運送業の人手不足は、求人難だけでなく労働時間規制への適合、配車の非効率、採用・定着の仕組み不足が重なって生じます。
本記事は、現状把握の指標、法制度の要点、採用・育成とDX、助成金や資金繰りの実務手順を一気に整理。今日から使える点検表で、ムリなく改善の道筋を示します。
人手不足の現状と根本原因

運送業の人手不足は、単なる「求人難」だけでなく、労働時間規制への対応、人口動態の変化、荷主側の運用条件(荷待ち・付帯作業・短納期化)など複数の要因が同時に作用して生じます。
足元の雇用環境では、有効求人倍率が高止まりする一方、産業・地域で温度差が大きく、募集を増やしても応募に結び付きにくい状況が続きやすいです。
統計の読み方としては、全産業の「求人倍率」で需給バランスを把握し、「入職率・離職率」で流動性と定着の度合いを確認します。
さらに、年齢構成や就業者数の推移で供給制約の強さを見ます。現場運用では、改善基準告示(拘束時間・休息等)と時間外労働の上限(年960時間)への適合が前提となり、荷待ち是正や運賃・料金の適正化施策も並行して進んでいます。
制度・統計を下表のように整理し、社内KPIに落とし込むと全体像がつかみやすくなります。なお、最新値は各公表資料で必ず確認してください。
指標・制度 | 典型データ源 | 読み方・活用ポイント |
---|---|---|
求人倍率 | 厚生労働省「一般職業紹介状況」 | 需給の目安。全体傾向と地域差を確認し、募集難度の基準にする。 |
入職率・離職率 | 厚労省「雇用動向調査」 | 流動性・定着の度合い。年ごとの変化も確認する。 |
年齢構成・供給制約 | 総務省統計局「労働力調査」等 | 高齢者就業の増加と若年層の減少を把握。中長期の採用計画に反映。 |
労働時間規制 | 国交省・厚労省(改善基準告示、上限規制) | 年960時間の上限や拘束・休息基準への適合が前提。運行計画を見直す。 |
荷主対策 | 国交省(トラックGメン等) | 荷待ち・不当な据置きの是正を促す取組。現場のボトルネック把握に有効。 |
求人倍率・離職率の現状と読み方
求人倍率は「求人数÷求職者数」で、数字が高いほど人材獲得が難しいことを示します。足元の全体感として、有効求人倍率(季節調整値)はおおむね1倍台前半で推移しており、人材需給は依然として引き締まっています(例:令和7年7月は1.22倍)。
産業別の新規求人動向では、運輸・郵便で増減がみられる月もあり、募集環境は景況や荷動きに左右されます。
離職率は職場の定着度を映す指標で、雇用動向調査の年次値を用いれば、入職率とのバランス(入職超過・離職超過)を客観的に確認できます。
読み方のコツは、全産業の水準と自社実績を並べること、時系列で傾向を見ること、正社員・パート別に分けることです。
月次の求人倍率(速報)と年次の離職率(確報)は発表タイミングが異なるため、直近の傾向と構造的な課題を分けて捉えると判断が安定します。
- 求人倍率=足元の「取り合い」の強さ(地域差・職種差を重視)
- 入職率・離職率=定着と流動の度合い(年次の安定指標)
- 全体と自社の差分を可視化し、募集条件・教育・配置の改善箇所を抽出
人口動態・高齢化の供給制約
人手不足の背景には、人口動態の変化があります。総務省統計局の整理では、65歳以上の就業者数は増加傾向で過去最高水準となり、高齢者の就業参加が日本全体の労働供給を下支えしています。
一方、若年層人口の縮小が続くため、運送業のように資格・安全管理・体力要件が重なる職種では、採用母集団が構造的に細りやすい状況です。
採用戦略としては、年齢に応じた職域(短距離・固定ルート・軽車両等)や、運行管理・倉庫内業務への適材配置、再雇用やカムバック採用の選択肢を広げることが現実的です。
また、教育期間の確保や安全投資(車載器・アシスト装備)が定着率に影響するため、採用コストと合わせて長期の労務コストとして設計します。人口・労働力の構造は急変しにくいので、3年程度の採用・育成計画で需給の谷を均す発想が有効です。
観点 | 見るデータ | 活用のヒント |
---|---|---|
