売上はあるのに資金繰りが悪化し、今月の給料が支払えないかもしれない――多くの中小企業で起こり得る局面です。
本記事では、給料未払いに関わる法的リスクと基本ルール、給料を優先すべき支払としてどう位置づけるかの判断軸、税金・社会保険料の猶予制度や金融機関・ノンバンク・ファクタリングなどによる緊急資金確保の選択肢、社員や金融機関への説明・相談の進め方、資金繰り表を用いた再発防止策まで、経営者・経理担当者が押さえておきたいポイントを整理します。
給料未払いの基礎知識
給料は従業員の生活を支える最も重要な支払であり、日本では労働基準法によって支払方法や期日が細かく定められています。
資金繰りが苦しいからといって「今月は少し遅らせる」「一部だけ支払う」といった対応を安易に行うと、法令違反となり、行政指導や罰則の対象になるおそれがあります。
この章では、賃金支払の基本ルール、未払いが違法と判断される考え方、万が一倒産に至った場合の公的救済制度の枠組みを整理します。
まずは、自社がどのルールに基づいて給料を支払っているのかを確認し、後の資金繰り対策や関係者への説明の前提をそろえることが大切です。
| テーマ | ポイント |
|---|---|
| 賃金支払の原則 | 通貨・直接・全額・毎月1回以上・一定期日支払という5原則を守ることが基本 |
| 未払いの違法性 | 支払期日に支払わない、無断で一部だけにするなどは労働基準法違反となる可能性 |
| 倒産時の救済 | 未払賃金立替払制度により、従業員は一定範囲で国による立替払いを受けられる仕組みがある |
賃金支払の基本ルール
賃金の支払いについては、労働基準法第24条でいわゆる「賃金支払の5原則」が定められています。
内容は、通貨で支払うこと、直接労働者に支払うこと、全額を支払うこと、毎月1回以上支払うこと、あらかじめ定めた一定の期日に支払うこと、という5つです。
この原則により、会社の都合で支払期日を曖昧にしたり、「今月は半分だけ払う」といった扱いをすることは原則認められていません。
一方で、銀行振込による支払は、労働者の同意など一定の条件を満たせば認められています。また、歩合給や残業代なども賃金に含まれるため、「基本給だけ先に払い、残業代はしばらく後回し」という運用も注意が必要です。
- 通貨で支払う(原則は現金、条件を満たせば振込可)
- 直接労働者本人に支払う
- 賃金は全額を支払う(控除は法定または労使協定などが必要)
- 毎月1回以上支払う
- あらかじめ決めた一定の期日に支払う
未払いが違法となる判断
給料の「未払い」といっても、支払日当日に一切支払われないケースから、一部だけが支払われずに残るケース、数日〜数か月先送りされるケースなど、状況はさまざまです。
一般的には、就業規則や雇用契約書などで定められた支払日に、約束した賃金を全額支払わない場合、労働基準法違反に該当する可能性が高くなります。
【違法となるおそれがある代表例】
- 支払日に給与が一切振り込まれない、または現金で支払われない
- 会社の一方的判断で「今月は基本給の8割だけ支払う」と減額する
- 残業代や割増賃金だけを恒常的に後ろ倒しにして支払わない
- 賞与ではなく、本来支払うべき退職金や最終給与を支払わない
こうした未払いが発生した場合、従業員は労働基準監督署に相談・申告することができます。労働基準監督署は事実関係を調査し、法令違反が認められれば是正勧告などを行います。
また、賃金の請求権には時効があり、現行法では原則として3年の消滅時効期間が設けられています。
時効を過ぎても支払義務が自動的に消えるわけではありませんが、法的請求が難しくなるため、未払いが発生した場合は放置せず、早期に是正策を検討することが重要です。
倒産時の主な救済制度
会社が資金難の結果、事実上または法律上の倒産状態となり、従業員に給料を支払えないまま退職させることになった場合、従業員は「未払賃金立替払制度」を利用できる可能性があります。
この制度は、労災保険の適用事業として一定期間事業を行ってきた企業が倒産し、賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、未払賃金の一部(原則として未払総額の8割・上限あり)を国が立て替えて支払う仕組みです。
対象となる未払賃金の範囲や上限額は、退職日における年齢などによって異なります。
たとえば、30歳代の労働者で未払賃金が200万円ある場合、制度上の条件を満たせば160万円程度が立替払いの目安となります。
