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ファクタリングとインボイス制度|非課税取引の仕組みと資金繰り対策15選

インボイス制度の開始により、「ファクタリングを使うと消費税はどうなるのか」「インボイスは発行・保存が必要なのか」といった疑問が増えています。本記事では、ファクタリング取引が原則非課税とされる理由、手数料にかかる消費税とインボイスの関係、課税事業者・免税事業者それぞれの実務対応、インボイス制度下での資金繰り対策までを整理します。制度のポイントと資金調達の影響を同時に把握したい中小企業・フリーランス向けの実務ガイドです。

 

ファクタリングとインボイス制度基礎

ファクタリングとインボイス制度は、どちらも「請求書」「取引先とのお金のやり取り」が関係しますが、役割はまったく異なります。

ファクタリングは売掛債権(請求書にもとづく代金を受け取る権利)をファクタリング会社に売却して、支払期日前に資金を得る手法です。

 

一方、インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、仕入税額控除(預かった消費税から支払った消費税を差し引く仕組み)を認めるために、適格請求書発行事業者が発行する「インボイス」を保存することを求める制度です。

ファクタリング取引自体は、消費税法上「資産の譲渡等」のうちの金銭債権の譲渡に該当し、原則として非課税取引に区分されます。

 

一方で、ファクタリング会社から請求される手数料は「役務の提供」として課税取引に該当するのが基本的な考え方です。

このため、「売掛金の譲渡代金」には消費税はかかりませんが、「ファクタリング手数料」には消費税がかかり、インボイス制度の対象にもなります。

 

インボイス制度の下では、課税事業者がファクタリング手数料に含まれる消費税について仕入税額控除を行うためには、ファクタリング会社が適格請求書発行事業者であり、適格請求書(インボイス)を受け取り、保存していることが条件になります。

ファクタリングを利用する事業者としては、「売掛金の譲渡部分は非課税」「手数料部分は課税でインボイスが必要」という大枠を押さえておくと、後の経理処理・税務対応がスムーズになります。

 

項目 概要
ファクタリング 売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、手数料控除後の現金を早期に受け取る資金調達手段。
インボイス制度 適格請求書発行事業者が発行するインボイスを保存した場合にのみ、仕入税額控除が認められる制度。
消費税区分 売掛債権の譲渡は原則非課税、ファクタリング手数料は課税取引。

 

インボイス制度の基本

インボイス制度は、消費税の仕入税額控除のルールを見直した制度です。

取引先から預かった消費税額から、自社が支払った消費税額を差し引く仕組みを「仕入税額控除」といいますが、この控除を受けるためには、原則として「適格請求書発行事業者」が発行するインボイスを受け取り、保存しておくことが求められます。

 

インボイスには、登録番号、適用税率ごとの対価の額と消費税額など、法律で定められた必要事項を記載することが義務付けられています。

課税売上高が一定以下の事業者は免税事業者として納税義務が免除されますが、インボイス制度開始後は、免税事業者が発行する請求書では、取引先が原則として仕入税額控除を受けられなくなりました。

 

そのため、課税事業者の取引先からは「インボイスを発行してほしい」という要望が増え、免税事業者があえて「適格請求書発行事業者」に登録するかどうかを判断する必要が生じています。

ファクタリングと直接関係するのは、「自社が発行する請求書」と「ファクタリング会社から受け取る請求書」の2種類です。

前者は、取引先が仕入税額控除を行うためにインボイス要件を満たしているかどうか、後者は、自社がファクタリング手数料に含まれる消費税を控除できるよう、ファクタリング会社が適格請求書発行事業者かどうかがポイントになります。

 

インボイス制度で最低限押さえたいポイント
  • 仕入税額控除の前提として、「適格請求書(インボイス)」の保存が必要になる。
  • 免税事業者の請求書では、取引先が原則として仕入税額控除を受けられない。
  • 自社がインボイスを発行する側か、受け取る側かでやるべき対応が変わる。

 

ファクタリング取引と非課税区分

ファクタリング取引のうち「売掛債権の譲渡」部分は、消費税法上、原則として非課税取引に区分されます。

これは、消費税法で「利子を対価とする貸付けや金銭債権の譲渡」などが非課税とされているためです。

 

売掛債権そのものは、商品やサービスの取引によってすでに一度課税が完結しており、その後の債権の譲渡は、あくまで金銭債権の売買(金融取引)と整理されます。

このため、請求書額面1,100万円(うち消費税100万円)の売掛債権をファクタリングで譲渡しても、売掛債権の譲渡対価自体に消費税はかかりません。

 

一方、ファクタリング会社から請求される「ファクタリング手数料」は、役務提供(サービス提供)として課税取引に該当します。

例えば、請求書額面1,100万円の債権を買取率95%(買取金額1,045万円)、手数料55万円(うち消費税5万円を含む)で取引した場合、「1,045万円」は非課税売上の対価(債権の譲渡対価)、「55万円」は課税売上に対する対価(サービスの対価)という整理になります。

 

  • 売掛債権譲渡部分:金融取引として非課税取引に区分。
  • ファクタリング手数料部分:役務の提供として課税取引に区分。
  • インボイス制度の影響を受けるのは「手数料」側であり、譲渡対価そのものではない。

 

ファクタリングと非課税取引の押さえどころ
  • 「売掛債権の譲渡=非課税」「手数料=課税」という大枠をまず理解する。
  • 会計システムでは、債権譲渡対価と手数料を別々に税区分設定する。
  • インボイスが必要かどうかは「手数料部分」の課税取引で判断する。

