡といった複数のスキームを選択できます。

タイミングとスキームの組み合わせを俯瞰しておくと、自社の資金繰り課題に対して、どこをどの手段でカバーすべきかが見えやすくなります。

 

ステージ 主な資金需要とスキーム例
受注時点 仕入・外注・人件費の先行。POファイナンス、運転資金融資など。
納品〜請求 出来高に応じた資金需要。場合によっては分割請求・前受金の交渉。
請求〜入金 売掛金の回収までのギャップ。ファクタリング、売掛債権担保融資、でんさい割引など。

 

受注時点と納品後のキャッシュフロー

受注産業のキャッシュフローは、「受注時点」と「納品後」で性格が大きく異なります。受注時点では、まだ売上は計上されませんが、今後発生する大量の支出(材料費・外注費・人件費など)がほぼ確定している段階です。

一方、納品後は、売掛金として売上が計上されているものの、実際の入金まで時間がかかる段階といえます。

 

この二つの局面を混同せず、それぞれに合った資金調達手段を当てはめるのが重要です。

キャッシュフローを時間軸で見ると、次のようなイメージになります。

 

  • 受注時点:将来の売上は見込めるが、まだ売掛金は発生していない
  • 施工・製造期間:仕入・外注費・人件費が継続的に発生し、キャッシュアウトが先行する
  • 納品・検収後:売掛金が発生し、請求書発行。入金までのサイト分だけキャッシュギャップが残る
  • 入金:売掛金が現金化され、ようやく利益とキャッシュが確定する

 

タイミング別に押さえたい視点
  • 受注時点:プロジェクト全体で「いくら先行投資が必要か」を見積もる
  • 施工中:月ごとのキャッシュアウトと、受注残高・進捗を紐付けて管理する
  • 納品後:売掛残高と入金予定をもとに、ファクタリングや債権担保融資の必要性を検討する

 

POファイナンスとファクタリングの資金調達フロー

POファイナンスとファクタリングの違いを、資金調達フローで比較するとイメージしやすくなります。

POファイナンスは「受注したが、仕入資金が不足している」局面をカバーし、ファクタリングは「納品・請求は終わったが、入金までのサイトが長い」局面をカバーします。

典型的なフローは次のようになります。

 

  • ①発注者→自社:注文書発行(受注)
  • ②自社→POファイナンス会社:注文書・見積書等を提出し、仕入・外注費の資金を調達
  • ③自社→仕入先・協力会社:調達した資金で材料費・外注費を支払う
  • ④自社→発注者:製造・施工・納品・検収
  • ⑤自社→発注者:請求書発行、売掛金が発生
  • ⑥自社→ファクタリング会社:売掛金をファクタリングで資金化(必要に応じて)
  • ⑦発注者→自社またはファクタリング会社:売掛金の入金→POファイナンス会社・ファクタリング会社への精算

 

POファイナンス会社とファクタリング会社が別の場合もあれば、一体型サービスとして提供される場合もあります。

どちらにせよ、「同じ売上をベースに複数のスキームが関わる」ことになるため、二重で資金化しないようにフローと契約条件を整理することが重要です。

 

資金調達フロー設計のポイント
  • 同一案件について、どの時点で、どのスキームから資金を出してもらうかを事前に設計する
  • POファイナンスとファクタリングの精算順序や優先順位を契約書で確認する
  • 資金繰り表上で「入金→返済→残るキャッシュ」の流れを案件ごとにシミュレーションする

 

売掛債権担保融資との違い

売掛債権担保融資(売掛債権を担保にした融資、ABLの一種)は、売掛金を担保に金融機関から融資を受けるスキームです。ファクタリングと異なり、売掛債権は譲渡されず、あくまで自社の財産として貸借対照表に残り続けます。

その代わり、金融機関に担保権が設定され、売掛金回収が遅れた場合には、融資返済との関係が問題になります。

 

