【厳選19社】ファクタリングのサービスや手数料を徹底比較 >

当サイトはプロモーションが含まれています

運送業の倒産は防げる?|兆候・資金繰り・再生手続と公的支援の道筋

資金繰りが1か月遅れるだけで運行が止まることがあります。この記事では、運送業の倒産リスクを抑えるために「倒産の定義と兆候」「緊急資金の確保手順」「私的・法的整理の選択」「許認可や車両の引継ぎ」「公的支援と必要書類」を客観的に整理します。初動から実行までの判断基準を短時間で把握できます。

 

倒産の定義と早期兆候の見極め

「倒産」は日常語では事業継続が困難になる広い状態を指し、実務上は私的整理(金融機関との話合いで再建を図る方法)と、裁判所を使う法的整理(民事再生・破産など)に分けて考えます。

重要なのは、法的手続きの直前ではなく「資金ショートの予兆」を早く捉えることです。運送業は燃料費・外注費・人件費・保険料など固定的かつ変動幅の大きい支出が重なり、入金サイトの延びや繁忙期の外注増で一気に資金が詰まりやすい構造があります。

 

そこで、月次試算表と12か月の資金繰り表をセットで更新し、現預金残高の細り、売掛回収の遅延件数増、短期借入の常態化、税・社会保険の納付遅れといった「小さなサイン」を可視化します。

兆候を見つけたら、支払優先順位を定め(給与・税公租・燃料などの必須支出を先に確保)、取引金融機関へ早期に相談し、私的整理や制度融資の道筋を並行検討することが被害の最小化につながります。

 

兆候 見え方の例 初動対応の例
現預金の細り 月末残高が連続低下、賞与・保険料の支払で赤字化 支払優先順位の設定、短期枠の相談、資金繰り表の精緻化
入金遅延 回収サイトの延伸、遅延件数の増加 回収強化、前受・一部前払いの交渉、与信限度の見直し
返済負担の増大 新規借入で旧債返済が常態化 借換・条件変更の試算、総返済額と月次負担の比較
信用事故の兆し 税・社保の納付遅れ、決済資金の不足予兆 即時相談、公的支援の検討、支払計画の再編

 

倒産類型と支払不能の基礎

実務で使う「倒産」は大きく二系統です。私的整理は、金融機関や主要取引先と合意形成を行い、返済猶予や一部債務カット、資産売却、スポンサー支援などを組み合わせて再建を図ります。

法的整理は裁判所の関与のもとで進め、再建型(民事再生など)か清算型(破産など)に分類されます。選択の軸は、①事業の再建可能性、②資金ショートの深刻度と時期、③荷主・協力会社・従業員への影響、④許認可・車両・保険の継続条件です。

 

なお「支払不能」は、支払期日に一般的・継続的な支払いができない状態を指し、単発の遅延よりも恒常化しているかが重視されます。

いずれの選択でも、事業の芯(収益源)を残せるか、関係者への説明が具体的数値でできるかが成否を分けます。まずは資金繰り表と返済予定をそろえ、「どの選択肢なら運行を止めずに立て直せるか」を客観的に比べる姿勢が大切です。

 

用語の押さえ(シンプル版)
  • 倒産(広義):資金ショート等で事業継続が困難な状態の総称
  • 私的整理:裁判所以外での合意型再建(返済条件の再構成など)
  • 法的整理:裁判所手続(民事再生=再建/破産=清算 等)
  • 支払不能:期日に一般的な支払いが継続して行えない状態
  • 債務超過:負債>資産の静的な状態(再建可否の判断材料)

 

資金指標と入出金の異常サイン

早期発見のコツは、複雑な理論より「毎月の数字のくせ」をつかむことです。運送業では、燃料単価・外注配車比率・稼働率の揺れがそのまま資金に跳ねます。

まず現預金の推移と売掛回収の遅延件数、次に借入の年間元利返済額と本業から生まれる返済原資(税引後利益+減価償却費±運転資金増減)のバランスを確認します。

 

資金ショートは、入金の遅れと大口支出(保険・賞与・車検・税金)が重なる月に起きやすいため、12か月の資金繰り表で山谷を可視化します。

異常サインを見つけたら、支払優先順位を整え、入金前倒しや在庫圧縮、短期枠の活用など「今月できる手」を同時に並べます。数値の前提をメモしておくと、取引金融機関や公的窓口への相談が短時間で進みます。