 

インボイス対応と請求書要件

インボイス制度のもとで、ファクタリングに関係する請求書は大きく2つあります。

ひとつは、自社が取引先に発行する「売上の請求書(売掛債権のもとになるインボイス)」、もうひとつは、ファクタリング会社が自社に発行する「手数料の請求書(課税仕入れとしてのインボイス)」です。

 

自社が課税事業者であれば、取引先が仕入税額控除を行えるように、売上の請求書を適格請求書(インボイス)の要件に沿って作成する必要があります。

具体的には、①自社の登録番号、②取引年月日、③取引内容(軽減税率の対象かどうか)、④税率ごとの対価の額、⑤消費税額などを記載します。

 

ファクタリングを利用して売掛債権を譲渡しても、取引先に対する売上取引そのものが変わるわけではないため、インボイスの発行義務や記載内容は基本的に同じです。

一方、自社がファクタリング手数料を仕入税額控除したい場合、ファクタリング会社が適格請求書発行事業者であることが前提になります。

 

ファクタリング会社から受け取るインボイスには、手数料額と消費税額(例:手数料50万円+消費税5万円の合計55万円)や登録番号が記載されます。

自社はこれを保存し、帳簿と突き合わせることで、課税仕入として仕入税額控除の対象とすることができます。

 

  • 取引先への売上請求書は、ファクタリングの有無にかかわらず、通常どおりインボイス要件を満たす必要がある。
  • ファクタリング会社からの手数料請求書についても、インボイス保存が仕入税額控除の前提となる。
  • インボイス対応が必要かどうかは、「自社が課税事業者か」「ファクタリング会社が登録事業者か」で判断する。

 

請求書とインボイス対応の整理ポイント
  • 売上側:自社がインボイス発行事業者なら、取引先向け請求書をインボイス仕様に統一する。
  • 費用側:ファクタリング手数料に関するインボイスを保存し、仕入税額控除に備える。
  • システム側:請求書発行システム・会計ソフトで、インボイス対応ができているか確認する。

 

免税事業者と課税事業者の違い比較

インボイス制度とファクタリングを考える際に重要なのが、「自社が免税事業者か課税事業者か」という違いです。

免税事業者とは、基準期間(通常は2期前)の課税売上高が一定額以下で、消費税の納税義務が免除されている事業者を指します。

 

免税事業者は、インボイス制度のもとでも引き続き消費税の申告・納付義務はありませんが、「適格請求書発行事業者」には登録できないため、取引先は原則として仕入税額控除を行うことができません。

課税事業者は、インボイス制度下で適格請求書発行事業者に登録していれば、自社の売上についてインボイスを発行でき、仕入についてもインボイスを保存すれば仕入税額控除が可能です。

 

ファクタリング手数料についても、インボイスを保存することで、支払った消費税分(手数料に含まれる消費税)を控除できます。

免税事業者の場合は、もともと消費税の申告・納付義務がないため、ファクタリング手数料に含まれる消費税も「コスト」のままになりますが、その一方で納税資金を準備する必要はありません。

 

  • 免税事業者:インボイスを発行できないが、そもそも消費税の納税義務がない。
  • 課税事業者:インボイスを発行できる代わりに、申告・納付と仕入税額控除の管理が必要。
  • ファクタリング手数料の消費税を控除できるのは、「課税事業者+インボイス保存あり」の場合に限られる。

 

免税事業者か課税事業者かで変わるポイント
  • 取引先が仕入税額控除を重視する場合、課税事業者としてインボイス発行する選択肢を検討する。
  • 免税事業者のままファクタリングを利用する場合、手数料の消費税はそのままコストになると理解する。
  • 売上規模・取引先のニーズ・事務負担を踏まえ、「いつ課税事業者になるか」を事前にシミュレーションする。

 

ファクタリングと消費税の取扱い実務

ファクタリングをインボイス制度のもとで利用する場合、実務上のポイントは「売掛債権の譲渡」と「ファクタリング手数料」を消費税のうえで別物として扱うことです。

売掛債権の譲渡は、消費税法上「金銭債権の譲渡」に当たり、原則として非課税取引に区分されます。

 

一方で、ファクタリング会社が提供するサービス(審査・債権管理・資金前倒し)の対価である「手数料」は、役務の提供として課税取引に区分されます。

経理実務では、この2つを同じ仕訳や税区分で処理してしまうと、課税売上高・課税仕入高の金額が狂い、消費税申告やインボイス対応に影響します。

 

特に、会計ソフト上の税区分(課税・非課税・対象外など)を適切に設定していないと、「売掛金の譲渡対価に消費税を誤って計上していた」「手数料の消費税を控除漏れしていた」といったミスにつながりかねません。

実務上は、仕訳レベルで「債権譲渡による入金(非課税)」「ファクタリング手数料(課税仕入)」を必ず分けて記録し、インボイス保存の対象も「手数料に係る請求書」であることを意識して管理することが重要です。

 

項目 消費税上の扱い(基本)
売掛債権の譲渡対価 金銭債権の譲渡として非課税取引(課税売上・課税仕入には含めない)。
ファクタリング手数料 役務提供の対価として課税取引(課税売上/課税仕入の対象)。
インボイスの対象 売掛債権の譲渡部分ではなく、手数料部分に係る請求書がインボイス対象となる。

 