主な違いを整理すると、次のとおりです。

項目 ファクタリング 売掛債権担保融資
法的性質 売掛債権の売買(譲渡)が基本。買取型の場合は売掛金をオフバランス処理(貸借対照表から外す)するケースが多いが、償還請求権の有無や会計基準・契約内容によっては売掛金が残り、短期借入金などとして負債計上される場合もある。 融資(貸付)。売掛金は自社に残り、譲渡担保等の形で担保として差し入れる。
返済義務 原則ノンリコースなら返済義務は限定的(契約により異なる)。 元本・利息を返済する義務があり、延滞すると信用情報にも影響。
資金調達主体 ファクタリング会社などノンバンクが中心。 銀行等の金融機関が中心。

 

売掛債権担保融資は、銀行との継続的な取引を前提に、「売掛債権の範囲内で運転資金枠を設定する」といった使い方が多くなります。

一方、ファクタリングは、個別の請求書単位で資金化しやすい反面、手数料が高くなる傾向があります。

POファイナンスはさらに一歩前の「注文書」をベースにするため、売掛債権担保融資とは対象となるタイミングが異なります。

 

どのスキームを優先するか考える視点
  • 長期的には銀行との関係を活かした売掛債権担保融資・運転資金融資をベースにする
  • 急ぎの案件や銀行枠の外側は、ファクタリングやPOファイナンスで補う
  • 同じ売掛金に対し、重複してスキームを使わないよう管理する

 

電子記録債権・でんさいを使うケース

電子記録債権(でんさい)は、手形・売掛金に代わる支払手段として整備された「電子的な金銭債権」です。

でんさいネットなどの電子記録機関に記録されることで、譲渡・割引・担保設定が効率的に行える点が特徴です。

 

従来の手形割引と同様に、でんさいを銀行で割引して資金調達したり、担保として提供して融資を受けたりすることができます。

POファイナンス・ファクタリングとの関係で見ると、でんさいは主に「請求〜入金」のフェーズで活用されます。発注者と合意のうえで支払手段をでんさいに切り替えてもらえば、

 

  • 自社:でんさいとして受け取る(電子記録債権を保有)
  • その後:でんさい割引(銀行やノンバンク)で資金化する
  • 最終的に:支払期日に発注者からでんさいの支払いが行われる

 

といったフローが可能になります。紙の手形に比べて管理コストが下がり、紛失リスクも小さいため、一定規模以上の取引では採用が進んでいます。

 

でんさいを検討する際のポイント
  • 発注者側がでんさいに対応しているか(システム・運用面)を確認する
  • でんさい割引の金利・手数料と、ファクタリングのコストを比較する
  • POファイナンス→納品→でんさい受取→割引という一連のフローを資金繰り表で試算する

 

このように、POファイナンス・ファクタリング・売掛債権担保融資・でんさい割引は、それぞれ対象となるタイミングや法的性質が異なります。

自社のキャッシュフローに合わせて「どの局面でどのスキームを使うか」を設計することが、安全かつ効率的な資金調達につながります。

 

コスト・審査・リスクの比較

ファクタリングとPOファイナンス、さらに売掛債権担保融資などを比較する際は、「いくら調達できるか」だけでなく、「実質コスト」「審査で何が見られるか」「倒産・キャンセル時に誰がどこまで責任を負うか」を整理しておくことが重要です。

ファクタリングは請求書発行後の短期資金で手数料率は高め、POファイナンスは受注時の資金で案件リスクも見る分、案件ごとの手間が大きくなります。

 

売掛債権担保融資は金利水準は比較的低いものの、返済義務があり、銀行との関係・財務内容が重視されます。

これらの違いを意識していないと、「一見安く見えるが実は高コスト」「審査に通りやすいと思ったが、発注者の協力が前提だった」といったギャップが生じがちです。

各スキームの特徴を俯瞰しておくことで、自社の課題(受注時の資金不足か、請求後のサイトギャップか)に対して、どの手段を優先すべきか判断しやすくなります。

 

