【厳選19社】ファクタリングのサービスや手数料を徹底比較 >

当サイトはプロモーションが含まれています

ファクタリングに免許は必要?許認可と違法取引チェックポイントを基本から解説

「ファクタリングに免許は必要なのか」「貸金業登録がない会社でも大丈夫なのか」と不安に感じる方は少なくありません。

本記事では、売掛債権の買取としてのファクタリングの法的位置付け、専用免許がないとされる背景、貸金業に該当し得るスキームや給与ファクタリングの裁判例、行政による注意喚起の要点を整理します。あわせて、中小企業・個人事業主が会社選びで確認しておきたい登録状況・手数料水準・契約条件・相談体制のチェックポイントを客観的にまとめます。

 

ファクタリングと免許制度の基礎

ファクタリングは、売掛金(売上債権)をファクタリング会社に譲渡し、入金期日より前に現金化する取引です。契約上は「債権譲渡契約」「売買契約」と位置付けられるのが一般的で、民法上の売買・債権譲渡の枠組みの中で取り扱われます。

利用者(債権の売主)は、取引先に対する売掛金をファクタリング会社へ譲渡し、ファクタリング会社は一定の手数料を控除した金額(買取率=請求書額面に対する支払い割合)を前倒しで支払います。

 

日本には、いわゆる「ファクタリング業法」のような専用のライセンス制度は現時点で設けられていません。

そのため、事業者向けの売掛債権ファクタリングを行うためだけに特定の免許・資格を取得する必要はなく、一般の株式会社や合同会社がファクタリング事業を営んでいる例も少なくありません。

 

一方で、取引の実態が金銭の貸付けに近い場合には、貸金業法など別の法律の適用が問題となることがあります。

貸金業を営むには、貸金業法に基づき財務局長や都道府県知事の登録が必要とされています。

 

貸金業登録を受けていない者が、ファクタリングを名乗りながら実質は高金利の貸付けを行っている事案について、行政が注意喚起を行っているケースもあります。

こうした背景から、「ファクタリング自体に専用免許はないが、取引の中身によって適用される法律が変わる」という整理で理解しておくことが重要です。

 

項目 概要
ファクタリング 売掛債権の売買(債権譲渡)として行われる資金調達。専用の免許制度は設けられていない。
貸金業 金銭の貸付けを業として行う事業。貸金業法に基づく登録が必要とされる。
ポイント ファクタリングを名乗っていても、実態が貸付けに近い場合は貸金業法等の適用が問題になり得る。

 

ファクタリングの仕組みと法的位置付け

ファクタリングの基本的な仕組みは、利用者(債権の売主)が取引先に対する売掛債権をファクタリング会社へ譲渡し、その対価として代金の前払いを受けるというものです。

取引先は、従来どおり請求書の支払期日に売掛金を支払いますが、その支払先が利用者からファクタリング会社に変わります(二社間・三社間スキームにより実務は異なります)。

 

このような構造のため、法的には「売掛債権の売買・譲渡」として扱われ、民法の債権譲渡に関する規定が基本枠組みとなります。

この点は、元本を返済し利息を支払うことを前提とする「金銭消費貸借(融資)」とは異なります。

 

ファクタリングでは、売掛債権の所有権がファクタリング会社に移転し、利用者は債権売却代金を受け取ります。

債権額面と買取金額との差額が、実質的な手数料に相当します。一方、金銭消費貸借では、借主が元本と利息を返済する義務を負い続けるため、法律上は貸金業法・利息制限法などの枠組みの中で管理されます。

 

このように、「売掛債権の売買」と「金銭の貸付け」は、形式も法律上の位置付けも異なりますが、実務上は両者が近接するケースもあります。

そのため、行政は、経済的な実質が貸付けと同様かどうか、債権の回収リスクを誰が負っているか、手数料がどの程度か、といった点を踏まえて判断する必要があるとしています。

