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ファクタリングは違法?合法性の根拠と違法事例・安全な見分け方徹底解説

「ファクタリングは違法なのでは?」という不安から、利用をためらっている経営者は少なくありません。実務上、適切に設計されたファクタリングは売掛債権の譲渡取引として合法ですが、中には貸金業法違反にあたり得る偽装ファクタリングや、年利換算で極端に高い手数料を取る悪質な業者も存在します。

本記事では、ファクタリングの法的な位置付け、違法と合法を分けるポイント、典型的な違法事例、安全な会社の見分け方、相談窓口までを体系的に整理します。

 

ファクタリング違法性の基礎

ファクタリングは、もともと「売掛債権を売買(譲渡)して資金を確保する取引」であり、そのスキーム自体が直ちに違法というわけではありません。

金融庁も、企業が保有する売掛債権等を期日前に一定の手数料で買い取るサービスとしてファクタリングを紹介しており、適切に設計された取引は貸金業ではなく、債権譲渡に関する民法や動産・債権譲渡特例法の枠組みの中で行われると整理しています。

 

一方で、同じ「ファクタリング」の名を使いながら、実質的には高金利の貸付け(ヤミ金融)になっているケースも確認されています。

金融庁は「その資金調達 大丈夫ですか?」という注意喚起資料の中で、貸金業登録のない業者がファクタリングを装い、債権を担保に違法な貸付けを行っている事例を明示し、債権額に比べて著しく低い買取代金や、買戻し義務を課す契約などに注意するよう呼びかけています。

 

また、個人の賃金債権を対象とする「給与ファクタリング」について、金融庁は、経済的には貸付と同様の機能を有するため貸金業法上の貸金業に該当し、登録なしで営業すればヤミ金融に当たると明確に位置付けています。

このように、法的な評価は「形式ではなく実質」で判断されます。売掛債権の売買として設計され、リスクが適切に移転しているか、あるいは形式は売買でも実態は高金利の貸付けなのか──この線引きが、合法か違法かを分ける基本的な考え方になります。

 

区分 概要
適法なファクタリング 売掛債権の売買として契約され、債務者の不払いリスクがファクタリング会社側に移転している取引。
違法のおそれがある取引 形式は売買でも、実質は貸付け(高額手数料・買戻し義務・貸金業登録なし等)となっている取引。

 

ファクタリングの法的な位置付け

ファクタリングの基本形は、売掛債権の「売買契約(債権譲渡契約)」です。民法上、債権は原則として自由に譲渡できる財産権とされており、債務者への通知または承諾、または動産・債権譲渡特例法に基づく債権譲渡登記によって第三者に対抗できるとされています。

金融庁の注意喚起資料では、ある裁判例(東京地裁令和2年9月18日判決)を引用し、①ファクタリング業者が償還請求権(買戻し請求権)を持たず、売主も買戻しを予定していなかったこと、②債権額面と売買代金の差額(手数料)が担保目的と評価されるほど過大ではないことなどを総合して、実質的にも債務者の不払いリスクがファクタリング業者に移転していると判断され、貸金業法は適用されないと整理しています。

つまり、

 

  • 売掛債権が「売買の対象」として取り扱われているか
  • 不払いリスクがどちらに残っているか
  • 対抗要件(通知・登記など)を備えることが可能な設計か

 

といった点を総合して、「売買」としての実質を備えていれば、通常は貸金業には当たらない、というのが現在の実務上の理解です。

 

法的な位置付けを理解するポイント
  • ファクタリングは本来「売掛債権の売買(譲渡)」として構成される
  • 償還請求権がなく、不払いリスクがファクタリング会社に移転している取引は貸金業ではないと判断された裁判例がある
  • 通知・登記による対抗要件具備が可能な設計かどうかも、売買性の判断材料になる

 

違法と合法を分ける基本ポイント

ファクタリングが問題になるのは、「名目はファクタリングでも、実質は高金利の貸付けになっていないか」という点です。

金融庁のパンフレット「その資金調達 大丈夫ですか?」では、貸金業登録を受けていない業者が、売掛債権等を担保に違法な貸付けを行う事例として、次のような特徴を挙げています。

 