スキーム コスト・審査・リスクの特徴
ファクタリング 請求書ベース。手数料高めだがスピード重視。売掛先の信用・取引実績が審査の中心。
POファイナンス 注文書ベース。案件リスクも見るため審査はやや重め。仕入・外注費を先に調達。
売掛債権担保融資 金利水準は比較的低いが返済義務あり。銀行との関係・財務内容が重要。

 

金利・手数料と実質コストの違い

ファクタリングとPOファイナンスでは、「金利」ではなく「手数料率」で表示されることが多く、売掛債権担保融資や通常の融資は「年◯%」の金利で表示されるのが一般的です。

ここで注意したいのは、「表示方法が違うだけで、最終的には実質コスト(実質年率)で比較する必要がある」という点です。

例えば、請求書ファクタリングで手数料5%・サイト60日という条件の場合、ざっくりと年率換算すると、

 

  • 請求書額:1,000万円
  • 手数料:50万円(5%)
  • 利用期間:60日
  • 実質年率のイメージ:50万円 ÷ 1,000万円 ×(365日 ÷ 60日)≒ 約30%

 

となり、表面上の「5%」だけを見ると割安に見えても、期間を踏まえて考えると高い資金コストになり得ることが分かります。

POファイナンスも、案件期間(受注〜入金までの期間)に対する手数料を年率換算してみると、通常融資と比べてどの程度の差があるかイメージしやすくなります。

 

実質コストを比較する際の注意点
  • 手数料率(%)だけでなく、「対象期間」と「実質年率」の概算を必ず確認する
  • 融資(年率表示)とファクタリング(手数料表示)を同一の尺度で比較する
  • 複数の案件・複数回の利用を合算した年間手数料総額も把握しておく

 

審査対象(発注者・受注者・案件)の比較

審査で何を見られるかも、スキームによって大きく異なります。ファクタリングでは、基本的に「売掛先の信用力」と「売掛債権の内容」が重視されます。

利用企業(受注者)の決算内容も見られますが、「売掛先がどのような会社か」「取引実績はどの程度あるか」「請求内容と契約・納品が整合しているか」が中心です。

 

POファイナンスでは、これに加えて、案件そのものの内容(利益率・期間・技術的な難易度)や、自社の遂行能力(過去の類似案件実績、体制)が審査対象になります。

また、発注者が信用力の高い大企業・官公庁であるか、中小企業であるかによっても評価が変わります。

売掛債権担保融資では、主に自社全体の財務内容・売掛金の質・取引先構成などが重視され、銀行との取引履歴やグループ全体の関係性も加味されます。

 

審査対象の違いを整理するポイント
  • ファクタリング:売掛先の信用・売掛債権の内容が中心(+自社の基礎的与信)
  • POファイナンス:発注者+案件内容+自社の遂行能力の三つを総合的に見る
  • 売掛債権担保融資:自社全体の財務体質・銀行との関係・売掛ポートフォリオ

 

発注企業の協力要否と導入ハードル

スキームによっては、発注企業(売掛先)の協力や合意が前提となる場合があります。

請求書ファクタリングの二社間型は、原則として売掛先への通知が不要で、自社とファクタリング会社の間で完結しますが、三社間型では売掛先にも債権譲渡の通知・承諾が行われ、売掛先がファクタリング会社へ直接支払うのが基本です。

 

売掛先がファクタリング利用に抵抗感を持っている場合、三社間型の導入ハードルは高くなります。

POファイナンスでは、注文書の内容確認や支払条件の確認、場合によっては発注企業からの同意書取得などが必要になることもあります。

 

発注企業側がPOファイナンスに慣れている業種(海外取引・大規模プロジェクトなど)では協力が得やすい一方、慣れていない業種では時間がかかったり、難色を示されたりすることもあります。

売掛債権担保融資では、売掛先に対する直接の手続きは不要なケースが多いものの、「将来的に銀行に債権を担保提供している」ことを踏まえた取引設計が求められます。

 

