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赤字決算のメリットデメリット8選|中小企業の欠損金・税金・融資審査を解説

赤字決算になると「税金はどうなる?」「欠損金で本当に得をする?」「銀行や公庫の融資審査に不利?」「資金繰りが限界…ノンバンクは安全?」と不安が増えがちです。本記事では、赤字決算のメリットデメリットを、欠損金の扱い・税金(繰越控除や繰戻し還付)・社会保険料負担の考え方から整理し、金融機関にどう見られるかのポイント、必要書類や説明のコツ、資金繰り表での改善手順、税金・社保の遅れがある場合のリスクと相談先まで、実務に落とし込んで解説します。

赤字決算の基礎知識

赤字決算とは、決算書(損益計算書)上で「売上などの収益より、仕入・人件費・家賃などの費用が大きい状態」をいいます。ただし、赤字=すぐ資金ショートとは限りません。たとえば減価償却費のように、会計上は費用でも当期に現金支出を伴わないものがあるためです。一方で、赤字でも税金や社会保険料の支払いが発生するケースがあるため、「利益」と「現金(資金繰り)」を分けて確認することが重要です。
また、税務では会計上の赤字と同じ結論にならない場合があります。申告では、会計の利益に対して税法上のルールで加算・減算(税務調整)を行い、課税対象となる所得(課税所得)を計算します。ここを押さえると、赤字決算のメリット(欠損金の活用など)と、デメリット(納税・審査への影響など)を整理しやすくなります。

赤字決算で最初に確認する観点
  • 会計上の赤字か、税務上の欠損(欠損金)か
  • 赤字でも発生し得る支払い(税・社保・源泉など)の有無
  • 資金繰り表で「いつ」「いくら」出入りするか

赤字と欠損金の違いポイント

「赤字」は主に会計上の表現で、損益計算書で当期純利益(または税引前利益)がマイナスの状態を指します。一方「欠損金」は、税務上の所得計算の結果としてマイナスになった金額(税務上の赤字)を指すことが一般的です。会計は会社の経営成績を分かりやすく示す目的が強く、税務は税法に沿って課税所得を計算する目的が強いので、用語も計算の考え方も一致しない場面があります。
特に中小企業では、決算の段階で「会計上は赤字だが税務上は欠損金が少ない(または出ない)」「会計上は黒字でも税務上は欠損金が出る」といった差が起きることがあります。まずは言葉の役割を切り分け、どの数値を見て判断しているのかを明確にすると、税金・資金繰り・融資の説明が通りやすくなります。

用語 意味と確認ポイント
赤字(会計) 損益計算書で利益がマイナス。費用計上のタイミング(減価償却、引当金など)で変動しやすい
欠損金(税務) 税務調整後の課税所得がマイナスになった金額。繰越控除など税務上の扱いの対象になり得る
課税所得 会計利益を基礎に税法で加算・減算して算定。赤字でも課税所得がプラスになる場合がある
資金繰り 現金の入出金のタイミングの問題。赤字でも資金が回ることも、黒字でも資金不足になることもある

会計赤字と税務赤字比較

会計赤字と税務赤字がズレる代表的な理由は、税法で「損金(税務上の費用)にできないもの」や「計上方法が決まっているもの」があるためです。会計では費用として計上していても、税務では一部または全部が損金にならず、結果として課税所得が増えることがあります。逆に、会計では利益が出ていても、税務上は損金算入できる項目が増えて欠損金になるケースもあります。
イメージしやすいように、簡単な例で見てみます。会計上、売上1,200万円・費用1,250万円で50万円の赤字でも、税務上「損金にできない支出」が合計80万円あると、課税所得は30万円(=▲50万円+80万円)となり、税負担が発生し得ます。実際には法人税等の計算や各種控除が絡むため単純ではありませんが、「会計の赤字=税金ゼロ」と決めつけないことが大切です。

ズレが起きやすい典型パターン
  • 会計では費用でも、税務では損金不算入となる支出がある
  • 計上時期の違い(売上・費用の計上基準の差)で当期の所得が変わる
  • 欠損金の扱いは申告内容や手続き要件に左右される場合がある