 

【早期兆候チェック手順】

  1. 資金繰り表を12か月分作成し、入金・大口支出・税公租を時系列化
  2. 直近試算表で売上・粗利率・燃料/外注比率のブレを確認
  3. 返済予定表を合算し、年間元利返済額と返済原資の差を把握
  4. 簡易DSCR(返済原資÷年間元利)で余裕度を目安確認
  5. 遅延件数や入金サイトの延伸など、回収面の変化を記録
  6. 支払優先順位(給与・燃料・保険等)を明文化し、実行計画に反映
  7. 相談用資料(試算表・資金繰り表・借入一覧)をひとまとめにする

 

緊急資金繰りと資金ショート回避手順

資金が細る局面では、まず「今月を乗り切る現金」と「来月以降の平準化」を同時に設計します。運送業は燃料・外注・人件費・保険など必須支出が多く、入金サイトの延伸や繁忙期の外注増で一気に目減りしやすい構造です。

初動では、現預金・売掛回収予定・大口支出(保険料・車検・税公租)を日付単位で棚卸しし、不要不急の支出は一時停止、必要不可欠な支払いは優先順位を付けます。

 

次に、メインバンクと日本政策金融公庫・信用保証協会付き制度などの相談ルートを並行で開き、短期枠や当面の運転資金の可否を確認します。

社内では、入出金の前倒し・後ろ倒し、在庫圧縮や前受金の交渉、増車や大規模投資の時期調整など、すぐ実行できる手当を積み上げます。以下は、緊急対応の要点を整理した一覧です。

 

領域 目的 実務ポイント
現金確保 今月の資金ショート回避 入金前倒し交渉、短期枠の活用、不要支出の一時停止
支出管理 必須支出の維持 給与・燃料・保険・税公租を優先し、期日調整を交渉
金融機関対応 当面資金+中期平準化 資金繰り表・試算表・借入一覧をセットで提示
計画修正 翌月以降の再発防止 配車/単価/外注比率の見直し、投資計画の再スケジュール

 

取引金融機関への即時相談体制

最短で資金ショートを避けるには、メインバンクに「現状・必要額・手当案」を同じ書式で提示し、並走してもらう体制づくりが有効です。

用意するのは、直近の月次試算表、13週(約3か月)の資金繰り表、借入一覧(残高・金利・返済方式・期日)、入金遅延や大型支出の予定、改善策の骨子です。

 

面談では、今月・来月・翌月の不足見込みを日付で示し、元金据置や返済方法の一時変更、短期証書の追加・当座貸越枠の設定など「選択肢」を列挙して比較できる形にします。

情報が揃っていれば、審査の往復が減り、決裁の判断が早まります。社内では、問い合わせ窓口を一本化し、数値の更新頻度(例:毎週)と報告フォーマットを固定します。

 

最初の連絡で伝える要点
  • 不足額と必要時期(例:月末××万円、翌月10日××万円)
  • 不足の理由(入金遅延・燃料単価上昇・大口支出の重複など)
  • 当面の手当案(支払調整、前受交渉、短期枠、据置等)
  • 今後3か月の資金繰り表と改善策(配車/単価/外注比率の見直し)

 

公庫・保証協会の緊急資金活用

日本政策金融公庫は政府系の直接融資、信用保証協会付きは自治体制度を通じて金融機関が実行する枠組みです。

どちらも「使途の明確さ」と「返済原資の見通し」を重視する点は共通で、試算表・資金繰り表・見積書など根拠資料が鍵になります。公庫は創業・小規模・担保余力が乏しい場面でも相談しやすく、面談を通じて事業実態を丁寧に確認する傾向があります。

 

保証協会付きは自治体メニューに沿って金利・期間・限度額が定められ、金融機関審査と保証協会審査の二段階で進みます。

緊急局面では、メインバンク経由の制度融資と公庫への直接相談を並行し、どちらが早く実行できるか・総支払額はどうかを同条件で比べるのが実務的です。

 

手段 特徴 実務ポイント
日本政策金融公庫 直接融資。面談中心で事業性を確認。 使途根拠(見積・契約)と資金繰り表をセットで提示
保証協会付き制度 自治体メニューに基づく二段階審査。 必要書類の粒度を事前確認、保証料や実行日程を織込
並行検討 スピードと総額を比較しやすい。 同じ前提(期間・方式・諸費用)で総返済額を算定

