【厳選19社】ファクタリングのサービスや手数料を徹底比較 >

当サイトはプロモーションが含まれています

ファクタリング仕訳と借入金の関係は?中小企業向け実務判断と仕訳例

ファクタリングを利用するとき、「仕訳は売掛債権売却でよいのか」「借入金として処理すべきケースはあるのか」で迷うことが少なくありません。本記事では、ファクタリングと短期借入金の違い、日本基準での基本仕訳フロー、2社間・3社間ごとの具体仕訳例に加え、動産担保融資など実質が融資に近いスキームで借入金計上が必要となる場面まで整理します。さらに、IFRS適用時の考え方や、借入金仕訳が負債比率・銀行評価に与える影響、契約書のどこを見て区分判断するか、税理士へ相談すべきケースの目安も解説し、現場で迷わないための実務判断の軸を示します。

ファクタリングと借入金仕訳の基本

ファクタリングは、「売掛債権(売掛金)」そのものをファクタリング会社に売却して資金化する取引です。日本の会計実務では、中小企業の会計に関する指針などで、手形割引や金融機関による金銭債権の買取りは「金銭債権の譲渡=資産の売却」として位置付けられており、ファクタリングもこのグループに含めて取り扱うのが一般的です。 このため、原則として「借入金」を使わず、売掛金の振替(未収入金など)と「売上債権売却損」などで処理します。

一方、短期借入金は、銀行やノンバンクなどから資金を「借り入れる」取引であり、元本返済義務と利息の支払いを前提とします。売掛債権を担保に資金を借りる「動産・債権担保融資(ABL)」のようなスキームでは、借入金として処理するのが原則であり、「売掛債権の譲渡」ではなく「融資」として区別されます。

実務解説でも、「ファクタリングは短期借入金として処理しないのが原則であり、短期借入金を用いるのは実質的に動産担保融資と判断される場合に限られる」と説明されているものが多く見られます。 つまり、「売掛債権の売却による資金調達」なのか「売掛債権を担保にした借入」なのかを見極めることが、仕訳の第一ステップです。

区分 資金調達の仕組み 仕訳の基本イメージ
買取型ファクタリング 売掛債権を譲渡し、手数料控除後の現金を受け取る。 売掛金→未収入金への振替+入金時に「普通預金」+「売上債権売却損」。借入金は原則使用しない。
短期借入金 銀行などから資金を借り入れ、元本返済・利息支払を行う。 入金時に「普通預金/短期借入金」、以後「支払利息」で費用計上。
動産担保融資(ABL) 売掛債権や在庫を担保として融資を受ける。 本質は融資のため「借入金」で処理。ファクタリングとは区別して扱う。

ファクタリングと短期借入金の違い

ファクタリングと短期借入金は、どちらも「資金調達」の手段ですが、会計・税務上の性質は大きく異なります。ファクタリングは金銭債権の譲渡として扱われ、売掛債権の所有権や回収リスクをファクタリング会社側に移転させることを前提とします。中小企業の会計に関する指針でも、金融機関等による金銭債権の買取りは「金銭債権の譲渡」に該当するとされており、この考え方を前提に「売掛債権売却損」などで処理する実務が広がっています。

これに対し、短期借入金は負債であり、元本返済義務を伴います。借入れた資金に対して「支払利息」を計上する点が特徴で、貸借対照表では負債の部に計上され、負債比率や自己資本比率などの財務指標に直接影響します。ファクタリングとの違いを整理した記事でも、「ファクタリングは売掛債権の売却として処理し、短期借入金として処理しない」「短期借入金として処理するのは実質的に動産担保融資の場合のみ」と説明されており、両者を明確に区別することの重要性が指摘されています。

実務では、「請求書を担保にお金を借りられる」「分割で返済できる」といった説明を受けるケースもありますが、その内容が売掛債権の完全な譲渡ではなく、実質的に返済義務を負う融資であれば、短期借入金として処理すべき動産担保融資に該当する可能性があります。その場合、利息制限法の範囲内で利息・手数料が設定されているか、信用情報機関への登録が行われるか、金融業の登録業者かといった点も、ファクタリングではなく融資と判断する材料になります。

