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ファクタリングと民事再生の関係とは?資金繰りとリスクを基礎から解説

資金繰りが限界に近づくと、「民事再生を検討しながらファクタリングで資金を確保できるのか?」という疑問が必ず出てきます。民事再生は債務を圧縮しつつ事業継続を目指す手続きであり、その途中での売掛金の扱いやファクタリング契約の位置付けには、独特のルールとリスクがあります。本記事では、民事再生の基本と売掛債権の取扱い、申立て前後のファクタリング利用の可否、中小企業の資金繰り対策、否認権・偽装ファクタリングなどの注意点までを、実務目線で整理します。

 

ファクタリングと民事再生の基礎関係

ファクタリングと民事再生の関係を理解するには、まず「民事再生とは何か」「売掛債権が再生手続の中でどう扱われるか」「ファクタリング契約が法律上どのような性質を持つか」を切り分けて押さえることが大切です。

民事再生は、民事再生法に基づく再建型の倒産手続で、経済的に行き詰まった債務者の事業または経済生活の再生を目的とし、破産のように清算して終わらせるのではなく、債務を減額しつつ事業継続を図るための手続です(民事再生法1条)。

 

一方、ファクタリングは、事業者が保有する売掛債権をファクタリング会社に譲渡(売却)し、一定の手数料を差し引いた金額を早期に受け取る取引であり、資金繰りの平準化や運転資金の確保を目的とする金融スキームです。

法律上は、典型的には「債権譲渡契約(真正譲渡)」として構成されますが、契約内容によっては、実質的に貸付と評価されるケースもあり得ると専門家は整理しています。

 

民事再生手続が始まると、原則として債務者の財産は再生債権者の公平な配当のために「再生財団」として管理されますが、既に適法に譲渡された売掛債権は、原則として債務者の財産から外れ、ファクタリング会社のものと扱われます。

ただし、申立て前の取引であっても「偏った弁済」「他の債権者を害する目的があった」と判断されれば、否認権(取引をさかのぼって取り消す権限)の対象となる可能性もあるため、民事再生とファクタリングの関係はタイミングや契約内容に大きく左右されます。

こうした背景から、民事再生を検討・進行している企業は、「どの売掛債権をいつファクタリングに出すのか」「その契約が法律上どのように評価されるか」を、再生計画や債権者との関係とあわせて検討する必要があります。

 

項目 概要
民事再生 事業継続を前提とし、裁判所の監督のもとで債務を減額しつつ再建を図る再建型の法的整理手続。
売掛債権 商品の販売やサービス提供により発生した、取引先に対する代金請求権。民事再生では重要な資産。
ファクタリング 売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、期日前に現金化するスキーム。法律上は債権譲渡契約が基本。
論点 申立て前後でのファクタリング利用の可否、否認権・別除権との関係、貸付と評価される契約類型など。

 

民事再生手続きの基本と目的

民事再生手続は、経営が悪化した企業や個人が、破産による清算を回避しつつ、事業や生活を立て直すための「再建型」の法的整理手続です。

民事再生法1条では、目的を「債務者の事業又は経済生活の再生」と明記しており、基本的な考え方は、債務を一定割合でカットしながら(例:再生計画に基づく分割弁済)、事業を継続させることで、債務者と債権者双方にとってより高い回収・再建の可能性を確保する点にあります。

 

特徴として、会社更生と異なり、中小企業を含む広い層が利用できること、原則として現経営陣がそのまま経営を続けるDIP型(Debtor in Possession)が採用されることが挙げられます。

申立てが受理されると、裁判所が再生手続開始決定を出し、債権届出・債権調査・再生計画案の作成・債権者集会での決議・裁判所の認可、といった流れで進行します。

 

その過程で、既存の債務は「再生債権」として一括管理され、再生計画に従って弁済条件が調整されます。

中小企業にとってのメリットは、事業を残しながら債務負担を軽減できる可能性がある点ですが、一方で、裁判所・監督委員・債権者の目線で事業の継続可能性が厳しくチェックされるため、「資金繰り」「収益構造」「事業計画」の現実性が問われます。

ファクタリングを含む資金調達も、この再生計画の中で位置付けられることになるため、単発的な資金繰り対策ではなく、再建全体のストーリーの中で考える必要があります。

 

民事再生手続の基本ポイント
  • 破産のような清算ではなく、「事業継続+債務圧縮」を目指す再建型の法的整理手続。
  • 原則として経営者が事業を続けるDIP型で、中小企業にも利用しやすい制度設計。
  • 債務・資産・資金繰りを再生計画の中で一体的に見直すため、ファクタリングもその一部として検討する必要がある。

 