赤字でも納税の原因チェック

赤字決算でも「納税や支払いが残る」原因は、利益(所得)に連動しない負担があるためです。特に法人は、所得がゼロでも一定額が発生する税目があり、資金繰りに直結します。また、消費税は利益ではなく取引(課税売上・仕入税額控除など)の関係で計算されるため、赤字でも納付になる可能性があります。さらに、従業員給与がある場合は源泉所得税や住民税の特別徴収など、預かった税金を期限までに納付する実務も発生します。
たとえば、売上にかかる消費税が100万円、仕入等で控除できる消費税が60万円なら、差額40万円が納付の目安になり得ます(実際の計算は課税区分や控除方法で変動します)。このように「赤字なのに支払いが出る」状況は珍しくないため、決算前後で支払い項目を棚卸ししておくと安全です。
【赤字でも支払いが発生しやすい項目】

  • 法人住民税の均等割(所得の有無と別に一定額が発生し得る)
  • 消費税(課税事業者の場合、取引内容により納付となる可能性)
  • 源泉所得税・住民税特別徴収(給与等から預かった分の納付)
  • 印紙税など取引に伴う税負担(契約形態により発生)
  • 社会保険料(加入状況により、毎月の支払いが継続)

税務メリットの全体像

赤字決算の税務メリットは、主に「欠損金(税務上の赤字)を将来または前年の所得に当てて、法人税等の負担を軽くできる可能性がある」点にあります。ただし、利用には青色申告や期限内申告などの要件があり、手続きの不足があると期待した効果が得られないことがあります。さらに、赤字でも利益と無関係に発生する負担(均等割、社会保険料など)があるため、税務メリットだけで資金繰りが改善するとは限りません。
そのため、赤字決算の局面では「節税になり得る制度」と「赤字でも残る支払い」を同じ表で並べ、資金繰り表に落として確認するのが実務的です。

区分 メリットの方向性 注意点の方向性
欠損金繰越控除 将来の所得と相殺し、将来の法人税等を軽減し得る 要件(青色・期限内など)や控除できる範囲に留意
繰戻し還付 一定の要件で前年分の法人税等の還付を受け得る 申告と同時の請求など手続き要件が厳格
赤字でも残る負担 資金繰り上の見落とし防止になる 均等割・社保などは赤字でも発生し得る

欠損金繰越控除の条件

欠損金の繰越控除は、欠損金を翌期以降の所得から差し引き、将来の法人税等の負担を軽くできる制度です。一般的には、青色申告を行い、所定の申告手続きを踏むことが前提になります。また、欠損金は「いつの年度に生じたものか」で管理し、一定期間内に生じた欠損金が対象となります(国税当局の解説では、一定の年数内に開始した事業年度の欠損金が対象になる旨が示されています)。
イメージとしては、繰越欠損金が150万円あり、当期の欠損金控除前の所得が100万円の場合、当期に控除できるのは100万円までとなり、所得は0円になります(残りは次期以降に繰り越される可能性があります)。この「その期にどれだけ相殺できるか」は、所得の大きさや制度上の上限に左右されるため、決算前に概算して資金計画に反映することが重要です。

欠損金繰越控除の事前チェック
  • 青色申告で申告しているか
  • 申告期限を守れているか(期限内申告が前提になりやすい)
  • 欠損金が「いつの年度のものか」を管理できているか
  • 当期の見込み所得に対し、どこまで相殺できそうか

繰戻し還付の対象と注意点

繰戻し還付(欠損金の繰戻しによる還付)は、一定の要件を満たすと、欠損金を前年の所得に繰り戻して法人税等の還付を受け得る制度です。一般的に、青色申告であること、前年以前の申告状況、欠損年度の期限内申告、申告と同時に還付請求書を提出することなど、手続き要件が重視されます。
実務上の注意点は「申告のタイミングで手続きを落とさない」ことです。例えば3月決算であれば、決算確定から申告期限までの間に、欠損金の確定・前期所得との対応・必要書類の準備を一気に行う必要が出ます。また、制度の適用可否は法人の状況で変わり得るため、要件確認は早めに行うのが安全です。

確認項目 つまずきやすい点
申告の連続性 前年以前の申告が連続しているか(欠けがあると要件を満たしにくい)
期限内申告 欠損年度の申告が期限後だと適用できないことがある
請求書の同時提出 申告書と同時提出が必要とされるため、後出しが難しい
根拠資料 欠損の内容(売上減、固定費増、貸倒など)を説明できるよう整理が必要