ファクタリングと短期借入金の違いを押さえるポイント
  • ファクタリング:売掛債権の譲渡。会計上は資産の売却で処理し、借入金は原則使わない。
  • 短期借入金:銀行等からの融資。元本返済義務と支払利息を伴い、負債として計上する。
  • 「分割返済」「売掛金を担保に資金を借りる」など、実質が融資に近いスキームは短期借入金の可能性あり。

借入金仕訳を使わない原則整理

日本基準の通常のファクタリングでは、「借入金仕訳は使わない」のが原則とされています。中小企業向けの解説やファクタリング会社の経理記事でも、「ファクタリングは融資ではないため、借入金勘定で仕訳することは原則ない」「短期借入金を使うのは、実質的に動産担保融資と判断される場合だけ」と明記されています。 これは、前述のとおりファクタリングが金銭債権の譲渡として定義されていることに基づくものです。

会計実務としては、買取型ファクタリングでは「売掛金→未収入金(未収金)への振替」と「入金時の普通預金+売上債権売却損」で完結させるのが標準的なフローであり、借入金は登場しません。 保証型ファクタリング(売掛保証)の場合も、売掛金は自社に残り、保証料を「支払手数料」などで処理し、貸倒発生時に「貸倒損失」「雑収入」を用いるなど、借入金とは異なる世界の処理になります。

例外的に借入金仕訳が登場するのは、①売掛債権を担保に資金を借りる動産担保融資(ABL)、②IFRS適用企業で、リスクと経済的便益の多くを企業が保持していると判断されるファクタリング取引(売掛金の消滅認識が認められず、借入金として処理するケース)などに限られる、という整理が一般的です。 中小企業の多くは日本基準・個別財務諸表ベースであるため、「通常の買取型ファクタリングでは借入金を使わない」が基本、例外的にスキーム内容を精査して借入金と判断する取引だけ、別枠で処理するという運用が現実的です。

借入金を使わない原則と、使うべき例外の整理
  • 原則:買取型・保証型とも、日本基準の通常のファクタリングは借入金ではなく「債権譲渡」「保証料」として処理する。
  • 例外:売掛債権を担保にした動産担保融資(ABL)など、実質が融資のスキームは「短期借入金」として処理。
  • IFRS適用企業など、リスク・便益を十分に移転していないファクタリングは、借入金処理となる可能性があるため専門家と要相談。

借入金を使わない仕訳実務パターン

ファクタリングの会計処理は、日本基準では「金銭債権の譲渡」として扱うのが原則です。中小企業の会計に関する指針や実務解説でも、売掛金をファクタリング会社に売却した場合は、売掛債権の譲渡損として「売上債権売却損」などで処理し、短期借入金などの借入科目は用いない会計処理例が示されています。 つまり、ファクタリングは「借入」ではなく「売却」であり、貸借対照表上は売掛金が減少し、代わりに現金と譲渡損が計上される形になります。

実務的なパターンとしては、①売上計上時に「売掛金/売上」、②ファクタリング契約締結時に「未収金(未収入金)/売掛金」、③ファクタリング会社から入金があった時点で「普通預金+売上債権売却損/未収金」という3段階の仕訳が、多くの解説で紹介されています。 この流れの中に「借入金」は登場せず、あくまで売掛債権の売却として処理するのが基本です。
保証型(売掛保証)の場合も、売掛金は自社に残り、保証料を「支払手数料」等で処理し、貸倒発生時に「貸倒損失」と保証金の「雑収入」を用いるなど、負債計上ではなく保証取引として整理するのが一般的です。

このように、「売掛金を売って資金を得ている」のか、「売掛金を担保にお金を借りている」のかを切り分け、前者であれば借入金を使わない仕訳が原則となります。借入金を使うのは、動産担保融資(ABL)のように契約実態が融資と判断される場合に限られる、という前提を押さえておくと、日々の仕訳方針がブレにくくなります。