再生手続きと売掛債権の扱い方

民事再生手続では、売掛債権は事業継続のための重要な資産であり、同時に再生債権者への弁済財源となる「再生財団」を構成する要素の一つです。

再生手続開始決定時点で債務者が有している売掛債権は、原則として再生債権者の公平な配当に充てるべき財産とされます。

 

一方、不動産担保などの「担保権付債権」は、民事再生法上「別除権」として位置付けられ、一定の範囲で再生手続とは別に担保権を行使できるとされています(民事再生法53条・160条等)。

売掛債権についても、再生手続開始前に適法な債権譲渡(真正譲渡)が完了しており、対抗要件(確定日付のある通知や債権譲渡登記など)が備わっている場合、その債権は原則として債務者の財産から外れ、譲受人(ファクタリング会社)の財産として扱われます。

 

一方で、申立て直前に特定の債権者だけを有利にする目的で売掛債権を譲渡したような場合には、「否認権」(偏頗弁済や詐害的な財産処分をさかのぼって取り消す権限)の対象となる可能性もあり、再生管財人や監督委員が取引の時期や内容を精査するのが一般的です。

したがって、民事再生を検討している段階で売掛債権のファクタリングを行う場合には、「通常の取引範囲か」「事業継続のために必要な資金調達か」「他の債権者に過度な不利益を与えていないか」といった観点から、タイミングや金額、スキームを慎重に検討する必要があります。

 

再生手続における売掛債権のポイント
  • 再生開始時点の売掛債権は、原則として再生債権者への弁済財源となる重要な資産。
  • 開始前に真正譲渡・対抗要件具備が完了している債権は、通常はファクタリング会社の財産として扱われる。
  • 申立て直前の異例なファクタリングは、否認権や偏頗弁済の問題になり得るため、時期・必要性を慎重に検討する。

 

ファクタリング契約の法的な位置付け

ファクタリング契約は、形式上は「売掛債権の譲渡契約」であり、譲渡人(利用者)から譲受人(ファクタリング会社)に対して債権の所有権が移転することを内容とします。

真正譲渡型のファクタリングでは、売掛先の支払リスクを原則としてファクタリング会社が負担し、利用者は債権額面から手数料を差し引いた買取代金を受け取るのみで、原則として「元本返済義務」は負いません。

 

しかし、近年の裁判例や行政資料では、「法形式は債権譲渡契約でも、経済的実態が高利の金銭貸付と同様であれば、債権譲渡担保付きの金銭消費貸借契約(いわゆる偽装ファクタリング)と評価され得る」との指摘がなされています。

譲渡債権の不履行時に譲渡人が買い戻す義務を負う、常に元本全額の支払義務が残る、手数料が実質的に高金利に相当する、といった要素が重なると、「売買」ではなく「貸付」として貸金業法・利息制限法等の規制対象となる可能性があります。

 

民事再生との関係でも、この法的性質は重要です。真正譲渡型であれば、譲渡済みの売掛債権は原則として債務者の財産から外れる一方、実質が貸付と評価される場合には、債権の性質や担保権の有無に応じて「別除権付債権」や「再生債権」として再生計画の中で扱われることになります。

したがって、民事再生を視野に入れている企業がファクタリングを利用する際には、自社の契約が「売掛債権の本来的な売買」にとどまっているのか、それとも「実質的に貸付と評価され得る構造」を含んでいないかを、契約書・条文レベルで確認しておく必要があります。

 

ファクタリング契約の法的性質チェック
  • 真正譲渡型か、買戻し義務や元本返済義務を伴う担保・貸付型かを契約書で確認する。
  • 売掛先の不払い時に誰がどこまでリスクを負うか(ノンリコースか、リコース付きか)を明確にする。
  • 実質が貸付と評価される構造がある場合は、貸金業法・利息制限法・民事再生法上の扱いも視野に入れ、専門家の助言を受ける。

 

民事再生申立て前後のファクタリング利用

民事再生とファクタリングを併用する場面では、「申立て前にどこまで利用してよいか」「申立て後も新規契約や継続利用ができるのか」という時間軸ごとの整理が重要になります。

民事再生法では、再生手続開始前・開始後で、債務者が行う財産処分や新規取引に一定の制限やルールが設けられており、売掛債権のファクタリングもその枠組みの中で評価されます。

とくに、申立て直前の取引については、債権者の一部だけを有利にする「偏頗弁済」として否認権の対象となる場合や、実質が貸付と評価されるスキームについては、別除権や担保権実行の中止命令の対象となる場合があると指摘されています。

 

一方で、通常の取引の範囲内で行われる真正譲渡型ファクタリングは、売掛債権の売買として、事業継続のための資金調達手段の一つとして位置付けられることもあります。

そのため、民事再生申立て前後でファクタリングを検討する際には、①取引の時期(申立て前か後か)、②スキームの性質(真正譲渡か、担保・貸付型か)、③目的・必要性(通常の運転資金か、特定債権者の保護か)を軸にして整理することが、リスク把握の前提となります。