発注企業の協力が必要になるパターン
  • 三社間ファクタリング:売掛先への通知・承諾が前提
  • POファイナンス:注文書の真偽確認、支払条件確認、場合によっては同意書取得
  • 発注企業が社内規程上、債権譲渡・支払条件変更に慎重な場合、導入に時間を要する

 

倒産・キャンセル時のリスク分担

倒産やキャンセルが発生した場合のリスク分担は、スキーム選択における重要な論点です。

ファクタリングでは、「償還請求権あり(リコース)か、なし(ノンリコース)か」によって、売掛先の不払が発生したときの責任が変わります。

 

リコース型では、売掛先が破綻して入金がなくても、一定条件のもとで利用企業がファクタリング会社に対して支払い義務を負うのが一般的です。

一方、ノンリコース型では、売掛先の信用リスクは原則ファクタリング会社が負担しますが、その分手数料は高くなる傾向があります。

 

POファイナンスでは、案件キャンセル・発注者の倒産・仕様変更など「完了前のリスク」が大きく影響します。

例えば、受注後に発注者の経営状況が悪化して支払不能に陥った場合や、プロジェクト中断・縮小が決まった場合、POファイナンス会社への返済原資が減少し、自社の負担が増える可能性があります。

契約上、「発注者側の事情によるキャンセル時に誰がどこまで負担するか」「想定外コスト増が発生した場合の取り扱い」などがどう定められているかを事前に確認しておく必要があります。

 

リスク分担を確認する際のポイント
  • ファクタリング:償還請求権の有無と、その発動条件(どのような不払時に、どこまで負担するか)
  • POファイナンス:キャンセル・遅延・仕様変更時の費用負担や返済義務の扱い
  • 売掛債権担保融資:売掛回収が遅延・不能となった場合でも返済義務は続く点を踏まえる

 

このように、同じ「受注・売掛金をベースにした資金調達」でも、コストの構造、審査の着眼点、発注企業の関与、倒産・キャンセル時のリスク分担はスキームによって大きく異なります。

自社の業種・取引慣行・リスク許容度に応じて、どこまでのリスクを受け入れ、どの部分を外部に移転したいのかを考えながら選択していくことが重要です。

 

中小企業の活用場面と向き不向き

ファクタリングやPOファイナンスは、どの中小企業にも一律に向いているわけではなく、「受注の規模・利益率・成長ステージ・他の資金調達可能性」によって適否が変わります。

とくに、銀行融資の枠が十分にある企業と、すでに融資が難しい企業では、「どこまでコストを許容してよいか」「どの局面を外部資金で埋めるべきか」の判断が異なります。

大型受注時に一時的な資金ギャップを埋める用途としては有効でも、もともと利益が薄い取引や、恒常的な赤字を抱えた状態で常用すると、事業そのものの採算性をさらに悪化させるリスクがあります。

 

中小企業が活用場面を検討する際には、少なくとも次のような観点で整理しておくと判断しやすくなります。

観点 確認したいポイント
案件の性質 単発か継続か、利益率は十分か、大口か小口か
資金需要 受注時点か、施工中か、納品後か、どの段階で資金が足りないか
代替手段 銀行融資・保証付き融資・支払サイト交渉など、他に使える手段の有無
収益構造 成長局面の一時的な資金不足か、慢性的な赤字か

 

大型受注時の仕入・外注費の確保

中小企業がPOファイナンスやファクタリングを検討しやすい典型的な場面が、「大型受注を獲得したが、仕入や外注費を先に立てられない」というケースです。

たとえば、通常は月商1,000万円程度の会社が、単発で3,000万円の工事や大型ロットの受注を取った場合、材料費・協力会社への支払・一時的な人件費増などで、着工前〜工事中に必要な資金が一気に膨らみます。

 

このとき、自己資金と通常の銀行枠だけでは賄い切れず、受注機会を逃してしまうおそれがあります。

POファイナンスを利用すると、信用力の高い発注企業からの注文書を根拠に、仕入・外注費の一部を前倒しで調達できるため、「利益が見込める大型案件」を取りに行きやすくなります。