  • 債権の買取代金が債権額に比べて著しく低額(極端に高い手数料・割引率)
  • 契約書上「売買契約」であることが明確に記載されていない
  • 債権の回収を売主(利用者)が行い、回収できなければ買戻しや償還請求により全額返済させる仕組み

 

このようなケースでは、形式は売買でも、

 

・実質的には利用者が返済義務を負っている
・債権は単なる担保として利用されている
・支払う手数料を年利換算すると利息制限法や出資法の上限を大きく超える

 

といった点から、貸金業法上の「貸付け」に該当する可能性が高まり、貸金業登録なしで行えば違法なヤミ金融に当たるおそれがあります。

逆に、適法なファクタリングの目安としては、

 

  • 契約上も実務上も「売掛債権の売買」であることが明確になっている
  • 売掛先の不払いリスクの大部分をファクタリング会社が負い、利用者に無制限の買戻し義務がない
  • 手数料水準が、通常の事業ファクタリングの相場(請求書型・三社間など)から見て著しく逸脱していない

 

といった点が挙げられます。

 

違法と合法を分ける実務上のチェックポイント
  • 名目だけでなく、実際に「誰がどこまでリスクを負っているか」を確認する
  • 買戻し義務や償還請求権が過度に広く設定されていないか契約書を精読する
  • 手数料を年利換算した場合、通常の事業ファクタリングの範囲を大きく超えていないか試算する

 

違法ファクタリング典型事例パターン

ファクタリングそのものは、売掛債権の譲渡(売買)として適切に設計されていれば違法ではありません。

しかし、金融庁や日本弁護士連合会などは、「ファクタリング」を名乗りながら実質は高金利の貸付けや詐欺行為にあたるケースについて、繰り返し注意喚起を行っています。

 

典型的なパターンとしては、①貸金業に該当する偽装ファクタリング(無登録営業・高金利)、②年利換算で見ると法令上の上限を大きく超える高額手数料、③同一債権を複数社へ譲渡する二重譲渡や、存在しない債権を持ち込む架空債権ファクタリングなどの詐欺行為が挙げられます。

これらは、利用者側が被害者になる場合もあれば、資金繰りに窮した企業自身が違法行為に手を染めてしまう場合もあるため、「どこから先がアウトなのか」を客観的に理解しておくことが重要です。

 

パターン 典型例
偽装ファクタリング 名目は債権売買だが、実質は高金利の貸付け(無登録の貸金業)。買戻し義務や償還請求権が広く設定されているケースなど。
高額手数料 債権額に比べて買取代金が著しく低額で、年利換算すると法定利率を大きく超える負担となる取引。
二重譲渡・架空債権 同一の売掛債権を複数のファクタリング会社に譲渡する、存在しない債権を持ち込むなどの詐欺的行為。

 

貸金業に該当する偽装ファクタリング

貸金業に該当する偽装ファクタリングとは、形式上は「売掛債権の売買(ファクタリング)」と称しつつ、経済的な実態は高金利の貸付けになっている取引を指します。

金融庁は、「ファクタリングを装って、貸金業登録のない業者が債権を担保とした違法な貸付けを行っている事案が確認されている」と明示し、事業者向けの注意喚起文書で典型的な疑わしいケースを列挙しています。

偽装ファクタリングに該当しやすい例として、金融庁や弁護士会の資料では次のような特徴が挙げられています。

 

  • 債権の買取代金が債権額に比べて著しく低額(極端に高い手数料・割引率)
  • 契約書に「債権譲渡契約」「売買契約」であることが明確に定められていない
  • 売掛金の回収を利用者(売主)に委託し、回収できなければ買戻し義務・償還請求により全額返済させる仕組みになっている

 

このような場合、名目は売買でも、「売掛金を担保にした貸付け」と評価されやすく、貸金業登録なしで行えば貸金業法違反(無登録営業)や出資法違反(高金利)に該当するおそれが高くなります。

利用者の立場では、「売掛債権の売買」としての実質があるか(リスクがどこに残っているか、回収不能時に返済義務が残っていないか)を確認することが重要です。

 