取引タイプ 借入金を使わない実務パターン
買取型ファクタリング 売掛金を未収金に振替後、入金時に「普通預金+売上債権売却損/未収金」で処理。借入金は登場しない。
保証型ファクタリング 売掛金は残したまま、保証料を「支払手数料」等で費用化。貸倒時に「貸倒損失/売掛金」、保証金受領を「普通預金/雑収入」で処理。
ABL以外の通常融資 ファクタリングとは別に「短期借入金/普通預金」等で処理し、利息は「支払利息」で計上。

日本基準における基本仕訳フロー

日本基準(中小企業の会計に関する指針や金融商品会計の実務指針)の考え方に沿うと、買取型ファクタリングは「金銭債権の譲渡」として処理するのが基本になります。実務解説では、日本公認会計士協会などが定める金銭債権の譲渡に関する指針を根拠に、ファクタリングによる売掛金譲渡は「売上債権譲渡損(売上債権売却損)」で処理される例が紹介されています。

代表的なフローを、具体的な数値例(売掛金1,000,000円、手数料5%)で整理すると次のようになります。

  1. 売上計上時:
    「売掛金1,000,000円/売上1,000,000円」
  2. 売掛債権譲渡(ファクタリング契約時):
    「未収金1,000,000円/売掛金1,000,000円」
  3. ファクタリング会社からの入金(手数料5%=50,000円控除後、950,000円入金):
    「普通預金950,000円・売上債権売却損50,000円/未収金1,000,000円」

このような3ステップの仕訳例は、会計・税務解説サイトやクラウド会計のナレッジベースでもほぼ共通して紹介されています。 重要なのは、「売掛金の残高をゼロにし、それと引き換えに未収金(ファクタリング会社に対する債権)と現金・売却損が立つ」という構造を崩さないことです。

また、実務上は会計ソフトに「売上債権売却損」が用意されていないケースもありますが、その場合でも「雑損失」「支払手数料」「債権割引料」などで代替し、補助科目や摘要で「ファクタリング手数料」であることを明示しておけば、基本的な考え方から大きく外れることはないと解説されています。

日本基準の基本仕訳フローで押さえるポイント
  • 売掛金発生 → 売掛債権譲渡 → ファクタリング入金の3ステップで考える
  • ②で「未収金/売掛金」、③で「普通預金+売上債権売却損/未収金」を使うのが標準パターン
  • 専用科目がない場合は性質の近い既存科目を使いつつ、摘要などでファクタリング取引と分かるように管理する

2社間・3社間ファクタリングの具体仕訳例

2社間ファクタリングと3社間ファクタリングは、資金の流れが異なりますが、日本基準での基本的な会計処理は「売掛債権の譲渡」という点で共通しています。ただし、2社間では売掛先が従来どおり利用者に支払い、その後利用者がファクタリング会社に資金を渡すため、「預り金」などを用いる仕訳が追加される点が実務上の違いです。

【2社間ファクタリングの例(売掛金1,000,000円、手数料10%=100,000円)】

  1. 売掛金発生時:
    「売掛金1,000,000円/売上1,000,000円」
  2. 債権譲渡時:
    「未収金1,000,000円/売掛金1,000,000円」
  3. ファクタリング会社からの入金(手数料控除後900,000円):
    「普通預金900,000円・売上債権売却損100,000円/未収金1,000,000円」
  4. 後日、売掛先から代金1,000,000円が入金されたとき:
    「普通預金1,000,000円/預り金1,000,000円」
  5. 預り金をファクタリング会社へ送金:
    「預り金1,000,000円/普通預金1,000,000円」

ここで④の「預り金」は、売掛先から受け取ったお金が自社のものではなく、ファクタリング会社に渡すべき一時的な負債であることを表します。

 

【3社間ファクタリングの例(同条件、売掛先がファクタリング会社に直接支払う)】

  1. 売掛金発生時:
    「売掛金1,000,000円/売上1,000,000円」
  2. 債権譲渡時(支払先変更通知):
    「未収金1,000,000円/売掛金1,000,000円」
  3. ファクタリング会社からの入金(手数料控除後900,000円):
    「普通預金900,000円・売上債権売却損100,000円/未収金1,000,000円」