 

タイミング ファクタリング利用の主な論点
申立て前 通常取引の範囲か、偏頗弁済・否認権の対象となる異例の取引か(時期・金額・相手方の認識など)。
申立て後 新規契約に法院の監督・同意が必要か、再生計画との整合性があるか、既存契約はどこまで履行可能か。
既存契約 真正譲渡か譲渡担保かによって、別除権・対抗要件否認・担保権実行中止命令の対象となるかが変わる。

 

申立て前に利用する場合のポイント

民事再生申立て前にファクタリングを利用する場合、最も重要になるのが「通常の営業取引の範囲か、それとも特定債権者を不当に優遇する取引か」という点です。

民事再生法では、申立て前に一部債権者だけを優先的に保護するような弁済や担保供与について、再生債務者側が否認権を行使できる規定が置かれており(いわゆる偏頗弁済・否認)、申立て直前の異例な取引は、後に問題とされる可能性があります。

 

ファクタリングについても、危機時期(支払不能・支払停止に近い時期)に、特定のファクタリング会社との間でのみ高額の債権譲渡や譲渡担保設定を行った場合には、「他の債権者を害する目的で財産を処分した」と評価され、民事再生法129条に基づく対抗要件否認や財産処分否認の対象となる可能性が指摘されています。

一方、通常の取引条件に基づき、期日どおりに売掛債権を譲渡して資金化しているにすぎない場合には、否認権行使の対象とはならないとする解説もあり、個別事情の評価が重要になります。

そのため、申立て前にファクタリングを検討する際には、少なくとも次のような点を整理しておくことが望ましいとされています。

 

申立て前にファクタリングを利用する際の確認ポイント
  • 取引条件(買取率・手数料・対象債権など)が、これまでの通常取引と大きく変わっていないか。
  • 支払不能・支払停止が現実味を帯びた「危機時期」に入っていないか、その認識を相手方が有していないか。
  • 特定の債権者だけを有利にする目的ではなく、事業継続に必要な運転資金確保として合理的に説明できるか。

 

申立て後に新規契約は可能か

民事再生申立て後に、新たにファクタリング契約を締結することが全て禁止されているわけではありませんが、手続の性質上、慎重な検討と裁判所・監督委員との調整が不可欠になります。

民事再生開始決定後、原則として債務者は再生債権者の共同の利益を害する行為を行ってはならず、一定規模を超える重要な財産処分や新規債務の負担には、裁判所または監督委員の許可が必要とされます(民事再生法42条等)。

 

この枠組みの中で、新規のファクタリング契約は、事業継続のための運転資金を確保する手段として再生計画に組み込まれるケースがあります。

例えば、一定期間中に発生する売掛債権について、計画的にファクタリングを活用し、その資金を当座の支払いと再生債権への弁済原資に充てるといった設計です。

 

ただし、この場合も、売掛債権が再生債権者の弁済財源であることに変わりはないため、「過度にファクタリング会社だけを優遇していないか」「他の債権者の利益とのバランスがとれているか」が重視されます。

実務上は、再生申立て後に新たなファクタリングを行う場合、弁護士・再生計画の担当者が中心となって、裁判所・監督委員に対して必要性・合理性を説明し、必要な許可や事前調整を行う運用が一般的です。

そのため、申立て後の新規ファクタリングは、単独で判断するのではなく、「再生計画全体の一部」として位置付けることが前提になります。

 

申立て後の新規ファクタリング検討時の着眼点
  • 新規契約が事業継続に不可欠な運転資金調達かどうか(代替手段の有無も含めて検討)。
  • 再生計画の収支・弁済計画と整合しているか、他の債権者の利益とのバランスがとれているか。
  • 裁判所・監督委員の許可や事前協議が必要となる行為に該当しないか、弁護士を通じて確認する。

 

既存ファクタリング契約の継続可否

既に締結済みのファクタリング契約が、民事再生申立て後にどこまで継続されるかは、「契約の法的性質」と「対抗要件の具備状況」によって変わります。

真正譲渡型のファクタリングで、再生手続開始前に第三者対抗要件(確定日付のある通知や債権譲渡登記など)が備えられていれば、その売掛債権は原則としてファクタリング会社の財産と扱われ、民事再生の再生財団からは外れると解されています。

 

一方、譲渡担保型や、対抗要件の具備が危機時期に行われた取引については、民事再生法129条に基づく対抗要件否認が問題となる場合があります。

対抗要件が否認された場合、ファクタリング会社は担保権を失い、無担保債権者と同様に再生債権者として扱われる一方で、支払済みの買取代金について「優先的な返還請求権」を主張し得るとする学説・判例も紹介されており、破産・民事再生双方で議論されています。

