銀行融資に通す事業計画書の作り方！必須項目・数値計画・審査ポイント12選を解説

銀行融資の審査が不安、資金繰りが厳しい、税金・社保の遅れが影響しないか心配…。本記事は、銀行が見る事業計画書の必須項目と構成、売上・原価・固定費の根拠づくり、資金繰り表と返済計画の連動、必要書類、面談での説明ポイントを整理します。創業・小規模で実績が少ない場合の補強の考え方も解説。公庫・制度融資やノンバンクとの違い、滞納時の一般的な注意点と相談の方向性、よくあるNG例の直し方も把握できます。

銀行融資と計画書基礎知識

銀行融資の事業計画書は、事業の説明資料というより「返済できるか」を判断するための根拠集です。銀行は、決算書や試算表などの過去実績に加えて、資金使途（何にいくら使うか）と、その結果としてどの程度の売上・利益・資金残高が見込めるかを確認します。特に運転資金は使途があいまいになりやすいため、資金繰り表とセットで「いつ、何に、いくら必要か」を言語化できると説明が通りやすくなります。制度や審査の見方は金融機関や時期で変わることがあるため、一般的な考え方として押さえてください。

銀行が見る目的ポイント

銀行が事業計画書を見る目的は、主に「返済可能性の確認」「資金使途の妥当性」「リスク時の耐性」の整理です。計画書に上手な文章が書かれていても、数字と行動がつながっていないと評価が安定しません。たとえば設備資金500万円を借りるなら、購入予定日・見積書の有無・稼働開始時期・売上増の見込みが一本の線で説明できることが重要です。また運転資金300万円なら、資金繰り表で「入金までのつなぎ」「税金・社保・給与の支払月」など、資金が薄くなるタイミングを示せると説得力が増します。

必須項目と構成チェック

事業計画書の構成は金融機関で指定されることもありますが、基本は「事業の全体像→数字→裏付け」の順で読める形にします。初めに結論（借入希望額・資金使途・返済方法）を置き、その後に事業内容・市場・販売計画・運営体制を続け、最後に数値計画と資金繰り表で締めると理解されやすいです。特に数値パートは、売上だけを強調せず、原価・固定費・税金・社保・借入返済まで含めて月次で説明できる形が望ましいです。資料がそろっているほど、担当者が社内説明しやすくなります。

自己資金と返済原資基準

自己資金は「借入以外で用意できるお金」で、創業・新規投資では特に重視されやすい項目です。一方、返済原資は「返済に回せる現金の源泉」を指し、一般には営業活動で生まれるキャッシュと考えると分かりやすいです。利益が出ていても、売掛金の回収が遅い、在庫が増える、税金・社保の支払いが重なると、返済日に現金が足りないことがあります。そこで、資金繰り表の月次で返済日を固定し、最低残高がいくらまで下がるかを示すのが有効です。

審査目線の評価ポイント

銀行融資の審査では、事業計画書の「見た目」よりも、数字の一貫性と根拠の強さが重視されやすいです。具体的には、収益性（利益が出る構造か）と返済能力（返済日に現金が残るか）を、決算書・試算表・資金繰り表で整合させて示します。さらに、借入の資金使途が明確で、支払時期と見積書・契約書などの裏付けがあるかも確認されます。税金や社会保険料の遅れがある場合は、一般に信用面でマイナス要因になり得るため、状況を隠さず、支払計画と再発防止策まで説明できる形に整えることが重要です。

収益性と返済能力基準

収益性は、売上が伸びるかどうかだけでなく、「粗利が残る構造か」「固定費を賄えるか」で見られます。返済能力は、損益（利益）だけでなく資金繰り（入出金）で確認される点が重要です。たとえば月次計画で営業利益が出ていても、売掛金の入金が翌々月、仕入や人件費が当月払いだと、返済日までの現金が足りなくなることがあります。そこで、月次の損益計画に加え、資金繰り表で「返済日までの最低残高」を示すと、実態に沿った説明になります。

資金使途と整合チェック

資金使途は「何に使うか」を明確にするだけでなく、事業計画の数字とつながっていることが求められます。設備資金なら、設備導入→稼働開始→売上・利益への反映、という時間軸が重要です。運転資金なら、仕入・外注・人件費・納税などの支払いタイミングと、売掛金回収までの期間を踏まえて「不足が生じる理由」を説明できる形にします。たとえば「受注増で仕入が先行し、入金は60日後。つなぎ資金として300万円が2か月必要」というように、必要額と必要期間をセットで示すと整合が取りやすいです。