※その後の売掛先→ファクタリング会社への支払は、自社の仕訳には原則登場しない

3社間では、売掛先が直接ファクタリング会社に支払うため、自社側では④⑤の「預り金」仕訳が不要になり、②〜③の部分だけで完結します。3社間ファクタリングの仕訳例としても、未収金と売上債権売却損を用いるパターンが紹介されており、2社間との違いは「入金の経路と預り金の有無」にあると説明されています。

2社間・3社間別の仕訳の押さえどころ
  • どちらも基本は「売掛金→未収金→普通預金+売上債権売却損」という流れは共通
  • 2社間では、売掛先から一旦自社口座に入金されるため、「預り金」を使ってファクタリング会社への送金を表現する
  • 3社間では、売掛先→ファクタリング会社へ直接入金されるため、自社仕訳は譲渡と入金部分のみで完結する

借入金計上が必要となる具体例の整理

通常の買取型ファクタリングは、売掛債権そのものをファクタリング会社へ譲渡する取引であり、日本の会計実務では「金銭債権の譲渡=資産の売却」として処理するのが原則です。このため、前段までで触れたとおり、仕訳上は売掛金を未収入金(未収金)へ振り替え、入金時に普通預金と売上債権売却損を計上し、短期借入金などの借入科目は使いません。

一方で、売掛債権を担保にして資金を「借り入れる」スキームも存在します。代表的なのが、金融機関から売掛債権や在庫を担保に融資を受ける動産・債権担保融資(ABL)です。解説記事でも、ファクタリングは売掛金の売却であるのに対し、ABLは売掛金や在庫を担保にした「融資」であり、返済義務がある点が明確に区別されています。 このような融資型スキームでは、入金時に「普通預金/短期借入金」、期末ごとの利息を「支払利息」で処理するなど、通常の借入金と同様の会計処理になります。

また、資金調達スキームの比較解説では、「売掛債権流動化(ファクタリング)」「売掛金担保融資(ABL)」「不動産担保融資」などが同じアセットファイナンスのカテゴリに含まれつつも、ファクタリングは負債を増やさずに資金調達できる一方、ABLは借入金として負債が増える点が整理されています。 したがって、「契約上はファクタリングと呼ばれていても、返済義務や担保設定の内容によっては実質的に融資に近いケース」があり、その場合は借入金計上が必要となる可能性があります。

スキーム 会計上の基本的な扱い
買取型ファクタリング 売掛債権の譲渡。売掛金を未収金に振替後、「普通預金+売上債権売却損/未収金」で処理。借入金は原則使用しない。
売掛金担保融資(ABL) 売掛金を担保に金融機関から融資を受ける。入金時に「普通預金/短期借入金」、以後「支払利息」を計上する融資取引。
疑似ファクタリング 表面上はファクタリングでも、実質は返済義務が強く、リスク・便益がほとんど移転していない場合、借入金として扱う余地がある。

動産担保融資など融資型スキーム

動産担保融資(ABL:Asset Based Lending)は、売掛債権や在庫などの動産を担保に金融機関から融資を受ける仕組みです。資金調達の比較解説では、売掛債権を第三者に売却するファクタリングと、売掛債権や在庫を担保に融資を受けるABLが明確に区別されており、ABLは「融資」である以上、返済義務と利息支払が前提になると説明されています。 会計処理上も、ABLは通常の借入金と同様に、「借入時:普通預金/短期借入金」「利息支払時:支払利息/普通預金」といった仕訳となり、売掛金自体は貸借対照表に残ります(担保設定の注記等は別)。

実務上注意すべきなのは、「ファクタリング」と称しながら実態はABLに近いケースです。たとえば、以下のような条件があれば、実質的に融資と評価される可能性が高くなります。

  • 売掛債権の回収状況にかかわらず、一定の返済スケジュールで元本・利息相当額を支払う義務がある
  • 未回収の場合、利用者が全額を買い戻す(リコース)義務や、追加担保の提供義務が契約上強く定められている
  • 契約書上、売掛債権の売却でなく「貸付金」「元利金」などの用語が用いられている