 

さらに、工事完了後や納品後には、請求書ファクタリングを併用することで、入金サイトを短縮し、次の案件の着手資金へつなげることも可能です。

ただし、このような使い方は「一時的な成長機会を取りに行く」局面に向いているのであって、「利益がほとんど出ない低採算案件」をこなすために利用すると、手数料負担の分だけ一層採算が悪化します。

 

大型受注に向くケースか確認するポイント
  • 受注案件の粗利額(円)で、手数料を十分に吸収できるか
  • 既存の銀行枠や社内留保だけでは、一時的資金需要を賄えないか
  • 今回の大型受注が、今後の継続案件や信頼向上につながるか

 

銀行融資NG企業での利用上の注意点

銀行融資が難しくなった企業にとって、ファクタリングやPOファイナンスは「最後の砦」に見えがちですが、ここで注意すべきは「コストと再建可能性のバランス」です。

銀行融資NGの背景には、多くの場合、複数期の赤字や債務超過、返済遅延などの問題があります。

 

この状態で高コストなスキームを繰り返し利用すると、短期的には資金ショートを回避できても、長期的には自己資本がさらに毀損し、再建の選択肢が狭まるリスクがあります。

銀行融資NG企業でこれらのスキームを使う場合、

 

  • 「この案件を取り込めば、損益・キャッシュフローがどの程度改善するか」を具体的に試算する
  • 手数料を支払ったうえでなお、税引前利益・キャッシュがプラスに転じるか確認する
  • ファクタリング依存を前提とした事業計画ではなく、将来的に銀行・公的融資へ戻す筋道を考えておく

 

ことが重要です。

 

銀行融資NGの状態で使うときのNGパターン
  • 赤字補填のために、毎月の運転資金をファクタリングで賄い続ける
  • 採算の薄い案件まで無批判に資金化し、利益がほとんど残らない
  • 再建計画やコスト削減策を伴わず、「とりあえず資金繰りだけ」を回そうとする

 

成長局面と自転車操業局面の見極め

同じ「資金が足りない」状況でも、それが成長局面による一時的な先行投資なのか、自転車操業の慢性状態なのかを見極めることが、スキーム選択の前提になります。

成長局面では、売上・粗利が伸びているものの、それに伴う在庫・売掛金・設備投資・採用コストが先行し、一時的にキャッシュが追いつかない状態が典型です。

 

この場合、POファイナンスやファクタリングを限定的に使いながら、将来的に内部留保を厚くしていく選択肢が現実的です。

一方、自転車操業局面では、売上は横ばいまたは減少傾向で、粗利率も低く、毎期の利益が出ていないか、わずかな黒字にとどまっていることが多くなります。

こうした状態でファクタリングを常用すると、「売掛金を前倒しで食いつぶしているだけ」になり、将来的な資金余力が失われていきます。

 

成長局面か自転車操業かを判定する簡易チェック
  • 直近2〜3期の売上・粗利・営業利益の推移は右肩上がりか
  • ファクタリング・POファイナンスを使わなくても黒字決算を維持できる見通しがあるか
  • 利用目的が「成長投資の前倒し」か「慢性的な赤字の穴埋め」かを自問してみる

 

他の調達手段との組み合わせ方

中小企業にとって理想的なのは、単一の手段に依存せず、複数の資金調達手段を組み合わせることです。具体的には、

 

  • 長期の設備投資や構造改革資金:銀行の長期融資・政府系金融機関の制度融資・リースなど
  • 平時の運転資金:運転資金融資・売掛債権担保融資・当座貸越枠など
  • 一時的な大型案件・急な受注増:POファイナンス・短期のファクタリングなど
  • 支払条件の調整:仕入先との支払サイト交渉・前受金・着手金の導入

 