 

さらに、譲渡担保と評価されるスキームでは、取立委任契約の解除や第三者債務者(売掛先)への通知による譲渡担保権の実行が、「担保権実行」に該当するとされ、民事再生法31条の担保権実行中止命令の対象となる可能性があると解説されています。

この場合、再生手続の枠組みの中で、ファクタリング会社は別除権者としての立場と再生債権者としての立場の両面から、再生計画や和解の枠組みに参加することになります。

そのため、既存ファクタリング契約の継続可否を検討する際には、少なくとも次の点を契約書・登記情報ベースで確認することが重要とされています。

 

既存ファクタリング契約の継続可否を確認するときのポイント
  • 契約が真正譲渡型か、譲渡担保・貸付型(リコース付き等)かを条文レベルで確認する。
  • 第三者対抗要件(通知・承諾・債権譲渡登記等)がいつ備えられているか(危機時期前か後か)を確認する。
  • 民事再生申立て後も継続予定の場合は、別除権・否認権・担保権実行中止命令との関係について、弁護士・監督委員と協議する。

 

中小企業の民事再生と資金繰り対策

中小企業が民事再生を申し立てる場面では、「債務カット」だけでなく、申立て前後を通じた資金繰り対策が大きな課題になります。

民事再生を進めるには、裁判所に納める予納金(数百万円規模になることもある)に加え、手続き中も事業を止めないための一定の運転資金を確保しておく必要があると解説されています。

 

一般的には、少なくとも数か月分の運転資金を確保しておくことが望ましいとされ、資金面の準備が不十分だと、再生手続そのものが頓挫するリスクも指摘されています。

一方で、金融機関との既存借入のリスケジュール(返済条件変更)や、新規融資、公的支援制度など、事業再生のために活用可能な手段も多く存在します。

 

事業再生ガイドライン等の事例集でも、既存債務の条件変更に加え、新規融資や劣後ローン・補助金を組み合わせて運転資金を確保したケースが紹介されており、「再生計画+資金繰り対策」をセットで考えることの重要性が示されています。

ファクタリングは、こうした資金繰り対策の中で「売掛金の早期資金化」という役割を担いうる手段の一つですが、民事再生の文脈では、否認権・偏頗弁済・偽装ファクタリングの問題など、通常時とは異なる法的論点も生じます。

そのため、単純に「資金が足りないからファクタリングで埋める」のではなく、再生計画全体の中で位置付けを整理したうえで検討することが重要です。

 

論点 中小企業が考えておきたいポイント
運転資金 民事再生中も事業を続けるため、少なくとも数か月分の運転資金+予納金をどう確保するか。
資金調達手段 銀行融資・リスケ、公的融資・補助金、スポンサー出資、ファクタリングなどをどう組み合わせるか。
ファクタリング 売掛金の早期資金化としての役割と、民事再生特有の法的リスク(否認権・実質貸付評価など)をどう整理するか。

 

再生計画と運転資金確保の考え方

再生計画は、「債務をどの程度・どの期間で返済するか」という弁済計画だけでなく、「その間、会社がどうやって資金繰りを維持し、事業を立て直すのか」という事業計画・資金計画まで含めて検討されます。

多くの専門解説では、民事再生を成功させるためのポイントとして「債権者の同意を得られる計画」「民事再生中の運転資金に注意すること」「早期に専門家へ相談すること」などが挙げられています。

実務上は、次のようなステップで運転資金確保を検討するケースが多く見られます。

 

  • 現状の資金繰りを把握し、「いつ・いくら不足するか」を資金繰り表で可視化する。
  • 金融機関とのリスケジュールや新規融資、公的融資・補助金の活用可能性を検討する。
  • それでも足りない短期的な資金ギャップについて、売掛金ファクタリング等で補う余地を検討する。

 

この際に重要なのは、「民事再生後も継続的に返済可能な水準かどうか」です。再生計画案は、債権者の同意と裁判所の認可が前提となるため、現実性を欠く売上・利益前提や、過大な利払い・手数料負担を前提とした資金計画は受け入れられにくくなります。

運転資金確保の手段を検討する際には、「手当てした資金で何を改善し、どのタイミングで黒字転換するのか」というストーリーを、債権者・裁判所に説明できるかどうかが問われます。

 

再生計画と運転資金を考えるときの視点
  • 債務カットだけでなく、「再生期間中の資金繰り」を具体的に設計する。
  • 新規融資・公的支援・ファクタリングなど、資金調達手段ごとのコストと役割を整理する。
  • 資金調達で得た資金を、どの改善策(事業改革・コスト削減・収益強化)にどう配分するかを明確にする。