利用者としては、「ファクタリング=必ず貸金業」「ファクタリング=まったく規制対象外」といった極端な理解ではなく、「売買として適法に行われているかどうか」がポイントになると整理しておくと分かりやすくなります。

 

仕組みと法的位置付けを押さえるポイント
  • ファクタリングは売掛債権の売買(債権譲渡)として行われるのが原則
  • 金銭消費貸借は元本と利息の返済義務が残る「貸付け」として扱われる
  • 実務では、経済的な実質(誰がリスクを負うか、手数料水準など)が重視される
  • 形式だけでなく、契約内容と実際の資金の流れを確認する姿勢が重要

 

免許・資格が不要とされる背景

日本では、銀行業や貸金業、資金移動業などにそれぞれ固有の登録・免許制度が設けられている一方で、事業者向けの売掛債権ファクタリングについては、専用の免許・資格を義務付ける法律は設けられていません。

背景として、売掛金の譲渡自体は、従来から企業間取引の中で広く行われてきた商慣行であり、民法上の債権譲渡や売買契約の枠組みで取り扱われてきたことが挙げられます。

 

実務では、銀行系・ノンバンク系の金融グループが、融資やリースと並んでファクタリングサービスを提供しているケースも多く見られます。

この場合、銀行免許や貸金業登録は、融資等の他の金融サービスに対しては必要となりますが、「売掛債権の売買」として行われるファクタリング自体について、独自の免許が付加的に要求されているわけではありません。

 

専用免許がないこと自体が、直ちにファクタリング取引の違法性を意味するわけではない点に注意が必要です。

もっとも、免許・資格が不要であるからといって、何の法令にも服さない取引というわけではありません。

 

債権譲渡を行う以上、民法や債権譲渡登記に関するルール、場合によっては犯罪収益移転防止法に基づく取引時確認など、個々の事業者の業態に応じた規律が及びます。

また、取引の実態が貸付けと評価される場合には、貸金業法に基づく登録や利息制限法等との関係が問題となる可能性があります。

 

専用免許が不要とされる主な背景
  • 売掛債権の譲渡は従来から民法上の売買・債権譲渡として扱われてきた
  • 事業者向けファクタリング単体に限定した「ファクタリング業法」は設けられていない
  • 銀行・ノンバンク等が既存の金融ライセンスのもとでサービスメニューとして提供する形が多い
  • 専用免許は不要でも、民法・貸金業法・犯罪収益移転防止法等、個別の法令の適用は受け得る

 

免許制度がないことによる課題

一方で、ファクタリングに専用の免許制度がないことは、利用者側から見ると「どの会社までが健全な事業者で、どこからが問題のあるスキームなのか」を判断しにくいという課題にもつながります。

貸金業者であれば、登録の有無を行政の公表情報から確認できますが、ファクタリング会社については、業界団体への加盟状況や、グループ企業としての位置付け、公開されている決算情報などを総合的に見て判断する必要があります。

 

実務上、行政は、ファクタリングを名乗りながら実質的には高水準の手数料で短期の貸付けを行っている事業者や、「給与ファクタリング」と称して賃金債権を対象に高い負担を課す事業者について、貸金業法上の貸金業に該当するとの見解や注意喚起を示しています。

これらは、専用の免許制度がないこと自体が問題というよりも、「売買か貸付けか」「手数料水準は妥当か」といった実態の判断が利用者だけでは難しい、という点に課題があります。

 

こうした状況を踏まえ、中小企業・個人事業主としては、ファクタリング会社がどのような枠組みで事業を行っているのか(金融グループの一員か、貸金業登録を持つ関連会社があるか、など)を確認するとともに、契約前に手数料の根拠やリスク分担(償還請求権の有無など)を丁寧にチェックすることが重要です。

将来的な制度整備の議論を待つだけでなく、現行ルールの中で利用者側がとれるリスク管理の工夫を把握しておくことが求められます。

 