といった役割分担をイメージすると、どこにファクタリングやPOファイナンスを位置づけるべきか見えてきます。

重要なのは、「高コストな手段ほど用途と期間を限定する」「低コストな手段をベースに、足りない部分だけを補う」という発想です。

 

組み合わせを考える際の実務ポイント
  • 資金繰り表に、各手段ごとの入出金タイミングとコストを反映させる
  • 銀行・専門家と相談し、将来的にどの比率までファクタリング・POファイナンスを減らすか目標を置く
  • 単一手段に依存せず、「最悪一つが止まっても致命傷にならない」構成を意識する

 

このように、中小企業にとってファクタリングやPOファイナンスは、「適切な場面で使えば成長を後押しするツール」である一方、「誤った場面で常用すると収益を圧迫するリスク要因」にもなり得ます。

自社のステージと案件の性質に合わせて、慎重に活用場面と向き不向きを見極めることが重要です。

 

安全な導入ステップと実務ポイント

ファクタリングやPOファイナンスを導入するときは、「個別案件の条件交渉」より先に、社内の書類・フロー・資金繰りの管理を整えることが重要です。

スキーム自体は金融機関やファクタリング会社が設計してくれますが、実際にリスクを負うのは自社であり、契約書・注文書・検収フローが曖昧なまま取引を始めると、後から二重譲渡や検収トラブル、入金遅延などの形で跳ね返ってきます。

また、銀行融資・POファイナンス・ファクタリング・リースなど、複数の資金調達手段が並行することになるため、「誰と何をどの役割で進めるのか」「資金繰り表にどう反映させるのか」を事前に整理しておくと、安全性と説明可能性が一気に高まります。

 

ステップ 主な検討内容
①事前整備 契約書・注文書・検収フロー、社内承認ルールの見直し
②役割整理 銀行・ファクタリング会社・POファイナンス会社との役割分担
③試算 資金繰り表に落としたシミュレーションと実質コストの比較
④専門家連携 税理士・診断士・弁護士等との相談・スキーム選定

 

契約書・注文書・検収フローの整備

POファイナンスとファクタリングはいずれも、「書類で証明できる取引実態」が前提になります。

発注書・注文書、基本契約書、個別契約書、見積書、納品書、検収書、請求書などの流れが標準化されていないと、審査に時間がかかったり、スキーム導入後に「契約と請求内容が合わない」「検収が完了していない」といったトラブルの原因になります。

 

特に、建設・製造・システム開発などで多い「口頭ベースの条件変更」「メールだけで仕様変更」という運用は、外部資金を導入する前に見直しておきたいポイントです。

安全に導入するには、少なくとも以下を整理しておくとよいです。

 

  • 受注時:注文書または発注書に、金額・納期・支払条件が明記されているか
  • 契約書:基本契約書+個別契約書で、支払サイト・検収条件が明文化されているか
  • 検収フロー:誰が・どのタイミングで検収完了を確認し、検収書を発行するか
  • 請求書:契約・検収内容と完全に整合した金額・品目・期日になっているか

 

導入前に見直したい書類・フローのポイント
  • 「口頭・メールだけの条件変更」を、できる限り書面(覚書など)に残す
  • 検収完了の基準(いつをもって完了とするか)を、社内・取引先で共通認識にする
  • 受注〜検収〜請求までの書類一式を、案件単位でファイリング・電子保存しておく

 

金融機関・ファクタリング会社との役割分担

次に重要なのが、「どの資金ニーズをどのパートナーが担うか」という役割分担です。銀行・信用金庫などの金融機関は、長期の運転資金や設備資金、売掛債権担保融資、当座貸越枠など、比較的低コストな枠を提供できます。

一方、ファクタリング会社やPOファイナンス会社は、案件ごと・請求書ごとの柔軟な資金調達に強みがありますが、その分コストは高めになりがちです。

実務的には、

 

  • 日常的な運転資金:銀行の運転資金枠・売掛債権担保融資を優先
  • 大型案件・急な受注増:POファイナンス+スポットのファクタリングでカバー
  • 慢性的な資金不足:まずは構造改善と銀行・公的支援制度の検討を優先