 

支払優先順位と資金繰り表

資金ショートを防ぐ決め手は、支払順序の明文化と13週資金繰り表の運用です。まず、給与・燃料・保険・税公租・安全運行に不可欠な保守費を最優先に置き、次点として家賃や外注費の一部、繰延べ可能な費用を整理します。

入金側では、請求・集金の前倒し、分割入金や前受の交渉、滞留売掛の回収強化を合わせて進めます。

 

資金繰り表は、日付行と入出金の列を作り、実績と見込みを毎週ロール更新します。ズレが生じた箇所は理由を注記し、翌週の対策に反映します。

金融機関や公的窓口に提出する際は、根拠資料(請求・契約・見積・返済予定表)へのリンクや保管場所を明示して、数字の再現性を高めます。

 

【手順(13週資金繰り表の運用)】

  1. 必須支出と任意支出を区分し、支払優先順位を文書化する
  2. 入出金を日付単位で並べ、週次で実績と見込みを更新する
  3. 不足が出る週は、入金前倒し・支払期日調整・短期枠で手当案を列挙
  4. 対策の実行と効果を翌週に反映し、金融機関へ定期共有する

 

私的整理・法的整理の比較と選択肢

資金繰りが逼迫したときの選択肢は、大きく「私的整理(金融機関や主要取引先との合意で再建をめざす枠組み)」と「法的整理(裁判所手続を利用する枠組み)」に分かれます。

私的整理は、返済条件の見直しや一部債務の整理、資産売却、スポンサー支援などを柔軟に組み合わせやすい一方で、全関係者の合意形成に時間や工夫が必要です。

 

法的整理は、手続の透明性と強制力がある反面、取引先や従業員・荷主への心理的影響が大きく、手続コストや開示負担も伴います。

運送業では、許認可・車両・保険・運転者の確保が事業継続の前提になるため、「運行を止めないこと」を中心に、資金繰り表と返済原資の見込み、荷主との契約継続性を並べて検討します。

 

短期の資金ショート回避、債務の再構成、事業譲渡やスポンサー受け入れなど、複数の打ち手を同時に比較し、実行順序を決めることが重要です。

枠組み 特徴 実務での留意点
私的整理 柔軟な設計が可能。非公開で進めやすい。 合意形成に時間と資料が必要。利害調整の設計力が成否を左右。
法的整理 裁判所の関与で透明性・強制力がある。 開示負担と心理的影響が大きい。手続期間・費用の把握が必須。
ハイブリッド 私的整理で土台を整え、必要部分を法的に担保。 工程表と関係者説明の一体管理が必要。運行維持を最優先に設計。

 

私的整理の枠組みと進め方

私的整理は、裁判所外で金融機関や主要取引先と条件調整を行い、事業継続を図る方法です。返済条件の見直し(元金据置や期間延長)、資産売却・担保差替え、スポンサー受け入れ、借換の同時実行などを組み合わせて資金繰りを平準化します。

非公開で進めやすく、荷主や従業員への影響を抑えやすい反面、全員の合意が要るため「説明の再現性」を高める資料づくりが鍵です。

 

具体的には、13週資金繰り表、借入一覧(残高・金利・方式・期日)、改善策の効果試算(燃料単価・稼働率・外注比率の感応度)を一式にし、各案の総返済額と月次負担を同じ前提で比較します。

工程は「現状把握→条件案の提示→利害調整→契約変更→実行→フォロー」。数値の更新頻度と報告フォーマットを決め、同じ土俵で意思決定できる場を用意します。

 

私的整理の実務ポイント(要約)
  • 非公開で柔軟に設計しやすいが、合意形成の設計が核心
  • 資金繰り表・返済原資・効果試算を同じ前提で提示
  • 短期の資金確保と中期の再構成(借換・スポンサー)を同時設計
  • 実行後はモニタリング(週次更新・月次レビュー)で着地を管理

 

民事再生・破産の要点と影響比較

法的整理は大きく再建型と清算型に分かれます。再建型の代表が「民事再生」で、事業を続けながら債務を計画的に整理します。

清算型の代表が「破産」で、資産を換価し債権者へ配当して事業を終える方法です。運送業では、荷主との契約継続や運送業許可、車両・保険・運転者の確保が重要なため、再建を志向する場合は運行維持の計画性が問われます。