資金調達解説でも、ファクタリングは担保不要で負債を増やさずに資金調達できる点がメリットとされる一方、ABLは売掛債権や在庫といった資産を担保にして金融機関から融資を受ける方法であり、借入金として負債に計上されると整理されています。 この違いを仕訳上も反映させないと、財務諸表の読み手(銀行や投資家)に誤った印象を与えかねません。

融資型スキームかどうか見極めるチェックポイント
  • 返済義務が「売掛金の回収状況にかかわらず」発生するか(固定スケジュール・元利金支払の有無)
  • 売掛債権の未回収時に、全額買戻し義務や追加担保提供義務があるか
  • 契約書の表現が「売却」ではなく「貸付」「元本・利息」など融資に近い用語になっていないか
  • 金融機関やノンバンクが「ABL(動産・債権担保融資)」として商品化しているかどうか

IFRS適用時のファクタリング借入金処理

IFRSを適用している企業では、ファクタリング取引が「金融資産の消滅(derecognition)」を満たすかどうかに応じて、売掛金の消滅または借入金としての残存を判断します。IFRS 9「金融商品」では、金融資産の移転に際して、①契約上のキャッシュフローの権利が移転したか(またはパススルーの条件を満たすか)、②リスク・経済的便益の大部分を移転したか、③支配を保持していないか、を総合的にみて消滅を判定することが示されています。

KPMGやPwCなどのIFRS解説では、ファクタリング取引について、
・リスク・便益のほとんどをファクタリング会社へ移転していれば、売掛金を消滅させ「売却」として扱う(オフバランス)
・リスク・便益の大部分を依然として企業が保持している場合は、売掛金を消さず、受け取った現金を「借入金(secured borrowing)」として処理する
と整理されています。 たとえば、ノンリコース型(売掛先の倒産リスクもほぼファクタリング側が負担)のファクタリングでは、売掛金の消滅が認められるケースが多いのに対し、フルリコース型(売掛先が支払えない場合でも企業が全額負担する)では、実質的に「売掛金を担保にした借入」と評価され、売掛金を残したまま借入金を計上する会計処理となる可能性が高くなります。

また、IFRS解釈指針委員会(IFRIC)は、サプライチェーンファイナンス(リバースファクタリング)について、買い手の立場では従来の買掛金を消滅させ、新たな金融負債として借入金に近い科目で表示すべき場合があることを示しており、負債の区分表示(trade payablesかother financial liabilitiesか)に留意すべきとしています。 これも、「経済的実質がファクタリングか借入か」によって、売掛金や買掛金の消滅と新たな金融負債(借入金等)の認識が変わる一例です。

IFRS適用企業では、同じファクタリング商品であっても、
・リスク・便益の移転の程度(ノンリコース/リコース、保証条項、留保金など)
・支配の有無(企業が実質的に売掛金をコントロールし続けていないか)
を踏まえて、「売掛金の消滅+売却益/損」とするか、「売掛金を残したまま借入金を計上」するかを判断する必要があります。日本基準では中小企業の多くが単純な売却として処理している一方、IFRSベースの連結財務諸表では、同じ取引でも借入金処理となるケースがあるため、国際的に事業を展開する企業は、IFRSの消滅基準に沿った個別の判定が不可欠です。

IFRS適用時に借入金処理となるか検討すべきポイント
  • ノンリコースかフルリコースか、保証・買戻し条項などから「リスク・便益の移転の程度」を評価する
  • 売掛金のキャッシュフローに対する支配を実質的に手放しているかどうかを確認する
  • リスク・便益を十分に移転していない場合は、売掛金を消滅させず、受け取った現金を借入金として認識する可能性を検討する
  • リバースファクタリングなど、負債側に影響するスキームでは、買掛金の消滅と新たな金融負債の認識・表示方法も確認する

借入金仕訳が財務指標へ与える影響

ファクタリングを「債権の売却」として処理するか、「借入金」として処理するかは、単に仕訳の違いにとどまらず、負債比率や自己資本比率といった主要な財務指標に影響します。負債比率は一般に「負債÷自己資本×100」で計算され、値が低いほど自己資本に対して負債が少なく、財務的に安定していると評価されます。 一方、自己資本比率は「自己資本÷総資産×100」で表され、30%以上が望ましい、50%以上であれば理想的とする実務解説が多く、銀行が安全性を見るうえで特に重視する指標とされています。