 

売掛金ファクタリングの活用余地

売掛金ファクタリングは、売掛先からの入金を待たずに現金化できるため、民事再生前後の資金繰り対策として一定の役割を果たすことがあります。

特に、売掛先の信用力は高いものの、支払サイトが長く運転資金がひっ迫しているケースでは、「売掛金の一部を前倒し資金化する」ことで、仕入代金や給与の支払いに充てることができます。

 

債務整理中・ブラック状態でも、ファクタリングは債権譲渡契約として扱われるため、一定の条件のもとで利用できる可能性があると説明する実務解説もあります。

ただし、民事再生が視野に入る局面では、通常時と異なる注意点が生じます。申立て直前に多額のファクタリングを行うと、他の債権者を害する目的があったと評価され、偏頗弁済・否認権の対象となる可能性があります。

 

また、実質的に高利の貸付と評価されるスキーム(偽装ファクタリング)の場合には、貸金業法・利息制限法との関係だけでなく、再生手続上の扱い(別除権・再生債権の区分)も複雑になります。

さらに、ファクタリングはスピードの代わりにコストが高くなりがちな手段であるため、「一時的な資金不足を埋めるための限定的な利用」にとどめるのが原則です。

民事再生後も継続的に高い手数料を払い続ける前提で計画を組むと、再生計画の達成可能性を損なうおそれがあります。

 

売掛金ファクタリング活用時のポイント
  • 事業継続に必要な短期資金を補う手段として、売掛金の一部を前倒し資金化するイメージで検討する。
  • 申立て直前の異例な取引や、高利の偽装ファクタリングは、否認・規制の対象となり得る点に注意する。
  • 再生後も長期的に続ける前提ではなく、「いつ・いくらまで使うか」を計画の中で明確にしておく。

 

金融機関・取引先との調整の進め方

民事再生と資金繰り対策を進めるうえでは、金融機関や主要取引先との調整が不可欠です。多くの再生事例やガイドラインでは、「債権者の理解・協力の確保」と「早期の専門家相談」が成功の条件として挙げられています。

金融機関に対しては、現状の資金繰り・再生計画案・担保状況・追加支援の要否を整理したうえで、「破産させる場合よりも、再生させたほうが回収額が多くなる」ストーリーを示すことが重要とされています。

 

ファクタリングを併用する場合、その位置付けについても金融機関と共有しておく方が望ましいといえます。

例えば、「再生開始後◯か月間の運転資金のうち、◯◯万円は銀行からの新規融資、△△万円は売掛金ファクタリングで補う」といった形で、役割分担と返済計画を説明できれば、金融機関としても全体像を把握しやすくなります。

 

また、主要取引先に対しては、民事再生の申立てによる信用不安を最小限にするため、「なぜ再生を選んだのか」「今後どのように取引を継続するか」を丁寧に説明することが重要です。

調整プロセスでは、弁護士・会計士・税理士などの専門家に同席してもらい、法的枠組みや再生計画案を第三者目線で説明してもらうと、説得力が高まりやすくなります。

金融機関との交渉、債務返済のリスケジュール、公的再生支援スキームの活用なども含め、一体的に整理してもらうことで、経営者が交渉の負担を一人で抱え込まずに済みます。

 

金融機関・取引先との調整で意識したいこと
  • 現状の資金繰りと再生計画案を「数字」と「ストーリー」の両面で整理し、金融機関に共有する。
  • ファクタリングを含む資金調達の位置付け(役割・期間・金額)を明確にし、過度な依存にならないよう説明する。
  • 主要取引先には、民事再生を選択した理由と今後の取引方針を丁寧に伝え、協力を得られるよう専門家と連携して対応する。

 

民事再生場面でのリスクと注意点

民事再生手続の場面でファクタリングを利用・継続する場合、通常時とは異なる倒産法上のリスクが生じます。

代表的な論点は、①申立て前の取引が「否認権」の対象となるかどうか(偏頗弁済・財産隠しと評価されないか)、②形式はファクタリングでも実質が貸付とみなされる「偽装ファクタリング」に該当しないか、③譲渡担保型と評価された場合の「別除権」や担保評価が再生計画に与える影響、の3つです。

 

大手法律事務所の論考でも、ファクタリングは倒産手続において、真正譲渡・譲渡担保・貸付のいずれと評価されるかにより、破産・民事再生での扱いが大きく変わる点が指摘されています。

特に民事再生では、再生手続開始前の一定期間に行われた財産処分が「他の債権者を害する行為」と評価されると、再生債務者側から取引を遡って取り消す「否認権」の対象となり得ます。

また、貸金業法・利息制限法上の違法性を伴う偽装ファクタリングは、公序良俗違反として無効とされた裁判例も紹介されており、手数料水準やリスク負担の構造に注意が必要です。