税金・社保の注意点

税金や社会保険料の遅れは、一般に信用面の懸念として扱われやすい項目です。重要なのは、事実関係と現状を整理し、支払計画と再発防止策を「数字」で示すことです。たとえば消費税の納付が重なった、回収遅れが続いたなど原因がある場合でも、資金繰り表で今後の入出金を見直し、分割納付の相談状況や、納付用口座の分離・積立ルールの導入を計画書に書くと、説明の筋が通ります。延滞を隠す表現は避け、相談先に早期連絡する姿勢を示すことが、結果的に審査対応としても現実的です。

数値計画の作り方方針

銀行融資の事業計画書で説得力を左右するのは、数値計画の「根拠」と「つながり」です。売上だけを伸ばす計画ではなく、原価や固定費、税金・社保、借入返済まで含めて月次で矛盾なく組み立てます。特に初めて作る方は、損益計画（利益の見込み）→資金繰り表（現金の増減）→返済計画（返済日と金額）の順に積み上げると、抜け漏れが減ります。数字は正解を当てるものではなく、前提が変わったときに修正できる形にするのが現実的です。制度や審査の見方は金融機関や時期で変わることがあるため、一般的な組み立て方として押さえてください。

売上予測の根拠ポイント

売上予測は「前年比○％増」のような一言より、分解して説明するほうが伝わります。基本は、数量と単価に分けることです。たとえば飲食なら「客数×客単価×営業日数」、受託業なら「案件数×平均単価」、小売なら「来店数×購入率×客単価」の形にします。さらに、根拠として過去実績、予約・受注残、提案中案件、販促施策と見込み件数の関係を示すと現実味が増します。新規出店や設備導入の場合は、稼働開始月から立ち上がり（最初は低く、徐々に伸びる）を置くと、無理のない計画になります。

原価・固定費の見積注意点

費用計画は、売上と同じくらい重要です。原価（仕入・材料費・外注費など）は売上に連動して増えるため、粗利率（売上総利益率）を過去実績や見積根拠に合わせて設定します。固定費は売上が落ちても減りにくい支出で、家賃、人件費、リース、通信費、保険料などが中心です。見積の注意点は「漏れ」と「支払タイミング」です。たとえば社会保険料、賞与、消費税の納付などを入れ忘れると、利益は出ているのに資金が足りない計画になります。また、値上げや人件費増など上振れリスクもあるため、余裕を持った設定にしておくと説明が安定します。

資金繰り表との連動活用法

資金繰り表は、損益計画を「現金ベース」に変換する表です。利益が出ていても、売掛金の回収が遅い、在庫が増える、税金・社保の支払いが重なると、現金が不足します。そこで、月次の損益計画で作った売上・原価・固定費を、入金サイト（例：翌月末入金）と支払サイト（例：当月末払い）に合わせてずらし、月末残高がどう動くかを示します。特に銀行に説明するときは、最低残高がいくらまで下がるか、どの月が最も厳しいかを明確にするのが有効です。

1. 月次の損益計画を作る（売上・原価・固定費）
2. 売掛金の回収時期を設定し、入金予定に落とす
3. 仕入・外注・人件費などの支払日を設定し、出金予定に落とす
4. 税金・社保・借入返済など固定的な支払いを先に埋める
5. 月末残高の推移を確認し、不足月があれば前提と対策を修正する

返済計画の月次シミュレーション

返済計画は、借入額と期間だけでなく「毎月の返済額」と「返済日までの資金残高」で確認します。一般に、元利均等返済などの方式により毎月の返済額が決まりますが、金利や条件で変動します。ここでは、返済額を仮置きして資金繰り表に組み込み、返済日を迎えても残高が維持できるかを見るのが実務的です。たとえば借入500万円、返済期間5年の場合、月返済はおおむね8万円台に利息が上乗せされるイメージです。これを毎月の固定出金として入れ、売上が計画比90％になった月でも耐えられるかを確認します。計画に余力がない場合は、借入額の見直し、投資時期の分割、回収条件の改善など、返済原資を増やす手当てを併記すると説得力が増します。

必要書類と提出準備

銀行融資では、事業計画書そのものより「計画の根拠を示す書類」がそろっているかで評価が安定しやすいです。特に中小企業は、担当者が社内の稟議で説明する場面が多いため、数字の裏付けが整理されているほど手戻りが減ります。準備は「過去実績（決算書等）」「足元の状況（試算表・資金繰り）」「使途の根拠（見積書等）」「説明資料（面談用メモ）」の順に積み上げると抜け漏れが出にくくなります。なお、金融機関や商品によって提出書類は異なることがあるため、最終的には依頼された書類一覧を確認して揃えてください。

決算書・試算表の整え方ステップ

決算書は「結果」、試算表は「途中経過」を示す資料です。銀行は、決算書で収益性や財務体質（自己資本、借入状況など）を確認し、試算表で直近の業況や計画の妥当性を見ます。赤字や利益変動がある場合でも、原因と改善策が説明できれば評価が安定しやすいので、数字の背景を言語化しておくことが重要です。提出前は、勘定科目の異常値（売掛金の急増、仮払金の残高など）がないか、前年差が大きい科目の理由が説明できるかを確認します。

