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赤字決算でも消費税が発生する理由とは?計算手順・申告手順と注意点を解説

赤字決算なのに消費税の納付が発生し、「利益が出ていないのに税金だけ払うのはなぜ?」と悩む事業者は少なくありません。資金繰りが厳しく銀行融資も難しい状況では、納付時期や中間申告が重なるとさらに負担が増えます。本記事では、赤字と消費税納税額が一致しない理由、納税義務の判定、本則課税・簡易課税の計算手順、還付や納付ゼロの条件、猶予・分納の考え方、帳簿保存や申告ミスの注意点までを客観情報で整理します。

赤字でも消費税が出る理由

赤字決算でも消費税の納付が発生するのは、消費税が「利益(黒字・赤字)」ではなく、課税売上に係る消費税額から仕入税額控除(課税仕入れ等に係る消費税額を差し引く仕組み)を差し引いて計算する税金だからです。たとえば、人件費・利息・減価償却費など、損益計算書上の費用は増えて赤字でも、課税売上があり、控除できる仕入税額が相対的に小さいと納付が残ります。制度は改正されることがあるため、判定は最新の要件で確認してください。

赤字と納税額の違い

赤字は「売上-費用」で決まる一方、消費税の納付は「課税売上に係る消費税額-仕入税額控除」で概算します。そのため、赤字でも納付が出ることがあります。

前提(例) 金額
課税売上 売上500万円(5,000,000円)→仮受消費税50万円(500,000円)
課税仕入 仕入等480万円(4,800,000円)→仮払消費税48万円(480,000円)
消費税の差額 50万円-48万円=2万円(20,000円)
損益 ここに人件費80万円(800,000円)等が加わると赤字でも、消費税は2万円が残り得ます

このように、損益が赤字でも、取引(課税売上・課税仕入)の差で納付が発生する点がポイントです。

納税義務の判定基準

そもそも納税義務があるかは、基準期間の課税売上高が1,000万円(10,000,000円)を超えるかどうかが基本の入口です。ただし、基準期間が1,000万円以下でも、特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合や、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合などは、納税義務が免除されないことがあります。また、設立間もない法人は基準期間がないため原則は免除ですが、期首資本金が1,000万円以上など一定の場合は課税事業者となります。

赤字でも先に確認する3点
  • 基準期間・特定期間の課税売上高が各1,000万円(10,000,000円)を超えていないか
  • 適格請求書発行事業者の登録や課税事業者選択の有無
  • 新設法人の場合、期首資本金が1,000万円以上(10,000,000円)に該当しないか

中間申告の仕組み

赤字でも「中間申告・納付」が必要になるのは、中間申告が原則として直前の課税期間の確定消費税額(地方消費税を除く)を基準に決まるためです。直前の課税期間の確定消費税額が48万円(480,000円)を超えると中間申告の対象となり、税額水準に応じて年1回・年3回・年11回など回数が増えます。現在の課税期間が赤字であっても、直前が納付超過なら中間納付が発生し得るため、資金繰り表に「中間納付の期限」と「見込み額」を先に落としておくことが実務上重要です。

計算方法と区分選択

消費税の計算は、大きく「本則課税(実額で計算)」と「簡易課税(みなし仕入率で計算)」に分かれます。赤字決算でも納付や還付が出るかは、課税売上に係る消費税額と仕入税額控除の差で決まるため、どちらの区分で申告するかは資金繰りに直結します。区分選択では、基準期間の課税売上高、事業区分(みなし仕入率)、設備投資の有無、課税売上割合(課税売上が全体に占める割合)などを前提に、見込みの納付額(円)を試算して比較するのが基本です。

本則課税の計算ステップ

本則課税は、売上に係る消費税(仮受消費税)から、課税仕入れ等に係る消費税(仮払消費税)を差し引いて納付額(または還付額)を計算します。ポイントは「課税売上」「非課税取引」「不課税取引」「免税取引」を区分し、控除できる仕入税額を正しく集計することです。

  1. 課税売上高(税抜)を集計し、売上に係る消費税額を計算する
  2. 課税仕入れ等(仕入・経費)の税額を集計し、仕入税額控除の対象を整理する
  3. 課税売上割合が低い場合は、控除方法(個別対応方式・一括比例配分方式など)を検討する
  4. 差引(売上税額-仕入控除税額)で納付(または還付)を確定する

例:課税売上500万円(5,000,000円)で売上税額50万円(500,000円)、課税仕入480万円(4,800,000円)で仕入税額48万円(480,000円)なら、差引2万円(20,000円)が納付の目安になります(実際は端数処理や区分により変動します)。