具体的な要件や金額は、労働基準監督署や独立行政法人労働者健康安全機構に確認する必要があります。
- 立替払制度はあくまで従業員保護のためであり、会社の賃金支払義務が免除される制度ではない
- 倒産と認定されるまで時間がかかることもあり、すぐに従業員の生活が守られるわけではない
- 制度の利用の有無にかかわらず、未払い発生までの経営判断や労務管理について責任が問われる可能性がある
経営者としては、この制度の存在を把握しておくことは重要ですが、「最悪の場合は立替払があるから」と考えるのではなく、そもそも給料の未払いを発生させないよう、早い段階から資金繰り対策や関係者への相談を進めることが求められます。
給料支払不能時の状況整理
給料を支払えない可能性が見えてきたときは、感覚ではなく数値に基づいて状況を整理することが重要です。
「今月だけ一時的に足りない」のか、「事業構造として人件費を賄えるだけの粗利益が出ていない」のかで、取るべき選択肢やスピード感は大きく変わります。
まずは、今後数か月分の入金予定と出金予定を一覧にし、給料・税金・社保・家賃・借入返済などの支払を時系列で並べてみます。
そのうえで、手元資金と月次の収支を照らし合わせ、「乗り切れる見込みがある一時的な谷」なのか、「努力しても給料を継続的に払えない構造的な赤字」なのかを判断していきます。
- 入金予定(売掛金の回収予定・融資予定・その他入金)を月別に並べる
- 出金予定(給料・税金・社保・家賃・仕入・返済など)を支払日順に整理する
- 手元資金と照らし合わせ、いつ・いくら資金不足になるかを把握する
一時不足か構造問題か判断
一時的な資金不足と、事業構造そのものの問題は、数字の見え方が異なります。
一時的な不足であれば、特定の月だけ売掛金の入金が偏っている、突発的な設備投資を行った、想定外の支出が発生したといった要因が中心で、年間を通して見れば黒字であることが多くなります。
一方で構造的な問題がある場合は、複数月にわたり売上総利益が人件費や固定費を下回っている、主要取引先の減少で売上水準が落ちたまま戻らない、粗利率の低い仕事が増えているなど、傾向として赤字が続きやすくなります。
| 項目 | 一時的な資金不足 | 構造的な資金不足 |
|---|---|---|
| 期間 | 特定の数か月に集中 | 半年〜数年単位で継続 |
| 原因 | 入金ずれ・突発支出など | 売上水準・粗利率・固定費のミスマッチ |
| 決算 | 通期では黒字のこともある | 通期で赤字・債務超過傾向 |
このように、月次試算表や資金繰り表を用いて「今だけの谷なのか」「もともとのビジネスモデルで給料を払えない状態なのか」を見極めることで、緊急の資金調達で乗り切るべきか、事業規模の見直しや撤退も含めて検討すべきかの方向性が見えやすくなります。
支払優先順位と守るライン
給料が支払えない可能性があるときには、どの支払を優先し、どこまでを「必ず守るライン」とするかを決めておく必要があります。
法令上、支払優先順位が一律に定められているわけではありませんが、一般的には従業員の生活に直結する給料や、預かっている社会保険料の従業員負担分などは、特に慎重に扱うべき支払とされることが多いです。
そのうえで、家賃・仕入代金・リース料・借入金返済など、事業継続に影響する支払を整理し、どこまでなら一時的な猶予や条件変更を相談できるかを検討します。
- 給料・賞与・退職金など、従業員の生活に直結する支払をどう守るか
- 社会保険料・源泉所得税など、預り金に相当する部分の遅延リスク
- 家賃・通信費・光熱費など、停止されると事業継続が難しくなる固定費
- 仕入先・外注先への支払遅延が、取引継続や信用に与える影響
- 借入金返済について、リスケ(条件変更)を相談できる余地の有無
このように、各支払の性質と遅延した場合の影響を一覧化し、「ここから先は遅らせない」「これ以上給料を遅配するなら抜本的な見直しが必要」といった自社のラインをあらかじめ決めておくことで、場当たり的な判断を避けやすくなります。
廃業検討が必要となる目安
資金繰りが厳しくなっても、多くの経営者はできる限り事業継続を望みます。しかし、一定のラインを超えても給料や税金・社保が支払えない状態が続く場合、廃業や事業譲渡なども含めて検討することが、結果として従業員や取引先を守ることにつながる場合があります。