均等割・社会保険料負担目安

赤字決算でも、利益と無関係に発生する負担がある点は資金繰り上の重要ポイントです。代表例が法人住民税の「均等割」で、自治体の案内でも、所得がない場合や収益事業を行わない場合でも課税され得る旨が示されています。つまり、所得が出ない局面でも、一定の地方税負担が残り得ます。
また、社会保険料(厚生年金保険料等)は、赤字でも給与が発生していれば通常どおり納付が必要になりやすく、資金繰りを圧迫します。納付が遅れると督促や延滞金が発生し得るため、厳しい場合は早めに納付相談や猶予制度の検討が現実的です。日本年金機構の案内でも、一定の要件に該当する場合に猶予等により分割納付が可能となることや、延滞金の考え方が示されています。

赤字でも残りやすい支払いの見える化
  • 均等割:自治体や区分で年額が変わるため、所在地の区分で概算する
  • 社会保険料:毎月の固定支出として資金繰り表に先に置く
  • 遅れが見える場合:期限前に納付相談し、分納・猶予の可否を確認する

資金調達のデメリット

赤字決算が続くと、資金調達では「返済できる見込みが読み取りにくい」と評価されやすく、希望額どおりに借りにくい、条件が厳しくなる、審査に時間がかかるといったデメリットが出やすくなります。特に金融機関は、利益そのものだけでなく、営業で稼ぐ力(営業利益)や返済原資(キャッシュの増減)、債務の水準、税金・社会保険料の納付状況などを総合的に見ます。赤字でも「一時的な要因で、回復の道筋が説明できる」場合は相談余地がありますが、説明材料が不足すると不利になりやすい点は押さえておきたいところです。

起きやすいこと 赤字決算で不利になりやすい理由
希望額の減額 返済原資が弱いと見られ、借入枠が抑えられやすい
条件の厳格化 追加資料、担保・保証、短い返済期間などを求められやすい
審査の長期化 赤字要因・改善策の確認に時間がかかり、追加質問が増えやすい
選択肢の限定 銀行が難しい場合、公庫・保証付き・ノンバンク等へ検討範囲が移る

銀行融資での見られ方基準

銀行融資では、決算書の数字から「返済できる力があるか」を読み取るのが基本です。赤字だと、返済原資が細っている、固定費が重い、借入依存が高いといった見方につながりやすく、同じ売上規模でも評価が分かれます。一般的に確認されやすいのは、直近2〜3期の推移(赤字が単発か連続か)、売上総利益・営業利益の動き、借入金の増減、資産と負債のバランス、資金繰りの安定性(入金サイトと支払サイトの差)などです。
たとえば「売上は横ばいなのに人件費と外注費が増えて営業赤字」「売上減で粗利が落ちたが固定費をまだ下げられていない」といったケースでは、改善策(固定費削減、単価改善、回収条件の見直し)が数字で確認できるかが重要になります。また、税金・社会保険料の遅れがあると、資金繰り悪化のシグナルとして見られやすく、審査上の説明負担が増える点にも注意が必要です。

銀行が確認しやすいポイント(赤字期)
  • 赤字の原因が一時的か、構造的か
  • 資金繰りが回っているか(入金遅れ・支払遅れの有無)
  • 返済計画の妥当性(返済原資の見通し)
  • 税金・社会保険料の納付状況と、遅れがある場合の対応状況

公庫・保証協会の比較

赤字決算で銀行プロパー融資が難しい場合でも、日本政策金融公庫の融資や信用保証協会の保証付き融資など、別ルートで検討できることがあります。ただし「赤字でも借りやすい」と単純化はできず、どちらも事業の実態や返済可能性の説明が重要です。違いを押さえると、準備すべき資料や相談の順序を決めやすくなります。
一般的な整理として、公庫は政策目的に沿った資金供給の性格があり、創業・小規模事業者向けなど制度枠が用意されていることがあります。一方、保証協会付き融資は、金融機関融資に保証が付く形で、保証料が発生し得る点が特徴です。赤字の理由が「設備投資直後で減価償却負担が重い」「取引先の入金遅れで一時的にコストが先行した」などの場合は、資金使途と回復見通しをセットで示せるかがカギになります。

観点 公庫 保証協会付き
位置づけ 政策目的に沿った融資枠がある場合がある 銀行融資に保証が付く仕組み
費用感 利息が主(制度により条件は異なる) 利息に加えて保証料が発生し得る
赤字時の要点 赤字要因と改善計画、資金使途の整合 同左+保証料を含めた返済負担の見積り
準備の勘所 事業計画・資金繰り・見積書等の根拠 決算書に加え、資金繰り・改善策の説明材料