借入金として処理すると、調達時点で負債が増え、総資産も増加します。その結果、自己資本比率は分母(総資産)が増え、分子(自己資本)は変わらないため低下し、負債比率は分子(負債)が増えることで上昇します。 これに対し、売掛債権の譲渡として処理する買取型ファクタリングは、原則として新たな負債を増やさないため、自己資本比率を悪化させず、むしろ売掛金が減って現金が増えることで現金比率(現金・預金÷流動負債)を改善しやすいという指摘もあります。

ただし、ファクタリングを利用していても、実質が「動産担保融資(ABL)」などの融資型スキームであれば、短期借入金として負債計上するのが適切であり、この場合は財務指標への影響は通常の借入金と同じです。 したがって、「ファクタリングだから負債に出ない」と単純に考えるのではなく、契約の実質が売掛債権の売却か、融資に近いのかを見極めたうえで、財務指標に与える影響を判断する必要があります。

処理パターン 財務指標への主な影響
借入金として計上 負債増加により負債比率が上昇。総資産も増加するため自己資本比率は低下しやすい。利息負担が増えることで、利息負担能力など他の指標にも影響。
債権売却として計上 新たな負債は増えず、売掛金が減少して現金・預金が増加。総資産はほぼ横ばい〜やや減少のため、自己資本比率や現金比率が改善する可能性。

負債比率・自己資本比率への影響

負債比率と自己資本比率は、ともに「どの程度他人資本に依存しているか」を示す安全性指標として、銀行や投資家が注目する項目です。自己資本比率は「自己資本÷総資産×100」、負債比率は「負債÷自己資本×100」で計算され、自己資本比率30%以上・負債比率が低い会社ほど財務体質が良好と評価される傾向があると紹介されています。

ここで、簡単な数値例で違いを見てみます。
前提として、総資産1,000万円、自己資本400万円、負債600万円とすると、自己資本比率は40%(400÷1,000)、負債比率は150%(600÷400)です。

  1. ファクタリングを「借入金」として処理し、300万円を調達した場合
    ・資産:現金+300万円 → 総資産1,300万円
    ・負債:借入金+300万円 → 負債900万円
    ・自己資本:400万円(変わらず)
    → 自己資本比率:約30.8%(400÷1,300)、負債比率:225%(900÷400)
  2. 同じ300万円を「売掛債権の売却」として調達した場合(売掛金300万円を買取率90%で売却し、270万円入金・30万円が売上債権売却損と仮定)
    ・資産:売掛金▲300万円+現金+270万円 → 総資産970万円
    ・負債:600万円(変わらず)
    ・自己資本:売上債権売却損30万円だけ減少し370万円
    → 自己資本比率:約38.1%(370÷970)、負債比率:約162%(600÷370)

この例では、借入金処理の場合、総資産と負債が増えて自己資本比率が大きく低下し、負債比率は大きく上昇します。一方、債権売却として処理した場合は、自己資本がやや減少するものの総資産も減るため、自己資本比率は一定程度維持されます。実務解説でも、ファクタリングは借入金と違い「新たな負債を増やさずに資金調達できるため、自己資本比率の悪化を防ぎやすい」というメリットが指摘されています。

もっとも、自己資本比率だけがすべてではなく、現金比率(現金・預金÷流動負債)や売上債権回転率といった指標もあわせて評価する必要があるとされています。 債権売却型のファクタリングは現金比率や売上債権回転率を改善しやすい一方、手数料負担によって利益が圧迫される点も含めて、総合的に評価することが重要です。

負債比率・自己資本比率に関する実務上の押さえどころ
  • 借入金処理は負債を増やし、自己資本比率を低下させる一方、ファクタリング(債権売却)は新たな負債を増やさない
  • 同じ金額を調達しても、借入か債権売却かで自己資本比率・負債比率の水準は大きく変わり得る
  • 自己資本比率だけでなく、現金比率や売上債権回転率など他の指標とのバランスも確認する