 

リスク区分 主な論点
否認権・偏頗弁済 申立て直前のファクタリングが「特定債権者への有利な弁済」と評価されるか。
偽装ファクタリング 形式は債権譲渡でも、実質が高利の金銭消費貸借と評価されるリスク。
別除権・担保評価 譲渡担保型とみなされた場合の別除権の扱いと、再生計画における担保評価。

 

否認権・偏頗弁済とファクタリング

否認権(ひにんけん)とは、倒産手続に入る前の一定期間に行われた財産処分や弁済について、それが他の債権者を害する不公平な行為(偏頗弁済など)と認められる場合に、倒産手続の管理者側(破産管財人・再生債務者等)がその効力をさかのぼって否定できる制度です。

偏頗弁済は、一部の債権者のみに優先的に弁済することで、民事再生法では申立ての誠実性や開始決定の可否に影響を与え得る行為として位置付けられています。

 

ファクタリング取引でも、申立て直前の「異例な」取引は否認権の検討対象になり得ます。

例えば、支払不能が現実化している危機時期に、特定のファクタリング会社との間でのみ高額な売掛債権を譲渡し、多額の現金を先行取得した場合、他の債権者の回収可能性を損なう偏頗行為と評価されるリスクがあります。

 

ファクタリングと倒産手続の関係を論じた文献でも、危機時期に取得した対抗要件(債権譲渡登記や確定日付付き通知)が、民事再生法129条等に基づく対抗要件否認の対象となる可能性が指摘されています。

一方で、日常の売上に伴い継続的に行ってきたファクタリング(条件も平常時と同程度)であれば、「通常の営業取引」として否認の対象とならない余地もあり、個別事情の評価が重要になります。

いずれにしても、民事再生を視野に入れた段階では、申立て直前に条件を大きく変更したり、特定の債権者だけを保護すると疑われるようなファクタリングを行うと、後に否認・計画認可への悪影響が生じるおそれがあるため、専門家と相談しながら慎重に進める必要があります。

 

否認権・偏頗弁済に関するチェックポイント
  • 危機時期(支払不能が現実化した時期)に条件を大きく変えたファクタリングになっていないか。
  • 特定の債権者(ファクタリング会社)だけを有利にする結果になっていないか。
  • 通常の営業取引として合理的に説明できるかを、タイミング・金額・契約内容から検討する。

 

偽装ファクタリングと貸金業規制

偽装ファクタリングとは、契約名称や形式上は「債権譲渡」「売掛金買取り」としながら、その実態が高利の金銭消費貸借(貸付)と変わらない取引を指す実務上の呼び方です。

金融庁は、ファクタリングの利用に関する注意喚起の中で、「売主が債権を買い戻すこととされている」「売主自身の資金によりファクタリング業者に支払をしなければならないこととされている」ような取引は、貸金業に該当するおそれがあると明示し、形式ではなく実態で判断されるべきだとしています。

 

実際に、大阪地裁判決(平成29年3月3日)やその後の判例では、二者間ファクタリング契約について「形式は債権譲渡だが、買戻し義務やリスク負担の構造から実質は金銭消費貸借である」と判断し、利息制限法の上限利率を超える部分の手数料を過払金として返還させた事例が報告されています。

また、「給与ファクタリング」についても、最高裁が貸金業法上の貸付に当たると判断し、貸金業登録のない事業者による提供は違法とする枠組みが示されています。

 

民事再生の文脈では、偽装ファクタリングと評価されたスキームは、①貸金業法・利息制限法・出資法の規制(上限利率・無登録営業の禁止)に抵触するリスク、②再生債権としての扱い(高利部分のカット・過払金の問題)や、③再生計画上の公序良俗・公平性の問題を同時に抱えることになります。

したがって、民事再生を視野に入れる段階でファクタリングを利用・継続する場合、「ノンリコース(償還請求権なし)」やリスク負担、手数料水準が、真正譲渡型のファクタリングとして妥当な範囲に収まっているかを、契約書ベースであらかじめ確認しておくことが重要です。

 

偽装ファクタリングを疑うべきサイン
  • 売掛金が回収できない場合でも、利用者が必ず元本や手数料を負担する仕組みになっている。
  • 手数料を年率換算すると、利息制限法や出資法の上限を大きく超える水準になる。
  • 契約書の名称は債権譲渡でも、実際の条文は貸付契約に近い記載(返済義務・遅延損害金など)が多い。

 

別除権・担保評価への影響ポイント

別除権(べつじょけん)とは、破産・民事再生などの倒産手続の中で、担保権者が他の債権者に優先して担保から弁済を受けることができる権利を指します。

民事再生では、担保権者は原則として別除権者として扱われ、手続外で担保権を実行して優先的に回収することが認められるのが基本的な枠組みです。

 