偽装ファクタリングが疑われる契約の特徴
  • 買取代金が債権額に比べて極端に少ない(高額な一括手数料)
  • 契約書に売買契約であることが明確に書かれていない、条文が曖昧
  • 回収できなかった場合に、利用者が全額を分割返済/一括返済する義務を負う
  • 事業者が貸金業登録を受けていない(登録番号・監督官庁の表示がない)

 

年利換算で問題となる高額手数料

ファクタリングは金銭の貸付けではないため、「利息」という形ではなく「手数料」「買取率」という形で費用が発生します。

しかし、金融庁や商工会議所の注意喚起では、「債権額に比べて買取代金が著しく低額である」「高額な手数料・大幅な割引率の契約を締結した結果、かえって資金繰りが悪化し多重債務に陥る」といった事例に警鐘を鳴らしています。

 

特に問題となるのは、手数料を年利換算したときに、利息制限法や出資法の上限を大きく超える水準になっているケースです。

給与ファクタリング(個人の賃金を対象としたファクタリング)については、金融庁や日本貸金業協会、国民生活センターが、「年率にすると数百%に達する手数料を要求される」「実態は貸付けであり、貸金業法上の貸金業に該当する」と明示しており、無登録で行う業者はヤミ金融にあたるとしています。

事業者向けファクタリングでも、

 

  • 極端に短い期間(例:30日)で10〜20%の手数料が発生する
  • 手数料とは別に高額な「事務手数料」「調査費」などが重複して課される
  • 利用を繰り返すうちに、1年換算で見ると実質的に法定上限を超える負担となっている

 

といったケースでは、経済的実質として高金利貸付けと評価されるリスクが高まります。

 

高額手数料に注意すべきポイント
  • 「手数料◯%」だけでなく、前倒し期間を含めて年利換算してみる
  • 相場(一般的な請求書ファクタリングの2社間・3社間水準)から大きく外れていないか確認する
  • 「今だけ特別」「即日実行」の代わりに極端な手数料を要求されていないか注意する
  • 個人の給与を対象とするファクタリングは、原則として貸金業登録が必要であり、無登録業者はヤミ金融と明示されている

 

二重譲渡・架空債権などの詐欺行為

「二重譲渡」とは、同じ売掛債権を複数のファクタリング会社や金融機関に重ねて譲渡する行為です。

専門サイトや弁護士の解説によれば、ファクタリングにおける二重譲渡は、既に譲渡した債権を自分のもののように装って別の相手に再度譲渡して金銭を得る行為であり、詐欺罪(刑法246条)や横領罪に該当する重大な違法行為とされています。

 

詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役、横領罪は5年以下の懲役と重く、発覚した場合には企業の代表者や実務担当者が刑事責任を問われる可能性があります。

同様に、「架空債権ファクタリング」と呼ばれる詐欺スキームも問題になっています。

 

存在しない売掛債権や、既に回収済みの債権をあたかも有効な債権であるかのように装ってファクタリング会社に持ち込み、買取代金をだまし取る行為は、明らかに詐欺行為に該当し得るものです。

ファクタリング専門の法律解説でも、架空債権ファクタリング詐欺を防ぐために、「早すぎる・良すぎる・簡単すぎる」取引には注意し、適切な審査・裏付け資料の確認が重要であると指摘されています。

 

二重譲渡や架空債権を巡るトラブルは、「悪質な業者に巻き込まれる」ケースだけでなく、「資金繰りに追い込まれた企業が短期的な資金欲しさに自ら行ってしまう」ケースも報告されています。

日本ファクタリング協会等の解説でも、二重譲渡は債権譲渡登記や売掛先への照会ですぐに発覚し、刑事・民事の両面で重大なリスクを招くため、絶対に行ってはならないと強く警告されています。

 

二重譲渡・架空債権が招くリスク
  • 詐欺罪・横領罪として10年以下の懲役などの刑事罰を受ける可能性
  • ファクタリング会社・取引先からの損害賠償請求、信用失墜による取引停止
  • 債権譲渡登記や売掛先への確認で発覚しやすく、発覚後の事業継続が極めて困難になる
  • 資金調達の選択肢がほぼ失われ、法的整理を含む厳しい局面に追い込まれるおそれ

 

このような典型的な違法パターンを理解しておくことで、「自社が被害に遭わないため」「自ら違法行為に踏み込まないため」の両面から、ファクタリングの適切な活用とリスク管理につなげることができます。