目安としては、複数月にわたり給料の全額支払いができていない、売上総利益より人件費と固定費が大きい状態が半年以上続いている、税金・社保の滞納が慢性化している、主要取引先の減少などで今後の売上回復の見通しが立たない、といった状況が挙げられます。
- 給料の遅配や未払いが断続的ではなく「常態化」している
- 事業を縮小しても人件費を賄える利益水準に届く見込みが薄い
- 税金・社保・借入返済の滞納が重なり、督促や差押えリスクが高まっている
- 主要取引先の減少や市場縮小により、売上の根本的な回復が見込めない
こうした兆候が複数当てはまる場合には、早めに税理士・弁護士・中小企業診断士などの専門家に相談し、廃業・再生・事業譲渡など複数の選択肢と、従業員や債権者への影響を比較検討することが重要です。
ギリギリまで粘った結果、突然の倒産となれば、未払賃金や取引先への影響が大きくなりかねません。
感情だけで判断せず、数字と第三者の意見を踏まえて、冷静に方向性を決めていくことが求められます。
給料支払い危機の資金繰り
給料支払いが危うい局面では、「どこから、どの程度、いつまで資金をひねり出せるか」を冷静に整理することが重要です。
代表的な打ち手は、役員報酬の一時的な調整や経営者の自己資金投入、税金・社会保険料の猶予や分納、取引先への支払条件の見直し、売掛金の早期資金化やファクタリングなどに分けられます。
いずれも一長一短があり、短期的には資金繰りを緩和できても、中長期の返済負担や信用への影響が生じます。
この章では、それぞれの手法の概要と注意点を整理し、「どの順番で」「どこまで踏み込むか」を考えるための材料を提供します。
- 経営者サイド:役員報酬の見直し・自己資金の貸付や増資
- 公租公課・公的機関:税金・社会保険料の猶予・分納相談
- 取引先・金融:支払条件の交渉・借入金の条件変更
- 売掛金:期日前回収、ファクタリングなどによる早期資金化
役員報酬調整と自己資金投入
最初に検討されることが多いのが、役員報酬の一時的な減額や支給停止です。
役員報酬は原則として事前に決めた金額を継続して支払うことが税務上の前提ですが、資金繰りが逼迫している場合には、取締役会決議や株主総会決議など所定の手続きを踏んだうえで、今後の金額を見直すことが検討されます。
短期間であれば、役員が生活費を圧縮し、会社に資金を残すことで、従業員の給料を守る効果が期待できます。
一方で、経営者自身の生活基盤が崩れてしまう水準まで報酬を下げると、健康面・精神面の負担が大きくなります。
また、経営者の個人口座から会社に資金を入れる場合、「増資」とするのか「役員からの貸付金」とするのかで、返済義務や税務上の取り扱いが変わります。
一般的には、急場をしのぐための資金は「役員借入金」として貸し付け、帳簿に記録したうえで、余裕が出た段階で少しずつ返済していく形がとられることが多いです。
- 役員報酬の変更は、社内決裁と税務上のルールを確認したうえで実施する
- 経営者の生活費を試算し、無理のない減額幅を検討する
- 自己資金投入は、貸付金か増資かを会計・税務の観点から顧問税理士と確認する
税金社保の猶予申請と分納
資金繰りが厳しい場合、税務署や自治体、年金事務所などに対して、税金や社会保険料の納付猶予や分割納付を相談できる制度があります。
たとえば、災害や売上減少などにより一時的に納税が困難な場合に、一定期間の「納税の猶予」や「換価の猶予」が認められることがあります。
また、国税・地方税・社会保険料とも、分割納付の相談に応じてもらえる場合があります。いずれも、申請には資金繰りの状況や納付計画などを示す資料が必要になるのが一般的です。
| 区分 | 税金(国税・地方税) | 社会保険料 |
|---|---|---|
| 相談先 | 税務署・都道府県税事務所・市区町村 | 年金事務所・健康保険組合など |
| 主な内容 | 納税猶予・換価猶予・分割納付など | 分割納付や一時的な猶予の相談 |
| 必要資料 | 申請書・資金繰り状況・納付計画など | 納付計画・会社の経営状況に関する資料など |
ただし、税金や社会保険料の滞納は、延滞税や督促、最悪の場合には差押えにつながるリスクがあります。
猶予や分納は「支払わなくてよい」制度ではなく、「支払う時期・方法を調整する」仕組みであることを踏まえ、現実的に履行できる計画を提示することが重要です。
安易に申請して約束どおりの支払いができないと、かえって信用を損ねるおそれがあるため、顧問税理士などと相談しながら進めることが望ましいです。