 

一方で、継続が難しいと判断される場合は、清算の透明性と関係者への公正な配分が重視されます。

いずれの選択でも、準備段階での資金繰り管理と関係者説明、重要契約の扱い、許認可・保険の継続条件の確認が不可欠です。

 

項目 民事再生(再建型) 破産(清算型)
目的 事業を続けつつ債務を計画的に整理 資産換価による清算と配当
事業継続 継続前提。運行維持の計画と資金が必要 原則として事業終了
債務の扱い 再生計画に基づき弁済条件を再構成 配当後に免責等の手続を経て債務処理
利害調整 計画案への同意・裁判所の認可が必要 破産管財人の下で公正に配分
対外影響 取引継続の説得が鍵。信用管理が重要 取引終了が前提。撤退計画と連絡体制の整備

 

事業譲渡・再生と許認可の留意

再生の選択肢として、事業の一部または全部を他社へ譲渡する「事業譲渡」や、スポンサーのもとでの「事業再生」が検討されます。

ここで重要なのが許認可と運行資源の取り扱いです。許認可は一般に「法人に帰属する扱い」が多く、株式譲渡のように法人格が変わらない取引では継続できる場合がある一方、資産を個別に移す事業譲渡では、承継や新規取得など追加の手続が必要となる可能性があります。

 

車両・保険・運転者・拠点契約の引継ぎ、荷主への事前説明と契約再締結、保険・安全管理体制の連続性の確保など、運行が止まらない工程設計が肝心です。

実務では、譲渡対象の範囲(車両・人員・契約)を明確にし、資金繰り表に「引継ぎ費用・一時的な二重コスト」を織り込んで比較します。

 

許認可・引継ぎで見落としやすい点
  • 許認可の扱いは制度により異なるため、公表手引の最新確認が前提
  • 事業譲渡は追加手続が生じる可能性。工程と費用を事前に計上
  • 車両・保険・運転者・荷主契約の連続性を工程表で管理
  • 移行期間の二重コスト(保険・人件費・拠点費)の資金繰り反映

 

運送業特有の実務対応と事業継続

運送業で事業継続を確保する要は「運行を止めない段取り」です。安全・法令順守・許認可の継続・車両と人員の確保・荷主との関係維持が同時並行で動きます。

資金繰りが厳しい局面でも、まずは必須支出(燃料・保険・給与・車検等)を優先し、運行に直結しない投資は延期します。

 

次に、許認可や営業所・車庫・車両の変更が生じる見込みなら、所管への事前相談から工程表を引き、申請→認可→引継ぎの順でスケジュールを固定します。

並行して、車両・保険・ドライバー・協力会社・IT/配車システムの「移行チェックリスト」を作り、証憑の所在と期限を明記します。

荷主には運行影響の有無と代替手当を先に提示し、請求・入金サイクルの再確認を行います。以下の表は、継続の観点を領域別に整理したものです。

 

領域 目的 実務ポイント
許認可・法令 事業継続の適法性確保 所管への事前協議、必要な認可・届出の工程表化、証憑の整備
車両・保険 安全運行の維持 車検・点検・任意保険/貨物保険の連続性、入替スケジュールの統一
人員・体制 運転者・管理者の確保 雇用継続・配属計画、教育/点呼/デジタコデータの承継
荷主・協力会社 取引の信頼維持 影響度別に優先連絡、代替便・増車/外注の手当、契約再確認

 

運送業許可・事業譲渡の認可要件

運送業は許認可事業であり、営業所・車庫・車両・運行管理体制など事業計画の主要要素が変わると、所管への認可や届出が必要となる場合があります。

事業譲渡や組織再編を伴う場合は、とくに「どの単位を誰に引き継ぐか」を先に決め、承継可否と必要手続の区分を確認します。

 

一般に、株式譲渡のように法人格を保つ取引は許認可の継続性が高い一方、資産や事業のみを移す事業譲渡では、追加の認可・届出・事業計画変更が必要になる可能性があります。

実務では、所管の案内・手引で最新要件を確認し、事前協議→申請書一式の作成→審査対応→認可→引継ぎの順に進めます。

工程表には、営業所/車庫の要件、運行管理者・整備管理者の体制、車両台数と車検・保険の連続性、荷主への説明日程を盛り込みます。

 