売掛債権譲渡と非課税取引の位置付け

売掛債権は、もともと商品販売や役務提供といった「課税取引」によって発生したものです。この段階で、売上側では消費税を預かり、仕入側では仕入税額控除の対象になります。

その後、この売掛債権をファクタリング会社に譲渡する行為は、「すでに発生している金銭債権そのものの売買」に当たるため、消費税法上は金融取引の一種として非課税取引に分類されます。

 

ここを押さえておくと、「売掛金をファクタリングしたからといって、消費税が二重でかかるわけではない」という整理がしやすくなります。

具体例で考えると、取引先に対して税込1,100万円(うち消費税100万円)の請求書を発行し、この売掛金をファクタリング会社に譲渡して1,050万円を受け取るケースでは、1,100万円という売上に対する消費税は、あくまで元の売上取引で確定済みです。

1,050万円の入金は「売掛債権の譲渡対価」として非課税取引に区分され、ここで新たに消費税を計上する必要はありません。

 

  • 売掛債権の譲渡は、元の売上取引とは別の「金融取引」として非課税に扱われる。
  • ファクタリングによって消費税が二重に発生するわけではない。
  • 売掛金の消費税は、あくまで最初の売上時点での課税・申告で完結する。

 

売掛債権譲渡を非課税として扱うときのポイント
  • 会計ソフトの税区分で、債権譲渡対価は「非課税」または「対象外」に設定する。
  • 売掛金の消費税は、売上計上時点の仕訳と申告に紐づいていると理解する。
  • ファクタリング契約書・入金明細で「どの債権をいくらで譲渡したか」を追えるようにしておく。

 

ファクタリング手数料と消費税区分

ファクタリング手数料は、ファクタリング会社が提供する「売掛債権の審査・管理・回収、資金の前倒し」といったサービスに対する対価です。消費税法上は「役務の提供」に該当し、原則として課税取引に区分されます。

したがって、課税事業者がファクタリング手数料を支払う場合、その手数料に含まれる消費税は「課税仕入」に該当し、適切にインボイスを保存していれば仕入税額控除の対象になります。

 

例えば、税込手数料55万円(うち消費税5万円)という請求書をファクタリング会社から受け取った場合、経理処理では「ファクタリング手数料50万円(課税仕入)+仮払消費税5万円」という内訳で記録します。

会計ソフトの設定で、ファクタリング手数料科目を「課税仕入/標準税率」としておけば、申告書の集計時にも自動的に取り込まれます。

一方、免税事業者の場合は、そもそも消費税の申告・納付義務がないため、この仮払消費税分を仕入税額控除することはできず、「税込55万円全体がコスト」として残るイメージになります。

 

  • ファクタリング手数料=役務提供に対する対価であり、消費税の課税取引。
  • 課税事業者は、インボイスを保存することで手数料に含まれる消費税を控除できる。
  • 免税事業者は控除できないため、手数料の消費税分も含めて実質コストとして認識する。

 

手数料の消費税区分で注意したい点
  • 勘定科目を「支払手数料」などにまとめる場合も、税区分を「課税仕入」に設定する。
  • ファクタリング会社からの請求書(インボイス)で、税率・税額が明示されているか確認する。
  • 複数税率や海外取引が絡む場合は、税率ごとに区分して記録することを意識する。

 

インボイス登録と仕入税額控除への影響

インボイス制度下で、ファクタリング手数料の仕入税額控除を行うには、「自社が課税事業者であること」と「ファクタリング会社が適格請求書発行事業者であること」の両方が必要です。

自社が課税事業者として登録していなければ、そもそも消費税の申告・納付・仕入税額控除は行いません。

 

また、ファクタリング会社が適格請求書発行事業者でなければ、原則としてその手数料に含まれる消費税は仕入税額控除の対象になりません(一部経過措置はありますが、最終的には控除できなくなっていきます)。

課税事業者にとっては、ファクタリング手数料が年間で一定額を超える場合、仕入税額控除ができるかどうかが、実質的なコストに影響します。

 

例えば、年間手数料合計が110万円(うち消費税10万円)の場合、インボイス保存ができていれば10万円は後で控除できますが、できなければ10万円分だけコストが増えたのと同じ効果になります。

このため、ファクタリング会社を選ぶ際には、料金やスピードだけでなく、「適格請求書発行事業者かどうか」も確認しておくことが実務上重要です。

 

  • 自社が課税事業者でなければ、そもそも仕入税額控除は行わない。
  • ファクタリング会社が適格請求書発行事業者でない場合、原則として手数料の消費税は控除できない。
  • 手数料の規模が大きいほど、インボイスの有無が実質コストに影響する。

 

インボイス登録と控除の関係を整理するポイント
  • ファクタリング会社選定時に、「登録番号の有無」を確認する。
  • 自社が免税 ⇒ 控除はできないが、納税資金は不要/自社が課税 ⇒ 控除前提で資金繰りを考える。
  • 複数のファクタリング会社を使っている場合、それぞれのインボイス保存状況を一覧で管理する。

 

経理処理と税区分設定のポイント

ファクタリングの経理処理では、「債権の減少」「現金・預金の増加」「手数料の費用計上」の3つを、消費税の税区分とセットで整理することが重要です。

一般的な買取型ファクタリングの仕訳イメージは、①売掛金の一部を「債権譲渡」によって取り崩し、②その対価として現金・預金を計上し、③差額をファクタリング手数料として費用計上する、という流れになります。

 