取引先支払条件の見直し交渉
仕入先や外注先への支払条件を見直すことも、短期的な資金繰り改善に有効な手段です。たとえば、月末締め翌月末払いの条件を、翌々月末払いに変更してもらえれば、その分だけ手元資金の滞留期間が長くなります。
ただし、一方的に支払を遅らせることは信用を大きく損ねる行為であり、取引停止や条件悪化につながりかねません。
必ず、支払期日前の余裕がある段階で、誠意を持って事情を説明し、具体的な支払計画とあわせて相談することが前提となります。
- 決算書・資金繰り表など、現状を示す資料を準備してから相談する
- 「いつまでに」「いくらは支払えるか」を具体的な数字で提示する
- 一律の延長ではなく、金額や重要度に応じて複数の提案パターンを用意する
- 書面(メール・覚書など)で新たな条件を確認し、「言った・言わない」のトラブルを防ぐ
また、すべての取引先に同じように延長をお願いすると、業務に必要な取引まで失ってしまう可能性があります。
ビジネス上重要度の高い仕入先や、代替が効きにくい外注先には、可能な限り従来条件を維持し、比較的影響の小さい取引から条件変更をお願いするなど、優先順位を意識した交渉が望ましいです。
売掛金早期資金化とファクタリング
売掛金の入金まで時間がある場合、その売掛金を早期に現金化する方法として、銀行による手形割引や売掛債権担保融資、ファクタリングなどがあります。
ファクタリングは、売掛金をファクタリング会社に売却し、手数料を差し引いた金額を受け取る仕組みで、銀行融資に比べて審査期間が短いとされる一方、手数料負担は高めになる傾向があります。
2社間ファクタリング(取引先に通知しない方式)と3社間ファクタリング(取引先も含めた契約)では、手数料水準や必要書類、信用への影響が異なります。
- 短期的な資金確保手段としての有効性と、手数料負担・取引先への影響を比較する
- 契約内容(手数料率、遅延時の対応、早期償還条項など)を細かく確認する
- 過度に高い手数料や不明瞭な条件を提示する事業者は慎重に見極める
- 銀行の売掛債権担保融資や、取引先との前倒し入金交渉とあわせて検討する
ファクタリングは、あくまで将来の入金を前倒しする手段であり、根本的な収益力やビジネスモデルを改善するわけではありません。
繰り返し利用すれば、その分だけ利益が削られ、慢性的な資金不足につながるおそれもあります。
給料支払いの危機を乗り切る「時間を買う」手段として位置づけつつ、その間にコスト構造や売上・粗利の見直しを進めることが重要です。
社員金融機関等への説明相談
給料支払いの危機が見えてきたとき、社内外の関係者にどのように説明し、どこまで情報を共有するかは、経営判断の重要なポイントです。
状況を隠したまま場当たり的に対応すると、従業員の不信感や金融機関からの信用低下につながり、かえって事態を悪化させるおそれがあります。
一方で、すべてを感情的に打ち明ければよいわけではなく、数値に基づいた現状と今後の対応方針を整理したうえで、落ち着いてコミュニケーションを取ることが求められます。
この章では、社員への情報共有と信頼維持、金融機関への早期相談の進め方、税理士・社労士など専門家への相談の活用方法を整理し、「誰に・いつ・何を・どこまで」伝えるかを考えるうえでの基本的な視点を示します。
| 相手 | 主な目的とポイント |
|---|---|
| 社員 | 不安の軽減・離職防止・協力体制づくりのため、事実と今後の方針を簡潔に共有する |
| 金融機関 | 早期に状況を伝え、追加融資や条件変更などの可能性を探りつつ、信用の維持を図る |
| 専門家 | 数字の整理・法令面の確認・選択肢の比較など、意思決定の材料を客観的に整える |
社員への情報共有と信頼維持
給料に関わる問題は、社員の生活に直結するため、風聞や噂だけが先行すると、職場の不安やモチベーション低下が一気に広がります。
経営側としては「不安にさせたくない」との思いから、ギリギリまで何も伝えないケースもありますが、結果として「知らされていなかった」という不信感を招くことも少なくありません。
重要なのは、数字に基づいた現状と今後の対応方針をあらかじめ整理したうえで、タイミングを逃さずに説明の場を設けることです。
- 現状:資金繰りが厳しくなっている事実と、その主な要因(売上減少・入金遅れなど)
- 方針:給料支払いを最優先に考えていること、具体的に検討している対策(資金調達・コスト見直しなど)