 

という役割分担をベースに、案件ごとに微調整していくイメージです。

 

役割分担を決めるときの視点
  • 「長期・低コスト(銀行)」と「短期・高機動(ファクタリング/PO)」を使い分ける
  • 銀行にも、ファクタリング・POファイナンスの利用状況と目的を説明できるよう整理しておく
  • 同じ売上・売掛金に対して、複数のスキームを重ねないよう全体像を共有する

 

資金繰り表への反映とシミュレーション

POファイナンスやファクタリングを導入する前に必ず行いたいのが、「資金繰り表への反映」と「シミュレーション」です。

単に「いくら借りられるか/いくら資金化できるか」だけを見るのではなく、案件単位・月次単位で「入金→返済(精算)→残るキャッシュ」を数値で確認することで、初めてスキームの是非が判断できます。

資金繰り表では、少なくとも次の項目を分けて記載すると分かりやすくなります。

 

  • 案件ごとの売上予定と入金予定(通常入金/でんさい/ファクタリング利用時など)
  • POファイナンスによる入金と、その返済・精算タイミング
  • ファクタリングによる入金と、将来の入金減少(前倒しした分)の影響
  • 銀行返済・税金・社会保険料など「絶対に守りたい支払い」

 

シミュレーション時にチェックしたいポイント
  • スキーム利用前後で、月末現金残高がどう変化するかを比較する
  • 手数料・金利を含めた「実質コスト」を算入しても、案件全体で利益が残るか確認する
  • 最悪シナリオ(売掛先の入金遅延・一部キャンセルなど)でも致命傷にならないかを検討する

 

専門家への相談とスキーム選定

最後のステップとして、税理士・中小企業診断士・弁護士など専門家への相談を組み込むことで、スキーム選定の精度と安全性を高めることができます。

税理士は、手数料の会計処理・消費税・資金繰りへの影響を数値面からチェックできますし、中小企業診断士等は事業計画や再建計画の観点から、「そもそもその案件を取るべきか」「どこまで外部資金を使うか」を一緒に考えてくれます。

 

弁護士は、契約書のリスク(償還条項・期限の利益喪失・保証条項など)を法的な観点からレビューできます。

導入時には、

 

  • 候補となるスキーム(銀行融資・売掛担保・POファイナンス・ファクタリング)を一覧化する
  • 各スキームのコスト・リスク・必要書類・導入スピードを表に整理する
  • 専門家と「成長局面か・自転車操業局面か」を含めて議論し、優先順位を決める

 

といったプロセスを踏むと、感覚ではなく客観的な条件比較で選択できるようになります。

 

専門家相談を活かすためのポイント
  • 良い情報だけでなく、赤字・延滞・債務超過など不利な情報も隠さず共有する
  • 「どのスキームを使うか」だけでなく、「いつまでに依存度を下げるか」も一緒に設計する
  • 金融機関との交渉・説明資料の作成を、専門家と共同で進める

 

このように、書類・フロー・資金繰り・専門家連携の4点を押さえた導入ステップを踏むことで、ファクタリングやPOファイナンスを「場当たり的な資金繰り」ではなく、「計画的な成長・再建のためのツール」として位置づけやすくなります。

 

まとめ

ファクタリングは「納品後の請求書」を、POファイナンスは「受注時の注文書」をベースにした資金調達であり、受注産業のキャッシュフロー設計では役割が分かれます。

いずれも銀行融資の代替・補完として有用ですが、金利・手数料、発注企業の協力要否、倒産やキャンセル時のリスク分担など、客観的な条件比較が欠かせません。

まずは契約書・注文書・検収フローを整理し、資金繰り表上でシミュレーションしたうえで、金融機関や専門家に相談しながらスキームを選ぶことで、成長局面の大型受注にも対応しつつ、自転車操業を避ける安全な資金戦略を組み立てることができます。