認可・届出の工程設計(要点)
  • 変更内容の特定(営業所・車庫・車両・体制・事業範囲)
  • 所管への事前相談で必要手続と様式・期限を確認
  • 申請書・添付(平面図/契約書/体制図/証憑)を一式化
  • 認可後の引継ぎ計画(ナンバー・保険・契約・IT)の実行

 

車両・保険・運転者の引継ぎ実務

事業継続の肝は、車両・保険・運転者の空白期間を作らないことです。車両は車検証・点検記録・リース/ローン契約の承継可否を確認し、名義変更や担保変更が必要なら実行日に間に合うよう逆算します。

保険は自賠責・任意・貨物保険の連続性が重要で、保険者変更や被保険者の名義変更、補償条件の継続可否を事前に押さえます。

 

運転者は雇用契約・社会保険・運転記録証明・健康診断・安全教育の履歴、配車システムやデジタコのID移行をセットで行います。点呼記録や教育記録の保管先を整理し、事故・災害時の連絡体制も新体制へ引き継ぎます。

項目 引継ぎの要点 主な証憑・準備物
車両 名義・担保の変更、点検/整備の継続、入替スケジュール統一 車検証・点検記録簿・契約書・残高証明・入替計画
保険 自賠責/任意/貨物保険の連続適用、条件・特約の承継 保険証券・付保証明・変更届、事故対応体制表
運転者 雇用・社会保険の切替、教育/点呼/勤務データの承継 雇用契約・出勤簿・教育/点呼記録・健康診断書・ID一覧
IT/配車 配車/請求システム、デジタコ・ドラレコのID/権限移行 アカウント台帳、権限表、操作マニュアル、ログ保全手順

 

荷主・協力会社への誠実な連絡

荷主・協力会社との信頼維持は、運行の遅延・欠便を避ける最短の道です。まず影響度(重要度・物量・代替可否)で相手先を分類し、優先度の高い相手から連絡します。

伝える内容は、運行への影響有無、代替便や外注増での維持策、請求・入金サイクルの変更有無、連絡窓口の一本化です。

 

誠実な情報提供は、前倒しの入金や運賃調整などの協力を得る際の基礎になります。社内では、FAQを用意し、問い合わせ対応のばらつきを防ぎます。

周知の順序と日時、担当者、必要書類(覚書・契約変更)のテンプレートをあらかじめ準備すると、交渉が滞りにくくなります。

  1. 相手先の分類:重要度・物量・代替可否でA/B/Cに区分
  2. メッセージ統一:影響有無・維持策・窓口・スケジュールを定型化
  3. 先行周知:A先から連絡し、代替手当と請求/入金の運用を確認
  4. 書面整備:覚書・契約変更・合意事項の保管場所を明確化

 

信用毀損を避けるための注意点
  • 事実と異なる断定や過度な約束をしない(実行可能性を明記)
  • 遅延・欠便の可能性は早期に共有し、代替案を同時提示
  • 窓口・回答期限を明確にし、問い合わせの分散を防ぐ
  • 合意事項は文書化し、社内の実行責任者・期限を設定

 

公的支援窓口と提出書類の基本

公的支援は「緊急の資金繰り支援」と「再生の設計支援」に大別できます。前者は日本政策金融公庫や信用保証協会付き制度融資が中心で、資金の確保と返済条件の見直しを支えます。

後者は中小企業活性化協議会や認定経営革新等支援機関(金融機関・士業など)が、客観的な計画づくりと関係者調整を後押しします。

 

いずれも、使途の明確化・資金繰り表・直近期の試算表・借入一覧といった「再現性のある資料」が共通言語です。窓口により書式や確認観点は異なりますが、提出物の骨格はほぼ共通です。

まずは自社の不足額と必要時期、運行維持に不可欠な支出の内訳を日付で整理し、どの窓口に何を相談するかを地図化すると、審査や協議が短時間で進みます。

 