免許制度がないことによる主な課題と留意点
  • 専用免許がないため、健全な事業者と問題のある事業者の見分けがつきにくい
  • 実態が貸付けに近い取引について、利用者側が法律上の位置付けを判断しづらい
  • 手数料水準やリスク分担が妥当かどうか、契約書・説明資料を通じて慎重に確認する必要がある
  • 会社の運営実態(グループ構成・登録状況・情報開示)を総合的にチェックする姿勢が重要

 

貸金業登録が必要となる場面

ファクタリングは原則として「売掛債権の売買(債権譲渡)」として行われる取引であり、この場合に専用の「ファクタリング免許」は存在しません。

一方で、取引の実態が「金銭を貸し付け、その返済を受けること」を目的とする構造に近づくと、貸金業法上の「貸付け」に該当し、貸金業登録が必要になる場合があります。

 

貸金業とは、金銭を目的とする消費貸借契約や手形の割引などを業として反復継続して行う事業を指し、これを行うには財務局または都道府県知事の登録が求められています。

金融行政の注意喚起では、「ファクタリングとして行われていても、経済的に貸付と同様の機能を有しているものは貸金業に該当するおそれがある」と明示されており、特に①売掛先の不払リスクをほとんどファクタリング会社が負っていない、②債権額とは無関係に金額の授受がなされている、③不払時に利用者が自分の資金で支払うことが予定されている、といった事情がある場合には、「売買」ではなく「貸付け」と評価される可能性が高いとされています。

 

貸金業に該当する取引を登録なしで行えば「無登録営業」となり、刑事罰の対象になります。また、貸金業に該当する場合には、利息制限法・出資法の上限金利を守る必要も生じます。

利用者としては、「契約書上は債権譲渡」と書かれていても、実際にはどのようなリスク分担・支払義務になっているかを確認し、「売掛債権の売買」として妥当な範囲に収まっているかを意識することが重要です。

 

区分 典型的なイメージ
売買として扱われやすいケース 売掛先の不払リスクがファクタリング会社に移転している/債権額面と売買代金の差額(手数料)が過度に大きくない/買戻し義務がなく、売掛先への支払は直接ファクタリング会社に行われる
貸金業に該当し得るケース 不払時に利用者が自らの資金で支払う義務を負う/債権の回収を利用者が継続的に行う前提/債権額とは無関係に一律の金銭授受が行われるなど、実質が「担保付き貸付」に近い
利用者側の確認ポイント 不払リスクを誰が負担するか、元本相当分を返済する義務があるか、手数料水準が異常に高くないか、貸金業登録の有無などを総合的に確認する

 

貸金業に該当するスキームの条件

貸金業登録が必要となるかどうかは、「名称」ではなく「実質」で判断されます。ファクタリングと称していても、実際の資金の流れやリスク分担が「金銭の貸付け」と同じ働きをしていれば、貸金業法上の貸付けに該当する可能性が高くなります。

代表的な判断要素として、①売掛先が支払わなかった場合に誰が損失を負うのか、②利用者に事実上の返済義務(元本+手数料相当)が残っていないか、③手数料が短期の前倒しに比して著しく高くないか、などが挙げられます。

 

金融庁の注意喚起では、「譲渡した債権の回収が利用者に委託されており、回収できなかった場合に売主が債権を買い戻す、または自らの資金で支払うことになっている取引」は、貸金業に該当するおそれがあるとされています。

このようなスキームでは、形式上は「債権譲渡」とされていても、実際にはファクタリング会社が売掛先の不払リスクをほとんど負っておらず、利用者が事実上の返済義務を負っているため、「担保付き金銭消費貸借」に近い構造になります。

 

加えて、債権額面と売買代金との差額(手数料)が極端に大きい場合や、債権額とは無関係に一定額を授受するような条件になっている取引も、貸付けに対する利息に近い性質を持つと評価されやすくなります。

実務では、裁判所が「ノンリコース条項の有無だけでなく、経済的機能や実際の運用を総合的に見て判断する」とした例も紹介されており、契約書上の文言だけで判断することは適切ではありません。

 