年齢構成 | 就業者の年齢分布・再雇用人数 | 高齢者就業の増加を前提に職域設計と健康管理を強化 |
採用母集団 | 応募数・資格保有者数の推移 | 資格取得支援と見習い枠で母集団を拡大 |
育成期間 | 独り立ちまでの月数・事故/違反率 | 教育KPIを設定し、安全投資と連動させて定着を高める |
需要変動・荷主要件の人員計画への影響
需要の山谷(繁閑)や荷主側の運用条件は、人員計画・労働時間に直結します。2024年適用の新しい改善基準告示では、拘束時間や休息期間などが厳格化され、さらにトラックドライバーには時間外労働の上限(年960時間)が適用されました。
これにより、従来は残業で吸収していた繁忙のピークや荷待ち時間を、配車最適化や契約見直しで吸収する必要性が高まっています。
国交省は「トラックGメン」によって荷主行為の是正を強化しており、長時間の荷待ちや不当な据置きへの対応が進みつつあります。
自社の計画では、荷主別の検収・入出荷のリードタイム、付帯作業の範囲、配車の組み方を数値で見直し、必要運行数・必要人員・外注の境界線を明確にします。
- 荷主別の荷待ち・付帯作業時間の実測と、配車での平準化案
- 繁閑差に応じた外注・協力会社の稼働枠と監督フロー
- 年960時間の上限と拘束・休息基準を満たす運行パターン
- 標準的な運賃・適正料金の確認と契約更新スケジュール
法制度・労働時間規制の実務影響

トラックドライバーには、時間外労働の上限規制(特別条項付き36協定で年960時間)と、拘束時間・休息期間などを定める「改善基準告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)」が適用されます。
いずれも2024年4月から新基準で運用されており、運行計画・配車・勤怠管理・荷主との契約更新に直接影響します。
実務では、月次の運転・作業・荷待ちを「拘束時間」として一体で把握し、勤務間インターバル(休息期間)を確保したうえで、残業の上限枠に収める必要があります。下表に、改正後の要点と現場でのチェック視点を整理します。
論点 | 改正後の要点 | 現場での確認ポイント |
---|---|---|
時間外労働 | 原則:月45h・年360h。特別条項締結時でも年960hが上限。 | 36協定の締結・届出、月次集計の仕組み、超過警報の運用。 |
拘束時間 | 年3,300h(原則)/3,400h(例外)・月284h(原則)/310h(例外)。 | 配車と荷待ちを含めた拘束時間の日次・月次管理。 |
休息期間 | 原則11h確保(最低9hを下回らない)。長距離は週2回まで8h可等。終了後12h付与。 | 勤務間インターバルの自動チェック、例外適用時の記録と事後12h確保。 |
時間外労働の上限規制の基礎
時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間です。トラックドライバーには2024年4月から特例の適用が切り替わり、特別条項付き36協定を結ぶ場合でも、年間の時間外労働は「年960時間が上限」となりました。
他産業に存在する「時間外+休日の合計で月100時間未満」「2〜6か月平均80時間以内」「月45時間超は年6か月まで」といった規制の一部はドライバーには適用されません。
したがって、運送事業者は「年960時間」という絶対上限を堅持しつつ、月次の繁閑や荷待ち是正、外注枠でピークを吸収する計画が必要です。
36協定の締結・届出、超過アラート、是正手順までを就業規則・運用規程に落とし込むと実務が安定します。
- 36協定(特別条項)の締結・届出状況と年960h管理の仕組み
- 月次集計(時間外・休日)と繁忙期の外注・配車平準化の計画
- 荷待ち削減(予約制・検収迅速化等)で時間外の発生源を特定
休息・点呼・拘束時間の遵守要点
改善基準告示では、勤務間の休息期間は「原則11時間確保(いずれも9時間を下回らない)」が基本です。
長距離貨物運送では、週2回まで「継続8時間以上」の休息を認める一方、その場合は運行終了後に「継続12時間以上」の休息を与える取扱いです。