銀行評価と与信審査での見られ方

銀行の与信審査では、自己資本比率・負債比率・流動比率などの安全性指標に加え、売上高経常利益率やROA(総資産経常利益率)といった収益性指標、売上債権回転率などの効率性指標が総合的に評価されます。 とくに自己資本比率は「倒産しにくい安全性を見るうえで銀行が重視する指標」とされ、40%程度あると望ましいという目安が紹介されています。

この観点から見ると、借入金として処理した場合は負債が増えて自己資本比率が低下するため、「他人資本への依存度が高い企業」と見なされるリスクがあります。実際、借入に依存しすぎると将来の追加融資が受けにくくなるおそれがあると指摘する解説もあります。 一方、売掛債権の売却として処理するファクタリングは新たな負債を増やさずに資金調達できるため、「自己資本比率を悪化させずに資金繰りを改善できる手段」として紹介されています。

ただし、「財務状況や信用情報に影響しない」といったメリットを強調する一方で、銀行が実務上、ファクタリングの利用状況を全く見ないわけではありません。頻繁に売上債権を売却している場合、銀行担当者は「資金繰りが恒常的に厳しく、ファクタリングなしでは回っていないのではないか」「利益に対する手数料負担が大きすぎないか」といった観点から実態を確認する可能性があります。

また、IFRSの世界では、リバースファクタリングなど一部のスキームについて、買掛金を消滅させ新たな金融負債として表示すべき場合があるとされており、銀行もこうした国際的な議論を踏まえて「実質が借入に近いかどうか」を判断する姿勢を強めています。 したがって、銀行とのコミュニケーションでは、以下のような点を整理して説明できるようにしておくと、評価が安定しやすくなります。

銀行評価・与信審査で意識したいポイント
  • 自己資本比率・負債比率・流動比率などの基本指標が、ファクタリング利用前後でどう変化しているかを自社でも把握しておく
  • ファクタリングは「一時的な資金ギャップ対応」なのか、「恒常的な資金不足の穴埋め」なのかを整理し、銀行には前者であることを説明できる状態にしておく
  • 動産担保融資など実質が融資に近いスキームは、借入金として正しく計上し、隠れ負債と見なされないよう契約内容と会計処理を整合させる

ファクタリング実務判断チェック集

ファクタリングを仕訳するときに迷いやすいポイントは、「これは売掛債権の売却として処理すべきか」「借入金・保証料に近い取引なのか」を、契約の実態から判断しなければならない点です。名称が「ファクタリング」「売掛保証」「ABL」「支払ファイナンス」などさまざまであっても、会計処理はあくまで取引の経済的実質にもとづいて決める必要があります。実務解説でも、リコース(償還請求権)の有無や、売掛債権に関するリスクと経済的便益が誰に帰属しているか、返済義務や利息の有無などを総合的に見て、売掛債権の消滅認識か借入金認識かを判定すべきとされています。
中小企業の現場では、すべての案件ごとに複雑な判定を行うのは現実的ではありません。そのため、実務的には「契約書のどこを見るか」「どの条件に当てはまれば買取型/保証型/融資型と判定するか」といったチェックリストを用意し、日常処理はその枠組みに沿って行い、グレーゾーンだけ税理士に相談する運用が有効です。以下では、そのための判断手順と、相談タイミングの考え方を整理します。

判断ステップ 主な確認内容
1. スキームの名称 ファクタリング、売掛保証、ABL、支払ファイナンスなど、商品名・サービス名を確認。
2. リスク・義務 償還義務・買戻条項・保証条項の内容を読み、返済義務の有無・範囲を確認。
3. 資金の流れ 売掛先→誰に支払うか、利用者→誰にいくら返すか、入出金の経路を図解。
4. 会計処理候補 売掛債権売却損・支払手数料・短期借入金など、候補となる勘定科目を絞り込む。