貸金業に該当し得るスキームを見分ける視点
  • 売掛先が支払わない場合に、利用者が元本相当額を返済する義務を負っていないか
  • 債権の回収を利用者が行い、回収できないときも自社資金で支払う前提になっていないか
  • 債権額に比べて買取代金が著しく低額になるなど、実質的に超高金利の負担になっていないか
  • 「債権譲渡契約」と書かれていても、資金の流れやリスク分担が貸付けと同じになっていないか

 

給与ファクタリングに関する裁判例

「給与ファクタリング」は、個人(労働者)が勤務先に対して持つ賃金債権をファクタリング会社に譲渡した形をとり、賃金の支給日前に現金を受け取り、後に利用者がファクタリング会社に支払う仕組みです。

この取引について、金融庁は「給与ファクタリングなどと称して、個人が有する賃金債権を買い取って金銭を交付し、当該個人を通じて資金を回収することは、貸金業に該当する」と明確に示し、利用しないよう注意喚起を行っています。

 

さらに、最高裁判所は給与ファクタリングに関する決定の中で、賃金債権は労働基準法上「労働者本人への直接支払」が原則であり、賃金債権の譲受人は使用者に直接支払いを求めることはできないことを前提に、実際には利用者からの買戻し等によって資金を回収するしかないと判断しました。

そのうえで、形式上は債権譲渡であっても、実質的には利用者との間の「返済合意を前提とする金銭の交付」と同様の機能を有するため、貸金業法および出資法上の「貸付け」に当たると結論付けています。

 

このような裁判例と行政の見解により、給与ファクタリングを業として行う事業者は、貸金業登録が必要であり、利息制限法・出資法の上限金利を守らなければならないことが明確になりました。

無登録で給与ファクタリングを行い、年率換算で数百〜千数百%に及ぶ手数料を徴収していた業者が、貸金業法違反(無登録営業)や出資法違反(超高金利)で摘発された事例も公表されています。

 

給与ファクタリング裁判例から読み取れるポイント
  • 賃金債権は労働者本人への直接支払が原則であり、第三者が勤務先に直接請求することはできない
  • そのため「賃金債権の譲渡」を前提としたスキームでも、実際には利用者からの買戻し等を通じて回収する構造になる
  • 形式が債権譲渡でも、経済的には短期の高金利貸付けと同様の機能を持つため、貸金業に該当すると判断された
  • 給与ファクタリングを業として行うには貸金業登録と金利規制の遵守が必要であり、無登録・超高金利の取引は法令違反となる

 

偽装ファクタリングの典型パターン

金融庁は、「偽装ファクタリング(ファクタリングを装って貸付けを行うヤミ金融業者)」に関する特設ページを設け、具体的な特徴を挙げて注意喚起を行っています。

偽装ファクタリングでは、契約書上は「債権譲渡契約」「売買契約」と記載されていても、実態としては超高水準の手数料・短期の返済・強い買戻し義務などを伴う「担保付き貸付け」に近い構造になっていることが多いとされています。

 

典型的なパターンとしては、①ファクタリング会社から受け取る金額が債権額に比べて極端に低い(例えば額面の半分以下など)、②売掛先が支払わなかった場合、利用者が債権を買い戻す、あるいは自らの資金で全額支払うと定められている、③債権の回収を利用者自身が行い、回収できなかった場合のリスクも利用者が負担する、といったものが挙げられます。

このようなケースでは、売掛先の不払リスクがファクタリング会社に移転しておらず、実質的には「利用者が返済義務を負う金銭消費貸借」に近いと評価されやすくなります。

 

また、買戻し義務や違約金条項を公正証書等で担保し、不払時に元本以上の金額の支払いを約束させるスキームも報告されています。

これらは、名目上はファクタリングであっても、貸金業法や出資法の規制を潜脱する目的で設計された取引とみなされるおそれがあり、無登録営業や高金利の問題が生じる可能性があります。