拘束時間は、運転・荷役・手待ち・休憩・仮眠を含む始業〜終業までの全時間で、年は原則3,300時間(労使協定で3,400時間まで)、月は原則284時間(年6回まで310時間)です。
加えて、運転時間は「2日平均で1日9時間」「2週平均で1週44時間」を超えないことが求められます。点呼は輸送安全規則に基づく義務で、酒気帯び確認や健康状態等を記録し、保存(原則1年)します。
これらを勤怠・配車システムで自動チェックし、例外適用時は根拠資料を残す運用が有効です。
- 休息:原則11h、最低9h、長距離例外8h(週2回まで)+運行後12h付与
- 拘束:年3,300/3,400h、月284/310h(例外要件付き)
- 運転:2日平均1日9h、2週平均1週44h
- 点呼:アルコール等の確認・記録・保存(法令様式に沿って運用)
改正内容の移行措置と社内ルール
新しい改善基準告示と上限規制は2024年4月から適用され、厚労省サイトでは旧告示(〜2024年3月31日)と新基準が明確に区分されています。
実務上の「移行」は、旧様式・旧前提での運用を新基準に置き換えることに尽きます。具体的には、就業規則・36協定・勤務割や配車ルール、点呼記録・勤怠システムの集計ロジックを新基準(休息11h基準、月284h等)に合わせ、例外適用の条件と記録方法を明文化します。
荷主との契約では、入出荷時間や付帯作業の範囲を見直し、拘束時間・休息期間を確保できる条件に更新します。
周知は運行管理者研修・乗務員ミーティングで定期実施し、月次で遵守率を点検すると定着が早まります。
- 新基準に沿う就業規則・36協定・配車内規の改定と届出
- 勤怠・配車・点呼の各システムで拘束・休息の自動判定を有効化
- 例外運用時(長距離等)の根拠記録と事後12h休息の付与手順を明文化
- 荷主契約の更新(予約制・検収迅速化・付帯作業の明確化)
採用・育成・定着の実務KPIと改善策

人手不足を解消するには、「どこで詰まっているか」をKPIで可視化し、詰まりに応じて打ち手を変えることが近道です。
採用では、応募数や書類通過率だけでなく、面接設定率・出席率・内定承諾率を分解して歩留まりを特定します。
育成では、独り立ちまでの育成期間、同乗/OJTの実施率、教育後の事故・違反件数を継続把握します。定着では、入社3か月・6か月の離職率、シフト充足率、有休取得率、勤怠エラー件数などを定点観測します。
指標に基づき、採用チャネルの入替、配車と勤怠の見直し、評価と賃金の透明化、教育投資の優先順位付けを行います。
なお、魅力訴求として「働きやすい職場認証(運転者職場環境良好度認証)」の取得は、求人票での差別化に有効です。
領域 | 代表KPI(定義例) | 活用ポイント |
---|---|---|
採用 | 応募数、書類通過率、面接設定率、面接出席率、内定承諾率、採用単価 | 歩留まりの谷を特定し、求人票・連絡速度・面接枠を改善 |
育成 | 独り立ちまでの月数、OJT実施率、教育後の事故・違反件数 | 同乗計画とチェックリスト化、教育→成果の因果を検証 |
定着 | 3か月/6か月離職率、シフト充足率、有休取得率、勤怠エラー件数 | 初期離職の要因分析、勤怠運用の簡素化、面談サイクルを固定 |
職種別採用チャネルの最適化と母集団設計
ドライバー、配車、倉庫、事務では刺さる訴求が異なります。まず、想定人材が日常的に触れるチャネル(ハローワーク、地域媒体、紹介、学校、Web求人)を洗い出し、求人票の要点(勤務時間、休息、固定ルートの有無、車種、評価・手当、教育制度)を具体化します。
ハローワークの「求人者マイページ」は無償で求人申込・内容変更・選考結果入力ができ、地元応募の獲得に向きます。
加えて、「働きやすい職場認証(二つ星・三つ星)」の取得や、就業規則・勤怠の分かりやすさを求人票で可視化すると、応募の質と量の双方に効きます。採用初期はチャネルを広く試し、KPIで費用対効果を比較しながら投下先を絞り込みます。
チャネル | 向いている職種・地域 | 運用のコツ |
---|---|---|
ハローワーク | 地元ドライバー・倉庫・事務 | 求人者マイページで即時修正、面接日程を複数提示し連絡速度を最優先。 |