説明資料で補うステップ

赤字決算でも、説明資料を整えることで「なぜ赤字になったか」「いつ、どの施策で回復する見込みか」「借入金の返済をどう確保するか」を伝えやすくなります。数字のつじつまが合う資料を先に用意すると、追加資料依頼や差し戻しを減らしやすくなります。特に資金繰り表は、赤字局面の説得力を左右しやすい資料です。
例えば、来月末に支払が集中して資金が足りない見込みなら、資金繰り表で「入金予定(取引先別・日付別)」と「支払予定(家賃・外注費・税社保・借入返済)」を並べ、必要額と必要時期を明確にします。そのうえで、改善策(回収条件の短縮交渉、支払条件の見直し、固定費削減、追加受注の見込み)を数字で反映させると説明が通りやすくなります。

  1. 赤字要因を分解(売上減・粗利低下・固定費増・一時費用など)
  2. 直近3〜6か月の資金繰り表を作成(週次または月次)
  3. 必要資金の使途を整理(運転資金/納税資金/仕入・外注費/設備など)
  4. 返済計画を作成(売上・粗利・固定費・返済額の整合を確認)
  5. 根拠資料を添付(試算表、受注・見積、請求書控え、契約書、納付状況など)
赤字時に通りにくくなる説明の共通点
  • 資金使途があいまいで、必要額と必要時期が説明できない
  • 赤字の原因が「売上不振」だけで、打ち手が数値化されていない
  • 税金・社会保険料の遅れがあるのに、対応方針(相談・分納等)が示されていない

資金繰りと倒産リスク

赤字決算の局面で本当に怖いのは「利益が出ていないこと」そのものより、手元資金が尽きて支払いが止まることです。利益は会計上の概念ですが、倒産リスクは現金の流れ(入金と出金のタイミング)で高まります。たとえば、黒字でも売掛金の回収が遅れたり、在庫・先行投資で現金が出ていったりすると、支払いができずに資金ショート(支払不能)に陥ることがあります。赤字の場合は、返済や納税・社会保険料などの固定的な支払いが重く感じられ、資金繰りが一気に悪化しやすい点に注意が必要です。
そこで重要になるのが、資金繰り表で「いつ」「いくら不足するか」を先に見える化し、支払条件・回収条件・税社保の相談など、打てる手を前倒しで講じることです。短期の資金確保だけでなく、返済計画や固定費の見直しとセットで考えるほど、倒産リスクは下げやすくなります。

倒産リスクが高まりやすい典型パターン
  • 売上入金が遅いのに、仕入・外注・人件費の支払いが先に来る
  • 税金・社会保険料の支払いが重なり、月末資金が不足する
  • 短期借入やリスケで返済日が集中し、資金の山谷が大きい

資金繰り表の警戒ライン

資金繰り表は、将来の入金予定と支払予定を時系列で並べ、資金残高の推移を把握する表です。赤字決算のときは、月次だけでなく「週次」で作ると、資金不足のタイミングを早く掴めます。警戒ラインは業種や支払構造で異なりますが、実務では「最低限これだけは現金が必要」という固定支出を基準に置くと判断がぶれにくくなります。
たとえば、毎月の固定支出が「家賃20万円+人件費120万円+外注費40万円+借入返済30万円+社保40万円=250万円」なら、資金残高が250万円を下回る月が見えた時点で黄色信号です。さらに、消費税や法人住民税の納付が重なる月があるなら、その月だけ警戒ラインを上乗せして管理します。こうして警戒ラインを決めると、回収交渉や支払条件の調整、追加調達の検討を早めに始められます。

項目 警戒の考え方(例)
固定支出 家賃・人件費・社保・借入返済など、削りにくい支出を合算して基準にする
変動支出 仕入・外注・広告費など、売上に連動する支出の増減を見込む
季節要因 繁忙期前の仕入増、賞与月、繁閑差を織り込む
税金イベント 消費税・住民税・固定資産税など、支払い月を先に設定する
資金繰り表でよくある見落とし
  • 入金予定が「月末一括」扱いで、実際の入金日がずれている
  • 税金・社保・源泉などの支払いを資金繰り表に入れていない
  • 売掛金の回収遅延や貸倒リスクを織り込めていない