 

中小企業が避けたい違法リスク要因

中小企業がファクタリングを利用する際に注意すべき違法リスクは、「スキームそのものの違法性」と「個々の契約・運用の仕方」に分けて整理すると把握しやすくなります。

前者では、貸金業登録のない業者が実態として高金利の貸付けを行っている偽装ファクタリングや、賃金債権を対象とした給与ファクタリングが、金融庁の資料で明確に問題視されています。

 

後者では、契約条項に広範な買戻し義務や過度な違約金が規定されているケース、取り立ての過程で暴力的・威迫的な言動を用いるケースなどが、貸金業法や各種ガイドライン上の問題となるおそれがあります。

また、利用者側にも二重譲渡や架空債権持ち込みなどの禁止事項があり、これらは詐欺罪・横領罪に該当し得る重大な違法行為です。

資金繰りが厳しい局面ほど、短期的な資金確保を優先して判断が甘くなりやすいため、「契約内容・手数料・取立て方法・対象債権の実在性」という4つの視点で、自社と相手双方の行動を客観的にチェックすることが重要です。

 

リスク領域 具体的な注意ポイント
スキーム 名目は債権譲渡でも、実質が貸付けになっていないか(買戻し義務・極端な手数料など)。
契約条項 償還請求権・違約金・遅延損害金などが過度でないか、法令に反する可能性がないか。
取立て 違法な取立て(威迫・深夜の訪問・第三者への過度な連絡)に該当しないか。
債権の実在 二重譲渡・架空債権など、自社側の行為が詐欺等に当たらないよう管理できているか。

 

契約条項で確認すべき違法リスク

契約書の条文は、ファクタリングが「適法な債権売買」か「実質的な高金利貸付け」かを分ける重要な手がかりになります。

金融庁や弁護士会の資料では、償還請求権(リコース)や買戻し義務が過度に広く設定されている場合、債権が単なる担保となり実態は貸付けに近づくと指摘されています。

契約条項を確認する際には、次のような観点が重要です。

 

  • 「償還」「買戻し」「弁済」などの文言が、どの条件で発生するか明確か
  • 売掛先の支払遅延・倒産時に、利用者が全額を分割返済・一括返済する義務がないか
  • 違約金・遅延損害金の利率が、一般的な水準から見て過度に高くないか
  • 契約書全体で「債権の売買契約」であることが明確に示されているか

 

特に、「売掛先の不払があった場合、利用者はただちに全額を支払う」といった条文があると、形式上のファクタリングでも、経済的には貸付けに近い負担を負うことになります。

また、手数料以外に「事務手数料」「調査費用」「管理料」などが重ねて課され、合計すると年利換算で極端に高い水準になる契約も注意が必要です。

 

契約条項の違法リスクを確認するポイント
  • 償還請求権や買戻し義務が、例外的な事由に限定されているか
  • 違約金・遅延損害金が、一般的な範囲を大きく超える水準になっていないか
  • 名目上だけでなく、条文全体から「売買」としての実質が読み取れるか
  • 不明点があれば、その場で署名せず、税理士・弁護士など第三者に確認してもらう体制を持てているか

 

取立て方法と違法な行為のライン

ファクタリングの契約で支払が遅延した場合、ファクタリング会社が利用者に対して入金を求める場面が生じることがあります。

このとき、取立て方法が行き過ぎた場合には、貸金業法の取立て規制や、各種ガイドラインが想定する「不当な取立て」に該当するおそれがあります。

 

貸金業法21条では、夜間の執拗な電話や、威迫・暴力的な言動、勤務先や親族への過度な連絡などが禁止されており、登録貸金業者には自主規制ルールも課されています。

ファクタリング事業者は形式上貸金業者ではないことが多いものの、金融庁や国民生活センターの注意喚起では、「ファクタリングを標榜しながら、貸金業者と同様の取立て行為を行うケース」に警鐘が鳴らされています。

取立ての違法ラインを意識するうえでは、次のような行為に注意が必要です。

 