窓口 役割 活用場面
日本政策金融公庫 政府系の直接融資。面談を通じ事業性と資金使途を確認。 当面の運転資金、増車や設備の資金手当
信用保証協会(制度融資) 保証付与により金融機関融資を後押し。二段階審査。 地域施策の活用、安定的な長期資金の確保
中小企業活性化協議会 私的整理や再生計画の策定・調整支援。 債務の再構成、合意形成の設計、事業継続の工程表作成
認定支援機関・商工団体 計画作成・モニタリングの実務支援。 早期経営改善計画、金融機関との共有資料の整備

 

中小企業活性化協議会の活用手順

中小企業活性化協議会は、都道府県単位で再生支援を行う公的機関です。特徴は、私的整理を前提に「関係者の合意形成」と「再生計画の客観化」を支援する点にあります。

相談の段階で、資金ショートの見込みや不足額、運行維持に不可欠な支出(給与・燃料・保険・車検・税公租)を特定し、資金繰り表と改善策の骨子をひとまとめにします。

 

協議会は、計画の前提条件や利害調整の論点を整理し、必要に応じて関係金融機関との意見交換を段取りします。

事業の芯(収益の源泉)を残す観点から、縮小・撤退・事業譲渡・スポンサー受入れなどの選択肢を並行で比較し、工程と提出書類の優先順位を決めます。

  1. 初回相談:現状の数字(試算表・資金繰り表・借入一覧)と不足額の時期を提示
  2. 診断・整理:収益性・運行維持条件・利害関係者の論点を洗い出し
  3. 計画草案:資金繰り是正策、返済条件の再構成、必要な工程と期限を明記
  4. 関係者調整:金融機関等と情報共有、合意形成の進め方を設計
  5. 実行・フォロー:モニタリング方法(週次・月次)とKPIを設定

 

早期経営改善計画の活用ポイント

早期経営改善計画(いわゆる「プレ」段階の計画)は、認定経営革新等支援機関の伴走で、資金繰り表・収支計画・アクションプランを整える仕組みです。

法的な債務整理を前提とせず、「早い段階での見える化」に価値があります。運送業では、燃料単価・外注比率・稼働率・車検/保険の大口支出といった変動要因が資金に直結するため、感応度(前提が崩れたときの影響)を簡潔に示すと説得力が出ます。

 

計画は金融機関との共通言語になり、借換や条件変更の比較、追加融資の可否判断の土台になります。

作成時は「数字の再現性」と「工程の実行可能性」を重視し、提出後は週次・月次でギャップを検証して軌道修正します。

計画づくりの実務ポイント
  • 資金繰り表は13週+12か月の二階建てで運用
  • 感応度:燃料単価・稼働率・外注比率が動いた場合の再計算
  • 工程表:入金前倒し・費用圧縮・契約見直しの期限と責任者
  • 金融機関共有:前提・根拠資料・更新頻度を文書で明示

 

申請・審査に必要な書類一覧

公的支援や制度融資の審査は、「使途の妥当性」と「返済原資(または計画の実行可能性)」を確認する営みです。書式は窓口ごとに異なりますが、骨子は共通します。

まず決算書(3期分)と直近試算表、13週資金繰り表、借入一覧(残高・金利・方式・期日)、使途の根拠資料(見積・契約・発注・車検証等)をそろえます。

 

運送業の実態確認として、運送業許可や保険加入、主要取引先の契約・運賃表、入金サイトの説明資料も有効です。

計画系の支援では、改善策の工程表とKPI、モニタリング方法(週次・月次)まで添え、数字の再現性を高めます。

 

区分 主な書類 補足・ポイント
財務・資金 決算書3期、直近試算表、13週資金繰り表、借入一覧 入出金の山谷、年間元利と返済原資のバランスを明示
使途根拠 見積書・契約書・発注書、車検証・仕様書 金額・納期・台数・仕様を特定、領収・検収の段取りを明記
事業実態 運送業許可、保険(自賠責・任意・貨物)、運賃表、主要契約 入金サイト・繁忙期・外注比率などの前提を説明
計画・工程 早期経営改善計画や再生計画、工程表、KPI、モニタリング方法 責任者・期限を明記し、更新頻度と共有先を固定

 

まとめ

倒産回避は、早期兆候の把握→資金繰り表で現状可視化→取引金融機関・公庫・保証協会へ即時相談→私的/法的整理の比較検討→許認可・車両・人員の継続手当、の順で進めるのが基本です。

本文の手順と書類一覧を活用すれば、初動対応の迷いを減らし、資金ショートと信用毀損のリスクを小さくできます。