簡易課税の適用条件

簡易課税は、仕入税額控除を実額ではなく「みなし仕入率」で計算する制度です。原則として、基準期間の課税売上高が5,000万円(50,000,000円)以下などの要件を満たし、所定の届出を期限までに行った課税事業者が選択できます。適用すると、仕入や経費のインボイス有無の集計負担が軽くなる一方、実際の仕入割合が高い業種や大きな設備投資がある年は、本則課税の方が有利になることもあります。

項目 確認の目安
対象要件 基準期間の課税売上高が5,000万円(50,000,000円)以下か
手続き 簡易課税制度選択届出書を期限までに提出しているか
計算の核 売上税額×(1−みなし仕入率)で納付額を求める

みなし仕入率は事業区分で異なります(例:第1種90%、第2種80%、第3種70%、第4種60%、第5種50%、第6種40%など)。自社の売上がどの区分に該当するかで結果が大きく変わるため、売上区分の判定を先に整えることが重要です。

仕入税額控除の注意点

仕入税額控除は、課税仕入れ等に係る税額を差し引ける制度ですが、何でも控除できるわけではありません。課税売上に対応しない支出(私的支出、非課税取引にのみ対応する支出など)は控除対象外または按分が必要です。また、帳簿と請求書等の保存が前提で、適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)下では、取引先の区分や保存書類の要件を満たさないと控除が制限される場合があります。設備投資の年は仕入税額が増え、還付や納付減につながることがありますが、課税売上割合や用途区分の整理が不十分だと想定通りにならない点に注意してください。

仕入税額控除でつまずきやすい点
  • 課税・非課税・不課税の区分が混在し、控除対象が過大になる
  • インボイスや帳簿の保存要件を満たさず、控除が認められない
  • 共通経費(家賃・通信費等)を課税売上割合や用途で按分していない
  • 設備投資の用途(課税売上対応か)が曖昧で、還付見込みが崩れる

還付・納付ゼロの目安

赤字決算でも消費税は「売上に係る消費税額-仕入税額控除」で決まるため、納付が出る場合もあれば、還付(払い過ぎ分が戻る)や納付ゼロになる場合もあります。目安としては、課税売上に係る消費税額より、課税仕入れ等に係る消費税額が大きいと還付になり得ます。反対に、免税事業者はそもそも消費税の申告・納付の枠組みが異なるため、還付を前提に考えると誤解しやすいです。また、簡易課税は計算が簡便な一方、仕組み上「還付になりにくい(原則、還付にならない)」点も押さえておくと判断が早まります。

還付が出る典型パターン

還付は、課税売上に係る消費税額より、仕入税額控除の対象となる消費税額が大きいときに起こり得ます。典型は、輸出などの免税取引(いわゆるゼロ税率)で売上側の消費税が発生しない一方、国内での課税仕入れがあるケースです。ほかにも、開業・新規事業の初期で売上が小さいのに、広告費や外注費など課税仕入れが先行するケースも該当し得ます。
計算イメージとして、課税売上の消費税が30万円(300,000円)、課税仕入れ等の消費税が50万円(500,000円)なら、差引20万円(200,000円)が還付の候補になります(実際は区分や控除要件で変動します)。還付を見込む場合は、帳簿と請求書等の保存、取引区分の整理が前提になるため、「還付になりそうか」を先に試算してから、資料を揃えて申告する流れが安全です。

還付が出やすい状況のチェック
  • 課税売上の消費税額より、課税仕入れ等の消費税額が大きい
  • 免税取引(例:輸出)があり、売上側の消費税が発生しない
  • 売上が小さい時期に、課税仕入れ(広告・外注等)が先行している

免税事業者の還付不可

免税事業者は、原則として消費税の納税義務が免除される立場であり、同時に仕入税額控除を使って「還付を受ける」という計算構造にはなりません。つまり、免税事業者のままでは、課税仕入れ等で支払った消費税が多くても、申告して取り戻す形にはしにくい点が重要です。
一方で、将来の取引要請(例:適格請求書の対応)や還付見込みなどの事情から、課税事業者を選択して申告する選択肢が検討されることがあります。ただし、課税事業者を選択すると、原則として一定期間は免税に戻りにくいなど運用上の制約があるため、還付だけを目的に短期で判断すると資金繰りが読みにくくなります。実際に選択する場合は、売上見込みと設備投資の計画、2年程度のスパンでの納付見通しまで含めて税理士等と試算するのが安全です。