このうち、①・②の部分は非課税取引(または対象外)として税区分を設定し、③の手数料部分は課税仕入として処理します。

会計ソフトを利用している場合、「ファクタリング受取金」「債権譲渡損」「支払手数料」などの勘定科目をどのように設計するかによって、税区分の設定方法が変わります。

 

ポイントは、「債権譲渡対価」と「手数料」を別科目・別税区分で処理できるようにしておくことです。

さらに、2社間ファクタリングか3社間ファクタリングかによって、仕訳の形(売掛金の振替・期日入金の扱いなど)が異なる場合もあるため、自社のスキームに合わせた仕訳パターンを社内マニュアルとして整備しておくと、日々の処理ミスを防げます。

 

  • 「売掛金の譲渡」と「手数料」を同じ勘定・税区分で処理しない。
  • 会計ソフトの税区分(課税/非課税/対象外)を科目ごとに明示的に設定する。
  • 2社間・3社間それぞれについて、仕訳例と税区分の社内ルールを作って共有する。

 

経理処理・税区分設定で押さえるべき実務ポイント
  • ファクタリング導入時に、顧問税理士・会計事務所と仕訳パターンを事前に確認する。
  • 月次・決算時に、「ファクタリング関連科目の消費税区分」を一覧でチェックする。
  • インボイス保存と会計データ(税区分)が整合しているか、定期的に突き合わせを行う。

 

インボイス制度下の資金繰り対策

インボイス制度開始後は、「実際のキャッシュイン・キャッシュアウト」と「消費税の納税タイミング」のギャップが従来より意識されるようになりました。

課税事業者であれば、売上に含まれる消費税をいったん預かり、仕入や経費に含まれる消費税を差し引いた残りを納税しますが、インボイスがなければ仕入税額控除ができず、「控除できると思っていた消費税」がそのまま納税額として残るリスクがあります。

 

とくに、インボイス制度により取引先から課税事業者への登録を求められた中小企業・フリーランスでは、それまで納税義務がなかった立場から「消費税の納税資金を毎期用意する」立場に変わるため、売上が増えているのに手元資金が不足しやすい局面が生じがちです。

このような環境下では、売掛金の回収条件(支払サイト)、支出のタイミング、消費税の納税スケジュールを一覧化した資金繰り表を作成し、「どの月に資金が足りなくなりそうか」「どの売掛金を前倒しで資金化するべきか」を早めに把握することが重要です。

そのうえで、短期的なギャップをファクタリング等で埋めつつ、中長期的には価格転嫁・コスト削減・融資枠確保などを組み合わせる発想が求められます。

 

視点 インボイス制度下で意識したい内容
消費税 仕入税額控除の条件(インボイス保存)と納税スケジュール。
取引条件 売掛回収サイトと仕入・経費支払サイト、価格転嫁状況。
資金調達 ファクタリング・融資・リスケなどの役割分担と利用タイミング。

 

納税負担増加と資金ショートリスク

インボイス制度で大きく変わるのは、「免税事業者だった企業・個人が、取引先の要請に応じて課税事業者に転換した場合の資金繰り」です。

課税事業者になると、売上に含まれる消費税を預かり、期末にまとめて納税する必要があります。

 

通常は仕入税額控除によって相殺されますが、インボイスを受け取れていない取引や、免税事業者からの仕入れについては控除できないため、その分だけ納税額が増えます。

この「控除できない消費税」は、キャッシュフローの観点から見ると「追加の現金流出」となり、資金ショートの要因になります。

 

例えば、インボイス導入前は消費税の納税義務がなかったフリーランスが、登録後に売上1,100万円(税抜1,000万円+消費税100万円)、仕入・経費が550万円(税抜500万円+消費税50万円)だった場合を考えると、単純化すると預かった消費税100万円から支払った消費税50万円を差し引いた50万円を納税するイメージになります。

これまで全額を自由に使えていた100万円分の消費税のうち、半分は期末に手元に残っていないといけない、という意識に切り替える必要があります。

 

  • インボイス登録により、これまで不要だった消費税の納税資金を確保する必要が出てくる。
  • 仕入税額控除できない取引(免税事業者からの仕入れ等)が多いと、納税額が増えやすい。
  • 納税時期(年1回・中間申告など)を資金繰り表に反映し、納税月の残高を意識して管理する。

 

納税負担増による資金ショートを防ぐポイント
  • 売上の消費税部分を「預り金」として別口座で管理するなど、使い込みを防ぐ仕組みを検討する。
  • インボイスを受け取れていない取引の割合を把握し、可能な範囲で取引条件の見直しを行う。
  • 納税前の数か月で、運転資金枠・ファクタリング利用枠などの余力を確認しておく。

 

ファクタリング活用場面と注意ポイント

インボイス制度下でファクタリングを活用する典型的な場面は、「売掛金の支払サイトが長い一方で、納税資金や仕入・外注費の支払いが先行して資金が足りない」というケースです。

特に、建設・製造下請・IT受託など、検収後数か月先に入金となる業種では、納税月や賞与月と重なると資金ショートリスクが高まります。

 

こうした際に、正常な売掛債権の一部をファクタリングで前倒し資金化し、納税や支払いの谷をなだらかにする、という使い方が考えられます。

ただし、ファクタリングは消費税問題そのものを解決するものではなく、「タイミングのギャップ」を埋める道具です。

 

手数料には消費税がかかるため、課税事業者であれば仕入税額控除を前提としつつも、実質的な資金コストは必ず試算する必要があります。

また、納税資金が不足しているからといって、売掛債権を過度にファクタリングに回すと、手数料負担が累積して財務体質を悪化させるおそれがあります。

 