認証・自社サイト | 全職種(志望度高め) | 働きやすい職場認証の取得・星数を明記し、制度や休息の実態を掲載。 |
紹介・学校連携 | 若手・未経験・配車見習い | 免許取得支援と教育計画を提示。紹介手数料と定着KPIで評価。 |
Web求人/地域紙 | 広域採用・欠員即応 | シフト/固定ルート/車種で検索ヒット最適化、即日連絡を徹底。 |
賃金・手当・評価制度の設計と透明性確保
賃金は「基本給+職務/運行手当+時間外・深夜・休日手当+安全/無事故手当+通勤等の実費系」に分け、払う根拠と計算式を就業規則と労働条件通知で明確にします。
均等・均衡待遇(同一労働同一賃金)の観点では、職務内容・責任・配置変更の範囲が同じか近いかを軸に、手当や賞与の支給差を合理的に説明できるよう整えます。
運送業では、荷主との契約単価が賃金原資に直結するため、国交省の「標準的な運賃」や料金の考え方を参考に、契約更新時に付帯作業や待機の対価を明文化すると持続性が高まります。
評価は、無事故・定時率・接遇・指示書遵守などの実務KPIと連動させ、面談でフィードバックと昇給ロジックを定例化します。
- 同一労働同一賃金ガイドラインに沿って待遇差の理由を文書化し周知する(賃金・手当・福利厚生・教育まで)。
- 運賃交渉では付帯作業・待機時間の扱いを契約上で明確化し、賃金原資の安定化を図る。
- 労働条件通知書に支給基準と変動要素(距離/時間/件数)を記載し、トラブルを予防する。
定着率向上の育成設計と勤怠・労務運用
定着は「初期3か月の体験」で8割決まると言われます。入社週の同乗/OJT、配車の難易度調整、点呼・勤怠の手順書化で迷いを減らし、上長面談を月次で固定します。
教育コストは費用ではなく投資として扱い、リスキリングや安全教育に公的助成(人材開発支援助成金など)を積極的に活用すると、計画的な教育サイクルを回しやすくなります。
勤怠は、休息・拘束・時間外を自動集計できる仕組みを使い、例外運用(長距離等)は記録を残して是正フローに接続します。
離職兆候(遅刻増、欠勤、残業偏在、シフト未充足)はダッシュボードで早期検知し、面談・配置換え・教育の追投入で未然に対応します。
- オンボーディング:初週の同乗計画、チェックリスト、週次フォローをセット
- 教育設計:必須(安全/法令)+職種別スキル、eラーニングと実地を併用
- 助成活用:計画届→訓練→申請の流れを年次計画に組込み、費用回収を可視化。
- 勤怠・法令:休息・拘束・時間外の自動判定、例外時の記録と事後対応を標準化
生産性向上と業務設計・DXの実務手順

生産性を高める近道は、「現場の時間の使い方」を可視化し、ボトルネックを順番に解消することです。まず、荷待ち・荷役・付帯作業を含む実績時間を計測し、拘束時間や休息基準に適合する配車パターンへ再設計します。
次に、予約受付・事前情報連携・標準パレット等の“ルール化”で、待機の発生源を抑えます。同時に、デジタコ・動態管理・IT点呼などのツールで勤怠・配車・点呼を一体運用し、改善度合いをKPIで追跡します。
契約面では、標準的な運賃と料金(待機・積込/取卸・附帯業務)を分けて書面化し、荷主と是正協議できる前提を整えることが重要です(荷待ち時間は原則2時間以内ルール/1時間以内努力目標を参照)。
段階 | 根拠・推奨(公式) | 現場での実装ポイント |
---|---|---|
可視化 | 荷待ち・荷役時間の把握、契約の書面化。 | 入出荷別に待機分布を出し、ボトルネック荷主と協議材料化。 |
再設計 | 2時間以内ルール、予約受付・標準化の推奨。 | 時間窓の設定、検収迅速化、パレット標準化を同時に実装。 |
DX | デジタコ・動態管理・IT点呼の活用。 | 拘束・休息の自動判定と配車連動、逸脱時のアラート運用。 |
契約 | 運賃と料金(待機・附帯)を分離明記。 | 待機・附帯は別料金で契約化し、改善インセンティブを共有。 |
配車最適化・待機削減の現場実装手順
配車改善は、計測→協議→ルール化→監視の順で回すと実装しやすいです。まず、荷主別に「予約時間・着時間・検収終了・出発」を時刻で記録し、荷待ちと付帯作業の内訳を見える化します。