利用者としては、「手数料が異常に高くないか」「不払時の責任がどこまで自社に残るのか」「売掛先への通知や債権譲渡登記の手続きが適切に行われるのか」といった点を契約前に確認することが重要です。

 

偽装ファクタリングに見られやすい特徴
  • 債権額に比べて買取金額が著しく低く、短期で実質年率が非常に高くなる
  • 売掛先が支払わない場合、利用者が債権を買い戻す・自社資金で支払うことが契約上強く求められている
  • 債権の回収を利用者が行い、回収できない場合のリスクも利用者側が負担する構造になっている
  • 違約金や買戻し条項を公正証書などで担保し、実質的に「担保付き貸付け」と同じ働きをしている

 

事業者向けファクタリングの現行ルール

事業者向けファクタリングは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、手数料を差し引いた金額を早期に受け取る取引です。

法令上は、専用の「ファクタリング業法」があるわけではなく、民法上の債権譲渡・売買契約を基本枠組みとしつつ、取引の実態によっては貸金業法や出資法、犯罪収益移転防止法、各種ガイドライン等の適用・参照を受ける形になっています。

 

金融庁は、「ファクタリングの利用に関する注意喚起」や「高額な手数料によるファクタリングに関する注意喚起」などを通じて、利用者・提供者双方に向けて留意点を示しています。

適法な事業者向けファクタリングと評価されるためには、売掛債権の真正な売買として、債務者(売掛先)の不払いリスクが一定程度ファクタリング会社に移転していること、手数料水準が担保目的とみなされるほど極端ではないこと、買戻し義務や実質的な返済義務が過度に利用者側に残っていないことなどが、裁判例や行政の資料で判断要素として挙げられています。

 

一方で、ファクタリングを名乗りながら、実質的には無登録の貸付け(偽装ファクタリング)となっている事案も確認されており、日本弁護士連合会や都道府県、貸金業協会などが注意喚起を行っています。

このように、現行ルールは「専用免許ではなく、既存の法体系と行政の注意喚起を組み合わせて運用されている」状態と整理できます。

利用者としては、制度の枠組みを理解したうえで、個々の取引がどのゾーンに位置するのかを意識しながら会社選び・契約確認を行うことが重要です。

 

観点 事業者向けファクタリングの現行ルールの位置付け
基本構造 民法上の売掛債権の売買・債権譲渡として位置付けられる取引
専用免許 「ファクタリング業」そのものに対する専用免許・登録制度は現時点で存在しない
関連法令 取引の実態によって貸金業法・出資法・犯罪収益移転防止法等の適用が問題となる
行政のスタンス 高額手数料・偽装ファクタリングへの注意喚起と、適法な事業者向けファクタリングの活用自体を否定しない姿勢

 

事業者向けファクタリングの適法性

事業者向けファクタリングは、売掛債権の真正な売買として行われる限り、原則として適法な取引と整理されています。

金融庁の注意喚起資料でも、企業が売掛債権を譲渡して資金を調達するファクタリング自体は、資金繰り手段の一つとして想定されており、そのうえで「高額な手数料・大幅な割引率」や「実質的な貸付け」に注意が促されています。

 

裁判例でも、債務者の不払いリスクがファクタリング会社側に移転していること、債権額と売買代金の差額(手数料)が担保目的とはいえない水準であること、対抗要件具備(債権譲渡通知・登記など)がファクタリング会社の判断で可能な状態にあったことなどを総合考慮し、「貸金業法は適用されない=金銭消費貸借ではない」と判断した事案が紹介されています。

つまり、形式だけでなく、経済的な実質を見て「売掛債権の売買」として合理的かどうかがポイントになります。

 

一方で、譲渡した売掛債権が回収できなかった場合に、利用者が元本相当額を買い戻すことを強く予定しているスキームや、手数料が短期の前倒しに比して極端に高く、実質的に高金利貸付けと同様の負担となるスキームについては、貸金業法上の貸付けと評価される可能性が指摘されています。