契約書から仕訳区分を判断する手順

契約書から仕訳区分を判断する際は、「商品名」ではなく「条文の中身」に着目します。具体的には、①契約の目的条項、②債権の譲渡条項、③償還・買戻し条項、④保証条項、⑤手数料・利息の規定、⑥支払・入金の流れに関する条項を順番に確認すると整理しやすくなります。目的条項で「金銭債権の譲渡」「売掛債権の売却」などが明記されており、償還義務が限定的(重大な債務不履行や表明保証違反に限られる等)であれば、買取型ファクタリングとして売掛債権売却損を用いる方向で検討するのが自然です。
一方で、「貸付」「元本」「利息」「返済期日」といった表現が契約書の中心となり、売掛債権はあくまで担保・管理対象として扱われている場合は、動産担保融資(ABL)など融資型スキームである可能性が高く、短期借入金として処理する方向で検討すべきといえます。保証型については、売掛債権の譲渡は行わず、貸倒発生時の保証支払や保証料のみが規定されているケースが多いため、「支払手数料(売掛保証料)」「貸倒損失」「雑収入」といった組み合わせで処理する判断になります。

契約書から仕訳区分を判断する実務ステップ
  • 目的条項と用語:売却(譲渡)なのか、融資・保証なのかを「金銭債権の譲渡」「貸付金」「保証」などの用語で確認する
  • 償還・買戻し義務:売掛先の不払時に、利用者が全額買い戻す義務があるか、返済スケジュールが固定されているかをチェックする
  • 資金の流れ:売掛先→誰に払うか、利用者→誰にいくら返すかを図にし、「売却型」「保証型」「融資型」のどれが実態に近いかを判断する
  • 勘定科目候補:買取型なら売上債権売却損、保証型なら支払手数料+貸倒損失、融資型なら短期借入金+支払利息を候補とする

税理士へ相談すべきケースの目安

ファクタリングの多くは、よくある買取型・保証型のパターンに当てはめれば、自社でも一定程度は処理方針を決められます。しかし、契約内容が複雑だったり、利用金額が大きかったり、IFRS連結と日本基準の個別決算で処理が分かれうるなど、判断が財務諸表全体に影響する場面では、税理士や公認会計士に相談しておくことが安全です。特に、「借入金処理にすべきかどうか」で迷うケースは、負債比率・自己資本比率・銀行の与信判断に直結するため、専門家と一緒に契約の実質を読み解いておくと後々の手戻りを防げます。
相談の目安としては、①ファクタリング利用額が売上や総資産に対して無視できない水準になっている、②償還義務や追加担保条項があり、実質が融資かどうか判断に迷う、③非上場でも金融機関から詳細な開示や説明を求められている、④IFRSベースの連結財務諸表を作成している、などの状況が挙げられます。これらに当てはまる場合は、契約書一式と仕訳案、資金の流れを図にしたメモを用意し、「売却・保証・融資のどれとして扱うべきか」「借入金か売上債権売却損か」「消費税や法人税への影響はどうか」をまとめて質問すると、より具体的なアドバイスを受けやすくなります。

税理士に相談した方がよいと判断できるシグナル
  • 利用額・回数が増え、売上債権売却損や保証料が決算数値を大きく動かしている
  • 契約書に買戻し義務・追加担保・固定返済スケジュールなど、融資に近い条項が含まれている
  • 銀行や親会社から、ファクタリング取引の詳細説明や将来の利用計画の提示を求められている
  • IFRS連結を行っており、売掛金の消滅認識や借入金認識がグループ全体の財務指標に影響する

まとめ

ファクタリングは原則として「売掛債権の譲渡」であり、日本基準では売掛金の振替と売上債権売却損などで処理し、借入金仕訳を用いないのが基本です。一方、契約内容によっては、実質が動産担保融資や手形割引に近く、借入金・支払利息として扱うべきケースもあり、スキームの実態把握が不可欠です。借入金処理を行うと負債比率や自己資本比率、銀行の与信評価にも影響するため、契約書の条文(償還義務・買戻し条項・保証条項など)をチェックしつつ、疑問があれば早めに税理士へ相談する体制を整えることが重要です。記事で示した仕訳パターンとチェックリストを参考に、自社のファクタリング取引を一度棚卸しすることが実務的な第一歩になります。