  • 一時的な資金ギャップを埋める目的で、どの売掛金を出すかを絞り込む。
  • 納税資金・仕入・人件費など、何にいくら必要なのかを明確にしたうえで利用額を決める。
  • インボイス制度への対応(価格転嫁・取引見直し等)とセットで、根本的な収支バランスも見直す。

 

インボイス期のファクタリング活用で注意したい点
  • 「消費税がきついからとりあえず全部ファクタリング」ではなく、必要額と期間を限定する。
  • 手数料の消費税も含めた実質コストを試算し、他の手段(融資・リスケ等)とも比較する。
  • 納税資金の不足が慢性的な場合は、価格設定やコスト構造の見直しを優先する。

 

小規模事業者のインボイス実務対応

小規模事業者(個人事業主・小法人)がインボイス制度下でファクタリングを利用する際には、「自社が免税事業者か課税事業者か」で対応が大きく変わります。

免税事業者のままの場合、自社には消費税の納税義務はありませんが、取引先(課税事業者)が自社の請求書にもとづく仕入税額控除を行えないため、取引条件の見直しや価格交渉を求められることがあります。

 

一方で、課税事業者に登録すると、消費税の納税とインボイス発行が必要になる代わりに、ファクタリング手数料に含まれる消費税も仕入税額控除できるようになります。

小規模なフリーランスや個人事業主にとっては、事務負担も無視できません。

 

インボイス対応の請求書発行(登録番号・税率区分の記載など)、取引先ごとのインボイス要否の管理、ファクタリング会社から受け取るインボイスの保存・紐付けなど、これまで以上に「書類」と「会計データ」の整合性が重要になります。

クラウド会計・請求書ソフトを活用して、インボイス項目を自動反映させる設定を行うなど、少ないリソースで回せる仕組み作りが実務対応の鍵です。

 

  • 免税でいるか課税に転換するかは、「取引先のニーズ」「売上規模」「事務負担」で総合判断する。
  • 課税事業者になる場合、ファクタリング手数料のインボイス保存も含めて一括で運用ルールを決める。
  • クラウドツールを利用し、請求書・会計・インボイス情報をできるだけ自動連携させる。

 

小規模事業者が押さえたいインボイス×ファクタリング実務
  • 自社のステータス(免税/課税)と、主要取引先の要望を一覧にして整理する。
  • 課税事業者になる場合、顧問税理士・会計ソフトベンダーと運用フローを事前に詰める。
  • ファクタリング利用時の請求書・入金・インボイスをひとつのフォルダ・システムで一元管理する。

 

インボイス対応型サービス比較の視点

インボイス制度開始後、ファクタリング会社やクラウド請求書サービスの中には、「インボイス対応」「電子インボイス連携」をうたうものが増えています。

これらを比較する際に重要なのは、①適格請求書発行事業者として登録されているか、②手数料請求書(インボイス)を電子データで受け取り・保存しやすいか、③会計ソフトとの連携がどの程度進んでいるか、という3つの視点です。

 

たとえば、ファクタリング会社が発行する手数料の請求書をPDFやデータ形式で受け取り、そのまま会計ソフトや電子帳簿保存法対応システムに連携できれば、インボイス保存と仕訳計上を同時に行えます。

また、2社間・3社間いずれのスキームであっても、契約書・請求書・入金データ・インボイスをひとつの管理画面で確認できるサービスは、インボイス制度下での実務負担を軽減します。

逆に、紙ベースのやり取りが多く、都度手入力が必要な場合は、取引量が増えるほどミスや手間が増えます。

 

  • ファクタリング会社が適格請求書発行事業者かどうか(登録番号の有無)を確認する。
  • 請求書・インボイスを電子データで受け取り、会計ソフト等に連携できるかを見る。
  • 2社間・3社間どちらのデータも、インボイス情報と一緒にトレースできる管理画面があるかを確認する。

 

インボイス対応型サービスを選ぶときのチェックポイント
  • 「料金」「スピード」に加えて、「インボイス・会計連携」のしやすさを評価軸に入れる。
  • 電子インボイス・電子帳簿保存法対応を前提に、紙ベースの作業を最小限に抑える設計を選ぶ。
  • 将来的な取引量増加を見越し、手作業を前提としないスキームを検討する。

 

インボイスとファクタリング誤解事例

インボイス制度とファクタリングは、ともに「請求書」や「売掛金」を扱うため、用語だけを見ると一体の仕組みのように感じやすいですが、実際にはまったく別の制度・サービスです。

このため、現場では「ファクタリングを使えばインボイスは要らない」「インボイスが始まったからファクタリングは使えなくなる」「ファクタリング手数料にインボイスは関係ない」といった誤解が生じやすくなっています。

 

これらの誤解は、消費税の申告・納税や資金繰り、取引先との関係に直接影響するため、早めに整理しておくことが重要です。

特に注意したいのは、①インボイスの義務は「売上取引」に関するものであり、ファクタリングで売掛金を譲渡しても消えるわけではないこと、②インボイス制度導入後も、ファクタリング自体は従来どおり利用できること、③ファクタリング手数料は課税取引であり、手数料側でインボイスが必要になること、④「インボイス対応」や「インボイスファクタリング」といった名目で、実質は高コスト・高リスクの商品を売り込む業者がいること、の4点です。

 