  • 深夜・早朝の電話・訪問、長時間の居座りといった生活平穏を害する行為
  • 怒号・脅迫的な発言、暴力的な態度、名誉を傷つける言動
  • 勤務先・取引先・家族など第三者に対する過度な連絡・圧力
  • 「刑事告訴する」「破産させる」など、過度に不安をあおる表現を繰り返すこと

 

利用者側としては、契約前に「延滞時の対応」を確認し、過去のトラブル事例や相談窓口への相談状況なども参考にしながら、適切な対応を取っている事業者かどうかを見極めることが重要です。

 

取立てリスクを回避するためのポイント
  • 契約書・重要事項説明で「延滞時の対応」「連絡方法」が明示されているかを確認する
  • 威圧的な対応や深夜の連絡など、不適切な取立てがあれば記録を残し、早めに相談機関へ連絡する
  • 延滞が見込まれる場合は、事前に支払計画の見直しを相談し、一方的な放置を避ける

 

給与ファクタリングとの関わり整理

給与ファクタリングは、「給与の支払日前に、将来の賃金債権を売却する」という名目で資金を渡すスキームですが、金融庁と消費者庁は共同で、「実態は貸金業法上の貸付けであり、貸金業登録なしで行えばヤミ金融に該当する」と明確に表明しています。

国民生活センターの相談事例でも、年利換算で数百%に達する高い手数料を要求され、勤務先への連絡など強引な取立てが行われたケースが多数報告されています。

事業者向けファクタリングとは、対象債権と規制の枠組みが大きく異なります。

 

  • 事業者向け:事業で発生した売掛債権(商品・サービスの掛売り)を対象
  • 給与ファクタリング:個人の賃金債権(給与・賞与)を対象

 

賃金債権は労働基準法・民法等で特別な保護が与えられており、それを担保にしたり譲渡したりするスキームには慎重な扱いが求められます。

金融庁は、給与ファクタリング業者について、貸金業登録が必要であること、無登録で高金利の貸付けを行う行為はヤミ金融として取り締まりの対象となることを繰り返し公表しています。

中小企業の経営者としては、

 

  • 自社が従業員に対して給与ファクタリングをあっせん・斡旋しないこと
  • 個人事業主として、自身の給与や個人収入を対象としたファクタリングを利用しないこと
  • 「給与ファクタリング」「給料即日現金化」などの広告には特に警戒すること

が重要です。

 

給与ファクタリングとの線引きを明確にするポイント
  • 事業者向け売掛債権ファクタリングと、個人の給与債権を対象とする取引を混同しない
  • 給与ファクタリングは、原則として貸金業法上の貸付けと評価されることを理解する
  • 従業員や自分自身が、違法な給与ファクタリング業者の利用に巻き込まれないよう社内でも注意喚起する

 

安全なファクタリング会社選び方

ファクタリングを安全に利用するためには、「サービス内容」だけでなく「事業者そのもの」を多面的に確認することが重要です。

金融庁は、中小企業の経営者などを狙い、貸金業登録のない者がファクタリングを装って違法な貸付けを行う事案が確認されているとして、注意喚起を行っています。

 

具体的には、債権額に比べて買取代金が著しく低額であるケースや、契約書に売買契約であることが明確に記載されていないケース、売主に広範な買戻し義務を課しているケースなどが、偽装ファクタリングの疑いがある例として挙げられています。

一方で、適切な事業者を選べば、ファクタリングは銀行融資が難しい局面でも資金繰りを支える有効な手段となります。

安全性を判断するうえでは、①公式情報(商業登記・会社概要・貸金業登録の有無等)、②手数料水準とスキーム内容、③過去のトラブル事例・相談情報、といった3つの観点で情報を集め、自社の資金ニーズと照らし合わせて総合的に判断することがポイントです。

 

確認の視点 主なチェック内容
公式情報 会社名・所在地・代表者・連絡先、商業登記の有無、貸金業登録番号(貸付スキームの場合)など。
コスト・スキーム 手数料やその他費用の開示状況、リコース/ノンリコース、2社間/3社間など契約スキーム。
トラブル情報 行政・公的機関の注意喚起や相談事例、過去の紛争・訴訟・苦情の有無。

 