1. 直近2〜3期分の決算書一式を揃え、売上・粗利・営業利益の推移を整理する
2. 直近月までの試算表を更新し、計画書の前提（売上・原価・人件費）と一致させる
3. 売掛金・買掛金・在庫など運転資金に直結する科目の残高と回転を確認する
4. 役員貸付金・仮払金など説明が必要な科目は、内容と回収・精算方針をまとめる
5. 税金・社保の支払状況、借入返済の状況を最新情報で整理し、質問に備える

見積書・契約書の裏付けチェック

資金使途の裏付けは、融資の納得感を作る重要な材料です。設備資金なら見積書・発注書・納品予定などで「何を、いつ、いくらで買うか」を示します。運転資金でも、仕入契約や外注契約、売上の根拠になる受注書・発注書、継続契約の契約書などがあると、計画の実現性が高まります。逆に、根拠がないまま金額だけが大きいと、使途があいまいに見えて審査が長引きやすいです。

面談説明の準備ポイント

面談では、提出資料の細部よりも「重要ポイントを短時間で説明できるか」が見られやすいです。準備として、借入希望額・資金使途・返済原資・リスク対応の4点を、数字を交えて説明できるようにしておきます。たとえば「設備500万円を導入し、来月発注・再来月稼働。月の粗利が20万円増える見込みで、返済は月9万円程度を想定。売上が計画比90％でも残高は最低80万円を維持」といった形で、資金繰り表と一致する説明ができると説得力が増します。税金・社保の遅れがある場合は、現状と支払計画、再発防止策（納付用口座の分離など）を簡潔にまとめておくと質問対応が安定します。

創業・小規模の補強ポイント

創業直後や小規模事業者は、決算書の期数が少ない、売上の波が大きいなどの理由で、計画の裏付けが弱く見えやすい傾向があります。そのため、審査では「実績が少ない中でも、どの情報で確からしさを補うか」が重要になります。具体的には、受注見込みの根拠、代表者の経験・実績、固定費を抑える設計、資金繰りの安全余力、リスクが起きたときの手当てを、資料と数字で示します。計画を大きく見せるより、達成可能性の高い前提と、未達時の対応まで用意しておくほうが説明が安定します。

実績不足を補う見せ方基準

実績が少ない場合は、売上予測を「期待」ではなく「積み上げ」で示すのが基本です。たとえば、開業後3か月は広告・紹介中心で月商50万円、6か月目にリピートが増えて月商80万円、といった立ち上がり曲線を置きます。さらに、上限も示すと過大計画を避けられます。たとえば人員1名のサービス業なら「1日対応できる件数×稼働日数×単価」で月の上限売上を算出し、計画が上限を超えていないことを確認します。受注見込みは確度で区分し、確定分と見込み分を混ぜないのが信頼につながります。

リスクと対応策の書き方注意点

リスクの書き方は、脅かすのではなく「起きたときにどう止血するか」を示すのが目的です。銀行は、計画が外れた場合の備えがないと不安を感じやすいです。よくあるリスクは、売上未達、回収遅れ、原価高、人員不足、突発費用（設備故障など）です。対応策は、数字と行動で書くと具体性が出ます。たとえば「売上が計画比90％なら広告費を月3万円削減し、外注を月2件減らして粗利を確保」「回収が30日遅れた場合は、請求締め日を前倒しし、前受け比率を上げる」など、資金繰り表に反映できる形にします。

よくあるNG例の修正チェック

創業・小規模の計画書は、少しの書き方の差で「根拠のある計画」に見えるかが変わります。修正のコツは、曖昧な表現を数字と資料に置き換え、資金使途・損益・資金繰り・返済がつながるように整えることです。特に運転資金は用途がぼやけやすいので、支払い項目と時期を明確にし、必要額が妥当かを説明します。以下のチェックで、提出前に精度を上げられます。

1. 売上予測が「前年比」「希望」ではなく、件数・単価・稼働で説明できる
2. 見込み案件は確度で区分し、確定分と混ぜていない
3. 原価・固定費に漏れがなく、税社保・返済も含めて月次で整合している
4. 運転資金の内訳が「仕入・外注・人件費・納税」など項目別に示されている
5. 資金繰り表で最低残高が把握でき、売上未達時の対策が数字で示されている

まとめ

銀行融資の事業計画書は、資金使途と返済原資を数字で一貫させ、根拠資料で裏付けることが要点です。売上予測は件数と単価で積み上げ、原価・固定費・税金や社保まで含めて月次で整合させ、資金繰り表で返済日までの現金残高を確認します。決算書や試算表、見積書・契約書を揃え、面談ではリスクと対応策も含めて簡潔に説明できる準備を進めましょう。