- 期間:いつまでにどのような見通しを持ちたいか、おおまかな期間の目安
- お願い:残業や新規投資の抑制など、社員に協力をお願いしたい点があれば明確に伝える
個別に給与カットや支払い延期をお願いせざるを得ない場合には、対象者を恣意的に選ばないこと、書面で内容と期間を確認すること、将来的な戻し方針があれば可能な範囲で示すことが大切です。
感情的な表現や責任転嫁を避け、事実と数字に基づいて話すことで、厳しい状況であっても一定の信頼関係を維持しやすくなります。
金融機関への早期相談の進め方
金融機関には「返済ができなくなってから」ではなく、「今後の資金繰りに不安が出てきた段階」で早期に相談することが基本です。
具体的には、メインバンクを中心に、直近の試算表や資金繰り表、今後半年〜1年程度の収支計画などを用意し、「このままでは○月頃に資金不足が見込まれる」「給料支払いを維持するために○○万円の運転資金が必要」といった見通しを共有します。
そのうえで、短期借入や既存借入の条件変更(返済のリスケジュール)など、取り得る選択肢について意見を求めます。
| ステップ | 準備する資料 | 金融機関への説明ポイント |
|---|---|---|
| 現状整理 | 直近の決算書・試算表・資金繰り表 | 売上・粗利の状況、固定費構造、資金不足が生じる時期と規模を具体的に説明する |
| 原因分析 | 売上推移や主要取引先の状況資料 | 一時的要因か構造的な問題かを分けて説明し、改善に向けた取り組みを示す |
| 対応案提示 | 簡単な事業計画・コスト削減計画 | 追加融資やリスケなど、希望する支援内容と、それによりどのように資金繰りが安定するかを示す |
税金・社保の滞納や他行での延滞がある場合、それを隠して相談することは避けるべきです。後から判明すると信用低下につながります。
厳しい内容であっても事実を共有し、そのうえで今後の改善策を一緒に検討してもらう姿勢の方が、長期的な関係維持につながりやすくなります。
税理士社労士など専門家への相談
給料支払いの危機に直面すると、経営者だけで悩みを抱え込みがちですが、税理士・社労士・中小企業診断士・弁護士など、外部の専門家に早めに相談することで、選択肢の幅が広がることがあります。
税理士は試算表や資金繰り表の作成・分析、税金や融資に関する一般的な助言を行うことが多く、社労士は賃金制度・労働時間管理・労務リスクに関する助言を行います。
中小企業診断士は事業全体の収益構造や改善策の検討、弁護士は倒産手続きや債権者対応など、法的観点からの助言が期待できます。
- 「今の資金繰りがあと何か月持つのか」を一緒に数値で確認してもらう
- 給料・税金・社保・借入返済など、どの支払を優先すべきかの考え方について意見を聞く
- 追加融資・条件変更・事業縮小・廃業など、複数のシナリオを比較してもらう
- 従業員や取引先への説明内容について、法令面・実務面からチェックしてもらう
顧問税理士や社労士がいる場合は、まず現状を率直に共有し、「どの程度まで踏み込んだ対策が必要か」「金融機関や役所にどのように説明すべきか」といった点を相談するとよいでしょう。
顧問がいない場合でも、商工会議所や自治体の相談窓口、よろず支援拠点など、無料・低コストで相談できる公的窓口が各地域に用意されていることがあります。
一人で判断するのではなく、第三者の視点を取り入れることで、感情に偏らない現実的な対応策を検討しやすくなります。
給料支払い危機の予防策
給料支払いの危機は、突然起こるように見えて、実際には「資金繰りの見える化ができていなかった」「安全ラインを決めていなかった」ことが背景にあるケースが少なくありません。
日頃から資金繰り表で給料を含む出金スケジュールを管理し、給与用の資金を一定額キープしておくことで、急な売上減少や入金遅れがあっても、すぐに給料が脅かされる状況を避けやすくなります。
また、売上計画・仕入計画・設備投資と人件費のバランスを定期的に見直し、「この売上規模では人件費が重すぎないか」「固定費に偏っていないか」を点検することも重要です。
危機に陥ってからの対処だけでなく、平常時からの管理・予防を習慣化することで、給料支払いを安定させる土台をつくることができます。
- 資金繰り表で給料を含む毎月の資金の流れを把握する
- 給与用資金として最低限の預金残高ラインを決めておく