公式情報で確認する登録状況と実績

事業者選びの第一歩は、「どのような会社が運営しているのか」を公式情報から確認することです。

金融庁は、ファクタリングを装って貸金業登録のない者が違法な貸付けを行っている事例を紹介し、「債権の買取代金が債権額に比べて著しく低額である」などのケースは偽装ファクタリングの疑いがあるとして、ヤミ金融を利用しないよう注意を促しています。

 

もしスキームが実質「貸付け」に当たるのであれば、貸金業法上の登録が必要となるため、貸金業登録番号を名乗っている事業者であれば、金融庁・各財務局・日本貸金業協会等の公表情報と照合することが有効です。

一方、事業者向けの純粋な売掛債権ファクタリングは、現時点で特定の免許制ではありません。

 

この場合でも、商業登記簿謄本で会社の存在・代表者を確認できるか、本店所在地や代表電話が明示されているか、決算情報や事業内容が一定程度開示されているかといった点から、継続性・透明性をチェックできます。

また、日本弁護士連合会や国民生活センターが公表する資料の中に、特定業者名が「問題事例」として挙がっていないかを確認することも、リスク低減の一助になります。

 

公式情報で確認したい主なチェック項目
  • 会社名・所在地・代表者・連絡先など基本情報がホームページ等で明示されているか
  • 貸付スキームを含む場合、貸金業登録番号や監督官庁の表示があるか(登録情報と照合できるか)
  • 商業登記簿や企業情報データベースで、一定期間の事業継続実績を確認できるか
  • 金融庁・国民生活センター・弁護士会の注意喚起資料に、当該事業者が問題事例として出ていないか

 

手数料水準とスキーム内容のチェック

安全性を見極めるうえで、手数料水準とスキーム内容は欠かせないチェックポイントです。

金融庁の「ファクタリングの利用に関する注意喚起」では、債権の買取代金が債権額に比べて著しく低額である場合や、売掛金の回収を売主に委託し、回収できなければ買戻し義務を負わせるような契約は、偽装ファクタリング(実質は貸付け)に当たるおそれがあるとされています。

 

まず、「いくら前倒しするのか」と「何日分前倒しするのか」を明示し、手数料を実質年率に換算してみることが重要です。

例えば、30日間の前倒しで10%の手数料を支払う場合、単純計算でも年率換算で100%超となり、利息制限法(元本に応じて年15〜20%)や出資法(年20%)の上限を大きく超える水準です。

 

こうした取引は、たとえ「手数料」「割引料」と称していても、経済的実質として高金利貸付けと評価されるリスクが高まります。

同時に、スキーム内容として、2社間・3社間、リコース(償還請求権)の有無、対象債権が事業の売掛金か賃金債権か、といった点も確認が必要です。

給与ファクタリングなど、賃金債権を対象としたスキームは、金融庁から明確に貸金業と位置付けられており、手数料水準まで含めて貸金業規制の対象となります。

 

手数料・スキーム確認の実務ポイント
  • 手数料・事務手数料・登記費用など、すべてのコストを合算して実質年率を試算する
  • 2社間/3社間、リコース/ノンリコースなど、スキームごとのリスクと手数料の関係を理解する
  • 賃金債権(給与)を対象とする取引は、原則として貸金業規制の対象であることを踏まえて慎重に検討する
  • 「相場から見て異常に高い」「説明があいまい」な手数料水準のサービスは避ける

 

トラブル事例から学ぶ注意ポイント

公的機関や弁護士会が公表しているトラブル事例には、「どのような点に注意すべきか」のヒントが多く含まれています。

金融庁は、アクセスFSAなどで、後払い現金化や給与ファクタリングを含む新手のヤミ金融について、実際の相談事例をもとに注意喚起を行っており、「金融庁や公的機関を装う」「必ず資金繰りが改善すると誇大な勧誘を行う」「高額な手数料や違約金により多重債務に陥る」といった典型パターンを紹介しています。

 

国民生活センターの資料でも、給与ファクタリング事業者に対する損害賠償請求訴訟や、多重債務・自己破産に至った事例が紹介されており、「年率換算で数百%に及ぶ手数料」「勤務先への執拗な連絡」「契約内容の説明不足」などが問題点として挙げられています。

事業者ファクタリングに関しても、日本弁護士連合会がQ&A形式で「事業者ファクタリングを利用する際の注意点」を解説し、二重譲渡・偽装ファクタリング・過度な手数料に注意するよう促しています。