ファクタリング契約が「真正譲渡」と評価される場合、譲渡済みの売掛債権はそもそも債務者の財産から外れるため、別除権の問題は生じにくくなります。

これに対し、「譲渡担保」と評価されるスキームでは、ファクタリング会社は売掛債権に対する担保権者とみなされ、別除権を有する立場として民事再生手続に参加することになります。

 

大手法律事務所の論考でも、「譲渡担保型のファクタリングは、破産・民事再生において別除権として扱われる」としたうえで、会社更生手続とは異なり民事再生では担保権実行が制限されない点が指摘されています。

もっとも、民事再生でも、担保権実行の中止命令や別除権協定などを通じて、再生計画との整合性を図る必要がある場合があります。

 

担保権者が一方的に担保権を実行すると、再生債務者の事業継続が困難になり、結果として担保権者自身の回収額も減少するおそれがあるため、担保評価と再生計画上の調整が実務上重要になります。

担保法制の検討会資料でも、「別除権者は理屈上いつでも担保権を実行できるが、実際には長期的な回収最大化の観点から和解・協定による調整が行われる」と説明されています。

 

ファクタリング会社の立場から見ると、譲渡担保型と評価された場合、売掛債権の評価額や回収見込みが再生計画の枠組みの中で調整される一方で、別除権者として一定の優先回収枠を維持できる可能性があります。

利用企業側としては、「自社のファクタリング契約が真正譲渡型か譲渡担保型か」「売掛債権が再生計画上どのように評価・処理されるか」を把握しておくことが、再生計画と資金繰りを組み立てるうえで欠かせません。

 

別除権・担保評価を巡る実務上のポイント
  • 真正譲渡型:譲渡済み売掛債権は原則として再生財団から外れ、別除権の問題は生じにくい。
  • 譲渡担保型:ファクタリング会社は別除権者として扱われ、担保評価や実行方法が再生計画に影響する。
  • 担保権者・再生債務者・他の債権者の三者にとって、長期的な回収最大化と事業継続のバランスをとる調整が重要となる。

 

民事再生とファクタリングのQ&A

民事再生や任意整理などの債務整理を検討している中小企業では、「この状態でもファクタリングは利用できるのか」「経営者個人の保証にどのような影響があるのか」「いつどこに相談すればよいのか」といった実務的な疑問が生じやすくなります。

ファクタリングは法的には売掛債権の譲渡契約であり、融資とは別枠のスキームとして扱われますが、倒産法や保証のルールとは密接に関係するため、状況によって取扱いが変わる点に注意が必要です。

ここでは、債務整理中の利用可否、保証人・経営者個人への影響、相談のタイミングと窓口という3つの観点から、よくある疑問を整理します。

 

質問のテーマ ポイント概要
債務整理中でも利用できるか 法的には可能なケースもあるが、取扱いは事案次第。否認権・偏頗弁済・実質貸付評価など倒産法上の論点に注意。
保証人・経営者への影響 ファクタリングの保証条項の有無と、既存融資の保証人地位は別問題。法人再生でも経営者個人の保証債務は原則残る。
相談のタイミング・窓口 資金繰りが悪化する前から、弁護士・税理士・商工会議所・公的支援機関などに早めに相談することが重要。

 

債務整理中でも利用できるか

「すでに返済条件の変更(リスケ)をしている」「弁護士に債務整理を依頼している」「これから民事再生を申し立てる予定だ」といった状況でも、法的にはファクタリングが一律に禁止されているわけではありません。

ファクタリングは売掛債権の譲渡であり、融資とは異なる取引類型として扱われるため、与信上は「借入」ではなく「資産の売却」として評価されるケースもあります。

 

そのため、債務整理中・債務超過の状態でも、売掛先の信用力や売掛金の内容によっては、ファクタリング会社が取引を検討する余地が残る場合があります。

一方で、民事再生や破産などの倒産手続を視野に入れる段階では、申立て前後のファクタリング取引に対して、否認権(特定の債権者だけを有利にした取引を後から取り消す権限)や偏頗弁済の問題が生じる可能性があります。

 

申立て直前に多額の売掛債権を特定のファクタリング会社だけに譲渡し、多額の現金を先行取得した場合などは、「他の債権者の回収を不当に害する行為」と評価されやすく、後日に取引が否認されるリスクがあります。

また、実質が貸付に近いスキーム(偽装ファクタリング)の場合には、貸金業法・利息制限法との関係も問題となり得ます。

したがって、「債務整理中でも利用できるか」という問いに対しては、次のような整理になります。

 