これらのポイントを踏まえ、代表的な誤解と注意点を整理していきます。

誤解のタイプ 実務上の正しい整理
インボイス不要論 ファクタリングを使っても、取引先への売上インボイスは従来どおり必要。
利用制限論 インボイス制度開始後も、ファクタリング利用は可能(制度と競合しない)。
手数料無関係論 ファクタリング手数料は課税取引であり、インボイス保存が仕入税額控除の前提。
インボイス名目商品 「インボイス」を名乗るだけで実態が伴わない高コスト商品に注意が必要。

 

ファクタリング利用でインボイス不要は誤解

「売掛金をファクタリング会社に売ってしまうなら、取引先向けのインボイスは不要になるのでは」という質問はよくありますが、これは誤解です。

インボイス制度におけるインボイス(適格請求書)は、「商品・サービスの販売」という課税取引に対して発行するものであり、「その後の売掛金を誰が保有しているか」とは別の論点です。

 

取引の流れとしては、①自社が取引先に商品・サービスを提供し、インボイス(請求書)を発行する、②この売掛債権をファクタリング会社に譲渡する、という順番であり、②を行っても①の義務は消えません。

取引先(買い手)側は、自社が支払う仕入・経費の消費税を控除するために、インボイスを必要としています。

 

自社がインボイスを発行しなければ、取引先は原則として仕入税額控除を行えないため、「今まで通りの条件では取引しにくい」「価格や条件を見直したい」といった話につながる可能性があります。

ファクタリングは、売掛金の持ち主を「自社→ファクタリング会社」に変える金融取引であって、「消費税の記録・証拠」であるインボイスを不要にする仕組みではありません。

 

  • インボイスは「売上取引」に対するものであり、「売掛金の持ち主」が誰かとは別問題です。
  • ファクタリングを利用しても、取引先が課税事業者なら、インボイス発行のニーズは続きます。
  • 「ファクタリングを使えばインボイスはいらない」は誤解であり、取引先との信頼を損ねる原因になり得ます。

 

インボイス不要論が危険な理由
  • インボイスを発行しないと、取引先の仕入税額控除に影響し、条件悪化や取引減少を招くおそれがある。
  • インボイス義務を軽視した説明は、税務調査時にも整合性が取れなくなるリスクがある。
  • ファクタリング導入時は、「インボイス対応は今までどおり続ける」ことを社内外で共有しておくことが大切。

 

インボイス導入後もファクタリング利用可能性

「インボイス制度が始まったから、ファクタリングのようなスキームは規制されるのでは」という不安もよく耳にしますが、制度上、インボイスとファクタリングは別の仕組みであり、インボイス導入を理由にファクタリングが使えなくなることはありません。

インボイス制度は、あくまで「課税売上・課税仕入に関する消費税額の確認・控除のルール」を定めたものであり、売掛金の資金化手段(ファクタリング・手形割引・債権譲渡など)を禁止するものではありません。

 

むしろ、インボイス導入により、課税事業者となる企業・フリーランスが増え、消費税納税額を確保する必要が出てきた結果、「納税期前の資金繰り対策」として、ファクタリングのニーズが高まる可能性があります。

例えば、3月決算の企業で、3月末の売掛金が大きい場合、入金が5月・6月になる一方で、消費税の納税は5月末に発生するというようなタイミングのギャップが起こり得ます。

この差を埋めるために、一部の売掛金をファクタリングで前倒し資金化する、という活用イメージです。

 

  • インボイス制度は、ファクタリング自体を制限する制度ではない。
  • むしろ「納税資金が必要」「支払サイトが長い」という課税事業者の増加により、ニーズが生じやすい。
  • ただし、インボイス対応(価格転嫁・コスト管理)とセットで使うことが重要であり、ファクタリングだけに頼るのは危険。

 

インボイス後もファクタリングが有効な場面
  • 納税月と大口売掛金の入金月がずれているため、一時的な資金ギャップが生じるとき。
  • 支払サイトが長く、仕入・外注費の支払いが先行してしまう案件が多いとき。
  • 銀行融資だけでは追いつかない短期の資金需要に対して、スポットで対応したいとき。

 

ファクタリング手数料とインボイス発行義務

ファクタリング手数料は、ファクタリング会社にとって「課税売上」、利用者にとっては「課税仕入(費用)」に該当する取引です。

したがって、ファクタリング会社が適格請求書発行事業者であれば、利用者に対してインボイス(適格請求書)を発行する義務があります。

 

インボイスには、登録番号、税率ごとの手数料額と消費税額、取引内容など、法律で定められた事項を記載する必要があります。

利用者側が課税事業者の場合、このインボイスを保存しておくことで、手数料に含まれる消費税分を仕入税額控除として申告できます。

 

逆に、ファクタリング会社が適格請求書発行事業者ではなく、インボイスが発行されない場合には、原則としてその消費税を控除することはできません(経過措置期間の取り扱いを除く)。

ファクタリング手数料が年間で数十万円〜数百万円になる場合、インボイスの有無は実質的な資金コストに大きく影響します。

 

  • ファクタリング手数料は課税取引であり、インボイス発行の対象になる。
  • 課税事業者の利用者は、インボイス保存がないと仕入税額控除ができず、その分コストが増える。
  • ファクタリング会社を選ぶ際は、「料金」だけでなく「インボイスを発行しているか」も確認する必要がある。

 

手数料とインボイス発行で押さえたい実務ポイント
  • ファクタリング会社の登録番号の有無を事前に確認し、請求書に表示されているかもチェックする。
  • 会計上は、手数料と仮払消費税を分けて計上し、インボイスと帳簿の突合せを行う。
  • 複数社と取引している場合、インボイス発行事業者とそうでない事業者で、実質コストを比較する。