これらの事例を踏まえると、「短時間で契約を急がせる」「契約書を十分読ませない」「マイナス情報を伝えない」といった事業者の態度は、注意シグナルと捉えることができます。

 

トラブル事例から学べる主な注意ポイント
  • 「必ず改善」「金融庁も推奨」などの誇大な勧誘文句をうのみにしない
  • 契約書のコピーを渡さない、内容説明を急かす事業者とは契約しない
  • 年利換算で極端に高い手数料、支払えない場合の過度な違約金・取立てに注意する
  • 少しでも不安があれば、その場で契約せず、金融庁・消費生活センター・弁護士など第三者に相談する

 

このように、公式情報・手数料とスキーム・トラブル事例という三つの観点から事業者をチェックすることで、安全性の低いファクタリング会社を事前に見分け、自社にとって適切なパートナーを選びやすくなります。

 

相談窓口とトラブル対応手順例集

ファクタリングに不安を感じたとき、あるいは「これは違法ではないか」と疑問が生じたときに、どこへ・どの順番で相談すべきかをあらかじめ整理しておくと、いざという場面で慌てずに済みます。

基本的な流れとしては、①社内で事実関係と契約内容を整理する、②ファクタリング会社に内容確認・条件交渉を行う、③公的な相談窓口(金融庁・消費生活センター・中小企業支援機関など)で客観的な情報を得る、④必要に応じて弁護士など専門家に依頼し、法的対応を検討する──というステップで考えると分かりやすくなります。

 

特に、「手数料が想定より高く感じる」「買戻し義務や違約金の条文が理解できない」「取立てが心理的に負担になっている」といった段階で早めに相談することが重要です。

問題が大きくなる前であれば、条件の見直しや契約解除、別の資金調達手段への切り替えなど、選択肢も比較的多く残っています。

 

ステップ 主な内容
社内整理 契約書・請求書・入出金状況・担当者メモなどを集め、時系列に整理する。
事業者との対話 不明点・不安点を一覧化し、メールなど記録の残る方法で確認・交渉する。
公的窓口相談 金融庁・消費生活センター・中小企業支援機関に相談し、制度面・一般的な問題点を確認する。
専門家依頼 弁護士・税理士などに依頼し、法的リスクの評価や交渉・訴訟を含めた対応方針を検討する。

 

金融庁・消費生活センター等の相談窓口

公的機関の相談窓口は、「このスキームは制度的に問題がないか」「類似のトラブルが報告されていないか」を確認する場として有効です。

金融庁には「金融サービス利用者相談室」が設置されており、融資やファクタリング、後払い・現金化サービスなど、金融サービス全般について、一般論や制度上の考え方の説明を受けることができます。

また、貸金業登録の有無や、注意喚起の対象となっている事業者の情報についても、公開情報の範囲で確認することが可能です。

 

消費生活センター(188番)や国民生活センターは、主に個人向けの窓口ですが、給与ファクタリングや後払い現金化などの相談が多数寄せられており、「どのような手口が問題とされているか」「過去にどのような被害があったか」を知る手掛かりになります。

事業者として相談する場合でも、「一般的に見て危ないパターン」に当たるかどうかを判断する材料になります。

 

さらに、中小企業庁が所管する「よろず支援拠点」や「中小企業119」は、資金繰り・ファクタリング・融資・補助金などを含めた経営相談を無料で受けられる窓口です。

ここでは、ファクタリング自体の可否判断というより、「ほかにどのような資金調達策があるか」「ファクタリングをどう位置付けるか」といった全体設計を一緒に検討してもらうことができます。

 

公的相談窓口を使うときのポイント
  • まずは金融庁や消費生活センターで「制度上のグレー・アウトライン」を確認する
  • 中小企業向けのよろず支援拠点・中小企業119で、資金繰り全体の設計を相談する
  • 電話だけでなく、相談内容や回答をメモ・メールで残しておき、後の判断材料にする
  • 「今すぐ契約しないと間に合わない」と感じる案件ほど、短時間でも公的窓口に一度相談してから決める

 