次に、荷主と「2時間以内ルール/1時間以内努力目標」を共通指標にして、時間窓や検収工程の適正化を協議します。
運賃と別建ての料金(待機・積込/取卸・附帯業務)を契約で明確化すれば、現場改善と費用転嫁を両立できます。
最後に、予約受付システムや配車ソフトで時間窓を管理し、逸脱時は原因(入荷集中・人員不足・伝票不備)をログ化して次回に反映します。
- 計測:到着〜出発までの各工程を時刻で記録(荷待ち・荷役・検収)
- 協議:2時間以内ルールを基準に、時間窓・検収方法・人員配置を調整
- 契約:運賃と料金(待機・附帯)を分離し、別途収受を明文化
- 運用:予約受付・分散出荷・事前情報連携で波をならし、例外はログ化
ITツール・車載器・テレマ運用
IT・テレマは、「労務(拘束・休息・時間外)」「安全(速度・急操作)」「配車(位置・到着予測)」を同じデータで回すのがコツです。
運行記録計は、事業用貨物自動車のうち車両総重量7トン以上又は最大積載量4トン以上に装着義務が拡大され、法定三要素(時間・距離・速度)に加えて待機等の運行実態を把握できるデジタコの活用が推奨されています。
乗務前後の点呼は、要件を満たすIT点呼・乗務後自動点呼の制度が整備され、なりすまし防止や映像要件等が明確化されています。装置はコストも踏まえ、装着率や普及状況を参考に、自社規模に合う機器を選定します。
領域 | ポイント | 参考・留意 |
---|---|---|
デジタコ | 運転・待機の可視化、拘束/休息の自動判定に連携。 | 義務対象は7t超又は4t超の事業用貨物。装着率は対象車で約8割。 |
動態管理 | 到着予測・時間窓順守・地図連携で遅延予防。 | 配車と一体運用し、逸脱時の原因をログ化して再発防止。 |
IT点呼 | 遠隔・自動点呼の要件を満たし、映像・生体認証で実施。 | 機器・場所・記録の要件に適合し、手順を規程化。 |
外注活用・協力会社の連携設計と監督要点
外注は、繁閑差の吸収や地場・長距離の分担に有効ですが、契約・監督を整えるほど効果が安定します。
実務では、運送契約の書面化、契約外の荷役・附帯作業の禁止、燃料サーチャージや実費の転嫁、待機時間の料金化を明確にし、下請の多重化を抑制します。
荷主と物流事業者のガイドラインは、物流管理統括者の選任、2時間以内ルール、予約受付・標準化、共同輸配送の推進を掲げ、下請取引の適正化も求めています。
トラック業の適正取引ガイドラインは、原価把握に基づく協議や委託手数料の考え方を例示しています。是正が必要な場合は、行政の仕組み(トラック・物流Gメン、荷主勧告制度等)も周知しておくと、現場の交渉が進めやすくなります。
- 契約の書面化(運賃と料金を分離、待機・附帯は別料金を明記)。
- 多重下請の抑制と、元請→下請への同等条件の徹底。
- 荷待ち・荷役時間の共同KPI(2時間以内ルール)と予約運用。
- 原価把握に基づく協議(燃料・人件費・高速等の転嫁設計)。
- 是正の公的手段(トラック・物流Gメン等)を社内で共有。
助成金・補助金と資金繰り支援の活用法

人手不足対策の実行には「人件費・教育・DX・設備」を継続投資できる資金設計が欠かせません。まず、人材育成や処遇改善など労務系は厚生労働省の雇用関係助成金、設備やITは中小企業庁系の補助金(省力化投資・IT導入・ものづくり等)が入口です。
横断検索はミラサポPlusとJ-Net21(中小機構)が便利で、最新の公募要領・締切・申請要件を一次情報で確認できます。
あわせて、運転資金は日本政策金融公庫や金融機関の枠(当座・証書)で平準化し、補助金の交付時期とズレるキャッシュを資金繰り表で橋渡しすると安全です。
制度は毎年改定されるため、「公募要領で要件→資金繰り表で時期→融資枠で平準化」という順序を固定すると実務が安定します。
区分 | 代表的な探し方 | 実務の留意点 |
---|---|---|
助成金(雇用) | 厚労省「雇用関係助成金一覧」から制度確認 | 賃金台帳・就業規則など証拠書類の整備と事前手続が必須。 |