こうした区別は、利用者にとっても、「どこまでが適法なファクタリングか」を判断するうえで重要な観点となります。

 

適法な事業者向けファクタリングの主なポイント
  • 売掛債権の真正な売買として、債務者の不払いリスクが一定程度ファクタリング会社に移転している
  • 手数料水準が、担保付き貸付とみなされるほど極端ではなく、合理的な範囲に収まっている
  • 不払い時の買戻し義務・補償義務が、利用者に一方的に課されていない
  • 契約書・説明資料で、取引の性質やリスク分担が明確に説明されている

 

必要書類と基本的な審査項目

事業者向けファクタリングの審査では、「売掛債権が実在しているか」「継続的な取引にもとづくものか」「売掛先に支払能力があるか」といった点が重視されます。

そのため、必要書類としては、請求書・発注書・納品書・取引基本契約書などの売掛債権の成因を示す資料、売掛先からの入金実績が分かる通帳やインターネットバンキング明細、利用者側の会社情報や決算書・試算表などが求められるのが一般的です。

 

審査項目としては、①売掛先の信用力(企業規模・業歴・財務内容・支払実績など)、②利用者の事業実態と資金繰り状況、③売掛金の金額・支払期日・取引条件、④二重譲渡の有無、などが代表的です。

二重譲渡(同じ債権を複数のファクタリング会社に譲渡する行為)は、契約違反・詐欺に当たる可能性があり、審査段階で特に注意して確認されます。

 

また、犯罪収益移転防止法に基づく取引時確認の対象となる事業者の場合、代表者の本人確認書類や登記事項証明書、実質的支配者に関する確認書類なども必要になります。

オンライン型のファクタリングでは、これらの書類をスキャン・撮影したデータで提出し、eKYC(オンライン本人確認)などの仕組みで確認を行うケースも増えています。

 

必要書類・審査項目で押さえたいポイント
  • 請求書・契約書・納品書など、売掛債権の成因を示す証憑をまとめておく
  • 通帳明細や決算書など、売上実績や資金繰りの状況が分かる資料を準備する
  • 売掛先の信用力(支払実績・業歴等)を説明できるよう、基本情報を整理する
  • 同一債権の二重譲渡は契約違反・違法となり得るため、対象債権の管理を徹底する

 

行政の注意喚起と確認すべき点

行政は、事業者向けファクタリングそのものを否定しているわけではありませんが、「高額な手数料・大幅な割引率」や「偽装ファクタリング(ファクタリングを装った違法な貸付け)」に対して、繰り返し注意喚起を行っています。

金融庁は、多重債務防止の観点から、高額な手数料によるファクタリングがかえって資金繰りを悪化させる可能性を指摘し、また、ファクタリングを装って貸金業登録のない業者が違法な貸付けを行っている事案が確認されている旨を公表しています。

 

日本貸金業協会や地方自治体(例:大阪府)も、「偽装ファクタリング」に関する注意喚起資料を公開し、売買契約である旨が契約書に明記されていないこと、不払い時に利用者に買戻しや補償を求める条項があること、売掛債権を売却したにもかかわらず利用者が回収を続ける構造になっていることなどを、「注意すべき特徴」として挙げています。

こうした行政のメッセージを踏まえると、利用者が事前に確認すべきポイントは、①手数料水準と実質的な負担、②不払い時のリスク分担、③会社情報や相談窓口の明確さ、④契約書・重要事項説明書の記載内容、の大きく4つに整理できます。

「免許があるかどうか」だけでは判断が難しいため、公開情報と契約書面の両方を使って総合的にチェックすることが重要です。

 

行政の注意喚起を踏まえて確認したい主な点
  • 手数料・割引率が相場と比べて極端に高くないか、総額負担を事前に把握しているか
  • 売掛先の不払い時に、自社がどこまで支払義務・買戻し義務を負うのかが明確か
  • 会社の所在地・連絡先・代表者・相談窓口などの情報が開示されているか
  • 契約書や重要事項説明書に、取引の性質(売買か貸付けか)、リスク分担、費用が具体的に記載されているか