弁護士・専門家へ相談すべき場面

公的窓口で一般的な説明を受けても、具体的な契約が違法かどうか、損害賠償や契約解除が可能かどうかなどの判断は、最終的には個別事案ごとに行う必要があります。

この段階では、弁護士や専門家(税理士・公認会計士・中小企業診断士など)の役割が重要になります。

 

弁護士は、契約条文や取引の実態を踏まえ、「偽装ファクタリングとして貸金業法違反に問われるおそれがあるか」「違約金・遅延損害金の条項が公序良俗に反するような過大なものではないか」といった法的リスクを評価し、交渉や訴訟を含む対応方針を提案します。

次のような場面では、できるだけ早い段階で弁護士等への相談を検討することが望ましいです。

 

  • 契約書の内容が難解で、買戻し義務・償還請求権の範囲が理解できない
  • 想定していなかった高額な手数料・違約金・遅延損害金を請求された
  • 取立ての言動が威圧的で、勤務先や取引先への連絡を示唆されている
  • すでに訴訟・支払督促・仮差押えなどの法的措置の予告・通知を受けている

 

税理士・公認会計士は、ファクタリング手数料の会計処理・税務処理(損金算入・消費税など)や、資金繰り表を用いた持続可能性の検証に強みがあります。

また、中小企業診断士は、ファクタリングを含む資金調達を「事業戦略全体」の中でどう位置付けるかを一緒に考える役割を担います。

 

弁護士・専門家相談を検討すべきサイン
  • 契約の有効性・違法性が争点になりそうだと感じたとき(偽装ファクタリングの疑いなど)
  • すでに支払不能に近く、事業再生や債務整理まで検討せざるを得ないとき
  • 社内だけでは条件交渉が難しく、第三者の交渉窓口が必要だと感じたとき
  • 複数社とのファクタリング・借入・リースが重なり、全体像の整理が困難になっているとき

 

契約前後に行う自社チェックリスト

最後に、日常的に使える「自社チェックリスト」を用意しておくことで、契約前後の判断ミスを減らすことができます。

契約前は、「本当にファクタリングが必要なのか」「他の資金調達手段と比べて優位性があるのか」「この事業者・スキームは法的に問題がなさそうか」という3点を軸に確認します。

 

契約後は、「当初の想定どおりの資金繰り改善効果が出ているか」「手数料負担が利益を圧迫していないか」「取立て・条件変更の場面で不安を感じる点がないか」を定期的に点検します。

チェックリストは、経営者個人だけでなく、経理・財務担当者とも共有し、「この条件ならOK/この条件なら要相談」という社内基準を作っておくと有効です。

たとえば、「手数料率が◯%を超える場合は必ず年利換算して確認する」「償還請求権ありの契約は弁護士に一度見てもらう」「給与債権を対象とするスキームは利用しない」といったルールを明文化しておくことで、現場判断によるリスクを減らせます。

 

  • 【契約前】資金使途と返済(またはキャッシュフロー)見込みを資金繰り表に落とし込んでいるか
  • 【契約前】手数料・その他費用を含めて実質年率を試算し、粗利率と比較しても無理がないか
  • 【契約前】償還請求権・違約金・遅延損害金などリスク条項を理解し、必要なら専門家に確認したか
  • 【契約後】想定どおり資金繰りが改善しているか、過度な依存になっていないかを定期的に点検しているか
  • 【契約後】不審な請求や取立てがあった場合の社内報告ルートと、外部相談窓口を明確にしているか

 

このようなチェックを習慣化することで、違法リスクの高いファクタリングから距離を置きつつ、自社の資金繰りに合った形で、安全にファクタリングを活用していくことが期待できます。

 

まとめ

ファクタリング自体は、売掛債権の譲渡に基づく合法な資金調達手段ですが、契約内容や手数料水準、償還請求権の扱いによっては、実質的な貸付と判断され違法性が問題となるケースがあります。

契約書で買戻し義務や高額な違約金が課されていないか、年利換算で過度な負担になっていないか、取立て方法が法律やガイドラインに反していないかを冷静にチェックすることが重要です。

あわせて、金融庁・消費生活センター・専門家の相談窓口も把握し、自社の資金繰りとリスク許容度に合った形で、安全にファクタリングを活用していきましょう。