補助金(設備・IT) | ミラサポPlus/J-Net21で横断検索 | 対象経費・締切・加点項目を公募要領で精査しスケジュール化。 |
資金繰り支援 | 日本政策金融公庫の様式で資金繰り表を作成 | 交付・入金時期のズレを融資枠で平準化、月次更新で監視。 |
助成金・補助金の検索方法と適用手順
制度は所管や年度ごとに名称・要件・締切が変わるため、公式ポータルで横断的に当たりを付け、公募要領で要件を確定するのが最短です。
人手不足に直結する教育・処遇改善は厚労省の雇用関係助成金、業務効率化や省人化は中小企業庁系の省力化投資補助金・IT導入補助金・ものづくり補助金が典型です。
検索後は「要件に合うか」「対象経費に該当するか」「締切までに見積・体制・証憑が揃うか」を確認し、必要に応じて認定支援機関や商工会議所に相談します。
採択後の交付申請・実績報告では、契約・発注・支払・検収の順守と証憑の整合が重要です。迷ったら「一次情報の公募要領」に立ち戻り、推測で進めないことが失敗防止につながります。
- 検索:ミラサポPlus/J-Net21で対象事業を横断検索
- 精査:公募要領で対象経費・申請要件・締切・加点を確認
- 準備:見積・体制・就業規則等の証憑を整備、相談窓口に事前確認
- 申請:様式・電子申請手順に沿って提出、採択後は交付申請→実績報告
資金繰り表と運転資金枠の整備手順
補助金は「採択」と「交付(入金)」がズレやすく、自己資金やつなぎ資金の設計を誤ると運転資金が逼迫します。まず、日本政策金融公庫の様式で資金繰り表(入金基準)を作り、月次の現金残高推移を見える化します。
次に、補助対象の発注・支払・検収・交付時期を行程表に落とし、キャッシュの谷が深くなる月を特定します。
そのうえで、金融機関の運転資金枠(当座・短期証書)や、公庫の運転資金を組み合わせ、返済開始月と期間を資金繰りに合わせます。
人件費の先行支出(教育や採用広告など)は雇用助成の支給タイミングとズレるため、別枠で余裕資金を確保しておくと安全です。
- 資金繰り表を作成(売上回収サイト・固定費・借入返済・補助金の交付時期を反映)
- ガント表で発注→支払→検収→交付の時系列を整理(ズレを可視化)
- 当座貸越や短期証書の枠を設定し、返済開始月・期間をシミュレーション
- 毎月の実績で資金繰り表を更新し、乖離が出たら枠・時期を微修正
設備投資の計画と償却・リース比較
車両・機器の更新は、キャッシュと税務・会計の三面で設計します。購入(借入)は資産計上し減価償却で費用化、ファイナンス・リースは「売買があったものとみなす」取扱いにより、原則としてリース資産を自己資産として償却します(所有権移転外リースはリース期間定額法等)。
一方、契約条件によっては金銭の貸付とみなす場合もあるため、国税庁の取扱いに沿って判断します。
現金面では、購入は頭金・諸費用が重く、リースは月額の平準化に強みがあります。運送業では、残価リスク、走行距離、保守範囲、途中解約条件が実務差を生みやすい論点です。
いずれの方式でも、資金繰り表で総支払額と月次の谷を比較し、税務・会計の整合を確認して決めると安全です。
方式 | キャッシュ・運用の特徴 | 税務・会計の留意点 |
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購入(借入) | 所有・残価は自己負担。頭金・諸費用が初期に集中。 | 資産計上し減価償却。金利は支払利息。償却方法は資産区分で選定。 |
ファイナンス・リース | 月額平準化。保守・保険が含まれる契約もある。 | 売買扱いが原則。リース資産として計上・償却(期間定額法等)。 |
オペレーティング・リース | 短めの期間設定で柔軟。途中解約条件は契約次第。 | 契約条件により会計・税務処理が異なるため専門家確認を前提。 |
まとめ
本記事では、人手不足の原因整理、労働時間規制の実務、採用・評価・定着のKPI、配車最適化やIT活用、助成金と資金繰りの要点を示しました。
次は、現状指標を数値化し、労務ルールと募集要件を更新、配車と勤怠のデータ化を進め、使える支援策を確認して計画に落とし込みましょう。