支払サイト見直し交渉法

資金繰りが厳しいときは、資金調達だけでなく「支払サイト(支払い期限)と回収サイト(入金までの期間)」の差を縮めることが重要です。支払サイトの見直し交渉は、相手の信頼を損なわない進め方が必要で、ポイントは「事前に数字を用意し、期限を切って、代替案も出す」ことです。単に「払えません」ではなく、いつまでにいくら支払えるのか、どの支払いを優先するのかを明確にします。
具体例として、毎月末に外注費80万円を支払っているが、入金が翌月20日に集中している場合、月末に資金が不足しやすくなります。このとき「外注費を翌月10日払いに変更」または「月末40万円+翌月10日40万円の分割払い」にできると、資金の谷が浅くなることがあります。交渉は早いほど選択肢が増えるため、資金残高が尽きる直前ではなく、資金繰り表で不足が見えた時点で着手するのが実務的です。

支払条件の交渉チェックリスト
  • 資金繰り表で不足時期と不足額を提示できるか
  • 分割・一部前払い・支払日変更など代替案を用意したか
  • 次回以降の通常支払いに戻す時期を示せるか
  • 合意内容を書面やメールで残せるか

納税猶予・分納の流れ

税金や社会保険料の支払いが難しい場合、放置すると延滞税(延滞金)や督促などにつながり、資金繰りをさらに悪化させるおそれがあります。違法な資金移動や隠ぺいで逃れるのではなく、早めに相談して手続きを踏むことが現実的です。一般に、税金は税務署、社会保険料は年金事務所等で相談窓口があり、分割納付や猶予制度の対象になり得ます。
流れとしては、まず納付状況と滞納額を整理し、いつからいくらなら払えるかを資金繰り表で示します。そのうえで、納付計画(分納案)を作り、必要に応じて収支資料や預金残高、試算表などを準備して相談します。例えば、滞納額が60万円で、毎月10万円ずつ6か月で納付する計画を立てる場合、売上の入金タイミングと支払予定を踏まえて「毎月何日に支払うか」まで決めておくと、実行可能性を説明しやすくなります。

ステップ やること
状況整理 滞納額、期限、納付先(税・社保)を一覧化し、資金繰り表に反映する
支払計画 分納の金額・回数・支払日を設定し、他の支払いと両立するか検証する
相談・申請 窓口へ相談し、必要書類や手続き(猶予等)の案内に沿って提出する
実行管理 資金繰り表を更新し、遅れが出そうなら早めに再相談する
遅れが出たときに避けたい対応
  • 連絡せず放置し、督促や延滞負担を増やす
  • 資金繰り表を作らず、場当たり的に支払優先順位を変える
  • 相手に説明できる根拠資料がなく、交渉が長期化する

経営者の立て直し判断軸

赤字決算が出たとき、経営者が優先して行うべきは「原因の特定」と「資金が尽きないための手当て」を同時に進めることです。赤字の理由が売上減なのか、粗利(売上総利益)の低下なのか、固定費の増加なのかで打ち手は変わります。また、資金調達を検討する場合でも、返済可能性の説明には「損益分岐点(いくら売れば黒字化するか)」と「固定費の圧縮余地」がセットで求められやすいです。
立て直しは、短期の延命策だけでなく、中長期で収益構造を改善する順序が重要です。例えば、今月・来月の支払いを乗り切るための資金確保と並行して、固定費の適正化、採算の悪い取引の見直し、単価・粗利の改善などを計画に落とし込みます。ここで数字の根拠が弱いと、金融機関や取引先との対話でも不利になりやすいので、最低限の管理指標を揃えることが経営判断の軸になります。

立て直しで最初に押さえる3つの軸
  • 損益分岐点:黒字化に必要な売上水準の把握
  • 固定費:毎月必ず出ていく支出の圧縮余地
  • 資金繰り:不足時期と不足額を先に特定

損益分岐点と固定費ポイント

損益分岐点とは、売上と費用が釣り合い利益がゼロになる売上水準です。赤字の立て直しでは「いくら売れば黒字化するか」を明確にし、達成可能な施策に落とすことが重要になります。基本的な考え方は、固定費(家賃・人件費・通信費など売上に関係なく発生しやすい費用)を、限界利益率(売上から変動費を引いた利益の割合)で割って算出します。難しく感じる場合は、まず「粗利率」を使って簡易に目安を出すだけでも意思決定が進みます。
具体例として、毎月の固定費が200万円、粗利率が40%(売上のうち40%が粗利)なら、単純計算の損益分岐点売上は「200万円÷0.4=500万円」が目安です。今の売上が400万円なら、黒字化には「売上を100万円増やす」か「固定費を40万円下げる」か「粗利率を上げる(値上げ・原価改善・不採算取引の停止)」など、複数の組み合わせが必要になります。