債務整理中のファクタリング利用に関する整理
  • 法的には、債務整理中でもファクタリングが検討対象となるケースはある(売掛債権の譲渡契約であるため)。
  • ただし、民事再生・破産を視野に入れる段階では、否認権・偏頗弁済・偽装ファクタリングなど、倒産法・金融規制上の論点が生じる。
  • 申立て前後の利用可否・リスクは事案ごとに異なるため、弁護士や専門家と相談したうえで判断することが重要。

 

保証人・経営者個人への影響

ファクタリングは、基本的には売掛債権そのものを譲渡して資金化する取引であり、通常の真正譲渡型では、利用企業の代表者個人が連帯保証人になる必要はありません。

この場合、売掛先の支払リスクは原則としてファクタリング会社が負担し、売掛債権が正常に発生・回収される限り、代表者個人に直接の支払い義務が生じることはありません。

 

ただし、一部のスキームでは、債権の不存在や虚偽請求などに備える目的から、代表者による表明保証や損害賠償義務を契約条項で定めているケースもあり、契約書の保証・補償条項の確認が重要です。

一方、倒産法の観点から見ると、「法人の民事再生」と「経営者個人の債務整理(個人の民事再生・自己破産など)」は別の手続であり、法人の民事再生が認められても、経営者個人が銀行借入などの連帯保証人になっている場合、その保証債務は原則として残ります。

 

法人が再生計画に基づき借入金の一部カット・分割弁済を行う一方で、金融機関が保証人である経営者個人に対して全額請求を行うことも理論上可能であり、この点は多くの実務解説でも注意点として挙げられています。

ファクタリングの利用が経営者個人に及ぼす影響は、主に次の二つのルートで生じます。

 

保証人・経営者個人への主な影響ルート
  • ファクタリング契約そのものに、代表者個人の保証・補償義務(虚偽請求時の損害賠償等)が付されているかどうか。
  • 既存の銀行融資などで代表者が連帯保証人となっており、法人の民事再生後も個人の保証債務が残るかどうか。

 

このため、民事再生やファクタリングを検討する際には、「法人の再建」と「経営者個人の生活再建」をセットで考え、必要に応じて個人の民事再生や保証債務の整理も視野に入れながら、専門家と相談することが望ましいといえます。

 

専門家へ相談するタイミングと窓口

民事再生とファクタリングを含む資金調達の組み立ては、法的な論点と実務的な資金繰りの両方を含むため、早い段階で専門家に相談することが重要です。

「借入の返済が数か月続けて遅れそう」「リスケだけでは追いつかない」「ファクタリングを使っても資金ショートが解消しない」といった兆候が見え始めた段階が、相談の目安になります。資金繰りが限界に近づいてからでは、選択肢が大きく狭まってしまうためです。

相談先としては、次のような窓口が考えられます。

 

  • 弁護士:民事再生・任意整理・破産などの手続選択、否認権・保証の問題、ファクタリング契約の法的評価などを総合的に検討する役割。
  • 公認会計士・税理士:事業計画・資金繰り表の作成支援、再生計画の数字面の検証、銀行との協議資料の作成支援など。
  • 商工会議所・商工会・中小企業支援機関:経営・資金繰りに関する一般的な相談、公的融資・補助金・再生支援制度の情報提供。
  • 公的相談窓口(法テラスなど):法的トラブル全般に関する初期相談や、弁護士紹介の窓口として活用可能。

 

実務的には、「顧問税理士→弁護士→金融機関担当者→公的支援機関」というように、複数の専門家・機関と連携しながら対応していくケースが多く見られます。

ファクタリングについても、「どのスキームなら再生計画と整合的か」「否認権・貸金業規制と矛盾しないか」といった観点で意見をもらい、契約前にリスクを把握しておくことが大切です。

 

専門家・公的機関に相談するときのポイント
  • 資金繰りが厳しくなる前(返済遅延が常態化する前)に、数字(資金繰り表)とともに相談する。
  • 弁護士・税理士・金融機関・公的支援機関など、役割の異なる相談先を組み合わせて活用する。
  • ファクタリングを含む資金調達案についても、契約前にリスク説明を受け、民事再生との整合性を確認しておく。

 

まとめ

ファクタリングと民事再生の関係を整理すると、ポイントは「いつ」「どのスキームで」「どの売掛金を」使うかに集約されます。

民事再生は事業再建を前提とする手続きであり、売掛金やファクタリング契約も再生計画の一部として位置付けられますが、申立て前後のタイミングや否認権・偏頗弁済の問題、偽装ファクタリングとみなされるリスクには注意が必要です。

本記事で触れた基礎知識と実務ポイントを踏まえつつ、具体的な利用可否やスキーム選択については、早い段階で弁護士や専門家に相談しながら、自社にとって無理のない再建と資金調達のバランスを検討していくことが重要です。