 

インボイス名目悪質スキームの注意点

インボイス制度の開始に伴い、「インボイス対応」と称したさまざまなサービスや金融商品が登場しています。

その中には、表向きは「インボイス対策」「インボイスファクタリング」といった名称を掲げながら、実態としては高金利の貸付けや過度な手数料を伴うスキームが混ざっている可能性もあります。

 

インボイスという言葉が付くだけで、あたかも税制に適合した安全なサービスのように感じられますが、具体的な中身は通常のファクタリングや短期融資と変わらない、あるいはそれ以上に不利な条件というケースも考えられます。

典型的なリスクとしては、①「インボイスを預かるだけ」と言いつつ、実質は給与ファクタリングや違法な貸付けと同様の構造になっている、②「インボイスを活用した節税」などと説明しながら、税務上の根拠があいまいな取引を勧めてくる、③インボイス制度を理由に不必要なサービスをセット販売し、高額な手数料を請求する、といったパターンが挙げられます。

 

  • 「インボイス」という名称だけで、安全性や有利さを判断しない。
  • 手数料率・実質年率・契約条項(買戻し・違約金など)を、通常の金融商品と同様にチェックする。
  • 税務・法務上の説明があいまいな場合は、顧問税理士や公的窓口に必ず相談する。

 

  • 「インボイス対応」をうたいながら、具体的な税務根拠や制度説明がないサービスは警戒する。
  • 極端に高い買取率・短時間での審査・「誰でも必ず使える」といった宣伝文句には慎重になる。
  • 契約前に、第三者(税理士・中小企業支援機関など)に内容を確認してもらう習慣をつける。

 

中小企業・フリーランス実務チェック

インボイス制度とファクタリングを同時に扱うときは、「税務」と「資金繰り」と「事務負担」の3つを一体で考えることが重要です。

インボイス登録をしたかどうか、取引先への請求書がインボイス要件を満たしているか、ファクタリング手数料にかかる消費税をきちんと経理処理できているか、といった点を確認しないまま資金調達だけ進めてしまうと、後から消費税の納税額が増えたり、書類不足で仕入税額控除が否認されるリスクがあります。

 

また、フリーランスや小規模法人では、代表者本人が営業・制作・経理を兼務していることが多く、「細かい税務・法務は後回し」になりがちです。

その結果、インボイスの保存や電子帳簿保存法への対応が追いつかず、ファクタリングやその他の資金調達を利用したときに、証拠書類が整理されていないという状態が起こりやすくなります。

こうしたリスクを避けるために、最低限のチェックポイントを一覧化し、「申込前に見るシート」「月次で見るシート」として運用するのがおすすめです。

 

チェック領域 主な確認ポイント
インボイス 自社の登録状況、請求書の記載内容、取引先の要望把握。
ファクタリング 対象債権の選別、手数料と消費税の処理、インボイス保存。
書類・システム 請求書・契約書・入金データの保管方法、電子保存の可否。
相談体制 税理士・金融機関・公的機関など、相談先のリストアップと使い方。

 

インボイス発行とファクタリング申込前確認

ファクタリングを申し込む前に、まず確認しておきたいのが「売掛金の元になっている請求書(インボイス)の状態」です。

自社が課税事業者でインボイス登録済みであれば、取引先に発行した請求書が適格請求書の要件(登録番号、税率ごとの対価と消費税額の記載など)を満たしているかどうかを確認します。

 

売掛金はこの請求書に基づいて発生しているため、インボイスに不備があると、取引先側の仕入税額控除や、自社の信頼性にも影響します。

次に、ファクタリングの申込対象とする売掛金が、本当に「インボイスを発行した取引」に対応しているかを照合します。

 

請求書番号・金額・取引先名・支払期日が、売掛金の管理表と一致しているか、納品書・検収書などの証憑が揃っているかを確認しておくことで、審査時の説明もスムーズになります。

また、自社が免税事業者のままファクタリングを利用する場合は、「取引先がインボイスを必要としているか」「今後、課税事業者に転換する予定があるか」も、事前に経営判断として整理しておく必要があります。

 

  • 取引先に発行した請求書がインボイス要件を満たしているかを確認する。
  • ファクタリングに出す売掛金と、インボイスの請求書番号・内容を突き合わせる。
  • 自社のステータス(免税/課税)と、将来のインボイス登録方針を整理しておく。

 

申込前に押さえたいインボイス×ファクタリング確認事項
  • この売掛金は、誰に、どのインボイス(請求書)にもとづいて発生したものか。
  • 取引先から「インボイスを出してほしい」と言われていないか、対応状況はどうか。
  • ファクタリング後も、取引先との請求書発行・保存の流れに変更がないか確認したか。

 

書類保管と電子インボイス対応のポイント

インボイス制度と電子帳簿保存法の運用により、「紙の請求書をファイルしておけば足りる」という時代ではなくなりつつあります。

ファクタリングを利用する場合、少なくとも次の書類は紐付けて保管しておくことが望ましいです。

 

①取引先向けの売上インボイス(請求書)、②取引の実在性を示す契約書・発注書・納品書・検収書、③ファクタリング会社との契約書、④ファクタリング手数料に関するインボイス、⑤入金・出金を示す通帳や入金データです。