 

中小企業・個人事業主の会社選び

中小企業や個人事業主がファクタリング会社を選ぶ際には、「ファクタリング専用の免許がない」という前提を踏まえたうえで、関連する法令や行政の注意喚起の内容を手掛かりに、運営実態や取引条件を総合的に確認することが重要です。

金融庁は、事業者向けの二社間・三社間ファクタリング自体は、売掛債権の売買として行われる限り貸金業登録は不要としつつ、高額な手数料や買戻し義務が強いスキームについては、貸金業に該当するおそれがあると注意喚起しています。

 

日本貸金業協会も、「偽装ファクタリング」と呼ばれる、実質的に貸付けと同様の機能を持ちながら貸金業登録を行っていないヤミ金融業者の存在を指摘し、経営者に対して注意を促しています。

このような状況から、利用者側は、会社の基本情報・登録状況・手数料水準・契約内容・相談窓口などをチェックし、「適法な事業者向けファクタリング」を提供しているかどうかを判断していく必要があります。

 

特に、単に「ファクタリング」と名乗っているかどうかではなく、「どのようなスキームで」「どのような条件で」売掛債権を取引しているのかが重要です。

自社の資金繰りを安定させるために活用しつつ、過度な負担や法令上のリスクを避けるためには、会社選びの段階から客観的なチェックポイントを押さえておくことが有効です。

 

観点 会社選びで意識したいポイント
運営主体 グループ会社構成、関連する登録(貸金業登録など)の有無、決算情報・実績の開示状況
手数料・条件 手数料水準、買戻し条項の有無、不払い時のリスク分担、債権譲渡登記の扱い
サポート 相談窓口、説明の分かりやすさ、トラブル時の対応方針や苦情処理体制

 

登録状況と運営主体の信頼性

ファクタリングそのものに専用免許はありませんが、「貸金業に該当し得る取引」を行う場合には貸金業登録が必要とされています。

そのため、ファクタリング会社が金融グループの一員として貸金業登録を持つ関連会社を有しているのか、あるいは銀行・ノンバンクなど既存の金融機関グループに属しているのか、といった運営主体の情報は、信頼性を判断するうえで重要な手がかりになります。

 

金融庁や日本貸金業協会は、違法な金融業者に関する注意喚起の中で、「まず登録業者かどうか確認すること」「ヤミ金融の検索機能を活用すること」などを勧めています。

これは直接ファクタリング専業会社を指しているわけではありませんが、「貸金業登録の有無を確認する」という考え方は、貸付けに近いスキームを見分ける際にも役立ちます。

 

また、決算情報や沿革、主要取引先、相談窓口などをウェブサイトで公表しているかどうかも、運営主体の透明性を測る一つの指標になります。

日本貸金業協会の資料では、偽装ファクタリングの例として、所在地・連絡先が不明瞭、相談窓口が限定的、といった特徴が挙げられており、基本情報が十分に開示されているかどうかを確認することの重要性が示されています。

 

登録状況・運営主体を確認するときのポイント
  • 金融グループの一員か、貸金業登録を持つ関連会社があるかなど、運営主体の枠組みを確認する
  • 所在地・代表者・連絡先・沿革・決算情報など、基本情報の開示状況を見る
  • 金融庁・貸金業協会等の公表情報で、違法業者として注意喚起されていないかチェックする
  • 情報開示が極端に少ない・連絡手段が限られる会社は慎重に検討する

 

手数料水準と契約条件のチェック

会社選びで特に重要なのが、手数料水準と契約条件の確認です。

金融庁は、「高額な手数料による手形割引・売掛金ファクタリングに関する注意喚起」で、売掛債権額に比べて著しく高い手数料が設定されている取引は、多重債務を助長したり、実質的に高金利貸付けと同様の負担になったりするおそれがあると指摘しています。