免税のまま想定しがちな誤解
  • 「赤字なら消費税が戻る」と思い込み、資金繰り計画が崩れる
  • 免税のままでも還付申告できると誤解して準備を進めてしまう
  • 課税事業者選択の影響(戻りにくさ等)を見落とす

設備投資と還付の注意

設備投資は金額が大きく、課税仕入れ等に係る消費税額が増えやすいため、還付や納付減につながる可能性があります。ただし、設備を何に使うか(課税売上に対応するか、非課税売上に対応するか、共通か)で、仕入税額控除の可否や控除額が変わります。たとえば、課税売上にのみ使う設備なら控除しやすい一方、非課税取引に対応する設備や用途が混在する場合は按分が必要になることがあります。
また、設備投資で還付が見込めても、その後の売上構成が変わると、後から調整が必要になる制度が関わる場面もあります。還付を前提に資金繰りを組む場合は、投資内容(設備の用途)、課税売上割合の見込み、保存書類(契約書・請求書・支払記録)を揃えたうえで、申告スケジュールと着金時期も含めて計画することが重要です。

確認項目 見落としやすいポイント
設備の用途 課税売上対応か、非課税対応か、共通かで控除額が変わる
課税売上割合 売上構成の変化で控除の計算・調整が必要になる場合がある
保存書類 請求書等・帳簿・支払記録が揃わないと控除が制限され得る

納付が厳しいときの対応

赤字決算でも消費税の納付期限は到来するため、資金繰りが厳しい場合は「期限を過ぎてから考える」のではなく、期限前から選択肢を整理することが重要です。対応は大きく、(1)税務署へ早めに相談して猶予・分納等を検討する、(2)延滞税などの付随コストを増やさない管理を行う、(3)資金繰り表に税金の支払予定を明示し、支払優先順位を再点検する、の3本柱で考えると実務が進めやすくなります。制度要件や手続きは改正される可能性があるため、最新の取扱いは税務署や税理士等に確認した上で進めてください。

納税猶予・分納の手順

納付が難しい場合は、放置ではなく「相談→必要書類→申請(または分納の相談)」の順で動くのが基本です。税務署では、納付が困難な事情や資金繰り状況を確認した上で、猶予や分割納付(分納)を含む対応を検討します。ポイントは、いつまでにいくら払える見込みかを数字で示すことです。たとえば「納付額30万円(300,000円)を一括は難しいが、毎月5万円(50,000円)なら6回で支払える」など、実現可能な計画にします。

相談〜手続きの進め方(目安)
  1. 納付期限・納付額(円)を確定し、現預金と入金予定を整理する
  2. 税務署へ早めに連絡し、猶予や分納の可否・必要書類を確認する
  3. 資金繰り表と合わせて「支払計画(回数・金額・日付)」を作成する
  4. 申請や相談の結果に沿って納付し、遅延が出そうなら再度連絡する
手続きでは、資金繰りの根拠資料(試算表、預金残高、入金予定、支払予定など)を求められることがあるため、事前に揃えておくと話が早くなります。個別事情によっては担保や条件が論点になる場合もあるため、不明点は税理士等へ確認してください。

延滞税を増やさない管理

延滞税は、期限内に納付できない場合に発生し得るため、納付が厳しいと分かった時点で「期限管理」と「連絡・相談」を徹底することが重要です。特に、(1)納付期限の見落とし、(2)中間申告の納付を失念、(3)口座振替や振込手続きの不備、が重なると資金繰りが一段と厳しくなります。
実務では、支払を先延ばしにするよりも、納付可能額を部分的にでも入れるか、猶予・分納の相談を行い、手続き方針を確定させることが有効です。あわせて、納付資金を別口座で確保する、納付予定を社内カレンダーに登録する、申告後すぐに納付予定を確定して資金繰り表へ転記する、といった運用で「期限超過の事故」を減らします。

期限超過が起きやすいパターン
  • 赤字のため納付はないと誤認し、申告後の納付確認をしない
  • 中間申告の通知を見落とし、資金を別支払に回してしまう
  • 納付方法(振替・振込等)の手続き不備で期限を過ぎる

資金繰り表での見える化

消費税は、売上の入金サイトより遅れて納付が来るとは限らず、資金繰りの谷で重なりやすい支出です。対策として、資金繰り表に「消費税(確定)」「消費税(中間)」を別行で記載し、納付期限ベースで資金を確保します。
例として、月末に家賃20万円(200,000円)、人件費80万円(800,000円)があり、同月に消費税30万円(300,000円)の納付期限が来る場合、税金を見落とすと不足が発生しやすくなります。税金を支払予定に入れたうえで、入金予定(売掛金の回収日)と突合し、どの週に資金が足りないかを把握します。