電子インボイス・電子帳簿保存法に対応する際には、これらの書類を紙でバラバラに保存するのではなく、スキャンデータ・PDF・電子インボイスデータなどを、日付・取引先・案件単位で紐付けられる仕組みを整えることが重要です。

クラウド会計・請求書サービス・ストレージを活用し、「取引一覧 → 各取引ごとのインボイス・契約書・入金明細にリンク」といった形で管理できれば、ファクタリング利用時の審査・説明、税務調査時の証拠提出もスムーズになります。

 

  • 売上側インボイスとファクタリング手数料のインボイスを、案件単位で紐付けて保存する。
  • 紙で受け取った書類も、スキャンして電子データにしておくと検索性が高まる。
  • 会計ソフト・請求書ソフト・ストレージの連携機能を活用し、「一取引=一フォルダ」の発想で整理する。

 

電子インボイス対応で意識したいポイント
  • 「紙と電子が混在してどこに何があるか不明」という状態を避けるため、保存ルールを決める。
  • 保存要件(改ざん防止・検索性など)を満たすクラウドサービスを選び、運用をシンプルにする。
  • ファクタリングに限らず、すべての取引で同じルールを適用し、「例外」を極力作らない。

 

資金調達手段別の税務・コスト比較

インボイス制度下では、資金調達手段によって「消費税との関係」「実質コストの出方」が異なります。

ファクタリングだけでなく、銀行融資、当座貸越、ビジネスローン、手形割引などを比較し、「どの手段が、どの目的に向いているか」を整理しておくと判断しやすくなります。ここでは、税務とコストの観点から、ごくシンプルに比較します。

 

手段 消費税との関係 コスト・特徴(概要)
ファクタリング 債権譲渡は非課税/手数料は課税(インボイス保存で控除可)。 短期の資金ギャップ向け。手数料は高めだが、売掛先信用を活用できる。
銀行融資 利息部分は非課税。消費税とは直接連動しない。 利率は低めだが審査に時間。中長期資金・設備投資向け。
ビジネスローン等 利息・手数料は非課税または一部課税だが、インボイス制度との関係は限定的。 スピードは速いが金利高め。短期補填用。
手形割引 割引料は非課税。インボイス制度の影響は主に元の取引側。 手形文化が残る業種で利用。ファクタリングに近い機能。

 

ポイントは、「消費税の納税資金が足りないからファクタリングする」のか、「売掛サイトが長くて全般的に資金が足りない」のか、「そもそも赤字で運転資金が構造的に不足している」のか、目的を切り分けることです。

それに応じて、ファクタリング・融資・リスケ・コスト削減などを組み合わせ、「どの手段をどの期間使うか」を設計します。

 

手段別の税務・コストを見比べるときの視点
  • 消費税の納税資金問題なのか、事業全体の収支問題なのかを明確にする。
  • ファクタリングは「短期ギャップ用」、融資は「長期資金用」と考えて役割分担する。
  • 税務・コスト・スピードの3軸で一覧表にし、メリット・デメリットを可視化する。

 

専門家・公的窓口の活用ステップ

インボイス制度とファクタリング、さらに融資やリスケまで含めて考え始めると、「自社だけでは判断しきれない」と感じる場面が多くなります。その際に重要なのが、「どこに何を相談するか」をあらかじめ整理しておくことです。

税務・会計に関しては税理士、資金繰り全般や事業計画については中小企業診断士や金融機関、制度融資や補助金・再生支援については商工会議所や中小企業支援機関、生活費にまで影響するレベルの資金難であれば、公的な相談窓口(自治体の経営相談・生活支援相談など)といった具合に、役割が分かれています。

 

具体的なステップとしては、まず「現状の整理(売上・費用・借入・ファクタリング利用状況・インボイス対応状況)」を1〜2枚の資料にまとめます。

そのうえで、①顧問税理士がいれば税務・会計処理とインボイス対応の確認、②取引金融機関に対して資金繰りの見通しと融資・返済条件の相談、③商工会議所・よろず支援拠点などで事業全体の改善策やファクタリングの位置付けの相談、という順番で回ると、話が通りやすくなります。

 

  • 誰に何を聞くべきか(税理士・金融機関・公的機関)を整理しておく。
  • 現状の数字とインボイス・ファクタリング利用状況を、簡単な資料にまとめてから相談する。
  • 単発相談だけでなく、継続的にフォローしてくれる窓口(顧問・支援機関)との関係を作る。

 

専門家・公的窓口を活用するための実務ステップ
  • ステップ1:自社の状況を「売上・費用・借入・インボイス・ファクタリング」の5項目で紙1〜2枚に整理する。
  • ステップ2:税務・会計は税理士、資金繰りと金融は銀行・信用金庫、全体設計は商工会議所等という役割分担で相談する。
  • ステップ3:提案された対策(価格転嫁・コスト削減・資金調達プラン)を資金繰り表に落とし込み、実行とモニタリングを繰り返す。

 

まとめ

本記事では、インボイス制度の基本とファクタリング取引の消費税区分(売掛債権譲渡は原則非課税、手数料は課税)を整理し、インボイス登録の有無が仕入税額控除や資金繰りにどう影響するかを確認しました。

そのうえで、納税負担増加を見据えた資金繰り対策、ファクタリング活用時の注意点、よくある誤解(「ファクタリングならインボイス不要」等)への対応、他の資金調達手段との税務・コスト比較や相談先も示しました。

インボイスとファクタリングを切り離さずに考えることで、自社のキャッシュフローと税負担をコントロールしやすくなります。