そのため、単に「◯%〜」という数字だけでなく、事務手数料・登記費用・振込手数料などを含めた総コストを把握し、請求書額・前倒し日数とのバランスを確認することが重要です。契約条件の面では、特に「不払い時の取り扱い」に注目する必要があります。

 

金融庁や日本貸金業協会は、偽装ファクタリングの例として、売掛先が支払わなかった場合に利用者が債権を買い戻す義務を負う、あるいは自らの資金で全額支払うことが契約上求められているケースを挙げ、「実態は貸付けであり貸金業法の対象になり得る」としています。

こうしたスキームでは、ノンリコース(償還請求権なし)ではなく、事実上のリコース型となっていることが多く、リスク分担が利用者側に偏りがちです。

 

そのほか、債権譲渡登記の要否や費用負担、二重譲渡禁止条項、解約・期限の利益喪失に関する規定なども重要です。

これらは、資金調達の柔軟性や将来の取引に影響するため、複数社から見積りと契約書のドラフトを取り寄せ、条件を比較することが望まれます。

 

手数料・契約条件を確認するときのチェックリスト
  • 手数料率だけでなく、事務手数料・登記費用・振込手数料などを含めた総コストを把握する
  • 売掛先不払い時の取り扱い(買戻し義務・補償義務の有無と範囲)を確認する
  • 債権譲渡登記の実施有無・費用負担、二重譲渡禁止条項の内容をチェックする
  • 複数社の見積り・契約条件を比較し、自社の資金繰り計画と照らして無理のない範囲を選ぶ

 

相談体制とトラブル対応窓口の重要性

オンライン契約や非対面取引が広がるなかで、相談体制とトラブル対応窓口の整備状況も、ファクタリング会社選びの重要なポイントです。

金融庁や日本貸金業協会は、違法な金融業者に関する注意喚起の中で、困ったときに相談できる公的窓口(金融庁金融サービス利用者相談室、消費生活センター、警察相談ダイヤル、日本貸金業協会の相談窓口など)を案内していますが、同時に、各事業者自身が苦情処理や相談に応じる体制を持つことも求められています。

 

ファクタリングは、契約内容やスキームがやや専門的であるため、利用者が疑問を持ったときに、電話・メール・オンライン面談などで丁寧に説明してもらえる体制があるかどうかは、安心して取引を行ううえで大きな差になります。

また、入金遅延や請求内容の相違など、実務上のトラブルが生じた場合の対応フロー(担当部署・担当者、回答までの目安時間、記録の残し方など)が整っているかも重要です。

 

さらに、万一トラブルが解決しない場合に備えて、外部の紛争解決機関や業界団体と連携した相談・苦情処理のルートが示されているかどうかもチェックしたいポイントです。

とりわけ、初めてファクタリングを利用する中小企業・個人事業主にとっては、「困ったときにどこに相談すればよいのか」が明確になっている会社ほど利用しやすいと言えます。

 

相談体制・トラブル対応で確認したいポイント
  • 電話・メール・オンライン面談など、複数の相談手段が用意されているか
  • 契約前後に疑問点を質問した際、内容をかみ砕いて説明してくれるか
  • 入金遅延や条件の行き違いが生じた場合の社内対応フローが明示されているか
  • 解決が難しい場合に利用できる外部相談窓口や紛争解決機関の案内があるか

 

まとめ

ファクタリングそのものには専用の免許制度はありませんが、実質が貸付と評価される取引では貸金業登録など他の法令が問題となる場合があります。

事業者向けファクタリングは、売掛債権の真正な売買として適切に行われるかぎり、有効な資金調達手段の一つです。

 

一方で、高水準の手数料や契約構造によっては行政が注意喚起する類型に近づくおそれもあるため、利用者側の確認が重要になります。

本記事で整理した「登録状況・運営主体」「手数料と契約条項」「相談体制・窓口」の観点を手掛かりに、公式情報や契約書面を丁寧に確認しながら、自社のリスク許容度に合ったファクタリング会社を検討することが大切です。