項目 記載例(目安)
納付予定 消費税(確定)30万円(300,000円)/納付期限:◯月◯日
関連支出 家賃20万円(200,000円)/人件費80万円(800,000円)/仕入50万円(500,000円)
入金予定 売掛金120万円(1,200,000円)/入金日:◯月◯日
不足判定 納付期限前後の残高がマイナスにならないかを確認

見える化ができると、分納相談の「現実的な支払計画」も作りやすくなり、延滞を防ぐ実務につながります。

決算・申告のチェック

赤字決算で消費税が重く感じる場面ほど、申告の前提となる区分(課税・非課税・不課税、税率区分等)や、仕入税額控除の要件(帳簿と請求書等の保存)でミスが起こりやすくなります。さらに、簡易課税の適用可否や事業区分の判定、中間申告の有無などが絡むと、納付見込みと実際がずれて資金繰り計画が崩れることがあります。ここでは、保存要件、よくある申告ミス、税理士へ相談すべきタイミングを、実務で確認しやすい形にまとめます。

帳簿と請求書の保存要件

仕入税額控除を適用するには、原則として帳簿と請求書等の保存が必要です。保存が不十分だと、控除額が減り、赤字でも納付が増える要因になり得ます。まずは「取引ごとの区分」と「保存物」を対応させ、決算前に不足を埋めます。特に、経費の領収書が揃っていても、取引内容(課税対象かどうか)や取引先情報が確認できないと、整理に時間がかかります。

区分 保存・整理の観点
売上 課税・非課税・免税などの区分が分かる形で帳簿へ記録する
仕入・経費 課税仕入れ等に該当するかを判断できる証憑を揃える
共通経費 用途区分(課税売上対応/非課税対応/共通)の整理を行う
決算前に確認したい保存の要点
  • 帳簿に「取引日・相手先・内容・金額・区分」が記録されている
  • 請求書等が取引と紐づき、後から追える状態になっている
  • 共通経費は用途や割合の根拠が残っている
電子データで受領・保存している場合は、保存要件が別途論点になることがあるため、運用ルールを社内で統一し、不明点は税理士等へ確認してください。

申告ミスが多い論点

赤字時に多いミスは、納付額を減らしたい意識が先行して「区分や要件の整理が追いつかない」ことです。代表的には、課税・非課税・不課税の混同、税率区分の誤り、簡易課税の事業区分の判定ミス、課税売上割合や用途区分の整理不足などがあります。たとえば、非課税売上にのみ対応する支出まで控除対象として集計すると、後から修正が必要になり、追徴や資金繰りの乱れにつながり得ます。

よくあるミスのチェックリスト
  • 課税・非課税・不課税の区分が曖昧なまま集計している
  • 簡易課税の事業区分が売上実態と一致していない
  • 共通経費の按分根拠がなく、控除額が過大になっている
  • 中間申告の納付予定を資金繰り表に反映していない
ミスを減らすには、月次で区分を整え、決算期にまとめて仕分けしない運用が有効です。

税理士相談のタイミング

税理士への相談は「申告直前」より、「制度選択や投資判断が絡む前」に行う方が効果的です。特に、簡易課税の適用可否や区分選択、設備投資を伴う年の控除・還付見込み、課税売上割合が大きく変動する見込みがある場合は、早めの試算が資金繰りに直結します。
また、納付が厳しいときの猶予・分納の相談でも、資金繰り表の作り方や根拠資料の整え方を助けてもらえるため、期限が迫る前の相談が安全です。実務では、申告期限の1〜2か月前には「今期の区分」「納付見込み」「中間申告の影響」を一度整理し、判断が必要な論点だけ税理士へ確認する流れにすると、時間とコストを抑えやすくなります。

まとめ

赤字でも消費税が出るのは、損益(赤字・黒字)ではなく、課税売上と仕入税額控除の差で納付額が決まるためです。まず納税義務の有無と中間申告の仕組みを確認し、本則課税・簡易課税のどちらが有利かを計算で比較しましょう。還付や納付ゼロは条件があり、免税事業者や設備投資時の取扱いも要注意です。納付が厳しい場合は猶予・分納等を検討し、延滞税を増やさない管理と資金繰り表への反映が重要です。次の行動は、必要額と納付時期を整理→試算→不明点は税理士・税務署へ相談、の順で進めてください。