- 売上・仕入・投資計画と人件費のバランスを定期的にチェックする
資金繰り表で給料を管理
資金繰り表は、「いつ・いくら入って、いつ・いくら出ていくか」を日付ベースで一覧にした表です。
損益計算書が「利益」を見るのに対し、資金繰り表は「現金の残高推移」を見るための道具であり、給料支払いの安定性を確認するには欠かせません。
具体的には、毎月の売上入金・借入実行などの入金と、給料・社会保険料・税金・家賃・仕入・返済などの出金を、少なくとも月単位、できれば週単位で並べ、各時点の現金残高がマイナスにならないかを確認します。
- 給料・賞与・社会保険料など、従業員関連の支払欄を資金繰り表の中で分けて記載する
- 売掛金の入金予定日と給料支払日を並べ、タイミングのずれを把握する
- 最低3〜6か月先までの資金繰りを試算し、早めに谷間を把握する
資金繰り表を運用することで、「来月は何とかなるが、3か月後の賞与時期が危ない」といった中期的な危機も見えやすくなります。
Excelや会計ソフトの簡易機能でもよいので、毎月更新を習慣化し、給料の項目に目を通すことで、危機が表面化する前に手を打つきっかけをつくれます。
給与用資金の確保と安全ライン
給料支払いを安定させるためには、「ここを下回ったら危険」という預金残高の安全ラインを決めておくことが有効です。
たとえば、月商の一定割合や、固定費(人件費+家賃など)の何か月分といった基準で、会社ごとに目安を設定します。
特に人件費については、従業員の人数や売上の変動幅を踏まえ、最低でも1〜2か月分、できれば3か月分程度を手元資金として確保しておくことが、ひとつの考え方になります。
| 項目 | 安全ライン設定の一例 |
|---|---|
| 人件費 | 毎月の給料総額の1〜3か月分を、普通預金などですぐに使える形で確保する |
| 固定費 | 家賃・リース料・通信費などの固定費合計の1〜2か月分を目安にする |
| 全体残高 | 資金繰り表上、どの月も残高が安全ラインを下回らないように計画する |
- 売上減少や入金遅れのたびに、給料支払の不安に振り回される
- 「何となく大丈夫そう」という感覚で投資や経費を決めてしまう
- 危機が顕在化してから慌てて融資やファクタリングに頼り、高コスト化する
安全ラインは一度決めたら終わりではなく、事業規模や人員構成の変化に合わせて見直すことが大切です。
定期的に試算表と資金繰り表を確認し、「今のラインで十分か」「もう少し厚く持つべきか」を検討していきます。
売上仕入投資計画と人件費のバランス
給料支払いの安定性は、売上・仕入・投資計画と人件費のバランスによって大きく左右されます。
たとえば、売上が横ばいのまま人員を増やし続けると、人件費比率が高まり、少し売上が落ちただけで給料が圧迫されます。
また、売上の季節変動が大きい業種で、繁忙期の売上を前提に固定的な人件費や設備投資を組んでしまうと、閑散期に資金繰りが苦しくなりがちです。
- 売上計画を立てる際に、粗利額が人件費とその他固定費を上回る水準かを確認する
- 繁忙期と閑散期の売上差が大きい場合、変動費的な人件費(パート・外注)を活用する
- 設備投資や新規事業の開始前に、投資後の人件費と返済負担を資金繰り表でシミュレーションする
人員計画を検討する際には、「売上1,000万円あたり人件費○○万円まで」といった目安を社内で共有しておくと、採用や残業のコントロールがしやすくなります。
また、売上が想定よりも下振れした場合の「早期警戒ライン」を決めておき、そのラインを割り込んだ段階で業務の見直しやコスト削減策を検討する仕組みをつくることも有効です。
こうしたバランス管理を日常的に行うことで、給料支払いが「毎月ぎりぎり」の状態から脱し、多少の環境変化にも耐えられる体制に近づけていくことができます。
まとめ
給料を支払えない局面では、①賃金支払の法的ルールと未払いリスクを正しく理解すること、②一時的資金不足か構造的赤字かを見極め、給料を含む支払優先順位を整理すること、③税金・社保の猶予や金融機関・ノンバンク・ファクタリングなど資金調達手段の特徴と向き不向きを比較すること、④社員・金融機関・専門家への説明と相談の方針を整えることが重要です。
まずは資金繰り表で今後数か月の入出金と給与負担を可視化し、短期の資金確保策とあわせて、中長期の返済計画や事業計画に無理がないかを確認しながら、税理士や金融機関等への相談準備を進めていきましょう。






