打ち手 固定費・損益分岐点に効くポイント
固定費削減 家賃・人件費・外注の固定化部分を見直し、削減額がそのまま必要売上の引下げにつながる
粗利率の改善 値上げ、原価低減、仕入条件見直しで、同じ売上でも利益が増える
不採算の遮断 赤字案件・回収が遅い取引を減らし、資金繰りと利益の両面を改善しやすい
売上構成の転換 利益率が高い商品・サービス比率を上げ、黒字化の到達を早める
損益分岐点の計算で起きやすい誤解
  • 売上を増やせば必ず黒字になると思い込み、粗利率や回収条件を見ていない
  • 固定費に含めるべき支出(社保、保守費、リース等)を除外している
  • 繁閑差や季節変動を無視して、月次平均だけで判断している

役員報酬の見直し注意点

役員報酬は、資金繰りの固定費として影響が大きい一方で、見直しには税務上のルールが絡むため注意が必要です。一般に、役員報酬の損金算入(税務上の費用化)は、一定の支給方法や手続きに沿う必要があり、期中の安易な変更は損金にならないリスクが生じ得ます。そのため、資金繰りが厳しいからといって、思いつきで増減させるのではなく、決算期や株主総会等の手続きのタイミング、会社の状況に合う方法を専門家と確認しながら進めることが安全です。
実務面では「役員個人の生活費」と「会社の資金繰り」の両立が課題になります。例えば、毎月の資金繰り表で不足が見えるなら、役員報酬だけでなく、役員借入(役員が会社へ貸し付ける形)や、役員の私的支出の見直しも含めて、現実的な資金確保策を整理します。なお、役員報酬を下げる場合でも、社会保険料の見込みや、今後の返済計画への影響を同時に点検することが大切です。

見直し時に事前にそろえる情報
  • 資金繰り表:今後3〜6か月の不足時期と不足額
  • 役員報酬の現状:月額、改定時期、決議書類の有無
  • 税務影響:損金算入の可否、変更タイミングの制約
  • 社保影響:報酬改定による負担見込みの変化

税理士・支援機関の相談先

赤字決算が続く局面では、税務・資金繰り・資金調達が連動するため、相談先を使い分けると整理が早くなります。税務の要件確認(欠損金、申告手続き、納税猶予等)や決算書の整備は税理士が中心になりやすく、資金繰り表の作成や金融機関提出資料の整備も合わせて支援を受けられる場合があります。一方で、経営改善計画や販路開拓、原価改善などの経営課題は、商工会議所・商工会、よろず支援拠点、中小企業支援の窓口などに相談する選択肢があります。
相談をスムーズにするには、現状資料を「1枚で分かる形」にまとめるのが効果的です。例えば、直近2〜3期の決算概要、今後6か月の資金繰り表、借入一覧(残高・返済日・金利)、滞納の有無、赤字要因と改善策のメモを用意しておくと、初回相談でも具体的な話に入りやすくなります。

相談先 向いているテーマ
税理士 決算・申告、欠損金の扱い、納税計画、資金繰り表の整備、金融機関提出資料の精度向上
金融機関・公庫 資金調達の選択肢、必要書類、審査での説明ポイント、返済計画の妥当性確認
商工会議所・商工会 経営改善の方向性、事業計画の整理、販路・コスト構造の見直しの助言
よろず支援拠点等 課題整理、専門家への橋渡し、改善施策の優先順位づけ
相談前に整えておくと話が早い資料
  • 直近2〜3期の決算書と試算表(可能なら月次推移)
  • 今後3〜6か月の資金繰り表(週次が望ましい)
  • 借入一覧(残高・返済額・返済日・担保保証の有無)
  • 赤字要因と改善策(いつまでに何をするかのメモ)

まとめ

赤字決算は、欠損金の活用で税務面のメリットがある一方、均等割や社会保険料など「赤字でも発生する負担」や、融資審査での見られ方に注意が必要です。次の要点で整理しましょう。 ・税務:欠損金繰越控除/繰戻し還付の可否と条件を確認 ・調達:銀行・公庫・保証協会で評価軸が異なるため、説明資料を準備 ・資金繰り:資金繰り表で入出金と返済原資を可視化し、支払条件も見直し ・リスク:税金・社保の遅れは早めに猶予・分納等を検討し相談 まずは入金予定・支払予定を棚卸しし、候補手段を比較したうえで、中長期の返済計画・事業計画とセットで税理士や金融機関等に相談できる形に整えましょう。